説明

車両用ドライブシャフト

【課題】車両用ドライブシャフト10の中間シャフト12が駆動系部品中の最弱部品となってそれが破損した場合でも、車両の床下で振れ回ることのない車両用ドライブシャフト10を提供する。
【解決手段】車両用ドライブシャフト10において、終減速装置22のデフケース26内に位置させられる部位に、一端部から他端部までのうちの最脆弱部28が位置させられていることから、仮に過大なトルクが加えられる場合でも、必ずデフケース26内に位置させられた最脆弱部28が破断するので、この破断状態であっても車両用ドライブシャフト10の車両内側の端部はデフケース26に保持され、車両用ドライブシャフト10が車両の走行中に振れ回ることによって二次的な被害が引き起こされることが好適に防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドライブシャフトに関し、特に、車両の走行中に破断したときに振れ回りを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、その終減速装置から駆動輪へ動力を伝達するために、その終減速装置のサイドギヤと駆動輪との間に設けられたドライブシャフトが知られている。通常、このドライブシャフトは、中間シャフトと、その中間シャフトの両端に設けられる一対の等速継手とから構成される。この一対の等速継手のうちの車体内側のものは、スプライン歯が形成された嵌合軸を備え、終減速装置のサイドギヤに形成されたスプライン嵌合孔とスプライン嵌合されることにより、相対回転不能に連結される。特許文献1に記載された車両用ドライブシャフトは、その一例である。
【0003】
上記車両用ドライブシャフトにおいては、中間シャフトの両端に設けられる一対の等速継手の回曲機能によって終減速装置と駆動輪との相対変位が許容されるとともに、終減速装置から出力された回転をそれら一対の等速継手を介して等回転速度で駆動輪に伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−074058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記ドライブシャフトは、車両の他の部品ユニットと比較して、許容強度や寸法などが細分化されていて、車両の要求性能から選択されると、駆動系部品の最弱部品ユニットとなる可能性があり、特に中間シャフトがその最弱部位となる可能性がある。このため、その中間シャフトに破損が発生すると仮定した場合には、車両の床下に露出している中間シャフトが車両の走行中に振れ回ることによって二次的な被害が引き起こされることも考えられる。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両用ドライブシャフトの中間シャフトが駆動系部品中の最弱部品となってそれが破損した場合でも、車両の床下で振れ回ることのない車両用ドライブシャフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、本発明の要旨とするところは、(a) 中間シャフトとその中間シャフトの両端に設けられた一対の等速継手とから構成され、一端部が終減速装置のサイドギヤと連結され、他端部が駆動輪に連結される車両用ドライブシャフトであって、(b) 前記終減速装置のデフケース内に位置させられる部位に、前記一端部から他端部までのうちの最脆弱部が位置させられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明の車両用ドライブシャフトによれば、終減速装置のデフケース内に位置させられる部位に、一端部から他端部までのうちの最脆弱部が位置させられていることから、仮にドライブシャフトの最脆弱部に破損が発生するような過大なトルクが車両の駆動系に加えられる場合でも、必ずデフケース内に位置させられた最脆弱部が破断するので、破断状態であっても車両用ドライブシャフトの一端部はデフケースに保持され、ドライブシャフトが車両の走行中に振れ回ることによって二次的な被害が引き起こされることが好適に防止される。
【0009】
