説明

車両用フレーム構造

【課題】スポットガン(電極)が凹部に干渉することがなく、衝撃の吸収量が大きい車両用フレーム構造を提供する。
【解決手段】車両用フレーム構造11は、閉断面が断面略U字形の第1フレーム部材36に対し、同様の断面略U字形の第2フレーム部材37を合わせて閉じることで形成され、第1フレーム部材36は、対向している第1縦辺部41に第1凹部43、第2縦辺部42に第2凹部44が形成され、第1縦辺部41に連ねて内角を鈍角αに設定して延びる第1傾斜辺部45に、第2縦辺部42に連ねて鈍角αに延びる第2傾斜辺部46を一体に結合することで頂部47を形成している底辺部48が形成され、頂部47に第3凹部51が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉断面を有する車両用フレーム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用フレーム構造には、中空柱状部材の4辺にそれぞれ凹み部を形成することで稜線を増加させたフレームとし、衝撃吸収性能を高めたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、中空柱状部材同士を直列に溶接によって繋ぐ場合、スポット溶接用のガン(電極)が凹み部に干渉するという問題がある。
例えば、スポット溶接用のガン(電極)で挟むために、四つの辺のうち、図の上側に位置する上の辺を取り除いた溝形とし、下の辺に対し、繋げる中空柱状部材の辺を重ねて、溝の内部に一方のガンを入れると、ガンが垂直な辺に設けた凹み部に干渉する。
すなわち、接合をスポット溶接により行うと、スポット溶接用のガン(電極)と凹み部が干渉するので、凹み部を形成できなくなり、稜線の数を増加させることができず、エネルギー吸収量を増加できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−284931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スポットガン(電極)が凹部に干渉することがなく、衝撃の吸収量が大きく、軽量化を図り、圧壊するときの圧壊最大荷重を減少させ、製造が容易な車両用フレーム構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、閉断面を形成している辺に凹部を閉断面の内方へ向け押し込むことで形成している車両用フレーム構造において、
閉断面は、断面略U字形の第1フレーム部材に対し、同様の断面略U字形の第2フレーム部材を合わせて閉じることで形成され、第1フレーム部材は、対向している第1縦辺部、第2縦辺部にそれぞれ凹部が形成され、第1縦辺部に連ねて鈍角に延びる第1傾斜辺部に、第2縦辺部に連ねて鈍角に延びる第2傾斜辺部を一体に結合することで頂部を形成している底辺部が形成され、頂部に凹部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明では、第1フレーム部材は、ロールフォーム成形又はベンド成形によって成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、閉断面は、断面略U字形の第1フレーム部材に対し、同様の断面略U字形の第2フレーム部材を合わせて閉じることで形成され、第1フレーム部材は、対向している第1縦辺部、第2縦辺部にそれぞれ凹部が形成され、第1縦辺部に連ねて鈍角に延びる第1傾斜辺部に、第2縦辺部に連ねて鈍角に延びる第2傾斜辺部を一体に結合することで頂部を形成している底辺部が形成され、頂部に凹部が形成されているので、断面略U字形の第1フレーム部材の底辺部に外方から板状の部材を重ねて、スポット溶接する場合、第1傾斜辺部によって、第1傾斜辺部に直交するスポット溶接装置のスポットガン(電極)は傾き、スポットガン(電極)が第1縦辺部の凹部に干渉することがなく、隣接する板状の部材を重ねてスポット溶接を用いて接合することができる。
【0009】
また、凹部によって稜線が増加し、車両用フレーム構造の長手方向に入力される衝撃の吸収量を大きくすることができる。
さらに、同程度の衝撃を吸収する部材(フレーム)に比べ、軽量化を図ることができる。
【0010】
加えて、車両用フレーム構造を長手方向に平行な力で圧壊するときの圧壊最大荷重を減少させることができ、例えば、車両用フレーム構造を車両の後部であるリヤサイドフレームの後部に採用してリヤサイドフレームの後部に車室の床から延びるリヤサイドフレームの中央部を接合した場合、破壊させたくないリヤサイドフレームの中央部に対して入力される力を低減することができ、衝突モードマネージメントがし易いという利点がある。
「衝突モードマネージメント」とは、一方のフレーム(車両用フレーム構造)を優先的に潰して衝突エネルギーを吸収し、他方のフレーム(リヤサイドフレームの中央部)を潰さないようにすることであり、例えば、後席乗員や燃料系部品を守るために採用している。
