説明

車両用冷却水リザーブタンクの支持構造

【課題】既存の部品によりダイナミックダンパを構成してパワートレインから車体に伝わる振動を低減するとともに、ダイナミックダンパの共振周波数を容易に調整できる車両用冷却水リザーブタンクの支持構造を実現する。
【解決手段】エンジンを有するパワートレインをマウントブラケット16で車体に支持し、マウントブラケット16にリザーブタンクブラケット37を介して冷却水リザーブタンク35を取り付けた車両用リザーブタンク35の支持構造において、冷却水リザーブタンク35及びその内部に貯留される冷却水をウエイトとするとともにリザーブタンクブラケット37を弾性体とするダイナミックダンパを構成し、ダイナミックダンパの共振周波数をエンジンがアイドリング運転時に発生する振動の周波数に略一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用冷却水リザーブタンクの支持構造に係り、特に、エンジンの冷却水を貯留する冷却水リザーブタンクおよびリザーブタンクブラケットを利用してパワートレインから車体に伝わるアイドリング振動の低減を図った車両用冷却水リザーブタンクの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、エンジンルームに配置したエンジンとトランスミッションからなるパワートレインをマウント装置により車体に弾性的に支持し、車体に伝達される振動を抑制している。マウント装置は、パワートレインに取り付けられるパワートレイン側マウントブラケットと、車体を構成するサイドメンバ等に取り付けられる車体側マウントブラケットと、パワートレイン側マウントブラケットおよび車体側マウントブラケットを弾性的に連結するブッシュマウントとからなる。
また、車両は、エンジンルームにエンジン用の補機類を配置している。例えば、車両は、エンジンルームにエンジン・補機に電力を供給するためのバッテリや、温度上昇に伴う冷却水の膨張空間の確保および蒸発等による冷却水の損失を補うための冷却水用リザーブタンクを配置している。
【0003】
バッテリの支持構造には、バッテリが載置されたバッテリトレイを、緩衝体を介してマウント装置の車体側マウントブラケットに取り付けたものがある(特許文献1)。冷却水リザーブタンクの支持構造には、リザーブタンクが取り付けられたリザーブタンクブラケットを、マウント装置の車体側マウントブラケットに取り付けたものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−200451号公報
【特許文献2】特開2005−82063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1には、バッテリ、バッテリトレイ、緩衝体によって構成した振動系の共振によって、エンジンのアイドル運転時に車体に発生する振動を低減することが記載されているが、バッテリの重量は自由に調整できないため、緩衝体の形状のみで共振周波数を調整しなければならないという不都合がある。
一方、前記特許文献2には、車体側マウントブラケットに冷却水リザーブタンクをリザーブタンクブラケットで取り付けることが記載されているが、冷却水リザーブタンクが車体側マウントブラケットと干渉しないように配設するものであり、パワートレインの振動の低減を図るものではなかった。
【0006】
この発明は、既存の部品によりダイナミックダンパを構成してパワートレインから車体に伝わる振動を低減するとともに、ダイナミックダンパの共振周波数を容易に調整できる車両用冷却水リザーブタンクの支持構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、エンジンを有するパワートレインをマウントブラケットで車体に支持し、前記マウントブラケットにリザーブタンクブラケットを介して冷却水リザーブタンクを取り付けた車両用リザーブタンクの支持構造において、前記冷却水リザーブタンク及びその内部に貯留される冷却水をウエイトとするとともに前記リザーブタンクブラケットを弾性体とするダイナミックダンパを構成し、前記ダイナミックダンパの共振周波数を前記エンジンがアイドリング運転時に発生する振動の周波数に略一致させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用冷却水リザーブタンクの支持構造は、冷却水リザーブタンク及び冷却水をウエイトとし、リザーブタンクブラケットを弾性体とするダイナミックダンパを構成したため、このダイナミックダンパよって車体に伝わるエンジンのアイドリング振動を低減することができる。
また、この発明の車両用冷却水リザーブタンクの支持構造は、冷却水リザーブタンクとその内部に貯留される冷却水をウエイトとしたため、冷却水リザーブタンクの形状や冷却水量を変更することでウエイトの重量や重心の位置を自由に調整でき、弾性体となるリザーブタンクブラケットの形状設定の自由度を向上させることができる。
