車両天井材の浮上り防止構造
【課題】部品点数を少なくしてコスト低減を図る。
【解決手段】本体11を略板状に成形して当該本体11をボデーパネルに固定し、本体11の外周縁の複数位置に係止部材3を設けて、これら係止部材3に、車内側から天井開口内へ本体11が挿入される際には後退変形させられ、挿入後は弾性的に原位置に復して、本体11外周縁との間に天井開口の開口縁を受け入れて天井の浮き上がりを規制する規制間隙Sを生成する係止片32を形成する。係止部材3は本体11の外周縁上に立設された支持部31を備えており、係止片32を弾性変形可能な薄肉変形部314を介して支持部31に支持させる。
【解決手段】本体11を略板状に成形して当該本体11をボデーパネルに固定し、本体11の外周縁の複数位置に係止部材3を設けて、これら係止部材3に、車内側から天井開口内へ本体11が挿入される際には後退変形させられ、挿入後は弾性的に原位置に復して、本体11外周縁との間に天井開口の開口縁を受け入れて天井の浮き上がりを規制する規制間隙Sを生成する係止片32を形成する。係止部材3は本体11の外周縁上に立設された支持部31を備えており、係止片32を弾性変形可能な薄肉変形部314を介して支持部31に支持させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバン型車等の車両天井材の浮上り防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両天井材の浮上り防止構造の一例を図12に示す。シートベルトカバー5は上半のインナカバー51と下半のアウタカバー52によって中空の容器状に形成されて、天井材4に形成された開口41内に位置している。インナカバー51はルーフパネルR外側縁の下面に接合されたルーフレールパネルPにボルト結合されている。アウタカバー52は、その外周縁とインナカバー51の外周縁との間に上記開口41の開口縁を挟んだ状態で、裏面に突設した係止片53の先端がインナカバー51の係合壁511に係止されてこれに固定されている。このような構造によって天井材4に設けた開口41の開口縁の浮上りが防止されている。
【0003】
なお、特許文献1には、天井の開口に装着されたルームランプの外周縁とルーフレールパネルに固定されたルームランプサポートブラケットの外周縁とで天井開口の開口縁を挟んだ状態で、上記ルームランプの外周縁裏面の係止片をルームランプサポートブラケット外周縁の係止部に係止固定したルームランプの取付構造が示されている。
【特許文献1】特許第3617596号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の車両天井材の浮上り防止構造では、インナカバーとアウタカバーとで天井に設けた開口の開口縁を挟持する構造であるため、インナカバーとアウタカバーが必要で部品点数が多く、コスト高になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、部品点数を少なくしてコスト低減を図った車両天井材の浮上り防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するもので、本第1発明では、天井材(4)に設けた開口(41)を覆い、シートベルト装置のウェビング(W)を車内へ引き出すウェビング挿通口(12)を備えたシートベルトカバーであって、ボデーパネル(P)に固定されるシートベルトカバーの本体(11)を略板状に成形して当該カバーの本体(11)の本体外周縁の複数位置に係止部材(3)を設け、これら係止部材(3)に、車内側から上記開口(41)内へ本体(11)が挿入される際には開口縁に当接して後退変形させられ、挿入後は弾性的に原位置に復して、本体(11)外周縁との間に開口(41)の開口縁を受け入れて天井材の浮き上がりを規制する規制間隙(S)を生成する係止片(32)を形成する。
【0007】
本第1発明においては、カバー本体を略板状として、これに設けた係止片により生成される規制間隙によって天井の浮き上りを阻止するようにしたので、従来のようにインナカバーとアウタカバーを必要とせず、部品点数が減少してコストの低減を図ることができる。
【0008】
