説明

車両用バッテリ搭載構造

【課題】床下に配置した場合であってもバッテリが冠水しにくい車両用バッテリ搭載構造を提供する。
【解決手段】車体フロアの床下側に搭載されるバッテリボックス100を有する車両用バッテリ搭載構造を、バッテリボックスは、バッテリが乗せられるバッテリパン110と、バッテリパンの外周縁部から突き出して形成された外周フレーム114と、バッテリパンの上方から被せられるカバー120と、バッテリパンとカバーとの接合部に設けられたシール手段Sとを有し、シール手段は、外周フレームよりも上方でありかつ平面視における位置が外周フレームの外周よりも内側に配置される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車や電気ハイブリッド自動車等の車両にバッテリを搭載する車両用バッテリ搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やエンジン−電気ハイブリッド自動車等の車両において、走行用動力として用いられるバッテリを、保護用容器であるバッテリボックスに収容した状態で車両に搭載することが知られている。
例えば、特許文献1には、複数のバッテリモジュールを収容するバッテリカバーを有するバッテリボックスを、左右方向に延びた支持フレームを介して車体のサイドフレームに連結した車両用電源装置が記載されている。
【0003】
また、このようなバッテリボックスは、車両の低重心化やキャビン内スペースの確保の観点からは床下部に搭載することが望ましいが、この場合、車輪が跳ね上げる水や、洗車時に高圧洗車機によって浴びせられる水等によってバッテリが冠水しないよう配慮が必要となる。
例えば、特許文献2には、上下に区画された収容空間を有し、冠水に弱いバッテリを上方の収容空間に収容し、下方の収容空間内には補器類を収容したバッテリボックス構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−335243号公報
【特許文献2】特開2009―35126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の技術は、ハイブリッド電気トラックのフレーム側方への搭載を意図したものであり、バッテリを上方に配置することから車両の重心が高くなり、またバッテリボックスの高さが大きくなることから車室スペースの確保にも困難が生じるため、例えば乗用車の床下部に配置することは困難である。
本発明の課題は、床下に配置した場合であってもバッテリが冠水しにくい車両用バッテリ搭載構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、車体フロアの床下側に搭載されるバッテリボックスを有する車両用バッテリ搭載構造であって、前記バッテリボックスは、バッテリが乗せられるバッテリパンと、前記バッテリパンの外周縁部から突き出して形成された外周フレームと、前記バッテリパンの上方から被せられるカバーと、前記バッテリパンと前記カバーとの接合部に設けられたシール手段とを有し、前記シール手段は前記外周フレームよりも上方でありかつ平面視における位置が前記外周フレームの外周よりも内側に配置されることを特徴とする車両用バッテリ搭載構造である。
【0007】
請求項2の発明は、前記カバーと前記バッテリパンとの少なくとも一方の外周縁部に、前記外周フレームと協働して前記シール手段を車両外部から隠蔽するガード部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリ搭載構造である。
請求項3の発明は、前記バッテリボックスの前端部における前記シール手段を車体に設けられ車幅方向に沿って延びたクロスメンバの後方側に配置し、前記外周フレームの一部を前記クロスメンバと前記シール手段との隙間の下方に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用バッテリ搭載構造である。
請求項4の発明は、前記バッテリボックスの前端部と前記クロスメンバとを連結するステーを備えることを特徴とする請求項3に記載の車両用バッテリ搭載構造である。
