説明

車両用ディスクブレーキ

【課題】簡単な構造でバーハンドル車両としての前後輪ブレーキのバランスの向上を図ることができるとともに、液圧配管の短縮化を図ることのできるラジアルマウント構造の多ポット対向型二系統式の車両用ディスクブレーキを提供する。
【解決手段】ピストンを収容する複数のシリンダ孔をそれぞれ備えた一対の作用部12a,12bを、ディスクロータ11の外周側を跨ぐブリッジ部12e,12fで連結してキャリパボディ12を形成する。連動系ブレーキ系統の第2ピストン17を作用部12a,12bの車両前進時におけるディスク回出側に配置する。一方の作用部12aのディスク回入側とディスク回出側とにディスク半径方向の取付ボルト挿通孔12dを形成し、該取付ボルト挿通孔12dにそれぞれ挿通したディスク半径方向の取付ボルトによりキャリパボディ12を車体に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等のバーハンドル車両の前輪に用いられる車両用ディスクブレーキに係り、詳しくは、二系統式の複数のピストンを対向して設けた多ポット対向型で、これら複数のピストンを二つのブレーキ系統で作動するようにした二系統式の車両用ディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンを収容する複数のシリンダ孔をそれぞれ備えた一対の作用部を、ディスクロータの外周側を跨ぐブリッジ部で連結したキャリパボディを備え、第1,第2ブレーキ操作子のいずれの操作によっても制動が可能な二系統式の車両用ディスクブレーキでは、一方の作用部のディスク回出側とディスクロータ内周側とに車体取付腕が突設され、該車体取付腕と、フロントフォークのキャリパ取付腕とを取付ボルトで連結して、キャリパボディをフロントフォークに片持ち支持するようにしている。この二系統式の車両用ディスクブレーキでは、第1ブレーキ操作子を操作して、前輪だけに制動力を与える場合には、前輪に大きな制動力が得られるようにし、また、第2ブレーキ操作子を操作して、前輪と後輪の双方に制動力を与える場合には、前輪による制動力を小さく抑えて、車体前後部にバランスの良い制動力が得られるように、支持剛性の高いキャリパボディの車体連結側に単独系のピストンを、制動反力による影響を受けやすいキャリパボディの反車体連結側に連動系のピストンを配置してバーハンドル車両としての前後輪ブレーキのバランスの向上を図ったものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、近年、キャリパボディの着脱性の向上を図るため、キャリパボディの一方の作用部のディスク回入側と回出側とにディスク半径方向の取付ボルト挿通孔をそれぞれ設け、該取付ボルト挿通孔に挿通した取付ボルトを車体側のキャリパ取付部にねじ込んでキャリパボディを車体に取り付けるようにしたラジアルマウント構造のものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平10−250667号公報
【特許文献2】特開2001−271857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のように、キャリパボディを片持ち支持する構造の二系統式のディスクブレーキを備えたバーハンドル車両の前後輪ブレーキのバランスの向上を図っているものは提案されているが、特許文献2のように、キャリパボディの制動反力による影響が片持ち支持構造のものとは異なるラジアルマウント構造の二系統式のディスクブレーキを備えたバーハンドル車両の前後輪ブレーキのバランスを効果的に向上させるものはなかった。