説明

車両用ナビゲーション装置

【課題】盗難防止機能を有する車両用ナビゲーション装置のコスト増を抑制する。
【解決手段】プリセットメモリ114が初期化されたと判断され、かつ、車両のIGNスイッチ71がオフされる直前の自車位置P1と、その後IGNスイッチ71がアクセサリ位置とされた後に最初にGPSセンサ131で検出した自車位置P2との直線距離が5km以上であると判断されると、車両用ナビゲーション装置100が盗難されたものとみなして、盗難防止機能を起動するように構成した。これにより、バックアップ電源が遮断されたか否かを検出するための検出回路を設けなくてもよいので、コスト増を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ナビゲーション装置の盗難防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるナビゲーション装置には、盗難を防止するために、盗難されたか否かを判断するとともに、盗難されたと判断された場合にはナビゲーション機能を停止するなどの盗難防止機能を有するものがある。このような車両用ナビゲーション装置では、車両のバッテリから車両用ナビゲーション装置へ供給されるバックアップ電源が遮断された場合に、盗難されたと判断するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−292036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献に記載のナビゲーション装置では、バックアップ電源が遮断されたか否かを検出するための検出回路が必要である。そのため、当該検出回路を備えていないナビゲーション装置では、当該検出回路を新たに設けなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明による車両用ナビゲーション装置は、受信周波数を記憶するプリセットメモリと、プリセットメモリが初期化されたか否かを判断するプリセットメモリ初期化判断手段と、車両の自車位置を算出する自車位置算出手段と、自車位置算出手段で算出した自車位置を記憶する自車位置記憶手段と、自車位置記憶手段で記憶している自車位置である第1の自車位置と、自車位置算出手段で新たに算出した自車位置である第2の自車位置との離間距離を算出する距離算出手段と、距離算出手段で算出した離間距離が、所定の距離を超えているか否かを判断する離間距離判断手段と、プリセットメモリ初期化判断手段でプリセットメモリが初期化されたと判断され、かつ、離間距離判断手段で離間距離が所定の距離を超えていると判断されると、盗難防止機能を起動させる盗難防止手段とを備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用ナビゲーション装置において、プリセットメモリは、複数の受信周波数を記憶でき、プリセットメモリ初期化判断手段は、プリセットメモリに記憶された複数の受信周波数の全てが初期値に変更されたことが検出されるとプリセットメモリが初期化されたと判断することを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の車両用ナビゲーション装置において、第1の自車位置は、車両用ナビゲーション装置へ電力を供給するアクセサリ電源との接続が断たれる前に自車位置算出手段で算出した自車位置であり、第2の自車位置は、アクセサリ電源との接続が断たれた後、再びアクセサリ電源と接続された後に自車位置算出手段で算出した自車位置であることを特徴とする。
(4) 請求項4の発明は、請求項3に記載の車両用ナビゲーション装置において、盗難防止手段は、アクセサリ電源との接続が断たれた後、再びアクセサリ電源と接続された後に、自車位置算出手段が自車位置を所定時間以上算出できない場合には、その後、自車位置算出手段が自車位置を算出しても、盗難防止機能を起動させないことを特徴とする。
(5) 請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用ナビゲーション装置において、盗難防止手段は、プリセットメモリ初期化判断手段でプリセットメモリが初期化されたと判断され、かつ、離間距離判断手段で離間距離が所定の距離を超えていると判断されると、盗難防止機能として、車両に設けられている表示装置に所定のセキュリティ解除コードの入力を促す画面を表示させることを特徴とする。
