説明

車両用ターンレバースイッチ装置

【課題】車両用ECUに複雑な制御回路を不要とし、コストの低廉化を図ることができる車両用ターンレバースイッチ装置を提供する。
【解決手段】ステアリングシャフトの回転によって左折指示回動位置又は右折指示回動位置から中立位置に回動復帰するスイッチレバー3と、スイッチレバー3を中立位置から左折指示回動位置又は右折指示回動位置に回動操作によって回動させ、回動操作の解除によって初期操作位置に回動復帰するターンレバー5と、ターンレバー5の回動によってその回動平面と直交する平面内で進退する係止ピース6とを備え、係止ピース6は、スイッチレバー3が中立位置に配置された状態においてスイッチレバー3を係止する位置に保持され、スイッチレバー3が左折指示回動位置又は右折指示回動位置に配置された状態においてスイッチレバー3との係止状態を解除する位置に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ターンレバースイッチ装置に関し、特にステアリングシャフトの回転によって左折指示回動位置又は右折指示回動位置からニュートラル(中立)位置に回動復帰可能な方向指示スイッチ操作用レバーを備えた車両用ターンレバースイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ターンレバースイッチ装置として、ターンシグナルスイッチ(方向指示スイッチ)の接点を切り替えるためのターンレバーを備えたものがある(特許文献1)。
【0003】
この車両用ターンレバースイッチ装置は、前述したターンレバーと、ステアリングホイールの回転操作によって回転するキャンセルカムと、このキャンセルカム及びターンレバーの回動によって回動可能なブラケットと、このブラケットにキャンセルカムの回転力を回動復帰力として伝達可能なラチェットとから構成されている。
【0004】
キャンセルカムは、カム部を有し、ステアリングコラム内を挿通するステアリングシャフトの外周面に配設されている。そして、ステアリングシャフトと共に回転するように構成されている。
【0005】
ブラケットは、1対の回動復帰力受部を有し、ステアリングコラムの外周面にスイッチ搭載用のベースを介して回動自在に保持され、かつターンレバーに連結されている。そして、ターンレバーの反時計方向(左折指示回動方向)又は時計方向(右折指示回動方向)への回動操作によって中立位置から左折指示回動位置又は右折指示回動位置に向かって回動し、またステアリングホイールのキャンセル方向(ターンレバーの回動復帰方向)への回動操作(キャンセルカムの回動)によるラチェットの回動によって一方の回動復帰力受部又は他方の回動復帰力受部から回動復帰力を受け、左折指示回動位置又は右折指示回動位置から中立位置に回動復帰するように構成されている。なお、スイッチ搭載用のベースには、ブラケット(ターンレバー)の回動位置に応じて接点が切り替わる方向指示スイッチが搭載されている。
【0006】
ラチェットは、キャンセルカムとブラケットとの間に進退可能に配設され、かつ1対の回動復帰力受部間に回動可能に保持されている。そして、方向指示スイッチの中立(OFF)状態(ターンレバーが中立位置に配置された状態)において全体がカム部の回動領域外に、また方向指示スイッチの左折指示状態(ターンレバーが左折指示回動位置に配置された状態)又は右折指示状態(ターンレバーが右折指示回動位置に配置された状態)において一部(キャンセルカム側端部)がカム部の回動領域内にそれぞれ配置されている。
【0007】
以上の構成により、ターンレバーを中立位置から左折指示回動方向に回動操作して左折指示回動位置に配置すると、ブラケットが同方向に回動して方向指示スイッチが左折指示状態とされるとともに、ラチェットがキャンセルカム側に進行してそのキャンセルカム側端部がカム部の回動領域外から回動領域内に配置される。この状態において、ステアリングホイールをターンレバー回動復帰方向(時計方向)に回動操作すると、ラチェットが反時計方向に回動して一方の回動復帰力受部を押圧し、このラチェットの押圧によってブラケット及びターンレバーが時計方向に回動し、方向指示スイッチがOFF状態とされるとともに、ターンレバーが左折指示回動位置から中立位置に回動復帰する。
【0008】
