説明

車両用ヘッドランプの制御装置

【課題】車両用ヘッドランプの制御装置において、障害物の方向及び距離に基づいて、障害物に対する有効な衝突回避操作を取らせる。
【解決手段】車両用ヘッドランプの制御装置3に、車両進行路上の障害物の方向と距離を検出するステレオカメラ8(障害物検出手段)と、障害物の方向と距離に基づき、障害物が存在する障害物存在領域と該障害物が存在しない障害物非存在領域とを判定すると共に、ヘッドランプ2を制御することで、障害物存在領域と障害物非存在領域とを識別可能な路面配光状態とするECU10(障害物存在領域判定手段、制御手段)とを設ける。このECU10により、複数個の指向性を有する発光ダイオード5,6,7からなるヘッドランプ2を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の指向性を有する投光器からなるヘッドランプを制御する車両用ヘッドランプの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複数個の指向性を有する投光器(LED)からなるヘッドランプを車両に設けることが行われている。このヘッドランプを制御する車両用ヘッドランプの制御装置として、例えば、特許文献1のものが知られている。
【0003】
特許文献1では、車速センサからの検出値に基づいて、前方車両に対する目標車間距離を算出し、算出した目標車間距離よりも先の路面領域と目標車間距離までの路面領域が異なる配光状態となるようにLEDヘッドランプの点灯を制御している。その例として、目標車間距離を確保できる位置に対応する所定路面領域とLEDヘッドランプの照射範囲における所定路面領域以外の路面領域とが異なる色の光となるようにLEDヘッドランプの点灯を制御することが開示されている。
【特許文献1】特開2006−347344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用ヘッドランプの制御装置では、前方車両との車間距離を把握できるものの、それだけでは障害物の方向及び距離に基づいて、障害物に対する有効な衝突回避操作を取らせることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、障害物の方向及び距離に基づいて、ドライバーは、障害物に対する有効な衝突回避操作を取らせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、投光器を制御して障害物存在領域と障害物非存在領域とを識別可能な路面配光状態とするようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明では、複数個の指向性を有する投光器からなるヘッドランプを制御する車両用ヘッドランプの制御装置を対象とする。
【0008】
そして、上記車両用ヘッドランプの制御装置は、
車両進行路上の障害物の方向と距離を検出する障害物検出手段と、
上記障害物の方向と距離に基づき、上記車両進行路上における該障害物が存在する障害物存在領域と該障害物が存在しない障害物非存在領域とを判定する障害物存在領域判定手段と、
上記投光器を制御することで、上記障害物存在領域と上記障害物非存在領域とを識別可能な路面配光状態とする制御手段とを備えている。
【0009】
上記の構成によると、障害物があるときには、障害物検出手段の検出した障害物の方向と距離に基づき、障害物存在領域判定手段が車両進行路上における障害物存在領域と障害物非存在領域とを判定し、制御手段が投光器を制御して障害物存在領域と障害物非存在領域とを識別可能な路面配光状態とする。この路面配光状態を認識することにより、ドライバーは、障害物に対する有効な衝突回避操作を行う。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
上記投光器は、発光ダイオードとする。
【0011】
上記の構成によると、発光ダイオードであれば、ハロゲンヘッドランプ等に比べ、指向性がよいために路面配光が明確に行われ、この路面配光状態を認識することにより、ドライバーは、障害物に対する有効な衝突回避操作を行う。さらに発光ダイオードであれば、省電力が実現される。
【0012】
第3の発明では、第1の発明において、
上記路面配光状態が、障害物存在領域及びその周囲領域を他の領域と識別可能な配光状態とする。
【0013】
上記の構成によると、障害物が際立つので、ドライバーは、障害物の位置を明確に認識して適切な衝突回避操作を行う。
【0014】
第4の発明では、第3の発明において、
上記制御手段は、上記障害物の種類を検出し、該種類に応じて配光状態を変えるように構成されている。
【0015】
上記の構成によると、配光状態により、ドライバーは、障害物の種類を素早く判定して障害物に合わせた適切な衝突回避操作を行う。
