説明

車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置

【課題】部品点数の増加を抑えつつ、複数のパワートレーン機器の冷却及び潤滑を効果的に行う。
【解決手段】冷却潤滑装置の供給通路12がケース9の上方に設けられ、同通路12の開口部が発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6といったパワートレーン機器の上方にてそれぞれ開口している。このため、ケース9内から吸引されて冷却装置11にて冷却されたオイルは、各パワートレーン機器の上方に設けられた供給通路12から落下して当該各機器に供給される。従って、これら機器は、冷却装置11にて冷却された直後のオイルにより効果的に冷却される。そして、各パワートレーン機器の冷却に用いられたオイルについては、温度上昇して粘度が低下するため、入出力軸8を回転可能に支持するベアリング7や変速用ギヤトレーン5の各ギヤに流れ込みやすくなり、それら機器の潤滑が上記オイルによって効果的に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、車両の車軸と動力源の出力軸との両軸にそれぞれ、モータ、発電機、ベアリング、及びギヤ装置等の機器を含む複数のパワートレーン機器が接続されている。こうした複数のパワートレーン機器のうち、例えばモータ、発電機、ベアリング、及びギヤ装置の冷却及び潤滑を行うために、当該各機器全体をオイルの溜められたケースで囲い、そのケース内のオイルを吸入して冷却装置にて冷却し、冷却後のオイルを供給通路を介して上記機器に供給することが考えられる。
【0003】
ところで、上記オイルによる各パワートレーン機器の冷却及び潤滑を効果的に行うためには、各パワートレーン機器毎に駆動状態を把握し、その把握される駆動状態に応じて各パワートレーン機器へのオイル供給量をそれぞれ調整することが好ましい。
【0004】
そこで、特許文献1では、パワートレーン機器の駆動状態として温度を検出する温度センサを各パワートレーン機器毎に設け、それら温度センサからの検出信号に基づきパワートレーン機器の駆動状態を個別に把握するようにしている。更に、各パワートレーン機器に対し個別にオイルが供給されるよう供給通路を分岐させるとともに、その各供給通路に各々オイル供給量を調整するためのバルブを設け、そのバルブをパワートレーン機器の駆動状態に応じて動作させるようにしている。
【0005】
この場合、複数のパワートレーン機器に対し、その駆動状態に応じて冷却及び潤滑に必要な量のオイルをそれぞれ供給することができ、各パワートレーン機器の冷却及び潤滑を効果的に行うことができるようになる。
【特許文献1】特開2002−147584公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に示されるように、パワートレーン機器の駆動状態に応じた量のオイルを各パワートレーン機器に対し個別に供給することで、当該パワートレーン機器の冷却及び潤滑を効果的に行うことができるようにはなる。しかし、各パワートレーン機器の駆動状態を個別に検出するための温度センサをパワートレーン機器毎に設けるなど、冷却及び潤滑を行うための装置の部品点数が増加することは避けられず、それら部品の組み付けに手間がかかることも無視できない問題となる。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、部品点数の増加を抑えつつ、複数のパワートレーン機器の冷却及び潤滑を効果的に行うことのできる車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、車両の車軸と動力源の出力軸とに各々接続される複数のパワートレーン機器全体を囲うケースと、そのケース内に溜まったオイルを吸入して冷却する冷却装置と、その冷却装置によって冷却されたオイルを前記パワートレーン機器に供給する供給通路とを備える車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置において、前記パワートレーン機器の上方に前記供給通路を設けて同通路から前記パワートレーン機器にオイルを供給することを要旨とした。
【0009】
上記構成によれば、冷却装置にて冷やされたオイルがパワートレーン機器の上方に設けられた供給通路から当該パワートレーン機器に供給されるため、そのパワートレーン機器が上記オイルによって効果的に冷却される。そして、パワートレーン機器の冷却に用いられたオイルは、当該パワートレーン機器との熱交換により温度上昇して粘度が低下するため、各パワートレーン機器のうち潤滑の必要な機器に流れ込み易くなり、その機器での潤滑が上記オイルによって効果的に行われる。このように、パワートレーン機器の上方からのオイル供給により、各パワートレーン機器の駆動状態を各々検出するセンサなど多くの部品を設けなくても、パワートレーン機器を効果的に冷却するとともに、潤滑の必要なパワートレーン機器に対し効果的な潤滑を行うことができる。
【0010】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記複数のパワートレーン機器には、前記ケース内に溜まったオイルに浸されるギヤ装置が含まれていることを要旨とした。
【0011】
上記構成によれば、車両走行時にはギヤ装置におけるギヤの回転によりケース内に溜まったオイルが掻き上げられ、それによってケース内における各パワートレーン機器へのオイル供給も行われる。ただし、上記掻き上げによるパワートレーン機器へのオイル供給だけでは、車速が低くなってオイルの掻き上げ量が少なくなったとき、パワートレーン機器の上部において冷却不足が生じるおそれがある。しかし、パワートレーン機器の上方には供給通路が設けられ、その供給通路から冷却装置にて冷却された直後のオイルが当該パワートレーン機器に供給されるため、そのオイルによりパワートレーン機器の上部が効果的に冷却され、上述した低車速時におけるパワートレーン機器上部の冷却不足を的確に抑制することができる。
【0012】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明において、前記ケース内から前記供給通路へのオイルの汲み上げ量を車速に応じて可変とする汲上量可変手段を更に備えた。
