説明

車両用制動制御装置

【課題】ドライバーの意図に応じて的確に自動制動を解除可能な車両用制動制御装置を提供する。
【解決手段】自車両と障害物との衝突の危険性に応じて自動的に自車両を制動する車両用制動制御装置であって、自車両と障害物との衝突の危険性が高いか否かを判定する衝突判定手段と、衝突判定手段によって自車両と障害物との衝突の危険性が高いと判定された場合、自車両のブレーキ装置を制御して自動的に制動力を発生させる自動制動手段と、自車両のドライバーによる自車両のアクセルペダルの操作頻度に基づいて、自動制動手段による自動的な制動力の発生を停止する自動制動解除手段とを備えることを特徴とする車両用制動制御装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動制御装置に関し、より特定的には、ドライバーの操作に応じて自動制動を解除可能な車両用制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両と障害物との衝突を回避するべく、車両と障害物とが衝突する危険性が高まった際に、いわゆる自動制動を行う装置が開発されている。自動制動とは、ドライバーの操作に関わらず車両のブレーキ装置を制御して、自車両に自動的な制動力を発生させる制動制御のことを言う。
【0003】
上記のような自動制動を行う車両用制動制御装置が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される車両用制動制御装置は、ドライバーによるアクセルペダル等の操作に応じてドライバーによる自動制動の解除意志の有無を判定する。そして、自動制動の解除意志が有ると判定された場合には、自動制動を停止する。このような処理によれば、不要なタイミングで自動制動が実行された場合に、ドライバーの判断で当該不要な自動制動を停止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−17581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に係る車両用制動制御装置では、自動制動が開始された時点のアクセル開度を基準として、現時点においてどの程度アクセル開度が増加しているかに応じて自動制動を解除しようとしているか否かを判定している。このような処理では、ドライバーには自動制動を解除する意志がなくても、アクセル開度が比較的大きくなった時点で、ドライバーが自動制動を解除しようとしているものとみなされ、自動制動が解除されてしまう場合がある。すなわち、従来の技術ではドライバーの意図を十分に汲んで自動制動を停止することができていなかった。
【0006】
本発明は上記の課題を鑑みて成されたものであり、ドライバーの意図に応じて的確に自動制動を解除可能とする車両用制動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本願は以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、自車両と障害物との衝突の危険性に応じて自動的に自車両を制動する車両用制動制御装置であって、自車両と障害物との衝突の危険性が高いか否かを判定する衝突判定手段と、衝突判定手段によって自車両と障害物との衝突の危険性が高いと判定された場合、自車両のブレーキ装置を制御して自動的に制動力を発生させる自動制動手段と、自車両のドライバーによる自車両のアクセルペダルの操作頻度に基づいて、自動制動手段による自動的な制動力の発生を停止する自動制動解除手段とを備えることを特徴とする、車両用制動制御装置である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、自動制動解除手段は、自車両のドライバーが自車両のアクセルペダルを高い頻度で連続的に踏み込む連続踏込操作を行った否か判定する連続踏込操作判定手段を含み、車両用制御装置は、自車両のアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、アクセル開度の所定時間当たりの変化量をアクセル開度勾配として算出する開度勾配算出手段とをさらに備え、連続踏込操作判別手段は、アクセル開度勾配と所定の勾配閾値との大小関係に基づいて連続踏込操作が行われたか否かを判定することを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、勾配閾値には、第1の開度勾配閾値と、当該第1の開度勾配閾値より小さい第2の開度勾配閾値とが含まれ、連続踏込操作判定手段は、アクセル開度勾配が第1の勾配閾値を越えた場合にドライバーがアクセルペダルを踏み込む操作を行ったと判定し、アクセル開度勾配が第2の勾配閾値を下回った場合にドライバーがアクセルペダルの踏み込みを緩める操作を行ったと判定し、アクセルペダルを踏み込む操作とアクセルペダルの踏み込みを緩める操作が交互に所定回数以上実行されたと判定した場合、連続踏込操作が行われたと判定することを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第2から3の発明の何れか1つにおいて、自車両の走行速度を検出する自車速度検出手段と、自車両の走行速度に基づいて勾配閾値を算出する勾配閾値算出手