ここで、好適には、(c) 前記終減速装置は、一軸まわりに回転可能にハウジングに支持された前記デフケースと、そのデフケースに収容されてそのデフケースによりその一軸に直交する軸心まわりに回転可能に支持されたピニオンと、そのデフケースに収容されてそのデフケースにより前記一軸まわりに回転可能に支持され且つそのピニオンを介して噛み合う一対のサイドギヤとを有し、(d) 前記一対の等速継手のうちの前記一端部側の等速継手には、スプライン歯が形成されたスプライン軸部と、そのスプライン軸部に続いて位置し前記デフケースに摺動可能に嵌合される嵌合軸部とを有する連結軸が突設され、(e) その連結軸は、前記デフケース内に位置させられて前記サイドギヤに形成されたスプライン嵌合孔に前記スプライン軸部がスプライン嵌合されることによりそのサイドギヤに相対回転不能に連結され、(f) 前記最脆弱部は、前記連結軸のスプライン軸部と嵌合軸部との間に形成された、そのスプライン軸部よりも断面積が小さな小断面部より設けられていることを特徴とする。このようにすれば、仮に最脆弱部に破損が発生するような過大なトルクが車両の駆動系に加えられる場合でも、必ずデフケース内に位置させられた最脆弱部が破断するので、破断状態であっても車両用ドライブシャフトの一端部である等速継手の連結軸はデフケースに保持され、ドライブシャフトが車両の走行中に振れ回ることによって二次的な被害が引き起こされることが好適に防止される。
【0010】
また、好適には、前記連結軸には、その連結軸の先端面から前記環状溝を通過する長さを有する雌ねじ孔がその連結軸の軸心方向に穿設されていることを特徴とする。このようにすれば、連結軸のスプライン軸部と嵌合軸部との間の最脆弱部が破断したとしても、終減速装置を分解しなくても、その破断面に露出した雌ねじ孔に引抜治具の雄ねじを螺合させることでサイドギヤ内に取り残されたスプライン軸部をデフケース内から容易に取り出すことができるので、修理作業が容易となり、修理時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用された車両用ドライブシャフトの全体的な構成を説明する概略図である。
【図2】図1の車両用ドライブシャフトの一端部に設けられた摺動型等速継手の一部品の構成を説明するために拡大し且つ一部を切り欠いて示す図である。
【図3】図1の車両用ドライブシャフトを終減速装置に連結した状態を説明する断面図である。
【図4】図3の終減速装置の一部を拡大して説明する断面図である。
【図5】図2の摺動型等速継手の連結軸に設けられた最脆弱部が破断した状態を説明する断面図であって図4に相当する図である。
【図6】図2の摺動型等速継手の連結軸に設けられた最脆弱部が破断してその先端部がデフケース内に残された状態を説明する断面図であって図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明が適用された車両用ドライブシャフト10の全体的な構成を説明する概略図である。図1の車両用ドライブシャフト10は、FF車両の全部に幅方向に配置されるフロントドライブシャフトであって、たとえば機械構造用炭素鋼製の中間シャフト12と、その中間シャフト12の両端に固設された一対の等速継手14および16とから構成される。この一対の等速継手14および16のうち、中間シャフト12の車体外側の端部に設けられている等速継手14は、たとえばバーフィールド型等速ジョイントから構成され、図示しない駆動輪( 前輪)が固定されるハブ20に連結されている。また、一対の等速継手14および16のうち、中間シャフト12の車体内側の端部に設けられている等速継手16は、たとえば摺動式トリポート等速ジョイントから構成され、終減速装置22のサイドギヤ24に連結されている。これにより、車両用ドライブシャフト10は、たとえば、トランスアクスル内の終減速装置22から出力される駆動力を車両の前輪である駆動輪に伝達する。
【0014】
バーフィールド型等速ジョイントから成る等速継手14は、中間シャフト12の車体外側の一端部12aに相対回転不能に嵌装された内輪14aと、内部に収容室14bが形成された外輪14cとを備え、その内輪14aは外輪14cの内部に形成された収容室14b内に収容されている。外輪14cは、その軸心方向に突き出してハブ20に形成された嵌合孔20aに相対回転不能に嵌合される連結軸14dを備えている。連結軸14dの端部外周面にはスプライン歯が形成されるとともに嵌合孔20aの内周面にはスプライン歯が形成されており、連結軸14dは嵌合孔20aにスプライン嵌合される。
【0015】
上記内輪14aと外輪14cとの間には、略円筒状のケージ14eと、複数のボール14fが設けられており、これらのボール14fは、ケージ14eに形成された複数の保持孔内に保持されている。内輪14aの外周面および外輪14cの内周面には、複数のボール14fに対応する複数本の案内溝14gがそれらの軸心方向にそれぞれ形成されており、複数のボール14fはそれら複数本の案内溝14g内に嵌め入れられて案内されるようになっている。これにより、外輪14cおよびハブ20は、中間シャフト12の車両外側の端部を起点とする所定範囲内の円弧運動が許容されている。中間シャフト12の端部と外輪14cとの間の開口部分は、軟質樹脂製の合成ゴムからなる蛇腹状のブーツ14hにより覆われている。このブーツ14hは、その大径端が外輪14cの周囲に嵌め着けられ、内径端が中間シャフト12の端部に嵌め着けられている。そのブーツ14h内には潤滑グリースが充填されている。