【0016】
第5の発明では、第3の発明において、
上記制御手段は、上記障害物の移動方向及び移動速度を検出して危険度を算出し、該危険度に応じて配光状態を変えるように構成されている。
【0017】
上記の構成によると、配光状態により、ドライバーは障害物の危険度を素早く判定して危険度に合わせて適切な回避操作を行う。
【0018】
第6の発明では、第1の発明において、
上記制御手段は、上記障害物検出手段で検出された領域を複数のエリアに分割し、該複数のエリアのうち、上記障害物との衝突を回避する衝突回避エリアを算出し、該衝突回避エリアを上記障害物存在領域を含む障害物存在エリアと識別可能な配光状態とするように構成されている。
【0019】
上記の構成によると、配光状態により、障害物を回避するためのエリアが素早く認識され、ドライバーは、その衝突回避エリアに向かって車両を進めることで容易に回避操作を行う。
【0020】
第7の発明では、第1乃至第6のいずれか1つの発明において、
上記制御手段は、上記投光器の発光色を変えることにより、上記路面配光状態を調整するように構成されている。
【0021】
上記の構成によると、ドライバーは、異なる色の配光を識別して障害物の存在、障害物の種類や、回避方向を判断し、その情報をもとに適切な回避操作を行う。
【0022】
第8の発明では、第1乃至第6のいずれか1つの発明において、
上記制御手段は、上記投光器の輝度を変えることにより、上記路面配光状態を調整するように構成され、該輝度の調整は過励磁制御により行われる。
【0023】
上記の構成によると、簡単な構成で輝度の調整が行われると共に、ドライバーは、光の強弱を識別して障害物の存在、障害物の種類や、回避方向を判断し、その情報をもとに適切な回避操作を行う。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、障害物検出手段の検出した障害物の方向と距離に基づき、障害物存在領域判定手段が車両進行路上の障害物存在領域と障害物非存在領域とを判定し、制御手段が投光器を制御して障害物存在領域と障害物非存在領域とを識別可能な路面配光状態とするようにした。このため、ドライバーは、路面配光状態を認識することで障害物の方向及び距離に基づいて、障害物に対する有効な衝突回避操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1の車両用ヘッドランプの制御装置3を備えた車両1を示す。この車両1は、前端に左右一対のヘッドランプ2を備え、このヘッドランプ2は、複数個の指向性を有する発光ダイオードが配列された投光器よりなる。図2に示すように、ヘッドランプ2は、例えば、複数の白色LED5と赤色LED6と青色LED7とが、斜めに並列に配列されている。白色LED5と赤色LED6と青色LED7とは、各色毎にヘッドランプ2の照射範囲全体を照らすことができるようになっている。
【0027】
図3に示すように、車両用ヘッドランプの制御装置3は、障害物検出手段としてのステレオカメラ8を備えている。このステレオカメラ8は、車両1のルーフ前端などに設けられ、車両進行路上の障害物の方向と距離を検出するように構成されている。
【0028】
車両用ヘッドランプの制御装置3は、ECU10(エレクトロニックコントロールユニット)を備えている。ECU10は、内部にメモリ11を備え、パターンマッチング用データとして、歩行者、車両、二輪車の画像を多数備えている。ECU10は、ステレオカメラ8で得られた画像と、メモリ11内のパターンマッチング用データとを比較して障害物を認識する、公知のパターンマッチング処理を行うように構成されている。
【0029】
ECU10は、パターンマッチング処理で検出した障害物の方向と距離に基づき、車両1の進行路上における障害物が存在する障害物存在領域と、この障害物が存在しない障害物非存在領域とを判定する障害物存在領域判定手段としての役割を果たしている。
【0030】
また、ECU10は、ヘッドランプ2を制御することで、障害物存在領域と障害物非存在領域とを識別可能な路面配光状態とする制御手段としての役割も果たしている。ECU10は、障害物存在領域及びその周囲領域を他の領域と識別可能な配光状態とする。つまり、ECU10は、パターンマッチング処理により、障害物の種類を検出し、この種類に応じて配光状態を変えることで、路面配光状態を調整するように構成されている。
【0031】
このとき、ヘッドランプ2は、発光ダイオードで構成されているので、ハロゲンヘッドランプ等に比べ、指向性がよいために路面配光が明確に行われる上、省電力が実現される。
【0032】
−作動−
次に、本実施形態にかかる車両用ヘッドランプの制御装置3の作動について図面を用いて説明する。
【0033】