本第2発明では、ボデーパネル(P2)に固定される内装部品(6)の本体(61)に係止部材(8)を設けて、当該係止部材(8)に、車内側からボデーパネル(P2)に向けて内装部品(6)の本体(61)が挿入される際には天井材(4)の端縁(42)に当接して後退変形させられ、挿入後は弾性的に原位置に復して、内装部品(6)の本体(61)外周縁との間に天井材(4)の端縁(42)を受け入れてその浮き上がりを規制する規制間隙(S)を生成する係止片(82)を形成する。
【0009】
本第3発明では、上記係止部材(3,8)は本体(11,61)上に立設された支持部(31,81)を備えており、上記係止片(32,82)を弾性変形可能な薄肉変形部(314,815)を介して支持部(31,81)に支持させる。
【0010】
本第3発明においては、薄肉変形部を形成するという簡単な構造によって弾性変形が実現される。
【0011】
本第4発明では、上記係止片(32,82)は係合頂部(321,821)を有する略三角断面に形成されてその一端が薄肉変形部(314,815)を介して支持部(31,81)に支持されている。
【0012】
本第4発明においては、シートベルトカバーの本体を開口内へ挿入し、あるいは内装部品の本体をボデーパネルに向けて挿入する際に、天井材の開口縁あるいは端縁に略三角断面の斜面が当接してスムーズに係止片が後退変形させられる。そして、天井材の開口縁あるいは端縁の浮き上がりは、原位置に復した略三角断面の係合頂部の斜面にこれら開口縁ないし端縁が当接することによって防止される。
【0013】
本第5発明では、上記係止片(32)の自由端には板状のストッパ部(33)が形成されている。
【0014】
本第5発明においては、過大な力で天井材が持ち上げられても、開口縁がストッパ部に当接して係止片の回動変形が阻止され、天井材の浮き上りが確実に阻止される。
【0015】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の車両天井材の浮上り防止構造によれば、シートベルトカバーや内装部品に一体に係止部材を形成するだけで良いから、部品点数が低減され、低コストで実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
本実施形態では車両天井材の浮上り防止構造を、バン型車の内装部品としての、天井引出し式シートベルト装置のシートベルトカバーに適用した例を示す。図1において、バン型車に装備された天井引出し式のシートベルト装置SDは、ウェビングWと、車室側壁に設けられてウェビングWを巻き取るように付勢するリトラクタRと、ウェビングWの先端に設けられた第1タングT1と、ウェビングWの途中に摺動可能に設けられた第2タングT2と、シートSの左右一側に配置されて第1タングT1を係脱可能な第1バックルBK1と、シートSの他側に配置されて第2タングT2を係脱可能な第2バックルBK2とを備えている。上記ウェビングWは、詳細を後述する構造で車室天井に取り付けられたシートベルトカバー1のウェビング挿通口12を経て車内へ引き出されている。上記リトラクタRは図略の側壁内装材の内側に配置されて車体の側壁パネル(図略)に固定されている。なお、図中Pはルーフレールパネルを示し、SWは側壁内装材の一部を示す。
【0018】
このような構造により、ウェビングWをシートSに着座した乗員Mの上半身上部を斜めに横切るように下方へ引き出して、ウェビングWの途中に設けられた第2タングT2を、乗員Mに対し側壁SWとは反対側に位置する第2バックルBK1に係合させ、さらにウェビングWを乗員Mの上半身下部を横切るように引き出して、その先端の第1タングT1を、乗員Mに対し側壁SW側に位置する第1バックルBK1に係合させることにより、いわゆる三点式シートベルトとして乗員Mの身体を保持することができる。
【0019】
シートベルト装置SDを使用せず、収納しておきたい場合には、第2タングT2と第2バックルBK2の係合を解消するとウェビングWはリトラクタRによって巻き取られて第1バックルBK1とシートベルトカバー1との間に張られた状態となる。さらに第1タングT1と第1バックルBK1の係合を解消してウェビングWをリトラクタRに巻き取らせつつ、図2に示すように、第1タングT1および第2タングT2を、シートベルトカバー1の車室側表面に形成された収納凹所13内に収納する。
