説明

車両用フード構造

【課題】フードにおけるフードロック手段の後方側において、通常使用時における面剛性を確保しつつ、衝突体が衝突した際の衝撃吸収性を高めることを目的とする。
【解決手段】フードロック手段の後方におけるフード14のフードアウタパネル24とフードインナパネル26との間の離間部位36に、少なくとも車両後方側においてフードインナパネル26に支持された横梁部材20(保持手段)を有している。横梁部材20は、通常使用時には離間部位36に位置するフードアウタパネル24の面剛性を保持しており、フードロック手段の上方に衝突体がフード14に衝突した際には、衝突荷重に抵抗せずに前傾する。これにより、離間部位36におけるフードアウタパネル24の変形ストロークをより多く確保することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用フード構造として、衝突体がフードの前部に衝突したときに、フードのストライカを保持するロック機構及びラジエータサポートアッパが落ち込み変位し、フードがたわみ変形することで衝突荷重を吸収する構成が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−306168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、フードロック手段の衝撃吸収構造が開示されるに留まり、フードロック手段より後方側の構成については何ら開示されていない。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、フードにおけるフードロック手段の後方側において、通常使用時における面剛性を確保しつつ、衝突体が衝突した際の衝撃吸収性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車体に対して開閉方向に回動可能に支持されたフードと、前記車体に対して前記フードをロック可能に構成されたフードロック手段と、該フードロック手段の後方における前記フードのフードアウタパネルとフードインナパネルとの間の離間部位に設けられると共に、少なくとも車両後方側において前記フードインナパネルに支持され、前記フードアウタパネルのうち前記離間部位の通常使用時の面剛性を保持する保持手段と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車両用フード構造では、フードロック手段の後方においてフードアウタパネルがフードインナパネルから離間しているので、該フードロック手段の上方に衝突体が衝突した際に該フードロック手段より後方のフードアウタパネルが変形し易く、これによりフードの変形ストロークをより多く確保することが可能である。
【0007】
離間部位におけるフードアウタパネルとフードインナパネルとの間には、少なくとも車両後方側においてフードインナパネルに支持された保持手段が配設されているので、フードアウタパネルがフードインナパネルから離間していても、通常使用時におけるフードアウタパネルの面剛性を確保することが可能である。このため、請求項1に記載の車両用フード構造では、フードにおけるフードロック手段の後方側において、通常使用時における面剛性を確保しつつ、衝突体が衝突した際の衝撃吸収性を高めることが可能である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用フード構造において、前記フードロック手段の後方における前記フードインナパネルは、車両前後方向に延在すると共に車幅方向に略等間隔で設けられた複数の縦梁部を有し、前記保持手段は、該縦梁部に支持されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の車両用フード構造では、保持手段が、フードインナパネルにおいて車幅方向に略等間隔で設けられた縦梁部に支持されているので、フードロック手段の上方への衝突体の衝突によりフードアウタパネルが変形する際に、該フードアウタパネルから保持手段を介して縦梁部へと衝突荷重を均等に分散させることができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用フード構造において、前記保持手段は、車幅方向に延在し前記フードインナパネルの上側に配設された横梁部材であることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の車両用フード構造では、保持手段が、車幅方向に延在しフードインナパネルの上側に配設された横梁部材であるので、通常使用時には車幅方向に広い範囲でフードアウタパネルの面剛性を確保することができる。またフードロック手段の上方への衝突体の衝突によりフードアウタパネルが変形する際には、該フードアウタパネルから横梁部材を介してフードインナパネルへと衝突荷重を分散させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両用フード構造によれば、フードにおけるフードロック手段の後方側において、通常使用時における面剛性を確保しつつ、衝突体が衝突した際の衝撃吸収性を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【0013】
請求項2に記載の車両用フード構造によれば、フードロック手段の上方への衝突体の衝突によりフードアウタパネルが変形する際に、衝突荷重を縦梁部へ均等に分散させることができる、という優れた効果が得られる。
【0014】