請求項5の発明は、前記シール手段は、弾性材料によって形成されたシール部材と、前記シール部材を挟んで対向するバッテリパン側フランジ及びカバー側フランジを有し、前記バッテリパン側フランジと前記カバー側フランジとをバネ力によって挟持するクランプと、前記カバー側フランジの上面と前記クランプとの間に設けられ、前記カバー側フランジ及び前記クランプとそれぞれ係合して前記クランプの脱落を防止する脱落防止プレートとを有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両用バッテリ搭載構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)シール手段は外周フレームよりも上方でありかつ平面視における位置が外周フレームの外周よりも内側に配置されることによって、車体下部が車輪による跳ね上げや洗車用の高圧洗車機によって水を浴びた場合であっても、外周フレームがシール手段をガードすることによってシール手段に水が到達しにくくなり、バッテリボックスを床下に搭載した場合であってもバッテリの冠水を防止できる。
(2)カバーとバッテリパンとの少なくとも一方の外周縁部に、外周フレームと協働してシール手段を車両外部から隠蔽するガード部が形成されることによって、外周フレームを超えて侵入してくる水からシール手段をガードすることができ、バッテリの冠水をより確実に防止できる。このようなガード部として、例えばカバー側フランジの突端部から下方へ延びたベロ状の端面部を用いることができる。
(3)バッテリボックスの前端部におけるシール手段を車体に設けられ車幅方向に沿って延びたクロスメンバの後方側に配置し、外周フレームの一部をクロスメンバとシール手段との隙間の下方に配置したことによって、走行時に水を浴びやすいバッテリボックスの前部におけるシール手段を、クロスメンバ及び外周フレームによってガードしてバッテリの冠水を防止できる。また、このようなクロスメンバを設けることによって、フロアパネルにバッテリ収容用の大きな凹部を形成した場合であっても、車幅方向の荷重伝達を効率よく行って車体剛性を確保できる。
(4)バッテリボックスの前端部とクロスメンバとを連結するステーを備えることによって、バッテリボックスの前端部における支持剛性を向上するとともに、ステーによってシール手段をガードしてシール手段への水の到達を防止できる。
(5)シール手段は、弾性材料によって形成されたシール部材と、シール部材を挟んで対向するバッテリパン側フランジ及びカバー側フランジを有し、バッテリパン側フランジとカバー側フランジとをバネ力によって挟持するクランプと、カバー側フランジの上面とクランプとの間に設けられ、カバー側フランジ及びクランプとそれぞれ係合してクランプの脱落を防止する脱落防止プレートとを有することによって、例えばシール部材の外周側をボルト等で締結する技術に対して、フランジの突出幅を小さくすることができ、例えば左右のサイドフレーム間等の制限された空間部にバッテリボックスを収容する場合に、フランジを狭幅化してバッテリボックス本体の容量を大きくすることができる。また、クランプを用いて各フランジを挟持することによって、ボルト等で締結する場合に対してバッテリボックスの組立工程を簡素化することができる。さらに、カバー側フランジの上面とクランプにそれぞれ係合する脱落防止プレートを設けることによって、車両使用中におけるクランプの抜けを防止し、信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用した車両用バッテリ搭載構造の実施例における車体とバッテリボックスの外観斜視図であって、斜め下方側かつ斜め後方側から見た図である。
【図2】実施例の車両用バッテリ搭載構造におけるバッテリボックスの分解斜視図であって、斜め上方側かつ斜め前方側から見た図である。
【図3】実施例の車両用バッテリ搭載構造(カバーは図示しない)を上方から見た平面図である。
【図4】図3のIV−IV部矢視断面図である。
【図5】図3のV−V部矢視断面図である。
【図6】実施例におけるバッテリボックスのバッテリパンとカバーとの締結箇所を水平方向から見た断面図である。
【図7】実施例におけるバッテリボックスのバッテリパンとカバーとの締結箇所(図3におけるVII部)の斜視図であって、クランプ及びプレートを装着する前の状態を示す図である。
【図8】実施例におけるバッテリボックスのバッテリパンとカバーとの締結箇所の斜視図であって、プレートのみを装着した状態を示す図である。
【図9】実施例におけるバッテリボックスのバッテリパンとカバーとの締結箇所の斜視図であって、クランプ及びプレートを装着して締結が完了した状態を示す図である。
【図10】実施例のバッテリボックスにおける防水効果を示す拡大断面図である。
【図11】実施例の車両とベースとなるエンジン車両とのフロア構造の違いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、床下に配置した場合であってもバッテリが冠水しにくい車両用バッテリ搭載構造を提供する課題を、バッテリボックスを構成するバッテリパンとカバーとの間のシール部の下方に外周フレームを張り出させることによって解決した。
