説明

車両用ミラー制御装置及びその制御方法

【課題】駐車車両を発進させて走行車線に合流する際に走行車線の後方状況を運転者が容易に確認することができるようにする。
【解決手段】制御部14が、車載センサー3からの信号情報12aに基づいて車両の駐車状態及び発進を認識し、車両の駐車状態を認識した後に車両の発進状態を認識した場合に第1記憶部11又は第2記憶部12に記憶された角度情報11b,12bに基づいてサイドミラー2の鏡面角度を外向きに調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドミラーの鏡面角度を制御する車両用ミラー制御装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、従線を走行している車両が本線に合流する際に本線の後方状況を運転者が容易に確認することができるように、ナビゲーション装置の道路情報に基づいてサイドミラーの鏡面角度を外向きに調整する車両用ミラー制御装置及びその制御方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−199910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の装置及び方法は、上述のとおり、ナビゲーション装置の道路情報を用いるので、ナビゲーション装置が正常に機能しない環境や状況又はナビゲーション装置が搭載されていない車両ではサイドミラーの鏡面角度を制御することができない。また、上記の装置及び方法では、ナビゲーション装置の道路情報に基づいて従線を走行している車両が本線との合流地点に接近していると判断した場合にサイドミラーの鏡面角度を外向きに調整するので、駐車場や路上などに駐車した車両を発進させて走行車線に合流する際には対応することができない。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駐車車両を発進させて走行車線に合流する際に走行車線の後方状況を運転者が容易に確認することができる車両用ミラー制御装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両用ミラー制御装置及びその制御方法は、上記の課題を解決するために、車両の駐車状態を認識した後に車両の発進状態を認識した場合にサイドミラーの鏡面角度を外向きに調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る車両用ミラー制御装置及びその制御方法によれば、車両の駐車状態を認識した後に車両の発進状態を認識した場合にサイドミラーの鏡面角度を外向きに調整するので、運転者は、駐車車両を発進させて走行車線に合流する際に走行車線の後方状況を容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置の構成について図1を用いて説明する。
【0008】
本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置は、図1に示すように、第1記憶部11と、第2記憶部12と、受信部13と、制御部14とで構成されている。
【0009】
第1記憶部11は、不揮発性の記憶媒体であって、サイドミラー2の鏡面角度を制御するための角度制御プログラム11a及びその初期設定の角度情報11bを記憶する。この第1記憶部11としては、たとえば、半導体素子によるROM(Read Only Memory)などが用いられる。なお、角度制御プログラム11aは、後述する制御部14により常時実行される。また、初期設定の角度情報11bには、駐車車両を発進させて走行車線に合流する際に走行車線の後方状況を運転者が容易に確認することができるサイドミラー2の鏡面角度が設定されている。
【0010】
第2記憶部12は、揮発性の記憶媒体であって、後述する、車載センサー3の信号情報12a及びユーザー設定の角度情報12bが格納される。この第2記憶部12としては、たとえば、半導体素子によるRAM(Random Access Memory)などが用いられる。
【0011】
受信部13は、車載センサー3からの信号情報12aを受信する。この信号情報12aとしては、たとえば、セレクトレバー(車両がMT車の場合にはシフトレバー、以下同じ)の位置、エンジンの始動停止及び回転数、トランスミッションのギア段階、運転席側シートベルトの装着の有無、パーキングブレーキの解除、ウインカーレバーの位置、フットブレーキの解除、運転席シートへの着座の有無、運転席側ドアの開閉、車両の走行速度、及び車両の走行距離に関する情報である。なお、受信部13は、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークを介して車載センサー3からの信号情報12aを受信してもよい。
【0012】
制御部14は、車載センサー3の信号情報12aに基づいて車両の駐車状態、発進状態、及び所定走行状態を認識し、これらの認識結果に基づいてサイドミラー2の鏡面角度を制御する。具体的には、制御部14は、運転席側シートベルトの非装着、運転席シートへの非着座、運転席側ドアの開放、及びエンジンの停止に基づいて車両の駐車状態を認識する。また、制御部14は、セレクトレバーのDレンジ位置(車両がMT車の場合には1速位置、以下同じ)、パーキングブレーキの解除、フットブレーキの解除、及びエンジンの始動に基づいて又は車両の走行速度若しくは走行距離に基づいて車両の発進状態を認識する。さらに、制御部14は、ウインカーレバーの非表示位置、トランスミッションのギア段階、セレクトレバーの後退位置、エンジンの回転数、車両の走行速度、又は車両の走行距離に基づいて車両の所定走行状態を認識する。なお、車両の所定走行状態とは、エンジン始動後からの、トランスミッションのギア段階、エンジンの回転数、車両の走行速度、又は車両の走行距離が所定の計測値又は段階に到達した状態及び車両の後退状態であり、たとえば、エンジン始動後からの車両の走行速度が初めて20km/hに到達した状態やエンジン始動後からの車両の走行距離が20mに到達した状態である。制御部14は、また、車載センサー3の信号情報12aを第2記憶部12に随時格納する。さらに、制御部14は、所定の条件によって、車両に設置された鏡面角度調節装置により制御されたサイドミラー2の鏡面角度をユーザー設定の角度情報12bとして第2記憶部12に格納する。