【0011】
請求項2に係る発明では、第1フレーム部材は、ロールフォーム成形又はベンド成形によって成形されているので、製造は容易である。すなわち、底辺部を鈍角とすることで、ロールフォーム成形又はベンド成形での成形は容易になる。特に、軽量化を図れる高強度鋼板など難成形材料には有効であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る車両用フレーム構造の斜視図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】実施例に係る車両用フレーム構造の第1フレーム部材を示す図である。
【図7】車両用フレーム構造における第1フレーム部材に別部材を接合するときの接合要領説明図兼スポットガンの干渉を防ぐ機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
実施例に係る車両用フレーム構造11は、図1に示すように、車両12の後部13に設けた荷室14の床に採用され、床のリヤサイドフレーム16を多角形に形成して組合せている。以降で具体的に説明していく。
【0015】
車両12は、車室17と、車室17の後に設けた荷室(トランクルーム)14と、車体18を有する。
車体18は、車室17及び荷室14の床をなすアンダボデー21と、リヤボデー22を備え、アンダボデー21は左右のサイドシル24に連なり車両12後方へ延びるリヤサイドフレーム16(リヤサイドフレーム前部25、リヤサイドフレーム中央部26、リヤサイドフレーム後部27)と、リヤフロアパネル31(リヤフロアセンタ部32、リヤフロアリヤ部33)と、を備え、実施例のフレーム構造11を含む。なお、フレーム構造11は、左右がほぼ対称であり、以降左側を主体に説明する。
【0016】
次に、車両用フレーム構造11を図1〜図6で説明する。図6(a)は第1フレーム部材の平面図、図6(b)は図6(a)のb−b線断面図である。
【0017】
車両用フレーム構造11は、リヤサイドフレーム16のリヤサイドフレーム中央部26と、リヤサイドフレーム後部27と、からなり、必要に応じてリヤフロアパネル31のリヤフロアリヤ部33を含む。
リヤサイドフレーム後部27は第1フレーム部材36と、第2フレーム部材37とで閉断面を形成しているとともに、閉断面がリヤフロアパネル31を挟んでいることで仕切られている。
【0018】
車両用フレーム構造11は、前述したように、閉断面を形成している辺に凹部を閉断面の内方へ向け押し込むことで形成し、閉断面は、断面略U字形の第1フレーム部材36に対し、同様の断面略U字形の第2フレーム部材37を合わせて閉じることで形成され、第1フレーム部材36は、対向している第1縦辺部41に第1凹部43、第2縦辺部42に第2凹部44が形成され、第1縦辺部41に連ねて内角を鈍角αに設定して延びる第1傾斜辺部45に、第2縦辺部42に連ねて鈍角αに延びる第2傾斜辺部46を一体に結合することで頂部47を形成している底辺部48が形成され、頂部47に第3凹部51が形成されている。
【0019】
第1フレーム部材36は、第1縦辺部41の上部に連ねて第1フランジ部53が形成されてリヤフロアリヤ部33に重なり、第2縦辺部42の上部に連ねて第2フランジ部54が形成されてリヤフロアリヤ部33に重なっている。
【0020】
第1フレーム部材36は、図6のように、ロールフォーム成形又はベンド成形によって成形されている。
第2フレーム部材37は、第1フレーム部材36と同様であり、説明を省略する。
【0021】
リヤサイドフレーム中央部26は、車両12の外側へ向けた第1フレーム中央部材56と、車両12の内側へ向けた第2フレーム中央部材57と、を備え、第1フレーム部材36に第1フレーム中央部材56を接合し、第2フレーム部材37に第2フレーム中央部材57を接合し、第1フレーム中央部材56と第2フレーム中央部材57とでリヤフロアパネル31を挟んでいる。
第1フレーム中央部材56は、図5のように、断面略U字形で、リヤフロアリヤ部33に重なり、且つ、端の近傍で第1フランジ部53を介在させてリヤフロアリヤ部33に重なっている第1中央フランジ部58と、第1中央縦辺部61と、中央底辺部63と、第2中央フランジ部64と、第2中央縦辺部65と、からなる。
【0022】
次に、本発明の実施例に係る車両用フレーム構造11の第1フレーム部材36に別部材であるところのリヤサイドフレーム中央部26を接合する要領を主に図7で説明する。
