説明

車両用ブレーキ装置

【課題】液圧シリンダが備えるブレーキピストンの前進に応じて被制動部材に摺接する摩擦部材と、ブレーキピストンまたは摩擦部材を後退方向に付勢するばねとを有する車輪ブレーキが車輪に装着され、ブレーキ操作に応じた液圧を出力する液圧発生手段が液圧路を介して液圧シリンダのブレーキ液圧室に接続される車両用ブレーキ装置において、引きずり防止を図った上にブレーキ操作初期の液損を低減する。
【解決手段】液圧路3A,3Bに常閉型電磁弁10A,10Bを介して接続される蓄圧器12A,12Bには、ブレーキピストンの前進位置からの後退過程では常閉型電磁弁10A,10Bが開弁することにより液圧が蓄圧され、ブレーキピストンの後退位置からの前進過程では常閉型電磁弁10A,10Bが開弁して蓄圧器12A,12Bに蓄圧された液圧が液圧シリンダのブレーキ液圧室32に作用せしめられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪とともに回転する被制動部材と、ブレーキ液圧室に背面を臨ませるブレーキピストンがシリンダボディに摺動自在に嵌合されて成る液圧シリンダと、前記ブレーキピストンの前進に応じて前記被制動部材に摺接する摩擦部材と、前記ブレーキピストンまたは前記摩擦部材を後退方向に付勢するばねとを有する車輪ブレーキが前記車輪に装着され、ブレーキ操作に応じた液圧を出力する液圧発生手段が液圧路を介して前記ブレーキ液圧室に接続される車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪に装着されたディスクブレーキにおいて、ブレーキパッドをブレーキディスクから離反する側にばねで付勢することにより、ブレーキ解除時の引きずりを防止するようにした車両用ブレーキ装置が、特許文献1で知られている。
【特許文献1】特開平5−346125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1で開示されたもののように、引きずり防止のためにブレーキパッドをブレーキディスクから離反する側にばね付勢したままでは、ブレーキ操作初期にブレーキパッドがブレーキディスクに摺接を開始するまでに時間がかかり、ブレーキ操作初期の液損(無効ストローク)が生じてしまう。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、引きずり防止を図った上にブレーキ操作初期の液損を低減し得るようにした車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、車輪とともに回転する被制動部材と、ブレーキ液圧室に背面を臨ませるブレーキピストンがシリンダボディに摺動自在に嵌合されて成る液圧シリンダと、前記ブレーキピストンの前進に応じて前記被制動部材に摺接する摩擦部材と、前記ブレーキピストンまたは前記摩擦部材を後退方向に付勢するばねとを有する車輪ブレーキが前記車輪に装着され、ブレーキ操作に応じた液圧を出力する液圧発生手段が液圧路を介して前記ブレーキ液圧室に接続される車両用ブレーキ装置において、前記液圧路に常閉型電磁弁を介して接続される蓄圧器と、前記ブレーキピストンの前進位置からの後退過程で前記常閉型電磁弁を開弁して前記蓄圧器に液圧を蓄圧するとともに前記ブレーキピストンの後退位置からの前進過程で前記常閉型電磁弁を開弁して前記蓄圧器に蓄圧された液圧を前記ブレーキ液圧室に作用せしめるようにして前記常閉型電磁弁の作動を制御するコントローラとを備え、前記蓄圧器に液圧が蓄圧されていない状態で該蓄圧器が発生する弾発付勢力が、前記ばねによる前記ブレーキピストンまたは前記摩擦部材の付勢力よりも大きく設定されることを特徴とする。
【0006】
なお実施例のディスクロータ20が本発明の被制動部材に対応し、実施例の摩擦パッド22,23が本発明の摩擦部材に対応し、実施例のマスタシリンダMが本発明の液圧発生手段に対応する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記構成によれば、ブレーキピストンまたは摩擦部材がばねで後退方向に付勢されるので摩擦部材の引きずりを防止することができ、しかもブレーキ操作初期には、ブレーキ力を小さくすべくブレーキピストンが前進位置から後退する過程で蓄圧器に蓄圧された液圧を液圧シリンダに作用せしめるようにして、ブレーキ操作初期の液損を補償することができる。その際、蓄圧器に液圧が蓄圧されていない状態で該蓄圧器が発生する弾発付勢力がばねによるブレーキピストンまたは摩擦部材の付勢力よりも大きいので、蓄圧器で蓄圧された液圧を液圧シリンダに速やかに作用せしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0009】