【0020】
図3にはシートベルトカバー1を裏面側から見た斜視図を示す。シートベルトカバー1は全体が樹脂材の一体成形品であり、本体11の裏面半部中央は、表面側の上記収納凹所13に対応して裏面側へ突出する突出部14となっている。本体11裏面の外周縁の、周方向の複数位置には取付用の突起部2が形成されている。突起部2は図4に示すように一部が側方へ開放した頂部閉鎖の筒状に成形されており、頂部には取付穴21が開口している。そして、突起部2の筒内には側方開放口22より係止具23が挿入されて、その花弁状に開いた弾性片231が図4に示すように取付穴21に通され、座金24を介してルーフレールパネルPに設けた取付穴P1の周縁に拡径係止されている。このようにしてシートベルトカバー1はルーフレールパネルPに固定されている。
【0021】
本体11(図3)裏面の外周縁にはまた、周方向の複数位置に係止部材3が形成されている。係止部材3の詳細を図5に示す。図5において、係止部材3は本体11裏面の外周縁上に立設された支持部31を備えており、支持部31は門形となって、本体11裏面に至る左右の側壁311,312と、これら側壁311,312の上端を連結する薄肉の頂壁313とで構成されている。頂壁313からは係止片32が垂下しており、係止片32は一定幅で、上下の中間部に前方へ突出する係合頂部321が位置し上半面が緩斜面、下半面が急斜面の略三角断面となっている。このような係止片32はその上端部が、両側に位置する頂壁313の弾性変形可能な薄肉変形部314を介して側壁311,312上端に連結されている。係止片32の下縁には一定幅で左右に延びる板状のストッパ部33が下方へ向けて突出形成されている。なお、各係止部材3は係止片32の係合頂部321を外方へ向けて、本体11の外周縁上に位置させられている。
【0022】
このような構造のシートベルトカバー1は、天井材4に設けた開口41(図4)内に下方から挿入され、係止具23によってルーフレールパネルPに固定される。この挿入過程で、図6に示すように、係止部材3の係止片32の、係合頂部321の上半面が天井開口41の開口縁に当接すると、薄肉変形部314が弾性変形して係止片32が支持部31内に後退させられる。天井開口41を通過した後は、薄肉変形部314の弾性復元力によって図7に示すように係止片32は再び原位置へ進出させられる。これにより、係合頂部321と本体11外周縁との間に所定の規制間隙Sが生じ、この規制間隙S内に天井開口41の開口縁が位置させられる。この状態で天井材4が下方から突き上げられても、開口縁が鎖線で示すように係合頂部321の下半面に当接してそれ以上の天井材4の浮き上がりは阻止される。天井材4に過大な突き上げ力が作用すると図8に示すように係止片32自体が上方へ回動させられるが、この場合はストッパ部33が天井開口41の開口縁に当接係合してそれ以上の係止片32の回動が規制されて、天井材4の浮き上りが阻止される。
【0023】
(第2実施形態)
本実施形態では車両天井材の浮上り防止構造を、バン型車の内装部品としての天井トリム材に適用した例を示す。図9には天井トリム材の全体斜視図を示し、図10、図11には車両天井付近に装着された天井トリム材を示す。ここで、図10の天井トリム材は図9のX−X線に沿った断面図であり、図11の天井トリム材は図9のXI−XI線に沿った断面図である。
【0024】
天井トリム材6の本体61は一端が湾曲した細長の板体で、その長手方向の複数箇所に取付用の突起部7が形成されている。突起部7は一部が側方へ開放した頂部閉鎖の筒状に成形されており、頂部には取付穴71(図10)が開口している。突起部7の筒内には側方開放口72より係止具73が挿入されて、その花弁状に開いた弾性片731が上記取付穴71に通され、座金74を介してルーフサイドインナパネルP2に設けた取付穴P21の周縁に拡径係止されている。このようにして天井トリム材6の本体61はルーフサイドインナパネルP2に固定されている。
【0025】
