説明

車両用シートのスライド構造および該構造を有する車両用シート

【課題】可動外側レールと固定内側レールとの間に設けられるボールの脱落を有効に防止することが可能な車両用シートのスライド構造および該スライド構造を備えた車両用シートを提供する。
【解決手段】乗員用ベルトバックルが固定される可動外側レール418と、可動外側レール418を固定内側レール416に対して係止する係止手段とを有し、固定内側レール416および可動外側レール418がいずれも、車両の高さ方向に縦長断面となるように配置され、ボールを前後方向に案内するための案内溝を形成し、可動外側レール補強用ブラケット500が、可動外側レール418の車両後方側の端部に設けられ、該可動外側レール補強用ブラケット500には、その下面に可動外側レール418の変形防止用の補強ビードが設けられ、固定内側レールの車両後方側の端部には、固定内側レール変形防止用ブラケットが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのスライド構造および該構造を有する車両用シートに関し、より詳細には、車両が前突あるいは後突する際、可動外側レールと固定内側レールとの間に設けられたボールの脱落を防止することが可能な車両用シートのスライド構造および該構造を有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クッションシートのスライド構造に用いられるレールとして、いわゆる横長断面に配置されたレールが採用されてきた。
従来のクッションシートのスライド構造について説明すれば、車床に固定され、車両の前後方向に延設された固定内側レールと、固定内側レールに外嵌し、固定内側レールに対して車両の前後方向に摺動可能な可動外側レールであって、クッションシートに固定され、かつその車両後方側端部において乗員用ベルトバックルが固定される可動外側レールと、可動外側レールを固定内側レールに対して車両の前後方向に対して係止する係止手段とを有し、可動外側レールは、車両の前後方向に延びる可動側面と、可動側面の一方の縁から張り出す第1張り出し可動面と、可動側面の他方の縁から張り出す第2張り出し可動面とを備えたほぼコの字状の断面を有し、固定内側レールは、車両の前後方向に延びる固定側面と、固定側面の一方の縁から張り出す第1張り出し固定面と、固定側面の他方の縁から張り出す第2張り出し固定面とを備えたほぼコの字状の断面を有し、可動外側レールは、固定内側レールに対して、それぞれのコの字状の断面により形成される開放部を互いに対向させた状態で外嵌し、さらに、固定内側レールと可動外側レールとの間には、車両前後方向に延びるリテーナが設けられ、リテーナは、車両の前後方向に延びるリテーナ側面部と、リテーナ側面部の一方の縁から張り出し、車両の前後方向に所定の間隔を隔てた複数の第1リテーナ張り出し面と、リテーナ側面部の他方の縁から張り出し、車両の前後方向に所定の間隔を隔てた複数の第2リテーナ張り出し面とを備えたほぼコの字状の断面を有し、リテーナは、可動外側レールに対して、それぞれのコの字状の断面により形成される開放部を互いに対向させた状態で、複数の第1リテーナ張り出し面を第1張り出し可動面と第1張り出し固定面との間に、かつ複数の第2リテーナ張り出し面を第2張り出し可動面と第2張り出し固定面との間に設置するように位置決めされ、複数の第1リテーナ張り出し面および複数の第2リテーナ張り出し面はそれぞれ、ボールを保持するための開口を有する。
【0003】
このような構成によれば、可動外側レールを固定内側レールに対して、車両前後方向に摺動可能に目標位置まで移動させ、そこに係止することにより、車両用シートの車両前後方向の位置を調整することが可能である。より詳細には、ボールが、第1張り出し可動面と第1張り出し固定面との間、および第2張り出し可動面と第2張り出し固定面との間で転動することにより、可動外側レールがリテーナとともに、固定内側レールに対して、車両の前後方向に移動可能である。
【0004】
しかしながら、一対のレールを採用し、一方のレールにベルトバックルを固定する場合、車両の前突の際、一方のレールのベルトバックル固定部を通じて、ベルトの入力荷重がレールに伝達される。より詳細には、ベルトは、一方のレールから斜め前方に架け渡されるため、一方のレールには、車両前方成分の荷重、車両上方成分の荷重、および車両幅方向成分の荷重が負荷される。
【0005】
この点、可動外側レールの可動側面、固定内側レールの固定側面およびリテーナのリテーナ側面部を車両の高さ方向に沿って向き決めすることにより、レールを縦長断面とすることにより、車両幅方向の中立線まわりのモーメントに対する断面係数を有効に確保することが可能であり、レールの重量増大化を抑止しつつ、強度を有効に確保することが可能である。
しかしながら、単にレールの断面を横長断面から縦長断面に変更するだけでは、以下のような技術的問題点が生じる。
【0006】
すなわち、固定内側レールと可動外側レールとの間に設置されるボールの脱落を生じ、スライド構造がスライド機能を喪失することがある点である。
より詳細には、車両の前突の際、レールには、ベルト入力荷重により、車両前後方向を中心とする回転力が作用し、レールにねじりモーメントが作用する。このねじりモーメントにより、外面に弧形断面溝を備えた固定内側レールの張り出し部は、扁平化するように変形し、一方内面に弧形断面溝を備えた可動外側レールの張り出し部は、同様に、扁平化するように変形し、それにより、ボールを保持する溝が喪失し、ボールの脱落が引き起こされる。
【0007】
特に、このような事態は、可動外側レールが固定内側レールに対してリアモスト位置にある場合に顕著となる。より具体的には、可動外側レールが車両最後方位置にある場合には、可動外側レールは、固定内側レールの車両後方側ブラケットから車両後方に向かってオーバーハングし、片持ち梁状態となる。このような片持ち梁状態の可動外側レールの車両最後方位置にベルト入力荷重が負荷されることになる。
車両の前突の際、スライド構造が有効に機能しないとすれば、負傷した乗員を救助するのに手間がかかり、致命的な遅れにもなりかねない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、ベルトを通じて車両用シートのスライド構造のレールに対して衝撃荷重が負荷された場合に、可動外側レールと固定内側レールとの間に設けられるボールの脱落を有効に防止することが可能な車両用シートのスライド構造および該スライド構造を備えた車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係る車両用シートのスライド構造は、
車床に固定され、車両の前後方向に延設された固定内側レールと、
該固定内側レールに外嵌し、該固定内側レールに対して車両の前後方向に摺動可能な可動外側レールであって、クッションシートに固定され、かつその車両後方側端部において乗員用ベルトバックルが固定される可動外側レールと、
前記可動外側レールを前記固定内側レールに対して車両の前後方向に対して係止する係止手段とを有し、
前記可動外側レールは、車両の前後方向に延びる可動側面と、該可動側面の一方の縁から張り出す第1張り出し可動面と、該可動側面の他方の縁から張り出す第2張り出し可動面とを備えたほぼコの字状の断面を有し、
前記固定内側レールは、車両の前後方向に延びる固定側面と、該固定側面の一方の縁から張り出す第1張り出し固定面と、該固定側面の他方の縁から張り出す第2張り出し固定面とを備えたほぼコの字状の断面を有し、
前記可動外側レールは、前記固定内側レールに対して、それぞれのコの字状の断面により形成される開放部を互いに対向させた状態で外嵌し、
さらに、前記固定内側レールと前記可動外側レールとの間には、車両前後方向に延びるリテーナが設けられ、
前記リテーナは、車両の前後方向に延びるリテーナ側面部と、該リテーナ側面部の一方の縁から張り出し、車両の前後方向に所定の間隔を隔てた複数の第1リテーナ張り出し上面と、該リテーナ側面部の他方の縁から張り出し、車両の前後方向に所定の間隔を隔てた複数の第2リテーナ張り出し面とを備えたほぼコの字状の断面を有し、
前記リテーナは、前記可動外側レールに対して、それぞれのコの字状の断面により形成される開放部を互いに対向させた状態で、前記複数の第1リテーナ張り出し面を前記第1張り出し可動面と前記第1張り出し固定面との間に、かつ前記複数の第2リテーナ張り出し下面を前記第2張り出し可動面と前記第2張り出し固定面との間に設置するように位置決めされ、
前記複数の第1リテーナ張り出し面および前記複数の第2リテーナ張り出し面はそれぞれ、ボールを保持するための保持部を有し、
それにより、前記ボールが、前記第1張り出し可動面と前記第1張り出し固定面との間、および前記第2張り出し可動面と前記第2張り出し固定面との間で転動することにより、前記可動外側レールが前記リテーナとともに、前記固定内側レールに対して、車両の前後方向に移動可能である、車両用シートのスライド構造において、
