車両用内装材及びその製造方法
【課題】断熱性を確保しつつ、剛性を向上させることが可能な車両用内装材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材20の一面側にシート成形体30を接着させてなる車両用内装材10であって、シート成形体30は、基材20から立ち上がる複数の膨出部31と、隣り合う膨出部31の側壁31aの基端部を連結し、基材への接着面32aを構成する連結部32と、を備え、膨出部31の側壁31aには、当該側壁31aの基材20側の端部を接着面32aに対して後退させた架橋部33が形成され、架橋部33は、隣り合う膨出部31の側壁面が互いに接合されることにより形成されている。
【解決手段】基材20の一面側にシート成形体30を接着させてなる車両用内装材10であって、シート成形体30は、基材20から立ち上がる複数の膨出部31と、隣り合う膨出部31の側壁31aの基端部を連結し、基材への接着面32aを構成する連結部32と、を備え、膨出部31の側壁31aには、当該側壁31aの基材20側の端部を接着面32aに対して後退させた架橋部33が形成され、架橋部33は、隣り合う膨出部31の側壁面が互いに接合されることにより形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に用いられる車両用内装材として、特許文献1に記載のものが知られている。このものは、ルーフパネルの室内面側に取り付けられる成形天井であって、所望の凹凸形状を有するパネル側基材とフラットな面形状を有する室内側基材との二層構造からなる。パネル側基材のルーフパネル側に凹設される凹部と室内側基材との間には複数の中空部が形成されていることで、成形天井の断熱性を高めている。また、パネル側基材が室内側基材に接合されることで、各中空部が区画されている。この成形天井はルーフパネルの室内面側に沿って装着され、適宜切断されることで使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−36089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記成形天井のような車両用内装材は、車室内の形状に沿って装着され、部位によっては湾曲させて用いられることから一定以上の強度を確保する必要がある。しかしながら上述の成形天井の構成によれば、各凹部が平板状の連結部のみで連結されているに過ぎないため、この連結部が撓みやすく、成形天井として曲げ方向の強度が低いという欠点がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、断熱性を確保しつつ、剛性を向上させることが可能な車両用内装材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材の一面側にシート成形体を接着させてなる車両用内装材であって、前記シート成形体は、前記基材から立ち上がる複数の膨出部と、隣り合う前記膨出部の側壁の基端部を連結し、前記基材への接着面を構成する連結部と、を備え、前記膨出部の側壁には、当該側壁の前記基材側の端部を前記接着面に対して後退させた架橋部が形成され、前記架橋部は、隣り合う前記膨出部の側壁面が互いに接合されることにより形成されていることに特徴を有する。
【0007】
このような構成によれば、シート成形体の膨出部は架橋部によりその隣り合う側壁面が互いに接合されているから、車両用内装材の曲げ方向の剛性を向上させることができる。この架橋部はシート成形体に一体的に設けられ、別途補強部材を追加することなく容易に剛性向上を実現できることから、車両用内装部材として材料費を抑え、ひいては車両全体の軽量化に貢献することが可能である。また、架橋部の基材側の端部は、連結部の基材への接着面に対して後退させた位置にあることから、例えば架橋部が形成されない場合、すなわち膨出部を区切るように格子状の連結部が形成されている場合と比較して、基材との接着面積を少なくすることができ、断熱性を高めることが可能である。つまり、車両用内装材を構成する材料(例えば合成樹脂)よりも空気の方が熱伝導率が低いから、基材とシート成形体との間に空気をより多く介在させ、基材に対するシート成形体の接触面積を少なくすることで、シート成形体による断熱性を高めることができるのである。
【0008】
また本発明は、基材の一面側にシート成形体を接着させてなる車両用内装材の製造方法であって、前記シート成形体は、前記基材から立ち上がる複数の膨出部と、隣り合う前記膨出部の側壁面が互いに接合した架橋部と、を備えて構成され、前記シート成形体の材料となる樹脂製のシートを加熱する加熱工程と、加熱状態となった前記シートを成形金型に載置し、前記成形金型の成形面に沿って前記シートを賦形する際に、前記成形面に追従しきれなかった前記シートが互いに溶着されることで前記架橋部が形成される成形工程と、を備えていることに特徴を有する。