【実施例】
【0011】
以下、本発明を適用した車両用バッテリ搭載構造の実施例について説明する。実施例の車両用バッテリ搭載構造は、例えば乗用車等の自動車のキャビン床下部に設けられるものである。
搭載対象となる車両1は、例えば、2ボックスタイプの小型乗用車(軽乗用車)であって、フロアパネル2、サイドシル3、サイドフレーム4、クロスメンバ5等を備えており、フロアパネル2の床下側でありかつ左右のサイドフレーム4の間隔にバッテリボックス100を吊り下げ搭載するものである。
【0012】
フロアパネル2は、車室床面を構成する面部であって、例えば鋼板をプレス加工して形成され、車体のモノコック構造の一部を構成している。
サイドシル3は、フロアパネル2の左右両端部に設けられ、車両の前後方向に略沿って延びた閉断面を有する構造部材である。
サイドフレーム4は、フロアパネル2の下面に沿って車両の前後方向に延びた閉断面を有する構造部材である。サイドフレーム4は、サイドシル3に対して車幅方向内側に配置され、左右対称に一対設けられている。
図3に示すように、サイドフレーム4の後端部は、バッテリボックス100の前後方向における中央部に隣接して配置されている。
フロアパネル2における左右のサイドフレーム4の間の領域は、図11(b)に示すように略全幅にわたって上方へ張り出させることによって、バッテリボックス100の上部が収容されるバッテリ収容部2aが形成されている。
【0013】
クロスメンバ5は、図3に示すように、バッテリボックス100の前方側において、左右のサイドフレーム4にわたして設けられた横梁状の部材である。
図4に示すように、クロスメンバ5の横断面形状は、帯板状の上面部5aの前後端部から下方へ伸びた前面部5b及び後面部5cを有する。クロスメンバ5は、例えば、鋼板をプレス加工することによって一体に形成されている。
【0014】
バッテリボックス100は、図示しないバッテリを収容するとともに、車両1のフロアパネル2の床下側に搭載されるものである。
図2に示すように、バッテリボックス100は、バッテリが載せられる皿状のバッテリパン110と、バッテリパン110の上部に被せられるカバー120とを備えて構成されている。
【0015】
バッテリパン110は、底面部111、壁部112、クロスメンバ113、外周フレーム114、フランジ115等を備えて構成されている。これらの各部材は、例えば鋼板をプレス成型して形成され、溶接等によって接合されている。また、底面部111、壁部112及びフランジ115は、一体に形成されている。
底面部111は、バッテリが載せられる平板状の部分である。底面部111を車両上方から見た平面形は、車両前後方向に沿った長辺方向を有する略矩形に形成されている。底面部111には、補強のため車両前後方向に延びた複数のビードが形成されている。
壁部112は、底面部111の外周縁部から上方へ立ち上げられた部分である。壁部112は、バッテリボックス100の下部における前面部、後面部及び側面部を構成する。
【0016】
クロスメンバ113は、図2、図3等に示すように、バッテリパン110の内部に設けられ、左右の側面部間を連結する横梁状の部材である。クロスメンバ113は、底面部111及び壁部112にそれぞれ溶接等によって接合されている。
【0017】
外周フレーム114は、バッテリパン110の外周縁部の全周にわたって設けられ、壁部112の下部から水平方向外側へ突き出して形成された構造部材である。外周フレーム114は、バッテリボックス100の剛性を確保するとともに、バッテリパン110とカバー120との接合部への水の侵入を防止する役割も果たしている。この点については、後に詳しく説明する。
【0018】
フランジ115は、壁部112の上端部から水平方向外側に張り出して形成されており、バッテリパン110におけるカバー120の接合部となる部分である。
【0019】
カバー120は、バッテリパン110の上部に被せられるものであって、例えば樹脂系材料によって一体に形成されている。
カバー120は、前方収容部121、後方収容部122、連結部123、フランジ124等を備えて構成されている。
前方収容部121及び後方収容部122は、上方に張り出して形成され、その内部にバッテリが収容されるボックス状の部分である。
図6に示すように、カバー120の前方収容部121における側壁の下端部121aは、バッテリパン110のフランジ115よりも低い位置に配置されている。