(6) 請求項6の発明は、請求項5に記載の車両用ナビゲーション装置において、所定のセキュリティ解除コードが入力されたか否かを判断する、セキュリティ解除コード入力有無判断手段をさらに備え、盗難防止手段は、車両に設けられている表示装置に所定のセキュリティ解除コードの入力を促す画面を表示させた後、セキュリティ解除コード入力有無判断手段で、所定のセキュリティ解除コードが入力されたと判断されるまでは、車両用ナビゲーション装置の少なくとも一部の機能を制限し、セキュリティ解除コード入力有無判断手段で、所定のセキュリティ解除コードが入力されたと判断されると、車両用ナビゲーション装置の機能制限を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、バックアップ電源が遮断されたか否かを検出するための検出回路を設けなくてもよいので、コスト増を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による車両用ナビゲーション装置の周辺の構成を示す図である。
【図2】本発明による車両用ナビゲーション装置の構成を示す図である。
【図3】ディスプレイ117に表示されるセキュリティ解除コードの入力画面210を示す図である。
【図4】IGNスイッチ71がオフされた際に、自車位置をEEPROM113に記憶させる処理の動作を示したフローチャートである。
【図5】盗難防止機能を起動する処理の動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜5を参照して、本発明による車両用ナビゲーション装置の第1の実施の形態を説明する。図1は、本発明による車両用ナビゲーション装置の周辺の構成を示す図であり、図2は、車両用ナビゲーション装置の構成を示す図である。CPU110は車両用ナビゲーション装置100全体を制御する演算処理装置である。CPU110およびその周辺回路は互いにバスで接続されている。CPU110には、インタフェース(I/F)およびバスを介して、GPSセンサ131、ジャイロセンサ132および車速センサ133からの信号が入力される。車両用ナビゲーション装置100には、車両のイグニッションスイッチ(IGNスイッチ)71を介して車両のバッテリ72からの主電源(アクセサリ電源)が接続されている。また、車両用ナビゲーション装置100には、IGNスイッチ71を介さずにバッテリ72からバックアップ電源が直接接続されている。
【0009】
周辺回路は、たとえば、ROM111、RAM112、EEPROM113、プリセットメモリ114、HDD115、放送チューナ116、グラフィックコントローラ121、オーディオコントローラ122を含んで構成される。ROM111は、制御プログラムを格納するメモリであり、RAM112は、CPU110の作業エリアとしてのメモリである。後述するように、EEPROM113は、自車位置などを記憶する不揮発性のメモリであり、プリセットメモリ114は、ユーザが任意に設定した、放送チューナ116で受信するラジオ放送の放送周波数を記憶する揮発性のメモリである。
【0010】
HDD115は、ナビゲーション処理に使用する道路地図データやPOI(Point Of Interest、たとえば観光地や各種施設)情報を格納するハードディスクドライブ装置である。なお、ハードディスクドライブ装置に代えて、CD、DVD、フラッシュメモリ、またはその他の記録媒体、およびその読み出し装置であっても良い。放送チューナ116は、アンテナ141を介してFMラジオ放送やAMラジオ放送を受信するために用いられる受信装置である。
【0011】
グラフィックコントローラ121は、CPU110から出力される表示データを、画像データとして不図示の画像メモリ(ビデオRAM)に格納し、画像メモリに格納された画像データを後述するディスプレイ117に表示するための制御を行う。CPU110から出力される表示データには、各種の文字データや道路地図などの各種の図形データ、後述する盗難防止機能の表示画面のデータなどが含まれる。
【0012】
オーディオコントローラ122は、ナビゲーションの案内音声や警報音声の音声信号や、放送チューナ116で受信したラジオ放送の音声信号を後述するスピーカ119へ出力するための制御を行う。
【0013】
車両用ナビゲーション装置100に接続されるディスプレイ117は、車室内の乗員が視認可能な位置に配設されて、地図や各種情報を表示する表示装置である。車両用ナビゲーション装置100に接続される入力装置118は、各種操作入力を行うためのスイッチであり、ディスプレイ117の表示面に設けられたタッチパネル式のスイッチや、ディスプレイ117の周辺の押ボタン式スイッチ、リモコンなどである。車両用ナビゲーション装置100に接続されるスピーカ119は、オーディオコントローラ122を介して入力される、ナビゲーションの案内音声や警報音声、放送チューナ116で受信したラジオ放送の音声などを出力する。
【0014】
