説明

車両用ポップアップフード装置

【課題】フード後端部の跳ね上げに連動してフード前端部が持ち上げられその位置に保持される車両の車両用ポップアップフード装置の提供。
【解決手段】車両用ポップアップフード装置10は、フード後部ポップアップ機構70と、ロックストライカ22とラッチ46を有するフードロック機構20と、フード前部ポップアップ機構26を備えている。フード前部ポップアップ機構26は傾斜軸部30と台形状軸部32を有する。ロックストライカ22の水平軸部24aは第1保持部H1を構成し、台形状軸部32の上軸部32aは第2保持部H2を構成する。歩行者が車両に衝突した時、フード後端部16が跳ね上げられそれに連動してフード前端部14が持ち上げられる。歩行者がフード上に倒れ込んも、フード前端部14が持ち上げられてフード12とフード下方の剛体部品との間隔が拡大されているので歩行者が剛体部品Rに底付きしない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ポップアップフード装置に関し、とくに歩行者の車両衝突時にフード後端部が跳ね上げられた時それに連動してフード前端部も持ち上げられるようにした車両用ポップアップフード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は比較ポップアップフード装置を示している。比較ポップアップフード装置100では、円Ccを拡大して示すように、フード112の前端部114にロックストライカ122とラッチ146とからなるロック機構120が設けられている。また、フードの後端部116にアクチュエータ172とヒンジ180からなるフード後部ポップアップ機構170が設けられている。歩行者の車両との衝突時に、アクチュエータ172が作動してフード後端部116が車両後方斜め上方に跳ね上げられ、それに連動してフード前端部114がほぼ水平に車両後方に移動されてラッチ146がロックストライカ122の前部のポケット部122aに入る。ついで、歩行者がフード112に倒れ込んできて歩行者からの荷重がフード112にかかっても、ラッチ146とロックストライカ122のポケット部112aが上下方向に係合しているので、フード前部114が下方に移動しない。しかし、フード前端部114の持ち上げ機構がないので、フード112とエンジンコンパートメント内剛体部品Rとの間隔はほとんど拡大されず、歩行者がフード112上に倒れ込んできた時にフード112の変形によって歩行者頭部が剛体部品Rに底付きするおそれがある。
【0003】
特許文献1は、フード前端部裏面側に固着したストライカの底辺軸部を車両前方斜め上方に傾斜させることで、フード後端部に設けたアクチュエータによるフード後端部の車両前方斜め上方への跳ね上げに連動してフード前端部を車両前方斜め上方に移動させ、エンジンコンパートメント内剛体部品とフードとの間隔を拡大させ、歩行者頭部のエンジンコンパートメント内剛体部品への底付きを抑制した車両用ポップアップフード装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−001949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の従来装置には、つぎの問題がある。
フード前端部が車両前方斜め上方に移動する構成となっているため、車両に衝突した歩行者がフードに倒れ込んできてフード前端部に車両後方斜め下方の荷重がかかった時に、持ち上がっていたフード前端部が元の位置に戻る方向に移動し、フードとエンジンコンパートメント内剛体部品との間隔が縮小してしまい、歩行者保護効果が低減する。
【0006】
本発明の目的は、歩行者が車両に衝突した時に、フード後端部の跳ね上げに連動してフード前端部が持ち上げられてフードとエンジンコンパートメント内剛体部品との上下間隔が増大され、確保される車両用ポップアップフード装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の車両用ポップアップフード装置(10)は、
フード(12)の後端部の下面側に設けられ、車両前後方向に沿った鉛直面内で前方から後方に回転するヒンジ(80)とフード(12)を持ち上げるアクチュエータ(72)とを有するフード後部ポップアップ機構(70)と、
フード(12)の前端部の下面に固定され車両前後方向に沿った鉛直面内で屈曲するロックストライカ(22)と、車体の前端部に設けられ車両左右方向に沿った鉛直面内で回動可能なラッチ(46)と、を有するフードロック機構(20)と、を備え、
ロックストライカ(22)は車両側面視でU字状軸部(24)を有し、該U字状軸部(24)はU字状の底辺に車両前後方向に延びる水平軸部(24a)を有している。
車両用ポップアップフード装置(10)は、さらに、フードロック機構(20)に設けられフード後部ポップアップ機構(70)によるフード後端部(16)の跳ね上げに連動してフード前端部(14)を持ち上げるフード前部ポップアップ機構(26)を備えている。
該フード前部ポップアップ機構(26)ではロックストライカ(22)のU字状軸部(24)の車両前後方向前部に切り欠き部(28)が設けられている。
フード前部ポップアップ機構(26)は、ロックストライカ(22)のU字状軸部(24)の切り欠き部(28)の両端部位から車両前方斜め下方に延びる上傾斜軸部(30a)および下傾斜軸部(30b)からなる傾斜軸部(30)と、該傾斜軸部(30)の下端に接続し車両前後方向に延びる上下軸部(32a、32b)と上下方向に延びる前後軸部(32c、32d)からなる車両側面視で台形状軸部(32)と、を有する。