高車速時にはギヤ装置によりケース内のオイルが多量に掻き上げられ、ケース内における各パワートレーン機器へのオイル供給が効果的に行われる。しかし、低車速時には上記オイルの掻き上げ量が少なくなり、掻き上げられたオイルがパワートレーン機器の上部には行き渡りにくくなる。上記構成によれば、高車速になるほどケース内から供給通路へのオイルの汲み上げ量を少なくし、低車速になるほど上記オイルの汲み上げ量を多くすることができる。このようにケース内から供給通路へのオイルの汲み上げ量を車速に応じて可変とすることで、パワートレーン機器上部の冷却に必要な量のオイルだけを供給通路から供給することが可能になる。
【0013】
請求項4記載の発明では、請求項3記載の発明において、前記汲上量可変手段は、高車速時には前記ケースから前記供給通路へのオイルの汲み上げ量を減らすものとした。
高車速時には、ギヤ装置によりケース内のオイルが多量に掻き上げられ、ケース内における各パワートレーン機器へのオイル供給が効果的に行われるため、パワートレーン機器を更に冷却するために供給通路からパワートレーン機器上部にオイルを供給する必要性は低い。しかし、上記構成によれば、高車速時にはケースから供給通路へのオイルの汲み上げ量が減らされるため、そのオイルが無駄に汲み上げられるのを抑制することができる。
【0014】
請求項5記載の発明では、請求項4記載の発明において、車両が走行予定の道路についての道路情報を取得し、その取得した道路情報に基づき車両の高車速を予測する予測手段を更に備え、前記汲上量可変手段は、前記予測手段によって高車速が予測されるとき、前記ケースから前記供給通路へのオイルの汲み上げ量を減らすものとした。
【0015】
自動車が実際に高車速となってから、ケースから供給通路へのオイルの汲み上げ量を減らすのでは、そのオイルの汲み上げ量の低減に遅れが生じるおそれがあり、その遅れの分だけ余分に供給通路へとオイルが汲み上げられることになる。しかし、上記構成によれば、高車速になると予測されるときにケースから供給通路へのオイルの汲み上げ量が減らされるため、上述したようにオイルの汲み上げ量の低減に遅れが生じ、その遅れの分だけ余分に供給通路へとオイルが汲み上げられるのを抑制することができる。
【0016】
請求項6記載の発明では、請求項1又は2記載の発明において、前記ケース内から前記供給通路へのオイルの汲み上げ量をパワートレーン機器の駆動状態に応じて可変とする汲上量可変手段を更に備えた。
【0017】
上記構成によれば、パワートレーン機器の駆動状態に応じてケース内から供給通路へのオイルの汲み上げ量を可変とすることで、同オイルの汲み上げ量をパワートレーン機器の冷却潤滑要求が高くなるほど多くし、逆にパワートレーン機器の冷却潤滑要求が低くなるほど少なくすることが可能になる。このようにケース内から供給通路へのオイルの汲み上げ量を可変とすることで、パワートレーン機器の冷却及び潤滑に必要な量のオイルだけを供給通路から供給することが可能になる。
【0018】
請求項7記載の発明では、請求項6記載の発明において、前記汲上量可変手段は、前記パワートレーン機器が高温になるとき、前記ケースから前記供給通路へのオイルの汲み上げ量を増やすものとした。
【0019】
上記構成によれば、パワートレーン機器の高温時、すなわちパワートレーン機器を冷却すべく供給通路からパワートレーン機器にオイルを供給する必要性の高いとき、ケースから供給通路へのオイルの汲み上げ量が増やされるため、そのオイルによってパワートレーン機器を的確に冷却することができる。
【0020】
請求項8記載の発明では、請求項7記載の発明において、前記複数のパワートレーン機器には回転電機が含まれており、前記汲上量可変手段は、前記回転電機の出力が大であるとき、前記ケースから前記供給通路へのオイルの汲み上げ量を増やすものとした。
【0021】
回転電機については、その出力が大であるほど高温になるという特性を有する。このため、回転電機の温度を検出する温度センサ等を設けなくても、回転電機の出力が大であるときにケースから供給通路へのオイルの汲み上げ量を増やすことにより、同回転電機の高温時に上記オイルの汲み上げ量を増やすことが可能になる。
【0022】
請求項9記載の発明では、請求項8記載の発明において、前記供給通路は、複数に分岐して前記複数のパワートレーン機器に対し個別にオイルを供給するものであり、前記回転電機に対応する部分には当該回転電機の出力が大であるときに回転電機へのオイル供給量を他のパワートレーン機器へのオイル供給量よりも増量させる調整手段を備えた。
【0023】
上記構成によれば、回転電機が高温になるとき、ケースから供給通路に汲み上げられたオイルが回転電機に優先的に供給され、それによって回転電気の冷却を効果的に行うことができる。
【0024】
請求項10記載の発明では、請求項8又は9記載の発明において、前記回転電機は、車両を走行すべく駆動されるモータであり、前記車両は、前記モータと内燃機関とを動力源とし、低車速時には主に前記モータを用いて走行するハイブリッド車両であることを要旨とした。
【0025】
登坂路での走行など、低車速での高出力が要求される状況では、モータが高出力状態となって温度が高くなる。また、低車速であるため、ギヤ装置によるオイルの掻き上げを行うにしても、同オイルの掻き上げ量が少なくなって、そのオイルでのモータの効果的な冷却は望めない。しかし、上記構成によれば、上述したようにモータの出力が大となるとき、ケースから供給通路へのオイルの汲み上げ量が増やされたり、供給通路からモータへのオイルの供給量が他のパワートレーン機器へのオイルの供給量よりも増やされたりするため、そのオイルによりモータを効果的に冷却することが可能になる。
【0026】
請求項11記載の発明では、請求項10記載の発明において、車両が走行予定の道路についての道路情報を取得し、その取得した道路情報に基づき登坂路での走行を予測する予測手段を更に備え、前記予測手段によって登坂路での走行が予測されるとき、前記モータの出力が大である旨判断することを要旨とした。
【0027】
