説明

車両用乗員検出装置

【課題】乗員の様々な姿勢を効率良く検出することができる車両用乗員検出装置の提供。
【解決手段】中央背部20と中央背部20の幅方向の両側から膨出する左右一対の側背部21,22とを有するシートバック15と、シートバック15の中央背部20に設けられた第1の乗員検出センサ26と、シートバック15の車両外側の一方の側背部22に設けられた第2の乗員検出センサ27とを備え、第1の乗員検出センサ26が、一方の側背部22における第2の乗員検出センサ27の上方の上部領域に延びる延出部34を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用乗員検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用乗員検出装置として、アンテナ電極をシートバックの中央と側部とに配置し、助手席シートに着座した小人がドア側に凭れかかった寝姿にあることを検出するもの(例えば、特許文献1,2参照)や、一枚のアンテナ電極をシートバックの中央に配置して、助手席シートに着座した小人がドア側に凭れかかった寝姿にあることを検出するもの(例えば、特許文献3参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−334451号公報
【特許文献2】特表2005−510394号公報
【特許文献3】特開2000−85524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の車両用乗員検出装置は、例えば車両のエアバッグ装置の展開にあたって、乗員が適切な保護性能が得られる姿勢にあるのか否かを検出するのに有効である。寝込んだ姿勢のほか、シートの車両外側に横ズレして着座する姿勢等、特に小人は様々な姿勢でシートに着座することが想定される。それらの姿勢を検出できることが望ましいが、乗員の様々な姿勢を検出するために、姿勢それぞれに応じたセンサを設けるのでは、コストが嵩んでしまう。よって、想定される様々な姿勢を少ないセンサで効率良く検出することが求められている。
【0005】
したがって、本発明は、乗員の様々な姿勢を効率良く検出することができる車両用乗員検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、中央背部(例えば実施形態における中央背部20)と該中央背部の幅方向の両側から膨出する左右一対の側背部(例えば実施形態における側背部21,22)とを有するシートバック(例えば実施形態におけるシートバック15)と、該シートバックの前記中央背部に設けられた第1の乗員検出センサ(例えば実施形態におけるアンテナ電極26)と、前記シートバックの前記左右一対の側背部のうち車両外側の一方の側背部(例えば実施形態における側背部22)に設けられた第2の乗員検出センサ(例えば実施形態におけるアンテナ電極27)とを備えた車両用乗員検出装置(例えば実施形態における車両用乗員検出装置10)において、前記第1の乗員検出センサが、前記一方の側背部における前記第2の乗員検出センサの上方の上部領域に延びる延出部(例えば実施形態における延出部34)を備えていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記延出部が、基準となる第1の所定体型を有する乗員(例えば実施形態における乗員H1)がシート(例えば実施形態におけるシート12)に正規姿勢で着座したときの頭部(例えば実施形態における頭部H1h)の位置よりも高く、前記第1の所定体型よりも大きい第2の所定体型を有する乗員(例えば実施形態における乗員H2)が前記シートに正規姿勢で着座したときの頭部(例えば実施形態における頭部H2h)と同等の高さ位置に配置されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記延出部が、前記第2の所定体型の乗員が前記一方の側背部に凭れかかったときの頭部と同等の高さ位置で、かつ前記第2の所定体型の乗員が前記一方の側背部よりも車両外側に配置された車体側壁(例えば実施形態における側部ドア14)に凭れかかったときの頭部の位置よりも高い高さ位置に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、シートバックの中央背部に設けられた第1の乗員検出センサが、シートバックの車両外側の一方の側背部に設けられた第2の乗員検出センサの上方の上部領域に延びる延出部を備えているため、第1の乗員検出センサによるシートバックの中央背部の乗員検出に加えて、第1の乗員検出センサおよび第2の乗員検出センサによって、シートバックの車両外側の一方の側背部における高位置および低位置の乗員検出ができる。