ロックストライカ(22)の水平軸部(24a)はフード(12)が閉状態にある時にラッチ(46)に保持されてフード(12)を閉状態に保持する第1保持部(H1)を構成し、台形状軸部(32)の上下軸部(32a、32b)の上軸部(32a)はフード後端部(16)が跳ね上げられた時にフード前端部(14)を持ち上げ状態に保持する第2保持部(H2)を構成する。
【0008】
(2)上記(1)の車両用ポップアップフード装置(10)において、ロックストライカ(22)とフード前部ポップアップ機構(26)の傾斜軸部(30)と台形状軸部(32)には、フード前端部(16)に車両後方斜め下方の荷重がかかった時にロックストライカ(22)とフード前部ポップアップ機構(26)の傾斜軸部(30)と台形状軸部(32)を車両後方斜め下方に塑性変形させる変形誘導部(36)が形成されている。
【0009】
(3)上記(1)または(2)の車両用ポップアップフード装置(10)において、フード後端部(16)は、フード跳ね上げ時に、フード後部ポップアップ機構(70)によって、跳ね上げ前位置(P1)から、該跳ね上げ前位置(P1)より車両後方斜め上方にある動的最大持ち上げ位置(P2)に移動され、該動的最大持ち上げ位置(P2)から、跳ね上げ前位置(P1)より車両後方斜め上方で動的最大持ち上げ位置(P2)より車両前方斜め下方にあるポップアップフード作動完了位置(P3)に移動され、
フード前部ポップアップ機構(26)の台形状軸部(32)の一部は、フード後端部(16)の動的最大持ち上げ位置(P2)からポップアップフード作動完了位置(P3)への移動に連動するフード前端部(14)の車両前方斜め下方への移動において、ラッチ(46)に係止してフード前端部(14)のラッチ(46)に対する車両前方斜め下方への相対移動を阻止するストッパ(34)を構成している。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)の何れか1つの車両用ポップアップフード装置(10)において、ラッチ(46)は上アーム(46a)と下アーム(46b)を有し、ロックストライカ(22)のU字状軸部(24)の水平軸部(24a)はフード(12)が閉状態にある時にラッチ(46)の上アーム(46a)と下アーム(46b)との間に位置し、
ラッチ(46)の下アーム(46b)は上アーム(46a)より車両前後方向後方に位置している。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)の車両用ポップアップフード装置では、歩行者が車両に衝突すると、アクチュエータが作動してフード後端部が跳ね上げられ、フード後端部の跳ね上げに連動してフード前端部も車両後方斜め上方に持ち上げられ、第2保持部によりその持ち上げ位置に保持される。
その後、歩行者がフード上に倒れ込んできても、フードとエンジンコンパートメント内剛体部品との間には十分な間隔があり、その間隔は第2保持部により保持されるので、歩行者頭部が剛体部品に底付きせず、歩行者頭部傷害値を低減できる。
【0012】
上記(2)の車両用ポップアップフード装置では、歩行者からの荷重がフード前端部にかかると、ロックストライカとフード前部ポップアップ機構の傾斜軸部と台形状軸部が車両後方斜め下方に塑性変形してエネルギを吸収するので、歩行者頭部が受ける衝撃を低減できる。
【0013】
上記(3)の車両用ポップアップフード装置によれば、台形状軸部の一部がストッパを構成しているので、フード後端部が動的最大持ち上げ位置からポップアップフード作動完了位置まで車両前方斜め下方に若干量移動しても、ラッチの上アームは台形状軸部に留まったままであり、ラッチが外れてフード前端部が下方に下がることはなく、フードとエンジンコンパートメント内剛体部品との間隔は大きいままである。
【0014】
上記(4)の車両用ポップアップフード装置によれば、ラッチの下アームが上アームより車両前後方向後方に位置しているので、車両側面視での上アームと下アームとの上下間隔をU字状軸部の水平軸部の直径より微小量大きい間隔に維持したまま、上アームと下アームとの間を下傾斜軸部が通過することができ、フード前端部を持ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る車両用ポップアップフード装置の概略側面図である。
【図2】図1の円Cpで囲んだフードロック機構とフード前部ポップアップ機構の拡大側面図である。
【図3】図2のフードロック機構とフード前部ポップアップ機構の概略側面図であり、Aはフード後端部が跳ね上げられる前のフード前端部とその近傍部分を、Bはフード後端部が動的最大持ち上げ位置に跳ね上げられた時のフード前端部とその近傍部分を、Cはフード後端部がポップアップフード作動完了位置にある時のフード前端部とその近傍部分を、それぞれ示す。
【図4】図2のフードロック機構の車両前方から見た正面図であり、Aは通常時ロック状態を、Bは通常時ロック解除状態を、それぞれ示す。
【図5】図1のうちフード後部ポップアップ機構の拡大側面図であり、Aは通常時のフード開閉状態を、Bはフード後端部の跳ね上げ状態を、それぞれ示す。
【図6】本発明の実施例1の車両用ポップアップフード装置におけるフードロック機構のロックストライカとフード前部ポップアップ機構の傾斜軸部および台形状軸部の歩行者衝突時の変形状態を示す拡大側面図である。
