説明

車両用ペダルの後退防止装置

【課題】 ペダルブラケットが座屈しない場合でも操作ペダルの後退防止作用が適切に得られるようにする。
【解決手段】 ペダルブラケット14の上側取付部26の周囲に破断用溝が設けられ、ダッシュパネル12の後退時の荷重で破断することにより、その上側取付部26をペダルブラケット14から切り離し、ペダルブラケット14がガイド部材50の作用で下側取付部28を支点として矢印Aで示すように先端側が下方へ変位するように回動することを許容するようになっているため、従来のように下側取付部28の座屈でペダルブラケット14を変位させる場合に比較して、ペダルブラケット14の回動量(傾斜角度)が大きくなり、操作ペダル18の後退防止作用が十分に得られるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダッシュパネルが運転席側へ変位した時に操作ペダルの踏部が運転席側へ後退することを防止する車両用ペダルの後退防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 上下に離間して設けられた複数の取付部を介してダッシュパネルに一体的に固設されるとともに、運転席側へ向かって延び出す支持部を備えているペダルブラケットと、(b) そのペダルブラケットの支持部に回動可能に配設され、下端部に設けられた踏部が踏込み操作される操作ペダルと、(c) 前記ペダルブラケットと車体側部材とに関連して設けられ、そのペダルブラケットが前記ダッシュパネルと共に運転席側へ後退させられた時に、その車体側部材との相対変位に伴ってそのペダルブラケットの先端側を下方へ押し下げることにより、前記操作ペダルの踏部が運転席側へ後退することを抑制するガイド部材と、を有する車両用ペダルの後退防止装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の装置はその一例で、ブレーキペダルについて記載されており、ペダルブラケットの支持部は斜め上方へ延び出しているとともに、その先端部は、車体側部材としてのインパネリインフォースメントに固設されたガイド部材(スライドプレート)に連結されている。そして、車両前方からの大荷重入力などでダッシュパネルが運転席側へ変位すると、ペダルブラケットとガイド部材との連結が解除され、ペダルブラケットの先端部がガイド部材によって下方へ押し下げられることにより、ペダルブラケットが座屈して折り曲げられるとともに下側の取付部が座屈して潰れることにより、操作ペダルがオペレーティングロッドとの連結部を支点として踏部が相対的に車両前側へ変位するように回動させられる。
【特許文献1】特開平10−175492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年軽量化等を目的としてガラス繊維強化樹脂等の合成樹脂製のペダルブラケットを採用することが考えられているが、リブ等により所定の剛性が得られるように強化されているため座屈し難く、操作ペダルの後退を十分に防止することができないという問題があった。ペダルブラケットの剛性を低下させて座屈させるようにすることも可能であるが、通常のペダル操作時の反力で変形してしまう可能性があり、それ等を両立させるような剛性の設定が難しい。また、上記特許文献1では、下側の取付部が座屈させられるようになっており、上側の取付部の圧縮変形量との差に応じてペダルブラケットが傾斜させられるが、このような取付部の座屈による傾斜だけでは操作ペダルを十分に回動させることができない。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、ペダルブラケットが座屈しない場合でも操作ペダルの後退防止作用が適切に得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 上下に離間して設けられた複数の取付部を介してダッシュパネルに一体的に固設されるとともに、運転席側へ向かって延び出す支持部を備えているペダルブラケットと、(b) そのペダルブラケットの支持部に回動可能に配設され、下端部に設けられた踏部が踏込み操作される操作ペダルと、(c) 前記ペダルブラケットと車体側部材とに関連して設けられ、そのペダルブラケットが前記ダッシュパネルと共に運転席側へ後退させられた時に、その車体側部材との相対変位に伴ってそのペダルブラケットの先端側を下方へ押し下げることにより、前記操作ペダルの踏部が運転席側へ後退することを抑制するガイド部材と、を有する車両用ペダルの後退防止装置において、(d) 前記ペダルブラケットの複数の取付部のうち上側取付部に対応して設けられ、前記ダッシュパネルの後退時の荷重で破断してその上側取付部をペダルブラケットから切り離すことにより、そのペダルブラケットが前記ガイド部材の作用で下側取付部を支点として先端側が下方へ変位するように回動することを許容する切り離し部を有することを特徴とする。
【0007】