【0009】
このような製造方法によれば、架橋部を有しない外側基材を成形する場合の製造工程を何ら変更することなく、例えば成形金型の形状を工夫することで、容易に架橋部を有するシート成形体を成形することが可能である。また、架橋部は2枚分のシートが互いに溶着されることで成形されているから、その厚さは少なくとも1枚のシートからなる他の部位と比較して厚くなり、架橋部が形成された部位の剛性を向上させることができる。加えて、隣り合う膨出部の側壁面同士を溶着させることで膨出部は互いに連結されるから、曲げ方向の剛性が高い車両用内装材を成形することが可能である。
【0010】
上記車両用内装材の製造方法において、前記成形工程では、前記成形面の表面形状に追従しきれなかった前記シートが互いに溶着されることで前記基材との接着面側には流通溝が形成され、前記流通溝は前記膨出部の内部空間同士を流通させているのであって、前記成形工程の後、前記シート成形体に前記基材を載置し、前記流通溝を介して前記膨出部内に気体を圧入した状態で前記基材を前記シート成形体に対してプレスするプレス工程を備えていることが望ましい。
【0011】
本発明の車両用内装材は、シート成形体に膨出部を設けることでその膨出部と基材との間に生じる中空部分によって車両用内装材の断熱性を確保しており、この中空部分の体積をなるべく多く確保することが重要である。しかしながら、基材とシート成形体とをプレスするプレス工程において、基材がシート成形体の膨出部内に入り込んで中空部分が潰れることにより当該中空部分の体積が減少し、車両用内装材としての断熱性が低下する虞がある。これに対して、本発明の車両用内装材の製造方法によれば、シート成形体の膨出部に流通溝を介して気体を圧入し膨出部を内部から加圧した状態で基材をプレスすることができるから、基材が膨出部側に押し込まれるなどして中空部分が潰れることなく、断熱性を確保することが可能である。
【0012】
前記成形工程は、前記成形金型の成形面に形成された吸引口から空気を吸引して前記シート成形体を成形する真空成形工程からなるものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、断熱性を確保しつつ、剛性を向上させることが可能な車両用内装材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用内装材が適用された車両の側面図
【図2】車両用内装材の斜視図
【図3】車両用内装材の上面図
【図4】図3のA−A断面図
【図5】図3のB−B断面図
【図6】シート成形体を成形するための成形金型の斜視図
【図7】成形金型の上面図
【図8】図7のC−C断面図
【図9】図7のD−D断面図
【図10】図7のC−C断面における、成形工程の吸引状態を示した断面図
【図11】図7のD−D断面における、成形工程の吸引状態を示した断面図
【図12】図7のD−D断面における、プレス工程を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<一実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図12によって説明する。なお、各図面は本実施形態の車両用内装材10の構造及び製造方法を概念的に示すもので、正確な寸法関係を表したものではない。
本実施形態により製造される車両用内装材10は、図1に示す自動車50のルーフパネル51の車室内側に装着される天井材に適用されている。この車両用内装材10は、車室内側に配される基材20と、基材20に貼り付けられルーフパネル51側に配されるシート成形体30とを積層させた構造をなしており、図示はしないが基材20の車室内側の側面には表皮材が被覆されている。以下、シート成形体30に対して基材20側を上、ルーフパネル51側を下として説明する。
【0016】
図2に示す車両用内装材10において上層をなす基材20は合成樹脂製であって、例えばPP(ポリプロピレン)と繊維(天然繊維、ガラス繊維、又はカーボン繊維)とを配合したものである。シート成形体30との接着面は略平坦となっており、全体として板状をなしている。
【0017】
シート成形体30はPP等の樹脂材料によって形成され、厚さは約0.3mmとされている。その主な構成は、図2に示すように真空成形により基材20側とは反対側(下側)に凸となるように膨出させた複数の膨出部31と、隣り合う膨出部31の側壁をなす立壁31aを連結する連結部32とからなる。膨出部31は並列配置されており、頂部31bは平坦な略正方形をなし、立壁31aは基材20に対して略垂直に立ち上がるように形成されている。連結部32は隣り合う膨出部31の立壁31aの基端部を連結し、図3に示すように膨出部31を区切る平面視格子状をなしている。連結部32のうち、平面視十字状をなした平坦な底面は基材20に接着される接着面32aとされている。
