説明

車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造

【課題】車両用内装材に対してサイレンサーパッドを確実に取り付けることが可能な車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造を提供する。
【解決手段】サイレンサーパッド20にはスリット22が形成される一方、車両用内装材10には折曲可能なリブ11が形成され、スリット22にリブ11を挿通し、当該リブ11を折り曲げて、当該リブ11、サイレンサーパッド20、及び車両用内装材10を互いに溶着してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用内装材の裏面に吸音フェルト(サイレンサーパッド)等を取り付ける手法として、特許文献1や特許文献2に記載のような技術がある。具体的には、内装材裏面に複数の取付ボスを起立形成し、その先端に一体に押さえ片部を形成するとともに、取付ボスに対応して吸音フェルト側に取付孔を形成し、取付孔に取付ボスを挿通させて内装材裏面と押さえ片部間で吸音フェルトを挟着して、内装材裏面に吸音フェルトを固定している。
【特許文献1】特開2004−66886公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記のような取付構造によると、吸音フェルトを内装材裏面と押さえ片部間で挟着して取り付けた構成のため、車両振動などにより吸音フェルトの取付孔と取付ボス間の隙間の範囲で吸音フェルトが微摺動し、軟質である吸音フェルトの取付孔が拡大されて吸音フェルトの取付孔から取付ボスが外れる惧れがあり、品質を損ねる場合がある。また、吸音フェルトに取付孔を形成するため、当該孔形成に伴う不要部が発生し、その不要部を除去する手間が掛かる場合がある。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、車両用内装材に対してサイレンサーパッドを確実に取り付けることが可能な車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造を提供することを目的としている。また、本発明は、車両用内装材へのサイレンサーパッドの取付不良の発生を防止ないし抑制し、製品品質の向上に寄与することが可能な車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造を提供することを目的としている。また、本発明は、不要部発生がなく、当該不要部除去工程を省略可能な車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造は、車両用内装材に対するサイレンサーパッドの取付構造であって、前記サイレンサーパッドにはスリットが形成される一方、前記車両用内装材には折曲可能なリブが形成され、前記スリットに前記リブを挿通し、当該リブを折り曲げて、当該リブ、前記サイレンサーパッド、及び前記車両用内装材を互いに溶着してなることを特徴とする。
【0006】
このような取付構造によると、スリットに挿通されたリブ、サイレンサーパッド、及び車両用内装材が互いに溶着されてなるため、車両振動などによりサイレンサーパッドのスリット内でリブが微摺動する不具合が防止され、スリットの拡大による当該スリットからのリブの抜けを防止できる。さらに、溶着に際しては、スリットに挿通したリブを折り曲げて行うため、仮に溶着不良の場合には、折曲されたリブがサイレンサーパッドから浮いて若しくは折曲から復帰することとなる。したがって、そのような折曲からの浮き若しくは復帰により溶着不良の発生を簡便に検出することが可能となり、ひいては車両用内装材へのサイレンサーパッドの取付不良の発生を防止ないし抑制し、製品品質の向上に寄与することが可能となる。
【0007】
前記リブには、インテグラルヒンジが設けられているものとすることができる。
このようなインテグラルヒンジを設けることで、リブを好適に折曲可能であるとともに、仮に溶着不良時にはリブを折曲方向とは逆方向に復帰させることも可能となる。
【0008】
また、前記スリットは切込にて形成されてなるものとすることができる。
このようにスリットを切込にて形成することで、孔を形成する場合に比して不要部が発生することがなくなり、当該不要部の除去工程を省略することが可能となる。
【0009】
また、前記車両用内装材は、パッケージトレイであるものとすることができる。
内装材とサイレンサーパッドとが取り付け不良となると、車両振動などでサイレンサーパッド側に取り付けられた車両部品との間でガタツキ音が生じる場合があるが、内装材がパッケージトレイである場合、当該パッケージトレイは車両搭乗者の頭部付近にあるため、上記ガタツキ音が非常に煩わしいものとなる。そこで、本発明の取付構造をパッケージトレイに導入することで、上記のような煩わしさを好適に解消することが可能となるのである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、内装材に対してパッドを確実に取り付けることが可能な車両用内装材へのパッド取付構造を提供することが可能となる。