一方、ターンレバーを中立位置から右折指示回動方向に回動操作して右折指示回動位置に配置すると、ブラケットが同方向に回動して方向指示スイッチが右折指示状態とされるとともに、ラチェットがキャンセルカム側に進行してそのキャンセルカム側端部がカム部の回動領域外から回動領域内に配置される。この状態において、ステアリングホイールをターンレバー回動復帰方向(反時計方向)に回動操作すると、ラチェットが時計方向に回動して他方の回動復帰力受部を押圧し、このラチェットの押圧によってブラケット及びターンレバーが反時計方向に回動し、方向指示スイッチがOFF状態とされるとともに、ターンレバーが右折指示回動位置から中立位置に回動復帰する。
【特許文献1】特開2006−347447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、この種の車両用ターンレバースイッチ装置においては、例えば車両内の操作スペースを有効利用するために、ターンレバーの左折指示回動位置又は右折指示回動位置への回動操作後にその回動操作の解除によってターンレバーを左折指示回動位置又は右折指示回動位置から中立位置に回動復帰させる機構を備えたものが採用されている。
【0010】
この場合、ターンレバーの左折指示回動位置又は右折指示回動位置への回動によってその可動接点部がベース側の左折指示用固定接点部又は右折指示用固定接点部に接触すると、車両用ECU(Electronic Control Unit)では左折指示時に左折指示スイッチON信号を処理して左折指示スイッチON状態を、また右折指示時に右折指示スイッチON信号を処理して右折指示スイッチON状態をそれぞれ保持することが行われる。
【0011】
このため、車両用ECUに複雑な制御回路を必要とし、コストが嵩むという問題があった。
【0012】
従って、本発明の目的は、車両用ECUに複雑な制御回路を不要とし、もってコストの低廉化を図ることができる車両用ターンレバースイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、ステアリングシャフトの回転によって左折指示回動位置又は右折指示回動位置から中立位置に回動復帰する方向指示スイッチ操作用のスイッチレバーと、前記スイッチレバーを前記中立位置から前記左折指示回動位置又は右折指示回動位置に回動操作によって回動させ、前記回動操作の解除によって初期操作位置に回動復帰するスイッチレバー操作用のターンレバーと、前記ターンレバーに進退可能に保持され、前記ターンレバーの回動によってその回動平面と直交する平面内で進退する係止部材とを備え、前記係止部材は、前記スイッチレバーが前記中立位置に配置された状態において前記スイッチレバーを係止する位置に保持され、前記スイッチレバーが前記左折指示回動位置又は右折指示回動位置に配置された状態において前記スイッチレバーとの係止状態を解除する位置に保持されていることを特徴とする車両用ターンレバースイッチ装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、車両用ECUに複雑な制御回路を不要とし、コストの低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置の外観を示す平面図である。図2は、本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置を説明するために示す断面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置の内部構造を示す平面図である。図4は、本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置におけるスイッチレバーの中立位置から左折指示回動位置への回動動作を説明するために示す平面図である。図5は、本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置におけるスイッチレバーの中立位置から右折指示回動位置への回動動作を説明するために示す平面図である。図6は、本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置の係止部材によるスイッチレバーの係止状態を示す断面図である。
【0016】
〔車両用ターンレバースイッチ装置の全体構成〕