なお、ダッシュパネル変形時に後退が抑制される踏部の位置は、ダッシュパネルが変形していない通常の状態における踏部の位置と同じかそれよりも車両前方側になることが望ましいが、運転席側(車両後方側)へ後退する場合であっても、少なくとも本発明が適用されることにより操作ペダルがそのまま運転席側へ後退する場合に比較して後退移動量が少なくなれば良い。
【0008】
第2発明は、第1発明の車両用ペダルの後退防止装置において、前記ペダルブラケットには、前記ダッシュパネルに当接させられることにより、前記切り離し部の破断によってそのペダルブラケットが下側取付部を支点として先端側が上方へ変位するように回動することを制限するストッパが設けられていることを特徴とする。
【0009】
第3発明は、第1発明または第2発明の車両用ペダルの後退防止装置において、前記ペダルブラケットは、合成樹脂材料にて一体成形されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このような車両用ペダルの後退防止装置においては、ペダルブラケットの上側取付部に対応して切り離し部が設けられ、ダッシュパネルの後退時の荷重で破断することにより、その上側取付部をペダルブラケットから切り離し、ペダルブラケットがガイド部材の作用で下側取付部を支点として先端側が下方へ変位するように回動することを許容するようになっているため、従来のように下側取付部の座屈でペダルブラケットの変位を許容する場合に比較して、ペダルブラケットの回動量(傾斜角度)を大きくすることが可能で、操作ペダルの後退防止作用が十分に得られるようにすることができる。また、ペダルブラケットそのものを座屈させる必要がないため、ペダルブラケットとしてはペダル操作の反力に耐えられる十分な剛性が得られるようにすれば良く、ペダルブラケットを合成樹脂材料にて構成する場合でも、その剛性の設定、すなわち板厚やリブ等の設計が容易である。
【0011】
第2発明では、ペダルブラケットにストッパが設けられ、ダッシュパネルに当接させられることによりペダルブラケットが下側取付部を支点として先端側が上方へ変位するように回動することを制限するようになっているため、前記切り離し部の破断時等に、ペダルブラケットの先端側が上方へ変位するように回動して操作ペダルの踏部が運転席側へ突き出すことが確実に回避される。例えば、ペダルブラケットの支持部がカウル等の車体側部材に連結されるとともに、所定値以上の大荷重が車両前方からペダルブラケットに作用した時には、その連結が解除されるようになっている場合に、その連結が解除される前に切り離し部が破断すると、ペダルブラケットは先端側が上方へ変位するように相対回動させられ、操作ペダルの踏部が運転席側へ突き出す可能性があるが、上記ストッパが設けられることにより、そのようなペダルブラケットの回動や操作ペダルの変位が確実に防止されるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、例えばブレーキブースタのオペレーティングロッドが操作ペダルの上下の中間位置に連結される常用ブレーキ用のブレーキペダルに好適に適用されるが、アクセルペダルやクラッチペダル、パーキング用ブレーキペダルなど他の車両用ペダルにも適用され得る。
【0013】
ペダルブラケットは、例えば前記複数の取付部を介してダッシュパネルに対して略平行となる姿勢で一体的に固定される平板状のベースプレート部を有して構成され、支持部は、例えば互いに略平行となる姿勢でベースプレート部に対して略垂直に設けられた一対の側板にて構成される。そして、操作ペダルは、その一対の側板に跨がって略水平に配設される支持軸に、その軸心まわりの回動可能に配設される。
【0014】
ペダルブラケットは、例えば第3発明のように合成樹脂材料にて一体成形されたものが好適に用いられるが、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽金属材料にて構成することもできるし、従来のスチール製のペダルブラケットに適用することも可能である。取付部は、ペダルブラケットと一体に設けることもできるが、金属材料などで別体に構成して圧入等により一体的に固設するようにしても良い。
【0015】
切り離し部は、例えば所定深さの溝やスリットなどを設けて破断し易くした部分で、例えば上側取付部がペダルブラケットから完全に分離するように構成されるが、上側取付部の周囲がコの字形状或いはU字形状等に破断して部分的に切り離されることにより、その上側取付部の周辺部分がダッシュパネルから離間することを許容するものでも良い。要するに、上側取付部がダッシュパネルに固定された状態で、その周囲の少なくとも一部が切り離されることにより、ペダルブラケットが下側取付部を支点として先端側が下方へ変位するように所定量だけ回動できるようになっておれば良い。
【0016】
ガイド部材を介してペダルブラケットの先端側を押し下げる車体側部材は、車両前方からの大荷重入力時に運転席側すなわち車両後方側へ変位する可能性がダッシュパネルに比較して少ないもので、インパネリインフォースメント(インストルメントパネルの補強部材)の他カウルなどが好適に用いられ、その車体側部材とダッシュパネルとの相対変位に基づいてペダルブラケットの先端側が下方へ押し下げられる。ダッシュパネルは、車室内とエンジンルームとを区切る隔壁である。