【0018】
さて、立壁31aの幅方向略中央部位には、連結部32により連結された隣り合う立壁31aの壁面同士を接合した架橋部33が形成されている。架橋部33は、後述する製造方法から明らかにされるように、真空成形工程において成形金型に設けた溝に追従できなかった材料が成形面に追従しようとしつつ互いに溶着することで成形されているから、その上端部分は連結部32の接着面32aに対して下側(膨出部31の頂部31b側)に凹んだ形状をなしている。これにより基材20への接着面32aにおいて、架橋部33が形成されない場合と比較して、架橋部33の幅分の接着面積を削減したこととなる。
【0019】
基材20にシート成形体30を接着させた状態では、図2及び図4に示すように膨出部31と基材20との間に略直方体の中空部11が形成されている。この中空部11は、図4及び図5に示すように、架橋部33の上端部が接着面32aに対して凹となることで基材20との間に生じる流通溝12によって、隣り合う中空部11同士が連通した形態をなしている。
【0020】
次に、上記車両用内装材10の製造方法について説明する。
本実施形態の車両用内装材10は、シート成形体30の材料となるPP製のシート35を加熱する加熱工程と、シートを真空成形により成形する成形工程と、シート成形体30に対して基材20を圧着するプレス工程とにより製造される。まず、成形工程に用いられる金型構造について説明する。
【0021】
シート成形体30を成形する第1金型40は、図6及び図7に示すように、その成形面にシート成形体30の膨出部31を成形するための成形凹部41が並列して複数設けられている。各成形凹部41の底面42の四隅には、真空引きするための吸引口43が開口している。成形凹部41の各々の側壁においてその幅方向略中央位置には、底面42と同じ深さを有する架橋部成形溝44が形成されている。なお、本実施形態において成形凹部41の側壁の高さは例えば8mm、架橋部形成溝44の幅は例えば5mmとされている。
【0022】
続いて、各製造工程について説明する。
まず、加熱工程において、シート35はシート35の両面に配された図示しない加熱板により軟化させる。続いて、成形工程において、図8及び図9に示すように軟化させた状態のシート35は第1金型40の成形面上に載置され、第1金型40に開口する吸引口43から真空ポンプ等で吸引することによりシート成形体30を真空成形する。これにより、シート35は図10及び図11に示すように第1金型40の成形面に沿って賦形される。この際、架橋部形成溝44に配された部分のシート35は、その成形面に追従しきれず、対向するシート35同士が互いに溶着されることで架橋部33が形成される。なお、この架橋部33は第1金型40の底面42の四隅に設けられた吸引口43から真空引きされながら溶着して形成されるため、その上端部は成形面に沿って賦形された接着面32aよりも下側に引っ張られるように凹んだ形状をなしている(図11参照)。
【0023】
成形されたシート成形体30は第1金型40から離型せずに引き続きプレス工程を実行する。シート成形体30上に基材20を載置し、基材20のシート成形体30側とは反対側に配された第2金型45と、第1金型40とを型締めすることで、シート成形体30の接着面32aに対して基材20を圧着させる(図12参照)。型締めすると同時に、膨出部31と基材20との間に形成された中空部11には、それぞれ架橋部33の上側の凹みによって形成された流通溝12を介して空気等の気体が圧入される。これにより、膨出部31は成形面に沿った形状に維持され、基材20は膨出部31内が圧空されることによりその内部へと入り込むことができないから、中空部11の体積が減少することなくシート成形体30に対して基材20が圧着される。その後、第1金型40からシート成形体30を離型することで、車両用内装材10が得られる。
【0024】
以上説明したように本実施形態の車両用内装材10は、シート成形体30の膨出部31が、架橋部33により隣り合う立壁31aの面同士が接合されて連結されているから、架橋部が形成されずに各膨出部が独立して形成されている場合と比較して、曲げ方向の剛性を向上させることができる。また、架橋部33の上端部が連結部32の接着面32aに対して凹んだ形状をなすことで基材20との間に流通溝12が自ずと形成される。これにより、例えば連結部の接着面が膨出部周りを囲むように格子状に形成される場合と比較して、シート成形体30の基材20に対する接着面積を抑えることができる。この空気よりも熱伝導率の高いPP等の樹脂の接着面積を抑えることでシート成形体30を介した熱伝導を抑え、断熱効果を高めることができる。加えて、この架橋部33を形成したことに起因する基材に対する接着面積の削減により、シート成形体30と基材20との間に中空部11に加えて流通溝12分の体積を増やすことにもなり、同様に車両用内装材10における断熱性を高めることができる。