よって、この発明の車両用冷却水リザーブタンクの支持構造では、既存の部品によってダイナミックダンパを構成してパワートレインから車体に伝わるアイドリング振動を低減できるとともに、ダイナミックダンパの共振周波数を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両用冷却水リザーブタンクの支持構造の側面図である。(実施例)
【図2】図2は車両用冷却水リザーブタンクの支持構造の斜視図である。(実施例)
【図3】図3はリザーブタンクブラケットの斜視図である。(実施例)
【図4】図4(A)は冷却水リザーブタンクの正面側斜視図、図4(B)は冷却水リザーブタンクの背面側斜視図である。(実施例)
【図5】図5は車両のエンジンルーム内の平面図である。(実施例)
【図6】図6はパワープラントのマウント装置部分の拡大平面図である。(実施例)
【図7】図7はパワープラントのマウント装置部分の拡大正面図である。(実施例)
【図8】図8はパワープラントのマウント装置部分の拡大側面図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、冷却水リザーブタンク及び冷却水をウエイトとし、リザーブタンクブラケットを弾性体として構成するダイナミックダンパの共振周波数をエンジンがアイドリング運転時に発生する振動の周波数に略一致させたことで、パワートレインから車体に伝わる振動を低減し、ダイナミックダンパの共振周波数を容易に調整できるようにするものである。
以下、図に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図8は、この発明の実施例を示すものである。図5〜図8において、1は車両、2・3は左右一対のサイドフレーム、4・5は左右一対のサイドパネル、6はクロスメンバ、7はダッシュパネル、8はフロアパネル、9はエンジンルーム、10はエンジン、11はトランスミッション、12はパワートレインである。車両1は、エンジンルーム9に横置きのエンジン10及びエンジン10の左側に連結したトランスミッション11を有するパワートレイン12を配置している。
パワートレイン12は、右のマウント装置13によってエンジン10を右のサイドフレーム2に支持するとともに、左のマウント装置14によってトランスミッション11を左のサイドフレーム3に支持し、さらに、後のマウント装置によってトランスミッション11を後側のロアクロスメンバに支持している。左のマウント装置14は、後述する冷却水リザーブタンク35を支持するための対象構造であるため、以下においては左のマウント装置14について説明する。
【0012】
パワートレイン9の左のマウント装置14は、図1・図2に示すように、車体を構成する左のサイドフレーム3側に配置している。マウント装置14は、パワートレイン12のトランスミッション11に取り付けられるパワートレイン側マウントブラケット15と、左のサイドフレーム3及び左のサイドパネル5に取り付けられる車体側マウントブラケット16と、パワートレイン側マウントブラケット15および車体側マウントブラケット16を弾性的に連結するブッシュマウント17とからなる。
前記パワートレイン側マウントブラケット15は、一体的に形成され、一端側を後述するブッシュマウント17の内筒21に固定し、他端側をトランスミッション11に取り付けられる。前記車体側マウントブラケット16は、サイドフレーム3に取り付けられる第1車体側マウントブラケット18と、後述するブッシュマウント17の外筒2に固定される第2車体側マウントブラケット19と、第2車体側マウントブラケット19に固定されてサイドパネル5に取り付けられる第3車体側マウントブラケット20とからなる。
前記ブッシュマウント17は、内筒21と、内筒21の外周に同軸心上に配置されて前記車体側マウントブラケット16の第2車体側マウントブラケット19が固定される外筒22と、内筒21および外筒22を連結する防振ゴム23とを備える。ブッシュマウント17は、内筒21および外筒22を軸線が車両1の左右方向に延びるように配置し、内筒21にパワートレイン側マウントブラケット15を固定し、外筒22に車体側マウントブラケット16の第2車体側マウントブラケット19を固定している。
【0013】
前記第1車体側マウントブラケット18は、上面部24と立面部25とにより逆L字形状に形成され、上面部24と立面部25とをサイドフレーム3に取り付ている。
前記第2車体側マウントブラケット19は、車両1の前後方向において対向して車両上下方向に延びる一対の縦壁部26・27と、一対の縦壁部26・27の各上端を連結する平坦な上壁部28とにより、開口側が車両1の下方向に指向する側面視で逆U字形状に形成される。第2車体側マウントブラケット19は、車両上下方向に延びる一対の縦壁部26・27の各下端を、第1車体側マウントブラケット18の上面部24と立面部25とに溶接等で固定している。第2車体側マウントブラケット19は、一対の縦壁部26・27の内側および上壁部28の下側に軸線が車両1の左右方向に延びるように配置した前記ブッシュマウント17の外筒22を固定している。また、第2車体側マウントブラケット19は、上壁部28の上側にバッテリトレイを取り付けるバッテリブラケット29を固定している。