また、本発明によると、内装材へのパッドの取付不良の発生を防止ないし抑制し、製品品質の向上に寄与することが可能な車両用内装材へのパッド取付構造を提供することが可能となる。
また、本発明によると、不要部発生がなく、当該不要部除去工程を省略可能な車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造の一実施形態について説明する。
図1は車両の後部側面の概略構成を示す説明図、図2は本発明に係る取付構造の概略斜視図であり、図3は図2のA−A断面図である。また、図4は内装材(パッケージトレイ)の概略構成を示す斜視図、図5は内装材にサイレンサーパッドを取り付ける態様を示す斜視図である。また、図6は内装材(パッケージトレイ)の成形方法及び成形型を示す断面模式図であり、図7は内装材を型から取り出す方法について示す説明図である。
【0012】
図1において、搭乗者Mが着座可能とされた後部シートSのシートバックS1の後方上部には車両用内装材としてのパッケージトレイ10が配設されており、そのパッケージトレイ10の下方(内部)には例えば防音材(遮音材または吸音材)として機能するサイレンサーパッド20が取り付けられている。なお、図1において符号Wはリアウィンドウを、符号40は車両ルーフパネルを示している。
【0013】
パッケージトレイ10は、所定形状に成形加工された熱可塑性樹脂あるいはその熱可塑性樹脂と必要に応じて表皮材が貼着あるいは一体成形されたものである。
一方、サイレンサーパッド20は、所定形状に成形加工された板状のフェルト材からなり、パッケージトレイ10に取り付けられてなるものである。
【0014】
ここで、本実施形態では、サイレンサーパッド20のパッケージトレイ10への取付けが、例えば図2及び図3に示すようなリブ11を介して行っている。つまり、パッケージトレイ10に形成された片状のリブ11を、サイレンサーパッド20に形成されたスリット(切込)22に挿通した後、当該リブ11を折り曲げてサイレンサーパッド20に当接させ、圧縮し、その後、折り曲げたリブ11とパッケージトレイ10とでサイレンサーパッド20を挟み込む形で、これらリブ11、サイレンサーパッド20、パッケージトレイ10を溶着部21で互いに溶着している。
【0015】
パッケージトレイ10に形成したリブ11は、図4に示すように板状のパッケージトレイ10の裏面から突出する板片部であって、その根元近傍には、当該板片部を一部薄肉化してなるインテグラルヒンジ12が形成されている。このようなインテグラルヒンジ12により簡便な構成で上述のような取付時の折曲を容易に行うことが可能とされる。
【0016】
なお、このようなリブ11は、例えば図6及び図7に示したような成形型50を用いた成形方法により形成することができる。
図6に示した成形型50は、リブ11を形成するための型形状52を具備する一方、脱型用ブロック51を備えている。この脱型用ブロック51は、インテグラルヒンジ12を形成するための凸部53を備えている。
【0017】
成形時には、図6に示すように型形状52に沿って溶融した成形材料(樹脂)100を流し込む。その後、冷却により成形材料(樹脂)100を固化し、型形状52に沿った成形体(パッケージトレイ10)を得る。ところが、リブ11にはインテグラルヒンジ12が形成されており、当該インテグラルヒンジ12を形成するために成形型50には凸部53が具備されている。したがって、冷却後、成形体(パッケージトレイ10)を単純に成形型50から抜き取ることができない。
【0018】
そこで、本実施形態では、脱型用ブロック51を成形型50から挿脱自在に構成することで、上記離型時の問題を解決した。すなわち、インテグラルヒンジ12を形成するための凸部53を備える部分を脱型用ブロック51とし、離型時には、図7に示すように脱型用ブロック51を成形型50から抜き出すことで、成形体(パッケージトレイ10)を容易に成形型50から抜き取ることができるようにしたのである。
【0019】
一方、サイレンサーパッド20に形成したスリット22は、図5に示すように例えば刃物等にて切り込みを入れて形成した切込部であって、例えば切削のような切削屑が発生しない手法により形成したものである。
【0020】
次に、パッケージトレイ10に対するサイレンサーパッド20の取付方法について説明する。
まず、サイレンサーパッド20に上述のような切り込みによりスリット22を形成する一方、図6及び図7に示した成形方法によりパッケージトレイ10に対して折曲可能なリブ11を形成する。
【0021】
次に、サイレンサーパッド20のスリット22に対して、パッケージトレイ10のリブ11を挿通させ、その後、リブ11がサイレンサーパッド20に当接するように、当該リブ11を折り曲げる。ここで、折曲はインテグラルヒンジ12を基点として行い、サイレンサーパッド20が変形する程度に、つまりサイレンサーパッド20に対して押圧を付与しつつリブ11を折り曲げるものとしている。