GPSセンサ131は、GPSアンテナ142で受信したGPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号から、緯度、経度および高度などの自車の現在位置(自車位置)を検出する。ジャイロセンサ132は、車両の進行方位の変化(旋回状態)を検出する。車速センサ133は、車両に設けられており、車速を検出する。
【0015】
このように構成される車両用ナビゲーション装置100では、GPSセンサ131、ジャイロセンサ132および車速センサ133から取得した情報およびHDD115に格納されている道路地図データに基づき各種のナビゲーションを行う。たとえば、CPU110は、自車位置近辺の道路地図および自車位置をディスプレイ117に表示し、経路探索によって得られた経路(推奨経路)に沿って運転者を誘導するように各部を制御する。また、車両用ナビゲーション装置100では、放送チューナ116で受信したラジオ放送の音声がスピーカ119から出力される。
【0016】
近年、車両用ナビゲーション装置の高機能化が図られるにつれて、車両用ナビゲーション装置の盗難が増加している。車両用ナビゲーション装置の盗難を防止するために、盗難されたか否かを判断するとともに、盗難されたと判断された場合にはナビゲーション機能を停止するなどの盗難防止機能を有するものがある。このような車両用ナビゲーション装置では、車両のバッテリから車両用ナビゲーション装置へ供給されるバックアップ電源が遮断された場合に、盗難されたと判断するようにしているものがある。
【0017】
しかし、車両用ナビゲーション装置へ供給されるバックアップ電源が遮断された場合に盗難されたと判断するためには、バックアップ電源が遮断されたか否かの検出回路が必要である。そのため、車両用ナビゲーション装置に当該検出回路を設けなければならず、コスト増の原因となる。
【0018】
そこで、本実施の形態の車両用ナビゲーション装置100では、当該検出回路を設けず、バックアップ電源が遮断されたか否かの判断に代えて、プリセットメモリ114が初期化されたか否かを判断するようにしている。すなわち、プリセットメモリ114は、揮発性のメモリであるので、車両用ナビゲーション装置100が車両から取り外されるなどして車両のバッテリ72との接続が断たれると(バックアップ電源が遮断されると)、初期化される。なお、本実施の形態では、プリセットメモリ114には、たとえば、FMラジオ放送受信用のプリセットメモリとして6つのプリセットメモリが設けられ、AMラジオ放送受信用のプリセットメモリとして6つのプリセットメモリが設けられている。
【0019】
プリセットメモリ114が初期化されると、工場出荷時の状態に戻される。すなわち、プリセットメモリ114が初期化されると、FM放送受信用の6つのプリセットメモリ、および、AM放送受信用の6つのプリセットメモリのそれぞれに、初期値として所定の周波数が格納される。この所定の周波数としては、たとえば、FM放送受信用のプリセットメモリであれば、実際に放送局で用いられている放送周波数とは関係なく、たとえば、76MHz、78MHz、80MHz・・・のようにキリのいい周波数とされている。CPU110は、FM放送受信用の6つのプリセットメモリの全て、および、AM放送受信用の6つのプリセットメモリの全てに、それぞれ初期値が格納されている場合に、プリセットメモリ114が初期化されていると判断する。
【0020】
なお、車両用ナビゲーション装置100が盗難されたか否かを、プリセットメモリ114の初期化の有無だけで判断することとしてしまうと、たとえば、車両のディーラやサービス工場などで整備のために車両からバッテリ72を一時的に取り外しただけでも、盗難されたと誤って判断されてしまう。
【0021】
そこで、本実施の形態の車両用ナビゲーション装置100では、次の(a),(b)の2つの条件をともに満たしたときに、車両用ナビゲーション装置100が盗難されたものと判断して(みなして)、盗難防止機能(盗難抑止機能)を起動する。
(a) プリセットメモリ114が初期化された
(b) 車両のIGNスイッチ71がオフされる直前(アクセサリ電源が断たれる直前)の自車位置と、その後IGNスイッチ71がアクセサリ位置とされた後(アクセサリ電源が再び接続された後)に最初にGPSセンサ131で検出した自車位置との離間距離が直線距離でたとえば5km以上である
【0022】
すなわち、車両用ナビゲーション装置100がバッテリ72から外されたか否かの判断に代えて、上記条件(a)を満たすか否かを判断する。また、車両用ナビゲーション装置100が車両から取り外されて持ち去られた後、他の車両に取り付けられたか否かの判断に代えて、上記条件(b)を満たすか否かを判断する。そして、上記(a),(b)の2つの条件をともに満たしたときに、車両用ナビゲーション装置100が盗難されたものと判断する。