前記可動側面、前記固定側面および前記リテーナ側面部が、車両の高さ方向に沿って配置され、それにより、前記固定内側レール可動および前記可動外側レールがいずれも、車両の高さ方向に縦長断面となるように配置され、
前記第1張り出し可動面および前記第2張り出し可動面はそれぞれ、その内面に、車両の前後方向に延びる第1弧状断面溝を有し、
前記第1張り出し固定面および前記第2張り出し固定面はそれぞれ、その外面に、車両の前後方向に延びる第2弧状断面溝を有し、
前記第1弧状断面溝および前記第2弧状断面溝とにより、前記ボールを前後方向に案内するための案内溝を形成し、
前記第1弧状断面溝に対応する部分に密着し、該部分に対して外側からあてがう可動外側レール補強用ブラケットが、前記可動外側レールの車両後方側の端部に設けられ、
該可動外側レール補強用ブラケットには、その下面に前記可動外側レールの変形防止用の補強ビードが設けられ、
前記固定内側レールの車両後方側の端部には、前記第2弧状断面溝に対応する部分に密着し、該部分に対して内側からあてがう前記固定内側レール変形防止用ブラケットが設けられる、構成としている。
【0010】

以上の構成を有する車両用シートのスライド構造によれば、車両用クッションシートの車両前後方向の位置を調整する際、可動外側レールを固定内側レールに対して車両前後方向に移動させることにより、可動外側レールと固定内側レールとの間のリテーナにより保持されたボールが、可動外側レールの第1張り出し可動面と固定内側レールの第1張り出し固定面との間、および可動外側レールの第2張り出し可動面と固定内側レールの第2張り出し固定面との間で転動することにより、可動外側レールがリテーナとともに、固定内側レールに対して、車両の前後方向に円滑に摺動可能に移動する。
【0011】
乗員がベルトを締めた状態で車両が前突する場合、それによる衝撃荷重がベルト入力荷重として、ベルトバックルを通じて可動外側レールに負荷される際、可動外側レールの可動側面、および固定内側レールの固定側面、かくしてリテーナのリテーナ側面部を車両高さ方向に沿う向きに向き決めし、可動外側レール、固定内側レールおよびリテーナから概略構成されるレール構造の鉛直断面をいわゆる縦長断面形状とすることにより、レールの鉛直断面において車両の幅方向に延びる中立線まわりの曲げモーメント荷重に対して、横長断面形状とする場合に比べて、効率的に断面係数を確保することが可能であり、たとえばレールの板厚の厚肉化を抑制して、軽量化を図りつつ、必要強度を有効に確保することが可能となる。
【0012】
このとき、ベルトは可動外側レールから斜め前方に架け渡されるため、レールには、車両前後方向成分の荷重、車両幅方向成分の荷重および車両高さ方向成分の荷重が負荷される。よって、レール構造には、その鉛直断面において車両の前後方向を中心にレールを回転させる回転モーメントが作用し、ボールを保持している、可動外側レールの第1張り出し可動面および第2張り出し可動面に設けた第1弧状断面溝と、固定内側レールの第1張り出し固定面および第2張り出し固定面に設けた第2弧状断面溝とを扁平化する方向に変形力が作用し、特に縦長断面において最下部に位置する第2弧状断面溝が溝を喪失することにより、ボールの脱落が引き起こされる。特に可動外側レールが固定内側レールに対して、車両前後方向において最後方位置にある場合には、可動外側レールの車両後方側の端部が固定内側レールからオーバーハングし、いわゆる片持ち梁状態となることから、このような事態が誘因されやすい。
【0013】
しかるところ、可動外側レールに対して可動外側レール補強用ブラケットが可動外側レールの車両後方側の端部に設けられ、この可動外側レール補強用ブラケットが、第1弧状断面溝に対応する部分に密着し、該部分に対して外側からあてがう機能を奏するとともに、特にその下部に可動外側レールの変形防止用の補強ビードが設けられていることから、上記のような変形力に対して第1弧状断面溝の扁平化を抑止することが可能であり、一方、固定内側レールの車両後方側の端部には、固定内側レール変形防止用ブラケットが設けられ、この固定内側レール変形防止用ブラケットが、第2弧状断面溝に対応する部分に密着し、該部分に対して内側からあてがう機能を奏することから、上記のような変形力に対して第2弧状断面溝の扁平化を抑止することが可能であり、以上から、車両用シートのスライド構造のレールに対して衝撃荷重が負荷された場合に、第1および第2弧状断面溝の喪失を防止することにより、ボールの脱落を防止することが可能となる。

【0014】
また、前記固定内側レールは、車両前方側および車両後方側それぞれに、車床に固定するための固定ブラケットが設けられ、
前記可動外側レール補強用ブラケットは、前記可動外側レールが、前記固定内側レールに対して車両最後方位置にあるときに、前記車両後方側固定ブラケットから車両後方に向かってオーバハングする部分に設けられるのがよい。
さらに、前記レール構造は、車両の幅方向に間隔を隔て、互いに平行に配置された一対のレール構造であるのがよい。
さらにまた、前記可動外側レール補強用ブラケットは、ほぼコの字の断面を有するプレートであるのがよい。
【0015】
加えて、前記固定内側レール補強用ブラケットは、プレート状であり、車両の前後方向端部それぞれに、前記固定内側レールにあてがうあてがい部を有するのがよい。
さらに、前記固定内側レール補強用ブラケットは、前記固定内側レールを車床に固定するための固定ブラケットに対して、前記固定内側レールとともに共絞めされるのがよい。
また、前記保持部は、前記複数の第1リテーナ張り出し面のそれぞれ、および前記複数の第2リテーナ張り出し面のそれぞれに設けられた貫通穴であるのがよい。
さらに、前記保持部は、前記複数の第1リテーナ張り出し面の側縁のそれぞれ、および前記複数の第2リテーナ張り出し面の側縁のそれぞれに設けられた凹部でもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る車両用シートのスライド構造によれば、乗員がベルトを締めた状態で車両が前突あるいは後突することにより、車両前後方向に延設された固定内側レール、および固定内側に対してボールの転動を通じて摺動可能に車両前後方向に移動可能な可動外側レールに対して、その鉛直断面において車両前後方向を中心とする回転力が負荷される場合に、可動外側レールおよび固定内側レールそれぞれに対して可動外側レール補強用ブラケットおよび固定内側レール変形防止用ブラケットを設けることにより、このような回転力に起因するボールを保持する第1弧状断面溝および第2弧状断面溝の扁平化を抑止することを通じて、ボールの脱落を有効に防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る車両用シートの実施形態を図面を参照しながら、自動車のフロントシートに適用される場合を例として、以下に詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用シートの斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る車両用シートの側面図である。図3は、図1の線A−Aに沿う断面図である。図4は、図1のA部詳細図である。図5は、図1の線B−Bに沿う断面図である。図6は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーの概略斜視図である。図7は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーの側面図である。図8は、図7の線A−Aに沿う断面図である。図9は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーの概略分解斜視図である。図10は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーの摺動係止部材の概略斜視図である。図11は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーによるロック状態を示す概略図である。図12は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーによるロック解除状態を示す概略図である。図13は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造の斜視図である。図14は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、可動外側レールが固定内側レールに対して係止されている状況を示す概略断面図である。図15は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、可動外側レールが固定内側レールに対して係止解除されている状況を示す概略断面図である。