実際に登坂路を走行し始めてモータの出力が大となってから、ケースから供給通路へのオイルの汲み上げ量を増やしたり、供給通路からモータへのオイルの供給量を他のパワートレーン機器へのオイルの供給量よりも増やしたりするのでは、それらオイルの汲み上げ量及び供給量の増加に遅れが生じ、その遅れの分だけオイルによるモータの冷却効率向上が遅くなる。しかし、上記構成によれば、登坂路の走行が予測されるとき、上記オイルの汲み上げ量や供給量が増やされるため、上述したようにオイルの汲み上げや供給の増加に遅れが生じ、その遅れの分だけモータの冷却効率向上が遅れるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を、内燃機関とモータとを動力源として搭載するハイブリッド自動車に適用した一実施形態について、図1〜図8に基づき説明する。
図1に示されるように、ハイブリッド自動車の駆動系においては、動力源である内燃機関1の出力軸2と同自動車の車輪に繋がる車軸3との間に、それら両軸2,3に各々接続される複数の車両用パワートレーン機器、すなわち発電機4、変速用ギヤトレーン5、モータ6、及びベアリング7等が設けられている。なお、パワートレーン機器の一つである上記モータ6はハイブリッド自動車の動力源でもある。
【0029】
こうした複数のパワートレーン機器のうち、発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6については、それらの入出力軸8が内燃機関1の出力軸2及び自動車の車軸3に接続されている。上記発電機4は、出力軸2を介しての内燃機関1側からの回転、及び、車軸3を介しての車輪側からの回転が伝達され、それに基づきバッテリ充電やモータ6への電力供給のための発電を行うものである。上記変速用ギヤトレーン5は、複数のギヤを備えるとともに、出力軸2と車軸3との回転速度の比(変速比)を変更すべく変速動作するものである。上記モータ6は、自動車の走行させるための駆動力を内燃機関と分担して発生させるものであって、例えば低車速時といった内燃機関1の駆動効率が低下する状況下において、上記駆動力を発生させる際の内燃機関1の分担分を減らすべく駆動されることとなる。
【0030】
また、複数のパワートレーン機器のうち、ベアリング7は、発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6の入出力軸8を回転可能に支持するためのものであって、その入出力軸8を介して内燃機関1の出力軸2及び自動車の車軸3に繋がっている。
【0031】
自動車には、上述した発電機4、変速用ギヤトレーン5、モータ6、及びベアリング7といった複数のパワートレーン機器を冷却及び潤滑するための冷却潤滑装置が設けられている。この冷却潤滑装置は、それらパワートレーン機器全体を囲うケース9と、そのケース9内の下部に溜められたオイルを汲み上げるオイルポンプ10と、同ポンプ10によって汲み上げられたオイルを冷却する冷却装置11と、同装置11にて冷却されたオイルをケース9内の各パワートレーン機器に供給する供給通路12とを備えている。
【0032】
冷却潤滑装置のオイルポンプ10としては、例えば電動式のオイルポンプといった内燃機関1の回転状態から影響を受けることなく駆動されるオイルポンプが用いられる。また、上記供給通路12は、ケース9の上方に設けられるとともに、複数に分岐して発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6の上方にて開口している。この供給通路12における分岐した部分、すなわち発電機4の上方に位置する部分(通路12a)、変速用ギヤトレーン5の上方に位置する部分(通路12b)、及びモータ6の上方に位置する部分(通路12c)にはそれぞれ、当該部分のオイル流通面積を可変とすべく動作するバルブ13〜15が設けられている。
【0033】
この実施形態の冷却潤滑装置では、上述したように供給通路12がケース9の上方に設けられ、同通路12の開口部が発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6の上方にてそれぞれ開口している。このため、ケース9内から吸引されて冷却装置11にて冷却されたオイルは、発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6といった各パワートレーン機器の上方に設けられた供給通路12から落下して当該各パワートレーン機器に供給される。従って、これらパワートレーン機器は、冷却装置11にて冷却された直後のオイルが供給され、当該オイルにより効果的に冷却される。そして、各パワートレーン機器の冷却に用いられたオイルは、それら機器との熱交換により温度上昇して粘度が低下するため、ケース9内の各パワートレーン機器のうち潤滑の必要な機器、すなわち入出力軸8を回転可能に支持するベアリング7や変速用ギヤトレーン5の各ギヤに流れ込みやすくなる。その結果、それらの機器の潤滑が上記オイルによって効果的に行われる。
【0034】
このように、発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6の上方からのオイル供給により、各パワートレーン機器の駆動状態を検出するセンサなど多くの部品を設けなくても、冷却の必要な発電機4及びモータ6を効果的に冷却するとともに、潤滑の必要な変速用ギヤトレーン5及びベアリング7に対し効果的な潤滑を行うことができる。
【0035】
なお、この実施形態では、各パワートレーン機器に対し、供給通路12からのオイル供給だけでなく、ケース9内に溜まったオイルを掻き上げることによるオイル供給も行われる。詳しくは、ケース9内に設けられた変速用ギヤトレーン5の下部がケース9内に溜められたオイルに浸された状態とされ、自動車の走行中における変速用ギヤトレーン5の各ギヤの回転によりケース9内に溜められたオイルを掻き上げ、これにより各パワートレーン機器に対し冷却及び潤滑用のオイルを供給するようにしている。
【0036】
次に、冷却潤滑装置の電気的構成について説明する。
冷却潤滑装置は、自動車に搭載された各種機器の駆動制御を行う電子制御装置16を備えている。この電子制御装置16は、上記各種制御にかかる演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
【0037】