天井トリム材6の本体61には長手方向で互いに離れた突起部7の間に第1実施形態で説明したのと同様の構造の係止部材8が形成されている。すなわち、係止部材8は本体61上に立設された支持部81を備えており、支持部81は左右の側壁811,812を有している。これら側壁811,812間には薄板部813が設けられ、薄板部813には両側にその下端から頂部近くへ至る切欠き814が形成されて、残された頂部が薄肉変形部815(図11)となるとともに、切欠き814間の薄板部813には左右位置に(図9)三角凸部816が形成されて、これらにより係止片82(図11)が構成されている。三角凸部816には上下の中間部に前方へ突出する係合頂部821が位置し、上半面が緩斜面、下半面が急斜面となっている。
【0026】
このような構造の天井トリム材は、天井材4の側端縁42とサイドウインドウガラスWとの間の間隙空間SP(図10、図11)内へ下方から挿入され、係止具73によってルーフサイドインナパネルP2に固定される。この挿入過程で、係止部材8の係合頂部821の上半面が天井材4の側端縁42に当接すると、薄肉変形部815が弾性変形して係止片82が支持部81内に後退させられる。上記間隙空間SPを通過した後は、薄肉変形部815の弾性復元力によって図11に示すように係止片82は再び原位置へ進出させられる。これにより、係合頂部821と天井トリム材6の本体61外周縁との間に所定の規制間隙Sが生じ、この規制間隙S内に天井材4の側端縁42が位置させられる。この状態で天井材4が下方から突き上げられても、天井材4の側端縁42は係合頂部821の下半面に当接してそれ以上の天井材4の浮き上がりが阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、バン型車に装備された天井引出し式のシートベルト装置を示す斜視図である。
【図2】シートベルトカバーを室内に向く表面側から見た斜視図である。
【図3】シートベルトカバーを室外に向く裏面側から見た斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】係止部材の要部斜視図である。
【図6】シートベルトカバー外周縁の拡大断面図である。
【図7】シートベルトカバー外周縁の拡大断面図である。
【図8】シートベルトカバー外周縁の拡大断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態を示す、天井トリム材の全体斜視図である。
【図10】車両天井付近に装着された天井トリム材を示し、図9のX−X線に沿った断面図である。
【図11】車両天井付近に装着された天井トリム材を示し、図9のXI−XI線に沿った断面図である。
【図12】従来の車両天井材の浮上り防止構造の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…シートベルトカバー、11…本体、12…ウェビング挿通口、3…係止部材、31…支持部、314…薄肉変形部、32…係止片、321…係合頂部、33…ストッパ部、4…天井材、41…開口、42…側端縁(端縁)、6…天井トリム(内装部品)、61…本体、8…係止部材、81…支持部、815…薄肉変形部、82…係止片、P…ルーフレールパネル(ボデーパネル)、P2…ルーフサイドインナパネル(ボデーパネル)、S…規制間隙、W…ウェビング。
【技術分野】
【0001】
本発明はバン型車等の車両天井材の浮上り防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両天井材の浮上り防止構造の一例を図12に示す。シートベルトカバー5は上半のインナカバー51と下半のアウタカバー52によって中空の容器状に形成されて、天井材4に形成された開口41内に位置している。インナカバー51はルーフパネルR外側縁の下面に接合されたルーフレールパネルPにボルト結合されている。アウタカバー52は、その外周縁とインナカバー51の外周縁との間に上記開口41の開口縁を挟んだ状態で、裏面に突設した係止片53の先端がインナカバー51の係合壁511に係止されてこれに固定されている。このような構造によって天井材4に設けた開口41の開口縁の浮上りが防止されている。
【0003】
なお、特許文献1には、天井の開口に装着されたルームランプの外周縁とルーフレールパネルに固定されたルームランプサポートブラケットの外周縁とで天井開口の開口縁を挟んだ状態で、上記ルームランプの外周縁裏面の係止片をルームランプサポートブラケット外周縁の係止部に係止固定したルームランプの取付構造が示されている。
