説明

車両用のクラッチ装置

【課題】大きな伝達トルクを確保しつつ小動力伝達時の制御の精度を向上することが出来る車両用のクラッチ装置を提供する。
【解決手段】本発明は、1速段を含む第1変速機入力軸(20)の第1クラッチディスク(24)と、2速段を含む第2変速機入力軸(21)の第2クラッチディスク(25)と、フライホイール(4)と一体的に回転するセンタープレート(16)と、第1及び第2のクラッチディスクをそれぞれセンタープレートに係合させる第1及び第2の内周側及び外周側のプレッシャプレート(30a,30b,31a,31b)とを有し、小動力伝達時に第2のクラッチディスクを押圧する第2の内周側或いは外周側のいずれか一方のプレッシャプレートは、小動力伝達時に第1のクラッチディスクを押圧する第1の内周側或いは外周側のいずれか一方のプレッシャプレートよりも小動力伝達時のトルク容量が大きくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のクラッチ装置に係り、特に、ツインクラッチディスクを有する車両用のクラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂クラッチが2つ設けられたツインクラッチ装置が知られている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−221249号公報
【特許文献2】特開2003−120716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、動力性能を高めるために、ツインクラッチ装置には、大きな伝達トルクを確保しつつ、小動力伝達時、例えば、クリープ制御時、発進時、或いは、減速状態における変速時などにおいて制御の精度の向上が要望されている。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、大きな伝達トルクを確保しつつ、小動力伝達時の制御の精度を向上することが出来る車両用のクラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明によれば、駆動源の出力軸と一体的に回転するフライホイールと、2つのグループからなる変速段のうち、1速段を含む第1グループ内のいずれかの変速段を選択するための第1変速機入力軸と、2速段を含む第2グループ内のいずれかの変速段を選択するための第2変速機入力軸と、第1変速機入力軸に、軸方向摺動可能であるが相対回転しないように取り付けられた第1クラッチディスクと、第2変速機入力軸に、軸方向摺動可能であるが相対回転しないように取り付けられた第2クラッチディスクと、フライホイールと一体的に回転し第1クラッチディスク及び第2クラッチディスクの間に設けられたセンタープレートと、センタープレートと共に第1クラッチディスクを挟持して、第1クラッチディスクをセンタープレートに係合させるための押圧荷重を第1クラッチディスクに付与する第1内周側プレッシャプレートと、この第1内周側プレッシャプレートの外周側に設けられ、第1内周側プレッシャプレートとは相互に独立して軸方向に移動可能であり、センタープレートと共に第1クラッチディスクを挟持して、第1クラッチディスクをセンタープレートに係合させるための押圧荷重を第1クラッチディスクに付与する第1外周側プレッシャプレートと、センタープレートと共に第2クラッチディスクを挟持して、第2クラッチディスクをセンタープレートに係合させるための押圧荷重を第2クラッチディスクに付与する第2内周側プレッシャプレートと、この第2内周側プレッシャプレートの外周側に設けられ、第2内周側プレッシャプレートとは相互に独立して軸方向に移動可能であり、センタープレートと共に第2クラッチディスクを挟持して、第2クラッチディスクをセンタープレートに係合させるための押圧荷重を第2クラッチディスクに付与する第2外周側プレッシャプレートと、を有し、内周側或いは外周側の各プレッシャプレートのどちらか一方のみが、小動力伝達時に第1或いは第2のクラッチディスクを押圧するようにされ、小動力伝達時に第2のクラッチディスクを押圧する第2内周側或いは第2外周側のいずれか一方のプレッシャプレートは、小動力伝達時に第1のクラッチディスクを押圧する第1内周側或いは第1外周側のいずれか一方のプレッシャプレートよりも、小動力伝達時のトルク容量が大きくなるように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、小動力伝達時に第2のクラッチディスクを押圧する第2内周側或いは第2外周側のいずれか一方のプレッシャプレートは、小動力伝達時に第1のクラッチディスクを押圧する第1内周側或いは第1外周側のいずれか一方のプレッシャプレートよりも、小動力伝達時のトルク容量が大きくなるように構成されているので、2速段での小動力伝達時におけるクラッチレリーズ機構の移動量に対する伝達トルク容量のゲインを、2速段での小動力伝達時におけるクラッチレリーズ機構の移動量に対する伝達トルク容量のゲインよりも高めることが出来る。その結果、1速段及び2速段において、いずれも、クラッチレリーズ機構の移動による小動力伝達時の制御の精度を向上させることが出来る。
【0007】
また、本発明において、好ましくは、2速段における小動力伝達時のトルク容量が1速段における小動力伝達時のトルク容量よりも大きくなるように、第2クラッチディスクに対して小動力伝達時に押圧する第2内周側或いは第2外周側のいずれか一方のプレッシャプレートの第2クラッチディスクへの当接面積が、第1クラッチディスクに対して小動力伝達時に押圧する第1内周側或いは第1外周側のいずれか一方のプレッシャプレートの第1クラッチディスクへの当接面積より大きくされている。