図4に示すように、まず、ステップS01において、カメラ画像が入力される。例えば、図5に示すように、ステレオカメラ8で得られた画像がECU10に入力される。車両1の進行路上の照射範囲をXで示す。
【0034】
次いで、ステップS02において、ECU10は、ステレオカメラ8で得られた画像と、メモリ11内のパターンマッチング用データとを比較するパターンマッチング処理を行う。
【0035】
次いで、ステップS03において、パターンマッチング処理により、障害物がないと判断すれば、ステップS04に進み、障害物があると判断すれば、ステップS05に進む。
【0036】
ステップS04において、ヘッドランプ2の白色LED5を全て点灯する。つまり、障害物がないので、通常の点灯が行われる。
【0037】
ステップS05において、ステレオカメラ8の検出した障害物の方向と距離に基づき、ECU10が車両1の進行路上の障害物存在領域と障害物非存在領域とを判定する。
【0038】
次いで、ステップS06において、パターンマッチングにおいて、障害物存在領域にある障害物が歩行者であると判定された場合には、ステップS07に進み、車両か二輪車であると判定された場合には、ステップS09に進む。
【0039】
ステップS07において、ECU10は、判定された全ての歩行者までの距離と方位を算出し、ステップS08に進む。
【0040】
ステップS08において、全ての白色LEDを点灯させると共に、青色LED7で歩行者及びその足下を照らす。例えば、図5に示すように、歩行者が二人いる場合、それぞれの足下領域A1,A2に対応する青色LED7(図2に示す)を点灯させる。
【0041】
ステップS09において、ECU10は、判定された全ての車両及び二輪車までの距離と方位を算出する。
【0042】
ステップS10において、全ての白色LEDを点灯させると共に、赤色LED6で車両、二輪車及びその周囲を照らす。例えば、図5に示すように、車両が二台ある場合、それぞれの車両の前面及びその周囲である領域B1,B2に対応する赤色LED6(図2に示す)を点灯させる。なお、ステップS08及びS10では、青色LED7や赤色LED6を点灯する領域に対応する白色LED5は点灯させないようにして色の違いを際立たせるようにしてもよい。
【0043】
このように、ECU10がヘッドランプ2を制御して障害物存在領域にある歩行者や車両を色分けしてスポット的に強調する路面配光状態としたことにより、ドライバーは、異なる色の配光を識別して障害物の存在、種類や、回避方向を判断し、その情報をもとに適切な回避操作を行う。
【0044】
−実施形態1の効果−
したがって、本実施形態にかかる車両用ヘッドランプの制御装置3によると、ステレオカメラ8の検出した障害物の方向と距離に基づき、ECU10が、車両1の進行路上の障害物存在領域と障害物非存在領域とを判定し、ヘッドランプ2を制御して障害物存在領域と障害物非存在領域とを識別可能な路面配光状態とするようにした。このため、ドライバーは、障害物の方向及び距離に基づいて、障害物に対する有効な衝突回避操作を行うことができる。
【0045】
−実施形態1の変形例1−
本変形例では、図6に示すように、ヘッドランプ2は、白色LED5のみを備えている。ECU10は、ヘッドランプ2の輝度を変えることにより、路面配光状態を調整する。この輝度の調整は過励磁制御により行われる。
【0046】
具体的には、図7に示すように、通常時は各白色LED5に定格電流が送られるが、所定の場合にパルス信号により電流を一時的に増幅させる。なお、通常時は定格電圧をかけ、パルス駆動時には電圧を一時的に増幅させるようにしてもよい。
【0047】
図8を用いて、上記実施形態1と異なる部分についてのみ説明すると、ステップS04において、障害物がない通常の点灯時の場合、全ての白色LED5に定格電流を流す。
【0048】
ステップS08において、歩行者に対応する位置にある白色LED5(例えば、図6のA1,A2)を過励磁制御により、パルス幅d1でパルス駆動し、周囲よりも明るくして強調する。
【0049】
ステップS10において、車両及び二輪車に対応する位置にある白色LED5(例えば、図6のB1,B2)を過励磁制御により、パルス駆動し、周囲よりも明るくして強調する。このときのパルス幅d2は、図7に示すように、歩行者のパルス幅d1よりも広くする(d2>d1)。このことで、ドライバーは、明るさの強弱の変化の間隔で歩行者か、車両かの判断が行える。
【0050】
このように、ドライバーは、光の強弱やその変化の間隔を識別して障害物の存在、種類や、回避方向を判断し、その情報をもとに適切な回避操作を行う。
【0051】
−実施形態1の変形例2−
また、ECU10は、障害物の移動方向及び移動速度を検出して危険度を算出し、この危険度に応じて配光状態を変えるようにしてもよい。本変形例では、上記変形例1と同じ複数色のLEDが配置されたヘッドランプ2を用いる(図2参照)。