電子制御装置16の入力ポートには、自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル17の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ18、自動車の車速を検出する車速センサ19、及び、自動車の現在位置を特定して地図上に表示するナビゲーションシステム20等が接続されている。このナビゲーションシステム20は、高速道路や登坂路などの各種の道路情報を含んだ地図が記憶されており、自動車の現在位置を当該地図と照らし合わせて特定し、これから走行する予定の道路についての道路情報を電子制御装置16に出力するようになっている。
【0038】
電子制御装置16の出力ポートには、内燃機関1の運転に用いられる各種機器の駆動回路、発電機4の駆動回路、モータ6の駆動回路、オイルポンプ10の駆動回路、及びバルブ13〜15の駆動回路等が接続されている。
【0039】
電子制御装置16は、アクセル踏込量及び車速に基づき把握される自動車の走行状態に基づき内燃機関1による自動車の駆動力とモータ6による自動車の駆動力とを決定し、その駆動力が得られるよう内燃機関1及びモータ6の出力を制御する。こうした出力制御により、内燃機関1の駆動効率が低くなる低車速時には主にモータ6によって自動車を走行させるための駆動力が発生させられ、内燃機関1の駆動効率が高くなる高車速時には主に内燃機関1によって自動車を走行させるための駆動力が発生させられる。
【0040】
また、電子制御装置16は、自動車のバッテリ残量やモータ6等の電気機器の消費電力に基づき発電機4の出力(発電量)を制御し、例えば上記バッテリ残量が少なくなるほど且つ上記消費電力が多くなるほど発電機4の出力を大とする。
【0041】
次に、電子制御装置16による上記オイルポンプ10の駆動制御の実行手順について、オイル汲み上げ量制御ルーチンを示す図2のフローチャートを参照して説明する。このオイル汲み上げ量制御ルーチンは、電子制御装置16を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0042】
同ルーチンにおいては、自動車が高車速であるか否か(S101)、モータ6の出力が大であるか否か(S103)、及び、発電機4の出力が大であるか否か(S104)おいった判断が実行される。そして、これらS101〜S03の判断処理すべてで否定判定がなされると、ケース9内に溜まったオイルの供給通路12への汲み上げ量が予め定められた通常値となるよう、オイルポンプ10が駆動されることとなる(S106)。なお、この通常値としては、例えば自動車の標準的な走行状態のもとで、ケース9内の各パワートレーン機器を供給通路12から供給されるオイルによって好適に冷却及び潤滑できる値が採用される。
【0043】
上記ステップS101における高車速であるか否かの判断については、例えば車速センサからの検出信号に基づき検出される車速が所定値a以上であるか否かに基づいて行われる。この所定値aとしては、自動車の走行中にケース9内のオイルが変速用ギヤトレーン5の各ギヤによって掻き上げられる際、そのオイルの掻き上げによってケース9内の各パワートレーン機器全体に冷却及び潤滑のためのオイルを供給し得る車速が採用される。
【0044】
従って、ステップS101で肯定判定がなされて高車速である旨判断されたときには、変速用ギヤトレーン5の各ギヤによって掻き上げられるオイルによってケース9内の各パワートレーン機器全体に対し冷却及び潤滑のためのオイルが供給される状況ということになる。言い換えれば、ケース9内のオイルが多量に掻き上げられ、ケース9内における各パワートレーン機器全体へのオイルの供給が行われほど車速が大となっており、ケース9内のオイルを供給通路12に汲み上げ、同通路12から各パワートレーン機器にオイルを供給する必要性が低い状況ということになる。
【0045】
このため、ステップS101で肯定判定がなされたときには、オイルポンプ10の駆動制御を通じて、ケース9内のオイルの供給通路12への汲み上げ量が上述した通常値よりも少ない値に減少させられる(S102)。より詳しくは、上記オイルの汲み上げ量を、通常値よりも少ない値としつつ、図3に示されるように車速が高くなるほど小となるように調整する。このように、ケース9内から供給通路12へのオイルの汲み上げ量を車速に応じて可変とすることで、供給通路12から各パワートレーン機器の冷却等に必要な量のオイルだけを供給することができ、そのオイルが無駄にケース9の下部から汲み上げられるのを抑制することができる。
【0046】
上記ステップS103におけるモータ6の出力が大であるか否かの判断については、例えば自動車の走行状態等に基づき定められるモータ6の出力要求値が所定値b以上であるか否かに基づいて行われる。この所定値bとしては、自動車の低車速状態にあって上記オイルの掻き上げ量が少なくなるとき、モータ6の温度上昇が生じ得る同モータ6の出力要求値が採用される。従って、ステップS103の判断処理では、モータ6が高温になる状況であるか否かを判断していることになる。
【0047】
なお、ハイブリッド自動車においては、低車速時には主にモータ6によって自動車を走行させるための駆動力が発生させられ、変速用ギヤトレーン5によるオイルの掻き上げ量も少なくなって同オイルによるモータ6の効果的な冷却も望めないため、モータ6の温度上昇が生じて同モータ6の温度が高くなりやすい。特に、登坂路を走行する際には、低車速で且つモータ6の出力要求が大となるため、モータ6の温度が高くなるという傾向が更に顕著なものになる。
【0048】
一方、上記ステップS104における発電機4の出力が大であるか否かの判断については、例えばバッテリ残量やモータ6等の電気機器の消費電力等に基づき定められる発電機4の発電要求値が所定値c以上であるか否かに基づいて行われる。この所定値cとしては、自動車の低車速状態にあって上記オイルの掻き上げ量が少なくなるとき、発電機4の温度上昇が生じ得る同発電機4の発電要求値が採用される。従って、ステップS104の判断処理では、発電機4が高温になる状態であるか否かを判断していることになる。
【0049】