【0013】
なお、第2記憶部12、受信部13、及び制御部14には、イグニッションスイッチからキーが抜かれた状態においても動作するように車載バッテリーからの電力が常時供給されている。
【0014】
つぎに、上記の車両用ミラー制御装置1による鏡面角度の制御処理について図2を用いて説明する。
【0015】
図2は、鏡面角度の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0016】
制御処理は、車両用ミラー制御装置1の電源がオンされたタイミングで開始となり、ステップS101に進む。
【0017】
ステップS101では、制御部14が、第2記憶部12に記憶された信号情報12aに基づいて車両の駐車状態を認識し、制御処理は、車両の駐車状態を制御部14が認識したタイミングでステップS102に進む。
【0018】
ステップS102では、制御部14が、第2記憶部12に記憶された信号情報12aに基づいて車両の発進状態を認識し、制御処理は、車両の発進状態を制御部14が認識したタイミングでステップS103に進む。
【0019】
ステップS103では、制御部14が、第1記憶部11又は第2記憶部12に記憶された角度情報11b,12bに基づいてサイドミラー2の鏡面角度を外向きに調整し、制御処理は、ステップS104に進む。なお、この際、制御部14は、ユーザー設定の角度情報12bが第2記憶部12に記憶されている場合にはこの角度情報12bを使用し、それ以外の場合には、第1記憶部11に記憶された初期設定の角度情報11bを使用する。また、鏡面角度の調整状況は、運転者が目視可能な位置に設置されたインジケーターに表示される。
【0020】
ステップS104では、制御部14が、第2記憶部12に記憶された信号情報12aに基づいて車両の所定走行状態を認識し、制御処理は、車両の所定走行状態を制御部14が認識したタイミングでステップS105に進む。
【0021】
ステップS105では、第1記憶部11又は第2記憶部12に記憶された角度情報11b,12bに基づいて外向きに調整したサイドミラー2の鏡面角度を元の状態に戻し、制御処理は、ステップS106に進む。
【0022】
ステップS106では、制御部14が、ステップS104において認識した所定走行状態が車両の後退状態であったかを、つまり、ステップS104における所定走行状態の認識がセレクトレバーの後退位置に基づくものであったかを検証し、制御処理は、セレクトレバーの後退位置に基づくものであった場合にはステップS102に戻り、その他の信号情報12aに基づく認識であった場合にはステップS101に戻る。
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置1によれば、車載センサー3からの信号情報12aに基づいて車両の駐車状態及び発進状態を認識し、車両の駐車状態を認識した後に車両の発進状態を認識した場合に第1記憶部11又は第2記憶部12に記憶された角度情報11b,12bに基づいてサイドミラー2の鏡面角度を外向きに調整するので、運転者は、駐車車両を発進させて走行車線に合流する際に走行車線の後方状況を容易に確認することができる。
【0024】
すなわち、運転者は、コンビニエンスストアなどの図3に示すような駐車場(斜めに駐車するものを含む)に駐車した車両Aや図4に示すような路上に縦列駐車した車両Bを発進させて走行車線に合流する際に、図3(a)又は図4(a)に示す、通常のサイドミラー2の視野範囲R1ではなく、図3(b)又は図4(b)に示す、外向きに調整されたサイドミラー2の視野範囲R2で走行車線の後方状況を確認することができる。
【0025】
また、本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置1は、ナビゲーション装置の道路情報を用いることなくサイドミラー2の鏡面角度を制御するので、ナビゲーション装置が正常に機能しない環境や状況又はナビゲーション装置が搭載されていない車両においてもサイドミラー2の鏡面角度を制御することができる。
【0026】
さらに、本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置1は、ステアリングの操舵角を検出することがないので、ステアリングの操作と無関係にサイドミラー2の鏡面角度を制御することができる。
【0027】
また、本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置1によれば、第2記憶部12に記憶された、車載センサー3からの信号情報12aに基づいて車両の所定走行状態を認識し、サイドミラー2の鏡面角度を外向きに調整した後に車両の所定走行状態を認識した場合に第1記憶部11又は第2記憶部12に記憶された角度情報11b,12bに基づいて外向きに調整したサイドミラー2の鏡面角度を元の状態に戻すので、運転者は、走行車線に車両が合流した後には車両の後方状況を通常の鏡面角度で確認することができる。
【0028】
さらに、本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置1によれば、制御部14が、第2記憶部12に記憶された、車載センサー3からの信号情報12aに基づいて車両の駐車状態、発進状態、及び所定走行状態を認識するので、新たなセンサーを車両に設置することなく、かつ運転者に特別な操作を強いることなくサイドミラー2の鏡面角度を制御することができる。
【0029】