したがって、乗員の様々な姿勢を効率良く検出することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、延出部が、基準となる第1の所定体型を有する乗員がシートに正規姿勢で着座したときの頭部の位置よりも高く、第1の所定体型よりも大きい第2の所定体型を有する乗員がシートに正規姿勢で着座したときの頭部と同等の高さ位置に配置されているため、第1の乗員検出センサで乗員検出がなく、第2の乗員検出センサによって乗員検出があることで、第1の所定体型の乗員がシートバックの車両外側の一方の側背部の位置で正規姿勢でいる状態を検出でき、第1の乗員検出センサおよび第2の乗員検出センサの両方によって乗員検出があることで、第2の所定体型の乗員がシートバックの車両外側の一方の側背部の位置で正規姿勢でいる状態を検出できる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、延出部が、第2の所定体型の乗員がシートバックの車両外側の一方の側背部に凭れかかったときの頭部と同等の高さ位置で、かつ第2の所定体型の乗員が前記一方の側背部よりも車両外側に配置された車体側壁に凭れかかったときの頭部の位置よりも高い高さ位置に配置されているため、第1の乗員検出センサで乗員検出がなく、第2の乗員検出センサによって乗員検出があることで、第2の所定体型の乗員が車体側壁に凭れかかっている状態を検出でき、第1の乗員検出センサおよび第2の乗員検出センサの両方によって乗員検出があることで、第2の所定体型の乗員がシートバックの車両外側の一方の側背部に凭れかかっている状態を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置のアンテナ電極が埋設されたシートバックを示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置のアンテナ電極が埋設されたシートバックを示す正面図であって、第1の所定体型の乗員が左右方向中央位置に正規姿勢で着座した状態を示すものである。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置のアンテナ電極が埋設されたシートバックを示す正面図であって、第1の所定体型の乗員が車両外側にずれて正規姿勢で着座した状態を示すものである。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置のアンテナ電極が埋設されたシートバックを示す正面図であって、第1の所定体型の乗員が左右方向中央位置に着座し車両外側の側背部に凭れかかった状態を示すものである。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置のアンテナ電極が埋設されたシートバックを示す正面図であって、第1の所定体型の乗員が左右方向中央位置に着座し側部ドアに凭れかかった状態を示すものである。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置のアンテナ電極が埋設されたシートバックを示す正面図であって、第2の所定体型の乗員が左右方向中央位置に正規姿勢で着座した状態を示すものである。
【図7】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置のアンテナ電極が埋設されたシートバックを示す正面図であって、第2の所定体型の乗員が車両外側にずれて正規姿勢で着座した状態を示すものである。
【図8】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置のアンテナ電極が埋設されたシートバックを示す正面図であって、第2の所定体型の乗員が左右方向中央位置に着座し車両外側の側背部に斜めに凭れかかった状態を示すものである。