フレーム構造製造工程は、4つの工程を備え、図6のように第1フレーム部材36を塑性加工する第1フレーム部材塑性加工工程と、図2の第1フレーム部材36に第1フレーム中央部材56を接合してリヤサイドフレーム下部71を得るリヤサイドフレーム下部製造工程と、図1の第2フレーム部材37に第2フレーム中央部材57を接合してリヤサイドフレーム上部72を得るリヤサイドフレーム上部製造工程と、図4、図5のリヤサイドフレーム下部71にリヤサイドフレーム上部72をリヤフロアパネル31のリヤフロアリヤ部33を挟んで重ね合わせて接合することで閉断面を形成するリヤサイドフレーム上・下部接合工程と、を備える。
【0023】
リヤサイドフレーム下部製造工程では、まず、図7のように、リヤサイドフレーム中央部26の第1フレーム中央部材56を治具(図に示していない)にセットし、第1フレーム中央部材56の後端に第1フレーム部材36の前端を上下方向にセットすることで、図7のように重ね、治具で拘束する。
【0024】
その次に、スポット溶接装置74のスポットガン(電極)75で第1傾斜辺部45と中央底辺部63を挟んで加圧し、スポット溶接を施す。
同様に第2傾斜辺部46と中央底辺部63を挟んで加圧し、スポット溶接を施す。
【0025】
リヤサイドフレーム上部製造工程は、リヤサイドフレーム下部製造工程と同様に行うことで図1、図4のリヤサイドフレーム上部72を完成させる。
【0026】
リヤサイドフレーム上・下部接合工程では、治具に左のリヤサイドフレーム下部71、右のリヤサイドフレーム下部71をセットして、リヤサイドフレーム下部71に形成された第1フランジ部53、第2フランジ部54、第1中央フランジ部58、第2中央フランジ部64にリヤフロアパネル31を載せて重ね、拘束し、リヤフロアパネル31にリヤサイドフレーム上部72の各フランジを同様に重ねる。
その次に、第1フランジ部53、第2フランジ部54、第1中央フランジ部58、第2中央フランジ部64とリヤサイドフレーム上部72の各フランジをスポット溶接を用いて接合する。これで車両用フレーム構造11はほぼ完了する。
【0027】
このように、車両用フレーム構造11では、図7のように第1傾斜辺部45と第1フレーム中央部材56(中央底辺部63)を重ねて、重ねた部位をスポットガン(電極)75で加圧・通電するときに、第1傾斜辺部45の傾斜(内角を鈍角αに設定)によって、第1傾斜辺部45に直交させるスポットガン(電極)75が第1縦辺部41に対し、所望の角度だけ倒れるので、第1縦辺部41の第1凹部43に干渉しない。
【0028】
尚、本発明の車両用フレーム構造11は、実施の形態では車両12のフロアボデーの後部に採用されているが、車両12の中央部、車両12の前部にも採用可能である。
また、車両用フレーム構造11は、車両12の前後方向に延びるフレームに採用されているが、車両12の左右方向に延びるフレーム、車両12の上下方向に延びるフレームにも採用可能である。
【0029】
第1フレーム中央部材56では、第1中央縦辺部61に凹部(図に示していない)を第1凹部43に沿って重なるように形成することも可能であり、同様に第2中央縦辺部65に凹部(図に示していない)を第2凹部44に沿って重なるように形成することも可能である。その結果、凹部によって稜線がより増加し、車両用フレーム構造の長手方向に入力される衝撃の吸収量を大きくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の車両用フレーム構造は、車両のフロアボデーの後部に好適である。
【符号の説明】
【0031】
11…車両用フレーム構造、36…第1フレーム部材、37…第2フレーム部材、41…第1縦辺部、42…第2縦辺部、43…第1凹部、44…第2凹部、45…第1傾斜辺部、46…第2傾斜辺部、47…頂部、48…底辺部、51…第3凹部、α…鈍角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉断面を形成している辺に凹部を前記閉断面の内方へ向け押し込むことで形成している車両用フレーム構造において、
前記閉断面は、断面略U字形の第1フレーム部材に対し、同様の断面略U字形の第2フレーム部材を合わせて閉じることで形成され、
前記第1フレーム部材は、対向している第1縦辺部、第2縦辺部にそれぞれ前記凹部が形成され、前記第1縦辺部に連ねて鈍角に延びる第1傾斜辺部に、前記第2縦辺部に連ねて鈍角に延びる第2傾斜辺部を一体に結合することで頂部を形成している底辺部が形成され、前記頂部に前記凹部が形成されていることを特徴とする車両用フレーム構造。
【請求項2】
前記第1フレーム部材は、ロールフォーム成形又はベンド成形によって成形されていることを特徴とする請求項1記載の車両用フレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−247582(P2010−247582A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97104(P2009−97104)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】