【図7】本発明の実施例2に係る車両用ポップアップフード装置におけるフードロック機構とフード前部ポップアップ機構の拡大側面図である。
【図8】本発明の実施例2に係る車両用ポップアップフード装置におけるフードロック機構のロックストライカとフード前部ポップアップ機構の傾斜軸部および台形状軸部の歩行者衝突時の変形状態を示す拡大側面図である。
【図9】本発明の実施例1に係る、かつ、本発明の実施例2にも適用可能な、フード後部ポップアップ機構、およびフードロック機構とフード前部ポップアップ機構の配置位置を示した車両の平面図である。
【図10】本発明の実施例1に係る、かつ、本発明の実施例2にも適用可能な、車両用ポップアップフード装置の歩行者頭部傷害値G対頭部移動量S線図である。
【図11】比較車両用ポップアップフード装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る車両用ポップアップフード装置を図1〜図10を参照して説明する。図1〜図6は本発明の実施例1に係わり、前部ポップアップ機構の傾斜軸部および台形状軸部以外の構成は本発明の実施例2にも適用可能である。図7および図8は本発明の実施例2に係わる。図9、図10は本発明の実施例1と実施例れ2の両方に適用される。実施例1、2にわたって互いに同じかまたは類似の構成部分には実施例1、2にわたって同じ符号を付してある。
図中、FRは車両前後方向前方を示し、UPは上方を示す。
【0017】
〔実施例1〕
〔全体概略構成〕
まず、本発明の実施例1に係る車両用ポップアップフード装置を図1〜図6および図9、図10を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の車両用ポップアップフード装置10はフード後部ポップアップ機構70とフードロック機構20とを備えており、さらに、フード前部ポップアップ機構26を備えている。フード12はアウタパネル12aとその下面側のインナパネル12bとを有する。図9に示すように、フード後部ポップアップ機構70はフード後端部の車両左右方向両端部の下面側に設けられ、フードロック機構20およびフード前部ポップアップ機構26は、フード前端部の車両左右方向中央部またはフード前端部の車両左右方向両端部の下面側に設けられる。図9はフードロック機構20およびフード前部ポップアップ機構26がフード前端部の車両左右方向中央部に設けられた場合を示しているが、フードロック機構20およびフード前部ポップアップ機構26はフード前端部の車両左右方向両端部のそれぞれの下面側に設けられてもよい。
【0018】
〔フード後部ポップアップ機構70〕
フード後部ポップアップ機構70は、フード12の後端部16の下面側(裏面側)に設けられ、車両前後方向に沿った鉛直面内で前方から後方に回転するヒンジ80とフード12を持ち上げるアクチュエータ72とを有する。
【0019】
フード後部ポップアップ機構70とその周辺構成を図5のA、Bを参照して説明する。ヒンジ80はほぼV字状をなし、ヒンジ後端部でボデー側に固定されたボデー側ブラケット86に支持軸82まわりに回動可能に支持される。ヒンジ80の前端部84はフード後端部16の下面(裏面)に固定されたフード側ブラケット88の後端部下面に溶接などで結合されている。歩行者が車両に衝突する時以外である通常時には、フード12は図5のAに実線で示した閉位置P1と2点鎖線で示したフード前端部側が持ち上げられる開位置P0との間に回動される。ヒンジ80の前端部84は通常時の開位置では通常時の閉位置より車両後方斜め上方にあり、ヒンジ80には塑性変形は生じない。
【0020】
アクチュエータ72はヒンジ80の近傍に、図示例ではヒンジ80の前方に設けられ、ボデー側取り付けフランジ78に取り付けられている。アクチュエータ72はアクチュエータ72から押し出されフード後端部16を押し上げる押上ロッド74を備えており、押上ロッド74の作動方向は上方に向けられている。押上ロッド74の上端部76は、フード側ブラケット88に固定された受け座部材90の下面に当接されている。押上ロッド74の上端部76は受け座部材90とは固定されておらず、受け座部材90から離れることができる。通常時でフード12が開位置P0にある時には、図5のAに示すように、押上ロッド74の上端部76は受け座部材90から離れる。
【0021】
アクチュエータ72は、図示略のガス発生器を内蔵しており、歩行者が車両前部に衝突したことをバンパに組み付けられたチャンバ型圧力センサなどからなる衝突検知センサが検知すると、ガス発生器を作動させてガスを発生させ、瞬時に押上ロッド74を上昇させ、受け座部材90を介してフード後端部16を跳ね上げる。この時、フード後端部16の移動方向は、押上ロッド74によって上方に持ち上げられること、およびヒンジ80の前端部84が支持軸82まわりに回転することにより、車両後方斜め上方に規制される。
【0022】
図5のBに示すように、フード後端部16は、フード跳ね上げ時にフード後部ポップアップ機構70によって、跳ね上げ前位置P1から動的最大持ち上げ位置P2に移動され、ついで動的最大持ち上げ位置P2からポップアップ作動完了位置P3に移動される。動的最大持ち上げ位置P2はフード後端部16がアクチュエータ72によって持ち上げられオーバシュートした位置であり、ポップアップフード作動完了位置P3はフード後端部16がオーバシュートした位置から反動とフード12の自重で下がりその時ヒンジ80の回動で車両前方に押されるため、ポップアップ作動完了位置P3の車両前方斜め下方にある位置となる。