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構造でバーハンドル車両としての前後輪ブレーキのバランスの向上を図ることができるとともに、液圧配管の短縮化を図ることのできるラジアルマウント構造の多ポット対向型二系統式の車両用ディスクブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキは、ピストンを収容する複数のシリンダ孔をそれぞれ備えた一対の作用部を、ディスクロータの外周側を跨ぐブリッジ部で連結したキャリパボディを備えた前輪用ディスクブレーキであって、各作用部のピストンの前面とディスクロータの側面との間にそれぞれ摩擦パッドを配置し、前記ディスクロータを挟んで対向する少なくとも1組の第1ピストンを、第1ブレーキ操作子の操作によって作動し、前記第1ピストンに対応する第1摩擦パッドを前記ディスクロータに押圧させる単独系のピストンとし、他の第2ピストンを第2ブレーキ操作子の操作によって後輪用ブレーキと共に作動させ、前記第2ピストンに対応する第2摩擦パッドを前記ディスクロータに押圧させる連動系のピストンとした多ポット対向型二系統式の車両用ディスクブレーキにおいて、前記第2ピストンを前記作用部の車両前進時におけるディスク回出側に配置するとともに、一方の作用部のディスク回入側とディスク回出側とにディスク半径方向の取付ボルト挿通孔を形成し、該取付ボルト挿通孔にそれぞれ挿通したディスク半径方向の取付ボルトにより前記キャリパボディを車体に連結することを特徴としている。
【0007】
また、制動時にディスクロータと摺接する前記第1摩擦パッド総面積を、前記第2摩擦パッド総面積より大きくしたり、前記第1ピストンが第1摩擦パッドと当接する総面積を、前記第2ピストンが第2摩擦パッドに当接する総面積より大きくしたり、或いは、前記第1ピストンの数を、前記第2ピストンの数よりも多くしても良い。
【0008】
さらに、前記ブリッジ部に前記単独系の油圧経路のエア抜きを行うブリューダ孔が形成されていると好適で、前記第1ピストンを2組以上備え、各作用部の隣り合う第1ピストンを収容するシリンダ孔を連通孔でそれぞれ連通させるとともに、前記シリンダ孔の1つにシリンダ孔外周側に膨出する膨出部を設け、該膨出部と前記ブリューダ孔とを接続させるとともに、前記連通孔と膨出部とは、キャリパボディの鋳造時に中子の一部を用いて形成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用ディスクブレーキによれば、ラジアルマウント構造のキャリパボディであることから、制動力の大きい単独系のピストンがディスク回入側に配置されていても、制動トルクをディスク回出側の取付ボルトで確実に受けることができるとともに、キャリパボディのディスク回入側の浮き上がりをディスク回入側の取付ボルトで抑制することがき、制動トルクによる影響を受け難い。これにより、ディスクロータの回出側に制動力の小さい連動系のピストンを配置し、ディスクロータの回入側に制動力の大きい単独系のピストンを配置しても良好なバーハンドル車両としての前後輪ブレーキのバランスを確保することができるとともに、連動側が車体上方を向くことから、連動側の液圧配管の短縮を図ることができる。
【0010】
また、第1摩擦パッドが制動時にディスクロータと摺接する総面積を、前記第2摩擦パッドが制動時にディスクロータと摺接する総面積より大きくすること、または、第1ピストンが第1摩擦パッドと当接する総面積を、前記第2ピストンが第2摩擦パッドに当接する総面積より大きくすること、或いは、第1ピストンの数を、前記第2ピストンの数よりも多くすることにより、簡単な構造で、第1ブレーキ操作子を操作して、前輪だけに制動力を与える場合には、前輪に大きな制動力が得られるようにし、また、第2ブレーキ操作子を操作して、前輪と後輪の双方に制動力を与える場合には、前輪による制動力を小さく抑えて、車体前後部にバランスの良い制動力を効果的に得ることができる。
【0011】
さらに、キャリパボディのブリッジ部に単独系の油圧経路のエア抜きを行うブリューダ孔を形成したことにより、単独系の油圧経路のエア抜きを良好に行うことができる。また、シリンダ孔の1つにシリンダ孔外周側に膨出する膨出部を設け、該膨出部と前記ブリューダ孔とを接続させることから、ブリューダ孔の加工性が向上するとともに、前記連通孔と膨出部とは、キャリパボディの鋳造時に中子の一部を用いて形成されることから、連通孔や膨出部をキャリパ鋳造時に簡単に形成することができ、加工時間の短縮やコストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1乃至図6は本発明の車両用ディスクブレーキの一形態例を示すもので、図1は図5のI-I断面図、図2はディスクブレーキの断面平面図、図3はディスクブレーキの断面側面図、図4は図3のIV-IV断面図、図5はディスクブレーキの平面図、図6はブレーキ装置の系統図である。なお、矢印Aは車両前進時に前輪と一体に回転するディスクロータの回転方向とし、以下で述べるディスク回出側及びディスク回入側とは車両前進時におけるものとする。