【0022】
続いて、サイレンサーパッド20に対してリブ11が押圧した状態(当接した状態)で、リブ11とサイレンサーパッド20とパッケージトレイ10を溶着させる。ここでは、リブ11の上から超音波ホーンを押し当てることで溶着を行っており、具体的には超音波ホーン押当部が溶着部21となる。なお、溶着が不十分な場合には、リブ11の折曲が反り返り、元の起立状態(図4参照)となるため、溶着不良を容易に見出すことが可能とされている。なお、このような溶着不良時のリブ11の反り返りは、例えばサイレンサーパッド20の反力(押圧に対する反力)によって生じる。
【0023】
以上のような本実施形態に係る車両用内装材(パッケージトレイ)10へのサイレンサーパッド20の取付構造によると、以下のような作用、効果が奏される。
まず、当該取付構造は、スリット22に挿通されたリブ11、サイレンサーパッド20、及びパッケージトレイ10が互いに溶着されたものであるため、車両振動などによりサイレンサーパッド20のスリット22内でリブ11が微摺動する不具合が解消され、スリット22の拡大による当該スリット22からのリブ11の抜けが防止されている。
【0024】
また、溶着に際しては、スリット22に挿通したリブ11を折り曲げて行うため、仮に溶着不良の場合には、折曲されたリブ11がサイレンサーパッド20から浮いて若しくは折曲から復帰する(反り返る)ものとされている。したがって、そのような折曲からの浮き若しくは復帰により溶着不良の発生を簡便に検出することが可能とされている。さらに、この場合は溶着完了を簡便に見分けることができるため、過剰に溶着を行うことを防止でき、ひいては溶着時間の短縮を実現することが可能となり、作業効率の向上に寄与することが可能となる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、以下のような態様もまた本発明に含まれる。
(1)車両用内装材としてパッケージトレイ10を例示したが、その他、車両用内装材としてのドアトリム、クォータトリムなどにサイレンサーパッドを取り付ける場合にも、本発明に係る取付構造を採用することが可能である。
(2)リブとしてインテグラルヒンジを備えた板片部を例示したが、折曲可能な構成であればリブの形状は限定されない。
(3)リブを溶着させる際に超音波ホーンを使用したことを例示したが、振動溶着、コテなどによる熱溶着も採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】車両の後部側面の概略構成を示す説明図。
【図2】本発明に係る取付構造の概略斜視図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】内装材(パッケージトレイ)の概略構成を示す斜視図。
【図5】内装材にサイレンサーパッドを取り付ける態様を示す斜視図。
【図6】内装材(パッケージトレイ)の成形方法及び成形型を示す断面模式図。
【図7】内装材を型から取り出す方法について示す説明図。
【符号の説明】
【0027】
10…パッケージトレイ(車両用内装材)、11…リブ、12…インテグラルヒンジ、20…サイレンサーパッド、21…溶着部(超音波照射部)、22…スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内装材に対するサイレンサーパッドの取付構造であって、
前記サイレンサーパッドにはスリットが形成される一方、
前記車両用内装材には折曲可能なリブが形成され、
前記スリットに前記リブを挿通し、当該リブを折り曲げて、当該リブ、前記サイレンサーパッド、及び前記車両用内装材を互いに溶着してなることを特徴とする車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造。
【請求項2】
前記リブには、インテグラルヒンジが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造。
【請求項3】
前記スリットは切込にて形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造。
【請求項4】
前記車両用内装材は、パッケージトレイであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用内装材へのサイレンサーパッド取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−285074(P2008−285074A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133250(P2007−133250)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(390033112)積水テクノ成型株式会社 (48)
【Fターム(参考)】