【0023】
図5のBに示すように、フード後端部16が跳ね上げ前位置P1から動的最大持ち上げ位置P2に跳ね上げられる時および動的最大持ち上げ位置P2からポップアップフード作動完了位置P3に移動される時、ヒンジ前端部84に塑性変形が生じるように、ヒンジ前端部84には板厚や形状を選定することにより剛性を他のヒンジ部分に比べて低下させた塑性変形部92が形成されている。フード後端部16が跳ね上げられた後は、塑性変形したヒンジ80は交換され、アクチュエータ72は未作動のものに交換される。なお、図5において、94はカウルであり、96はウインドシールドガラスである。
【0024】
〔フードロック機構20〕
フードロック機構20は、ロックストライカ22とラッチ機構40とからなる。ここでロックストライカ22とはフード前部ポップアップ機構26の傾斜軸部30および台形状軸部32を含まない部分を指すものとする。
【0025】
ロックストライカ22は、フード12の前端部14の下面(裏面)に固定され車両前後方向に沿った鉛直面内で屈曲する棒状軸体からなる。ロックストライカ22は鋼等の金属丸棒を屈曲させたものから構成される。
ラッチ機構40は、車体の前端部に設けられ車両左右方向に沿った鉛直面内で回動可能に設けられたラッチ46を有する。ラッチ46は上アーム46aと下アーム46bを有する。
【0026】
ロックストライカ22は車両側面視でU字状軸部24を有し、該U字状軸部24はU字状の底辺にラッチ46の車両前後方向にほぼ水平に延びる水平軸部24aを有している。
ロックストライカ22のU字状軸部24は、さらに、水平軸部24aの前端より前方に延びる延長線から上方に隔たった位置から上方に延びフード前端部14に固定される前軸部24bと、水平軸部24aの後端から上方に延びフード前端部14に固定される後軸部24cと、を有する。
通常時のフード12が閉位置にある時には、水平軸部24aは水平軸部24aの前後方向中央部でラッチ46の上アーム46aと下アーム46bとの間に保持され上下移動が規制される。水平軸部24aは、通常時にフード12を閉位置に保持する第1保持部H1を構成する。水平軸部24aは上アーム46aと下アーム46bに対して、車両前後方向に摺動可能である。
【0027】
U字状軸部24の水平軸部24aと前軸部24bとのコーナ部は切り欠かれていて切り欠き部28を構成しており、この切り欠き部28の両端部である水平軸部24a前端部と前軸部24b下端部に、後述するフード前部ポップアップ機構26の傾斜軸部30の上傾斜軸部30aと下傾斜軸部30bがそれぞれ接続している。
【0028】
ラッチ機構40は、図4のA、Bおよび図2に示すように、2枚のラッチベース42、44と、ラッチベース42、44間に設けられた、ラッチ46と、解除レバー52と、引張りばね50と、を有する。
図4のAは通常時でラッチ46がロック位置LPにある状態を示し、図4のBは通常時でラッチ46がロック解除位置LFPにある状態を示す。ロック位置LPでは、上アーム46aと下アーム46bはそれらの間にロックストライカ22の水平軸部24aを保持し、フード前端部14はフード閉状態でロックされる。ロック解除位置LFPでは、ラッチ46の収納凹部46c(後述)が上方に開放され、ロックストライカ22の水平軸部24aは上方に移動可能であり、フード前端部14は上方に開閉可能である。
【0029】
ラッチベース42、43は、車体側に固定され、車両左右方向に沿った鉛直面内に延び、互いに車両前後方向に隔てられている。
ラッチ46は上アーム46aと下アーム46bとを有し、上アーム46aと下アーム46bとは互いに上下に隔たっていて、それらの間の収納凹部46cを有する。上アーム46aは折り曲げ部46gで折り曲げられてラッチ一般部46d(ラッチ46の上アーム46aと下アーム46b以外の部分)よりも車両前後方向前側に位置し、下アーム46bは折り曲げ部46hで折り曲げられてラッチ一般部46dよりも車両前後方向後側に位置する。上アーム46aと下アーム46bとを車両前後方向に互いにオフセットさせた理由は、上アーム46aと下アーム46bとの車両側面視方向の間隔をロックストライカ22の丸棒の直径に保持したまま、傾斜軸部30の下軸部30bが上アーム46aと下アーム46bとの間を通過できるようにするためである。
【0030】
ラッチ46は、車両左右方向に沿った鉛直面内で支持ピン48まわりに回動可能である。ラッチ46は支持ピン48を中心にして上アーム46aおよび下アーム46bと反対側に延びるばね係合アーム46eを有している。ばね係合アーム46eは一端がラッチベース42、44に係合された引張りばね50の他端と係合されている。引張りばね50はラッチ46を図4のA、Bで時計まわり方向に付勢している。
ラッチ46が図4のAに示したロック位置LPにある時、下アーム46bの係合アーム46eの先端部46fが解除アーム52の下端係止部52aに係止して、ラッチ46はロック位置LPに保持される。
【0031】
解除レバー52は支持ピン54まわりに回動可能に設けられ、図示略のばねにより図4のA、Bにおいて反時計まわり方向に付勢されている。解除レバー52は、下端係止部52aと、上端係止部52bと、支持ピン54を間にして下端係止部52aと反対側で下方に延びる操作アーム52cと、を有している。操作アーム52cに対向してコンジット56が設けられている。車両の運転席に配置される図示しない操作レバーに接続された操作ワイヤ58がコンジット56を挿通して操作アーム52cまで延び、操作アーム52cに連結されている。