【図9】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置のアンテナ電極が埋設されたシートバックを示す正面図であって、第2の所定体型の乗員が左右方向中央位置に着座し側部ドアに凭れかかった状態を示すものである。
【図10】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置を示すブロック図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置のアンテナ電極を複数枚のフィルムで形成した例を示すシートバックの正面図である。
【図13】図12のシートバックの釣り込み部の断面図である。
【図14】アンテナ電極を形成する複数枚のフィルムを示すもので、(a)は分解平面図、(b)は分解正面図である。
【図15】アンテナ電極を複数枚のフィルムで形成した状態を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図16】アンテナ電極を一枚のフィルムで形成した状態を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図17】アンテナ電極を複数枚のフィルムで形成した場合の静電容量を説明するための側面図である。
【図18】アンテナ電極を一枚のフィルムで形成した場合の静電容量を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る車両用乗員検出装置を図面を参照して以下に説明する。
【0014】
図1は、車両の車室内の進行方向右側部分を前方から見た概略図である。なお、以下の説明においては、進行方向左側にハンドルのある車両の車室内の進行方向右側(助手席側)を例にとり説明する。なお、進行方向右側にハンドルのある車両の進行方向右側も同様であり、以下の説明における左右を読み替えれば良い。
【0015】
図1に示すように、シート12の進行方向右横には車両右側の側部ドア(車体側壁)14が近接配置されており、シート12のシートバック15の右端縁部つまり側部ドア14側の端縁部には、前方に膨出することでシート12に着座した乗員と側部ドア14との間に展開するエアバッグ16が所定の高さ位置に配置されている。
【0016】
シートバック15は、左右方向の中央の略一定幅の中央背部20と、この中央背部20の左右方向(幅方向)の両側から前方に若干膨出する左右一対の側背部21,22とを有している。
【0017】
そして、シートバック15には、アンテナ電極25〜27が前面における表面側に埋設されている。
【0018】
アンテナ電極25は、シートバック15の中央背部20の下部に設けられており、中央背部20の幅のほぼ全体に広がる矩形状をなしている。
【0019】
アンテナ電極(第1の乗員検出センサ)26は、小人の姿勢検出用であり、シートバック15の中央背部20の上部に設けられている。アンテナ電極26は、最も下部にあって中央背部20の中央よりも側部ドア14とは反対側に形成された矩形状の下部検出部30と、下部検出部30の上側にあって下部検出部30の側部ドア14とは反対側の端縁部に連続するとともに側部ドア14側の端縁部が下部検出部30よりも側部ドア14側に位置する矩形状の中下部検出部31と、中下部検出部31の上側にあって中下部検出部31の側部ドア14とは反対側の端縁部に連続するとともに側部ドア14側の端縁部が中下部検出部31よりも側部ドア14側に位置する矩形状の中上部検出部32と、中上部検出部32の上側にあって中上部検出部32の側部ドア14とは反対側の端縁部に連続するとともに側部ドア14側の端縁部が中上部検出部32よりも側部ドア14側に位置する略矩形状の上部検出部33とを有している。
【0020】
つまり、中下部検出部31は下部検出部30よりも側部ドア14側に延出し、中上部検出部32は中下部検出部31よりも側部ドア14側に延出し、上部検出部33は中上部検出部32よりも側部ドア14側に延出している。言い換えれば、アンテナ電極26は、これに近接する側部ドア14側の下部が階段状に斜めに切り欠かれた形状をなしている。
【0021】
そして、下部検出部30、中下部検出部31および中上部検出部32は、中央背部20内に設けられているものの、上部検出部33は、その中上部検出部32よりも側部ドア14側に延出する延出部34が、中央背部20から出て、側部ドア14側にある一方の側背部22まで延びている。延出部34の近接する側部ドア14側の下部には、斜めに切り欠かれた切欠形状部35が形成されている。