前記第3車体側マウントブラケット20は、開口側が車両1の右方向に指向する平面視で横U字形状に形成され、開口側端を第2車体側マウントブラケット19の上壁部28の下側に固定している。
【0014】
前記車両1は、図5に示すように、エンジン10とトランスミッション11の前側であってクロスメンバ6の下側にエンジン10の冷却水を冷却するラジエータ30を配置している。ラジエータ30には、エンジン10から昇温した冷却水を導入するインレットホース31と、放冷した冷却水をエンジン10に供給するアウトレットホース32とが接続されている。
また、ラジエータ30は、圧力キャップ33にリザーブホース34の一端側を接続している。リザーブホース34の他端側は、冷却水リザーブタンク35のタンクキャップ36に接続している。冷却水リザーブタンク35は、リザーブホース34を介してラジエータ30に接続され、温度上昇に伴う冷却水の膨張空間の確保および蒸発等による冷却水の損失を補う。冷却水リザーブタンク35は、左のマウント装置14の車体側マウントブラケット16にリザーブタンクブラケット37を介して取り付けている。
【0015】
車両1は、図5に示すように、エンジン10とトランスミッション11からなるパワートレイン12をエンジンルーム9に横置きに配置し、パワートレイン12の右端部・左端部(マウント装置13・マウント装置14)と後端部(不図示)の3点を車体に弾性支持している。右・左の各マウント装置13・14は、図1に示すように、パワートレイン12の重心Gよりも高い位置に配置され、パワートレイン12を吊り下げ支持している。後端部のマウント装置は、パワートレイン12の動きを抑制する。
上記のように右端部・左端部のマウント装置13・14によってパワートレイン12を吊り下げ支持しているため、エンジン10のアイドル運転時に左右のマウント装置13・14は車両前後方向に振動する。
この発明は、振動を抑制するための冷却水リザーブタンク35の支持構造として、図1・図2に示すように、左のマウント装置14の車体側マウントブラケット16をエンジン10のアイドリング振動が車両前後方向に入力する位置に配置し、マウント装置14にリザーブタンクブラケット37を介して取り付けられる冷却水リザーブタンク35をダイナミックダンパ38として機能させることによって、エンジン10がアイドリング運転している時に車体側マウントブラケット16に発生するアイドリング振動を減衰させるものである。
【0016】
例えば、エンジン10が4サイクル4気筒で、アイドリング運転時のエンジン回転数を750rpmとした場合、エンジン10の燃焼によって発生する振動の周波数は25Hzとなる。そのため、ダイナミックダンパ38の共振周波数を25Hzに設定する。ダイナミックダンパ38の共振周波数は、f=1/2π√k/mによって求められる。mはウエイトの重量であり、kは弾性体の動バネ定数である。
冷却水リザーブタンク35の支持構造では、冷却水を含めた冷却水リザーブタンク35をウエイトとし、リザーブタンクブラケット37を弾性体としたダイナミックダンパ38を構成する。具体的には、冷却水を含む冷却水リザーブタンク35の重量mを557gに設定し、この際、弾性体の動バネ定数kを134.5kN/mmに設定した。
リザーブタンクブラケット35は、マウント装置14の車体側マウントブラケット16ヘの取付点から冷却水リザーブタンク35の重心までの距離とその断面形状を適宜選択することで、動バネ定数kを上記値(134.5kN/mm)に設定することができる。
【0017】
以下、具体的な部品である冷却水リザーブタンク35およびリザーブタンクブラケット37の構造について説明する。
前記冷却水リザーブタンク35は、図4に示すように、ダイナミックダンパ38のウエイトとして機能させるため、冷却水リザーブタンク35および冷却水の合計重量を設定値(例えば、前記557g)となるように設定する。
また、冷却水リザーブタンク35は、ウエイトの重量だけでなく、冷却水リザーブタンク35の重心位置が、リザーブタンクブラケット37の動バネ定数を設定値(例えば、前記134.5kN/mm)に設定するうえでマウントブラケット37から最適な距離になるよう、冷却水リザーブタンク35の形状を設定する。
【0018】
前記リザーブタンクブラケット37は、ダイナミックダンパ38の弾性体として機能させるために、図3に示すように、水平面で車両上下方向下側の第1リザーブタンクブラケット39と、車両上下方向上側の第2リザーブタンクブラケット40とに分割している。
第1リザーブタンクブラケット39は、第2リザーブクンクブラケット40よりも厚さが厚い(例えば、2.6mm程度)板材から、平面部41とこの平面部41から下方へ短く延びる固定部42とを有する横L字形状に形成されている。第1リザーブタンクブラケット39は、車体側マウントブラケット16の前側の縦壁部26から車両前方に突出するように、固定部42を縦壁部26に連結している。この第1リザーブタンクブラケット39は、ダイナミックダンパ38の弾性体としては機能せず、ダイナミックダンパ38の振動を車体側マウントブラケット16の縦壁部26に伝える役割を果たす。