【0032】
操作ワイヤ58を操作して操作アーム52cを引張ると、解除レバー52が時計まわり方向に回動され、下アーム46bの先端部46fと解除アーム52の下端係止部52aとの係止が外れる。それによって、ラッチ46は引張りばね50に引張られて図4のBに示すロック解除位置LFPまで回動し、下アーム46bの先端部46fが解除アーム52の上端係止部52bに係止して回動が止まる。ロック解除位置LFPではラッチ46の収納凹部46cが上方に開放され、ロックストライカ22の水平軸部24aは上方に移動でき、フード12の前端部を図5のAに2点鎖線で示すように上方に開くことが可能となり、フード12が開閉される。
【0033】
ロックストライカ22の水平軸部24aがラッチベース42、44と干渉せずに上下動が可能となるように、ラッチベース42、44にはラッチベース上端から下方に向かって延びる切り込み60、62が形成されている。車両前後方向後側のラッチベース44の切り込み62の深さは、フード12が閉位置にある時に、ロックストライカ22の水平軸部24aの下端が切り込み62の下端部62aに接触する深さかそれより若干量深い深さとされている。車両前後方向前側のラッチベース42の切り込み60の深さは、後側のラッチベース44の切り込み62の深さより深くしてあり、フード跳ね上げ時に車両前後方向後方に移動する台形状軸部32が切り込み60の下端部60aに干渉することなく切り込み60を通過することができる深さとしてある。
【0034】
通常時においてフード12を閉める時には、ロックストライカ20の水平軸部24aをラッチ46の下アーム46b上に乗せ、図4のBの状態にする。ついで、フード前端部14を押し下げ、水平軸部24aで下アーム46bを下方に押し、ラッチ46を支持ピン48まわりに反時計まわりに回動させて、引張りばね50を引張り、かつ下アーム46bで解除レバー52の下端部を押して解除レバー52を支持ピン54まわりに時計まわりに回動させ、図4のAのロック状態LPにする。
【0035】
〔フード前部ポップアップ機構26〕
フード前部ポップアップ機構26は、フードロック機構20に設けられ、フード後部ポップアップ機構70によるフード後端部16の跳ね上げに連動してフード前端部14を持ち上げる機構からなる。
【0036】
フード前部ポップアップ機構26では、ロックストライカ22のU字状軸部24の車両前後方向前部に切り欠き部28が設けられている。また、フード前部ポップアップ機構26では、ラッチ46の上アーム46aと下アーム46bが車両前後方向にオフセットされ、下アーム46bが上アーム46aより後方に位置している。さらに、前側ラッチベース42の切り込み60の深さが後側ラッチベース44の切り込み62の深さより深くしてある。これらの切り欠き部28、上アーム46aと下アーム46bとのオフセット構成、前側ラッチベース42の切り込み60を深くした構成は、フード前部ポップアップ機構26をとる前提構成となっており、フード前部ポップアップ機構26の一部を構成するといってもよい。
【0037】
フード前部ポップアップ機構26は、ロックストライカ22のU字状軸部24の切り欠き部28の両端部位から車両前方斜め下方に延びる上下の傾斜軸部30a、30bを有する傾斜軸部30と、該上下の傾斜軸部30a、30bの下端に接続し車両前後方向に延びる上下軸部32a、32bと上下方向に延びる前後軸部32c、32dを有する台形状軸部(四辺形軸部と云ってもよい)32と、を有する。
上傾斜軸部30aと前軸部24bとの交点は通常時のラッチ46の上アーム46aの上端より上方にあり、図2において上アーム46aが上傾斜軸部30a側に相対移動した時に上傾斜軸部30aに当たり、上傾斜軸部30aに案内されて車両前方斜め下方に移動するようになっている。
【0038】
台形状軸部32の上軸部32aはフード12が持ち上げられた時にフード前端部14を持ち上げ位置に保持する第2保持部H2を構成する。第2保持部H2は前述の第1保持部H1より下方に位置する。
【0039】
ロックストライカ22とフード前部ポップアップ機構26の傾斜軸部30および台形状軸部32には、フード前端部14に歩行者からの車両後方斜め下方の荷重がかかった時に、ロックストライカ22とフード前部ポップアップ機構26の傾斜軸部30および台形状軸部32を車両後方斜め下方に塑性変形させる変形誘導部36が形成されている。図6では、変形誘導部36はロックストライカ22とフード前部ポップアップ機構26の傾斜軸部30および台形状軸部32の角部に設けた切り欠きから構成されている。変形誘導部36は切り欠き以外に丸棒の直径を局部的に小さくしたもの等から構成されてもよい。
【0040】
図2に示すように、フード前部ポップアップ機構26の台形状軸部32の一部で、上軸部32aから該上軸部32aに接続する傾斜軸部30aまたは30bへの移行部の角部とその近傍部は、フード後端部16の動的最大持ち上げ位置P2からポップアップフード作動完了位置P3への移動に連動するフード前端部14の車両前方斜め下方への移動において、ラッチ46の上アーム46aに係止して、フード前端部14のラッチ46に対する車両前方斜め下方への相対移動を阻止するストッパ34を構成している。
以上の構成は、本発明の実施例1と実施例2に共通な構成である。
【0041】