【0022】
アンテナ電極(第2の乗員検出センサ)27は、小人の頭部検出用であり、シートバック15の左右一対の側背部21,22のうち車両外側の一方の側背部22に設けられている。なお、逆側の側背部21には、アンテナ電極は設けられていない。アンテナ電極27は、下部および中間部を構成する上下に長く幅の狭い検出部38と、上部を構成する、検出部38よりも幅の広い上部検出部39とを有している。ここで、アンテナ電極27は、展開時のエアバッグ16と、高さ方向の位置を重ね合わせている。
【0023】
そして、アンテナ電極26の上部検出部33の延出部34は、車両外側の側背部22におけるアンテナ電極27の上方の上部領域に延びている。つまり、延出部34は、アンテナ電極27に対して、上下方向の位置をずらし、左右方向の位置を重ね合わせている。
【0024】
ここで、図2に示すように、小人であり基準となる第1の所定体型(例えば3歳児の平均体型)を有する乗員H1がシート12に、左右方向の中央位置に真っ直ぐの正規姿勢で着座したとき、アンテナ電極26がこの乗員H1の頭部H1hを検出するようになっている。この状態での乗員H1は、アンテナ電極27では検出されない。
【0025】
そして、延出部34は、図3に示すように、第1の所定体型を有する乗員H1がシート12に、車両外側にずれ延出部34と左右方向の位置を合わせて真っ直ぐの正規姿勢で着座した場合には、この乗員H1の頭部H1hを検出しないように、この状態での頭部H1hの位置よりも高くなっている。この状態での乗員H1は、アンテナ電極27では検出される。
【0026】
加えて、延出部34は、図4に示すように、第1の所定体型の乗員H1がシート12に対し車両外側の側背部22に斜めに凭れかかったときに、この乗員H1の頭部H1hを検出しないように、この状態での頭部H1hの位置よりも高い高さ位置に配置されている。この状態での乗員H1は、アンテナ電極27では検出される。
【0027】
また、延出部34は、図5に示すように、第1の所定体型の乗員H1がシート12に対し車両外側の側背部22よりも車両外側に配置された側部ドア14に凭れかかったときに、この乗員H1の頭部H1hを検出しないように、この状態での頭部H1hの位置よりも高い高さ位置に配置されている。この状態での乗員H1は、アンテナ電極27では検出される。
【0028】
図6に示すように、小人であり第1の所定体型よりも大きい第2の所定体型(例えば6歳児の平均体型)を有する乗員H2がシート12に、左右方向の中央位置に真っ直ぐの正規姿勢で着座したとき、アンテナ電極26がこの乗員H2の頭部H2hを検出するようになっている。この状態での乗員H2も、アンテナ電極27では検出されない。
【0029】
そして、延出部34は、図7に示すように、第2の所定体型を有する乗員H2がシート12に、車両外側にずれ延出部34と左右方向の位置を合わせて真っ直ぐの正規姿勢で着座したときには、この乗員H2の頭部H2hを検出するように、この状態での頭部H2hと同等の高さ位置に配置されている。この状態での乗員H2は、アンテナ電極27でも検出される。
【0030】
加えて、延出部34は、図8に示すように、第2の所定体型の乗員H2がシート12に対し車両外側の側背部22に斜めに凭れかかったときに、この乗員H2の頭部H2hを検出するように、この状態での頭部H2hと同等の高さ位置に配置されている。この状態での乗員H2は、アンテナ電極27でも検出される。
【0031】
また、延出部34は、図9に示すように、第2の所定体型の乗員H2がシート12に対し車両外側の側背部22よりも車両外側に配置された側部ドア14に凭れかかったときに、この乗員H2の頭部H2hを検出しないように、この状態での頭部H2hの位置よりも高い高さ位置に配置されている。この状態での乗員H2は、アンテナ電極27では検出される。
【0032】
そして、本実施形態の車両用乗員検出装置10は、上記したアンテナ電極26,27と、図10に示すように、シート12に着座する乗員の有無を検出する歪ゲージ式の重量検知センサ41とを有している。さらに、車両用乗員検出装置10は、上記したアンテナ電極26,27の周囲に電界を発生させ、その状態でアンテナ電極26,27に流れる電流の変化を検出データとして取得する信号処理部(電界発生手段)42と、重量検知センサ41からの検出データを取得する信号処理部43と、これらの信号処理部42,43の検出データに基づいて、シート12への乗員の着座の有無およびアンテナ電極26,27への乗員の近接を検出するCPU(乗員検出手段)44と、CPU44からの制御信号を通信するための通信回路45とを有する乗員検知ユニット46を備えている。