【0013】
バーハンドル用のブレーキ装置1は、図6に示されるように、第1ブレーキ操作子2の操作にて、前輪用のディスクブレーキ3を単独で作動する単独系ブレーキ系統4と、第2ブレーキ操作子5の操作にて、上記前輪用のディスクブレーキ3と後輪用のディスクブレーキ6とを作動する連動系ブレーキ系統7とを有している。
【0014】
前輪用のディスクブレーキ3は、第1ブレーキ操作子2と一体の第1液圧マスタシリンダ2aと液圧配管8にて接続されるとともに、第2ブレーキ操作子5と一体の第2液圧マスタシリンダ5aと液圧配管9,10にて接続されていて、第1,第2ブレーキ操作子2,5のいずれの操作によっても前輪の制動が可能な二系統式の構造となっている。また、このディスクブレーキ3は、フロントフォークFの下端で、前輪と一体に回転するディスクロータ11と、該ディスクロータ11の一側部で車体に取り付けられるキャリパボディ12と、ディスクロータ11の両側部に配設されるキャリパボディ12の作用部12a,12b間に、ディスクロータ11を挟んで対向配置される第1摩擦パッド13,13と第2摩擦パッド14,14とを備えている。さらに、車体外側に配置される一方の作用部12aのディスク回出側とディスク回入側とには、ディスク半径方向の取付ボス部12c,12cが形成され、該取付ボス部12cにはディスク半径方向の取付ボルト挿通孔12dがそれぞれ形成され、該取付ボルト挿通孔12dに挿通した取付ボルトB1を車体側に設けたキャリパ取付部にねじ込むことにより、キャリパボディ12が車体に取り付けられている。
【0015】
キャリパボディ12は、一対の作用部12a,12bを、ディスクロータ11の外周側を跨ぐディスク回入側と回出側のブリッジ部12e,12eと中央部のブリッジ部12fとで一体に連結したモノコック構造の6ポットピストン対向型に形成され、作用部12a,12bには、ディスク周方向中央部に大径シリンダ孔12gが、ディスク回入側と回出側とに小径シリンダ孔12h,12iが対向してそれぞれ形成され、ディスク回入側の小径シリンダ孔12hには小径の第1ピストン15が、中央の大径シリンダ孔12gには大径の第1ピストン16がそれぞれ収容され、ディスク回出側の小径シリンダ孔12iには小径の第2ピストン17が収容されている。前記ディスク回入側の小径シリンダ孔12h及び大径シリンダ孔12gと第1ピストン15,16との間には、第1液圧室18,19がそれぞれ画成され、前記ディスク回出側の小径シリンダ孔12iと第2ピストン17との間には、第2液圧室20が画成される。
【0016】
前記第1ピストン15,16とディスクロータ11との間には前記第1摩擦パッド13が配置され、前記第2ピストン17とディスクロータ11との間には、前記第2摩擦パッド14が配置されると共に、各作用部12a,12bの大径シリンダ孔12gとディスク回出側の小径シリンダ孔12iとの間には、ディスクロータ11方向にトルク受部12jがそれぞれ突設され、該トルク受部12jに前記第1摩擦パット13のディスク回出側面と第2摩擦パッド14のディスク回入側面とがそれぞれ当接している。また、ディスク回入側と回出側のブリッジ部12eと、中央のブリッジ部12fとの間には、ディスク回入側と回出側とに第1摩擦パッドと第2摩擦パッドとを抜き差しする第1天井開口部12kと、第2天井開口部12mとが形成されている。
【0017】