【特許文献1】特許第3617596号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の車両天井材の浮上り防止構造では、インナカバーとアウタカバーとで天井に設けた開口の開口縁を挟持する構造であるため、インナカバーとアウタカバーが必要で部品点数が多く、コスト高になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、部品点数を少なくしてコスト低減を図った車両天井材の浮上り防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するもので、本第1発明では、天井材(4)に設けた開口(41)を覆い、シートベルト装置のウェビング(W)を車内へ引き出すウェビング挿通口(12)を備えたシートベルトカバーであって、ボデーパネル(P)に固定されるシートベルトカバーの本体(11)を略板状に成形して当該カバーの本体(11)の本体外周縁の複数位置に係止部材(3)を設け、これら係止部材(3)に、車内側から上記開口(41)内へ本体(11)が挿入される際には開口縁に当接して後退変形させられ、挿入後は弾性的に原位置に復して、本体(11)外周縁との間に開口(41)の開口縁を受け入れて天井材の浮き上がりを規制する規制間隙(S)を生成する係止片(32)を形成する。
【0007】
本第1発明においては、カバー本体を略板状として、これに設けた係止片により生成される規制間隙によって天井の浮き上りを阻止するようにしたので、従来のようにインナカバーとアウタカバーを必要とせず、部品点数が減少してコストの低減を図ることができる。
【0008】
本第2発明では、ボデーパネル(P2)に固定される内装部品(6)の本体(61)に係止部材(8)を設けて、当該係止部材(8)に、車内側からボデーパネル(P2)に向けて内装部品(6)の本体(61)が挿入される際には天井材(4)の端縁(42)に当接して後退変形させられ、挿入後は弾性的に原位置に復して、内装部品(6)の本体(61)外周縁との間に天井材(4)の端縁(42)を受け入れてその浮き上がりを規制する規制間隙(S)を生成する係止片(82)を形成する。
【0009】
本第3発明では、上記係止部材(3,8)は本体(11,61)上に立設された支持部(31,81)を備えており、上記係止片(32,82)を弾性変形可能な薄肉変形部(314,815)を介して支持部(31,81)に支持させる。
【0010】
本第3発明においては、薄肉変形部を形成するという簡単な構造によって弾性変形が実現される。
【0011】
本第4発明では、上記係止片(32,82)は係合頂部(321,821)を有する略三角断面に形成されてその一端が薄肉変形部(314,815)を介して支持部(31,81)に支持されている。
【0012】
本第4発明においては、シートベルトカバーの本体を開口内へ挿入し、あるいは内装部品の本体をボデーパネルに向けて挿入する際に、天井材の開口縁あるいは端縁に略三角断面の斜面が当接してスムーズに係止片が後退変形させられる。そして、天井材の開口縁あるいは端縁の浮き上がりは、原位置に復した略三角断面の係合頂部の斜面にこれら開口縁ないし端縁が当接することによって防止される。
【0013】
本第5発明では、上記係止片(32)の自由端には板状のストッパ部(33)が形成されている。
【0014】
本第5発明においては、過大な力で天井材が持ち上げられても、開口縁がストッパ部に当接して係止片の回動変形が阻止され、天井材の浮き上りが確実に阻止される。
【0015】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の車両天井材の浮上り防止構造によれば、シートベルトカバーや内装部品に一体に係止部材を形成するだけで良いから、部品点数が低減され、低コストで実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