【0033】
CPU44は、重量検知センサ41の検出データが、第1の重量閾値より高ければ大人の乗員がシート12に着座している状態にあると判定し、第1の重量閾値とこれより低い第2の重量閾値との間にあれば小人の乗員がシート12に着座している状態にあると判定し、第2の重量閾値よりも低ければ、乗員がシート12に着座していない状態にあると判定する。
【0034】
乗員検知ユニット46の通信回路45は、エアバッグ16の展開を制御するSRSユニット47に接続されている。このSRSユニット47には、乗員検知ユニット46と、エアバッグ16と、車両左側の側突を検出する側突検出センサ48と、運転者に情報表示を行うメータ内インジケータ49とが接続されており、乗員検知ユニット46および側突検出センサ48の信号でエアバッグ16の展開を制御する。ここで、SRSユニット25は、例えば側突検出センサ48でエアバッグ展開閾値以上の側突荷重を検出した場合に、エアバッグ16を展開させる。
【0035】
本実施形態の車両用乗員検出装置10は、図11に示すフローチャートの処理を行う。
つまり、CPU44は、信号処理部42,43からアンテナ電極26,27および重量検知センサ41の検出データを取得し(ステップS1)、まず、重量検知センサ41の検出データが第1の重量閾値よりも高く大人がシート12に着座しているか否かを判定する(ステップS2)。CPU44は、重量検知センサ41の検出データが第1の重量閾値よりも高ければ(ステップS2:YES)、大人がシート12に着座していると判定する(ステップS3)。このCPU44の判定により、SRSユニット47は、エアバッグ展開閾値を基準エアバッグ展開閾値とする。これにより、SRSユニット47は、側突検出センサ48で基準エアバッグ展開閾値以上の側突荷重を検出すると、エアバッグ16を展開させることになる。
【0036】
ステップS2において、重量検知センサ41の検出データが第1の重量閾値以下であると(ステップS2:NO)、CPU44は、大人がシート12に着座していないと判定して、重量検知センサ41の検出データが第2の重量閾値より低く乗員がシート12に着座していない状態にあるか否かを判定する(ステップS4)。CPU44は、重量検知センサ41の検出データが第2の重量閾値よりも低ければ(ステップS4:YES)、乗員がシート12に着座していない空席状態であると判定する(ステップS5)。このCPU44の判定により、SRSユニット47は、展開閾値を基準エアバッグ展開閾値よりも高く変更する。具体的には、エアバッグ展開閾値を、発生し得ない高い値に変更する。これにより、SRSユニット47は、側突検出センサ48で側突荷重を検出しても、エアバッグ16の展開を規制し非展開とする。
【0037】
ステップS4において、重量検知センサ41の検出データが第2の重量閾値以上であると(ステップS4:NO)、CPU44は、小人がシート12に着座していると判定して、信号処理部42を介して得られる姿勢検出用のアンテナ電極26の検出データが所定の第1乗員検出閾値Th_1より小さいか否かを判定する(ステップS6)。アンテナ電極26の検出データが第1乗員検出閾値Th_1より小さければ(ステップS6:YES)、CPU44は、アンテナ電極26で乗員は検出されていないと判断して、信号処理部42を介して得られる頭部検出用のアンテナ電極27の検出データが所定の第3乗員検出閾値Th_3より小さいか否かを判定する(ステップS7)。アンテナ電極27の検出データが所定の第3乗員検出閾値Th_3より小さければ(ステップS7:YES)、CPU44は、重量検知センサ41で小人着席の重量は検出されたものの、アンテナ電極26,27での検出がなく、荷物等が載せられている等、乗員の着座状況が不確定であると判定する(ステップS8)。このCPU44の判定により、SRSユニット47は、エアバッグ展開閾値を基準エアバッグ展開閾値とする。これにより、SRSユニット47は、側突検出センサ48で基準エアバッグ展開閾値以上の側突荷重を検出すると、エアバッグ16を展開させることになる。