図1〜図5において、符号1で示す車両用ターンレバースイッチ装置は、ステアリングホイール(図示せず)の回転操作によって回転するキャンセルカム2と、このキャンセルカム2の回転(回動)によって左折指示回動位置又は右折指示回動位置から中立位置に回動復帰する方向指示スイッチ操作用のスイッチレバー3と、このスイッチレバー3にキャンセルカム2の回転力を回動復帰力として伝達可能なラチェット4と、このラチェット4の回動動作と独立して初期レバー操作位置に回動復帰可能なスイッチレバー操作用のターンレバー5と、このターンレバー5をスイッチレバー3に係止可能な係止ピース(プッシャー)6とから大略構成されている。
【0017】
(キャンセルカム2の構成)
キャンセルカム2は、図1〜図5に示すように、ステアリングコラム(図示せず)内を中心軸線に沿って挿通するステアリングシャフト(図示せず)の外周面に配設されている。そして、ステアリングシャフトと共に矢印A1方向(時計方向)又は矢印A2方向(反時計方向)に回転するように構成されている。キャンセルカム2の外周面には、円周方向に所定の間隔をもって並列する1対のカム部20,20が一体に設けられている。キャンセルカム2の内周面には、円周方向に所定の間隔(等間隔)をもって並列する複数(実施の形態では3個)のカム取付部21,21,…が一体に設けられている。
【0018】
(スイッチレバー3の構成)
スイッチレバー3は、図2〜図6に示すように、ターンレバー5を回動可能に収容する箱状のレバー収容部30を有し、ステアリングコラムの外周面にスイッチ回路形成用のベース7(ベースカバー7A)を介して回動可能に保持され、かつ節度機構8によって中立位置及び左折・右折指示回動位置のうちいずれかの位置に選択的に配置されている。そして、ターンレバー5による回動操作によって中立位置から左折指示回動方向(反時計方向:矢印B1方向)又は右折指示回動方向(時計方向:矢印B2方向)に枢支ピン50,50(後述)を回動中心として回動し、左折指示回動位置又は右折指示回動位置に位置するように構成されている。これにより、方向指示スイッチ100の接点が切り替えられる。また、スイッチレバー3は、ステアリングホイールのキャンセル方向(スイッチレバー回動復帰方向)への回動操作(キャンセルカム2の回動)によるラチェット4の回動によって一方の回動復帰力受部34又は他方の回動復帰力受部35(共に後述)から回動復帰力を受け、左折指示回動位置又は右折指示回動位置から中立位置に回動復帰するように構成されている。
【0019】
スイッチレバー3には、図6に示すように、レバー収容部30の内外に開口し、かつ係止ピース6を進退可能に挿通させるガイド面31A付きのピース挿通孔31が設けられている。また、スイッチレバー3には、キャンセルカム側に開口し、かつ節度ピース8Aを進退可能に保持する凹部32が設けられている。凹部32内には、節度ピース8Aを節度面8Bに圧接するピース押圧用スプリング8Cが弾装(収容)されている。
【0020】
スイッチレバー3の底面部(表面側)には、ターンレバー回動方向に沿って並列し、かつターンレバー5の回動を規制する1対のレバー回動規制部(図示せず)が設けられている。スイッチレバー3の底面部(裏面側)には、方向指示スイッチ100を固定接点部(後述)と共に構成する可動接点部としての可動接触子33,33,…が配設されている。
【0021】
スイッチレバー3のキャンセルカム側端部には、ラチェット4の回動方向に所定の間隔をもって並列する回動復帰力受部34,35が設けられている。また、スイッチレバー3のキャンセルカム側端部には、回動復帰力受部34,35間に介在するガイド溝36が設けられている。ガイド溝36には、そのキャンセルカム側の内面一部にターンレバー操作側に向かって開口する凹部37,38、及びこれら凹部37,38間に介在してターンレバー操作側に突出する凸部39が設けられている。
【0022】
ベース7には、可動接触子33,33,…に対応する固定接点部としての左折指示用固定接触子70,70,…及び右折指示用固定接触子71,71,…が設けられている。また、ベース7(ベースカバー7A)には、ラチェット4がカム部20,20の回動領域9の内外を進退する方向(矢印C1方向及び矢印C2方向)に延びる長孔72、及びスイッチレバー側に開口するガイド面73A付きの凹部73が設けられている。
【0023】