以上のことから、上記ステップS103で肯定判定がなされてモータ6の出力が大である旨判断されたときには、モータ6が高温になるおそれのある状況、言い換えればケース9内のオイルを供給通路12に汲み上げ、同通路12からモータ6に冷却のためのオイルを供給する必要性が高い状況ということになる。また、上記ステップS104で肯定判定がなされて発電機4の出力が大である旨判断されたときには、発電機4が高温になるおそれのある状況、言い換えればケース9内のオイルを供給通路12に汲み上げ、同通路12から発電機4に冷却のためのオイルを供給する必要性が高い状況ということになる。
【0050】
このため、ステップS103とステップS104とのいずれかで肯定判定がなされたときには、オイルポンプ10の駆動制御を通じて、ケース9内のオイルの供給通路12への汲み上げ量が上述した通常値よりも多い値に増加させられる(S105)。より詳しくは、上記オイルの汲み上げ量を、通常値よりも少ない値としつつ、図4に示されるようにモータ6の出力(出力要求値)が大となるほど多くなるように、且つ、図5に示されるように発電機4の出力(発電要求値)が大となるほど多くなるように調整する。このように、ケース9内から供給通路12へのオイルの汲み上げ量をモータ6の出力及び発電機4の出力に応じて可変とすることで、モータ6及び発電機4の温度が高くなるほど上記オイルの汲み上げ量を増やしてモータ6及び発電機4を的確に冷却し、且つ、そのオイルの汲み上げが必要以上に行われるのを抑制することができる。
【0051】
次に、電子制御装置16によるバルブ13〜15の駆動制御の実行手順について、オイル供給量制御ルーチンを示す図6のフローチャートを参照して説明する。このオイル供給量制御ルーチンは、電子制御装置16を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0052】
同ルーチンにおいては、まずモータ6の出力及び発電機4の出力がともに大でない状態であるか否か(S201)、すなわちモータ6の出力要求値が所定値b未満であり、且つ発電機4の発電要求値が所定値c未満であるか否かが判断される。ここで肯定判定であれば、ケース9内における発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6に対する供給通路12からのオイル供給量が予め定められた通常値となるよう、バルブ13〜15によって発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6にそれぞれ対応する供給通路12(通路12a〜12c)のオイル流通面積が調整される(S202)。なお、上記通常値としては、例えば自動車の標準的な走行状態のもとで、ケース9内の各パワートレーン機器を供給通路12(通路12a〜12c)から供給されるオイルによって好適に冷却及び潤滑できる値が採用される。
【0053】
オイル供給量制御ルーチンにおいて、モータ6の出力が大である旨判断された場合(S203:YES)、すなわちモータ6の出力要求値が所定値b以上である場合には、モータ6に対する供給通路12(通路12c)からのオイル供給量が上述した通常値よりも多くされる(S204)。
【0054】
より詳しくは、変速用ギヤトレーン5の上方に位置する供給通路12(通路12b)からのオイル供給量が必要最小限の値となるよう、同通路12bのオイル流通面積を調整するバルブ14を作動させる。更に、モータ6の上方に位置する供給通路12(通路12c)からのオイル供給量が上述した通常値よりも多い値となり、且つ、図7に示されるようにモータ6の出力(出力要求値)が大となるほど多くなるよう、同通路12cのオイル流通面積を調整するバルブ15を動作させる。
【0055】
以上により、モータ6の出力が大であって同モータ6の温度が高くなるときには、モータ6への供給通路12からのオイル供給量が、他のパワートレーン機器(変速用ギヤトレーン5)への供給通路12からのオイル供給量よりも多くされる。このことは、ケース9内から供給通路12に汲み上げられたオイル、すなわち冷却装置11にて冷却された直後のオイルがモータ6に優先的に供給されることを意味する。こうしたオイル供給によってモータ6の冷却が効果的に行われるようになる。
【0056】
オイル供給量制御ルーチンにおいて、発電機4の出力が大である旨判断された場合(S205:YES)、すなわち発電機4の発電要求値が所定値c以上である場合には、発電機4に対する供給通路12(通路12a)からのオイル供給量が上述した通常値よりも多くされる(S206)。
【0057】
より詳しくは、変速用ギヤトレーン5の上方に位置する供給通路12(通路12b)からのオイル供給量が必要最小限の値となるよう、同通路12bのオイル流通面積を調整するバルブ14を作動させる。更に、発電機4の上方に位置する供給通路12(12a)からのオイル供給量が上述した通常値よりも多い値となり、且つ、図8に示されるように発電機4の出力(発電要求値)が大となるほど多くなるよう、同通路12aのオイル流通面積を調整するバルブ13を動作させる。
【0058】
以上により、発電機4の出力が大であって同発電機4の温度が高くなるとき、発電機4への供給通路12からのオイル供給量が、他のパワートレーン機器(変速用ギヤトレーン5)への供給通路12からのオイル供給量よりも多くされる。このことは、ケース9内から供給通路12に汲み上げられたオイル、すなわち冷却装置11にて冷却された直後のオイルが発電機4に優先的に供給されることを意味する。こうしたオイル供給によって発電機4の冷却が効果的に行われるようになる。
【0059】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)冷却潤滑装置の供給通路12がケース9の上方に設けられ、同通路12の開口部が発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6の上方にてそれぞれ開口している。このため、ケース9内から吸引されて冷却装置11にて冷却されたオイルは、発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6といった各パワートレーン機器の上方に設けられた供給通路12から落下して当該各パワートレーン機器に供給される。従って、これらパワートレーン機器については、冷却装置11にて冷却された直後のオイルが供給され、当該オイルにより効果的に冷却される。そして、各パワートレーン機器の冷却に用いられたオイルは、それら各機器との熱交換により温度上昇して粘度が低下するため、各パワートレーン機器のうち潤滑の必要な機器、すなわち入出力軸8を回転可能に支持するベアリング7や変速用ギヤトレーン5の各ギヤに流れ込みやすくなる。その結果、それらの機器での潤滑が上記オイルによって効果的に行われる。このように、発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6の上方からのオイル供給により、各パワートレーン機器の駆動状態を検出するセンサなど多くの部品を設けなくても、冷却の必要な発電機4及びモータ6を効果的に冷却するとともに、潤滑の必要な変速用ギヤトレーン5及びベアリング7に対し効果的な潤滑を行うことができる。