本実施形態では車両天井材の浮上り防止構造を、バン型車の内装部品としての、天井引出し式シートベルト装置のシートベルトカバーに適用した例を示す。図1において、バン型車に装備された天井引出し式のシートベルト装置SDは、ウェビングWと、車室側壁に設けられてウェビングWを巻き取るように付勢するリトラクタRと、ウェビングWの先端に設けられた第1タングT1と、ウェビングWの途中に摺動可能に設けられた第2タングT2と、シートSの左右一側に配置されて第1タングT1を係脱可能な第1バックルBK1と、シートSの他側に配置されて第2タングT2を係脱可能な第2バックルBK2とを備えている。上記ウェビングWは、詳細を後述する構造で車室天井に取り付けられたシートベルトカバー1のウェビング挿通口12を経て車内へ引き出されている。上記リトラクタRは図略の側壁内装材の内側に配置されて車体の側壁パネル(図略)に固定されている。なお、図中Pはルーフレールパネルを示し、SWは側壁内装材の一部を示す。
【0018】
このような構造により、ウェビングWをシートSに着座した乗員Mの上半身上部を斜めに横切るように下方へ引き出して、ウェビングWの途中に設けられた第2タングT2を、乗員Mに対し側壁SWとは反対側に位置する第2バックルBK1に係合させ、さらにウェビングWを乗員Mの上半身下部を横切るように引き出して、その先端の第1タングT1を、乗員Mに対し側壁SW側に位置する第1バックルBK1に係合させることにより、いわゆる三点式シートベルトとして乗員Mの身体を保持することができる。
【0019】
シートベルト装置SDを使用せず、収納しておきたい場合には、第2タングT2と第2バックルBK2の係合を解消するとウェビングWはリトラクタRによって巻き取られて第1バックルBK1とシートベルトカバー1との間に張られた状態となる。さらに第1タングT1と第1バックルBK1の係合を解消してウェビングWをリトラクタRに巻き取らせつつ、図2に示すように、第1タングT1および第2タングT2を、シートベルトカバー1の車室側表面に形成された収納凹所13内に収納する。
【0020】
図3にはシートベルトカバー1を裏面側から見た斜視図を示す。シートベルトカバー1は全体が樹脂材の一体成形品であり、本体11の裏面半部中央は、表面側の上記収納凹所13に対応して裏面側へ突出する突出部14となっている。本体11裏面の外周縁の、周方向の複数位置には取付用の突起部2が形成されている。突起部2は図4に示すように一部が側方へ開放した頂部閉鎖の筒状に成形されており、頂部には取付穴21が開口している。そして、突起部2の筒内には側方開放口22より係止具23が挿入されて、その花弁状に開いた弾性片231が図4に示すように取付穴21に通され、座金24を介してルーフレールパネルPに設けた取付穴P1の周縁に拡径係止されている。このようにしてシートベルトカバー1はルーフレールパネルPに固定されている。
【0021】
本体11(図3)裏面の外周縁にはまた、周方向の複数位置に係止部材3が形成されている。係止部材3の詳細を図5に示す。図5において、係止部材3は本体11裏面の外周縁上に立設された支持部31を備えており、支持部31は門形となって、本体11裏面に至る左右の側壁311,312と、これら側壁311,312の上端を連結する薄肉の頂壁313とで構成されている。頂壁313からは係止片32が垂下しており、係止片32は一定幅で、上下の中間部に前方へ突出する係合頂部321が位置し上半面が緩斜面、下半面が急斜面の略三角断面となっている。このような係止片32はその上端部が、両側に位置する頂壁313の弾性変形可能な薄肉変形部314を介して側壁311,312上端に連結されている。係止片32の下縁には一定幅で左右に延びる板状のストッパ部33が下方へ向けて突出形成されている。なお、各係止部材3は係止片32の係合頂部321を外方へ向けて、本体11の外周縁上に位置させられている。
【0022】
このような構造のシートベルトカバー1は、天井材4に設けた開口41(図4)内に下方から挿入され、係止具23によってルーフレールパネルPに固定される。この挿入過程で、図6に示すように、係止部材3の係止片32の、係合頂部321の上半面が天井開口41の開口縁に当接すると、薄肉変形部314が弾性変形して係止片32が支持部31内に後退させられる。天井開口41を通過した後は、薄肉変形部314の弾性復元力によって図7に示すように係止片32は再び原位置へ進出させられる。これにより、係合頂部321と本体11外周縁との間に所定の規制間隙Sが生じ、この規制間隙S内に天井開口41の開口縁が位置させられる。この状態で天井材4が下方から突き上げられても、開口縁が鎖線で示すように係合頂部321の下半面に当接してそれ以上の天井材4の浮き上がりは阻止される。天井材4に過大な突き上げ力が作用すると図8に示すように係止片32自体が上方へ回動させられるが、この場合はストッパ部33が天井開口41の開口縁に当接係合してそれ以上の係止片32の回動が規制されて、天井材4の浮き上りが阻止される。