【0052】
具体的には、図9に示すように、まず、ステップS101において、カメラ画像が入力される。例えば、図5に示すように、ステレオカメラ8で得られた画像がECU10に入力される。
【0053】
次いで、ステップS102において、ECU10は、ステレオカメラ8で得られた画像と、メモリ11内のパターンマッチング用データとを比較するパターンマッチング処理を行う。
【0054】
次いで、ステップS103において、パターンマッチング処理により、障害物がないと判断すれば、ステップS104に進み、障害物があると判断すれば、ステップS105に進む。
【0055】
ステップS104において、ヘッドランプ2の白色LED5を全て点灯する。
【0056】
ステップS105において、ステレオカメラ8の検出した障害物の方向と距離に基づき、ECU10が障害物存在領域と障害物非存在領域とを判定する。
【0057】
次いで、ステップS106では、ECU10は、障害物存在領域にある障害物までの距離L及び相対速度Vsを算出する。相対速度Vsは、前回測定距離L(t−ΔT)と今回測定距離L(t)との差ΔLとサンプリングタイムΔTより求める(Vs=ΔL/ΔT)。
【0058】
ステップS107において、ECU10は、各障害物の危険度を算出する。例えば、距離Lと相対速度Vsとから衝突までの時間Tsを算出し(Ts=L/Vs)、1/Tsを危険度とする。
【0059】
ステップS108において、各障害物の危険度が第1閾値K1以下であるかどうかを判定する。危険度が第1閾値よりも小さい場合(1/Ts<K1)、この時点では危険性はないので、ステップS104に進む。危険度が第1閾値以上の大きいとき(1/Ts≧K1)、ステップS109に進む。
【0060】
ステップS109において、上記第1閾値K1よりも大きな第2閾値K2と比較する。すなわち、危険度が第2閾値K2以上のとき(1/Ts≧K2)、ステップS110に進み、危険度が第2閾値K2よりも小さいとき(1/T<K2)、ステップS112に進む。
【0061】
ステップS110では、危険度が大きいため、全ての白色LED5を点灯させると共に、その障害物がある障害物存在領域(例えば、図5のA2,B1)に対応する赤色LED6(図2のA2,B1)を点灯し、ドライバーに注意を喚起させ、ステップS111に進む。
【0062】
ステップS112では、危険度はそれほど大きくはないものの、注意すべき障害物を照らす。すなわち、全ての白色LED5を点灯させると共に、そのような障害物が存在する障害物存在領域(例えば、図5のA1,B2)に対応する青色LED7(図2のA1,B2)を点灯し、ドライバーに障害物が存在することを知らせ、ステップS111に進む。なお、ステップS110及びS112では、赤色LED6や青色LED7を点灯する領域に対応する白色LED5は点灯させないようにして色の違いを際立たせるようにしてもよい。
【0063】
ステップS111では、全ての障害物の判定が終了したかが判定される。全ての障害物の判定が終了した場合には終了し、全ての障害物の判定が終了していない場合にはステップS109に戻る。
【0064】
このように、危険度に応じて色分けすることで、ドライバーは障害物の危険度を素早く判定して適切な回避操作を行うことができる。
【0065】
−実施形態1の変形例3−
本変形例では、上記変形例2とヘッドランプ2が白色LED5のみを備えている(図6参照)点で異なる。ECU10は、ヘッドランプ2の輝度を変えることにより、路面配光状態を調整する。この輝度の調整は上記変形例1と同様に過励磁制御により行われる。
【0066】
具体的には、図7に示すように、通常時は、各白色LED5に定格電流が送られるが、所定の場合にパルス信号により電流を一時的に増幅させる。通常時は、定格電圧をかけ、パルス駆動時には、電圧を一時的に増幅させるようにしてもよい。
【0067】
図10を用いて、上記実施形態1と異なる部分についてのみ説明すると、ステップ104において、障害物がない場合、全ての白色LED5に定格電流を流す。
【0068】
ステップS110において、危険度の高い障害物(1/Ts≧K1)に対応する位置(例えば、図5のA2,B1)にある白色LED5(図2のA2,B1)を過励磁制御により、パルス幅d2でパルス駆動し、周囲よりも明るくして強調する。
【0069】
ステップS112において、危険度の低い障害物(1/Ts≦K1)に対応する位置(例えば、図5のA1,B2)にある白色LED5(図2のA1,B2)を過励磁制御により、パルス駆動し、周囲よりも明るくして強調する。このときのパルス幅d1は、危険度の高い障害物のパルス幅d2よりも狭くする(d1<d2)。このことで、ドライバーは、明るさの強弱の変化の間隔から危険度の高低の判断が行える。
【0070】