図16は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、固定内側レールにリテーナが取り付けられている状況を示す概略側面図である。図17は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造により、車両用シートの車両前後方向の位置調整を行う状況を示す図である。図18は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、可動外側レール補強用ブラケットが設けられる車両前後方向位置の縦断面図である。図19は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、リテーナを示す斜視図である。図20は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、ベルトを通じてレールへの荷重の入力状態を示す部分側面図である。図21は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造における可動外側レールの補強用ブラケットの斜視図である。図22は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造における可動外側レールのベルトバックルまわりの分解図である。図23は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、固定内側レールの変形防止用ブラケットが取り付けられている状態を示す部分斜視図である。図24は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、固定内側レールの変形防止用ブラケットを示す部分斜視図である。図25は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、固定内側レールの変形防止用ブラケットが取り付けられている状態を示す部分側面図である。図26は、本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、一方のレールの部分拡大詳細図である。
【0018】
図1および図2に示すように、本発明に係る車両用シート100は、車室フロアに固定され、後に説明する斜張ワイヤー102A,Bを有するクッションシートフレーム構造部104と、下端部106がクッションシートフレーム構造部104の後端部108に対して傾動可能に連結され、後に説明する斜張ワイヤー110A,Bを有するバックシートフレーム構造部112と、バックシートフレーム構造部112とクッションシートフレーム構造部104との間に介在するリクライナー構造部114とを有する車両用シートフレーム構造と、車両用シートフレーム構造全体を覆うように設けられたパッド(図示せず)と、前記車両用シートのフレーム構造および該パッド全体を覆うように設けられた袋状の表皮(図示せず)と、車両用シートフレーム構造に対して取り付けられた車両用シートのスライド構造400とを有する。
【0019】
バックシートフレーム構造部112について説明すれば、バックシートフレーム構造部112は、全体として逆U字状をなし、それぞれ上下方向に延びる一対のサイドフレーム118A,Bと、一対のサイドフレーム118A,Bの各々の上端同士を掛け渡すアッパーフレーム120とを有する。
図3に示すように、一対のサイドフレーム118A,Bの各々は、外郭形状を構成する車両の前後方向に有幅の主側面部122と、主側面部122の前後縁より内方に立ち上がる張り出しフランジ部123A,Bとが断面内向きのコ字形状に形成されている。
逆U字状のバックシートフレーム構造部112の内部に形成される開口部には、フラットマット124が張設され、一対のサイドフレーム118A,Bの上部同士を連結するアッパーメンバー125、一対のサイドフレーム118A,Bの下部同士を連結するロアメンバー127が設けられ、さらに、アッパーフレーム120には、ヘッドレスト(図示せず)取り付け用部材129が付設されている。
【0020】
斜張ワイヤー110A,Bについて説明すれば、斜張ワイヤー110A,Bは、一対のサイドフレーム118A,Bの各々の主側面部122に付設されている。いずれの斜張ワイヤー102A,Bも同様な構造であるので、その1つについて、以下に説明する。
斜張ワイヤー110の上端は、一対のサイドフレーム118の側部で、下端がバックシートフレーム構造部112の回転中心より車両の前部側で、バックシートフレーム構造112にそれぞれ固定されて、斜めに張設されている。より詳細には、斜張ワイヤー110の上端は、一対のサイドフレーム118の上端とアッパーフレーム120との嵌合重なり部126に設けられ、一方斜張ワイヤー110の下端は、後に説明するリクライナー構造部114のブラケット部65に設けられる。
【0021】
特に、斜張ワイヤー110の上端とバックシートフレーム構造部112の回転中心とを結ぶ線と、斜張ワイヤー110の下端とバックシートフレーム構造部112の回転中心とを結ぶ線とがなるべく直交するように、斜張ワイヤー110を位置決めするのが好ましい。
プーリー128A,Bが、一対のサイドフレーム118の側部およびブラケット部65それぞれに設けられ、斜張ワイヤー110は、無端状とされ、両プーリー128A,B間に掛け渡されている。
斜張ワイヤー110の種類および材質は、たとえば衝突の際に車両用シート100に衝撃荷重が負荷された場合に、このような衝撃荷重の一部を負担しつつ、自身が構造健全性を確保できるような強度あるいは剛性を備える限り任意であるが、たとえば金属性あるいはCFRP製が好ましい。
【0022】
図4に示すように、斜張ワイヤー110には、ワイヤーの長さ調整手段に該当するボルトーナット機構130が設けられている。より詳細には、斜張ワイヤー110の各端には、雄ねじが切られたボルト132A,Bが付設され、一方、各端から内方に向かって雌ねじが切られたボア134A,Bを有するナット136が設けられている。各ボルト132を対応するボア134に対して、螺合することにより、ねじ込み量を調節し、それにより、斜張ワイヤー110を両プーリー128A,Bに掛け渡した状態で、ワイヤーの全体長さを調整できるようにしている。このような構成によれば、ワイヤーの長さを調整するのに、2本のボルト132A,Bを利用して、2か所においてワイヤーの長さを調整することが可能である。
この場合、車両シートに対して荷重が負荷されていない通常の状態において、斜張ワイヤー110に引張力が発生せず、ワイヤーが弛まない程度にワイヤーの長さを調整してもよいし、あるいは斜張ワイヤー110に引張力が発生した状態となるようにワイヤーの長さを調整してもよい。変形例として、斜張ワイヤー110の一端にはボルト132、他端にはナット136を設け、1本のボルト132のナット136に対するねじ込み量を調節することにより、ワイヤーの長さを調節してもよい。
このように、プーリー128A,B間に無端状のワイヤーを掛け渡す構成とすることにより、実質的にサイドフレームの各側において、2本の斜張ワイヤー110を設けたことに等しいにも関わらず、ワイヤーの長さを調整するボルトーナット機構130を単一化することが可能である。
なお、このような斜張ワイヤー110の長さ調整は、バックシートフレーム構造112全体にウレタンパッドをあてがう前に行う必要がある。
このような斜張ワイヤー110により、車両後方側への荷重、たとえば衝突の際の衝撃荷重がバックシートフレーム構造部112に負荷されたときに、この荷重に基づいてバックシートフレーム構造部112に対して引張力を作用する一方、車両前方側への荷重による外部から作用する圧縮力に対し抗しない特性を有するようにしてある。
次に、図1及び図2を再び参照して、クッションシートフレーム構造部104について説明すれば、クッションシートフレーム構造部104は、車両の前後方向に延設された一対のサイドフレーム140A,Bと、一対のサイドフレーム140A,Bの後端部108同士を連結するリアフレーム141と、一対のサイドフレーム140A,Bの前端部同士を連結するフロントフレーム142とから概略構成され、これらのフレームにより閉断面構造(ボックス構造)が形成されている。この閉断面構造の開口部には、リアフレーム140とフロントフレーム142との間で車両の前後方向に張設されたクッションバネ143が設けられている。
【0023】
図5に示すように、一対のサイドフレーム140A,Bの各々は、バックシートフレーム構造部112のサイドフレーム118と略同様な構造であり、外郭形状を構成する車両の上下方向に有幅の主側面部144と、主側面部144の上下縁より内方に立ち上がる張り出しフランジ部146A,Bとが断面内向きのコ字形状に形成されている。
斜張ワイヤー102A,Bについて説明すれば、斜張ワイヤー102A,Bは、一対のサイドフレーム140A,Bの各々の側部に付設されている。いずれの斜張ワイヤー102A,Bも同様な構造であるので、その1つについて、以下に説明する。