【0023】
なお、上記条件(b)における5kmという距離は、車両用ナビゲーション装置100が車両から取り外されて持ち去られた後、他の車両に取り付けられたと疑われるに足りる距離としての一例である。したがって、本発明の上記条件(b)における距離は、5kmには限らない。たとえば、2km程度としてもよく、10km程度としてもよい。上記条件(b)における誤判定を防止するため、少なくとも、GPSセンサ131で検出される自車位置の誤差範囲よりも長い距離であり、かつ、後述する15分の監視期間内に車両が移動しうる距離よりも長い距離であることが望ましい。
【0024】
本実施の形態の車両用ナビゲーション装置100では、車両用ナビゲーション装置100が盗難されたものと判断されて盗難防止機能が起動されると、たとえば、図3に示すようなセキュリティ解除コードの入力画面210がディスプレイ117に表示される。車両用ナビゲーション装置100では、セキュリティ解除コードの入力画面210がディスプレイ117に表示されると、セキュリティ解除コードの入力に関する操作以外の操作を受け付けない。すなわち、正しいセキュリティ解除コードが入力されないかぎり、ナビゲーション画面への切り換え操作や、オーディオ機能に関する操作(たとえば、ラジオの選局操作など)を行うことができないようになる。
【0025】
正しいセキュリティ解除コードが入力されると、セキュリティ解除コードの入力画面210がディスプレイ117から消えて、セキュリティ解除コードの入力画面210が表示される直前の画面がディスプレイ117に表示される。そして、車両用ナビゲーション装置100の通常の操作が可能となる(すなわち車両用ナビゲーション装置100の機能制限が解錠される)。なお、正しいセキュリティ解除コードは、たとえば、車両用ナビゲーション装置100の正規のユーザであれば知りうるものであるとともに、車両用ナビゲーション装置100の製造メーカや正規取扱店などで入力しうるものである。
【0026】
なお、車両の周囲の環境によっては、IGNスイッチ71がアクセサリ位置とされた後、すぐにGPS信号が受信できない場合が考えられる。そこで、本実施の形態の車両用ナビゲーション装置100では、上記条件(a)を満たす場合であっても、IGNスイッチ71がアクセサリ位置とされた後、たとえば15分以上GPS信号が受信できない場合には、盗難されていないものと判断する。逆に、上記条件(a)を満たし、かつ、IGNスイッチ71がアクセサリ位置とされた後、たとえば15分経過する前にGPS信号が受信でき、上記条件(b)を満たす場合には、車両用ナビゲーション装置100が盗難されたものと判断する。この、たとえば15分の時間を監視期間と呼ぶ。なお、監視期間として挙げた15分という時間は一例であり、監視期間は15分に限定されない。
【0027】
−−−フローチャート−−−
図4は、IGNスイッチ71がオフされた際に、自車位置をEEPROM113に記憶させる処理の動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーによりIGNスイッチ71がオフされると、図4に示す処理を行うプログラムが起動されてCPU110で実行される。ステップS101において、現在の自車位置(第1の自車位置P1、または、単に自車位置P1と呼ぶ)をEEPROM113に記憶させて本プログラムを終了する。なお、ステップS101でEEPROM113に記憶される自車位置P1は、IGNスイッチ71がオフされる直前に、公知のデッドレコニング処理やマップマッチング処理によって算出した自車位置であってもよく、IGNスイッチ71がオフされる直前に、GPSセンサ131で検出した自車位置であってもよい。
【0028】
図5は、上述した盗難防止機能を起動する処理の動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーによりIGNスイッチ71がアクセサリ位置にされると、図5に示す処理を行うプログラムが起動されてCPU110で実行される。ステップS201において、プリセットメモリ114が初期化されたか否かを判断する。ステップS201が否定判断されると本プログラムを終了する。ステップS201が肯定判断されると、ステップS203へ進み、GPSセンサ131でGPS信号を受信したか否かを判断する。
【0029】
ステップS203が肯定判断されるとステップS205へ進み、GPSセンサ131で検出した自車位置(第2の自車位置P2、または、単に自車位置P2と呼ぶ)を読み込んでステップS207へ進む。ステップS207において、EEPROM113に記憶されている第1の自車位置P1を読み込んでステップS209へ進む。ステップS209において、ステップS205で読み込んだ第2の自車位置P2と、ステップS207で読み込んだ自車位置P1との直線距離を算出してステップS211へ進む。ステップS211において、ステップS209で算出した自車位置P2と自車位置P1との直線距離が5km以上であるか否かを判断する。