ベース7のキャンセルカム側端部には、ラチェット4の進退方向(矢印C1方向及び矢印C2方向)と直交する方向に並列し、かつラチェット復帰用スプリング(図示せず)を伸張した状態でその両端部をそれぞれ係止する係止ピン(図示せず)が突設されている。また、ベース7のキャンセルカム側端部には、ラチェット4の進退方向に並列し、かつスイッチレバー3を案内する大小2つの円弧ガイド75,76が設けられている。
【0024】
なお、節度機構8は、ベース7に設けられた凹凸状の節度面8B、この節度面8Bに圧接する節度ピース8A、及びこの節度ピース8Aを節度面8Bに圧接する方向の弾撥力を付与するピース押圧用スプリング8Cからなり、例えば特開平10−236225号公報に本出願人によって先に開示されている。
【0025】
(ラチェット4の構成)
ラチェット4は、図1〜図5に示すように、ベース7(ベースカバー7A)の長孔72及びスイッチレバー3のガイド溝36にそれぞれピン各端部が臨む枢支ピン40,40を有し、キャンセルカム2のターンレバー操作側に進退可能に配設され、かつ回動復帰力受部34,35間に回動可能に保持されている。そして、方向指示スイッチ100の中立(OFF)状態(スイッチレバー3が中立位置に配置された状態)において、枢支ピン40,40がそれぞれ長孔72のターンレバー操作側端部とガイド溝36の凸部39近傍に移動し、ラチェット全体がカム部20,20の回動領域9外に配置されている。また、方向指示スイッチ100の左折指示状態(スイッチレバー3が左折指示回動位置に配置された状態)又は右折指示状態(スイッチレバー3が右折指示回動位置に配置された状態)において、枢支ピン40,40がそれぞれ長孔72のキャンセルカム側端部とガイド溝36の凹部37又は凹部38に移動し、ラチェット一部(キャンセルカム側端部)がカム部20,20の回動領域9内に配置されている。
【0026】
ラチェット4のキャンセルカム側端部には、キャンセルカム2の回転力(キャンセル力等)をカム部20,20から受けるキャンセル力受部41が突設されている。ラチェット4のキャンセルカム側端部の裏面(スイッチレバー側の面)には、キャンセル力受部41のターンレバー操作側に位置し、かつラチェット復帰用スプリングを掛け渡すスプリング掛け渡し部(図示せず)が設けられている。
【0027】
ラチェット4のターンレバー操作側端部には、スイッチレバー3の回動復帰力受部側に突出する回動復帰力伝達部42,43が一体に設けられている。
【0028】
(ターンレバー5の構成)
ターンレバー5は、図2〜図6に示すように、レバー保持部5A及びレバー操作部5Bからなり、ラチェット4とスイッチレバー3(節度ピース8A)との間に回動可能に配置され、かつスイッチレバー3に係止ピース6を介して係脱可能に連結されている。そして、ターンレバー5の回動操作によってスイッチレバー3を枢支ピン50,50の回りに中立位置から左折指示回動位置に向かって矢印B1方向(左折指示回動方向)に、中立位置から右折指示回動位置に向かって矢印B2方向(右折指示回動方向)にそれぞれ回動させるように構成されている。また、ターンレバー5は、その回動操作の解除(操作の解放)によってピース押圧用スプリング10C(後述)の弾撥力を受け、左折指示レバー操作位置又は右折指示レバー操作位置から初期レバー操作位置に回動復帰するように構成されている。
【0029】
レバー保持部5Aは、枢支ピン50,50を有し、ベース7(ベースカバー7A)に枢支ピン50,50を介して回動可能に保持されている。レバー保持部5Aには、キャンセルカム側に開口し、かつ節度ピース10Aを進退可能に保持する凹部51が設けられている。凹部51内には、節度ピース10Aを節度面10Bに圧接し、かつターンレバー5を初期レバー操作位置に回動復帰させるピース(節度ピース)押圧用スプリング10Cが弾装(収容)されている。また、レバー保持部5Aには、ベースカバー側に開口し、かつ係止ピース6を進退可能に保持する凹部52が設けられている。凹部52内には、係止ピース6をベース7(ベースカバー7A)の凹部73内に進行させる方向の弾撥力をもつピース(係止ピース)押圧用スプリング11が弾装(収容)されている。
【0030】
節度面10Bは、節度ピース10A及びピース押圧用スプリング10Cと共に節度機構10を構成し、ベース7に設けられている。そして、ターンレバー5に初期レバー操作位置への回動復帰力としてピース押圧用スプリング10Cの弾撥力を付与するために、キャンセルカム側からターンレバー操作側に向かって開口する傾斜部付きの凹面によって形成されている。