斜張ワイヤー102の上端は、一対のサイドフレーム140の側部で、下端がバックシートフレーム構造部112の回転中心より車両の前部側で、クッションシートフレーム構造104にそれぞれ固定されて、斜めに張設されている。より詳細には、斜張ワイヤー102の上端は、リクライナー構造部114のブラケット部36に設けられ、一方斜張ワイヤー102の下端は、サイドフレーム140の側部に設けられる。
【0024】
特に、斜張ワイヤー102の上端とバックシートフレーム構造部112の回転中心とを結ぶ線と、斜張ワイヤーの下端とバックシートフレーム構造部112の回転中心とを結ぶ線とがなるべく直交するように、斜張ワイヤー102を位置決めするのが好ましい。
プーリー147A,Bが、一対のサイドフレーム140の側部およびブラケット部36それぞれに設けられ、斜張ワイヤー102は、無端状とされ、両プーリー147A,B間に掛け渡されている。
斜張ワイヤー102A,Bの種類および材質は、たとえば衝突の際に車両用シート100に衝撃荷重が負荷された場合に、このような衝撃荷重の一部を負担しつつ、自身が構造健全性を確保できるような強度あるいは剛性を備える限り任意であるが、たとえば金属性あるいはCFRP製が好ましい。
なお、斜張ワイヤー102A,Bにそれぞれ、ワイヤー長さ調整手段145A,Bを設けている点については、バックシートフレーム構造112に設けた斜張ワイヤー110A,Bと同様であるので、その説明は省略する。
【0025】
次に、リクライナー構造部114について説明すれば、図6に示すように、リクライナー10は、ドライバー或いは乗員が着座するクッションシートのフレーム構造の各側面と、ドライバー或いは乗員が背もたれるバックシートのフレーム構造の対応する側面との連結部に1基ずつ設けられ、バックシートをクッションシートに対して傾動可能とするように、一対のリクライナー10は、シートの幅方向に延びる連結シャフト12により連結されている。一対のリクライナー10は、同様な構造を有するので、以下では、その1つについて、説明する。
【0026】
図7ないし図9に示すように、リクライナー10は、バックシートBに取り付けられる回動アーム14と、クッションシートCに取り付けられるベース部材16と、回動アーム14とベース部材16との間に介在する、カム18およびカム18を挟むように配置される一対の摺動係止部材20と、カム18を回動する操作レバー22とから概略構成され、操作レバー22に固定された枢軸24を中心に、回動アーム14がベース部材16に対して回動自在に保持されている。
図9に示すように、ベース部材16は、鋼製円形板材であり、その中心部に枢軸24が挿通する挿通孔26が形成され、挿通孔26の大きさは、枢軸24の回動に伴ってベース部材16が回動しない程度である。ベース部材16には、挿通孔26の両側に延びる一対の開口28A,Bが設けられている。一対の開口28A,Bの各々は、左右一対の案内側壁30と、これらの案内側壁30の上端および下端に連接された円弧状側壁32とから構成されている。一対の開口28の各々の大きさは、後に説明する一対の摺動係止部材20それぞれが、一対の開口28内で左右一対の案内側壁30に沿って案内されながら半径方向に摺動することが可能なように設けられる。円弧状側壁32の径は、後に説明する回動アーム14の円形開口52の径と同じとなるように設定される。
【0027】
ベース部材16の回動アーム14が位置する反対側には、ベースブラケット34が一対の開口28を塞ぐように取り付けられ、その中心部に枢軸24が挿通する挿通孔33が形成される一方、このベースブラケット34の下部には、クッションシートCのフレーム構造に固定される取り付け部36が設けられている。この取り付け部36には、貫通孔39が設けられ、ボルト37を貫通孔39および対応するクッションシートCの貫通孔に挿通して、溶接ナット41によりベースブラケット34とクッションシートCとを固定するようにしてある(図8参照)。
【0028】
ベース部材16の一方の面には、複数の突起面11が設けられる一方、ベースブラケット34の対応する位置には、突起面11と相補形状の開口13が設けられ、突起面11それぞれを開口13に嵌めて、たとえば溶接することにより、ベースブラケット34をベース部材16に対して固定するようにしている。ベース部材16において、案内側壁30と摺動係止部材20との間で荷重伝達経路が構成されるので、ベース部材16の板厚は、このような荷重に耐える強度を有するように設定される。たとえば、ベース部材16の板厚は、3.6mmである。それに対して、ベースブラケット34の板厚は、ベース部材16の板厚より薄く設定される。
【0029】
摺動係止部材20について説明すれば、摺動係止部材20は一対設けられ、それぞれ、ベース部材16の一対の開口28A,Bの対応する開口内で左右一対の案内側壁30によって案内されながら半径方向に進退自在に配設されている。
図10に示すように、各々の摺動係止部材20は、その外周側に外歯38が形成されるとともに、その内周側には、カム面40が形成され、さらに両側面47、49は、互いに平行で案内側壁39に対して摺接するようにしている。
カム面40は、従来と同様に、内方に突出する突出係合部42と、突出係合部42に連接し外方に延びる係合凹部44とを有し、突出係合部42および係合凹部44ともに、後に説明するカム18と係合し、それにより、各々の摺動係止部材20の外歯38が、後に説明する回動アーム14に形成した内歯54と噛合する係止位置と、内歯54から離間する係止解除位置との間で、半径方向に進退自在に移動するようにしている。
一対の摺動係止部材20は、ベース部材16と回動アーム14とを重ね合わせた際、回動アーム14の円形開口52とベース部材16の一対の開口28とにより形成されるスペース内に配置され、一対の開口28の案内側壁30により案内されつつ、一対の摺動係止部材20それぞれに設けた外歯38が円形開口52に設けた内歯54と噛み合うことが可能なようにしている。
【0030】
カム18について説明すれば、図11および図12に示すように、カム18は、一対の摺動係止部材20の間に介在し、中心部に操作レバー22に設けられた枢軸24が挿通する貫通穴17を有する。貫通穴17の大きさは、枢軸24の回動によりカム18が一体でその方向に回動する程度であり、それにより、操作レバー22の回動により、カム18が回動されるようにしてある。カム18の一対の摺動係止部材20各々の対向する面にはそれぞれ、内方に突出する突出係合部42と係合する係合部43と、係合部43に連接し、外方に延びる突出係合部45とが設けられ、カム18の外形は、その中心位置に関して点対称に形成され、その板厚は、後に説明する回動アーム14の板厚より若干薄く設定され、一対の摺動係止部材20とは異なり、回動アーム14の円形開口52内に配置したとき、ベース部材16の一対の開口28に及ばないようにしている。これにより、円形開口52内で自由に回動することが可能となる。
【0031】
回動アーム14について説明すれば、回動アーム14は鋼製環状リングからなり、内部に円形開口52が設けられている。円形開口52の径は、ベース部材16の円弧状側壁32の径と同一である。円形開口52を構成する環状リングの上下部それぞれについて、その内周面の所定範囲に亘って、摺動係止部材20の外歯38と噛合する内歯54が設けられている。一対の摺動係止部材20それぞれを係止位置に移動させたときの外歯38と内歯54との噛合により、バックシートBとクッションシートCとの間の荷重伝達経路が形成されるので、鋼製環状リングの板厚は、外歯38がこのような荷重に耐える強度を有するように設定される。鋼製環状リングの板厚は、たとえば3.6mmである。なお、鋼製環状リングは、一様な板厚の円形板材をファインブランキングにより打ち抜き加工することにより円形開口52を設けて外歯38を形成すればよい。
【0032】
回動アーム14の外周部には、バックシートBに取り付けるためのブラケット部56が、外周方向に等角度間隔(90°)を隔てて4つ設けられている。各ブラケット部56には、後に説明するホールドピン62を挿通するための貫通孔63が設けられている。なお、ブラケット部56は、環状リングと一体に形成してもよい。
