説明

車両用ウインドウサッシ

【課題】車室外側及び車室内側の気圧差が大きい場合であっても、外部空気の流入を阻止しつつ、車室内側に浸入した水を乗員の目に触れることなく十分な高さまで溜めて排出することができる車両用ウインドウサッシを提供する。
【解決手段】下サッシ11は、ウインドウガラスG1,G2の下端部をそれぞれ摺動可能に支持するサッシ部21と、該サッシ部21の車室内側に並設された排水路22と、該排水路22の下側に配置された中空の貯水部23とを一体的に備え、サッシ部21及び排水路22の間を連通する連通部26と、排水路22及び貯水部23の間を連通する連通孔27と、貯水部23に形成され車室外側に開口する排水孔28とを有する。排水孔28を閉塞可能に設けられ、該排水孔28を介した外部空気の流入を阻止するとともに、貯水部23に溜まった水を排水孔28を介して排出可能な逆流防止弁29を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ウインドウサッシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ウインドウサッシとしては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。図8は、特許文献1に記載された車両用ウインドウサッシを示す横断面図である。同図に示すように、この車両用ウインドウサッシの備える下側フレーム90は、複数のウインドウガラスG1,G2を摺動可能に支持するサッシ部91と、車室外側に開口する排水通路92とを一体的に備えている。そして、サッシ部91の車室内側のウインドウガラスG1を案内するレール部93及び排水通路92間を連通する排水孔94が形成されるとともに、該排水孔94を閉塞可能な逆流防止弁95が取着されている。これにより、レール部93に溜まった雨水等の水をその自重によって逆流防止弁95を開放しつつ排水孔94から排水通路92を介して車室外側に排出するとともに、車室外側及び車室内側の気圧差に基づく外部空気(風)の流入を逆流防止弁95にて阻止する。
【特許文献1】特開2006−341822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1では、例えば豪雨での高速走行時など、厳しい車両環境下にあるときに逆流防止弁95による前述の両機能を成立し得ないことがある。具体的には、車室外側及び車室内側の著しい気圧差に基づき逆流防止弁95による排水孔94の閉塞状態が長時間に亘って継続されると、その間にレール部93に浸入した水が逃げ場なく溜まり続けることで、最終的にはレール部93から室内側に溢れ出る可能性がある。なお、レール部93(サッシ部91)は乗員の目に触れる部分であることから、十分な高さまで水を溜めるにも自ずと限界があり、仮に溜め得たとしてもこの水が乗員の目に触れることで徒に不安を煽ることになる。
【0004】
本発明の目的は、車室外側及び車室内側の気圧差が大きい場合であっても、外部空気の流入を阻止しつつ、車室内側に浸入した水を乗員の目に触れることなく十分な高さまで溜めて排出することができる車両用ウインドウサッシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ボデーに形成された開口部を開閉する複数のウインドウガラスの下端部をそれぞれ摺動可能に支持するサッシ部と、該サッシ部の車室内側に並設された排水路と、該排水路の下側に配置された中空の貯水部とを一体的に備え、前記サッシ部及び前記排水路の間を連通する連通部と、前記排水路及び貯水部の間を連通する連通孔と、前記貯水部に形成され車室外側に開口する排水孔とを有するフレームと、前記排水孔を閉塞可能に設けられ、該排水孔を介した外部空気の流入を阻止するとともに、前記貯水部に溜まった水を前記排水孔を介して排出可能な逆流防止弁とを備えたことを要旨とする。
【0006】
同構成によれば、前記サッシ部に下端部が摺動可能に支持される前記ウインドウガラスは、車室外側及び車室内側の気圧の境界位置をなすことで、前記サッシ部の車室内側に並設された前記排水路や、前記逆流防止弁にて前記排水孔の閉塞される前記貯水部には車室内側の気圧が保たれる。そして、前記ウインドウガラスの車室内側で前記サッシ部内に浸入した水は、前記連通部を介して前記排水路に排出されるとともに、前記連通孔を介して前記貯水部に排出される。そして、前記貯水部に十分な高さの水が溜まると、該水はその自重によって、外部空気に押される前記逆流防止弁に抗して前記排水孔から排出される。この場合、前記貯水部は、例えば前記サッシ部のように乗員の目に触れることなく十分な高さまで水を溜めることができるため、例えば高速走行時など車室外側及び車室内側の気圧差が大きい場合であっても、前記貯水部に溜まった水を前記逆流防止弁に抗して前記排水孔から排出することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ウインドウサッシにおいて、前記連通部は、前記サッシ部及び前記排水路の間に長手方向全長に亘って形成されていることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、前記フレームが軽金属等の押出材からなる場合、押出成形時に前記連通部を同時に形成することができ、製造工数を削減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、車室外側及び車室内側の気圧差が大きい場合であっても、外部空気の流入を阻止しつつ、車室内側に浸入した水を乗員の目に触れることなく十分な高さまで溜めて排出することができる車両用ウインドウサッシを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用ウインドウサッシを車両の外側からみた正面図である。同図に示すように、この車両用ウインドウサッシは、車両ボデー(図示略)の開口部を区画する態様で矩形状に成形されており、水平方向に延びるフレームとしての下サッシ11及び上サッシ12と、鉛直方向に延びる2本の縦サッシ13,14とを備えて構成される。そして、下サッシ11及び上サッシ12には、引き違いで開口部を開閉する2枚のウインドウガラスG1,G2の下端部及び上端部がそれぞれ摺動自在に支持されている。なお、各サッシ11〜14は、例えばアルミニウム合金などの軽金属の押出材からなり、基本的に長手方向に一定断面を有する。そして、例えば下サッシ11の両端は、縦サッシ13,14によって水密的に閉塞されている。
