説明

車両用内装材の製造方法

【課題】 立体加飾部を目立たせて外観品質を確実に向上させることができる車両用内装材の製造方法を提供する。
【解決手段】 立体加飾部3の塗膜層4だけをレーザーLにより除去するため、立体加飾部3はインストルメントパネル1の表面2の色が露出し、塗膜層4で覆われている他の一般面とは色調が異なることになる。従って、ステッチ模様の立体加飾部3が目立ち、インストルメントパネル1の外観品質が向上する。また、塗膜層4が除去された立体加飾部3の表面に、更にレーザーLにより縒目状溝5を形成したため、光沢及び触感も、他の一般面とは異なり、外観品質がより向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用内装材として、例えばインストルメントパネルの表面には、外観品質を高めるためにステッチ模様の立体加飾部が形成される。この立体加飾部は、インストルメントパネルの最も表面側を構成する部材(例えば表皮材)の表面に一体的に形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭55−121018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、内装材の表面にステッチ模様の立体加飾部を形成しているものの、立体加飾部と、その他の一般面との色調が同じであるため、立体加飾部が目立ちにくく、外観品質を高める効果が不十分であった。
【0004】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、立体加飾部を目立たせて外観品質を確実に向上させることができる車両用内装材の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、立体加飾部が形成された内装材の表面全体に、該表面とは異なる色の塗膜層を形成すると共に、該立体加飾部を覆う塗膜層だけをレーザーにより除去することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、立体加飾部が形成された内装材の表面全体に、エネルギーが加わった部分だけ他の部分と異なる色の変色部となる不可逆性素材の塗膜層を形成すると共に、立体加飾部を覆う塗膜層だけにレーザーによりエネルギーを加えることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、立体加飾部がステッチ模様であることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、レーザーにより塗膜層が除去された立体加飾部の表面に、更にレーザーにより微細凹凸を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、微細凹凸が複数の縒目状溝であることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、微細凹凸が複数の円形凹部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、立体加飾部を覆う塗膜層だけをレーザーにより除去するため、立体加飾部は内装材の表面の色が露出し、塗膜層で覆われているその他の表面とは色調が異なることになる。従って、立体加飾部が目立ち、内装材の外観品質が向上する。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、立体加飾部を覆う塗膜層だけをレーザーにより変色させるため、立体加飾部は、未変色の塗膜層で覆われているその他の表面とは色調が異なることになる。従って、立体加飾部が目立ち、内装材の外観品質が向上する。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、立体加飾部がステッチ模様であるため、内装材にステッチ意匠を付与することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、塗膜層が除去された立体加飾部の表面に、更にレーザーにより微細凹凸を形成したため、光沢及び触感も、その他の表面とは異なり、外観品質が更に向上する。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、微細凹凸が縒目状溝であるため、立体加飾部が更にステッチ状に見える。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、微細凹凸が円形凹部であるため、立体加飾部に毛羽立ち感を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、立体加飾部を目立たせて外観品質を確実に向上させることができる車両用内装材の製造方法を提供するという目的を、立体加飾部が形成された内装材の表面全体に、該表面とは異なる色の塗膜層を形成すると共に、該立体加飾部を覆う塗膜層だけをレーザーにより除去すること、また、立体加飾部が形成された内装材の表面全体に、エネルギーが加わった部分だけ他の部分と異なる色の変色部となる不可逆性素材の塗膜層を形成すると共に、立体加飾部を覆う塗膜層だけにレーザーによりエネルギーを加えることで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1〜図5は、本発明の第1実施例を示す図である。車両用の内装材であるインストルメントパネル1は、芯材、パッド材、表皮材等の多層構造となっており、その表面2は樹脂で形成されている。インストルメントパネル1の表面2には、外観品質を高めるために立体加飾部3が一体的に形成されている。立体加飾部3は連続したステッチ模様を呈した形状で、その部分だけ表面2から隆起している。
【0019】
インストルメントパネル1の表面2には、立体加飾部3も含んだ状態で、全面に塗膜層4が形成されている。塗膜層4は、インストルメントパネル1の表面2の色とは異なる色を有している。