第1摩擦パッド13は、大径及び小径の2つの第1ピストン15,16に対応する大きさに形成され、ディスクロータ11の側面に摺接し、第1ピストン15,16に対応してそれぞれ設けられる2枚のライニング13a,13aと、該ライニング13a,13aを貼着する金属製の1枚の裏板13bとからなっている。裏板13bの上部中央には吊下げ片13cが延設され、該吊下げ片13cに第1ハンガーピン21が挿通され、該第1ハンガーピン21はディスク回入側の第1天井開口部12kを通して双方の作用部12a,12bにディスク軸方向に架設され、第1摩擦パッド13,13は、各吊下げ片13c,13cに前記第1ハンガーピン21を挿通し、ディスクロータ11の両側部にディスク軸方向へ移動可能に吊持される。また、各第1摩擦パッド13のディスクロータ半径方向外側には、第1パッドスプリング22がそれぞれ設けられている。
【0018】
第2摩擦パッド14は、第2ピストン17に対応する大きさに形成され、ディスクロータ11の側面に摺接するライニング14aと、該ライニング14aを貼着する金属製の裏板14bとからなっている。裏板14bの上部中央には吊下げ片14cが延設され、該吊下げ片14cに第2ハンガーピン23が挿通され、該第2ハンガーピン23はディスク回出側の第2天井開口部12mを通して双方の作用部12a,12bにディスク軸方向に架設され、第2摩擦パッド14は、各吊下げ片14cに前記第2ハンガーピン23を挿通し、ディスクロータ11の両側部にディスク軸方向へ移動可能に吊持される。また、各第2摩擦パッド14のディスクロータ半径方向外側には、第2パッドスプリング24がそれぞれ設けられている。
【0019】
各作用部12a,12bの隣り合う第1液圧室18,19は連通孔12nでそれぞれ連通され、さらに、大径シリンダ孔12gのディスク回出側で且つディスク外周側には、膨出部12pが形成される。また、中央のブリッジ部12fには、取付ボス部12cを備えた一方の作用部12a側から前記大径シリンダ孔12gに設けた膨出部12pに向けて第1液通孔25が穿設され、他方の作用部12b側から一方の作用部12aのディスク回出側の第1液圧室19に向けて第2液通孔26が穿設される。さらに第1液通孔25と第2液通孔26とは、中央のブリッジ部12f内で交差させて連通させるとともに、一方の作用部12aに、第2液通孔26と一方の作用部12aのディスク回出側の第1液圧室19とに連通する第1ユニオン孔27が設けられ、第1液通孔25の中央のブリッジ部12fに開口する開口部には第1ブリューダ孔28が設けられる。第1ユニオン孔27には、前記単独系ブレーキ系統4の液圧配管8が接続され、第1ブリューダ孔28には、ブリューダスクリュ29が螺着される。
【0020】
ディスク回出側のブリッジ部12eには、一方の作用部12a側から他方の作用部12bの第2液圧室20に向けて第3液通孔30が穿設され、他方の作用部12b側から一方の作用部の第2液圧室20に向けて第4液通孔31が穿設される。さらに第3液通孔30と第4液通孔31とは、ディスク回出側のブリッジ部12e内で交差させて連通させるとともに、一方の作用部12aのディスク回出側に、一方の作用部12aの第2液圧室20に連通する第2ユニオン孔32が設けられ、第4液通孔31のディスク回出側のブリッジ部12eに開口する開口部には第2ブリューダ孔33が設けられる。第2ユニオン孔32には、前記連動系ブレーキ系統7の液圧配管10が接続され、第2ブリューダ孔33には、ブリューダスクリュ34が螺着される。
【0021】
隣り合う第1液圧室18,19を連通させる前記連通孔12nと、大径シリンダ孔12gに形成される膨出部12pとは、キャリパボディの鋳造時に、金型の内部に配置して各シリンダ孔の下孔等を形成する中子の一部を用いて形成される。
【0022】
本形態例のディスクブレーキ3は上述のように構成され、単独系ブレーキ系統4では、第1ブレーキ操作子2を操作することにより、第1液圧マスタシリンダ2aに発生した液圧が、液圧配管8を通して前輪用のディスクブレーキ3に供給され、第1ユニオン孔27を介してキャリパボディ12のディスク回入側の4つの第1液圧室18,18,19,19に、連通孔12nと第1液通孔25及び第2液通孔26とを通って供給される。これに伴って4つの第1ピストン15,15,16,16は、ディスクロータ11側へ押動され、2枚の第1摩擦パッド13,13をそれぞれディスクロータ11側へ押圧して前輪が制動される。
【0023】