このように、ドライバーは、光の強弱やその間隔を識別して障害物の存在や危険度、回避方向を判断し、その情報をもとに適切な回避操作が取られる。
【0071】
(実施形態2)
図11乃至図13は本発明の実施形態2を示し、ステレオカメラ8で得られた画像を複数のエリアに分割する点で上記実施形態1と異なる。なお、図1乃至図10と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0072】
図12に示すように、ECU10は、ステレオカメラ8で検出された領域のうちヘッドランプ2で照射できる車両1の走行路上の範囲Xを複数の(本実施形態では6つの)エリアR1〜R6に分割する。
【0073】
これら複数のエリアR1〜R6のうち、障害物との衝突を回避する衝突回避エリア(例えば、R5,R6)を算出し、この衝突回避エリアを障害物存在領域を含む障害物存在エリア(例えば、R1〜R4)と識別可能な配光状態とするように構成されている。
【0074】
−作動−
次に、本実施形態にかかる車両用ヘッドランプの制御装置の作動について図面を用いて説明する。
【0075】
図11及び図13に示すように、まず、ステップS201において、カメラ画像が入力される。例えば、図12に示すように、ステレオカメラ8で得られた画像がECU10に入力される。
【0076】
次いで、ステップS202において、ヘッドランプ2で照射できる範囲を6つのエリアR1〜R6に分割する。
【0077】
次いで、ステップS203において、ECU10は、各エリアR1〜R6の画像と、メモリ11内のパターンマッチング用データとを比較するパターンマッチング処理を行う。
【0078】
次いで、ステップS204において、パターンマッチング処理により、障害物がないと判断すれば、ステップS205に進み、障害物があると判断すれば、ステップS206に進む。
【0079】
ステップS205において、ヘッドランプ2の白色LED5を全て点灯する。つまり、障害物がないので、通常の点灯が行われる。
【0080】
ステップS206において、ステレオカメラ8の検出した障害物の方向と距離に基づき、ECU10が障害物存在領域と障害物非存在領域とを判定する。
【0081】
次いで、ステップS207において、ECU10は、障害物存在領域の障害物までの距離と方位を算出する。
【0082】
次いで、ステップS208において、各エリアR1〜R6ごとに障害物の有無を判定する。障害物があるエリアを障害物存在エリア(例えば、R1〜R4)とし、障害物のないエリアを衝突回避エリア(例えば、R5,R6)とする。
【0083】
次いで、ステップS209において、障害物存在エリアに対応する赤色LED6を点灯する。
【0084】
次いで、ステップS210において、衝突回避エリアに対応する青色LED7を点灯する。
【0085】
この制御結果を基にドライバーは、青色で照らされた衝突回避エリアに車両1を進行させる。
【0086】
−実施形態2の効果−
したがって、本実施形態にかかる車両用ヘッドランプの制御装置3によると、ドライバーは、配光状態により、障害物を回避するためのエリアを素早く認識することができ、その衝突回避エリアに向かって車両を進めることで容易に回避操作が行を行うことができる。
【0087】
−実施形態2の変形例−
本変形例では、図6に示すように、ヘッドランプ2は、白色LED5のみを備えている。ECU10は、ヘッドランプ2の輝度を変えることにより、路面配光状態を調整する。この輝度の調整は過励磁制御により行われる。
【0088】
具体的には、図7に示すように、通常時は各白色LED5に定格電流が送られるが、所定の場合にパルス信号により電流を一時的に増幅させる。なお、通常時は定格電圧をかけ、パルス駆動時には電圧を一時的に増幅させるようにしてもよい。
【0089】
図14を用いて、上記実施形態2と異なる部分についてのみ説明すると、ステップS205において、障害物がない通常の点灯時の場合、全ての白色LED5に定格電流を流す。
【0090】
ステップS209において、障害物存在エリアに対応する白色LED5を定格電流以下で駆動して周囲よりも暗くし、そちらに回避しないようドライバーに知らせる。
【0091】
ステップS210において、衝突回避エリアに対応する白色LED5を過励磁制御により、パルス駆動し、周囲よりも明るくして強調する。ドライバーは、この明るい衝突回避エリア側に回避する。このときのパルス幅を危険度などに応じてd1,d2のように変化させることも可能である。
【0092】
このように、ドライバーは、光の強弱により、障害物を回避するためのエリアを素早く認識し、その衝突回避エリアに向かって車両を進めることで容易に回避操作を行うことができる。
【0093】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施形態1の車両用ヘッドランプの制御装置を備えた車両の機器配置図である。