図1〜図5は本発明の一実施例を示すものであり、図1は車両用ブレーキ装置の構成を示す液圧系統図、図2は車輪ブレーキの縦断面図であって図3の2−2線に沿う断面図、図3は図2の3矢視図、図4は調圧弁および常閉型電磁弁の作動を制御するための制御系の構成を示すブロック図、図5はタイミングチャートである。
【0010】
先ず図1において、液圧発生手段であるマスタシリンダMは、ブレーキペダル1のブレーキ操作量に応じた液圧を出力可能な第1および第2出力ポート2A,2Bを有してタンデム型に構成されるものであり、このマスタシリンダMにはリザーバRが付設される。第1出力ポート2Aは、左前輪用車輪ブレーキBFLおよび右後輪用車輪ブレーキBRRに対応し、第2出力ポート2Bは、右前輪用車輪ブレーキBFRおよび左後輪用車輪ブレーキBRLに対応するものであり、第1および第2出力ポート2A,2Bには第1および第2液圧路3A,3Bがそれぞれ個別に接続される。
【0011】
マスタシリンダMの第1出力ポート2Aに接続された第1液圧路3Aは、第1出力ポート2A側へのブレーキ液の戻りを阻止する一方向弁4Aを有する共通液圧路3Aaと、該共通液圧路3Aaから分岐した一対の分岐液圧路3Ab,3Acとを有し、一方の分岐液圧路3Abが左前輪用車輪ブレーキBFに接続され、他方の分岐液圧路3Acが右後輪用車輪ブレーキBRに接続される。またマスタシリンダMの第2出力ポート2Bに接続された第2液圧路3Bは、第2出力ポート2B側へのブレーキ液の戻りを阻止する一方向弁4Bを有する共通液圧路3Baと、該共通液圧路3Baから分岐した一対の分岐液圧路3Bb,3Bcとを有し、一方の分岐液圧路3Bbが右前輪用車輪ブレーキBFRに接続され、他方の分岐液圧路3Acが左後輪用車輪ブレーキBRLに接続される。
【0012】
第1液圧路3Aの分岐液圧路3Ab,3Acには、常開型電磁弁である入口弁5A,5Bが介設され、それらの入口弁5A,5Bには、前記共通液圧路3Aa側へのブレーキ液の戻りを許容する一方向弁6A,6Bが並列に接続される。また分岐液圧路3Ab,3Acにおいて入口弁5A,5Bならびに左前輪用車輪ブレーキBFLおよび右後輪用車輪ブレーキBRR間は、常閉型電磁弁である出口弁7A,7Bを介してマスタシリンダMのリザーバRに接続される。第2液圧路3Bの分岐液圧路3Bb,3Bcには、常開型電磁弁である入口弁5C,5Dが介設され、それらの入口弁5C,5Dには、共通液圧路3Ba側へのブレーキ液の戻りを許容する一方向弁6C,6Dが並列に接続される。また分岐液圧路3Bb,3Bcにおいて入口弁5C,5Dならびに右前輪用車輪ブレーキBFRおよび左後輪用車輪ブレーキBRL間は、常閉型電磁弁である出口弁7C,7Dを介してマスタシリンダMのリザーバRに接続される。
【0013】
第1および第2液圧路3A,3Bにおいて、共通液圧路3Aa,3Baに介設された一方向弁4A,4Bには、リニアソレノイド弁である調圧弁8A,8Bが並列に接続されており、この調圧弁8A,8Bの働きにより分岐液圧路3Ab,3Ac;3Bb,3Bcの最上流端の液圧が調圧される。
【0014】
また第1および第2液圧路3A,3Bにおいて、共通液圧路3Aa,3Baと、分岐液圧路3Ab,3Ac;3Bb,3Bcとの間には、リニアソレノイド弁である常閉型電磁弁10A,10Bを介して蓄圧器12A,12Bが接続される。而して蓄圧器12Aは、蓄圧器本体13と、該蓄圧器本体13との間に蓄圧室14を形成するようにして蓄圧器本体13に摺動可能に嵌合される蓄圧ピストン15と、前記蓄圧室14の容積を縮小する側に前記蓄圧ピストン15を付勢する弾発力を発揮して蓄圧器本体13および蓄圧ピストン15間に縮設される蓄圧ばね16とを備え、前記常閉型電磁弁10Aは前記蓄圧室14に接続される。また蓄圧器12Bは、上記蓄圧器12Aと同様に構成されており、前記常閉型電磁弁12Bは蓄圧器12Bの蓄圧室14に接続される。
【0015】