【0031】
レバー操作部5Bは、枢支ピン50,50のピン軸線に直交するピン軸線をもつ枢支ピン53を有し、レバー保持部5Aに枢支ピン53を介して回動可能に保持されている。そして、スイッチレバー操作部として機能するとともに、ディマ・パッシング切替用操作部として機能するように構成されている。
【0032】
(係止ピース6の構成)
係止ピース6は、図2〜図6に示すように、ターンレバー5(レバー保持部5Aの凹部52内)に進退可能に保持されている。そして、ターンレバー5の回動によってその回動平面と直交する平面内で凹部73の内外を進退し、スイッチレバー3を係脱(係止・離脱)するように構成されている。これにより、係止ピース6がピース押圧用スプリング11の弾撥力を受けて凹部73内に進行し、ターンレバー5をスイッチレバー3に係止する位置に、またピース押圧用スプリング11の弾撥力に抗して凹部73外に退避し、ターンレバー5とスイッチレバー3との係止状態を解除する位置にそれぞれ保持される。このため、ターンレバー5がスイッチレバー3に係止された状態(スイッチレバー3が中立位置に配置され、ターンレバー5が初期レバー操作位置に配置された状態)において、ターンレバー5を中立位置から左折指示回動方向又は右折指示回動方向に回動操作すると、ターンレバー5がスイッチレバー3と共に回動する。そして、スイッチレバー3が左折指示回動位置又は右折指示回動位置に到達すると、ターンレバー5とスイッチレバー3との係止状態が解除され、ターンレバー5がピース押圧用スプリング10Cの弾撥力によって初期レバー操作位置に回動復帰することが可能となる。
【0033】
〔車両用ターンレバースイッチ装置1の動作〕
先ず、「スイッチレバーの左折指示回動位置への回動動作」,「スイッチレバーの左折指示回動位置からの回動復帰(キャンセル)動作」及び「左折指示状態におけるキャンセルカムの反回動復帰方向(順方向)への回動動作」につき、図3及び図4・図7(a),(b)を用いて説明する。
【0034】
図7(a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置におけるターンレバーの左折指示回動動作を説明するために示す断面図である。図7(a)はターンレバーが左折指示レバー操作位置に配置された状態を、また図7(b)はターンレバーが初期レバー操作位置に復帰した状態をそれぞれ示す。
【0035】
なお、スイッチレバー3が中立位置に配置されている状態においては、図3に示すように、ラチェット4のキャンセル力受部41がカム部20,20の回動領域9外に、その枢支ピン40,40が長孔72のターンレバー操作側端部とガイド溝36の凸部39近傍にそれぞれ配置されているものとする。また、係止ピース6がスイッチレバー3のピース挿通孔31を挿通してベースカバー7Aの凹部73内に進行し、スイッチレバー3が係止ピース6を介してターンレバー5に係止されているものとする。
【0036】
「スイッチレバーの左折指示回動位置への回動動作」
図3に示すターンレバー5を初期レバー操作位置から反時計方向(矢印B1方向)に回動操作して図4に示す左折指示レバー操作位置に配置すると、スイッチレバー3が同方向(矢印B1方向)に回動して方向指示スイッチ100が左折指示スイッチON状態とされるとともに、ラチェット4がスイッチレバー側からキャンセルカム側(矢印C1方向)に進行してそのキャンセル力受部41がカム部20,20の回動領域9外から回動領域9内に配置される。
【0037】
この場合、ターンレバー5が矢印B1方向に回動すると、ターンレバー5の回動に伴いスイッチレバー3が図7(a)に矢印mで示すように移動(図4に示すように矢印B1方向に回動)する。そして、スイッチレバー3が左折指示回動位置(ターンレバー5は左折指示レバー操作位置)に到達すると、係止ピース6の凹部73外への退避によってターンレバー5とスイッチレバー3との係止状態が解除される。ここで、ターンレバー5の回動操作を解除(操作を解放)すると、ターンレバー5が図7(b)に示すようにピース押圧用スプリング10Cの弾撥力によって左折指示レバー操作位置から初期レバー操作位置に回動復帰する。また、スイッチレバー3が矢印B1方向に回動すると、ラチェット復帰用スプリングの弾撥力によって一方の枢支ピン40がガイド溝36の凸部39から凹部37内に、他方の枢支ピン40が長孔72のターンレバー操作側端部からキャンセルカム側端部にそれぞれ移動する。