このように構成された本発明においては、効果的に、2速段での小動力伝達時におけるクラッチレリーズ機構の移動量に対する伝達トルク容量のゲインを、2速段での小動力伝達時におけるクラッチレリーズ機構の移動量に対する伝達トルク容量のゲインよりも高めることが出来る。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、2速段における小動力伝達時のトルク容量が1速段における小動力伝達時のトルク容量よりも大きくなるように、第2クラッチディスクに対して小動力伝達時に押圧する第2内周側或いは第2外周側のいずれか一方のプレッシャプレートの半径方向における中心点が、第1クラッチディスクに対して小動力伝達時に押圧する第1内周側或いは第1外周側のいずれか一方のプレッシャプレートの半径方向における中心点よりも半径方向外方に位置している。
このように構成された本発明においては、効果的に、2速段での小動力伝達時におけるクラッチレリーズ機構の移動量に対する伝達トルク容量のゲインを、2速段での小動力伝達時におけるクラッチレリーズ機構の移動量に対する伝達トルク容量のゲインよりも高めることが出来る。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、第1及び第2のクラッチディスクのうち、少なくとも一方のクラッチディスクは、その第1或いは第2の内周側プレッシャプレートが当接する部分の摩擦特性と、その第1或いは第2の外周側プレッシャプレートが当接する部分の摩擦特性とが互いに異なり、これらの部分のうち、小動力伝達時にプレッシャプレートが当接する部分が、他方の部分より締結時にμが小さく且つ安定した係合力を有する。
このように構成された本発明においては、より確実に、クラッチレリーズ機構の移動による小動力伝達時の制御の精度を向上させることが出来る。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、小動力伝達時には、第1及び第2の各内周側プレッシャプレートのみが第1及び第2のクラッチディスクを押圧する。
このように構成された本発明においては、クラッチディスクを押圧するのが内周側プレッシャプレートのみであるので、クラッチレリーズ機構の移動量に対する伝達トルク容量のゲインを下げることが容易となり、その結果、より確実に、クラッチレリーズ機構の移動による小動力伝達時の制御の精度を向上させることが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大きな伝達トルクを確保しつつ、小動力伝達時の制御の精度を向上することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による車両用のクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図であり、クラッチが完全に解放された状態を示す図である。なお、以下に説明する実施形態の各図は、断面のハッチングを省略したものである。
この第1実施形態は、クラッチを2つ有するツインクラッチ装置となっている。先ず、図1に示すように、ツインクラッチ装置1は、その入力側に、フライホイール2を有し、このフライホイール2には、エンジン(図示せず)のクランクシャフト(エンジン出力軸)4がフライホイールロックボルト6により締結されている。フライホイール2の外周には、エンジンスタータ用リングギア3が設けられている。
【0013】
また、フライホイール2には、スプリングを有するダンパ8を介してダンパ出力部材10が連結されている。ダンパ出力部材10には、リベット12によりクラッチカバー14が取り付けられている。また、クラッチカバー14には、半径方向内方に延びるセンタープレート16が取り付けられている。クランクシャフト4、フライホイール2、ダンパ出力部材10、クラッチカバー14及びセンタープレート16は、互いに一体的に回転するようになっている。なお、ダンパ8の作用により、回転の位相差が生じることもある。
【0014】
次に、出力側には、変速機(図示せず)に回転を入力させるための第1変速機入力軸20及び第2変速機入力軸21が設けられている。入力軸21は、入力軸20の周りで延びる円筒形となっている。第1変速機入力軸20は、変速機の1速段、3速段及び5速段と、奇数段のギアに連結可能であり、第2変速機入力軸21は、変速機の2速段、4速段及び6速段と、偶数段のギアに連結可能となっている。
【0015】
各入力軸20、21には、それぞれ連結体22、23が取り付けられている。各連結体22、23には、それぞれ、第1クラッチディスク24及び第2クラッチディスク25がリベット26により取り付けられている。
【0016】
各クラッチディスク24、25は、それぞれ、第1摩擦部材28及び第2摩擦部材29を有している。第1摩擦部材28は、第1内周側摩擦部材28aと第1外周側摩擦部材28bとで構成され、第2摩擦部材29は、第2内周側摩擦部材29a及び第2外周側摩擦部材29bとで構成されている。
【0017】
次に、クラッチ装置1の入力側と出力側を連結する機構として、第1プレッシャプレート30及び第2プレッシャプレート31が設けられている。第1プレッシャプレート30は、第1内周側プレッシャプレート30a及び第1外周側プレッシャプレート30bとで構成され、第2プレッシャプレート31は、第2内周側プレッシャプレート31a及び第2外周側プレッシャプレート31bとで構成されている。