【0038】
ステップS7において、アンテナ電極27の検出データが所定の第3乗員検出閾値Th_3以上であると(ステップS7:NO)、CPU44は、アンテナ電極27で乗員が検出されており、小人が第1の非正規着座状態で着座していると判定する(ステップS9)。このCPU44の判定により、SRSユニット47は、展開閾値を基準エアバッグ展開閾値よりも高く変更する。具体的には、エアバッグ展開閾値を、発生し得ない高い値に変更する。これにより、SRSユニット47は、側突検出センサ48で側突荷重を検出しても、エアバッグ16の展開を規制し非展開とする。
【0039】
つまり、小人がシート12に着席しており、アンテナ電極26で乗員が検出されず、アンテナ電極27で乗員が検出されている場合(ステップS2:NO、ステップS4:NO、ステップS6:YES、ステップS7:NO)、CPU44は、図3に示すように、小さめの小人である第1の所定体型を有する乗員H1がシート12に対し車両外側にずれ延出部34と左右方向の位置を合わせて真っ直ぐの正規姿勢で着座した横ズレ状態、図4に示すように、第1の所定体型の乗員H1がシート12に対し車両外側の側背部22に斜めに凭れかかった寝込み状態、図5に示すように、第1の所定体型の乗員H1がシート12に対し車両外側の側背部22よりも車両外側に配置された側部ドア14に凭れかかった大寝込み状態、図9に示すように、大きい小人である第2の所定体型の乗員H2がシート12に対し車両外側の側背部22よりも車両外側に配置された側部ドア14に凭れかかった大寝込み状態、の4つの第1の非正規着座状態のいずれかであると判断して、SRSユニット47に対してエアバッグ16の展開を規制する。
【0040】
ステップS6において、姿勢検出用のアンテナ電極26の検出データが所定の第1乗員検出閾値Th_1以上であると(ステップS6:NO)、CPU44は、アンテナ電極26で比較的大きな乗員が検出されていると判断して、アンテナ電極26の検出データが、第1乗員検出閾値Th_1より大きい所定の第2乗員検出閾値Th_2より小さいか否かを判定する(ステップS10)。アンテナ電極26の検出データが第2乗員検出閾値Th_2以上で有れば(ステップS10:NO)、CPU44は、アンテナ電極26で大人(但し重量は軽い)が検出されていると判定する(ステップS11)。このCPU44の判定により、SRSユニット47は、エアバッグ展開閾値を基準エアバッグ展開閾値とする。これにより、SRSユニット47は、側突検出センサ48で基準エアバッグ展開閾値以上の側突荷重を検出すると、エアバッグ16を展開させることになる。
【0041】
ステップS10において、姿勢検出用のアンテナ電極26の検出データが所定の第2乗員検出閾値Th_2より小さいと(ステップS10:YES)、CPU44は、頭部検出用のアンテナ電極27の検出データが所定の第3乗員検出閾値Th_3より小さいか否かを判定する(ステップS12)。アンテナ電極27の検出データが所定の第3乗員検出閾値Th_3より小さければ(ステップS12:YES)、CPU44は、アンテナ電極27で頭部が検出されておらず、小人が正規着座状態にあると判定する(ステップS13)。このCPU44の判定により、SRSユニット47はエアバッグ展開閾値を基準エアバッグ展開閾値とする。これにより、SRSユニット47は、側突検出センサ48で基準エアバッグ展開閾値以上の側突荷重を検出すると、エアバッグ16を展開させることになる。
【0042】
つまり、小人がシート12に着席しており、アンテナ電極26で乗員が検出され、アンテナ電極27で乗員が検出されていない場合(ステップS2:NO、ステップS4:NO、ステップS6:NO、ステップS10:YES、ステップS12:YES)、CPU44は、図2に示すように小さめの小人である第1の所定体型を有する乗員H1がシート12に対し左右方向の中央位置に真っ直ぐの正規姿勢で着座した状態、図6に示すように大きい小人である第2の所定体型を有する乗員H2がシート12に対し左右方向の中央位置に真っ直ぐの正規姿勢で着座した状態、の2つの正規着座状態のうちのいずれかであると判断して、SRSユニット47に対してエアバッグ16の展開を許可する。
【0043】