【0023】
(第2実施形態)
本実施形態では車両天井材の浮上り防止構造を、バン型車の内装部品としての天井トリム材に適用した例を示す。図9には天井トリム材の全体斜視図を示し、図10、図11には車両天井付近に装着された天井トリム材を示す。ここで、図10の天井トリム材は図9のX−X線に沿った断面図であり、図11の天井トリム材は図9のXI−XI線に沿った断面図である。
【0024】
天井トリム材6の本体61は一端が湾曲した細長の板体で、その長手方向の複数箇所に取付用の突起部7が形成されている。突起部7は一部が側方へ開放した頂部閉鎖の筒状に成形されており、頂部には取付穴71(図10)が開口している。突起部7の筒内には側方開放口72より係止具73が挿入されて、その花弁状に開いた弾性片731が上記取付穴71に通され、座金74を介してルーフサイドインナパネルP2に設けた取付穴P21の周縁に拡径係止されている。このようにして天井トリム材6の本体61はルーフサイドインナパネルP2に固定されている。
【0025】
天井トリム材6の本体61には長手方向で互いに離れた突起部7の間に第1実施形態で説明したのと同様の構造の係止部材8が形成されている。すなわち、係止部材8は本体61上に立設された支持部81を備えており、支持部81は左右の側壁811,812を有している。これら側壁811,812間には薄板部813が設けられ、薄板部813には両側にその下端から頂部近くへ至る切欠き814が形成されて、残された頂部が薄肉変形部815(図11)となるとともに、切欠き814間の薄板部813には左右位置に(図9)三角凸部816が形成されて、これらにより係止片82(図11)が構成されている。三角凸部816には上下の中間部に前方へ突出する係合頂部821が位置し、上半面が緩斜面、下半面が急斜面となっている。
【0026】
このような構造の天井トリム材は、天井材4の側端縁42とサイドウインドウガラスWとの間の間隙空間SP(図10、図11)内へ下方から挿入され、係止具73によってルーフサイドインナパネルP2に固定される。この挿入過程で、係止部材8の係合頂部821の上半面が天井材4の側端縁42に当接すると、薄肉変形部815が弾性変形して係止片82が支持部81内に後退させられる。上記間隙空間SPを通過した後は、薄肉変形部815の弾性復元力によって図11に示すように係止片82は再び原位置へ進出させられる。これにより、係合頂部821と天井トリム材6の本体61外周縁との間に所定の規制間隙Sが生じ、この規制間隙S内に天井材4の側端縁42が位置させられる。この状態で天井材4が下方から突き上げられても、天井材4の側端縁42は係合頂部821の下半面に当接してそれ以上の天井材4の浮き上がりが阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、バン型車に装備された天井引出し式のシートベルト装置を示す斜視図である。
【図2】シートベルトカバーを室内に向く表面側から見た斜視図である。
【図3】シートベルトカバーを室外に向く裏面側から見た斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】係止部材の要部斜視図である。
【図6】シートベルトカバー外周縁の拡大断面図である。
【図7】シートベルトカバー外周縁の拡大断面図である。
【図8】シートベルトカバー外周縁の拡大断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態を示す、天井トリム材の全体斜視図である。
【図10】車両天井付近に装着された天井トリム材を示し、図9のX−X線に沿った断面図である。
【図11】車両天井付近に装着された天井トリム材を示し、図9のXI−XI線に沿った断面図である。