前記蓄圧器12A,12Bの蓄圧室14…には、電動モータ18で駆動されるポンプ19の吐出側が、該ポンプ19側からのブレーキ液の流通を許容する一方向弁17A,17Bを介して接続され、前記ポンプ19の吸入側は前記リザーバRに接続される。
【0016】
図2および図3において、左前輪用車輪ブレーキBFLは、図示しない車輪のホイールとともに回転する被制動部材としてのディスクロータ20と、キャリパボディ21と、ディスクロータ20の両側面に対向して配置されてディスクロータ20およびキャリパボディ21間に配置される一対の摩擦部材としての摩擦パッド22,23とを備える。
【0017】
キャリパボディ21は、車体側に取付けられたブラケット24で前記ディスクロータ20の軸線に沿う方向に摺動可能に支持されるシリンダボディ21aと、シリンダボディ21aからディスクロータ20を跨いで反対側に延びる腕部21bとを備え、前記ディスクロータ20の軸線と平行に延びて前記シリンダボディ21aに固定されるスライドピン25,25が前記ブラケット24にスライド可能に支承され、両スライドピン25…を囲繞するブーツ26,26が前記シリンダボディ21aおよび前記ブラケット24間に設けられる。
【0018】
前記シリンダボディ21a側でディスクロータ20の一側面に対向する摩擦パッド22はディスクロータ20に摺接して摩擦力を発揮し得るライニング27が裏金29に設けられて成り、腕部21b側でディスクロータ20の他側面に対向する摩擦パッド23はディスクロータ20に摺接して摩擦力を発揮し得るライニング28が裏金30に設けられて成り、両摩擦パッド22,23は、ディスクロータ20の軸線に沿う方向に移動することを可能として前記ブラケット24に保持される。
【0019】
前記キャリパボディ21には、前記摩擦パッド22,23をディスクロータ20に摺接させる液圧力を発生する液圧シリンダ31が配設されるものであり、この液圧シリンダ31は、ブレーキ液圧室32に背面を臨ませるブレーキピストン33がシリンダボディ21aに摺動自在に嵌合されて成る。而して前記シリンダボディ21aには、前記ディスクロータ20の軸線と平行な軸線を有して前記摩擦パッド22とは反対側の端部が端壁34で閉じられた有底のシリンダ孔35が設けられ、前記ブレーキ液圧室32はブレーキピストン33および端壁34間でシリンダボディ21a内に形成される。
【0020】
シリンダ孔34の内面には、シリンダボディ21aおよびブレーキピストン33間に介装される環状のピストンシール36が装着され、シリンダ孔34の開口端部およびブレーキピストン33間には環状のダストブーツ37が設けられ、前記ブレーキ液圧室32に、第1液圧路3Aにおける分岐液圧路3Abが接続される。
【0021】
しかも左前輪用車輪ブレーキBFLには、そのブレーキ解除時に摩擦パッド22,23をディスクロータ20から速やかに離間させてひきずりを防止するためのばね38,38を備えており、それらのばね38…は、線材を略V字状に曲げ成形されて成るものである。而して前記両ばね38…は、ディスクロータ20を跨ぐように配置され、ばね38…の両端部が摩擦パッド22,23の裏金29,30に係止される。
【0022】
しかも蓄圧器12Aに液圧が蓄圧されていない状態で該蓄圧器12Aが発生する弾発付勢力すなわち蓄圧ばね16のばね力は、前記ばね38…による前記摩擦パッド22,23の付勢力よりも大きく設定される。
【0023】
右前輪用車輪ブレーキBFR、左後輪用車輪ブレーキBRLおよび右後輪用車輪ブレーキBRRは、上記左前輪用車輪ブレーキBFLと同様に構成されており、詳細な説明は省略する。
【0024】
図4において、前記調圧弁8A,8Bおよび前記常閉型電磁弁10A,10Bの作動はコントローラCで制御されるものであり、このコントローラCには、ブレーキペダル1によるブレーキ操作力を検出するブレーキ操作力検出器40の検出値が入力される。
【0025】
而してコントローラCは、ブレーキピストン33の前進位置からの後退過程であることを示す信号が前記ブレーキ操作力検出器40から入力されたときには前記調圧弁8A,8bを開弁するとともに前記常閉型電磁弁10A,10Bを開弁して前記蓄圧器12A,12Bの蓄圧室14…に液圧を蓄圧し、前記ブレーキピストン33の後退位置からの前進過程であることを示す信号が前記ブレーキ操作力検出器40から入力されたときには前記蓄圧器12A,12Bに蓄圧された液圧を前記車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレーキ液圧室32…に作用せしめるようにして前記常閉型電磁弁10A,10Bの作動を制御する。