さらにまた、本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置1によれば、制御部14が、第2記憶部12に記憶された、運転席側シートベルトの非装着、運転席シートへの非着座、運転席側ドアの開放、及びエンジンの停止に基づいて車両の駐車状態を認識するので、アイドリングストップなどの停車と区別してサイドミラー2の鏡面角度を制御することができる。
【0030】
また、本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置1によれば、制御部14が、第2記憶部12に記憶された、セレクトレバーのDレンジ位置、パーキングブレーキの解除、フットブレーキの解除、及びエンジンの始動に基づいて又は車両の走行速度若しくは車両の走行距離に基づいて車両の発進状態を認識するので、車両が実際に発進した際に、サイドミラー2の鏡面角度を外向きに調整することができる。すなわち、運転者は、車両を発進させる直前には車両の周囲の状況を通常の鏡面角度で確認することができる。
【0031】
また、本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置1によれば、制御部14が、第2記憶部12に記憶された、ウインカーレバーの非表示位置、トランスミッションのギア段階、セレクトレバーの後退位置、エンジンの回転数、車両の走行速度、又は車両の走行距離に基づいて車両の所定走行状態を認識するので、車両の走行速度又は走行距離が所定の計測値に到達することなく走行車線に車両が合流した場合や運転者が車両を後退させる場合に外向きに調整したサイドミラー2の鏡面角度を元の状態に戻すことができ、運転者は、走行車線に車両が合流した後や車両を後退させる際には車両の後方状況や周囲の状況を通常の鏡面角度で確認することができる。
【0032】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した一実施形態について説明したが、この実施形態による開示の一部をなす論述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、上記の実施形態に基づいて当業者によってなされる、ほかの実施形態、運用技術、及び実施例などは本発明の範囲にすべて含まれることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態となる車両用ミラー制御装置による、鏡面角度の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】駐車場に駐車した車両を発進させて走行車線に合流する際の、(a)通常のサイドミラーの視野範囲、及び(b)外向きに調整されたサイドミラーの視野範囲を示す説明図である。
【図4】路上に縦列駐車した車両を発進させて走行車線に合流する際の、(a)通常のサイドミラーの視野範囲、及び(b)外向きに調整されたサイドミラーの視野範囲を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 車両用ミラー制御装置
11 第1記憶部(リバース制御手段、外向き制御手段)
12 第2記憶部(駐車/発進/所定走行認識手段、リバース制御手段、外向き制御手段)
13 受信部(駐車/発進/所定走行認識手段)
14 制御部(駐車/発進/所定走行認識手段、リバース制御手段、外向き制御手段)
2 サイドミラー
3 車載センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駐車状態を認識する駐車認識手段と、
車両の発進状態を認識する発進認識手段と、
前記駐車認識手段により車両の駐車状態が認識された後に前記発進認識手段により車両の発進状態が認識された場合にサイドミラーの鏡面角度を外向きに調整する外向き制御手段と
を備えたことを特徴とする車両用ミラー制御装置。
【請求項2】
車両の所定走行状態を認識する所定走行認識手段と、
前記外向き制御手段によりサイドミラーの鏡面角度が外向きに調整された後に前記所定走行認識手段により車両の所定走行状態が認識された場合に該サイドミラーの鏡面角度を元の状態に戻すリバース制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ミラー制御装置。
【請求項3】
前記駐車認識手段が、運転席側シートベルトの非装着、運転席側ドアの開放、運転席シートへの非着座、及びエンジンの停止のいずれかに基づいて車両の駐車状態を認識することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ミラー制御装置。
【請求項4】
前記発進認識手段が、セレクトレバーのDレンジ位置又はシフトレバーの1速位置、パーキングブレーキの解除、フットブレーキの解除、エンジンの始動、車両の走行速度、及び車両の走行距離のいずれかに基づいて車両の発進状態を認識することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ミラー制御装置。
【請求項5】
前記所定走行認識手段が、セレクトレバー又はシフトレバーの後退位置、ウインカーレバーの非表示位置、トランスミッションのギア段階、エンジンの回転数、車両の走行速度、及び車両の走行距離のいずれかに基づいて車両の所定走行状態を認識することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用ミラー制御装置。
【請求項6】
車両の駐車状態及び発進状態を認識し、車両の駐車状態を認識した後に車両の発進状態を認識した場合にサイドミラーの鏡面角度を外向きに調整することを特徴とする車両用ミラーの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−184617(P2009−184617A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29091(P2008−29091)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】