【0060】
(2)ケース9内のモータ6や発電機4といったパワートレーン機器に対しては、供給通路12からのオイル供給だけでなく、自動車走行中における変速用ギヤトレーン5の各ギヤの回転によるケース9内に溜まったオイルの掻き上げでのオイル供給も行われる。こうしたオイルの掻き上げによって各パワートレーン機器へのオイル供給を行う場合、車速が低くなるほど上記オイルの掻き上げ量が少なくなり、パワートレーン機器の上部までオイルが行き渡らなくなる。従って、上記オイルの掻き上げによるパワートレーン機器へのオイル供給だけでは、車速が低くなったときにモータ6及び発電機4の上部において冷却不足が生じるおそれがある。しかし、モータ6や発電機4といったパワートレーン機器の上方には供給通路12が設けられ、その供給通路12から冷却装置11にて冷却された直後のオイルが供給されるため、そのオイルによりモータ6及び発電機4の上部が効果的に冷却される。従って、上述した低車速時におけるモータ6及び発電機4上部の冷却不足を的確に抑制することができる。
【0061】
(3)自動車の走行中、変速用ギヤトレーン5の各ギヤによって掻き上げられるオイル、すなわちケース9内に溜まったオイルは、供給通路12からモータ6及び発電機4に供給された後にそれらとの間の熱交換により温度上昇して粘度の低下したオイルである。このため、上記各ギヤによるオイルの掻き上げが行われる際、同オイルの粘度に起因する掻き上げ抵抗が大となることは抑制される。
【0062】
(4)自動車が高車速状態にあるときには、変速用ギヤトレーン5の各ギヤによりケース9内のオイルが多量に掻き上げられ、ケース9内の各パワートレーン機器へのオイル要求が効果的に行われるため、供給通路12から各駆動機構に冷却等のためのオイルを供給する必要性は低い。このことを考慮して、高車速時には、オイルポンプ10の駆動制御を通じて、ケース9内のオイルの供給通路12への汲み上げ量が、上述した通常値よりも少ない値に減少させられる。従って、そのオイルが無駄にケース9の下部から汲み上げられるのを抑制することができ、ひいては同オイルの汲み上げのためにオイルポンプ10が無駄に駆動されるのを抑制することができる。
【0063】
(5)また、高車速時に上記オイルの汲み上げ量を通常時よりも少なくする際には、そのオイル汲み上げ量を車速が高くなるほど少なくなるようにしている。このように、オイル汲み上げ量を車速に応じて可変とすることで、供給通路12から各パワートレーン機器の冷却等に必要な量のオイルだけを汲み上げることが可能になり、無駄なオイルの汲み上げを一層的確に抑制することが可能になる。
【0064】
(6)モータ6の出力が大であって同モータ6が高温になる状況であるとき、或いは、発電機4の出力が大であって同発電機4が高温になる状況であるときには、オイルポンプ10の駆動制御を通じて、ケース9内のオイルの供給通路12への汲み上げ量が上述した通常値よりも多い値に増加させられる。このため、モータ6や発電機4を冷却する必要性の高いとき、ケース9から供給通路12へのオイルの汲み上げ量を増やし、そのオイルによってモータ6や発電機4を的確に冷却することができる。
【0065】
(7)また、モータ6や発電機4が高温になる状況のときに上記オイルの汲み上げ量を通常値よりも多くする際には、そのオイルの汲み上げ量がモータ6の出力が大となるほど多くなるように、且つ発電機4の出力が大となるほど多くなるようにしている。このように、オイル汲み上げ量をモータ6の出力及び発電機4の出力に応じて可変とすることで、モータ6及び発電機4の温度が高くなるほど上記オイルの汲み上げ量を増やしてモータ6及び発電機4を的確に冷却し、且つ、そのオイルの汲み上げ(オイルポンプ10の駆動)が必要以上に行われるのを抑制することができる。
【0066】
(8)モータ6や発電機4といった回転電機については、出力が大となるほど温度が高くなるという特性を有する。このため、それら回転電機の出力が大であるときに上記オイルの汲み上げ量を増やすことにより、当該回転電機の温度を検出する温度センサ等を設けなくても、冷却の必要な回転電機の高温時に上記オイルの汲み上げ量を増やすことができる。
【0067】
(9)ハイブリッド自動車においては、低車速時には主にモータ6によって自動車を走行させるための駆動力が発生させられ、変速用ギヤトレーン5によるオイルの掻き上げ量も少なくなって同オイルによるモータ6の効果的な冷却も望めないため、モータ6の温度上昇が生じて同モータ6の温度が高くなりやすい。特に、登坂路を走行する際には、低車速で且つモータ6の出力要求が大となるため、モータ6の温度が高くなるという傾向が更に顕著なものになる。しかし、モータ6の出力が大となるとき、ケース9内から供給通路12へのオイル汲み上げ量を増やしたり、モータ6の上方に位置する供給通路12(通路12c)からのオイル供給量を増やしたりすることで、そのオイルによりモータ6を効果的に冷却することができる。
【0068】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・ナビゲーションシステム20からの道路情報に基づき自動車の走行予定の道路についての道路情報を取得し、その取得した道路情報に基づき自動車の高車速が予測されるとき、高車速である旨判断してケース9から供給通路12へのオイル汲み上げ量を減らすようにしてもよい。自動車が実際に高車速となってから、上記オイルの汲み上げ量を減らすのでは、そのオイルの汲み上げ量の低減に遅れが生じるおそれがあり、その遅れの分だけ余分に供給通路12へとオイルが汲み上げられることになる。しかし、取得した道路情報に基づき高車速が予測されるときにオイルの汲み上げ量を減らすようにすれば、上述したようにオイル汲み上げ量の低減に遅れが生じ、その遅れの分だけ余分に供給通路12へのオイルが汲み上げられるのを抑制することができる。