本発明の実施例1はさらにつぎの構成を有する。
図1〜図3に示すように、フード前部ポップアップ機構26の台形状軸部32が傾斜軸部30の下端から車両前後方向後方に折れ曲がって車両前後方向後方に延びている。台形状軸部32の前軸部32cは傾斜軸部30の上軸部30aの下端に接続して下方に延び、下軸部32bは前軸部32cの下端から車両前後方向後方に延びている。台形状軸部32の上軸部32aは傾斜軸部30の下軸部30bの下端から車両前後方向後方に延び、後軸部32dは上軸部32aの後端から下方に延びて下端で下軸部30bの後端に接続する。
台形状軸部32の上軸部32aは第2の保持部H2を構成し、台形状軸部32の上軸部32aの前端部から傾斜軸部30の下軸部30bへの移行部はストッパ34を構成している。
【0042】
つぎに、本発明の実施例1の作用、効果を説明する。
通常時には、アクチュエータ72は作動せず、図5のAに示すようにフード12はヒンジ80の支持ピン82まわりに回動されて閉位置P1と開位置P0との間にフード前端部14が開閉される。フード12が閉位置P1にある時には、ラッチ46は図4のAのロック位置LPにある。フード12は開位置P0をとるには、ラッチ46が図4のBのロック解除位置LFPに回動されなければならない。ラッチ46がロック解除位置LFPにある時に、フード前端部14が上下に開閉される。
【0043】
歩行者が車両前部に衝突した時には、まず、アクチュエータ72が作動され、歩行者がフード12上に倒れかかってくる前に、図1および図5のBに示すように、フード後端部16が跳ね上げ前位置P1から動的最大持ち上げ位置P2を経由してポップアップフード作動完了位置P3に跳ね上げられる。それに連動してフード前端部14が図1および図3に示すように、図3のAの跳ね上げ前位置から、フード後端部16の動的最大持ち上げ位置P2に対応する図3のBの前端部14の最大持ち上げ位置を経由して、フード後端部16のポップアップフード作動完了位置P3に対応する図3のCの前端部14のポップアップフード作動完了位置に持ち上げられる。
【0044】
フード前端部14の持ち上げの作動をさらに詳細に説明する。
フード前端部14の持ち上げ時に、実際はフード12に固定されたロックストライカ22とロックストライカ22に接続されたフード前部ポップアップ機構26がラッチ46の上アーム46aと下アーム46bに対して車両後方斜め上方に移動するが、図2は、ロックストライカ22とフード前部ポップアップ機構26を固定し、ラッチ46の上アーム46aと下アーム46bがロックストライカ22とフード前部ポップアップ機構26に対して車両前方斜め下方に相対移動する態様で示しており、上アーム46aと下アーム46bの、ロックストライカ22とフード前部ポップアップ機構26に対する移動軌跡を示している。
【0045】
図2において、フード前端部持ち上げ前はラッチ46の上アーム46a、下アーム46bはa1、b1の位置にある。車両側面視で上アーム46aの下端は水平軸部24aの上端に車両前後方向に摺動可能に接触し、下アーム46bの上端は水平軸部24aの下端に車両前後方向に摺動可能に接触する。この状態は、図3のAの状態に対応し、かつ、フード後端部16が図5のBの通常時位置P1にある状態に対応する。
【0046】
フード前端部持ち上げ作動が開始すると、上アーム46a、下アーム46bはa2、b2の位置に移動して上アーム46aが上傾斜軸部30aに当たるか、または下アーム46bが下傾斜軸部30bに当たる。ついで、上アーム46aが上傾斜軸部30aにガイドされるか、または下アーム46bが下傾斜軸部30bにガイドされて、上アーム46a、下アーム46bは斜め下方に移動し、上アーム46aが台形状軸部32の前軸部32cに当たるか、または下アーム46bが台形状軸部32の後軸部32dに当たるかして、ラッチ46の傾斜軸部30に対する車両前方への相対移動が止まる。この時上アーム46a、下アーム46bはa3、b3の位置にある。ついで、上アーム46a、下アーム46bは台形状軸部32の前軸部32cと後軸部32dのいずれか一方にガイドされて下方に移動し、上アーム46aが台形状軸部32の下軸部32bに当たって止まる。この時上アーム46a、下アーム46bはa4、b4の位置にある。この状態は、図3のBの状態に対応し、かつ、フード後端部16が図5のBの動的最大持ち上げ位置P2にある状態に対応する。
【0047】
ついで、フード後端部16が図5のBの動的最大持ち上げ位置P2からポップアップフード作動完了位置P3に移動するのに連動して、図2において上アーム46a、下アーム46bが台形状軸部32に対して相対的に後方斜め上方に移動し、上アーム46aの上端が台形状軸部32の上軸部32aの下面に当たって止まる。この時上アーム46a、下アーム46bはa5、b5の位置にある。この状態は、図3のCの状態に対応し、かつ、フード後端部16が図5のBのポップアップフード作動完了位置P3にある状態に対応する。
【0048】
フード後端部16がポップアップフード作動完了位置P3にありフード前端部14が図3のCにある状態では、ラッチ46の上アーム46aの上端は台形状軸部32の上軸部32aの下面に接触している。歩行者との衝突後歩行者がフード12上に倒れ込んできて台形状軸部32の上軸部32aに車両後方斜め下方への荷重がかかっても、上軸部32aからなる第2の保持部H2が上アーム46aによって下方から支持されているので、フード前端部14は下方に移動せず、歩行者頭部はエンジンコンパートメント内剛体部品Rに底付きしない。