【0038】
「スイッチレバーの左折指示回動位置からのキャンセル動作」
図4に示す方向指示スイッチ100の左折指示スイッチON状態において、ステアリングホイールを時計方向(矢印A1方向)に回動操作すると、キャンセルカム2が同方向(矢印A1方向)に回動してカム部20,20がラチェット4のキャンセル力受部41を押圧し、ラチェット4が反時計方向(矢印D1方向)に回動する。ステアリングホイール(キャンセルカム2)の矢印A1方向への回動操作によってラチェット4が矢印D1方向にさらに回動すると、ラチェット4の回動復帰力伝達部43がスイッチレバー3の回動復帰力受部35を押圧する。そして、回動復帰力伝達部43の回動復帰力受部35への押圧によってスイッチレバー3が時計方向(矢印B2方向)に回動し、方向指示スイッチ100がOFF状態とされるとともに、スイッチレバー3が左折指示回動位置から中立位置に回動復帰する。
【0039】
この場合、スイッチレバー3が矢印B2方向に回動すると、ラチェット復帰用スプリングの弾撥力に抗して一方の枢支ピン40がガイド溝36の凹部37から凸部39の近傍に、また他方の枢支ピン40が長孔72のキャンセルカム側端部からターンレバー操作側端部にそれぞれ移動する。これら枢支ピン40,40の移動に伴い、ラチェット4が矢印C2方向に退避し、キャンセル力受部41がカム部20,20の回動領域9内から回動領域9外に配置される。
【0040】
「左折指示状態におけるキャンセルカムの順方向への回動動作」
図4に示す方向指示スイッチ100の左折指示スイッチON状態において、ステアリングホイールを順方向(反時計方向)に回動操作すると、キャンセルカム2が反時計方向(矢印A2方向)に回動してカム部20,20がラチェット4のキャンセル力受部41を押圧し、このカム部20,20の押圧によってラチェット4が時計方向(ラチェット4の回動復帰力伝達部43がスイッチレバー3の回動復帰力受部35から離間する方向)に回動する。
【0041】
この場合、ステアリングホイールの反時計方向への回動によってキャンセルカム2が反時計方向に回動し、キャンセルカム2のカム部20,20がラチェット4のキャンセル力受部41を乗り越えると、ラチェット4が反時計方向(ラチェット4の回動復帰力伝達部43がスイッチレバー3の回動復帰力受部35に接近する方向)にラチェット復帰用スプリングの弾撥力によって回動復帰する。
【0042】
次に、「スイッチレバーの右折指示回動位置への回動動作」,「スイッチレバーの右折指示回動位置からの回動復帰(キャンセル)動作」及び「右折指示状態におけるキャンセルカムの反回動復帰方向(順方向)への回動動作」につき、図3及び図5・図8(a),(b)を用いて説明する。
【0043】
図8(a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置におけるターンレバーの右折指示回動動作を説明するために示す断面図である。図8(a)はターンレバーが右折指示レバー操作位置に配置された状態を、また図8(b)はターンレバーが初期レバー操作位置に復帰した状態をそれぞれ示す。
【0044】
「スイッチレバーの右折指示回動位置への回動動作」
図3に示すターンレバー5を初期レバー操作位置から時計方向(矢印B2方向)に回動操作して図5に示す右折指示レバー操作位置に配置すると、スイッチレバー3が同方向(矢印B2方向)に回動して方向指示スイッチ100が右折指示スイッチON状態とされるとともに、ラチェット4がスイッチレバー側からキャンセルカム側(矢印C1方向)に進行してそのキャンセル力受部41がカム部20,20の回動領域9外から回動領域9内に配置される。
【0045】
この場合、ターンレバー5が矢印B2方向に回動すると、ターンレバー5の回動に伴いスイッチレバー3が図8(a)に矢印nで示すように移動(図5に示すように矢印B2方向に回動)する。そして、スイッチレバー3が右折指示回動位置(ターンレバー5は右折指示レバー操作位置)に到達すると、係止ピース6の凹部73外への退避によってターンレバー5とスイッチレバー3との係止状態が解除される。ここで、ターンレバー5の回動操作を解除(操作を解放)すると、ターンレバー5が図8(b)に示すようにピース押圧用スプリング10Cの弾撥力によって右折指示レバー操作位置から初期レバー操作位置に回動復帰する。また、スイッチレバー3が矢印B2方向に回動すると、ラチェット復帰用スプリングの弾撥力によって一方の枢支ピン40がガイド溝36の凸部39近傍から凹部38内に、他方の枢支ピン40が長孔72のターンレバー操作側端部からキャンセルカム側端部に移動する。