【図2】ヘッドランプの構成を拡大して示す正面図である。
【図3】車両用障害物検出装置のブロック図である。
【図4】車両用障害物検出装置のフローチャートである。
【図5】障害物存在領域及びその周囲領域を他の領域と識別可能な配光状態とする様子を示す説明図である。
【図6】実施形態1の変形例1にかかる図2相当図である。
【図7】過励磁制御を行うための定格電流を示すグラフである。
【図8】実施形態1の変形例1にかかる図4相当図である。
【図9】実施形態1の変形例2にかかる図4相当図である。
【図10】実施形態1の変形例3にかかる図4相当図である。
【図11】実施形態2にかかる図3相当図である。
【図12】実施形態2にかかる図5相当図である。
【図13】実施形態2にかかる図4相当図である。
【図14】実施形態2の変形例にかかる図4相当図である。
【符号の説明】
【0095】
1 車両
2 ヘッドランプ
3 車両用ヘッドランプの制御装置
5 白色LED(投光器)
6 赤色LED(投光器)
7 青色LED(投光器)
8 ステレオカメラ(障害物検出手段)
10 ECU(障害物存在領域判定手段、制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の指向性を有する投光器からなるヘッドランプを制御する車両用ヘッドランプの制御装置であって、
車両進行路上の障害物の方向と距離を検出する障害物検出手段と、
上記障害物の方向と距離に基づき、上記車両進行路上における該障害物が存在する障害物存在領域と該障害物が存在しない障害物非存在領域とを判定する障害物存在領域判定手段と、
上記投光器を制御することで、上記障害物存在領域と上記障害物非存在領域とを識別可能な路面配光状態とする制御手段とを備えている
ことを特徴とする車両用ヘッドランプの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ヘッドランプの制御装置において、
上記投光器は、発光ダイオードである
ことを特徴とする車両用ヘッドランプの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用ヘッドランプの制御装置において、
上記制御手段は、上記障害物存在領域及びその周囲領域を他の領域と識別可能な配光状態とするように構成されている
ことを特徴とする車両用ヘッドランプの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ヘッドランプの制御装置において、
上記制御手段は、上記障害物の種類を検出し、該種類に応じて配光状態を変えるように構成されている
ことを特徴とする車両用ヘッドランプの制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の車両用ヘッドランプの制御装置において、
上記制御手段は、上記障害物の移動方向及び移動速度を検出して危険度を算出し、該危険度に応じて配光状態を変えるように構成されている
ことを特徴とする車両用ヘッドランプの制御装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の車両用ヘッドランプの制御装置において、
上記制御手段は、上記障害物検出手段で検出された上記車両進行路上の領域を複数のエリアに分割し、該複数のエリアのうち、上記障害物との衝突を回避する衝突回避エリアを算出し、該衝突回避エリアを上記障害物存在領域を含む障害物存在エリアと識別可能な配光状態とするように構成されている
ことを特徴とする車両用ヘッドランプの制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の車両用ヘッドランプの制御装置において、
上記制御手段は、上記投光器の発光色を変えることにより、上記路面配光状態を調整するように構成されている
ことを特徴とする車両用ヘッドランプの制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の車両用ヘッドランプの制御装置において、
上記制御手段は、上記投光器の輝度を変えることにより、上記路面配光状態を調整するように構成され、該輝度の調整は過励磁制御により行われる
ことを特徴とする車両用ヘッドランプの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−143503(P2009−143503A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325539(P2007−325539)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】