図10は歩行者頭部傷害値G対頭部移動ストロークS特性線図を示し、実線が本発明の装置10の場合を、点線が比較装置100の場合を示す。図10に示すように、実線で示した本発明の特性線では、フード前端部持ち上げにより歩行者頭部のエンジンコンパートメント内剛体部品Rへの底付きが無く、点線で示した比較装置100の底付きによる障害値ピークが無くなり、歩行者頭部障害値Gが低下する。
【0049】
台形状軸部32の上軸部32aの傾斜軸部30への移行部にはストッパ34が形成されているので、歩行者との衝突時に台形状軸部32の上軸部32aに車両後方斜め下方への荷重がかかっても、上アーム46aが台形状軸部32の上軸部32aから外れて傾斜軸部30へと移動することはない。したがって、フード12とエンジンコンパートメント内剛体部品Rとの間隔は大きいままに保たれる。
【0050】
また、ラッチ46の下アーム46bが上アーム46aより車両前後方向後方に位置しているので、上アーム46aと下アーム46bとの車両側面視での上下間隔をU字状軸部24の水平軸部24aの直径より微小量大きい間隔に維持したまま、上アーム46aと下アーム46bとの間を下傾斜軸部30bが通過することができ、フード前端部14を持ち上げることができる。
【0051】
また、ロックストライカ22に切り欠き部28を設けたこと、切り欠き部28にフード前部ポップアップ機構26を接続したこと、上アーム46aと下アーム46bを車両前後方向に互いにオフセットしたこと、前側切り込み60を深くしたこと、以外の構成は、図11の比較装置100の構成とほぼ同じである。したがって、比較装置100に対して部品点数の増加や組み付け工数の増加は伴なわず、本質的にコストアップを伴わずに、フード前端部14を持ち上げることができるようになる。
【0052】
ストライカ22とフード前部ポップアップ機構26に変形誘導部36が形成されている場合は、歩行者からの荷重がフード前端部14にかかると、ストライカ22とフード前部ポップアップ機構26が車両後方斜め下方に塑性変形してエネルギを吸収するので、歩行者頭部への衝撃を低減できる。
以上の作用、効果は本発明の実施例1と実施例2との共通の作用、効果である。
【0053】
本発明の実施例1は、さらにつぎの作用、効果を有する。
図1〜図3に示すように、フード前部ポップアップ機構26の台形状軸部32が傾斜軸部30の下端から車両前後方向後方に折れ曲がって車両前後方向後方に延びているので、フード後端部16が跳ね上げ時に動的最大持ち上げ位置P2からポップアップフード作動完了位置P3に移動する時、ラッチ46の上アーム46aが台形状軸部32の上軸部32aと後軸部32dとのコーナ部に食い込む方向に台形状軸部32に対して相対移動するので、上アーム46aが上軸部32aから外れることが抑制される。その結果、フード前端部14を上アーム46aにより安定して保持できる。
【0054】
〔実施例2〕
つぎに、本発明の実施例2を説明する。本発明の実施例1の説明で、本発明の実施例1と実施例2に共通の構成、作用、効果であるとした部分は、本発明の実施例2にも準用される。
本発明の実施例2は、さらにつぎの構成、作用、効果を有する。
構成については、図7および図8に示すように、フード前部ポップアップ機構26の台形状軸部32が傾斜軸部30の下端から車両前後方向前方に折れ曲がって車両前後方向前方に延びている。台形状軸部32の後軸部32dは傾斜軸部30の上傾斜軸部30aの下端に接続して下方に延び、上傾斜軸部32aは後軸部32dの上端から車両前後方向前方に延びている。台形状軸部32の下軸部32bは傾斜軸部30の下傾斜軸部30bの下端から車両前後方向前方に延び、前軸部32cは下傾斜軸部32bの前端から上方に延びて上端で上軸部30aの前端に接続する。
【0055】
台形状軸部32の上軸部32aは第2の保持部H2を構成し、台形状軸部32の後軸部32dは上傾斜軸部30aの後端より下方に突出してストッパ34を構成している。
台形状軸部32の下軸部32bは前部で車両前方斜め上方に傾斜していることが望ましい。その場合は、下軸部32bの前部の上面は下軸部32bの後部の上面より所定量dだけ高い位置にあり、下軸部32bの後部の下面は所定量dだけ上方に削られていて、上アーム46aが台形状軸部32に対して相対的に前方に移動する時下アーム46bの上端が下軸部32bの後部の下面に干渉しないようにしてある。
【0056】
実施例2におけるフード前端部14の持ち上げの作用は、図7に示すとおりである。実際はラッチ46が固定されていてロックストライカ22およびフード前部ポップアップ機構26が車両後方斜め上方に移動するが、図7はロックストライカ22およびフード前部ポップアップ機構26を固定し、ラッチ46を相対移動させた状態で示している。
【0057】
図7において、通常時には上アーム46aは位置a1にあり、下アーム46bは位置b1にある。跳ね上げ作動が開始すると、上アーム46aは位置a1から、位置a2、位置a3、位置a4を経て位置a5に至り、下アーム46bは位置b1から、位置b2、位置b3、位置b4を経て位置b5に至る。フード後端部16が動的最大持ち上げ位置P2にある時には、上アーム46aは位置a4にあり、下アーム46bは位置b4にある。フード後端部16がポップアップフード作動完了位置P3にある時には、上アーム46aは位置a5にあり、下アーム46bは位置b5にある。
【0058】