連結部123は、前方収容部121と後方収容部122とを連結する部分であって、バッテリボックス100は、この部分の高さが他部品との干渉を防止するために低くされている。
【0020】
フランジ124は、カバー120の下端部付近における外周縁部から水平方向外側に張り出して形成されており、上述したバッテリパン110のフランジ115と対向して配置される。また、これらのフランジ115、フランジ124の間には、例えば弾性を有するゴム系材料等によって形成されたシール部材Sが挟持される。シール部材Sは、各フランジ115,124間で押しつぶされて隙間を密閉し、ここからバッテリボックス100内部への水の侵入を防止する。シール部材Sは、バッテリボックス100を上方から見た平面視において、全周にわたって外周フレーム114の外周(突端部)よりも内側に配置されている。
フランジ115とフランジ124との締結は、クランプ150及びプレート160を用いて行われ、図3に示すようにサイドフレーム4等の車体側部材との干渉が問題にならない箇所では補助的にボルトBが用いられる。このクランプ150及びプレート160を用いた締結については、後に詳しく説明する。
【0021】
フランジ124には、図7等に示すように、端面部124a,124b、及び、突起124cが形成されている。
端面部124a,124bは、フランジ124の外周縁部(突端部)から下方へ張り出して形成されたベロ状の部分である。
端面部124aは、クランプ150の装着部以外の領域に設けられている。端面部124aの下端部は、図10に示すようにフランジ115よりも下方に配置されている。このような構成によって端面部124aは、フランジ115とフランジ124との間の隙間を隠蔽している。端面部124aは、外周フレーム114と協働してシール部材Sを隠蔽する本発明にいうガード部として機能する。
端面部124bは、クランプ150の装着部に設けられている。端面部124bの下端部は、図6に示すように、フランジ115の上面部に当接している。
突起124cは、プレート160と係合するものであって、図7等に示すように、クランプ150の装着箇所の両側におけるフランジ124の上面部から突出して形成されている。
【0022】
バッテリボックス100は、前方ステー130及び側方ステー140を用いて車両1に固定されている。
図3に示すように、前方ステー130は、バッテリボックス100の前端部と、クロスメンバ5とを連結している。
図4に示すように、前方ステー130は、一方の端部をバッテリパン110の外周フレーム114の下面部に溶接等によって接合され、他方の端部をクロスメンバ5の下面部に当接されている。前方ステー130のクロスメンバ5側の端部にはウェルディングナット131が固定され、ボルトBによってクロスメンバ5と締結されている。
【0023】
バッテリボックス100の前端部においては、クロスメンバ5の後面部5cの下端部は、バッテリパン110のフランジ115よりも低い位置に配置されている。また、外周フレーム114の先端部は、クロスメンバ5の下部に設けられ、クロスメンバ5の後面部5cよりも車両前方に配置されている。すなわち、外周フレーム114は、クロスメンバ5とフランジ115との隙間の下方に配置されている。
【0024】
図3に示すように、側方ステー140は、バッテリボックス100の側端部と、サイドフレーム4とを連結している。
図5に示すように、側方ステー140は、一方の端部をバッテリパン110の外周フレーム114の下面部に溶接等によって接合され、他方の端部をサイドフレーム4の下面部に当接され、固定されている。
バッテリボックス100の側部においては、サイドフレーム4の下面部は、バッテリパン110のフランジ115と略同じ高さに配置されている。また、外周フレーム114の突端部は、サイドフレーム4の下部に配置されている。
【0025】
次に、クランプ150及びプレート160を用いたバッテリパン110とカバー120との締結について説明する。
図6に示すように、クランプ150は、カバー120のフランジ124の上面部を押圧する上面部151、バッテリパン110のフランジ115の下面部を押圧する下面部152、上面部151及び下面部152を連結する連結部153を、例えばバネ鋼等の弾性を有する板材によって一体に形成したものである。
上面部151及び下面部152の挿入方向前方側の突端部は、クランプ150の装着を容易とするため、それぞれ上方及び下方に反った斜面部が形成されている。
また、図9に示すように、上面部151及び下面部152は、水平方向(フランジの長手方向)に沿った幅が、連結部153に対して広く形成されている。
【0026】