ステップS12において、アンテナ電極27の検出データが所定の第3乗員検出閾値Th_3以上であれば(ステップS12:NO)、CPU44は、アンテナ電極27で乗員が検出されていると判定し、小人が第2の非正規着座状態で着座していると判定する(ステップS14)。このCPU44の判定により、SRSユニット47は、エアバッグ展開閾値を基準エアバッグ展開閾値とする。これにより、SRSユニット47は、側突検出センサ48で基準エアバッグ展開閾値以上の側突荷重を検出すると、エアバッグ16を展開させることになる。
【0044】
つまり、小人がシート12に着席しており、アンテナ電極26で乗員が検出されアンテナ電極27で乗員が検出されている場合(ステップS2:NO、ステップS4:NO、ステップS6:NO、ステップS10:YES、ステップS12:NO)、CPU44は、図7に示すように、大きめの小人である第2の所定体型を有する乗員H2がシート12に対し車両外側にずれ延出部34と左右方向の位置を合わせて真っ直ぐの正規姿勢で着座した横ズレ状態、図8に示すように、第2の所定体型の乗員H2がシート12に対し車両外側の側背部22に斜めに凭れかかった寝込み状態、の2つの第2の非正規着座状態のうちのいずれかであると判断して、SRSユニット47に対してエアバッグ16の展開を許可する。
【0045】
以上に述べた本実施形態に係る車両用乗員検出装置10によれば、シートバック15の中央背部20に設けられたアンテナ電極26が、シートバック15の車両外側の一方の側背部22に設けられたアンテナ電極27の上方の上部領域に延びる延出部34を備えているため、アンテナ電極26によるシートバック15の中央背部22の乗員検出に加えて、アンテナ電極26およびアンテナ電極27によって、シートバック15の車両外側の一方の側背部22における高位置および低位置の乗員検出ができる。したがって、乗員の様々な姿勢を効率良く検出することができる。
【0046】
また、アンテナ電極26の延出部34が、基準となる第1の所定体型を有する乗員H1がシート12に正規姿勢で着座したときの頭部H1hの位置よりも高く、第1の所定体型よりも大きい第2の所定体型を有する乗員H2がシート12に正規姿勢で着座したときの頭部H2hと同等の高さ位置に配置されているため、アンテナ電極26で乗員検出がなく、アンテナ電極27によって乗員検出があることで、図3に示すように第1の所定体型の乗員H1がシートバック15の車両外側の一方の側背部22の位置で正規姿勢でいる状態を検出でき、アンテナ電極26およびアンテナ電極27の両方によって乗員検出があることで、図7に示すように第2の所定体型の乗員H2がシートバック15の車両外側の一方の側背部22の位置で正規姿勢でいる状態を検出できる。
【0047】
また、アンテナ電極26の延出部34が、第2の所定体型の乗員H2がシートバック15の車両外側の一方の側背部22に凭れかかったときの頭部H2hと同等の高さ位置で、かつ第2の所定体型の乗員H2が側背部22よりも車両外側に配置された側部ドア14に凭れかかったときの頭部H2hの位置よりも高い高さ位置に配置されているため、アンテナ電極26で乗員検出がなく、アンテナ電極27によって乗員検出があることで、図9に示すように第2の所定体型の乗員H2が側部ドア14に凭れかかっている状態を検出でき、アンテナ電極26およびアンテナ電極27の両方によって乗員検出があることで、図8に示すように第2の所定体型の乗員H2がシートバック15の車両外側の側背部22に凭れかかっている状態を検出できる。
【0048】
また、アンテナ電極26およびアンテナ電極27の周囲に信号処理部42で電界を発生させると、CPU44よってアンテナ電極26およびアンテナ電極27に流れる電流に基づいてアンテナ電極26およびアンテナ電極27への乗員の近接を検出する(つまり乗員を検出する)ことができる。
【0049】
なお、階段状のアンテナ電極26を形成する場合に、図12に示すように、例えば、下部検出部30および中下部検出部31を一体にしたフィルム26Aと、中上部検出部32および上部検出部33を一体にしたフィルム26Bとに分割して、フィルム26Bの中上部検出部32にフィルム26Aの中下部検出部31を重ねて接着することで形成することが可能である。この場合、アンテナ電極26において中下部検出部31および中上部検出部32のラップ部26Zの強度が高くなるため、図13に示すように、シートバック15に釣り込み溝52を形成するための釣り込みワイヤ53が設けられる場合に、ラップ部26Zを釣り込み溝52に配置することで、釣り込みワイヤ53と擦れ合うことがあってもラップ部51で擦れ合うことになって、アンテナ電極26の損傷を防止できる。なお、図13において、符号54は、シートバック15の表皮材、符号55は、シートバック15のパッド材である。