【0018】
内周側及び外周側の各プレッシャプレート30a、30b、31a、31bは、それぞれ互いの嵌合部30c、31cを有している。これらの嵌合部30c、31cでは、各プレート30aと30bとが、及び、各プレート31aと31bとが、スプライン嵌合されており、互いに相対回転はしないが、互いに軸方向(クラッチ装置1の軸方向、即ち、クランクシャフト4の軸線及び変速機入力軸20、21の軸線の方向)に移動可能に構成されている。
【0019】
また、各外周側プレッシャプレート30b、31bは、クラッチカバー14との嵌合部34、35を有し、これらの嵌合部34、35では、各外周側プレッシャプレート30b、31bがクラッチカバー14にスプライン嵌合されており、互いに相対回転はしないが、互いに軸方向に移動可能に構成されている。
【0020】
この図1は、クラッチが完全に解放された状態を示しており、この状態において各内周側プレッシャプレート30a、31aと内周側摩擦部材28a、29aとの相対距離が、各外周側プレッシャプレート30b、31bと外周側摩擦部材28b、29bとの相対距離よりも小さくなるように構成されている。
【0021】
各プレッシャプレート30a、30b、31a、31bは、それぞれ、第1ダイアフラムスプリング40及び第2ダイアフラムスプリング41により付勢されている。各ダイアフラムスプリング40、41は、それぞれ、内周側プレッシャプレート30a、31aをそれぞれ付勢する内周側スプリング部40a、41a、及び、外周側プレッシャプレート30b、31bをそれぞれ付勢する外周側スプリング部40b、41bとを有している。各スプリング部40aと40b、及び、41aと41bとは、それらの最外周縁部40c、41cを介して一体成型されている。
【0022】
これらの各スプリング部40aと40b、及び、各スプリング部41aと41bとは、それらのバネ定数が異なっている。なお、内周側スプリング40aと外周側スプリング40bとを、或いは、内周側スプリング41aと外周側スプリング41bとを別体で形成してもよい。
各ダイアフラムスプリング40、41は、スプリングシート42、43により支持されている。スプリングシート42は、上述したクラッチカバー14に形成され、スプリングシート43は、クラッチカバー14にボルト15により締結されたクラッチカバー延長部17に形成されている。
【0023】
さらに、クラッチカバー延長部17には、ピボット部18が固定されている。このピボット部18には、ダイアフラム状の第1レリーズレバー部材50及び第2レリーズレバー部材51がそれぞれ取り付けられている。
第1レリーズレバー部材50の外周縁部は、連結部材52の後縁部に当接し、この連結部材52の前縁部は、第1外周側プレッシャプレート30bに当接している。これらの構成により、レリーズレバー部材50は、第1外周側プレッシャプレート30bをフロント側に押すことが出来るようになっている。この図1に示す状態では、レリーズレバー部材50が、第1外周側プレッシャプレート30bをフロント側(図1上では左側)に押した状態となっている。
【0024】
一方、第2レリーズレバー部材51の外周縁部には、連結部材53のL字状端部が当接している。また、この連結部材53の他方のL字状端部は、第2外周側プレッシャプレート31bに形成された凹部内に受け入れられ、第2外周側プレッシャプレート31bを軸方向に移動させるようになっている。この図1に示す状態では、レバー部材51が連結部材53をリア側(図1上では右側)に押した状態である。
【0025】
各レリーズレバー部材50、51は、レリーズ機構60、61により駆動され、ピボット部18を支点に、傾けられるようになっている(後述する図3、図4参照)。各レリーズ機構60、61は、ベアリング62、ベアリングのアウターレース64、65、及び、ベアリングのインナーレース66を有している。これらのインナーレース66には、それぞれモータ(図示せず)が連結されており、レリーズ機構60、61は、これらのモータにより、個別に、軸方向に移動されるようになっている。なお、モータは、油圧装置或いは空圧装置でも良い。
【0026】
ここで、図2により、クラッチディスク24、25の各摩擦部材28a、28b、29a、29bの特性を説明する。図2は、摩擦部材のμ−V特性を示す線図である。μは摩擦係数であり、Vは、摩擦部材とフライホイール側部材(本実施形態では、センタープレート16)との回転差である。
図2に示すように、内周側摩擦部材28a、29aは、図2中Aの線図のような特性を有し、外周側摩擦部材28b、29bは、図中Bの線図のような特性を有する。
なお、V=0となるときは、摩擦部材とフライホイール側部材とが完全に締結されたときであり、最大伝達トルクの大小に影響する。つまり、V=0のときのμが大きいほど、完全締結時における伝達トルクは大きくなる。一方、摩擦部材は、V=0のときのμが大きいほど、クラッチジャダーなどの異常振動が出やすくなる、という特質も有している。
【0027】
次に、この第1実施形態では、第1内周側プレッシャプレート30aと第2内周側プレッシャプレート31aとが、互いに異なる構成となっている。即ち、中心軸(クラッチ装置1の中心軸、即ち、クランクシャフト4の中心軸線及び変速機入力軸20、21の中心軸線)から、第2内周側プレッシャプレート31aの半径方向の中心点Cまでの距離が、中心軸から、第1内周側プレッシャプレート30aの半径方向の中心点Dまでの距離よりも大きくなるように構成されている。