回動アーム14のベース部材16が位置する反対側には、リッドプレート58が円形開口52を塞ぐように取り付けられ、このリッドプレート58の中心部には、枢軸24が貫通する貫通孔60が設けられる。貫通孔60の大きさは、カム18と同様に、枢軸24の回動によりリッドプレート58が一体でその方向に回動する程度であり、それにより、操作レバー22の回動により、リッドプレート58が回動されるようにしてある。リッドプレート58は、環状リングと同じ径を有する円形薄板であり、その外周部には、回動アーム14と同様に、ブラケット部67が、外周方向に等角度間隔(90°)を隔てて4つ設けられている。各ブラケット部67には、後に説明するホールドピン62が挿通する貫通孔65が、設けられている。これにより、ホールドピン62を回動アーム14の貫通孔63および対応するリッドプレート58の貫通孔65に挿通して、かしめることにより、リッドプレート58を回動アーム14に対して固定し、回動アーム14の円形開口52内に配置される一対の摺動係止部材20、カム18、および後に説明するスプリング64が、円形開口52内に保持されるようにしている。また、図8に示すように、ホールドピン62の肩部をベース部材16の周縁部にあてがうことにより、ベース部材16を固定している。なお、リッドプレート58は、円形開口52に対する蓋として機能するのみであり、強度部材として機能するわけではないので、回動アーム14の板厚が、たとえば3.6mmであるのに対して、リッドプレーの板厚は、0.6mm程度でよい。
【0033】
図9に示すように、操作レバー22は、一方のリクライナー10の外側に設けられ、一端に貫通孔が設けられ、枢軸24が、この貫通孔を含め、貫通孔33、ベース部材16、カム18、およびリッドプレート58の貫通孔60に挿通することにより、操作レバー22が固定されている。操作レバー22は、円形開口52内に配置された一対のスプリング64により、一定方向に回動するように付勢されている。
一方のリクライナー10の外側には、スパイラルスプリング70がベースブラケット34に対してほぼ平行に隣接して設けられ、一端がバックシートBに固定される一方、他端がベースブラケット34に設けたホルダーブラケット72に固定されることにより、バックシートBをクッションシートCに対して、一定方向に回動するように付勢している。
【0034】
次に、図13に示すように、車両用シートのスライド構造400は、車両用シートの車両前後方向の位置調整機構402と、車両用シートの車両前後方向の位置決め機構404と、車両用シートの車両高さ方向の位置調整機構406と、車両用シートの車両高さ方向の位置決め機構408とから概略構成されている。
【0035】
車両用シートは、前述のように、車両の前後方向に延設する一対のサイドフレームSと、一対のサイドフレーム同士を連結するフロントパイプFおよびリアパイプRとにより構成され、車両に固定されたクッションシート(図示せず)と、クッションシートに対してリクライナー(図示せず)を介して、クッションシートに対して傾動可能に取り付けられたバックシート(図示せず)とから構成されていることから、車両用シートのスライド構造400は、クッションシートのサイドフレームSに付設されているところ、クッションシートの車両前後方向および車両の高さ方向に位置調整かつ位置決め可能とすることにより、バックシートを含めた車両用シート全体の位置調整かつ位置決めが可能である。
車両用シートの車両前後方向の位置調整機構402は、それぞれ車両の前後方向に延設し、互いに車両の幅方向に所定間隔を隔てた一対のレール構造410と、レールの摺動可能な車両前後方向の移動を可能とするためのリテーナ412とから概略構成されている。
【0036】
車両用シートのスライド構造400は、一対のレール構造410の一方には、乗員ベルトが内嵌するベルトバックル438を備えたベルトブラケット411が付設されている点を除き、車両の前後方向中心線に関して対称に構成されているので、一方について説明し、他方については同様な参照番号を付することによりその説明は省略する。

一対のレール構造410はそれぞれ、鋼製であり、車両の前後方向の各端部に固定されたレール取付ブラケット414A,Bを有する固定内側レール416と、固定内側レール416に外嵌する可動外側レール418とを有する。固定内側レール416および可動外側レール418それぞれのレール長さは、車両用シートのスライド構造400が設置されるフロント床のスペースに鑑み、固定内側レール416を可動外側レール418に対して、車両最後方側位置にしたとき、および車両最前方側位置にしたときの状態を考慮して、適宜に決定すればよい。
【0037】
図14および図15に示すように、固定内側レール416は、車両の高さ方向に沿って車両の前後方向に延びる固定側面420と、固定側面420の一方の側縁から横方向に張り出す第1張り出し固定上面422と、固定側面420の他方の側縁から横方向に張り出す第2張り出し固定下面424とを備えたほぼコの字状の断面を有する。第1張り出し固定上面422および第2張り出し固定下面424はそれぞれ、その外面に、車両の前後方向に延びる第2弧状断面溝426を有する。これにより、後に説明する可動外側レール418に設けた第1弧状断面溝436とともに、ボールを案内する案内溝を形成するようにしている。したがって、溝の弧状断面形状はこのような観点から定めればよい。
図16に示すように、固定内側レール416には、車両の前後方向に間隔を隔てて整列する複数の固定係止穴428が設けられている。固定係止穴428の数は、固定内側レール416に対して車両前後方向に移動する可動外側レール418の移動範囲を考慮して、適宜定めればよい。
【0038】
図14および図15に示すように、一方、可動外側レール418は、固定内側レール416に対して、それぞれのコの字状の断面により形成される開放部を互いに対向させた状態で外嵌するようにしている。可動外側レール418は、車両の高さ方向に沿って車両の前後方向に延びる可動側面430と、可動側面430の一方の側縁から横方向に張り出す第1張り出し可動上面432と、可動側面430の他方の側縁から横方向に張り出す第2張り出し可動下面434とを備えたほぼコの字状の断面を有する。
第1張り出し可動上面432および前記第2張り出し可動下面434はそれぞれ、その内面に、車両の前後方向に延びる第1弧状断面溝436を有する。
【0039】
図17に示すように、可動外側レール418は、後に説明する車両用シートの車両高さ方向の位置調整機構406の平行リンク機構を介して、クッションシートのサイドフレームSに固定され、一対のレール構造410において、一方の可動外側レール418には、前述のように、その車両後方側端部において乗員用ベルトバックル438が固定されている。可動外側レール418には、車両の前後方向に隣接する固定係止穴428同士の間隔と同一の間隔を隔てて整列する、複数の可動係止穴421が設けられている。図14において、後に説明する係止用プレート454との関係で、可動係止穴421が4つ設けられているが、4つに限定されず、可動外側レール418を固定内側レール416に対して確実に係止可能である限り、4つより少なくてもよい。
【0040】
次に、リテーナ412について説明すれば、図18に示すように、固定内側レール416と可動外側レール418との間には、車両前後方向に延びるリテーナ412が設けられている。リテーナ412は、車両の高さ方向に沿って車両の前後方向に延びるリテーナ側面部440と、リテーナ側面部440の一方の側縁から張り出し、車両の前後方向に所定の間隔を隔てた複数の第1リテーナ張り出し上面442と、リテーナ側面部440の他方の側縁から張り出し、車両の前後方向に所定の間隔を隔てた複数の第2リテーナ張り出し下面444とを備える。より詳細には、リテーナ側面部440には、車両の前後方向に延び、固定内側レール416の内面に向かって窪んだ凹部が設けられ、これにより弓の字断面とされ、リテーナ412がその側面部で可動外側レール418に係合しないようにしつつ、固定内側レール416の第1張り出し固定上面422および第2張り出し固定下面424に案内されながら、車両前後方向に移動可能となるようにしている。
【0041】
図19に示すように、リテーナ412のリテーナ側面部440には、前述のように、車両前後方向に延びる細長開口441が設けられ、細長開口441は、車両前方側端縁443Aと車両後方側端縁443Bとを有する。細長開口441の車両前後方向の長さは、リテーナ412自体の十分な強度を確保しつつ、軽量化を図る観点から、適宜定めればよい。
【0042】
リテーナ412は、可動外側レール418に対して、それぞれのコの字状の断面により形成される開放部を互いに対向させた状態で、複数の第1リテーナ張り出し上面442を第1張り出し可動上面432と第1張り出し固定上面422との間に、かつ複数の第2リテーナ張り出し下面444を第2張り出し可動下面434と第2張り出し固定下面424との間に設置するように位置決めされる。
【0043】
複数の第1リテーナ張り出し上面442および複数の第2リテーナ張り出し下面444はそれぞれ、ボール445を保持するための貫通穴447を有し、それにより、ボール445が、第1張り出し可動上面432と第1張り出し固定上面422との間、および第2張り出し可動下面434と第2張り出し固定下面424との間で転動することにより、可動外側レール418がリテーナ412とともに、固定内側レール416に対して、車両の前後方向に移動可能であるように構成されている。
【0044】