【0016】
摺動式トリポート等速ジョイントから成る等速継手16は、中間シャフト12の車体内側の他端部12bに嵌め着けられた内輪16aと、内部に収容室16bが形成された外輪16cとを備え、その内輪16aは外輪16cに形成された収容室16b内に収容されている。外輪16cは、その軸心方向に突き出して図3に示すように終減速装置22のサイドギヤ24の中央に形成された嵌合孔24aに相対回転不能に嵌合される連結軸16dを備えている。連結軸16dの外周面にはスプライン歯が形成されるとともにスプライン嵌合孔24aの内周面にはスプライン歯が形成されており、連結軸16dはスプライン嵌合孔24aにスプライン嵌合される。
【0017】
上記内輪16aには、外側に突き出してローラ16fをそれぞれ支持する3つの脚軸16eが設けられている。外輪16cの内周面には、3つのローラ16fを受け入れてそれを軸心方向に案内する3本の案内溝16gが設けられている。これにより、外輪16cは、中間シャフト12の車両内側の端部を起点とする所定範囲内の円弧運動が許容されている。また、中間シャフト12の端部と外輪16cとの間の開口部分は、軟質樹脂材料からなる蛇腹状のブーツ16hにより覆われている。このブーツ16hは、その大径端が外輪16cの周囲に嵌め着けられ、内径端が中間シャフト12の端部に嵌め着けられている。そのブーツ16h内には潤滑グリースが充填されている。
【0018】
図2には、上記等速継手16の外輪16cの構成を一部切り欠いて拡大して示され、図3には、その等速継手16の外輪16cが組み付けられた終減速装置22の構成が示され、図4には、その終減速装置22の要部構成が拡大して示されている。
【0019】
図2において、等速継手16の外輪16cからその軸心C方向に突き出す連結軸16dは、スプライン歯が形成されたスプライン軸部16iと、そのスプライン軸部16iよりもやや大きい径を有してそのスプライン軸部16iに続いて位置し終減速装置22のデフケース26に摺動可能に嵌合されてそれにより支持される嵌合軸部16jと、その嵌合軸部16jに続いて位置しその嵌合軸部16jより大きい径を有する大径軸部16kとを有している。そして、この連結軸16dには、デフケース26内に位置させられる部位であって、特にスプライン軸部16iと嵌合軸部16jとの間に、車両用ドライブシャフト10を通したトルク伝達が増加させられたときに最先に破断或いは剪断する最脆弱部28が設けられている。この最脆弱部28は、駆動力源から駆動輪までの車両の動力伝達経路において最も弱い部分であって、トルク伝達容量を最も小さくするように少なくとも連結軸16dのなかで最も断面積を小さくする断面V字形の環状溝30によって形成されている。なお、連結軸16dの先端部には、抜止め用の止め輪32を嵌め入れるためのリング溝34が形成されている。
【0020】
また、上記連結軸16dには、その連結軸16dの先端面から環状溝30を通過する長さを有する雌ねじ孔36がその連結軸16dの軸心C方向に穿設されている。この雌ねじ孔36は、連結軸16dのスプライン軸部16iと嵌合軸部16jとの間の最脆弱部28が破断したとしても、終減速装置22を分解しなくても、その雌ねじ孔36に雄ねじ工具を螺合させることでスプライン軸部16iをデフケース26内から容易に取り出すことを可能とするためのものである。
【0021】
図3および図4に示すように、終減速装置22は、車両の動力伝達経路の終段部に設けられ、図示しない変速機の出力軸から伝達される回転を減速し、且つ回転左右の駆動輪の回転差を許容しつつその変速機の出力軸から伝達される駆動力( トルク) をそれら左右の駆動輪に均等に伝達するものである。この終減速装置22は、FF車両のトランスアクスルのハウジング40内において配設されており、差動歯車機構を収容するデフケース26が一対の円錐ころ軸受42を介してそのハウジング40により軸心C1まわりに回転可能に支持されている。デフケース26は、それに固定されたリングギヤ44と噛み合う図示しないドライブギヤを介して、図示しない変速機からの出力トルクによって回転駆動されるようになっている。
【0022】
デフケース26には、上記軸心C1と直交する軸心C2まわりにピニオン46を回転可能に支持するスパイダ48が固定ピン49により固定され、デフケース26は、そのピニオン46およびスパイダ48と、デフケース26によって軸心C1まわりに回転可能に支持されるとともにピニオン46を介して相互に噛み合う一対のサイドギヤ24とを、収容している。
【0023】