【0017】
ガイド部材は、例えばペダルブラケットおよび車体側部材の何れか一方に設けられ、他方と係合させられることにより、ペダルブラケットの先端部を所定の移動軌跡に従って滑らかに下方へ変位させるように、スライド面等を有して構成されるが、ペダルブラケットの先端部と車体側部材とを連結するとともに、相対移動に伴ってペダルブラケットを下方へ押し下げるリンクなどでも良い。
【0018】
ペダルブラケットの先端部と車体側部材は、始めから相対移動可能であっても良いが、連結装置により連結してペダルブラケットを位置決めしておくとともに、ペダルブラケットに車両後方側へ向かって所定の荷重が作用した場合に連結が解除され、車体側部材に対して相対移動させられるようにしても良い。連結装置は、所定の荷重で破断するボルトやその他の破断部材、ボルトの締結荷重などで摩擦係合させられるとともに所定の荷重でスリップしてスリット等から抜け出す摩擦係合部材、或いは所定の荷重で変形して相対変位を許容する変形部材などを有して構成される。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1の(a) は、本発明が適用された常用ブレーキ用のブレーキペダル装置10を示す右側面図で、このブレーキペダル装置10は、エンジンルームと車室内とを区切るように上下に設けられたダッシュパネル12に一体的に固設されたペダルブラケット14と、そのペダルブラケット14に略水平で且つ車両幅方向と略平行に配設された支持軸16と、その支持軸16に軸心まわりの回動可能に配設された操作ペダル18とを備えている。操作ペダル18は、上端部において支持軸16に回動可能に取り付けられており、下端部に設けられた踏部32が車両前方側(図1の右方向)へ踏込み操作されることにより、上下の中間位置に連結ピン34を介して連結されたブレーキブースタ36のオペレーティングロッド38を前方へ押圧してブレーキ力を発生させる。
【0020】
ペダルブラケット14は、平板状のベースプレート部20と、互いに水平方向へ隔てて略平行となる姿勢でベースプレート部20に対して略垂直に設けられた一対の側板22と、断面がコの字形状を成すように側板22の上端縁を接続する背板24とを備えており、ベースプレート部20は、上下に離間して一対ずつ設けられた上側取付部26および下側取付部28を介して、ダッシュパネル12に対して略平行となる姿勢で一体的に固定されている。一対の側板22は支持部に相当するもので、ダッシュパネル12に取り付けられた状態において運転席側へ向かって斜め上方へ延び出すようにベースプレート部20に設けられており、前記支持軸16は、これ等一対の側板22に跨がって配設されている。
【0021】
このペダルブラケット14は、ガラス繊維強化樹脂等の合成樹脂材料にて一体成形されたもので、側板22には多数のリブが設けられて所定の剛性が得られるようになっている。取付部26、28は、図1(c) に示すように挿通孔を有する円筒状の金属部品で、ベースプレート部20に一体的に圧入固定されている。ダッシュパネル12を挟んでペダルブラケット14と反対側、すなわちエンジンルーム側には、前記ブレーキブースタ36が配設されており、取付部26、28を挿通させられた図示しない共通のボルトにより、ダッシュパネル12を挟んでペダルブラケット14と一体的に固定されるようになっている。
【0022】
また、ペダルブラケット14の先端部は、図示しないカウルに一体的に固設されたサポート部材42に連結装置40を介して離脱可能に連結されている。連結装置40は、サポート部材42に図示しないボルトにより一体的に固定されたL型の連結金具44と、その連結金具44とペダルブラケット14の先端部、具体的には背部24とを連結するボルト46とから構成されている。図1(b) に示すように、連結金具44には車両後方側へ向かって開口するスリット48が設けられているとともに、ボルト46はそのスリット48内を挿通させられており、そのスリット48の両側においてねじ締結による摩擦係合でペダルブラケット14を連結金具44に連結している。そして、ペダルブラケット14に車両後方側すなわち図1(a) 、(b) における左方向へ所定の離脱荷重が加えられると、スリップしてボルト46がスリット48を通過して連結金具44から抜け出し、図2に示すようにペダルブラケット14とサポート部材42との連結が解除される。
【0023】
上記離脱荷重は、車両前方からの大荷重入力などでダッシュパネル12が運転席側へ変位した場合に、そのダッシュパネル12とカウルとの相対変位に基づいて、カウルに固設されたサポート部材42からペダルブラケット14が離脱することを許容するように定められている。サポート部材42が設けられたカウルは、車両前方からの大荷重入力時に車両後方側へ変位する可能性がダッシュパネル12に比較して少ない車体側部材で、そのカウルとダッシュパネル12との相対変位に基づいてペダルブラケット14がサポート部材42から離脱させられるのである。