また、第2内周側プレッシャプレート31aの第2内周側摩擦部材29aへの当接面積が、第1内周側プレッシャプレート30aの第1内周側摩擦部材28aへの当接面積よりも大きくなるように構成されている。
【0028】
次に、図1乃至図5により、クラッチ装置1の作用効果を説明する。図3は、クラッチがクリープ締結された状態における、第1実施形態によるクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図であり、図4は、クラッチが完全に締結された状態における、第1実施形態によるクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図であり、図5は、第1実施形態のクラッチ装置におけるレリーズストロークと伝達トルク容量との関係を示す線図である。
【0029】
先ず、図3に示すように、クリープ締結時には、レリーズ機構60がフロント側に移動し、一方、レリーズ機構61がリア側に移動し、各レバー部材50、51が傾く。そのようなレバー部材50、51の傾きにより、各外周側プレッシャプレート30b、31bは、各ダイアフラムスプリング40、41の力を受けて移動する。
【0030】
このとき、上述したように、各内周側プレッシャプレート30a、31aと各内周側摩擦部材28a、29aとの相対距離が、各外周側プレッシャプレート30b、31bと各外周側摩擦部材28b、29bとの相対距離よりも小さくなっているので、そのような移動により、先ず、各内周側プレッシャプレート30a、31aが、各内周側摩擦部材28a、29aに当接すると共に押圧する。一方、各外周側プレッシャプレート30b、31bは、外周側摩擦部材28b、29bには当接しない。
これらの結果、各クラッチディスク24、25の各内周側摩擦部材28a、29aが、センタープレート16と各内周側プレッシャプレート30a、31aとに挟持され、このとき、互いに相対回転可能なクリープ状態となる。
【0031】
ここで、クリープ時には、センタープレート416(クラッチカバー14)或いは各内周側プレッシャプレート230a、231aと、摩擦部材428a、429aとが相対回転する。従って、大きなトルク伝達量を得るよりも、クラッチジャダーを抑制したい。このような場合でも、第1実施形態では、図2により上述したように、各内周側摩擦部材428a、429aは図2中Aのような特性を有するような材料で作られているので、クラッチジャダーを抑制することが出来る。
【0032】
次に、図4に示すように、完全締結時には、各プレッシャプレート30a、30b、31a、31bが、それぞれ、各摩擦部材28a、28b、29a、29bに当接すると共に押圧する。それらの結果、クラッチディスク24、25の各摩擦部材28a、28b、29a、29bが、センタープレート16と各プレッシャプレート30a、30b、31a、31bとに挟持され、このとき、センタープレート16とクラッチディスク24、25とが相対回転せず完全に締結される完全締結状態となる。ここで、図2により説明したように、各外周側摩擦部材428b、429bが図2中Bのような特性を有するような材料で作られているので、大きな伝達トルクを得ることが出来る。
【0033】
以上説明したように、第1実施形態におけるクラッチ装置1は、図1に示す完全解放時、図3に示すクリープ時、図4に示す完全締結時のそれぞれの状態をとりうる。従って、図5に示すように、レリーズ機構60のストローク(図5の横軸)に対し、第1内周側摩擦部材28a或いは第2内周側摩擦部材29aのみがセンタープレート16に当接するクリープ制御域と、その域を超えたレリーズストローク時における、内周側と外周側の両方の摩擦部材(28aと28b、或いは、29aと29b)がセンタープレート16に当接する締結状態とで、伝達トルク容量のゲイン特性が異なるようにすることが出来る。即ち、クリープ域では傾きが小さく(ゲインが小さくなる)、クリープ域を脱すると傾きが大きくなる(ゲインが大きくなる)。
【0034】
ここで、上述したように、第1実施形態では、第2内周側摩擦部材29aが設けられた第2クラッチディスク25は、第2速段に連結可能な第2変速機入力軸21に取り付けられ、第1内周側摩擦部材28aが設けられた第1クラッチディスク24は、第1速段に連結可能な第1変速機入力軸20に取り付けられている。
【0035】
そして、上述したように、中心軸(クラッチ装置1の中心軸、即ち、クランクシャフト4の中心軸線及び変速機入力軸20、21の中心軸線)から、第2内周側プレッシャプレート31aの半径方向の中心点Cまでの距離が、中心軸から、第1内周側プレッシャプレート30aの半径方向の中心点Dまでの距離よりも大きくなるように構成されており、また、第2内周側プレッシャプレート31aの第2内周側摩擦部材29aへの当接面積が、第1内周側プレッシャプレート30aの第1内周側摩擦部材28aへの当接面積よりも大きくなるように構成されている。
【0036】
従って、1速段におけるクリープ域でのゲインよりも、2速段におけるゲインが高くなるように設定される。従って、図5に示すように、1速段における傾きよりも、2速段における傾きの方が大きくなる。このようにして、より大きな伝達トルク容量が必要となる2速段でのクリープ域において、有効に伝達トルク容量を確保することが出来る。
【0037】