【0050】
また、分割したフィルムを組み合わせて階段状のアンテナ電極を形成する場合には、図14に示すように、ポリエチレンテレフタレート等の基材Aaに電極部Abを印刷したフィルムAと、同様の基材Baおよび電極部BbからなるフィルムBとを用意し、図15に示すように、これらフィルムAおよびフィルムBを一部重ね合わせてホットメルト等の汎用性の接着剤Yで接着する。その際に、フィルムAおよびフィルムBのラップ部Zに所定の面積を確保しておけば、電極部Ab,Bb間の絶縁体の特性変化はアンテナ電極としての性能上問題なく、図16に示すように、ポリエチレンテレフタレート等の基材Caに電極部Cbを印刷した一枚のフィルムCで同じ形状に形成した場合と同等の静電容量の検出性能を確保できる。
【0051】
つまり、フィルムAおよびフィルムBのラップ部Zの面積をS、図15(b)に示すように、基材Ba+接着剤Y(+絶縁材)の厚さつまり電極部Ab,Bb間の距離をL、フィルムAおよびフィルムBのラップ部Zの誘電率をε(一定値であり接着剤Yと基材Bbの誘電率を足したもの)、図17に示すように、フィルム間接着容量(固定値)をCA−B、フィルムAと乗員とが接する範囲での静電容量をC1、フィルムBと乗員とが接する範囲での静電容量をC2とすると、CA−B=ε×(S/L)であり、フィルムAとフィルムBとからなるアンテナ電極の静電容量は、C1+{(CA−B×C2)/(CA−B+C2)}となり、Lが十分に小さく、Sが十分に大きい場合には、{(CA−B×C2)/(CA−B+C2)}の値はC2とほぼ同等の値となり、C1+C2が、図18に示すように、一枚のフィルムCで同じ形状に形成した場合の静電容量とほぼ等しくなる。
【符号の説明】
【0052】
10 車両用乗員検出装置
12 シート
14 ドアライニング(車体側壁)
15 シートバック
20 中央背部
21,22 側背部
26 アンテナ電極(第1の乗員検出センサ)
27 アンテナ電極(第2の乗員検出センサ)
34 延出部
42 信号処理部(電界発生手段)
43 CPU(乗員検出手段)
H1 乗員(第1の所定体型を有する乗員)
H1h 頭部
H2 乗員(第2の所定体型を有する乗員)
H2h 頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央背部と該中央背部の幅方向の両側から膨出する左右一対の側背部とを有するシートバックと、
該シートバックの前記中央背部に設けられた第1の乗員検出センサと、
前記シートバックの前記左右一対の側背部のうち車両外側の一方の側背部に設けられた第2の乗員検出センサとを備えた車両用乗員検出装置において、
前記第1の乗員検出センサが、前記一方の側背部における前記第2の乗員検出センサの上方の上部領域に延びる延出部を備えていることを特徴とする車両用乗員検出装置。
【請求項2】
前記延出部が、基準となる第1の所定体型を有する乗員が前記シートに正規姿勢で着座したときの頭部の位置よりも高く、前記第1の所定体型よりも大きい第2の所定体型を有する乗員が前記シートに正規姿勢で着座したときの頭部と同等の高さ位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の車両用乗員検出装置。
【請求項3】
前記延出部が、前記第2の所定体型の乗員が前記一方の側背部に凭れかかったときの頭部と同等の高さ位置で、かつ前記第2の所定体型の乗員が前記一方の側背部よりも車両外側に配置された車体側壁に凭れかかったときの頭部の位置よりも高い高さ位置に配置されていることを特徴とする請求項2記載の車両用乗員検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−167909(P2010−167909A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12283(P2009−12283)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(300052246)株式会社ホンダエレシス (105)
【Fターム(参考)】