【0024】
また、このようにサポート部材42から離脱するペダルブラケット14の先端側、すなわち車両後方側には、ガイド部材50が配設されている。ガイド部材50は、車体側部材であるインパネリインフォースメント52に一体的に固設されているとともに、ペダルブラケット14に対向する側すなわち車両前方側には、車両後方側へ向かうに従って滑らかに下方へ傾斜するスライド面54が設けられている。インパネリインフォースメント52は、前記カウルと同様に車両前方からの大荷重入力時に車両後方側へ変位する可能性がダッシュパネル12に比較して少なく、前記サポート部材42との連結が解除されたペダルブラケット14がダッシュパネル12と共に更に運転席側へ移動させられると、その先端部がガイド部材50のスライド面54と係合させられ、図2に示すようにスライド面54に案内されつつ斜め下方へ押し下げられる。
【0025】
ここで、ペダルブラケット14の一対の側板22には、多数のリブが設けられて剛性が高められているため、上記のようにガイド部材50によってペダルブラケット14の先端部が下方へ押し下げられても、その側板22が座屈することはない一方、本実施例では図1(c) に示すように前記一対の上側取付部26の周囲にそれぞれ点線状に破断用溝56が設けられ、過大な荷重が作用した場合にベースプレート部20が破断して上側取付部26が切り離されるようになっている。すなわち、図2に示すようにサポート部材42から離脱したペダルブラケット14の先端部がガイド部材50のスライド面54に係合させられ、そのスライド面54の作用で下方へ押し下げられると、破断用溝56が破断して上側取付部26が切り離されることにより、ペダルブラケット14が下側取付部28を支点として白抜き矢印Aで示すように先端側が下方へ変位するように回動することを許容するのである。点線状の破断用溝56は、このように所定の荷重で破断して、上側取付部26を切り離すことができる溝深さや間隔で設けられている。
【0026】
そして、このようにペダルブラケット14が下側取付部28を支点として下方へ回動させられると、上端部が支持軸16に連結されている操作ペダル18は、オペレーティングロッド38に連結されている中間部(連結ピン34)を支点として左まわりに回動させられ、踏部32が相対的に車両前方側(図2の右方向)へ移動させられて運転席側への後退が抑制される。オペレーティングロッド38は、ペダルブラケット14の変位(回動)に拘らずダッシュパネル12(ブレーキブースタ36)からの突出寸法が略一定に維持されるため、支持軸16の変位に伴って操作ペダル18は連結ピン34を支点として左まわりに回動させられるのである。図2の一点鎖線は、ペダルブラケット14が回動することなく平行に後退させられた場合の操作ペダル18の姿勢で、ペダルブラケット14が回動させられることにより、実線で示すように下端の踏部32側が車両前方側へ変位するように回動させられる。本実施例では、ガイド部材50、破断用溝56とともに連結装置40を含んで後退防止装置が構成されており、破断用溝56は切り離し部に相当する。
【0027】
一方、このように上側取付部26の周囲に破断用溝56が設けられると、ダッシュパネル12に対するペダルブラケット14の取付強度、すなわち操作ペダル18の支持強度が低下するが、本実施例では、下側連結部28および連結装置40によって所望の取付強度が得られるように、ペダルブラケット14の各部の形状や剛性等が定められている。また、破断用溝56は、ペダルブラケット14がサポート部材42から離脱してガイド部材50に当接した時に破断することが望ましいが、大荷重の入力態様等によってはペダルブラケット14がサポート部材42から離脱する前に破断する可能性があり、その場合はダッシュパネル12に対して相対的にペダルブラケット14の先端側が上方へ変位するように、図1において左まわりに相対回動させられ、却って操作ペダル18の踏部32が運転席側へ変位したり、その後にサポート部材42から離脱してガイド部材50と係合させられた時に、スライド面54に沿って下方へ変位する際の円滑な移動が損なわれたりする可能性がある。このため、本実施例ではベースプレート部20の上端部にダッシュパネル12側へ向かって突き出すストッパ58が設けられ、ダッシュパネル12に当接させられることにより、ペダルブラケット14の先端側が上方へ変位するように回動することを阻止するようになっている。
【0028】
このように、本実施例の車両用ペダルの後退防止装置においては、ペダルブラケット14の上側取付部26の周囲に破断用溝56が設けられ、ダッシュパネル12の後退時の荷重で破断することにより、その上側取付部26をペダルブラケット14から切り離し、ペダルブラケット14がガイド部材50の作用で下側取付部28を支点として図2に矢印Aで示すように先端側が下方へ変位するように回動することを許容するようになっているため、従来のように下側取付部28の座屈でペダルブラケット14を変位させる場合に比較して、ペダルブラケット14の回動量(傾斜角度)が大きくなり、操作ペダル18の後退防止作用が十分に得られるようになる。