なお、クリープ時に、摩擦部材28a、28bの全面を当接させるような従来技術においては、図5中破線で示すような特性となり、クリープ制御域におけるレリーズストロークが小さくなってしまい、クリープ制御性が必ずしも良好とは言えない。一方、第1実施形態によれば、図5の縦軸に対して示した、1速段のクリープ域、或いは、2速段のクリープ域において、従来のもの(破線で示すもの)よりも、レリーズ機構60、61のストロークの量を大きくとることが出来、クリープの制御性を高めることが出来る。
【0038】
次に、全ての摩擦部材28a、28b、29a、29bがセンタープレート16に当接する領域(完全締結時)では、全ての摩擦部材28a、28b、29a、29bがセンタープレート16に当接すること、及び、各外周側摩擦部材28b、29bに図2中Bのような特性を持たせていることなどにより、エンジンの最大トルクを上回る伝達トルク容量を確実に得ることが出来る。
このように、第1実施形態においては、良好なクリープ制御性と大きな伝達トルク容量との両立を図ることが出来る。
【0039】
次に、図6により、本発明の第2実施形態を説明する。図6は、本発明の第2実施形態による車両用のクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図である。
この第2実施形態は、上述した第1実施形態に対し、摩擦部材の構成が異なるのみで、他の構成は同様である。ここでは、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図6に示すように、第2実施形態では、各摩擦部材128、129が、それぞれ、内周側プレッシャプレート30a、31a及び外周側プレッシャプレート30b、31bの領域にわたって一体化されている。この場合、摩擦部材128、129は、図2中Aのような特性を示すものとなっている。
【0040】
このような第2実施形態においても、クリープ時には、各内周側プレッシャプレート30a、31aのみが各クラッチディスク124、125の摩擦部材128、129を押圧するようになっている。従って、各摩擦部材128、129は、それらの内周側プレッシャプレート30a、31aに対応する領域のみで、センタープレート16とプレッシャプレート30a、31aとに挟持される。
【0041】
一方、完全締結時には、全てのプレッシャプレート30a、30b、31a、31bが各摩擦部材128、129を押圧する。このような構成により、第2実施形態においても、第1実施形態と同様にクリープの制御性を高めることが出来ると共に、図5のように、2段階でトルク伝達容量のゲインが変化する特性を得ることが出来る。
【0042】
次に、図7により、本発明の第3実施形態を説明する。図7は、本発明の第3実施形態による車両用のクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図であり、クラッチが完全に解放された状態を示す図である。この第3実施形態は、第1実施形態に対し、摩擦部材の構成、プレッシャプレートの構成及びレリーズ部の構成が異なるのみで、他の構成は同様である。ここでは、主に第1実施形態と異なる点について説明する。
図7に示すように、クラッチ装置201は、第1実施形態と同様に、クラッチカバー14には、半径方向内方に延びるセンタープレート16が取り付けられている。また、第1実施形態と同様に、出力側には、奇数段のギアに連結可能な第1変速機入力軸20及び偶数段のギアに連結可能な第2変速機入力軸21が設けられている。
各入力軸20、21には、それぞれ連結体22、23が取り付けられている。各連結体22、23には、それぞれ、第1クラッチディスク224及び第2クラッチディスク225が取り付けられている。
【0043】
第1クラッチディスク224は、第1内周側摩擦部材228aと第1外周側摩擦部材228bとを有し、第2クラッチディスク225は、第2内周側摩擦部材229a及び第2外周側摩擦部材229bとを有している。
【0044】
次に、クラッチ装置201の入力側と出力側を連結する機構として、第1プレッシャプレート230は、第1内周側プレッシャプレート230a及び第1外周側プレッシャプレート230bとで構成され、第2プレッシャプレート231は、第2内周側プレッシャプレート231a及び第2外周側プレッシャプレート231bとで構成されている。内周側及び外周側の各プレッシャプレート230a、230b、231a、231bは、それぞれ、互いに相対回転はしないが、互いに軸方向に移動可能に構成されている。
【0045】
この図7は、クラッチが完全に解放された状態を示しており、この状態において、第1内周側プレッシャプレート230aと、第1内周側摩擦部材228aとの相対距離が、第1外周側プレッシャプレート230bと、第1外周側摩擦部材228bとの相対距離よりも小さくなるように構成されている。また、この第3実施形態では、第2外周側プレッシャプレート231bと、第2外周側摩擦部材229bとの相対距離が、第2内周側プレッシャプレート231aと、第2内周側摩擦部材229aとの相対距離よりも小さくなるように構成されている。この第3実施形態では、第1内周側プレッシャプレート230a及び第2外周側プレッシャプレート231bが、クリープ制御に用いられる。
【0046】
さらに、中心軸(クラッチ装置1の中心軸、即ち、クランクシャフト4の中心軸線及び変速機入力軸20、21の中心軸線)から、第2外周側プレッシャプレート231bの半径方向の中心点Eまでの距離が、中心軸から、第1内周側プレッシャプレート230aの半径方向の中心点Fまでの距離よりも大きくなるように構成されている。