【0011】
次に、下サッシ11について説明する。図2は、図1の矢印A方向からみた平面図であり、図3(a)(b)は、図1(及び図2)のB−B線及びC−C線に沿った断面図である。同図に示すように、下サッシ11は、上側に開口するE字断面形状を有するサッシ部21と、該サッシ部21の車室内側に並設された排水路22と、該排水路22の下側に配置された中空の貯水部23とを一体的に備えている。
【0012】
サッシ部21は、短手方向中央部に立設された隔壁21aを挟んでその車室内側及び車室外側にそれぞれU字断面形状の一対のレール部21b,21cを形成する。なお、図2に示すように、両レール部21b,21c間は、隔壁21aの長手方向中央部に形成された切り欠き21dを介して連通している。この切り欠き21dには、ウインドウガラスG1,G2の合わせ面に水密的に接触するシール部材15が設置される。
【0013】
また、レール部21b,21c(サッシ部21)には、前記シール部材15を避けて、ウインドウガラスG1,G2の摺動を気密的及び水密的に案内するガラスラン16が収容されている。つまり、ウインドウガラスG1,G2の下面は、前記シール部材15の位置を除いてガラスラン16に密着している。従って、ウインドウガラスG1,G2は、全閉状態において車室外側及び車室内側の気圧の境界位置をなすものの、切り欠き21dを通じてレール部21b(ガラスラン16)のウインドウガラスG1よりも車室内側への水の浸入を許すことになる。
【0014】
さらに、下サッシ11は、サッシ部21及び排水路22の間を区画する隔壁11aの下部を水平方向に連通する連通部26を有する。この連通部26は、下サッシ11の押出成形に合わせて形成されるもので、長手方向全長に亘って開口する。一方、ガラスラン16の排水路22側の側壁下部には、前記連通部26に臨んで開口する孔16aが形成されている。従って、ガラスラン16(レール部21b)においてウインドウガラスG1よりも車室内側に浸入した水は、孔16a及び連通部26を介して排水路22に排出可能である。ウインドウガラスG1,G2の全閉状態では、排水路22には、車室内側の気圧が保持される。
【0015】
また、下サッシ11は、排水路22及び貯水部23の間を区画する隔壁11bを高さ方向に貫通してこれらの間を連通する連通孔27を有する。従って、排水路22に排出された水は、連通孔27を介して貯水部23に排出可能である。ウインドウガラスG1,G2の全閉状態では、貯水部23には、車室内側の気圧が保持される。なお、貯水部23は、断面矩形状の内部空間を有しており、前記隔壁21aから下向きに立ち下がる側壁部23aにおいて車室外側に面している。従って、貯水部23の内部空間は、レール部21bの下側まで広がっており、その高さも十分な水を溜め得るように設定されている。
【0016】
さらに、下サッシ11は、貯水部23の底壁部23bに連続して車室外側に延出するとともにその先端部が下側に屈曲されてなる取付片11cを有する。下サッシ11は、取付片11cにおいて、例えば接着剤により車両ボデーの部分Bに気密的及び水密的に接合されており、これにより下サッシ11(底壁部23b等)の下側が車室外側から隔てられている。
【0017】
前記側壁部23a下部には、水平方向に貫通する排水孔28が形成されるとともに、該排水孔28を閉塞可能な逆流防止弁29が貼着されている。図4に示すように、逆流防止弁29は、略四角形の樹脂製のシート材からなり、上端部に取着された接着剤30により前記排水孔28の上縁部に車室外側から接着されている。つまり、逆流防止弁29は、排水孔28の上縁部に片持ち支持で取着されている。そして、逆流防止弁29は、車室外側から排水孔28を覆うように閉塞することで、該排水孔28を介した外部空気(風)の流入を阻止する。あるいは、逆流防止弁29は、貯水部23に十分な高さまで水が溜まると、該水の自重で押されることで外部空気に抗して前記排水孔28を開放し該排水孔28を介して水を排出する。
【0018】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、サッシ部21に下端部が摺動可能に支持されるウインドウガラスG1,G2は、車室外側及び車室内側の気圧の境界位置をなすことで、サッシ部21の車室内側に並設された排水路22や、逆流防止弁29にて排水孔28の閉塞される貯水部23には車室内側の気圧が保たれる。そして、ウインドウガラスG1の車室内側でサッシ部21(レール部21b、ガラスラン16)内に浸入した水は、連通部26を介して排水路22に排出されるとともに、連通孔27を介して貯水部23に排出される。そして、貯水部23に十分な高さの水が溜まると、該水はその自重によって、外部空気に押される逆流防止弁29に抗して排水孔28から排出される。この場合、貯水部23は、例えばサッシ部21のように乗員の目に触れることなく十分な高さまで水を溜めることができるため、例えば高速走行時など車室外側及び車室内側の気圧差が大きい場合であっても、前記貯水部23に溜まった水を逆流防止弁29に抗して排水孔28から排出することができる。