【0030】
ステップS211が否定判断されると、本プログラムを終了する。ステップS211が肯定判断されるとステップS213へ進み、盗難防止機能を起動するよう、すなわち、図3に示すようなセキュリティ解除コードの入力画面210をディスプレイ117に表示するよう各部を制御してステップS215へ進む。ステップS215において、正しいセキュリティ解除コードが入力されるまで待機する。ステップS215が肯定判断されるとステップS217へ進み、盗難防止機能を停止するよう、すなわち、セキュリティ解除コードの入力画面210が表示される直前の画面がディスプレイ117に表示されるよう各部を制御して本プログラムを終了する。
【0031】
ステップS203が否定判断されるとステップS221へ進み、IGNスイッチ71がアクセサリ位置にされてから15分が経過したか否かを判断する。ステップS221が否定判断されるとステップS203へ戻る。ステップS221が肯定判断されると本プログラムを終了する。
【0032】
上述した車両用ナビゲーション装置100では、次の作用効果を奏する。
(1) プリセットメモリ114が初期化されたと判断され、かつ、車両のIGNスイッチ71がオフされる直前の自車位置P1と、その後IGNスイッチ71がアクセサリ位置とされた後に最初にGPSセンサ131で検出した自車位置P2との直線距離が5km以上であると判断されると、車両用ナビゲーション装置100が盗難されたものとみなして、盗難防止機能を起動するように構成した。これにより、バックアップ電源が遮断されたか否かを検出するための検出回路を設けなくてもよいので、コスト増を抑制できる。また、盗難されたか否かの誤判断を抑制して、判断の精度を向上できるので、盗難抑制効果が高まるとともに、盗難されたとの誤判断によって起動した盗難防止機能の解除(停止)のためにセキュリティ解除コードを入力しなければならない、という煩わしさを抑制できる。
【0033】
(2) プリセットメモリ114に記憶された複数の受信周波数の全てが初期値に変更されたことが検出されるとプリセットメモリ114が初期化されたと判断するように構成した。これにより、簡単なロジックでバックアップ電源が遮断されたか否かが判断できるので、CPU110に負担を掛けず、当該判断をするためだけに制御プログラムを格納するROM111の容量を増やす必要性も少なくなり、コスト増を抑制できる。
【0034】
(3) たとえば15分の監視期間内にGPS信号が受信できない場合には、盗難されていないものと判断するように構成した。これにより、車両の周囲の環境によって、IGNスイッチ71がアクセサリ位置とされた後、すぐにGPS信号が受信できないような場合に、盗難されたか否かの誤判断を抑制して、判断の精度を向上できる。したがって、盗難抑制効果が高まるとともに、盗難されたとの誤判断によって起動した盗難防止機能の解除のためにセキュリティ解除コードを入力しなければならない、という煩わしさを抑制できる。
【0035】
(4) 盗難されたと判断されると、図3に示すようなセキュリティ解除コードの入力画面210がディスプレイ117に表示されるように構成した。これにより、車両用ナビゲーション装置100が盗まれた際に、車両用ナビゲーション装置100のナビゲーション機能やオーディオ機能を効果的に制限できるとともに、盗人に対して盗品がナビゲーション装置やオーディオ装置として利用、転売等できないことを効果的に知らしめることができるので、盗難防止(盗難抑止)効果が高い。
【0036】
(5) 正しいセキュリティ解除コードを入力しないと盗難防止機能の停止ができないように構成した。換言すると、正しいセキュリティ解除コードが入力されると盗難防止機能が停止するように構成した。これにより、仮に盗難防止機能が誤って起動したとしても、車両用ナビゲーション装置100の正規のユーザや両用ナビゲーション装置100の製造メーカや正規取扱店であれば盗難防止機能を容易に停止できるとともに、盗人に対しては、上記のとおり高い盗難防止効果を有する。
【0037】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、盗難防止機能が起動すると、図3に示すようなセキュリティ解除コードの入力画面210をディスプレイ117に表示させて、セキュリティ解除コードの入力以外の、車両用ナビゲーション装置100の諸機能を制限するように構成したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、ナビゲーション機能やオーディオ機能の全ての機能を制限するのではなく、たとえば、音量調節機能の制限をしないようにするなど、一部の機能を有効とし、その他の機能を制限するようにしてもよい。