以上のように、可動側面430、固定側面420およびリテーナ側面部440が、車両の高さ方向に沿う向きに向き決めされ、それにより、固定内側レール416および可動外側レール418がいずれも、車両の高さ方向に縦長断面となるように配置されている。これにより、横長断面に比して、可動外側レール418、固定内側レール416およびリテーナ412から構成されるレール構造の鉛直断面の車両幅方向の中立線まわりのモーメント荷重に対して、有効に断面係数を確保することが可能である。
【0045】
図18および図20ないし図22に示すように、可動外側レール補強用ブラケット500が、ベルトバックル438が設けられる車両内側の可動外側レール418に対して設けられる。より詳細には、図18に示すように、可動外側レール補強用ブラケット500は、可動外側レール418の第1弧状断面溝436に対応する部分に密着し、該部分に対して外側からあてがうように、可動外側レール418の車両後方側の端部に設けられる。
図21に示すように、可動外側レール補強用ブラケット500には、その下面に可動外側レール418の変形防止用の補強ビード502が設けられる。可動外側レール補強用ブラケット500は、ほぼコの字の断面を有するプレートであり、可動外側レール418が、固定内側レール416に対して車両最後方位置にあるときに、車両後方側固定ブラケットから車両後方に向かってオーバハングする部分に設けられる。可動外側レール補強用ブラケット500の板厚は、第1弧状断面溝436の扁平化するような回転力が作用したときに、第1弧状断面溝436に対して外側からあてがうことにより、このような回転力に抗して、第1弧状断面溝436の扁平化するのを防止するのに有効な厚みを有するようにしている。
一方、図23ないし図25に示すように、固定内側レール416の車両後方側の端部には、第2弧状断面溝426に対応する部分に密着し、該部分に対して内側からあてがう固定内側レール変形防止用ブラケット504が設けられる。固定内側レール補強用ブラケット504は、プレート状であり、車両の前後方向端部それぞれに、固定内側レール416にあてがうあてがい部506を有する。固定内側レール補強用ブラケット504は、固定内側レール416を車床に固定するための固定ブラケット414に対して、固定内側レール416とともに共絞めされる。固定内側レール変形防止用ブラケット504の板厚は、第2弧状断面溝426の扁平化するような回転力が作用したときに、第2弧状断面溝426に対して内側からあてがうことにより、このような回転力に抗して、第2弧状断面溝426の扁平化するのを防止するのに有効な厚みを有するようにしている。
【0046】
次に、図17および図26に示すように、クッションシートの車両前後方向位置決め機構404は、操作レバー446、操作レバー支持ブラケット448、リリースロッド450、操作レバー係止用バネ452、係止用歯455を備えた係止用プレート454、および係止用プレート戻しバネ456から概略構成されている。係止用歯455は、可動係止穴421と同数設けられ、隣接する可動係止穴421同士の間隔と同じ間隔で、可動係止穴421および固定係止穴428に貫通可能なようにしてある。
操作レバー446を操作レバー係止用バネ452の付勢力に抗して上方に持ち上げることにより、リリースロッド450がレールの長手方向を中心にレールの外側の向き(図の矢印の向き)に回転し、それによりリリースロッド450に取り付けられた係止用プレート454が、係止用プレート戻しバネ456の付勢力に抗して、係止位置から係止解除位置まで回転する。これにより、可動係止穴421および固定係止穴428に貫通していた係止用歯455が、両穴から抜け、それにより、可動外側レール418は固定内側レール416に対して、車両の前後方向に自由に移動することが可能としてある(図15参照)。
【0047】
可動外側レール418を車両前後方向の目標位置まで移動させたら、その位置で、持ち上げていた操作レバー446を離す。それにより操作レバー446は、操作レバー係止用バネ452の付勢力により下方に下がり、それによりリリースロッド450は、レールの内側の向き(図の矢印の向きと反対向き)に回転し、係止用プレート454が、係止用プレート戻しバネ456の付勢力により、係止解除位置から係止位置まで回転する。これにより、新たな車両前後方向位置にクッションシートを位置決めすることが可能としてある。(図14参照)
【0048】
車両用シートの車両高さ方向の位置調整機構406について、可動外側レール418とそれに対応するクッションシートのサイドフレームSとの間をピン結合する平行リンク機構を構成する前リンク460と後リンク462とから構成され、前リンク460あるいは後リンク462の可動外側レール418に対する角度を調整することにより、自動的にサイドフレームの高さが調整されるようにしてある。
【0049】
車両用シートの車両高さ方向の位置決め機構408について、操作レバー470、ピニオンギア471を有するポンピングブレーキユニット472、セクターギア474、連結ブラケット476がサイドフレーム側に設けられている。この車両用シートの車両高さ方向の位置決め機構408は、従来から用いられているタイプと同様であるので、その詳しい説明は省略するが、操作レバー446を上方に回転すると、ポンピングブレーキユニット472に設けられたピニオンギア471が回転し、それに応じてセクターギア474が図の矢印の向きに回転し、それにより連結ブラケット476が図の矢印の向きに移動し、それにより前リンク460が持ち上げられ、それに応じて後リンク462もそれに追従して、サイドフレームS、かくしてクッションシートの高さが調整される一方、クッションシート側から下向きに力が作用しても、ピニオンギア471は回転しないように構成され、それにより調整した高さにクッションシートが保持されるようにしてある。
【0050】
以上の構成を有する車両用シート100について、図面を参照しながら、その作用を以下に説明する。
まず、バックシートBをクッションシートCに対してロック状態とする場合、操作レバー22がスプリング64によって付勢され、この状態においては、図11に示すように、カム18の係合部43がそれぞれ、摺動係止部材20のカム面40の突出係合部42に係合する。これにより、摺動係止部材20はそれぞれ、ベース部材16の案内側壁30に沿って案内されながら外方に移動し、外歯38と回動アーム14の内歯54とが噛み合い、回動アーム14のベース部材16に対する回動が規制されたロック状態が維持される。
【0051】
このようなロック状態において、たとえば衝突事故によりバックシートBに過大な衝撃力が加わった場合、バックシートBから取り付け部36を介して回動アーム14に衝撃力が伝達し、さらに回動アーム14の外歯38と一対の摺動係止部材20の内歯54との噛み合い、一対の摺動係止部材20のカム面40とカム18との係合、さらにカム18に貫通する枢軸24を通じて、ベース部材16に固定されるクッションシートCに荷重が伝達される。このとき、回動アーム14の環状リングの板厚、すなわち外歯38の板厚およびベース部材16の板厚は、このような荷重に耐え得るような強度を有する値に設定していることから、このような衝撃力に係わらず、リクライニング機能を維持することが可能となる。
なお、バックシートBのクッションシートCに対するロック状態を解除して、バックシートBを回動させる場合、操作レバー22をコイルスプリング64に抗して回動させることにより、カム18も同様に同方向に回動することから、図12に示すように、カム18の係合部43と摺動係止部材20の突出係合部42との係合状態が解除される。このような状態で、バックシートBを傾動させると、それにより回動アーム14が回動して、内歯54から摺動係止部材20に加わる力によって、摺動係止部材20はそれぞれ、内方に摺動し、摺動係止部材20の係合凹部44とカム18の突出係合部45とが係合するに至る。この状態で、内歯54と外歯38との噛合状態が解除される。これにより、ロック状態が解除されて、バックシートBをクッションシートCに対して所望の角度傾動させることが可能となる。バックシートBを所望の角度傾動させたら、操作レバー22の回動を解除することにより、カム18が逆方向に回動し、それにより摺動係止部材20が再び半径方向外方に摺動して、内歯54と外歯38との噛合状態が復活して、ロック状態に復帰する。
【0052】
車両用シートの車両前後方向の位置を調整する際、まず、操作レバー446を持ち上げて、車両前後方向現在位置の可動外側レール418の可動係止穴421および固定内側レール416の固定係止穴428に対して貫通している係止用プレート454の係止歯455を抜いて、係止解除を行う。これにより、可動外側レール418を固定内側レール416に対して、自由に車両前後方向に移動することが可能となる。
【0053】