【0046】
「スイッチレバーの右折指示回動位置からのキャンセル動作」
図5に示す方向指示スイッチ100の右折指示スイッチON状態において、ステアリングホイールを反時計方向(矢印A2方向)に回動操作すると、キャンセルカム2が同方向(矢印A2方向)に回動してカム部20,20がラチェット4のキャンセル力受部41を押圧し、ラチェット4が時計方向(矢印D2方向)に回動する。ステアリングホイール(キャンセルカム2)の矢印A2方向への回動操作によってラチェット4が矢印D2方向にさらに回動すると、ラチェット4の回動復帰力伝達部42がスイッチレバー3の回動復帰力受部34を押圧する。そして、回動復帰力伝達部42の回動復帰力受部34への押圧によってスイッチレバー3が反時計方向(矢印B1方向)に回動し、方向指示スイッチ100がOFF状態とされるとともに、スイッチレバー3が右折指示回動位置から中立位置に回動復帰する。
【0047】
この場合、スイッチレバー3が矢印B1方向に回動すると、ラチェット復帰用スプリングの弾撥力に抗して一方の枢支ピン40がガイド溝36の凹部38から凸部39の近傍に、また他方の枢支ピン40が長孔72のキャンセルカム側端部からターンレバー操作側端部にそれぞれ移動する。これら枢支ピン40,40の移動に伴い、ラチェット4が矢印C2方向に退避し、キャンセル力受部41がカム部20,20の回動領域9内から回動領域9外に配置される。
【0048】
「右折指示状態におけるキャンセルカムの順方向への回動動作」
図5に示す方向指示スイッチ100の右折指示スイッチON状態において、ステアリングホイールを順方向(時計方向)に回動操作すると、キャンセルカム2が時計方向(矢印A1方向)に回動してカム部20,20がラチェット4のキャンセル力受部41を押圧し、このカム部20,20の押圧によってラチェット4が反時計方向(ラチェット4の回動復帰力伝達部42がスイッチレバー3の回動復帰力受部34から離間する方向)に回動する。
【0049】
この場合、ステアリングホイールの時計方向への回動によってキャンセルカム2が時計方向に回動し、キャンセルカム2のカム部20,20がラチェット4のキャンセル力受部41を乗り越えると、ラチェット4が時計方向(ラチェット4の回動復帰力伝達部42がスイッチレバー3の回動復帰力受部34に接近する方向)にラチェット復帰用スプリングの弾撥力によって回動復帰する。
【0050】
[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0051】
ターンレバー5が左折指示レバー操作位置又は右折指示レバー操作位置への回動操作後にその回動操作の解除によって初期レバー操作位置に回動復帰し、一方スイッチレバー3が方向指示スイッチ100の左折指示スイッチON状態又は右折指示スイッチON状態を保持するため、従来必要とした車両用ECUに複雑な制御回路が不要になり、コストの低廉化を図ることができる。
【0052】
以上、本発明の車両用ターンレバースイッチ装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0053】
(1)本実施の形態では、左折指示又は右折指示時にターンレバー5の回動操作力が係止ピース6を介してスイッチレバー3に伝達される構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばターンレバーの回動方向両側に1対のレバー押圧部を設け、これら各レバー押圧部を介してターンレバーの回動操作力がスイッチレバーに伝達される構成としてもよい。
【0054】