請求項3に記載の車両用フード構造によれば、通常使用時には車幅方向に広い範囲でフードアウタパネルの面剛性を確保することができ、フードロック手段の上方への衝突体の衝突によりフードアウタパネルが変形する際には、フードインナパネルへと衝突荷重を分散させることができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施の形態に係る車両用フード構造Sは、フード14と、フードロック手段の一例たるストライカ16及びロック機構18と、保持手段の一例たる横梁部材20とを有している。
【0016】
フード14は、車体10に対して開閉方向に回動可能に支持された開閉部材であり、表面側のフードアウタパネル24と裏面側のフードインナパネル26とを結合して構成されている。図2に示されるように、フード14は、閉止状態において例えば車体10のエンジンコンパートメント12内に配設された、例えばエンジン30やエンジンカバー32等の収容物を覆うように構成されている。
【0017】
図2に示されるように、フードインナパネル26の前端部及び後端部には、車幅方向に沿ってフード裏面側に膨出した膨出部26A,26Bが夫々形成されている。膨出部26Bから膨出部26Aへ至るまでのフードインナパネル26の構成を説明すると、フードインナパネル26は、膨出部26Bの前側において、車両前後方向に延在すると共に車幅方向に略等間隔で設けられた複数の縦梁部26C,26Dを有している。
【0018】
該縦梁部26C,26Dは、車両前後方向に連なっており、そのうち車両後方側の縦梁部26Cは、フードアウタパネル24に沿うように形成され、シール剤28を介してフードアウタパネル24を支持している。車両前方側の縦梁部26Dは、例えばフード14の車両前後方向略中央部から、前方側に向かうに従ってフードアウタパネル24から離間するように延びて、膨出部26Aへ連なっている。即ち、フードインナパネル26における縦梁部26Dは、膨出部26Aの後方においてフードアウタパネル24から離間しており、この部分が離間部位36となっている。この離間部位36を設けることにより、図4に示されるように、例えばストライカ16の上方に衝突体34がフード14に衝突した際におけるフードアウタパネル24の変形ストロークをより多く確保できるようになっている。
【0019】
図2において、フードインナパネル26の膨出部26Aとフードアウタパネル24との間には、リインフォースメント22が車幅方向に配設され、該フードアウタパネル24とリインフォースメント22との間には、シール剤28が設けられている。このリインフォースメント22により、フードアウタパネル24における膨出部26Aの上方位置の面剛性が保持されている。
【0020】
ストライカ16は、フード14の裏面側、具体的には、フードインナパネル26の膨出部26Aに設けられ、該膨出部26Aから例えば下方に凸のアーチ状に形成された部材であって、例えば丸棒状の鉄鋼部材を折り曲げて形成され、フード14の閉止時に車体10側に設けられたロック機構18と係合するようになっている。
【0021】
ロック機構18は、車体10側に配設され、フード14の閉止時にストライカ16と係合して該フード14を閉止状態に保持する機構である。ロック機構18の詳細な構成については図示を省略するが、フード14の閉止時にストライカ16と係合してフード14を閉止状態に保持でき、フード14を開く際にはロック状態を解除できる構造であればよい。
【0022】
横梁部材20は、ストライカ16の後方におけるフード14のフードアウタパネル24とフードインナパネル26との間の離間部位36に設けられると共に、少なくとも車両後方側においてフードインナパネル26に支持され、離間部位36に位置するフードアウタパネル24の通常使用時の面剛性を保持するリインフォースメントである。
【0023】
具体的には、図1から図3に示されるように、横梁部材20は車幅方向に延在しており、後縁部の例えば両端に1箇所ずつ設けられた支持片38を、フードインナパネル26の縦梁部26Dの上側に夫々固着することで、車両後方側において例えば片持ち状態で取り付けられている。通常使用時において、横梁部材20は、シール剤28を介して離間部位36におけるフードアウタパネル24を支持して、その面剛性を保持するようになっている。
【0024】
支持片38は、通常使用条件、例えばフード14を開閉の際の衝撃や人がフードアウタパネル24に触れた際に作用する荷重では塑性変形せず、衝突体34の衝突時のような通常使用状態を超えた荷重が入力された際には容易に塑性変形する程度の剛性を有している。なお、横梁部材20の断面形状や、支持片38の個数等は、図示のものに限られず、横梁部材20の車両前後方向位置は、衝突体34の衝突形態を考慮して適正に定められる。
【0025】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図2に示されるように、本実施形態に係る車両用フード構造Sでは、ストライカ16の後方に離間部位36が設けられ、該離間部位36ではフードインナパネル26がフードアウタパネル24から離間しているが、その間に横梁部材20を配設し、フードアウタパネル24を該横梁部材20により支持することで、通常使用時におけるフードアウタパネル24の面剛性を確保することが可能である。
【0026】
具体的には、横梁部材20を支持する支持片38は、フードインナパネル26の縦梁部26Dの上側に固着されており、例えばフード14の開閉の際の衝撃や人がフードアウタパネル24に触れた際に作用する荷重では塑性変形しないので、通常使用時に横梁部材20の位置が変化することはない。このため、横梁部材20によりフードアウタパネル24を安定的に支持することができ、離間部位36におけるフードアウタパネル24のたわみ変形を抑制することができる。
【0027】