次いで、車両前後方向の目標位置に向けて、たとえば、車両の前方に向かって、可動外側レール418を固定内側レール416に対して、車両前後方向に移動する。その際、リテーナ412の第1リテーナ張り出し上面442の各々、および第2リテーナ張り出し下面444の各々の貫通穴447に保持された状態で、各ボール445が、第1張り出し固定上面422と第1張り出し可動上面432との間、および第2張り出し固定下面424と第2張り出し可動下面434との間でそれぞれ、転動することにより、可動外側レール418の移動方向にリテーナ412自体も移動することにより、可動外側レール418が固定内側レール416に対して、摺動可能に円滑に移動することが可能となる。
【0054】
車両用クッションシートの車両前後方向の位置を調整する際、可動外側レール418を固定内側レール416に対して車両前後方向に移動させることにより、可動外側レール418と固定内側レール416との間のリテーナ412により保持されたボール445が、可動外側レール418の第1張り出し可動面432と固定内側レール416の第1張り出し固定面422との間、および可動外側レール418の第2張り出し可動面434と固定内側レール416の第2張り出し固定面424との間で転動することにより、可動外側レール418がリテーナ412とともに、固定内側レール416に対して、車両の前後方向に円滑に摺動可能に移動する。
【0055】
乗員がベルトを締めた状態で車両が前突する場合、それによる衝撃荷重がベルト入力荷重として、ベルトバックル438を通じて可動外側レール418に負荷される際、可動外側レール418の可動側面430、および固定内側レール416の固定側面420、かくしてリテーナ412のリテーナ側面部440を車両高さ方向に沿う向きに向き決めし、可動外側レール418、固定内側レール416およびリテーナ412から概略構成されるレール構造の鉛直断面をいわゆる縦長断面形状とすることにより、レールの鉛直断面において車両の幅方向に延びる中立線まわりの曲げモーメント荷重に対して、横長断面形状とする場合に比べて、効率的に断面係数を確保することが可能であり、たとえばレールの板厚の厚肉化を抑制して、軽量化を図りつつ、必要強度を有効に確保することが可能となる。
【0056】
このとき、ベルトは可動外側レール418から斜め前方に架け渡されるため、レールには、車両前後方向成分の荷重、車両幅方向成分の荷重および車両高さ方向成分の荷重が負荷される。よって、レール構造には、その鉛直断面において車両の前後方向を中心にレールを回転させる回転モーメントが作用し、ボール445を保持している、可動外側レール418の第1張り出し可動面432および第2張り出し可動面434に設けた第1弧状断面溝436と、固定内側レール416の第1張り出し固定面422および第2張り出し固定面424に設けた第2弧状断面溝426とを扁平化する方向に変形力が作用し、特に縦長断面において最下部に位置する第2弧状断面溝426が溝を喪失することにより、ボール445の脱落が引き起こされる。特に可動外側レール418が固定内側レール416に対して、車両前後方向において最後方位置にある場合には、可動外側レール418の車両後方側の端部が固定内側レール416からオーバーハングし、いわゆる片持ち梁状態となることから、このような事態が誘因されやすい。
【0057】
しかるところ、可動外側レール418に対して可動外側レール補強用ブラケット500が可動外側レール418の車両後方側の端部に設けられ、この可動外側レール補強用ブラケット500が、第1弧状断面溝436に対応する部分に密着し、該部分に対して外側からあてがう機能を奏するとともに、特にその下部に可動外側レール418の変形防止用の補強ビード502が設けられていることから、上記のような変形力に対して第1弧状断面溝436の扁平化を抑止することが可能であり、一方、固定内側レール416の車両後方側の端部には、固定内側レール変形防止用ブラケット504が設けられ、この固定内側レール変形防止用ブラケット504が、第2弧状断面溝426に対応する部分に密着し、該部分に対して内側からあてがう機能を奏することから、上記のような変形力に対して第2弧状断面溝426の扁平化を抑止することが可能であり、以上から、車両用シートのスライド構造のレールに対して衝撃荷重が負荷された場合に、第1および第2弧状断面溝の喪失を防止することにより、ボール445の脱落を防止することが可能となる。

【0058】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変形が可能である。たとえば、本実施形態においては、自動車用シートを対象に説明したが、それに限定されることなく、鉄道車両、船、飛行機等一般的な車両に対して適用可能である。また、自動車のシートに対して用いる場合、リアシート、フロントシートのいずれにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る車両用シートのスライド構造および該構造を有する車両用シートは、可動外側レールおよび固定内側レールそれぞれに対して可動外側レール補強用ブラケットおよび固定内側レール変形防止用ブラケットを設けることにより、レールの縦断面において車両の前後方向を中心とする回転力に起因する、ボールを保持する第1弧状断面溝および第2弧状断面溝の扁平化を抑止することを通じて、ボールの脱落を有効に防止することが可能である点において、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用シートの側面図である。
【図3】図1の線A−Aに沿う断面図である。
【図4】図1のA部詳細図である。
【図5】図1の線B−Bに沿う断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両用シートのリクライナーの概略斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る車両用シートのリクライナーの側面図である。
【図8】図7の線A−Aに沿う断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る車両用シートのリクライナーの概略分解斜視図である。
【図10】本発明の実施形態に係る車両用シートのリクライナーの摺動係止部材の概略斜視図である。
【図11】本発明の実施形態に係る車両用シートのリクライナーによるロック状態を示す概略図である。
【図12】本発明の実施形態に係る車両用シートのリクライナーによるロック解除状態を示す概略図である。
【図13】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造の斜視図である。
【図14】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、可動外側レールが固定内側レールに対して係止されている状況を示す概略断面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、可動外側レールが固定内側レールに対して係止解除されている状況を示す概略断面図である。
【図16】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、固定内側レールにリテーナが取り付けられている状況を示す概略側面図である。
【図17】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造により、車両用シートの車両前後方向の位置調整を行う状況を示す図である。
【図18】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、可動外側レール補強用ブラケットが設けられる車両前後方向位置における縦断面図である。
【図19】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、リテーナを示す斜視図である。
【図20】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、ベルトを通じてレールへの荷重の入力状態を示す部分側面図である。
【図21】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造における可動外側レールの補強用ブラケットの斜視図である。
【図22】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造における可動外側レールのベルトバックルまわりの分解図である。
【図23】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、固定内側レールの変形防止用ブラケットが取り付けられている状態を示す部分斜視図である。
【図24】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、固定内側レールの変形防止用ブラケットを示す部分斜視図である。
【図25】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、固定内側レールの変形防止用ブラケットが取り付けられている状態を示す部分側面図である。