【0020】
そして、インストルメントパネル1の表面2に形成された塗膜層4のうち、立体加飾部3を覆っている部分だけを、レーザーLにより除去する。そうすると、立体加飾部3の部分だけ、塗膜層4とは異なる表面2の色が露出する。
【0021】
次に、塗膜層4が除去されて露出した立体加飾部3の表面に、更にレーザーLにより、微細凹凸としての縒目状溝5を形成する。
【0022】
以上説明したように、この実施例によれば、立体加飾部3の塗膜層4だけをレーザーLにより除去するため、立体加飾部3はインストルメントパネル1の表面2の色が露出し、塗膜層4で覆われている他の一般面とは色調が異なることになる。従って、ステッチ模様の立体加飾部3が目立ち、インストルメントパネル1の外観品質が向上する。
【0023】
また、塗膜層4が除去された立体加飾部3の表面に、更にレーザーLにより縒目状溝5を形成したため、光沢及び触感も、他の一般面とは異なり、外観品質がより向上する。表面2の硬度を、塗膜層4よりも低くしておけば、露出した立体加飾部3が柔らかくなり、触感が更に向上する。
【0024】
立体加飾部3にステッチ模様を想像させる縒目状溝5を形成したため、視覚の面で糸で縫製したのと錯覚しやすくなり、立体加飾部3の擬似加飾としての意匠性が向上する。
【実施例2】
【0025】
図6は、本発明の第2実施例を示す図である。この実施例に係るインストルメントパネル6では、塗膜層4を除去した立体加飾部3の表面に、微細凹凸としての円形凹部8を多数形成した。従って、立体加飾部3に毛羽立ち感を与えることができ、立体加飾部3の擬似加飾としての意匠性が向上する。
【実施例3】
【0026】
図7及び図8は、本発明の第3実施例を示す図である。この実施例に係るインストルメントパネル9において、最初に立体加飾部3を含む表面10全体に塗膜層11が形成されるが、この塗膜層11は先の実施例とは種類が異なる。すなわち、この塗膜層11はレーザーLによるエネルギーを受けると、受けた部分だけが他の色に変色して変色部11aとなる性質を有している。いったん変色した変色部11aが元の色に戻らないように、塗膜層11は不可逆性素材で形成されている。
【0027】
従って、この塗膜層11をインストルメントパネル9の表面10全体に形成した後、立体加飾部3を覆っている部分だけにレーザーLを照射してエネルギーを加えと、立体加飾部3を覆っている部分だけが、他の塗膜層11とは異なる色の変色部11aになる。従って、ステッチ模様の立体加飾部3が目立ち、インストルメントパネル9の外観品質が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上の実施例では、立体加飾部3としてステッチ模様を例にしたが、これに限定されず、その他の加飾形状であっても良い。また、内装材としても、インストルメントパネル1、6、9に限定されず、その他のものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施例に係るインストルメントパネルを示す断面図。
【図2】図1の塗膜層をレーザーにより除去した状態を示すインストルメントパネルの断面図。
【図3】図1の塗膜層を除去する前のインストルメントパネルを示す平面図。
【図4】図2の塗膜層を除去した後のインストルメントパネルを示す平面図。
【図5】図2中矢示DA部分を示す拡大断面図。
【図6】本発明の第2実施形態に係るインストルメントパネルを示す平面図。
【図7】本発明の第3実施形態に係るインストルメントパネルを示す断面図。
【図8】図7のインストルメントパネルを示す平面図。
【符号の説明】
【0030】
1、6、9 インストルメントパネル(内装材)
2、10 表面
3 立体加飾部
4、11 塗膜層
5 縒目状溝(微細凹凸)
8 円形凹部(微細凹凸)
11a 変色部
L レーザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体加飾部(3)が形成された内装材(1,6)の表面(2)全体に、該表面(2)とは異なる色の塗膜層(4)を形成すると共に、該立体加飾部(3)を覆う塗膜層(4)だけをレーザー(L)により除去することを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【請求項2】
立体加飾部(3)が形成された内装材(9)の表面(10)全体に、エネルギーが加わった部分だけ他の部分と異なる色の変色部(11a)となる不可逆性素材の塗膜層(11)を形成すると共に、立体加飾部(3)を覆う塗膜層(11)だけにレーザー(L)によりエネルギーを加えることを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用内装材の製造方法であって、
立体加飾部(3)がステッチ模様であることを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の車両用内装材の製造方法であって、
レーザー(L)により塗膜層(4)が除去された立体加飾部(3)の表面に、更にレーザー(L)により微細凹凸(5,8)を形成したことを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の車両用内装材の製造方法であって、
微細凹凸が複数の縒目状溝(5)であることを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の車両用内装材の製造方法であって、
微細凹凸が複数の円形凹部(8)であることを特徴とする車両用内装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−269221(P2007−269221A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98639(P2006−98639)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】