【0025】
また、本実施形態による車両用内装材10の製造方法によれば、シート成形体30の架橋部33は、成形金型である第1金型40の成形凹部41の側壁に架橋部形成溝44とした溝を切り欠くだけで容易に成形することができるから、別途曲げ方向の剛性を向上させるために補強部材を追加する必要がない。さらに製造工程を変更することもなく、材料となるシート35の材質や量を変更する必要もないから、車両用内装部材10の剛性向上を低コストに実現可能である。
【0026】
加えて、シート成形体30に架橋部33を設けることで、シート成形体30を基材20に接着すると、中空部11を連通する流通溝12が自ずと形成される。この流通溝12を介して、各中空部11に空気等の気体を圧入しつつシート成形体30と基材20とをプレスすることができるから、基材20がシート成形体30の膨出部31内に入り込むのを防止することができる。これにより、プレス工程において中空部11を形成する膨出部31ないし膨出部31に対向して配される基材20が潰れ、中空部11の体積が減少するのを阻止することが可能であるから、中空部11を両部材間に設けることによって得られる断熱性能を確実に維持することができる。
【0027】
さらに、架橋部33は材料であるシート35が対向して2枚分が溶着することで成形されるから、他の例えば一枚のシート35から成形される膨出部31の頂部31b等と比較すると、架橋部33の強度は高くなる。これにより、曲げ方向に限らず車両用内装材10としての剛性を向上させることができる。また、架橋部33は膨出部31の側壁に型の抜き方向に沿って設けられているから、第1金型40から離型するにも好都合である。
【0028】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0029】
(1)上記一実施形態では、膨出部31は四角柱をなしていたが、これに限られず、例えば六角柱等の多角柱であってもよい。一例としてハニカム構造が挙げられる。また、頂部31bの形状が四角形や六角形等の多角形となる略裁頭多角錐であってもよい。そのなかでも特に、膨出部31の頂部31b形状を六角形とすれば、膨出部31部分の剛性を高めることができる。また、膨出部31を錘状とすれば同様に剛性向上を可能にする他、型に抜き勾配を確保できるから、成形金型の型持ちをよくすることができる。
【0030】
(2)上記一実施形態では、シート成形体30を真空成形により成形したが、これに限られず、例えば圧空成形によって成形されていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…車両用内装材
11…中空部
12…流通溝
20…基材
30…シート成形体
31…膨出部
31a…立壁
31b…頂部
32…連結部
32a…接着面
33…架橋部
35…シート
40…第1金型
41…成形凹部
42…底面
43…吸引口
44…架橋部形成溝
45…第2金型
50…自動車
51…ルーフパネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に用いられる車両用内装材として、特許文献1に記載のものが知られている。このものは、ルーフパネルの室内面側に取り付けられる成形天井であって、所望の凹凸形状を有するパネル側基材とフラットな面形状を有する室内側基材との二層構造からなる。パネル側基材のルーフパネル側に凹設される凹部と室内側基材との間には複数の中空部が形成されていることで、成形天井の断熱性を高めている。また、パネル側基材が室内側基材に接合されることで、各中空部が区画されている。この成形天井はルーフパネルの室内面側に沿って装着され、適宜切断されることで使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−36089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記成形天井のような車両用内装材は、車室内の形状に沿って装着され、部位によっては湾曲させて用いられることから一定以上の強度を確保する必要がある。しかしながら上述の成形天井の構成によれば、各凹部が平板状の連結部のみで連結されているに過ぎないため、この連結部が撓みやすく、成形天井として曲げ方向の強度が低いという欠点がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、断熱性を確保しつつ、剛性を向上させることが可能な車両用内装材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材の一面側にシート成形体を接着させてなる車両用内装材であって、前記シート成形体は、前記基材から立ち上がる複数の膨出部と、隣り合う前記膨出部の側壁の基端部を連結し、前記基材への接着面を構成する連結部と、を備え、前記膨出部の側壁には、当該側壁の前記基材側の端部を前記接着面に対して後退させた架橋部が形成され、前記架橋部は、隣り合う前記膨出部の側壁面が互いに接合されることにより形成されていることに特徴を有する。