また、第2外周側プレッシャプレート231aの第2外周側摩擦部材229bへの当接面積が、第1内周側プレッシャプレート230aの第1内周側摩擦部材228aへの当接面積よりも大きくなるように構成されている。
【0047】
一方、摩擦部材は、そのようなプレッシャプレートの構成に対応して、第1内周側摩擦部材228a及び第2外周側摩擦部材229bは、上述した図2中のAの線図のような特性を有し、第1外周側摩擦部材228b及び第2内周側摩擦部材229aは、図2中Bの線図のような特性を有するように構成されている。
【0048】
各プレッシャプレート230a、230b、231a、231bは、それぞれ、第1実施形態と同様に、第1ダイアフラムスプリング40及び第2ダイアフラムスプリング41により付勢されている。
【0049】
この第3実施形態では、クラッチカバー延長部17にピボット部18が固定され、このピボット部18には、ダイアフラム状の第1レリーズレバー部材250が取り付けられている。第1レリーズレバー部材250は、第1実施形態と同様に、レリーズ機構260に接続されている。そして、第1実施形態と同様に、連結部材252を介して、第1外周側プレッシャプレート230bをフロント側に押すことが出来るようになっている。
【0050】
他方のレリーズ機構261は、この第3実施形態では、そのベアリングアウターレース265が、直接、第2内周側プレッシャプレート231aを移動させるようになっている。
【0051】
次に、第3実施形態の作用効果を説明する。
この第3実施形態においては、図示しないが、クリープ締結時には、レリーズ機構260及びレリーズ機構261が、共に、フロント側に移動する。そして、各プレッシャプレート230a、230b、231a、231bは、各ダイアフラムスプリング40、41の力を受けて移動する。
【0052】
このとき、上述したように、第1内周側プレッシャプレート230aと、第1内周側摩擦部材228aとの相対距離が、第1外周側プレッシャプレート230bと、第1外周側摩擦部材228bとの相対距離よりも小さくなるように構成されている。また、この第3実施形態では、第2外周側プレッシャプレート231bと、第2外周側摩擦部材229bとの相対距離が、第2内周側プレッシャプレート231aと、第2内周側摩擦部材229aとの相対距離よりも小さくなるように構成されている。
【0053】
従って、レリーズ機構260、261の上述した移動により、先ず、第1内周側プレッシャプレート230aと、第2外周側プレッシャプレート231bとが、それぞれ、第1内周側摩擦部材228aと、第2外周側摩擦部材229bとに当接すると共に押圧する。一方、第1外周側プレッシャプレート230b及び第2内周側プレッシャプレート231aは、各摩擦部材228b、229aには当接しない。
これらの結果、各クラッチディスク224、225の各摩擦部材228a、229bが、センタープレート16と各プレッシャプレート230a、231bとに挟持され、このとき、互いに相対回転可能なクリープ状態となる。
【0054】
この第3実施形態においては、クリープ時に当接する第1内周側摩擦部材228a及び第2外周側摩擦部材229bが、上述した図2中のAの線図のような特性を有しているので、クラッチジャダーを抑制することが出来る。
【0055】
次に、完全締結時には、全てのプレッシャプレート230a、230b、231a、231bが、それぞれ、各摩擦部材228a、228b、229a、229bに当接すると共に押圧する。それらの結果、クラッチディスク224、225の各摩擦部材228a、228b、229a、229bが、センタープレート16と各プレッシャプレート230a、230b、231a、231bとに挟持され、このとき、センタープレート16とクラッチディスク224、225とが相対回転せず完全に締結される完全締結状態となる。ここで、上述したように、第1外周側摩擦部材228b及び第2内周側摩擦部材229aは、図2中Bの線図のような特性を有するように構成されているので、大きな伝達トルクを得ることが出来る。
【0056】
以上説明したように、第3実施形態におけるクラッチ装置201は、完全解放時(図7)、クリープ時、完全締結時のそれぞれの状態をとりうる。従って、上述した図5と同様に、レリーズ機構60のストローク(図5の横軸)に対し、第1内周側摩擦部材228a、或いは、第2外周側摩擦部材229bのみがセンタープレート16に当接するクリープ制御域と、その域を超えたレリーズストローク時における、内周側と外周側の両方の摩擦部材(228aと228b、或いは、229aと229b)がセンタープレート16に当接する締結状態とで、伝達トルク容量のゲイン特性が異なるようにすることが出来る。
【0057】
ここで、上述したように、第3実施形態においても、第2外周側摩擦部材229bが設けられた第2クラッチディスク225は、第2速段に連結可能な第2変速機入力軸21に取り付けられ、第1内周側摩擦部材228aが設けられた第1クラッチディスク224は、第1速段に連結可能な第1変速機入力軸20に取り付けられている。
【0058】
そして、上述したように、中心軸から第2外周側プレッシャプレート231bの半径方向の中心点Eまでの距離が、中心軸から第1内周側プレッシャプレート230aの半径方向の中心点Fまでの距離よりも大きくなるように構成されている。また、第2外周側プレッシャプレート231aの第2外周側摩擦部材229bへの当接面積が、第1内周側プレッシャプレート230aの第1内周側摩擦部材228aへの当接面積よりも大きくなるように構成されている。