横梁部材20は、車幅方向に延在しフードインナパネル26の上側に配設されているので、通常使用時には車幅方向に広い範囲でフードアウタパネル24の面剛性を確保することができる。また横梁部材20は、図示のように構造が単純であるため、横梁部材20とフードアウタパネル24との間における任意の位置にシール剤28を配置することができ、該シール剤28の配置の自由度が高い。例えばフードアウタパネル24の曲率等に応じて、シール剤28を点状に配置するか、又は線状に配置するかを選択することが可能である。
【0028】
次に、図4に示されるように、フードアウタパネル24のうち、例えばストライカ16の上方位置に衝突体34が衝突すると、該上方位置におけるリインフォースメント22及びフードアウタパネル24が潰れ変形する。一方ストライカ16の後方では、フードアウタパネル24から横梁部材20へ衝突荷重が入力される。このとき、支持片38が塑性変形することで、横梁部材20が該支持片38を中心として前傾するので、該横梁部材20がフードアウタパネル24のたわみ変形の抵抗となることはなく、該フードアウタパネル24は容易に変形することができる。また離間部位36では、フードアウタパネル24がフードインナパネル26の縦梁部26Dから離間しているので、離間部位36がない場合と比較して、より多くの変形ストロークを確保することが可能である。
【0029】
横梁部材20は、フードインナパネル26において車幅方向に略等間隔で設けられた縦梁部26Dに支持されているので、例えばストライカ16の上方への衝突体34の衝突によりフードアウタパネル24が変形する際には、該フードアウタパネル24から横梁部材20を介してフードインナパネル26の縦梁部26Dへと衝突荷重を均等に分散させることができる。
【0030】
このように、車両用フード構造Sでは、離間部位36に横梁部材20を設けることで、フード14におけるストライカ16の後方側において、通常使用時における面剛性を確保しつつ、衝突体34が衝突した際の衝撃吸収性を高めることが可能である。
【0031】
なお、上記実施形態では、横梁部材20は支持片38により車両後方側においてフードインナパネル26に支持されるものとしたが、これに限られるものではなく、図5に示されるように、横梁部材20を支持片38により支持した上で、更に支持片40により車両前方側の例えば両端を支持するようにしてもよい。図示の例では、支持片40は、衝突荷重が入力された際に容易に変形して横梁部材20の前傾を妨げないように、例えば階段状に折り曲げられ、支持片38よりも容易に変形するように構成されている。
【0032】
また保持手段との一例として、横梁部材20を挙げたが、これに限られず、他の手段を用いてもよい。更に縦梁部26C,26Dは、車両前後方向に延在し、車幅方向に略等間隔で設けられるものとしたが、これに限られず、縦梁部26C,26Dは例えば放射状に延在していてもよいし、また車幅方向の間隔は略等間隔でなくてもよい。
【0033】
フード14側にストライカ16を設け、車体10側にロック機構18を設けることとしたが、これに限られず、例えば車体10側にストライカを設け、フード14側にロック機構を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】車両用フード構造を示す、部分破断斜視図である。
【図2】通常使用時における車両用フード構造を示す断面図である。
【図3】フードインナパネルの縦梁部に対する横梁部材の取付け状態を示す拡大斜視図である。
【図4】衝突体がストライカの上方に位置するフードアウタパネルに衝突した際における、フードの変形状態を示す断面図である。
【図5】フードインナパネルの縦梁部に対して、横梁部材の後縁と前縁とを支持片により夫々支持した状態を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
10 車体
12 エンジンコンパートメント
14 フード
16 ストライカ(フードロック手段)
18 ロック機構(フードロック手段)
20 横梁部材(保持手段)
24 フードアウタパネル
26 フードインナパネル
26C 縦梁部
26D 縦梁部
36 離間部位
S 車両用フード構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対して開閉方向に回動可能に支持されたフードと、
前記車体に対して前記フードをロック可能に構成されたフードロック手段と、
該フードロック手段の後方における前記フードのフードアウタパネルとフードインナパネルとの間の離間部位に設けられると共に、少なくとも車両後方側において前記フードインナパネルに支持され、前記フードアウタパネルのうち前記離間部位の通常使用時の面剛性を保持する保持手段と、
を有することを特徴とする車両用フード構造。
【請求項2】
前記フードロック手段の後方における前記フードインナパネルは、車両前後方向に延在すると共に車幅方向に略等間隔で設けられた複数の縦梁部を有し、
前記保持手段は、該縦梁部に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フード構造。
【請求項3】
前記保持手段は、車幅方向に延在し前記フードインナパネルの上側に配設された横梁部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用フード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−223414(P2007−223414A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45239(P2006−45239)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】