【0007】
このような構成によれば、シート成形体の膨出部は架橋部によりその隣り合う側壁面が互いに接合されているから、車両用内装材の曲げ方向の剛性を向上させることができる。この架橋部はシート成形体に一体的に設けられ、別途補強部材を追加することなく容易に剛性向上を実現できることから、車両用内装部材として材料費を抑え、ひいては車両全体の軽量化に貢献することが可能である。また、架橋部の基材側の端部は、連結部の基材への接着面に対して後退させた位置にあることから、例えば架橋部が形成されない場合、すなわち膨出部を区切るように格子状の連結部が形成されている場合と比較して、基材との接着面積を少なくすることができ、断熱性を高めることが可能である。つまり、車両用内装材を構成する材料(例えば合成樹脂)よりも空気の方が熱伝導率が低いから、基材とシート成形体との間に空気をより多く介在させ、基材に対するシート成形体の接触面積を少なくすることで、シート成形体による断熱性を高めることができるのである。
【0008】
また本発明は、基材の一面側にシート成形体を接着させてなる車両用内装材の製造方法であって、前記シート成形体は、前記基材から立ち上がる複数の膨出部と、隣り合う前記膨出部の側壁面が互いに接合した架橋部と、を備えて構成され、前記シート成形体の材料となる樹脂製のシートを加熱する加熱工程と、加熱状態となった前記シートを成形金型に載置し、前記成形金型の成形面に沿って前記シートを賦形する際に、前記成形面に追従しきれなかった前記シートが互いに溶着されることで前記架橋部が形成される成形工程と、を備えていることに特徴を有する。
【0009】
このような製造方法によれば、架橋部を有しない外側基材を成形する場合の製造工程を何ら変更することなく、例えば成形金型の形状を工夫することで、容易に架橋部を有するシート成形体を成形することが可能である。また、架橋部は2枚分のシートが互いに溶着されることで成形されているから、その厚さは少なくとも1枚のシートからなる他の部位と比較して厚くなり、架橋部が形成された部位の剛性を向上させることができる。加えて、隣り合う膨出部の側壁面同士を溶着させることで膨出部は互いに連結されるから、曲げ方向の剛性が高い車両用内装材を成形することが可能である。
【0010】
上記車両用内装材の製造方法において、前記成形工程では、前記成形面の表面形状に追従しきれなかった前記シートが互いに溶着されることで前記基材との接着面側には流通溝が形成され、前記流通溝は前記膨出部の内部空間同士を流通させているのであって、前記成形工程の後、前記シート成形体に前記基材を載置し、前記流通溝を介して前記膨出部内に気体を圧入した状態で前記基材を前記シート成形体に対してプレスするプレス工程を備えていることが望ましい。
【0011】
本発明の車両用内装材は、シート成形体に膨出部を設けることでその膨出部と基材との間に生じる中空部分によって車両用内装材の断熱性を確保しており、この中空部分の体積をなるべく多く確保することが重要である。しかしながら、基材とシート成形体とをプレスするプレス工程において、基材がシート成形体の膨出部内に入り込んで中空部分が潰れることにより当該中空部分の体積が減少し、車両用内装材としての断熱性が低下する虞がある。これに対して、本発明の車両用内装材の製造方法によれば、シート成形体の膨出部に流通溝を介して気体を圧入し膨出部を内部から加圧した状態で基材をプレスすることができるから、基材が膨出部側に押し込まれるなどして中空部分が潰れることなく、断熱性を確保することが可能である。
【0012】
前記成形工程は、前記成形金型の成形面に形成された吸引口から空気を吸引して前記シート成形体を成形する真空成形工程からなるものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、断熱性を確保しつつ、剛性を向上させることが可能な車両用内装材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用内装材が適用された車両の側面図
【図2】車両用内装材の斜視図
【図3】車両用内装材の上面図
【図4】図3のA−A断面図
【図5】図3のB−B断面図
【図6】シート成形体を成形するための成形金型の斜視図
【図7】成形金型の上面図
【図8】図7のC−C断面図
【図9】図7のD−D断面図
【図10】図7のC−C断面における、成形工程の吸引状態を示した断面図
【図11】図7のD−D断面における、成形工程の吸引状態を示した断面図