【0059】
従って、1速段におけるクリープ域でのゲインよりも、2速段におけるゲインが高くなるように設定される。従って、上述した第1実施形態と同様により大きな伝達トルク容量が必要となる2速段でのクリープ域において、有効に伝達トルク容量を確保することが出来る。また、第3実施形態においても、図5の縦軸に対して示した、1速段のクリープ域、或いは、2速段のクリープ域において、従来のもの(破線で示すもの)よりも、レリーズ機構60、61のストロークの量を大きくとることが出来、クリープの制御性を高めることが出来る。
【0060】
次に、全ての摩擦部材28a、28b、29a、29bがセンタープレート16に当接する領域(完全締結時)では、全ての摩擦部材28a、28b、29a、29bがセンタープレート16に当接すること、及び、第1外周側摩擦部材228b及び第2内周側摩擦部材229aに図2中Bのような特性を持たせていることなどにより、エンジンの最大トルクを上回る伝達トルク容量を確実に得ることが出来る。
このように、第2実施形態においても、良好なクリープ制御性と大きな伝達トルク容量との両立を図ることが出来る。
【0061】
次に、図8により、本発明の第4実施形態を説明する。図8は、本発明の第4実施形態による車両用のクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図である。
この第4実施形態は、上述した第3実施形態に対し、摩擦部材の構成が異なるのみで、他の構成は同様である。ここでは、第3実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図8に示すように、第4実施形態では、各摩擦部材328、329が、それぞれ、内周側プレッシャプレート230a、231a及び外周側プレッシャプレート230b、231bの領域にわたって一体化されている。この場合、摩擦部材328、329は、図2中Aのような特性を示すものとなっている。
【0062】
このような第4実施形態においても、クリープ時には、第1内周側プレッシャプレート230a及び第2外周側プレッシャプレート231bのみが各クラッチディスク324、325の摩擦部材328、329を押圧するようになっている。従って、各摩擦部材328、329は、それらの内周側プレッシャプレート230a、231bに対応する領域のみで、センタープレート16とプレッシャプレート230a、231bとに挟持される。
【0063】
一方、完全締結時には、全てのプレッシャプレート230a、230b、231a、231bが各摩擦部材328、329を押圧する。このような構成により、第4実施形態においても、第3実施形態と同様にクリープの制御性を高めることが出来ると共に、図5のように、2段階でトルク伝達容量のゲインが変化する特性を得ることが出来る。
【0064】
なお、第3及び第4実施形態において、第1外周側プレッシャプレー230b及び第2内周側プレッシャプレート231aをクリープ時に用いるようにしても良い。この場合、第2内周側プレッシャプレート231aが第2内周側摩擦部材229aに当接する面積を、第1外周側プレッシャプレー230bが第1外周側摩擦部材228bに当接する面積よりも大きくすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態による車両用のクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図であり、クラッチが完全に解放された状態を示す図である。
【図2】摩擦部材のμ−V特性を示す線図である。
【図3】クラッチがクリープ締結された状態における、第1実施形態によるクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図である。
【図4】クラッチが完全に締結された状態における、第1実施形態によるクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図である。
【図5】第1実施形態のクラッチ装置におけるレリーズストロークと伝達トルク容量との関係を示す線図である。
【図6】本発明の第2実施形態による車両用のクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図であり、クラッチが完全に解放された状態を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態による車両用のクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図であり、クラッチが完全に解放された状態を示す図である。
【図8】本発明の第4実施形態による車両用のクラッチ装置の全体的な構成を示す概略図であり、クラッチが完全に解放された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 クラッチ装置
4 エンジン出力軸
14 クラッチカバー
16 センタープレート
20 第1変速機入力軸
21 第2変速機入力軸
24 第1クラッチディスク
25 第2クラッチディスク
28 第1摩擦部材
28a 第1内周側摩擦部材
28b 第1外周側摩擦部材
29 第2摩擦部材
29a 第2内周側摩擦部材
29b 第2外周側摩擦部材
30 第1プレッシャプレート