デフケース26は、一対のサイドギヤ24、複数のピニオン46、スパイダ48を収容する中央部50と、その中央部50が軸心C1方向の両側からそれぞれ回転軸心C1方向にそれぞれ突き出す円筒状端部52とを有している。車両用ドライブシャフト10の車両内側に設けられている等速継手16の連結軸16dは、その円筒状端部52の端面に開口する支持孔54から挿入され、連結軸16dのスプライン軸部16iがサイドギヤ24のスプライン嵌合孔24aにスプライン嵌合されている。この組付状態では、スプライン軸部16iの先端部に形成されているリング溝34内に止め輪32が嵌め入れられ、連結軸16dがサイドギヤ24から抜け止めされている。連結軸16dの大径軸部16kは上記支持孔54よりも大径であるため、組み付け状態では、嵌合軸部16jが支持孔54に摺動可能に嵌合されることにより連結軸16dがデフケース26によって回転可能に支持されるとともに、嵌合軸部16jと大径軸部16kとの間の段部が上記円筒状端部52の端面に接近させられている。
【0024】
図3および図4に示すように、上記組立状態において、連結軸16dに形成された最脆弱部28は、デフケース26内においてサイドギヤ24とデフケース26の支持孔54との間に位置している。そして、連結軸16dには、その連結軸16dの先端面から環状溝30を通過する長さを有する雌ねじ孔36がその連結軸16dの軸心C方向に穿設されていて、最脆弱部28が破断したときにはその破断面に雌ねじ孔36が露出させられるようになっている。
【0025】
図5は、たとえば車両の凹凸路面の走行によって、車両の駆動系に過大なトルクが付与された場合に、連結軸16dに形成された最脆弱部28が破断した状態を示している。この状態では、連結軸16dの嵌合軸部16jがデフケース26の支持孔54に嵌め入れられた状態で支持されているため、車両の走行中であっても連結軸16dがデフケース26から抜けないので、車両用ドライブシャフト10が振れ回らない。
【0026】
図6は、その破断した車両用ドライブシャフト10の連結軸16dをデフケース26から引き抜いた状態を示している。この状態では、サイドギヤ24の嵌合孔24a内に、スプライン軸部16iが取り残されている。連結軸16dには、その連結軸16dの先端面から環状溝30を通過する長さを有する雌ねじ孔36がその連結軸16dの軸心C方向に穿設されているので、そのスプライン軸部16iの破断面には、雌ねじ孔36が露出している。このため、終減速装置22を分解しなくても、その雌ねじ孔36に引抜治具の雄ねじを螺合させることでスプライン軸部16iをデフケース26内から容易に取り出すことができる。
【0027】
上述のように、本実施例の車両用ドライブシャフト10によれば、終減速装置22のデフケース26内に位置させられる部位に、一端部から他端部までのうちの最脆弱部28が位置させられていることから、仮に過大なトルクが加えられる場合でも、必ずデフケース26内に位置させられた最脆弱部28が破断するので、この破断状態であっても車両用ドライブシャフト10の車両内側の端部はデフケース26に保持され、車両用ドライブシャフト10が車両の走行中に振れ回ることによって二次的な被害が引き起こされることが好適に防止される。
【0028】
また、本実施例の車両用ドライブシャフト10によれば、終減速装置22は、一軸心C1まわりに回転可能にハウジング40に支持されたデフケース26と、そのデフケース26に収容されてそのデフケース26によりその一軸心C1に直交する軸心C2まわりに回転可能に支持された複数のピニオン46と、そのデフケース26に収容されてそのデフケース26により一軸心C1まわりに回転可能に支持され且つそのピニオン46を介して噛み合う一対のサイドギヤ24とを有し、一対の等速継手14、16のうちの車両内側の端部側の等速継手16には、スプライン歯が形成されたスプライン軸部16iと、そのスプライン軸部16iに続いて位置しデフケース26の支持孔54に摺動可能に嵌合される嵌合軸部16jとを有する連結軸16dが突設され、その連結軸16dは、デフケース26内に位置させられてサイドギヤ24に形成されたスプライン嵌合孔24aにスプライン軸部16iがスプライン嵌合されることによりそのサイドギヤ24に相対回転不能に連結され、最脆弱部28が、連結軸16dのスプライン軸部16iと嵌合軸部16jとの間に形成された、そのスプライン軸部16iよりも断面積が小さな小断面部より設けられている。このことから、仮に最脆弱部28に破損が発生するような過大なトルクが駆動系に加えられて最脆弱部28が破断したとしても、その破断状態では車両用ドライブシャフト10の一端部である等速継手16の連結軸16dはデフケース26内に保持されるので、車両用ドライブシャフト10が車両の走行中に振れ回ることによって二次的な被害が引き起こされることが好適に防止される。
【0029】