実施例2の効果については、実施例2では、台形状軸部32が傾斜軸部30の下傾斜軸部32bより車両後方に突出していないので、図7で下アーム46bが下軸部32bに沿って位置b2から位置b3に台形状軸部32に当たることなく移動でき、ラッチ46のフード前部ポップアップ機構26に対する相対移動およびフード前部14の持ち上げが円滑に行われる。
【0059】
上アーム46aが位置a5にある状態では、フード前端部14は持ち上がっており、また後軸部32dからなるストッパ34によって上アーム46aの台形状軸部32から傾斜軸部30の移動が拘束されているので、この状態で衝突した歩行者がフード12上に倒れ込んできた時に、歩行者頭部はフード下方の剛体部品Rに底付きせず、またフード前端部14が下方に移動することもない。
【符号の説明】
【0060】
10 車両用ポップアップフード装置
12 フード
14 フード前端部
16 フード後端部
20 フードロック機構
22 ロックストライカ
24 U字状軸部
24a 水平軸部
26 フード前部ポップアップ機構
28 切り欠き部
30 傾斜軸部
30a 上傾斜軸部
30b 下傾斜軸部
32 台形状軸部
32a 上軸部
32b 下軸部
32c 前軸部
32d 後軸部
34 ストッパ
36 変形誘導部
40 ラッチ機構
46 ラッチ
46a 上アーム
46b 下アーム
70 フード後部ポップアップ機構
72 アクチュエータ
80 ヒンジ
H1 第1保持部
H2 第2保持部
P1 跳ね上げ前位置
P2 動的最大持ち上げ位置
P3 ポップアップフード作動完了位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードの後端部の下面側に設けられ、車両前後方向に沿った鉛直面内で前方から後方に回転するヒンジとフードを持ち上げるアクチュエータとを有するフード後部ポップアップ機構と、
フードの前端部の下面に固定され車両前後方向に沿った鉛直面内で屈曲するロックストライカと、車体の前端部に設けられ車両左右方向に沿った鉛直面内で回動可能なラッチと、を有するフードロック機構と、を備え、
前記ロックストライカは車両側面視でU字状軸部を有し、該U字状軸部はU字状の底辺に車両前後方向に延びる水平軸部を有している、
車両用ポップアップフード装置であって、
前記車両用ポップアップフード装置は、さらに、前記フードロック機構に設けられ前記フード後部ポップアップ機構によるフード後端部の跳ね上げに連動してフード前端部を持ち上げるフード前部ポップアップ機構を備え、
前記フード前部ポップアップ機構では前記ロックストライカの前記U字状軸部の車両前後方向前部に切り欠き部が設けられており、
前記フード前部ポップアップ機構が、前記ロックストライカの前記U字状軸部の前記切り欠き部の両端部位から車両前方斜め下方に延びる上傾斜軸部および下傾斜軸部からなる傾斜軸部と、該傾斜軸部の下端に接続し車両前後方向に延びる上下軸部と上下方向に延びる前後軸部からなる台形状軸部と、を有し、
前記ロックストライカの水平軸部はフードが閉状態にある時にラッチに保持されてフードを閉状態に保持する第1保持部を構成し、前記台形状軸部の上下軸部の上軸部はフード後端部が跳ね上げられた時にフード前端部を持ち上げ状態に保持する第2保持部を構成する車両用ポップアップフード装置。
【請求項2】
前記ロックストライカと前記フード前部ポップアップ機構の傾斜軸部と台形状軸部には、前記フード前端部に車両後方斜め下方の荷重がかかった時に前記ロックストライカと前記フード前部ポップアップ機構の傾斜軸部と台形状軸部を車両後方斜め下方に塑性変形させる変形誘導部が形成されている請求項1記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項3】
フード後端部は、フード跳ね上げ時に、前記フード後部ポップアップ機構によって、跳ね上げ前位置から、該跳ね上げ前位置より車両後方斜め上方にある動的最大持ち上げ位置に移動され、該動的最大持ち上げ位置から、跳ね上げ前位置より車両後方斜め上方で前記動的最大持ち上げ位置より車両前方斜め下方にあるポップアップフード作動完了位置に移動され、
前記フード前部ポップアップ機構の前記台形状軸部の一部は、前記フード後端部の前記動的最大持ち上げ位置から前記ポップアップフード作動完了位置への移動に連動する前記フード前端部の車両前方斜め下方への移動において、前記ラッチに係止して前記フード前端部の前記ラッチに対する車両前方斜め下方への相対移動を阻止するストッパを構成している、請求項1または請求項2記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項4】
前記ラッチは上アームと下アームを有し、前記ロックストライカのU字状軸部の水平軸部はフードが閉状態にある時に前記ラッチの上アームと下アームとの間に位置し、
前記ラッチの前記下アームは前記上アームより車両前後方向後方に位置している請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用ポップアップフード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−23148(P2013−23148A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162300(P2011−162300)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】