【図12】従来の車両天井材の浮上り防止構造の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…シートベルトカバー、11…本体、12…ウェビング挿通口、3…係止部材、31…支持部、314…薄肉変形部、32…係止片、321…係合頂部、33…ストッパ部、4…天井材、41…開口、42…側端縁(端縁)、6…天井トリム(内装部品)、61…本体、8…係止部材、81…支持部、815…薄肉変形部、82…係止片、P…ルーフレールパネル(ボデーパネル)、P2…ルーフサイドインナパネル(ボデーパネル)、S…規制間隙、W…ウェビング。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井材に設けた開口を覆い、シートベルト装置のウェビングを車内へ引き出すウェビング挿通口を備えたシートベルトカバーであって、ボデーパネルに固定される前記シートベルトカバーの本体を略板状に成形して当該カバーの本体外周縁の複数位置に係止部材を設け、これら係止部材に、車内側から前記開口内へ前記本体が挿入される際には後退変形させられ、挿入後は弾性的に原位置に復して、前記本体外周縁との間に前記開口の開口縁を受け入れてその浮き上がりを規制する規制間隙を生成する係止片を形成した車両天井材の浮上り防止構造。
【請求項2】
ボデーパネルに固定される内装材の本体に係止部材を設けて、当該係止部材に、車内側から前記ボデーパネルに向けて前記内装材の本体が挿入される際には後退変形させられ、挿入後は弾性的に原位置に復して、前記内装材の本体外周縁との間に天井材の端縁を受け入れてその浮き上がりを規制する規制間隙を生成する係止片を形成した車両天井材の浮上り防止構造。
【請求項3】
前記係止部材は前記本体上に立設された支持部を備えており、前記係止片を弾性変形可能な薄肉変形部を介して前記支持部に支持させた請求項1又は2に記載の車両天井材の浮上り防止構造。
【請求項4】
前記係止片は係合頂部を有する略三角断面に形成されてその一端が前記薄肉変形部を介して前記支持部に支持されている請求項3に記載の車両天井材の浮上り防止構造。
【請求項5】
前記係止片の自由端には板状のストッパ部が形成されている請求項4に記載の車両天井材の浮上り防止構造。
【請求項1】
天井材に設けた開口を覆い、シートベルト装置のウェビングを車内へ引き出すウェビング挿通口を備えたシートベルトカバーであって、ボデーパネルに固定される前記シートベルトカバーの本体を略板状に成形して当該カバーの本体外周縁の複数位置に係止部材を設け、これら係止部材に、車内側から前記開口内へ前記本体が挿入される際には後退変形させられ、挿入後は弾性的に原位置に復して、前記本体外周縁との間に前記開口の開口縁を受け入れてその浮き上がりを規制する規制間隙を生成する係止片を形成した車両天井材の浮上り防止構造。
【請求項2】
ボデーパネルに固定される内装材の本体に係止部材を設けて、当該係止部材に、車内側から前記ボデーパネルに向けて前記内装材の本体が挿入される際には後退変形させられ、挿入後は弾性的に原位置に復して、前記内装材の本体外周縁との間に天井材の端縁を受け入れてその浮き上がりを規制する規制間隙を生成する係止片を形成した車両天井材の浮上り防止構造。
【請求項3】
前記係止部材は前記本体上に立設された支持部を備えており、前記係止片を弾性変形可能な薄肉変形部を介して前記支持部に支持させた請求項1又は2に記載の車両天井材の浮上り防止構造。
【請求項4】
前記係止片は係合頂部を有する略三角断面に形成されてその一端が前記薄肉変形部を介して前記支持部に支持されている請求項3に記載の車両天井材の浮上り防止構造。
【請求項5】
前記係止片の自由端には板状のストッパ部が形成されている請求項4に記載の車両天井材の浮上り防止構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−22518(P2007−22518A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5462(P2006−5462)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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