第2リザーブタンクブラケット40は、第1リザーブタンクブラケット39の平面部41の上面に沿う水平部43と、この水平部43から湾曲して上方へ延びる鉛直部44とからなるL字形状に形成されており、ダイナミックダンパ38の弾性体として機能する。このため、第2リザーブタンクブラケット40は、第1リザーブタンクブラケット39よりも厚さが薄い(例えば、1.4mm程度)板材によって形成されている。鉛直部44には、上方へ延びるリザーブタンク取付け部45を形成している。リバースタンク取付け部45には、冷却水リザーブタンク35のブラケット取付け部46が取り付けられる。
前記マウント装置14は、パワートレイン12の重心Gよりも車両上下方向で高い位置にあるため、エンジン10のアイドリング運転により車体側マウントブラケット16には車両前後方向の振動が発生する。そのため、第2リザーブタンクブラケット40は、車両前後方向に振動し易い形状に形成される。具体的には、図3に示すように、水平部43と鉛直部44とが連続する湾曲部47の車両幅方向両側部を車両前後方向に延びる左右のフランジ部48・49で連結し、車両前後方向の剛性が車両上下方向および車両左右方向の剛性に比べて低くなるような形状としている。
また、第2リザーブタンクブラケット40は、水平部43から湾曲部47を経て鉛直部44およびリザーブタンク取付け部45に延びる複数本のビード50を形成している。これにより、第2リザーブタンクブラケット40は、リザーブタンクブラケット37の車両前後における動バネ定数を設定値(例えば、前記134.5kN/mm)に設定している。なお、リザーブタンクブラケット37の動バネ定数は、前記ビード50だけでなく、前記フランジ部48・49、材料、板厚、肉抜き51の形状および位置により設定する。また、第1リザーブタンクブラケット39と第2リザーブクンクブラケット40とは、ボルト・ナット等の固定具52で連結される。
【0019】
以上のように、冷却水リザーブタンク35の支持構造においては、冷却水リザーブタンク35及びその内部に貯留される冷却水をウエイトとするとともにリザーブタンクブラケット37を弾性体とするダイナミックダンパ38を構成し、ダイナミックダンパ38の共振周波数をエンジン10がアイドリング運転時に発生する振動の周波数に略一致させている。
これにより、この冷却水リザーブタンク35の支持構造は、冷却水リザーブタンク35及び冷却水をウエイトとし、リザーブタンクブラケット37を弾性体とするダイナミックダンパ38を構成したため、このダイナミックダンパ38よって車体に伝わるエンジン10のアイドリング振動を低減することができる。
また、この冷却水リザーブタンク35の支持構造は、冷却水リザーブタンク35とその内部に貯留される冷却水をウエイトとしたため、冷却水リザーブタンク35の形状や冷却水量を変更することでウエイトの重量や重心の位置を自由に調整でき、弾性体となるリザーブタンクブラケット37の形状設定の自由度を向上させることができる。
よって、この冷却水リザーブタンク35の支持構造では、既存の部品によってダイナミックダンパ38を構成してパワートレイン12から車体に伝わるアイドリング振動を低減できるとともに、ダイナミックダンパ38の共振周波数を容易に調整することができる。
【0020】
また、冷却水リザーブタンク35の支持構造においては、左のマウント装置13の車体側マウントブラケット16はエンジン10のアイドリング振動が車両前後方向に入力する位置に配置され、車体側マウントブラケット16の車両上下方向に延びる前側の縦壁部26にリザーブタンクブラケット37を連結し、ダイナミックダンパ38の車両前後方向の共振周波数をパワートレイン12のエンジン10がアイドリング運転時に発生する振動の周波数に略一致するようにしている。
これにより、冷却水リザーブタンク35の支持構造は、車体側マウントブラケット37に対して車両前後方向に入力するパワートレイン12のアイドリング振動をより効果的に減衰できる。
【0021】
さらに、冷却水リザーブタンク35の支持構造においては、リザーブタンクブラケット37を水平面で車両上下方向下側の第1リザーブタンクブラケット39と車両上下方向上側の第2リザーブタンクブラケット40とに分割し、第1リザーブタンクブラケット39を第2リザーブタンクブラケット40よりも厚さが厚い板材から形成するとともに車体側マウントブラケット16の縦壁部26から車両前方に突出するように連結し、第2リザーブタンクブラケット40を第1リザーブタンクブラケット39の上面に沿う水平部43とこの水平部43から湾曲して上方へ延びる鉛直部44とを有するL字形状に形成し、水平部43および鉛直部44の車両幅方向両側部を車両前後方向に延びるフランジ部48・49によって連結している。