【0069】
・また、取得した道路情報に基づき登坂路での走行が予測されるとき、モータ6の出力が大である旨判断し、ケース9から供給通路12へのオイル汲み上げ量を増やしたり、モータ6に対応する供給通路12から同モータ6へのオイル供給量を増やしたりしてもよい。実際に登坂路を走行し始めてモータ6の出力が大となってから、上記オイル汲み上げ量を増やしたり、上記オイル供給量を増やしたりするのでは、それらオイルの汲み上げ量及び供給量の増加に遅れが生じ、そのオイルによるモータ6の冷却効率の向上が遅くなる。しかし、取得した道路情報に基づき登坂路での走行が予測されるときに上記オイルの汲み上げ量及び供給量を増やすようにすれば、上述したようにオイルの汲み上げ量及び供給量の増加に遅れが生じ、その遅れの分だけモータ6の冷却効率の向上が遅くなるのを抑制することができる。
【0070】
・内燃機関1のみにより走行のための駆動力を得るとともに各種補助機器の駆動のためのみにモータ6が駆動される自動車に本発明を適用してもよい。
・モータ6のみにより走行のための駆動力を得る電機自動車に本発明を適用してもよい。この場合においても、モータ6は、動力源であり、且つパワートレーン機器でもあることになる。
【0071】
・モータ6に対する供給通路12(通路12c)からのオイル供給量を、モータ6の出力増大に対し段階的に増加させるようにしてもよい。
・モータ6の出力が大であることに基づき上記オイル供給量を増やすとき、そのオイル供給量をモータ6の出力に応じて可変とする代わりに通常値よりも大きい値である予め定められた固定値へと増大させるようにしてもよい。
【0072】
・発電機4に対する供給通路12(通路12a)からのオイル供給量を、発電機4の出力増大に対し段階的に増加させるようにしてもよい。
・発電機4の出力が大であることに基づき上記オイル供給量を増やすとき、そのオイル供給量を発電機4の出力に応じて可変とする代わりに通常値よりも大きい値である予め定められた固定値へと増大させるようにしてもよい。
【0073】
・発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6への供給通路12(通路12a〜12c)からのオイル供給量については、必ずしも車速、及び、発電機4やモータ6の出力に応じて可変とする必要はない。この場合、バルブ13〜15を省略することが可能であり、冷却潤滑装置の部品点数を削減して同装置における部品の組み付け作業の手間を少なくすることができる。また、発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6への供給通路12(通路12a〜12c)からのオイル供給量の可変を、それら発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6へのオイル供給のうちの一つか二つに対してのみ行ってもよい。
【0074】
・高車速状態にあるとき、ケース9から供給通路12へのオイル汲み上げ量を、車速の上昇に対して段階的に減少させるようにしてもよい。
・モータ6の出力が大であるときに上記オイル汲み上げ量をモータ6の出力の増加に応じて段階的に増加させるようにしたり、発電機4の出力が大であるときに上記オイル汲み上げ量を発電機4の出力の増加に応じて段階的に増加させるようにしたりしてもよい。
【0075】
・モータ6の出力が大であることに基づき上記オイル汲み上げ量を増やすとき、そのオイル汲み上げ量をモータ6の出力に応じて可変とする代わりに通常値よりも大きい値である予め定められた固定値へと増大させるようにしてもよい。
【0076】
・発電機4の出力が大であることに基づき上記オイル汲み上げ量を増やすとき、そのオイル汲み上げ量を発電機4の出力に応じて可変とする代わりに通常値よりも大きい値である予め定められた固定値へと増大させるようにしてもよい。
【0077】
・上記オイル汲み上げ量については、必ずしも車速、モータ6の出力、及び発電機4の出力に応じて可変とする必要はない。この場合、上記オイル汲み上げ量を可変とするためのオイルポンプ10の駆動制御を行わなくてもよいため、電子制御装置16の演算負荷を低減することが可能になる。
【0078】
・上記オイル汲み上げ量の調節をオイルポンプ10の駆動制御を通じて行ったが、同ポンプの上流又は下流にオイル流通面積を可変とするためのバルブを設け、このバルブの制御を通じて上記オイル汲み上げ量の調節を行うようにしてもよい。
【0079】
・発電機4の温度を検出する温度センサを設け、同センサからの検出信号に基づき求められる発電機4の温度が大となるとき、ケース9から供給通路12へのオイル汲み上げ量を増やしたり、供給通路12(通路12a)から発電機4へのオイル供給量を増やしたりしてもよい。
【0080】
・モータ6の温度を検出する温度センサを設け、同センサからの検出信号に基づき求められるモータ6の温度が大となるとき、ケース9から供給通路12へのオイル汲み上げ量を増やしたり、供給通路12(通路12c)からモータ6へのオイル供給量を増やしたりしてもよい。
【0081】
・上記オイル汲み上げ量については、必ずしも車速、モータ6の出力、及び発電機4の出力に応じて可変とする必要はない。また、車速、モータ6の出力、及び発電機4のうちの一つか二つのみに応じて、上記オイル汲み上げ量を可変とするようにしてもよい。
【0082】
・冷却潤滑装置として発電機4、変速用ギヤトレーン5、及びモータ6といった複数のパワートレーン機器全てを冷却及び潤滑するものを例示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、冷却潤滑装置として、それらパワートレーン機器のうち少なくとも二つ以上を冷却及び潤滑するものを採用してもよい。
【0083】