また、本実施例の車両用ドライブシャフト10によれば、その連結軸16dには、その連結軸16dの先端面から環状溝30を通過する長さを有する雌ねじ孔36がその連結軸16dの軸心C1方向に穿設されていることから、連結軸16dのスプライン軸部16iと嵌合軸部16jとの間の最脆弱部28が破断したとしても、終減速装置22を分解しなくても、その破断面に露出した雌ねじ孔36に抜取治具の雄ねじを螺合させることでサイドギヤ24内に取り残されたスプライン軸部16iをデフケース26内から容易に取り出すことができるので、修理作業が容易となり、修理時間が短縮される。
【0030】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0031】
たとえば、前述の実施例の車両用ドライブシャフト10では、中間シャフト12の車体外側の端部に設けられている等速継手14はバーフィールド型等速ジョイントから構成され、中間シャフト12の車体内側の端部に設けられている等速継手16は摺動式トリポート等速ジョイントから構成されていたが、それら等速継手14、16は、他の形式の継手、たとえばツエッパ型等速ジョイント、固定型トリポート等速ジョイント、ダブルオフセット型等速ジョイント、クロスグルーブ型等速ジョイントから構成されていてもよい。
【0032】
また、前述の実施例の車両用ドライブシャフト10は、FF車両のトランスアクスル内の終減速装置22と前輪との間に設けられたものであったが、4WD車両或いは4WS車両の前部或いは後部に配置された終減速装置22と駆動輪との間に設けられたものであってもよい。この場合、リングギヤ44は平歯車であったが、傘歯車となる。
【0033】
また、最脆弱部28は、環状溝30によって構成されていたが、連結軸16dのスプライン軸部16iと嵌合軸部16jとの間に形成された貫通孔により小断面とされることにより構成されてもよいし、連結軸16dをスプライン軸部16iと嵌合軸部16jとの2部材を部分溶接することにより構成し、その部分溶接部を最脆弱部28としてもよい。
【0034】
また、最脆弱部28は、連結軸16dのスプライン軸部16iと嵌合軸部16jとの間に形成されていたが、嵌合軸部16jの軸心C1方向の中間部に設けられていてもよい。要するに、最脆弱部28が破断した場合に、連結軸16dがデフケース26から抜けない位置であればよい。
【0035】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
10:車両用ドライブシャフト
12:中間シャフト
14:等速継手
16:等速継手
16d:連結軸
16i:スプライン軸部
16j:嵌合軸部
20:ハブ
22:終減速装置
24:サイドギヤ
24a:スプライン嵌合孔
26:デフケース
28:最脆弱部
30:環状溝
36:雌ねじ孔
40:ハウジング
46:ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間シャフトと該中間シャフトの両端に設けられた一対の等速継手とから構成され、一端部が終減速装置のサイドギヤと連結され、他端部が駆動輪に連結される車両用ドライブシャフトであって、
前記終減速装置のデフケース内に位置させられる部位に、前記一端部から他端部までのうちの最脆弱部が位置させられていることを特徴とする車両用ドライブシャフト。
【請求項2】
前記終減速装置は、一軸まわりに回転可能にハウジングに支持された前記デフケースと、該デフケースに収容されて該デフケースにより該一軸に直交する軸心まわりに回転可能に支持されたピニオンと、該デフケースに収容されて該デフケースにより前記一軸まわりに回転可能に支持され且つ該ピニオンを介して噛み合う一対のサイドギヤとを有し、
前記一対の等速継手のうちの前記一端部側の等速継手には、スプライン歯が形成されたスプライン軸部と、該スプライン軸部に続いて位置し前記デフケースに摺動可能に嵌合される嵌合軸部とを有する連結軸が突設され、
該連結軸は、前記デフケース内に位置させられて前記サイドギヤに形成されたスプライン嵌合孔に前記スプライン軸部がスプライン嵌合されることにより該サイドギヤに相対回転不能に連結され、
前記最脆弱部は、前記連結軸のスプライン軸部と嵌合軸部との間に形成された、該スプライン軸部よりも断面積が小さな小断面部より設けられていることを特徴とする請求項1の車両用ドライブシャフト。
【請求項3】
前記連結軸には、該連結軸の先端面から前記環状溝を通過する長さを有する雌ねじ孔が該連結軸の軸心方向に穿設されていることを特徴とする請求項2の車両用ドライブシャフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−167793(P2012−167793A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31331(P2011−31331)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】