【図26】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド構造において、一方のレールの部分拡大詳細図である。
【符号の説明】
【0061】
C クッションシート
B バックシート
10 リクライナー
12 連結シャフト
14 回動アーム
16 ベース部材
18 回動可能なカム
20 摺動係止部材
22 操作レバー
24 枢軸
26 挿通孔
28 一対の開口
30 案内側壁
32 円弧状側壁
34 ベースブラケット
38 外歯
40 カム面
42 突出係合部
44 係合凹部
52 円形開口
54 内歯
58 リッドプレート
62 ホールドピン
64 スプリング
70 スパイラルスプリング
100 車両用シート
102 斜張ワイヤー
104 クッションシートフレーム構造
106 下端部
108 後端部
110 斜張ワイヤー
112 バックシートフレーム構造
114 リクライナー構造部
116 車両用シートフレーム構造部
118 一対のサイドフレーム
120 アッパーフレーム
122 主側面部
124 フラットマット
126 嵌合重なり部
128 プーリー
130 ボルト-ナット機構
132 ボルト
134 ボア
136 ナット
140 一対のサイドフレーム
141 リアフレーム
142 フロントフレーム
144 クッションバネ
146 主側面部
148 フランジ部
S サイドフレームクッションシート
400 車両用シートのスライド構造
402 車両用シートの車両前後方向位置調整機構
404 車両用シートの車両前後方向位置決め機構
406 車両用シートの車両高さ方向位置調整機構
408 車両用シートの車両高さ方向位置決め機構
410 一対のレール構造
411 ベルトブラケット
412 リテーナ
414 レール取付ブラケット
416 固定内側レール
418 可動外側レール
420 固定側面
421 可動係止穴
422 第1張り出し固定上面
424 第2張り出し固定下面
426 第2弧状断面溝
428 固定係止穴
430 可動側面
432 第1張り出し可動上面
434 第2張り出し可動下面
436 第1弧状断面溝
441 細長開口441
443 端縁
440 リテーナ側面部
442 第1リテーナ張り出し上面
444 第2リテーナ張り出し下面
445 ボール
447 貫通穴
446 操作レバー
448 操作レバー支持ブラケット
450 リリースロッド
452 操作レバー係止用バネ
454 係止用プレート
455 係止用歯
456 係止用プレート戻しバネ
460 前リンク
462 後リンク
470 操作レバー
472 ピニオンギア
474 セクターギア
476 連結ブラケット
500 可動外側レール補強用ブラケット
502 補強用ビード
504 固定内側レール変形防止用ブラケット
506 あてがい部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車床に固定され、車両の前後方向に延設された固定内側レールと、
該固定内側レールに外嵌し、該固定内側レールに対して車両の前後方向に摺動可能な可動外側レールであって、クッションシートに固定され、かつその車両後方側端部において乗員用ベルトバックルが固定される可動外側レールと、
前記可動外側レールを前記固定内側レールに対して車両の前後方向に対して係止する係止手段とを有し、
前記可動外側レールは、車両の前後方向に延びる可動側面と、該可動側面の一方の縁から張り出す第1張り出し可動面と、該可動側面の他方の縁から張り出す第2張り出し可動面とを備えたほぼコの字状の断面を有し、
前記固定内側レールは、車両の前後方向に延びる固定側面と、該固定側面の一方の縁から張り出す第1張り出し固定面と、該固定側面の他方の縁から張り出す第2張り出し固定面とを備えたほぼコの字状の断面を有し、
前記可動外側レールは、前記固定内側レールに対して、それぞれのコの字状の断面により形成される開放部を互いに対向させた状態で外嵌し、
さらに、前記固定内側レールと前記可動外側レールとの間には、車両前後方向に延びるリテーナが設けられ、
前記リテーナは、車両の前後方向に延びるリテーナ側面部と、該リテーナ側面部の一方の縁から張り出し、車両の前後方向に所定の間隔を隔てた複数の第1リテーナ張り出し上面と、該リテーナ側面部の他方の縁から張り出し、車両の前後方向に所定の間隔を隔てた複数の第2リテーナ張り出し面とを備えたほぼコの字状の断面を有し、
前記リテーナは、前記可動外側レールに対して、それぞれのコの字状の断面により形成される開放部を互いに対向させた状態で、前記複数の第1リテーナ張り出し面を前記第1張り出し可動面と前記第1張り出し固定面との間に、かつ前記複数の第2リテーナ張り出し下面を前記第2張り出し可動面と前記第2張り出し固定面との間に設置するように位置決めされ、
前記複数の第1リテーナ張り出し面および前記複数の第2リテーナ張り出し面はそれぞれ、ボールを保持するための保持部を有し、
それにより、前記ボールが、前記第1張り出し可動面と前記第1張り出し固定面との間、および前記第2張り出し可動面と前記第2張り出し固定面との間で転動することにより、前記可動外側レールが前記リテーナとともに、前記固定内側レールに対して、車両の前後方向に移動可能である、車両用シートのスライド構造において、
前記可動側面、前記固定側面および前記リテーナ側面部が、車両の高さ方向に沿って配置され、それにより、前記固定内側レール可動および前記可動外側レールがいずれも、車両の高さ方向に縦長断面となるように配置され、
前記第1張り出し可動面および前記第2張り出し可動面はそれぞれ、その内面に、車両の前後方向に延びる第1弧状断面溝を有し、
前記第1張り出し固定面および前記第2張り出し固定面はそれぞれ、その外面に、車両の前後方向に延びる第2弧状断面溝を有し、
前記第1弧状断面溝および前記第2弧状断面溝とにより、前記ボールを前後方向に案内するための案内溝を形成し、
前記第1弧状断面溝に対応する部分に密着し、該部分に対して外側からあてがう可動外側レール補強用ブラケットが、前記可動外側レールの車両後方側の端部に設けられ、
該可動外側レール補強用ブラケットには、その下面に前記可動外側レールの変形防止用の補強ビードが設けられ、
前記固定内側レールの車両後方側の端部には、前記第2弧状断面溝に対応する部分に密着し、該部分に対して内側からあてがう前記固定内側レール変形防止用ブラケットが設けられる、ことを特徴とする車両用シートのスライド構造。
【請求項2】
前記固定内側レールは、車両前方側および車両後方側それぞれに、車床に固定するための固定ブラケットが設けられ、
前記可動外側レール補強用ブラケットは、前記可動外側レールが、前記固定内側レールに対して車両最後方位置にあるときに、前記車両後方側固定ブラケットから車両後方に向かってオーバハングする部分に設けられる、請求項1に記載の車両用シートのスライド構造。
【請求項3】
前記レール構造は、車両の幅方向に間隔を隔て、互いに平行に配置された一対のレール構造である、請求項1に記載の車両用シートのスライド構造。
【請求項4】
前記可動外側レール補強用ブラケットは、ほぼコの字の断面を有するプレートである、請求項1に記載の車両用シートのスライド構造。
【請求項5】
前記固定内側レール補強用ブラケットは、プレート状であり、車両の前後方向端部それぞれに、前記固定内側レールにあてがうあてがい部を有する、請求項1に記載の車両用シートのスライド構造。
【請求項6】
前記固定内側レール補強用ブラケットは、前記固定内側レールを車床に固定するための固定ブラケットに対して、前記固定内側レールとともに共絞めされる、請求項5に記載の車両用シートのスライド構造。
【請求項7】
請求項1に記載の車両用シートのスライド構造を有することを特徴とする車両用クッションシート。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用クッションシートと、車両用バックシートと、車両用バックシートを車両用クッションシートに対して傾動可能とするリクライナーとを有することを特徴とする車両用シート。
【請求項9】
前記保持部は、前記複数の第1リテーナ張り出し面のそれぞれ、および前記複数の第2リテーナ張り出し面のそれぞれに設けられた貫通穴である、請求項1に記載の車両用シートのスライド構造。
【請求項10】
前記保持部は、前記複数の第1リテーナ張り出し面の側縁のそれぞれ、および前記複数の第2リテーナ張り出し面の側縁のそれぞれに設けられた凹部である、請求項1に記載の車両用シートのスライド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−120554(P2010−120554A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297292(P2008−297292)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】