【図12】図7のD−D断面における、プレス工程を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<一実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図12によって説明する。なお、各図面は本実施形態の車両用内装材10の構造及び製造方法を概念的に示すもので、正確な寸法関係を表したものではない。
本実施形態により製造される車両用内装材10は、図1に示す自動車50のルーフパネル51の車室内側に装着される天井材に適用されている。この車両用内装材10は、車室内側に配される基材20と、基材20に貼り付けられルーフパネル51側に配されるシート成形体30とを積層させた構造をなしており、図示はしないが基材20の車室内側の側面には表皮材が被覆されている。以下、シート成形体30に対して基材20側を上、ルーフパネル51側を下として説明する。
【0016】
図2に示す車両用内装材10において上層をなす基材20は合成樹脂製であって、例えばPP(ポリプロピレン)と繊維(天然繊維、ガラス繊維、又はカーボン繊維)とを配合したものである。シート成形体30との接着面は略平坦となっており、全体として板状をなしている。
【0017】
シート成形体30はPP等の樹脂材料によって形成され、厚さは約0.3mmとされている。その主な構成は、図2に示すように真空成形により基材20側とは反対側(下側)に凸となるように膨出させた複数の膨出部31と、隣り合う膨出部31の側壁をなす立壁31aを連結する連結部32とからなる。膨出部31は並列配置されており、頂部31bは平坦な略正方形をなし、立壁31aは基材20に対して略垂直に立ち上がるように形成されている。連結部32は隣り合う膨出部31の立壁31aの基端部を連結し、図3に示すように膨出部31を区切る平面視格子状をなしている。連結部32のうち、平面視十字状をなした平坦な底面は基材20に接着される接着面32aとされている。
【0018】
さて、立壁31aの幅方向略中央部位には、連結部32により連結された隣り合う立壁31aの壁面同士を接合した架橋部33が形成されている。架橋部33は、後述する製造方法から明らかにされるように、真空成形工程において成形金型に設けた溝に追従できなかった材料が成形面に追従しようとしつつ互いに溶着することで成形されているから、その上端部分は連結部32の接着面32aに対して下側(膨出部31の頂部31b側)に凹んだ形状をなしている。これにより基材20への接着面32aにおいて、架橋部33が形成されない場合と比較して、架橋部33の幅分の接着面積を削減したこととなる。
【0019】
基材20にシート成形体30を接着させた状態では、図2及び図4に示すように膨出部31と基材20との間に略直方体の中空部11が形成されている。この中空部11は、図4及び図5に示すように、架橋部33の上端部が接着面32aに対して凹となることで基材20との間に生じる流通溝12によって、隣り合う中空部11同士が連通した形態をなしている。
【0020】
次に、上記車両用内装材10の製造方法について説明する。
本実施形態の車両用内装材10は、シート成形体30の材料となるPP製のシート35を加熱する加熱工程と、シートを真空成形により成形する成形工程と、シート成形体30に対して基材20を圧着するプレス工程とにより製造される。まず、成形工程に用いられる金型構造について説明する。
【0021】
シート成形体30を成形する第1金型40は、図6及び図7に示すように、その成形面にシート成形体30の膨出部31を成形するための成形凹部41が並列して複数設けられている。各成形凹部41の底面42の四隅には、真空引きするための吸引口43が開口している。成形凹部41の各々の側壁においてその幅方向略中央位置には、底面42と同じ深さを有する架橋部成形溝44が形成されている。なお、本実施形態において成形凹部41の側壁の高さは例えば8mm、架橋部形成溝44の幅は例えば5mmとされている。
【0022】
続いて、各製造工程について説明する。
まず、加熱工程において、シート35はシート35の両面に配された図示しない加熱板により軟化させる。続いて、成形工程において、図8及び図9に示すように軟化させた状態のシート35は第1金型40の成形面上に載置され、第1金型40に開口する吸引口43から真空ポンプ等で吸引することによりシート成形体30を真空成形する。これにより、シート35は図10及び図11に示すように第1金型40の成形面に沿って賦形される。この際、架橋部形成溝44に配された部分のシート35は、その成形面に追従しきれず、対向するシート35同士が互いに溶着されることで架橋部33が形成される。なお、この架橋部33は第1金型40の底面42の四隅に設けられた吸引口43から真空引きされながら溶着して形成されるため、その上端部は成形面に沿って賦形された接着面32aよりも下側に引っ張られるように凹んだ形状をなしている(図11参照)。
【0023】