また、連動系ブレーキ系統では、第2ブレーキ操作子5を操作することにより、第2液圧マスタシリンダ5aに発生した液圧が、液圧配管9,10を通して、前輪用のディスクブレーキ3と後輪用のディスクブレーキ6の双方に供給される。第2ユニオン孔32を介して、前輪用のディスクブレーキ3に供給された液圧は、キャリパボディ12のディスク回出側の2つの第2液圧室20,20に、第3液通孔30及び第4液通孔31を通って供給される。これに伴って2つの第2ピストン17,17は、ディスクロータ11側へ押動され、2枚の第2摩擦パッド14、14をそれぞれディスクロータ11側へ押圧して前輪が制動される。
【0024】
本形態例では、制動時に、ディスクロータ11と摺接する第1摩擦パッド13のライニング13a,13aの総面積が、第2摩擦パッド14のライニング14aの総面積より大きく、さらに、大径及び小径の2つの第1ピストン15,16が第1摩擦パッド13に当接する総面積が、小径の第2ピストン17が第2摩擦パッド14に当接する総面積より大きく形成されていることから、簡単な構造で、第1ブレーキ操作子2を操作して、前輪だけに制動力を与える場合には、前輪に大きな制動力が得られるようにし、また、第2ブレーキ操作子5を操作して、前輪と後輪の双方に制動力を与える場合には、前輪による制動力を小さく抑えて、車体前後部にバランスの良い制動力を効果的に得ることができる。
【0025】
また、第1摩擦パッド13に掛かる大きな制動トルクは、前記トルク受部12jを介してキャリパボディ12に伝達されるが、この制動トルクをディスク回出側に設けたディスク半径方向の取付ボルトB1で確実に受けることができ、また、キャリパボディ12のディスク回入側では、制動トルクによる浮き上がりをディスク回入側に設けたディスク半径方向の取付ボルトB1で確実に抑制することができる。これにより、ディスク回出側に制動力の小さい連動系の第2ピストン17を配置し、ディスク回入側に制動力の大きい単独系の第1ピストン15,16を配置しても良好なバーハンドル車両としての前後輪ブレーキのバランスを確保することができる。さらに、連動系の第2ピストン17が車体上方に配置されることから、連動系の液圧配管の短縮化を図ることができる。
【0026】
さらに、キャリパボディ12のブリッジ部12fに単独系の油圧経路のエア抜きを行う第1ブリューダ孔28と連動系の液圧経路のエア抜きを行う第2ブリューダ孔33とをそれぞれ設けたことにより、両油圧経路のエア抜きを良好に行うことができる。また、2つの第1ピストン15,16を収容する各シリンダ孔12g,12fを連通する連通孔12nと、第1液通孔25が連通する大径シリンダ孔12gの膨出部12pとを、キャリパボディの鋳造時に中子の一部を用いて形成することにより、連通孔12n及び膨出部12pを簡単に形成することができ、加工時間の短縮やコストの低減化を図ることができる。
【0027】
なお、本発明は上述の形態例のように、6ポット対向型のキャリパボディに限るものではなく4ポット以上の対向型のキャリパボディであれば適用でき、単独系ブレーキ系統で大きな制動力が得られ連動系ブレーキ系統で制動力を小さく抑えることができれば、摩擦パッドが制動時にディスクロータと摺接する総面積やピストンの数やピストンの径は任意に設定すればよい。また、モノコック構造のキャリパボディに限らず分割構造のキャリパボディにも適用できる。さらに第2ブレーキ操作子や後輪用のブレーキの構造も任意である。また、制動力の大小を設定する際に、摩擦パッドの面積やピストンの数で設定するものに限らず、ピストンの径の大小や、摩擦パッドの摩擦係数の大小、シリンダの有効半径の大小等によって設定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図5のI-I断面図である。
【図2】本発明の一形態例を示すディスクブレーキの断面平面図である。
【図3】図4のIII-III断面図である。
【図4】図3のIV-IV断面図である。
【図5】同じくディスクブレーキの平面図である。
【図6】本発明のディスクブレーキを適用したディスクブレーキ装置の系統図である。
【符号の説明】
【0029】