・ケース9内に自動車のデファレンシャルギヤ(最終減速機)を設けるとともに、同ギヤをケース9内に溜まったオイルに一部を浸すことで、そのギヤをオイルの掻き上げを行うためのギヤ装置としてもよい。この場合、必ずしも変速用ギヤトレーン5をケース9内に溜まったオイルに浸す必要はなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の冷却潤滑装置が適用される自動車の駆動系を示す略図。
【図2】ケースから供給通路へのオイル汲み上げ量を調整するためのオイルポンプの駆動制御の実行手順を示すフローチャート。
【図3】車速の変化に対するオイル汲み上げ量の推移を示すグラフ。
【図4】モータ出力の変化に対するオイル汲み上げ量の推移を示すグラフ。
【図5】発電機出力の変化に対するオイル汲み上げ量の推移を示すグラフ。
【図6】発電機、変速用ギヤトレーン、及びモータへの供給通路からのオイル供給量を各々調整するバルブの駆動制御の実行手順を示すフローチャート。
【図7】モータ出力の変化に対するモータへの供給通路からのオイル供給量の推移を示すグラフ。
【図8】発電機出力の変化に対する発電機への供給通路からのオイル供給量の推移を示すグラフ。
【符号の説明】
【0085】
1…内燃機関、2…出力軸、3…車軸、4…発電機、5…変速用ギヤトレーン(ギヤ装置)、6…モータ、7…ベアリング、8…入出力軸、9…ケース、10…オイルポンプ(汲上量可変手段)、11…冷却装置、12…供給通路、13〜15…バルブ(調整手段)、16…電子制御装置(汲上量可変手段、予測手段、調整手段)、17…アクセルペダル、18…アクセルポジションセンサ、19…車速センサ、20…ナビゲーションシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸と動力源の出力軸とに各々接続される複数のパワートレーン機器全体を囲うケースと、そのケース内に溜まったオイルを吸入して冷却する冷却装置と、その冷却装置によって冷却されたオイルを前記パワートレーン機器に供給する供給通路とを備える車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置において、
前記パワートレーン機器の上方に前記供給通路を設けて同通路から前記パワートレーン機器にオイルを供給する
ことを特徴とする車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置。
【請求項2】
前記複数のパワートレーン機器には、前記ケース内に溜まったオイルに浸されるギヤ装置が含まれている
請求項1記載の車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置において、
前記ケース内から前記供給通路へのオイルの汲み上げ量を車速に応じて可変とする汲上量可変手段を更に備える
ことを特徴とする車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置。
【請求項4】
前記汲上量可変手段は、高車速時には前記ケースから前記供給通路へのオイルの汲み上げ量を減らす
請求項3記載の車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置において、
車両が走行予定の道路についての道路情報を取得し、その取得した道路情報に基づき車両の高車速を予測する予測手段を更に備え、
前記汲上量可変手段は、前記予測手段によって高車速が予測されるとき、前記ケースから前記供給通路へのオイルの汲み上げ量を減らすものである
ことを特徴とする車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置において、
前記ケース内から前記供給通路へのオイルの汲み上げ量をパワートレーン機器の駆動状態に応じて可変とする汲上量可変手段を更に備える
ことを特徴とする車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置。
【請求項7】
前記汲上量可変手段は、前記パワートレーン機器が高温になるとき、前記ケースから前記供給通路へのオイルの汲み上げ量を増やす
請求項6記載の車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置。
【請求項8】
前記複数のパワートレーン機器には回転電機が含まれており、
前記汲上量可変手段は、前記回転電機の出力が大であるとき、前記ケースから前記供給通路へのオイルの汲み上げ量を増やす
請求項7記載の車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置。
【請求項9】
前記供給通路は、複数に分岐して前記複数のパワートレーン機器に対し個別にオイルを供給するものであり、前記回転電機に対応する部分には当該回転電機の出力が大であるときに回転電機へのオイル供給量を他のパワートレーン機器へのオイル供給量よりも増量させる調整手段を備える
請求項8記載の車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置。
【請求項10】
前記回転電機は、車両を走行すべく駆動されるモータであり、
前記車両は、前記モータと内燃機関とを動力源とし、低車速時には主に前記モータを用いて走行するハイブリッド車両である
請求項8又は9記載の車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置。
【請求項11】
請求項10記載の車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置において、
車両が走行予定の道路についての道路情報を取得し、その取得した道路情報に基づき登坂路での走行を予測する予測手段を更に備え、
前記予測手段によって登坂路での走行が予測されるとき、前記モータの出力が大である旨判断する
ことを特徴とする車両用パワートレーン機器の冷却潤滑装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−85397(P2007−85397A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272412(P2005−272412)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】