プレート160は、例えば薄板の鋼板によって形成されている。プレート160は、図6、図8等に示すように、上面部161、端面部162、耳部163、爪部164等を備えて構成されている。
上面部161は、クランプ150の上面部151とフランジ124との間に挟持される平板状の部分である。
端面部162は、上面部161の外方の端部から下方へ突き出して形成され、フランジ124の端面部124bと当接する部分である。
耳部163は、上面部161の両端部から突き出して設けられ、図6、図8等に示すように、フランジ124の突起124cと係合し、プレート160の位置決めを行うものである。
爪部164は、上面部161から上方へ切り起こして形成され、フランジ124の端部側よりも前側収容部121側が高くなるように傾斜した斜面状に形成されている。
爪部164は、図9に示すように、クランプ150の上面部151における両端部と係合してクランプ150の脱落を防止するものである。
【0027】
バッテリボックス100の組立工程においては、先ず図7に示すようにバッテリパン110の上にカバー120を被せ、次に図8に示すように、フランジ124の上部にプレート160を載せる。このとき、プレート160の耳部163がフランジ124の突起124cと係合するように配置する。
その後、クランプ150を押しこんでフランジ115,125の締結を行う。クランプ150は、プレート160の爪部164を倒しながらこれを乗り越えて、再び爪部164が立ちあがってクランプ150の上面部151と係合する位置まで押し込まれる。クランプ150は、この位置において、プレート160によってフランジからの脱落が防止され、締結が完了する。
【0028】
このようなクランプ150を用いたバッテリパン110とカバー120との締結構造は、図3に示すように、バッテリボックス100の略全周にわたって分散して設けられる。また、サイドフレーム4等の車体側部材との干渉が問題とならない箇所では、ボルトBを用いた締結構造も補助的に用いられる。
【0029】
以上説明した実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
図10に示すように、本実施例においては、バッテリパン110の外周フレーム114が、シール部材Sを挟持するフランジ115,124の合わせ部の下側に回りこみ、また、フランジ124の端面部124aがフランジ115の外側から下方へ突き出した構成としたため、車両下部からの水が直線状のコースを通ってフランジ115、124間の隙間へ到達することが不可能となっている。すなわち、図10に示すように、外周フレーム114の上側エッジ部及びフランジ124の端面部124aの下側エッジ部とを結んだ直線Lは、フランジ115の下面部を通ることになり、フランジ115,124間の隙間は、車両下部からは外周フレーム114及び端面部124aに隠蔽されて視認不可能となっている。
さらに、上述したサイドフレーム4、クロスメンバ5、前方ステー130、後方ステー140、クランプ150も、フランジ115,124間をガードして隙間への水の到達を防止する。
これによって、例えば車輪からの水はねや洗車用の高圧洗車機によってバッテリボックス100の内部に水が浸入し、バッテリが冠水することが防止される。
【0030】
また、このようなバッテリボックス100を床下に収容する電気自動車においては、図11(a)に示すように、左右のサイドフレーム4間の略全幅にわたってバッテリ収容部2bを形成する必要があることから、図11(b)に示すエンジン車のように、フロアパネル2の中央部にのみフロアトンネル2bを形成した場合に対して、フロアパネル2による車幅方向の荷重伝達が困難となる。
これに対し、本実施例では、バッテリパン110の内部にクロスメンバ113を設けて、外周フレーム114及びステー140を介して、左右のサイドフレーム4の間をクロスメンバ113で連結することによって、車幅方向の荷重伝達を効率よく行わせ、車体剛性を確保することができる。
また、バッテリボックス100の直前に設けられたクロスメンバ5も左右メインフレーム4間の車幅方向の荷重伝達に寄与し、車体剛性を向上する。
【0031】
さらに、バッテリボックス100のバッテリパン110とカバー120とをクランプ150によって締結したことによって、シール部材Sの外周側をボルト等で締結する場合に対して、フランジ115,124の突出幅を小さくすることができ、サイドフレーム4の間にバッテリボックス100を収容する場合に、フランジの狭幅化によってバッテリボックス100内部の容量を大きくすることができる。