【0026】
このようなコントローラCによる前記常閉型電磁弁10A,10Bの作動制御によれば、図5(a)で示すようにブレーキペダル1のストロークが変化するのに応じて、調圧弁8A,8Bの開弁(OFF)および閉弁(ON)が図5(b)で示すように制御されるとともに、常閉型電磁弁10A,10Bの開弁(ON)および閉弁(OFF)が図5(c)で示すように制御され、それに応じて蓄圧器12A,12Bにおける蓄圧室14…の容量が図5(d)で示すように変化し、各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレーキ液圧が図5(e)で示すように変化する。
【0027】
すなわち図5の時刻t1でブレーキペダル1が後退し始め、ブレーキピストン33…が前進位置からの後退過程に入ったときには、調圧弁8A,8Bが開弁するとともに常閉型電磁弁10A,10Bが開弁し、それに応じて蓄圧器12A,12Bにおける蓄圧室14…の容量が増加し、車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレーキ液圧が低下する。而して蓄圧器12A,12Bにおける蓄圧室14…の容量が最大まで増加した時刻t2で常閉型電磁弁10A,10Bおよび調圧弁8A,8Bは閉弁し、時刻t3で車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレーキ液圧が「0」となる。
【0028】
また時刻t4でブレーキペダル1が前進し始め、ブレーキピストン33…が後退位置から前進過程に入ったときには常閉型電磁弁10A,10Bが開弁し、蓄圧器12A,12Bに蓄圧された液圧が各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレーキ液圧室…に作用することになり、蓄圧器12A,12Bの蓄圧量が「0」となった時刻t5で常閉型電磁弁10A,10Bが閉弁する。
【0029】
次にこの実施例の作用について説明すると、各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRにおいて摩擦パッド22,23はばね38…によって後退方向すなわちディスクロータ20から離間する方向に付勢されているので、摩擦パッド22,23のひきずりが生じるのを防止することができる。
【0030】
しかも第1および第2液圧路3A,3Bにおいて、共通液圧路3Aa,3Baと、分岐液圧路3Ab,3Ac;3Bb,3Bcとの間には常閉型電磁弁10A,10Bを介して蓄圧器12A,12Bが接続されており、常閉型電磁弁10A,10Bの作動を制御するコントローラCは、各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRにおけるブレーキピストン33…の前進位置からの後退過程で常閉型電磁弁10A,10Bを開弁して蓄圧器12A,12Bに液圧を蓄圧するとともに前記ブレーキピストン33…の後退位置からの前進過程で前記常閉型電磁弁10A,10Bを開弁して前記蓄圧器12A,12Bに蓄圧された液圧を前記ブレーキ液圧室32…に作用せしめる。
【0031】
したがってブレーキ操作初期には、ブレーキ力を小さくすべくブレーキピストン33…が前進位置から後退する過程で蓄圧器12A,12Bに蓄圧された液圧を各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRの液圧シリンダ31…に作用せしめるようにして、ブレーキ操作初期の液損を補償することができる。
【0032】
しかも蓄圧器12A,12Bに液圧が蓄圧されていない状態で該蓄圧器12A,12Bが発生する弾発付勢力がばね38…による摩擦パッド22,23の付勢力よりも大きいので、蓄圧器12A,12Bで蓄圧された液圧を液圧シリンダ31…に速やかに作用せしめることができる。
【0033】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0034】
たとえば上記実施例では、ディスクブレーキである各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRにおいて、摩擦パッド22,23がばね38…で後退方向に付勢される場合について説明したが、ブレーキピストン33がばねで後退方向に付勢されるようにした車輪ブレーキであってもよい。