(2)本実施の形態では、スイッチレバー3(節度ピース8A)とラチェット4との間にターンレバー5が配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばラチェットとターンレバーとの間にスイッチレバー(節度ピース)を配置してもよく、その配置構造は適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置の外観を示す平面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置を説明するために示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置の内部構造を示す平面図。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置におけるスイッチレバーの中立位置から左折指示回動位置への回動動作を説明するために示す平面図。
【図5】本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置におけるスイッチレバーの中立位置から右折指示回動位置への回動動作を説明するために示す平面図。
【図6】本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置の係止部材によるスイッチレバーの係止状態を示す断面図。
【図7】(a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置におけるターンレバーの左折指示回動動作を説明するために示す断面図。
【図8】(a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る車両用ターンレバースイッチ装置におけるターンレバーの右折指示回動動作を説明するために示す断面図。
【符号の説明】
【0056】
1…車両用ターンレバースイッチ装置
2…キャンセルカム、20…カム部、21…カム取付部
3…スイッチレバー、30…レバー収容部、31…ピース挿通孔、31A…ガイド面、32…凹部、33…可動接触子、34,35…回動復帰力受部、36…ガイド溝、37,38…凹部、39…凸部
4…ラチェット、40…枢支ピン、41…キャンセル力受部、42,43…回動復帰力伝達部
5…ターンレバー、5A…レバー保持部、5B…レバー操作部、50…枢支ピン、51,52…凹部、53…枢支ピン
6…係止ピース
7…ベース、7A…ベースカバー、70…左折指示用固定接触子、71…右折指示用固定接触子、72…長孔、73…凹部、73A…ガイド面、75,76…円弧ガイド
8…節度機構、8A…節度ピース、8B…節度面、8C…ピース(節度ピース)押圧用スプリング
9…回動領域
10…節度機構、10A…節度ピース、10B…節度面、10C…ピース(節度ピース)押圧用スプリング
11…ピース(係止ピース)押圧用スプリング
100…方向指示スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトの回転によって左折指示回動位置又は右折指示回動位置から中立位置に回動復帰する方向指示スイッチ操作用のスイッチレバーと、
前記スイッチレバーを前記中立位置から前記左折指示回動位置又は右折指示回動位置に回動操作によって回動させ、前記回動操作の解除によって初期操作位置に回動復帰するスイッチレバー操作用のターンレバーと、
前記ターンレバーに進退可能に保持され、前記ターンレバーの回動によってその回動平面と直交する平面内で進退する係止部材とを備え、
前記係止部材は、前記スイッチレバーが前記中立位置に配置された状態において前記スイッチレバーを係止する位置に保持され、前記スイッチレバーが前記左折指示回動位置又は右折指示回動位置に配置された状態において前記スイッチレバーとの係止状態を解除する位置に保持されている
ことを特徴とする車両用ターンレバースイッチ装置。
【請求項2】
前記スイッチレバーは、前記ターンレバーを回動可能に収容する箱状の収容部を有し、前記収容部に前記係止部材を進退可能に挿通させる挿通孔が設けられている請求項1に記載の車両用ターンレバースイッチ装置。
【請求項3】
前記係止部材は、前記ターンレバーを前記スイッチレバーに係止する方向の弾撥力がスプリングによって常時付与されている請求項1に記載の車両用ターンレバースイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−143320(P2009−143320A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321234(P2007−321234)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】