成形されたシート成形体30は第1金型40から離型せずに引き続きプレス工程を実行する。シート成形体30上に基材20を載置し、基材20のシート成形体30側とは反対側に配された第2金型45と、第1金型40とを型締めすることで、シート成形体30の接着面32aに対して基材20を圧着させる(図12参照)。型締めすると同時に、膨出部31と基材20との間に形成された中空部11には、それぞれ架橋部33の上側の凹みによって形成された流通溝12を介して空気等の気体が圧入される。これにより、膨出部31は成形面に沿った形状に維持され、基材20は膨出部31内が圧空されることによりその内部へと入り込むことができないから、中空部11の体積が減少することなくシート成形体30に対して基材20が圧着される。その後、第1金型40からシート成形体30を離型することで、車両用内装材10が得られる。
【0024】
以上説明したように本実施形態の車両用内装材10は、シート成形体30の膨出部31が、架橋部33により隣り合う立壁31aの面同士が接合されて連結されているから、架橋部が形成されずに各膨出部が独立して形成されている場合と比較して、曲げ方向の剛性を向上させることができる。また、架橋部33の上端部が連結部32の接着面32aに対して凹んだ形状をなすことで基材20との間に流通溝12が自ずと形成される。これにより、例えば連結部の接着面が膨出部周りを囲むように格子状に形成される場合と比較して、シート成形体30の基材20に対する接着面積を抑えることができる。この空気よりも熱伝導率の高いPP等の樹脂の接着面積を抑えることでシート成形体30を介した熱伝導を抑え、断熱効果を高めることができる。加えて、この架橋部33を形成したことに起因する基材に対する接着面積の削減により、シート成形体30と基材20との間に中空部11に加えて流通溝12分の体積を増やすことにもなり、同様に車両用内装材10における断熱性を高めることができる。
【0025】
また、本実施形態による車両用内装材10の製造方法によれば、シート成形体30の架橋部33は、成形金型である第1金型40の成形凹部41の側壁に架橋部形成溝44とした溝を切り欠くだけで容易に成形することができるから、別途曲げ方向の剛性を向上させるために補強部材を追加する必要がない。さらに製造工程を変更することもなく、材料となるシート35の材質や量を変更する必要もないから、車両用内装部材10の剛性向上を低コストに実現可能である。
【0026】
加えて、シート成形体30に架橋部33を設けることで、シート成形体30を基材20に接着すると、中空部11を連通する流通溝12が自ずと形成される。この流通溝12を介して、各中空部11に空気等の気体を圧入しつつシート成形体30と基材20とをプレスすることができるから、基材20がシート成形体30の膨出部31内に入り込むのを防止することができる。これにより、プレス工程において中空部11を形成する膨出部31ないし膨出部31に対向して配される基材20が潰れ、中空部11の体積が減少するのを阻止することが可能であるから、中空部11を両部材間に設けることによって得られる断熱性能を確実に維持することができる。
【0027】
さらに、架橋部33は材料であるシート35が対向して2枚分が溶着することで成形されるから、他の例えば一枚のシート35から成形される膨出部31の頂部31b等と比較すると、架橋部33の強度は高くなる。これにより、曲げ方向に限らず車両用内装材10としての剛性を向上させることができる。また、架橋部33は膨出部31の側壁に型の抜き方向に沿って設けられているから、第1金型40から離型するにも好都合である。
【0028】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0029】
(1)上記一実施形態では、膨出部31は四角柱をなしていたが、これに限られず、例えば六角柱等の多角柱であってもよい。一例としてハニカム構造が挙げられる。また、頂部31bの形状が四角形や六角形等の多角形となる略裁頭多角錐であってもよい。そのなかでも特に、膨出部31の頂部31b形状を六角形とすれば、膨出部31部分の剛性を高めることができる。また、膨出部31を錘状とすれば同様に剛性向上を可能にする他、型に抜き勾配を確保できるから、成形金型の型持ちをよくすることができる。
【0030】
(2)上記一実施形態では、シート成形体30を真空成形により成形したが、これに限られず、例えば圧空成形によって成形されていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…車両用内装材
11…中空部
12…流通溝
20…基材
30…シート成形体
31…膨出部
31a…立壁
31b…頂部
32…連結部
32a…接着面
33…架橋部
35…シート
40…第1金型
41…成形凹部
42…底面
43…吸引口
44…架橋部形成溝
45…第2金型
50…自動車