【0035】
また本発明は、摩擦部材であるシューを液圧シリンダが発揮する液圧力で被制動部材であるブレーキドラムの内周に押しつけるようにしたドラムブレーキにも適用することができる。
【0036】
また上記実施例では、図5(b)で示したように、時刻t1〜t2の間で常閉型電磁弁10A,10Bに同期して調圧弁8A,8Bを閉弁したが、図5の一点鎖線で示すように、ブレーキペダル1のストロークが「0」となる時刻t3まで調圧弁8A,8Bを引き続き閉弁するようにしてもよい。この場合、時刻t2における調圧弁8A,8Bおよび常閉型電磁弁10A,10Bのオフタイミングのずれの問題がなくなり、通常ブレーキペダル1の後退時には、外部リザーバRから図示しないカップシール等を介してブレーキ液が補充されるので、ブレーキペダル1の後退を阻害することはない。
【0037】
さらに上記実施例では、図5(b)で示したように、時刻t4〜t5の間で調圧弁8A,8Bを開弁状態としたが、二点鎖線で示すように、常閉型電磁弁10A,10Bの開弁に同期して閉弁するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】車両用ブレーキ装置の構成を示す液圧系統図である。
【図2】車輪ブレーキの縦断面図であって図3の2−2線に沿う断面図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】調圧弁および常閉型電磁弁の作動を制御するための制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】タイミングチャートである。
【符号の説明】
【0039】
3A,3B・・・液圧路
10A,10B・・・常閉型電磁弁
12A,12B・・・蓄圧器
20・・・被制動部材であるディスクロータ
21a・・・シリンダボディ
22,23・・・摩擦部材である摩擦パッド
31・・・液圧シリンダ
32・・・ブレーキ液圧室
33・・・ブレーキピストン
38・・・ばね
BFL,BFR,BRL,BRR・・・車輪ブレーキ
C・・・コントローラ
M・・・液圧発生手段であるマスタシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪とともに回転する被制動部材(20)と、ブレーキ液圧室(32)に背面を臨ませるブレーキピストン(33)がシリンダボディ(21a)に摺動自在に嵌合されて成る液圧シリンダ(31)と、前記ブレーキピストン(33)の前進に応じて前記被制動部材(20)に摺接する摩擦部材(22,23)と、前記ブレーキピストン(33)または前記摩擦部材(22,23)を後退方向に付勢するばね(38)とを有する車輪ブレーキ(BFL,BFR,BRL,BRR)が前記車輪に装着され、ブレーキ操作に応じた液圧を出力する液圧発生手段(M)が液圧路(3A,3B)を介して前記ブレーキ液圧室(32)に接続される車両用ブレーキ装置において、前記液圧路(3A,3B)に常閉型電磁弁(10A,10B)を介して接続される蓄圧器(12A,12B)と、前記ブレーキピストン(33)の前進位置からの後退過程で前記常閉型電磁弁(10A,10B)を開弁して前記蓄圧器(12A,12B)に液圧を蓄圧するとともに前記ブレーキピストン(33)の後退位置からの前進過程で前記常閉型電磁弁(10A,10B)を開弁して前記蓄圧器(12A,12B)に蓄圧された液圧を前記ブレーキ液圧室(32)に作用せしめるようにして前記常閉型電磁弁(10A,10B)の作動を制御するコントローラ(C)とを備え、前記蓄圧器(12A,12B)に液圧が蓄圧されていない状態で該蓄圧器(12A,12B)が発生する弾発付勢力が、前記ばね(38)による前記ブレーキピストン(33)または前記摩擦部材(22,23)の付勢力よりも大きく設定されることを特徴とする車両用ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−265658(P2008−265658A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114108(P2007−114108)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】