【0029】
また、ペダルブラケット14そのものを座屈させる必要がないため、ペダルブラケット14としてはペダル操作の反力に耐えられる十分な剛性が得られるようにすれば良く、合成樹脂材料にて一体に構成されるペダルブラケット14の剛性の設定、すなわち板厚やリブ等の設計が容易である。
【0030】
また、本実施例ではベースプレート部20の上端部にストッパ58が設けられ、ダッシュパネル12に当接させられることによりペダルブラケット14が下側取付部28を支点として先端側が上方へ変位するように回動することを阻止するようになっているため、前記破断用溝56の破断時等に、ペダルブラケット14の先端側が上方へ変位するように回動して操作ペダル18の踏部32が運転席側へ突き出すことが確実に回避される。すなわち、本実施例ではペダルブラケット14の先端部が連結装置40を介してサポート部材42に連結されており、所定の離脱荷重で離脱するようになっているが、大荷重の入力態様等により、ペダルブラケット14がサポート部材42から離脱する前に破断用溝56が破断すると、ペダルブラケット14は相対的に先端側が上方へ変位するように、図1(a) において下側取付部28を支点として右まわりに回動させられ、操作ペダル18の踏部32が運転席側へ突き出す可能性があるが、上記ストッパ58が設けられることにより、そのようなペダルブラケット14の回動や操作ペダル18の変位が確実に防止されるのである。
【0031】
なお、上記実施例では切り離し部として点線状の破断用溝56が設けられていたが、ベースプレート部20を完全に貫通する点線状のスリットを設けても良い。また、図3に示すように、上側取付部26の上側半分を囲むように半円弧形状の切断用溝60を設けたり、同様の形状のスリットを設けたりすることも可能である。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明が適用されたブレーキペダル装置を説明する図で、(a) は右側面図、(b) は連結装置の斜視図、(c) はペダルブラケットに設けられた破断用溝を示す正面図である。
【図2】図1のブレーキペダル装置において、破断用溝が破断して上側取付部が切り離され、ペダルブラケットが下側取付部を支点として回動させられた後退防止装置の作動状態を示す図である。
【図3】破断用溝の別の例を説明する図で、図1(c) に相当する正面図である。
【符号の説明】
【0034】
10:ブレーキペダル装置 12:ダッシュパネル 14:ペダルブラケット 18:操作ペダル 22:側板(支持部) 26:上側取付部 28:下側取付部 32:踏部 50:ガイド部材 52:インパネリインフォースメント(車体側部材) 56、60:破断用溝(切り離し部) 58:ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に離間して設けられた複数の取付部を介してダッシュパネルに一体的に固設されるとともに、運転席側へ向かって延び出す支持部を備えているペダルブラケットと、
該ペダルブラケットの支持部に回動可能に配設され、下端部に設けられた踏部が踏込み操作される操作ペダルと、
前記ペダルブラケットと車体側部材とに関連して設けられ、該ペダルブラケットが前記ダッシュパネルと共に運転席側へ後退させられた時に、該車体側部材との相対変位に伴って該ペダルブラケットの先端側を下方へ押し下げることにより、前記操作ペダルの踏部が運転席側へ後退することを抑制するガイド部材と、
を有する車両用ペダルの後退防止装置において、
前記ペダルブラケットの複数の取付部のうち上側取付部に対応して設けられ、前記ダッシュパネルの後退時の荷重で破断して該上側取付部を該ペダルブラケットから切り離すことにより、該ペダルブラケットが前記ガイド部材の作用で下側取付部を支点として先端側が下方へ変位するように回動することを許容する切り離し部を有する
ことを特徴とする車両用ペダルの後退防止装置。
【請求項2】
前記ペダルブラケットには、前記ダッシュパネルに当接させられることにより、前記切り離し部の破断によって該ペダルブラケットが下側取付部を支点として先端側が上方へ変位するように回動することを制限するストッパが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ペダルの後退防止装置。
【請求項3】
前記ペダルブラケットは、合成樹脂材料にて一体成形されたものである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ペダルの後退防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−8361(P2007−8361A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193429(P2005−193429)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000241496)豊田鉄工株式会社 (104)
【Fターム(参考)】