1…ブレーキ装置、2…第1ブレーキ操作子、2a…第1液圧マスタシリンダ、3…前輪用のディスクブレーキ、4…単独系ブレーキ系統、5…第2ブレーキ操作子、5a…第2液圧マスタシリンダ、6…後輪用のディスクブレーキ、7…連動系ブレーキ系統、8,9,10…液圧配管、11…ディスクロータ、12…キャリパボディ、12a,12b…作用部、12c…取付ボス部、12d…取付ボルト挿通孔、12e,12f…ブリッジ部、12g…大径シリンダ孔、12h,12i…小径シリンダ孔、12j…トルク受部、12k…第1天井開口部、12m…第2天井開口部、12n…連通孔、12p…膨出部、13…第1摩擦パッド、13a…ライニング、13b…裏板、13c…吊下げ片、14…第2摩擦パッド、14a…ライニング、14b…裏板、14c…吊下げ片、15,16…第1ピストン、17…第2ピストン、18,19…第1液圧室、20…第2液圧室、21…第1ハンガーピン、22…第1パッドスプリング、23…第2ハンガーピン、24…第2パッドスプリング、25…第1液通孔、26…第2液通孔、27…第1ユニオン孔、28…第1ブリューダ孔、29,34…ブリューダスクリュ、30…第3液通孔、31…第4液通孔、32…第2ユニオン孔、33…第2ブリューダ孔、B1…取付ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを収容する複数のシリンダ孔をそれぞれ備えた一対の作用部を、ディスクロータの外周側を跨ぐブリッジ部で連結したキャリパボディを備えた前輪用ディスクブレーキであって、各作用部のピストンの前面とディスクロータの側面との間にそれぞれ摩擦パッドを配置し、前記ディスクロータを挟んで対向する少なくとも1組の第1ピストンを、第1ブレーキ操作子の操作によって作動し、前記第1ピストンに対応する第1摩擦パッドを前記ディスクロータに押圧させる単独系のピストンとし、他の第2ピストンを第2ブレーキ操作子の操作によって後輪用ブレーキと共に作動させ、前記第2ピストンに対応する第2摩擦パッドを前記ディスクロータに押圧させる連動系のピストンとした多ポット対向型二系統式の車両用ディスクブレーキにおいて、前記第2ピストンを前記作用部の車両前進時におけるディスク回出側に配置するとともに、一方の作用部のディスク回入側とディスク回出側とにディスク半径方向の取付ボルト挿通孔を形成し、該取付ボルト挿通孔にそれぞれ挿通したディスク半径方向の取付ボルトにより前記キャリパボディを車体に連結することを特徴とする車両用ディスクブレーキ。
【請求項2】
制動時にディスクロータと摺接する前記第1摩擦パッド総面積は、前記第2摩擦パッド総面積より大きいことを特徴とする請求項1記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項3】
前記第1ピストンが第1摩擦パッドと当接する総面積は、前記第2ピストンが第2摩擦パッドに当接する総面積より大きいことを特徴とする請求項1または2記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項4】
前記第1ピストンの数が、前記第2ピストンの数よりも多いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項5】
前記ブリッジ部に前記単独系の油圧経路のエア抜きを行うブリューダ孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項6】
前記第1ピストンを2組以上備え、各作用部の隣り合う第1ピストンを収容するシリンダ孔を連通孔でそれぞれ連通させるとともに、前記シリンダ孔の1つにシリンダ孔外周側に膨出する膨出部を設け、該膨出部と前記ブリューダ孔とを接続させるとともに、前記連通孔と膨出部とは、キャリパボディの鋳造時に中子の一部を用いて形成されることを特徴とする請求項5記載の車両用ディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−264506(P2009−264506A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115758(P2008−115758)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】