【0019】
(2)本実施形態では、連通部26がサッシ部21及び排水路22の間(隔壁11a)に長手方向全長に亘って形成されていることで、下サッシ11の押出成形時に連通部26を同時に形成することができ、製造工数を削減することができる。そして、コストを削減することができる。
【0020】
(3)本実施形態では、逆流防止弁29は、排水孔28の上縁部に車室外側から片持ち支持で取着されたシート材であることで、該逆流防止弁29を極めて簡易な構造にすることができ、ひいてはコストを削減することができる。加えて、下サッシ11(側壁部23a)側に従来形態のような設計変形を行うことなく、逆流防止弁29を取着することができる。また、逆流防止弁29を下サッシ11に極めて簡易に取着できるため、組付工数を低減してコストを削減することができる。
【0021】
(4)本実施形態では、ウインドウガラスG1の車室内側でレール部21b(ガラスラン16)内に浸入した水は、排水路22等に速やかに排出されることで、レール部21b等に水が溜まり過ぎて該レール部21bから溢れ出たりすることを回避できる。
【0022】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、図5に示すように、貯水部23の壁部23aを、レール部21bの下側まで移動して内部空間を広がらないようにして排水路22の下側に留めてもよい。あるいは、意匠性の制約や周辺部材との干渉がなければ、図6に示すように、貯水部23の壁部23aを、レール部21cの下側まで移動して内部空間を更に広げてもよい。
【0023】
・前記実施形態において、図7に示すように、貯水部23の底壁部23bの少なくとも一部が車両ボデー(B)に面し、取付片11c及び車両ボデー(B)並びに底壁部23bから形成される空間に排水することもでき、この場合には、該底壁部23bに排水孔28を形成してもよい。ただし、この場合には、取付片11cと車両ボデー(B)との間には排水を行うための空間が必要となる。
【0024】
この他、図示はしないが、例えば、貯水部23の室内側の縦壁部23c(図7参照)又はこの周辺部と車両ボデー(B)とを当接させて内部空間を形成し、この空間に貯水部23から排水を行い、取付片11cと車両ボデー(B)との間に排出可能にしてもよい。
【0025】
・前記実施形態において、意匠性の制約がなければ、隔壁11aや排水路22の上壁を割愛してもよい。つまり、レール部21b及び排水路22の両内部空間を連続させる態様で連通部を構成してもよい。
【0026】
・前記実施形態において、連通孔27の個数は任意であるが、長手方向に複数配設することが好ましい。
・前記実施形態において、排水孔28及び逆流防止弁29を複数組配設してもよい。
【0027】
・前記実施形態において、逆流防止弁29を、例えば排水孔28の横側の縁部に取着してもよい。
・前記実施形態において、逆流防止弁29の構造は一例であり、同様の機能を有する適宜の圧力制御弁を採用してもよい。
【0028】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
・請求項1又は2に記載の車両用ウインドウサッシにおいて、
前記逆流防止弁は、前記排水孔の縁部に車室外側から片持ち支持で取着されたシート材であることを特徴とする車両用ウインドウサッシ。同構成によれば、前記逆流防止弁を極めて簡易な構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示す正面図。
【図2】図1の矢印A方向からみた平面図。
【図3】(a)(b)は、図1のA−A線及びB−B線に沿った断面図。
【図4】逆流防止弁を示す斜視図。
【図5】本発明の変形形態を示す断面図。
【図6】本発明の変形形態を示す断面図。
【図7】本発明の変形形態を示す断面図。
【図8】従来形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0030】
G1,G2…ウインドウガラス、11…下サッシ(フレーム)、21…サッシ部、22…排水路、23…貯水部、26…連通部、27…連通孔、28…排水孔、29…逆流防止弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボデーに形成された開口部を開閉する複数のウインドウガラスの下端部をそれぞれ摺動可能に支持するサッシ部と、該サッシ部の車室内側に並設された排水路と、該排水路の下側に配置された中空の貯水部とを一体的に備え、前記サッシ部及び前記排水路の間を連通する連通部と、前記排水路及び前記貯水部の間を連通する連通孔と、前記貯水部に形成され車室外側に開口する排水孔とを有するフレームと、
前記排水孔を閉塞可能に設けられ、該排水孔を介した外部空気の流入を阻止するとともに、前記貯水部に溜まった水を前記排水孔を介して排出可能な逆流防止弁とを備えたことを特徴とする車両用ウインドウサッシ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ウインドウサッシにおいて、
前記連通部は、前記サッシ部及び前記排水路の間に長手方向全長に亘って形成されていることを特徴とする車両用ウインドウサッシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−286306(P2009−286306A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142200(P2008−142200)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】