このように、この冷却水リザーブタンク35の支持構造は、リザーブタンクブラケット37を水平面で車両上下方向下側の第1リザーブタンクブラケット39と車両上下方向上側の第2リザーブタンク40とに分割し、第1リザーブタンクブラケット39を第2リザーブタンクブラケット40よりも厚さが厚い板材から形成するとともに車体側マウントブラケット16の縦壁部26から車両前方に突出するように連結したため、冷却水リザーブタンク35によって構成されたウエイトの車両前後方向の振動を車体側マウントブラケット16の縦壁部26に伝えて車体側マウントブラケット16の車両前後方向の振動を減衰させることができる。
また、この冷却水リザーブタンク35の支持構造は、第2リザーブタンクブラケット40を第1リザーブタンクブラケット38と比べ厚さが薄い板材で形成するともに水平部43と鉛直部44を有するL宇形状に形成することで、第2リザーブタンクブラケット40を車両前後方向に振動し易くすることができる。
そして、この冷却水リザーブタンク35の支持構造は、第2リザーブタンクブラケット40の水平部43および鉛直部44の車両幅方向両側部を車両前後方向に延びるフランジ部48・49によって連結したため、フランジ部48・49の形状によってダイナミックダンパ38の共振周波数を変更でき、ダイナミックダンパ38の共振周波数を容易に調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明は、既存の部品によってダイナミックダンパを構成してパワートレインから車体に伝わるアイドリング振動を低減できるとともに、ダイナミックダンパの共振周波数を容易に調整することができるものであり、エンジンの懸架系部品であるマウント装置に限らず、ダイナミックダンパが必要な箇所へ取り付けることで同様の効果を得ることができ、FFV(Flexible Fuel Vehicle)車におけるサブタンク始動システムのサブタンクを同様の取り付けとすることで、同様にダイナミックダンパとしての効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 車両
2 右のサイドフレーム
3 左のサイドフレーム
9 エンジンルーム
10 エンジン
11 トランスミッション
12 パワートレイン
13 右のマウント装置
14 左のマウント装置
15 パワートレイン側マウントブラケット
16 車体側マウントブラケット
17 ブッシュマウント
18 第1車体側マウントブラケット
19 第2車体側マウントブラケット
20 第3車体側マウントブラケット
26 前側の縦壁部
27 後側の縦壁部
29 バッテリブラケット
30 ラジエータ
35 冷却水リザーブタンク
37 リザーブタンクブラケット
38 ダイナミックダンパ
39 第1リザーブタンクブラケット
40 第2リザーブタンクブラケット
43 水平部
44 鉛直部
45 リザーブタンク取付け部
46 ブラケット取付け部
47 湾曲部
48 右のフランジ部
49 左のフランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有するパワートレインをマウントブラケットで車体に支持し、
前記マウントブラケットにリザーブタンクブラケットを介して冷却水リザーブタンクを取り付けた車両用リザーブタンクの支持構造において、
前記冷却水リザーブタンク及びその内部に貯留される冷却水をウエイトとするとともに前記リザーブタンクブラケットを弾性体とするダイナミックダンパを構成し、
前記ダイナミックダンパの共振周波数を前記エンジンがアイドリング運転時に発生する振動の周波数に略一致させたことを特徴とする車両用冷却水リザーブタンクの支持構造。
【請求項2】
前記マウントブラケットは前記エンジンのアイドリング振動が車両前後方向に入力する位置に配置され、
前記マウントブラケットの車両上下方向に延びる縦壁部に前記リザーブタンクブラケットを連結し、
前記ダイナミックダンパの車両前後方向の共振周波数を前記パワートレインのエンジンがアイドリング運転時に発生する振動の周波数に略一致するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の車両用冷却水リザーブタンクの支持構造。
【請求項3】
前記リザーブタンクブラケットを水平面で車両上下方向下側の第1リザーブタンクブラケットと車両上下方向上側の第2リザーブタンクブラケットとに分割し、
前記第1リザーブタンクブラケットを第2リザーブタンクブラケットよりも厚さが厚い板材から形成するとともに前記マウントブラケットの縦壁部から車両前方に突出するように連結し、
前記第2リザーブタンクブラケットを第1リザーブタンクブラケットの上面に沿う水平部とこの水平部から湾曲して上方へ延びる鉛直部とを有するL字形状に形成し、前記水平部および前記鉛直部の車両幅方向両側部を車両前後方向に延びるフランジ部によって連結したことを特徴とする請求項2に記載の車両用冷却水リザーブタンクの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−30604(P2012−30604A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169221(P2010−169221)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】