30a 第1内周側プレッシャプレート
30b 第1外周側プレッシャプレート
31 第1プレッシャプレート
31a 第1内周側プレッシャプレート
31b 第1外周側プレッシャプレート
40 第1ダイアフラムスプリング
41 第2ダイアフラムスプリング
50 第1レリーズレバー部材
51 第2レリーズレバー部材
60 第1レリーズ機構
61 第2レリーズ機構
128、129 摩擦部材
224、225 クラッチディスク
228、229 摩擦部材
230、231 プレッシャプレート
260、261 レリーズ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の出力軸と一体的に回転するフライホイールと、
2つのグループからなる変速段のうち、1速段を含む第1グループ内のいずれかの変速段を選択するための第1変速機入力軸と、2速段を含む第2グループ内のいずれかの変速段を選択するための第2変速機入力軸と、
上記第1変速機入力軸に、軸方向摺動可能であるが相対回転しないように取り付けられた第1クラッチディスクと、
上記第2変速機入力軸に、軸方向摺動可能であるが相対回転しないように取り付けられた第2クラッチディスクと、
上記フライホイールと一体的に回転し上記第1クラッチディスク及び上記第2クラッチディスクの間に設けられたセンタープレートと、
上記センタープレートと共に上記第1クラッチディスクを挟持して、上記第1クラッチディスクを上記センタープレートに係合させるための押圧荷重を上記第1クラッチディスクに付与する第1内周側プレッシャプレートと、
この第1内周側プレッシャプレートの外周側に設けられ、上記第1内周側プレッシャプレートとは相互に独立して軸方向に移動可能であり、上記センタープレートと共に上記第1クラッチディスクを挟持して、上記第1クラッチディスクを上記センタープレートに係合させるための押圧荷重を上記第1クラッチディスクに付与する第1外周側プレッシャプレートと、
上記センタープレートと共に上記第2クラッチディスクを挟持して、上記第2クラッチディスクを上記センタープレートに係合させるための押圧荷重を上記第2クラッチディスクに付与する第2内周側プレッシャプレートと、
この第2内周側プレッシャプレートの外周側に設けられ、上記第2内周側プレッシャプレートとは相互に独立して軸方向に移動可能であり、上記センタープレートと共に上記第2クラッチディスクを挟持して、上記第2クラッチディスクを上記センタープレートに係合させるための押圧荷重を上記第2クラッチディスクに付与する第2外周側プレッシャプレートと、を有し、
内周側或いは外周側の各プレッシャプレートのどちらか一方のみが、小動力伝達時に上記第1或いは第2のクラッチディスクを押圧するようにされ、
小動力伝達時に上記第2のクラッチディスクを押圧する第2内周側或いは第2外周側のいずれか一方のプレッシャプレートは、小動力伝達時に上記第1のクラッチディスクを押圧する第1内周側或いは第1外周側のいずれか一方のプレッシャプレートよりも、小動力伝達時のトルク容量が大きくなるように構成されていることを特徴とする車両用のクラッチ装置。
【請求項2】
2速段における小動力伝達時のトルク容量が1速段における小動力伝達時のトルク容量よりも大きくなるように、上記第2クラッチディスクに対して小動力伝達時に押圧する上記第2内周側或いは上記第2外周側のいずれか一方のプレッシャプレートの上記第2クラッチディスクへの当接面積が、上記第1クラッチディスクに対して小動力伝達時に押圧する上記第1内周側或いは上記第1外周側のいずれか一方のプレッシャプレートの上記第1クラッチディスクへの当接面積より大きくされている請求項1記載の車両用のクラッチ装置。
【請求項3】
2速段における小動力伝達時のトルク容量が1速段における小動力伝達時のトルク容量よりも大きくなるように、上記第2クラッチディスクに対して小動力伝達時に押圧する上記第2内周側或いは上記第2外周側のいずれか一方のプレッシャプレートの半径方向における中心点が、上記第1クラッチディスクに対して小動力伝達時に押圧する上記第1内周側或いは上記第1外周側のいずれか一方のプレッシャプレートの半径方向における中心点よりも半径方向外方に位置している請求項1記載の車両用のクラッチ装置。
【請求項4】
上記第1及び第2のクラッチディスクのうち、少なくとも一方のクラッチディスクは、その上記第1或いは第2の内周側プレッシャプレートが当接する部分の摩擦特性と、その上記第1或いは第2の外周側プレッシャプレートが当接する部分の摩擦特性とが互いに異なり、これらの部分のうち、小動力伝達時にプレッシャプレートが当接する部分が、他方の部分より締結時にμが小さく且つ安定した係合力を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用のクラッチ装置。
【請求項5】
小動力伝達時には、上記第1及び第2の各内周側プレッシャプレートのみが上記第1及び第2のクラッチディスクを押圧する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用のクラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−8383(P2008−8383A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178557(P2006−178557)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】