【0038】
(2) 上述の説明では、FM放送受信用の6つのプリセットメモリの全て、および、AM放送受信用の6つのプリセットメモリの全てに、それぞれ初期値が格納されている場合に、プリセットメモリ114が初期化されていると判断するように構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、上記複数のプリセットメモリの一部のプリセットメモリに初期値が格納されている場合に、プリセットメモリ114が初期化されていると判断するように構成してもよい。
【0039】
(3) 上述の説明では、放送チューナ116がラジオ放送用の放送波の受信装置であるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、放送チューナ116がISDB−T規格に対応した地上デジタル放送の放送波の受信装置であってもよく、さらにラジオ放送用の放送波も受信できるように構成されていてもよい。この場合、プリセットメモリ114には、地上デジタル放送用のプリセットメモリが複数設けられていることが望ましい。そして、プリセットメモリ114に地上デジタル放送用のプリセットメモリが複数設けられている場合、地上デジタル放送用のプリセットメモリの全てが初期値とされたときにプリセットメモリ114が初期化された(上記条件(a)を満たす)と判断するようにしてもよい。また、ラジオ放送受信用のプリセットメモリおよび地上デジタル放送用のプリセットメモリの全てが初期値とされたときにプリセットメモリ114が初期化されたと判断するようにしてもよい。また、ラジオ放送受信用のプリセットメモリの全てが初期値とされるか、地上デジタル放送用のプリセットメモリの全てが初期値とされるかのいずれか一方に該当することとなった場合に、プリセットメモリ114が初期化されたと判断するようにしてもよい。
【0040】
(4) 上述の説明では、図5に示すように、プリセットメモリ114が初期化されたと判断された後に(S201肯定判断の後に)監視期間が経過したか否かを判断する(ステップS221)ように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、盗難防止機能を起動する前の段階であれば、監視期間が経過したか否かを判断するタイミングは任意のタイミングであってもよい。
【0041】
(5) 上述の説明では、車両の不図示のイグニッションキーによりIGNスイッチ71が操作されることを前提に説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、車両のエンジンの始動をボタン操作で行うように構成された車両の場合、上述の説明でIGNスイッチ71がアクセサリ位置とされることを、アクセサリ電源が接続された(アクセサリ電源からの電力が供給されるようになった)と読み替え、上述の説明で車両のIGNスイッチ71がオフされることを、アクセサリ電源が断たれると読み替えてもよい。
【0042】
(6) 上述の説明では、盗難防止機能の起動中に自車位置の更新などのナビゲーション装置としての処理がバックグラウンドで行われているか否かについて特に言及していない。しかし、正しいセキュリティ解除コードが入力された後、直ちに自車位置をその周辺の地図に重畳させて表示できるように、盗難防止機能の起動中に自車位置の更新などのナビゲーション装置としての処理がバックグラウンドで行われていることが望ましい。
【0043】
(7) 上述の説明では、自車位置P2と自車位置P1との離間距離を自車位置P2と自車位置P1との直線距離としているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、自車位置P2と自車位置P1との間の道なりの距離を自車位置P2と自車位置P1との離間距離としてもよい。
(8) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、受信周波数を記憶するプリセットメモリと、プリセットメモリが初期化されたか否かを判断するプリセットメモリ初期化判断手段と、車両の自車位置を算出する自車位置算出手段と、自車位置算出手段で算出した自車位置を記憶する自車位置記憶手段と、自車位置記憶手段で記憶している自車位置である第1の自車位置と、自車位置算出手段で新たに算出した自車位置である第2の自車位置との離間距離を算出する距離算出手段と、距離算出手段で算出した離間距離が、所定の距離を超えているか否かを判断する離間距離判断手段と、プリセットメモリ初期化判断手段でプリセットメモリが初期化されたと判断され、かつ、離間距離判断手段で離間距離が所定の距離を超えていると判断されると、盗難防止機能を起動させる盗難防止手段とを備えることを特徴とする各種構造の車両用ナビゲーション装置を含むものである。