51…ルーフパネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一面側にシート成形体を接着させてなる車両用内装材であって、
前記シート成形体は、前記基材から立ち上がる複数の膨出部と、隣り合う前記膨出部の側壁の基端部を連結し、前記基材への接着面を構成する連結部と、を備え、
前記膨出部の側壁には、当該側壁の前記基材側の端部を前記接着面に対して後退させた架橋部が形成され、
前記架橋部は、隣り合う前記膨出部の側壁面が互いに接合されることにより形成されていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
基材の一面側にシート成形体を接着させてなる車両用内装材の製造方法であって、
前記シート成形体は、前記基材から立ち上がる複数の膨出部と、隣り合う前記膨出部の側壁面が互いに接合した架橋部と、を備えて構成され、
前記シート成形体の材料となる樹脂製のシートを加熱する加熱工程と、
加熱状態となった前記シートを成形金型に載置し、前記成形金型の成形面に沿って前記シートを賦形する際に、前記成形面に追従しきれなかった前記シートが互いに溶着されることで前記架橋部が形成される成形工程と、を備えた車両用内装材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用内装材の製造方法であって、
前記成形工程では、前記成形面の表面形状に追従しきれなかった前記シートが互いに溶着されることで前記基材との接着面側には流通溝が形成され、前記流通溝は前記膨出部の内部空間同士を流通させており、
前記成形工程の後、前記シート成形体の接着面側に前記基材を載置し、前記流通溝を介して前記膨出部内に気体を圧入した状態で前記基材を前記シート成形体に対してプレスするプレス工程を備えることを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程は、前記成形金型の成形面に形成された吸引口から空気を吸引して前記シート成形体を成形する真空成形工程からなることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用内装材の製造方法。
【請求項1】
基材の一面側にシート成形体を接着させてなる車両用内装材であって、
前記シート成形体は、前記基材から立ち上がる複数の膨出部と、隣り合う前記膨出部の側壁の基端部を連結し、前記基材への接着面を構成する連結部と、を備え、
前記膨出部の側壁には、当該側壁の前記基材側の端部を前記接着面に対して後退させた架橋部が形成され、
前記架橋部は、隣り合う前記膨出部の側壁面が互いに接合されることにより形成されていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
基材の一面側にシート成形体を接着させてなる車両用内装材の製造方法であって、
前記シート成形体は、前記基材から立ち上がる複数の膨出部と、隣り合う前記膨出部の側壁面が互いに接合した架橋部と、を備えて構成され、
前記シート成形体の材料となる樹脂製のシートを加熱する加熱工程と、
加熱状態となった前記シートを成形金型に載置し、前記成形金型の成形面に沿って前記シートを賦形する際に、前記成形面に追従しきれなかった前記シートが互いに溶着されることで前記架橋部が形成される成形工程と、を備えた車両用内装材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用内装材の製造方法であって、
前記成形工程では、前記成形面の表面形状に追従しきれなかった前記シートが互いに溶着されることで前記基材との接着面側には流通溝が形成され、前記流通溝は前記膨出部の内部空間同士を流通させており、
前記成形工程の後、前記シート成形体の接着面側に前記基材を載置し、前記流通溝を介して前記膨出部内に気体を圧入した状態で前記基材を前記シート成形体に対してプレスするプレス工程を備えることを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程は、前記成形金型の成形面に形成された吸引口から空気を吸引して前記シート成形体を成形する真空成形工程からなることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用内装材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−157032(P2011−157032A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22215(P2010−22215)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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