また、クランプ150は単に押し込むことによってワンタッチで装着することができ、バッテリボックス100の製造工程を簡素化することができる。また、クランプ150の脱落を防止するプレート160を設けることによって、車両の使用中におけるクランプ150の抜けを防止することができる。ここで、仮にクランプ150がフランジ124の突起124cと直接係合するようにした場合、剛性が高いクランプ150を広げて突起124cを乗り越えさせる必要があるため作業性が悪くなり、例えば専用工具を準備する必要が生じる。これに対し、本実施例ではフランジ124及びクランプ150とそれぞれ係合するプレート160を用いることによって、作業性を損なうことなく少ない力でクランプ150を取り付けることができるとともに、その脱落防止を図ることができる。
【0032】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、車体本体やバッテリボックス、締結構造の詳細な構成は適宜変更することができる。例えば、実施例の車両は小型の電気自動車であったが、本発明は中大型の車両や、エンジン−電気ハイブリッド車両、燃焼電池車等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 車両 2 フロアパネル
2a バッテリ収容部 2b フロアトンネル
3 サイドシル 4 サイドフレーム
5 クロスメンバ 5a 上面部
5b 前面部 5c 後面部
100 バッテリボックス 110 バッテリパン
111 底面部 112 壁部
113 クロスメンバ 114 外周フレーム
115 フランジ 120 カバー
121 前方収容部 121a 下端部
122 後方収容部 123 連結部
124 フランジ 124a,124b 端面部
124c 突起 130 前方ステー
131 ウェルディングナット 140 側方ステー
150 クランプ 151 上面部
152 下面部 153 連結部
160 プレート 161 上面部
162 端面部 163 耳部
164 爪部 S シール部材
B ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアの床下側に搭載されるバッテリボックスを有する車両用バッテリ搭載構造であって、
前記バッテリボックスは、
バッテリが乗せられるバッテリパンと、
前記バッテリパンの外周縁部から突き出して形成された外周フレームと、
前記バッテリパンの上方から被せられるカバーと、
前記バッテリパンと前記カバーとの接合部に設けられたシール手段とを有し、
前記シール手段は前記外周フレームよりも上方でありかつ平面視における位置が前記外周フレームの外周よりも内側に配置されること
を特徴とする車両用バッテリ搭載構造。
【請求項2】
前記カバーと前記バッテリパンとの少なくとも一方の外周縁部に、前記外周フレームと協働して前記シール手段を車両外部から隠蔽するガード部が形成されること
を特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリ搭載構造。
【請求項3】
前記バッテリボックスの前端部における前記シール手段を車体に設けられ車幅方向に沿って延びたクロスメンバの後方側に配置し、前記外周フレームの一部を前記クロスメンバと前記シール手段との隙間の下方に配置したこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用バッテリ搭載構造。
【請求項4】
前記バッテリボックスの前端部と前記クロスメンバとを連結するステーを備えること
を特徴とする請求項3に記載の車両用バッテリ搭載構造。
【請求項5】
前記シール手段は、
弾性材料によって形成されたシール部材と、
前記シール部材を挟んで対向するバッテリパン側フランジ及びカバー側フランジを有し、
前記バッテリパン側フランジと前記カバー側フランジとをバネ力によって挟持するクランプと、
前記カバー側フランジの上面と前記クランプとの間に設けられ、前記カバー側フランジ及び前記クランプとそれぞれ係合して前記クランプの脱落を防止する脱落防止プレートとを有すること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両用バッテリ搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−284984(P2010−284984A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138064(P2009−138064)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】