【符号の説明】
【0045】
71 イグニッションスイッチ(IGNスイッチ) 72 バッテリ
100 車両用ナビゲーション装置 110 CPU
113 EEPROM 114 プリセットメモリ
116 放送チューナ 117 ディスプレイ
131 GPSセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信周波数を記憶するプリセットメモリと、
前記プリセットメモリが初期化されたか否かを判断するプリセットメモリ初期化判断手段と、
前記車両の自車位置を算出する自車位置算出手段と、
前記自車位置算出手段で算出した自車位置を記憶する自車位置記憶手段と、
前記自車位置記憶手段で記憶している自車位置である第1の自車位置と、前記自車位置算出手段で新たに算出した自車位置である第2の自車位置との離間距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段で算出した前記離間距離が、所定の距離を超えているか否かを判断する離間距離判断手段と、
前記プリセットメモリ初期化判断手段で前記プリセットメモリが初期化されたと判断され、かつ、前記離間距離判断手段で前記離間距離が前記所定の距離を超えていると判断されると、盗難防止機能を起動させる盗難防止手段とを備えることを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ナビゲーション装置において、
前記プリセットメモリは、複数の受信周波数を記憶でき、
前記プリセットメモリ初期化判断手段は、前記プリセットメモリに記憶された複数の受信周波数の全てが初期値に変更されたことが検出されると前記プリセットメモリが初期化されたと判断することを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用ナビゲーション装置において、
前記第1の自車位置は、車両用ナビゲーション装置へ電力を供給するアクセサリ電源との接続が断たれる前に前記自車位置算出手段で算出した自車位置であり、
前記第2の自車位置は、前記アクセサリ電源との接続が断たれた後、再び前記アクセサリ電源と接続された後に前記自車位置算出手段で算出した自車位置であることを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ナビゲーション装置において、
前記盗難防止手段は、前記アクセサリ電源との接続が断たれた後、再び前記アクセサリ電源と接続された後に、前記自車位置算出手段が自車位置を所定時間以上算出できない場合には、その後、前記自車位置算出手段が自車位置を算出しても、前記盗難防止機能を起動させないことを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用ナビゲーション装置において、
前記盗難防止手段は、前記プリセットメモリ初期化判断手段で前記プリセットメモリが初期化されたと判断され、かつ、前記離間距離判断手段で前記離間距離が前記所定の距離を超えていると判断されると、前記盗難防止機能として、前記車両に設けられている表示装置に所定のセキュリティ解除コードの入力を促す画面を表示させることを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用ナビゲーション装置において、
前記所定のセキュリティ解除コードが入力されたか否かを判断する、セキュリティ解除コード入力有無判断手段をさらに備え、
前記盗難防止手段は、前記車両に設けられている表示装置に所定のセキュリティ解除コードの入力を促す画面を表示させた後、前記セキュリティ解除コード入力有無判断手段で、前記所定のセキュリティ解除コードが入力されたと判断されるまでは、前記車両用ナビゲーション装置の少なくとも一部の機能を制限し、前記セキュリティ解除コード入力有無判断手段で、前記所定のセキュリティ解除コードが入力されたと判断されると、前記車両用ナビゲーション装置の機能制限を解除することを特徴とする車両用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−237919(P2011−237919A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107261(P2010−107261)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】