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第2から3の発明の何れか1つにおいて、自車両と障害物との相対速度を検出する相対速度算出手段と、相対速度に基づいて勾配閾値を算出する勾配閾値算出手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第2から3の発明の何れか1つにおいて、自車両と自車両の後続車とが衝突するまでに要する時間を衝突予測時間として算出する衝突予測時間算出手段と、衝突予測時間に基づいて勾配閾値を算出する勾配閾値算出手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、第2から3の発明の何れか1つにおいて、自動制動手段が自動的な制動力の発生を開始した時点からの経過時間を制動時間として算出する自動制動時間算出手段と、制動時間の長さに基づいて勾配閾値を算出する勾配閾値算出手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、第1から7の発明の何れか1つにおいて、自動制動解除手段は、自車両のドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ状態を維持する継続踏込操作を行った否か判定する継続踏み込み操作判定手段を含むことを特徴とする。
【0015】
第9の発明は、第8の発明において、自車両のアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段をさらに備え、アクセル操作判定手段は、自車両のアクセル開度が所定の開度閾値を越えた状態が予め定められた時間以上継続している場合に、継続踏み込み操作を行ったと判定することを特徴とする。
【0016】
第10の発明は、第9の発明において、自車両の走行速度、障害物の自車両に対する相対速度、および自車両と障害物とが衝突するまでに要すると予測される衝突予測時間の少なくとも何れか1つを検出する車両状態量検出手段と、走行速度、相対速度、および衝突予測時間の少なくとも何れか1つに基づいて開度閾値を算出する、開度閾値算出手段とをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、例えば、ドライバーによるアクセルペダルの操作頻度が高い場合に自動制動を停止することができる。自動制動が実行されている最中にドライバーが高い頻度でアクセルペダルを操作している場合、ドライバーが自車両を加速させたいと考えている可能性が高い。したがって、このような処理によればドライバーに自動制動を解除する意志をくみ取り適格に自動制動を解除することができる。
【0018】
第2の発明によれば、高い頻度でアクセルペダルを連続的に踏み込む操作があった場合に自動制動を停止させることができる。また、アクセルペダルを連続的に踏み込む操作があったか否かを閾値を用いた簡単な処理で判定することができる。
【0019】
第3の発明によれば、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ後、一旦緩める操作を確実に検出し、連続踏込操作があったか否かを正確に検出することができる。
【0020】
第4の発明によれば、例えば、自車両の走行速度が比較的大きい状況、すなわち、仮に自動制動が誤って開始された場合に自車両が後続車に追突される危険性が高いと考えられる状況では、連続踏込操作が行われたと判定され易くなるよう勾配閾値を算出することができる。つまり、自動制動の解除が必要と考えられる状況では自動制動を解除し易くすることができる。
【0021】
第5の発明によれば、例えば、自車両に対する障害物の相対速度が自車両へ接近する方向へ比較的大きくなっている状況、すなわち自車両が障害物と衝突する危険性が大きくなると考えられる状況では、勾配閾値を大きくする等して自動制動を解除し難くすることができる。つまり、自動制動の実行が必要と考えられる状況では自動制動を解除し難くすることができる。
【0022】
第6の発明によれば、例えば、自車両と先行車との衝突予測時間が比較的短い状況では、すなわち自車両が先行車とが衝突する可能性が比較的高いと考えられる状況では、勾配閾値を大きくする等して自動制動を解除し難くすることができる。つまり、自動制動の実行が必要と考えられる状況では自動制動を解除し難くすることができる。
【0023】
第7の発明によれば、自動制動を実行している制動時間の長さに応じて勾配閾値を算出することができる。自動制動の開始直後と、開始後一定時間が経過した後とでは、ドライバーによる自動制動解除の要求度合いが異なると考えられる。したがって、制動時間の長さに応じて勾配閾値を算出することによって、このようなドライバーの要求に応じて自動制動を解除し易く(或いは解除し難く)することができる。
【0024】
第8の発明によれば、ドライバーが自車両のアクセルペダルを踏み込んだ状態を維持する継続踏込操作を行った場合に自動制動を解除することができる。自動制動が実行されている最中にドライバーがこのような継続踏込操作を行っている場合、ドライバーが自車両を加速させたいと考えている可能性が高い。したがって、このような処理によれば、ドライバーに自動制動を解除する意志があることが明確な場合に自動制動を解除することができる。
【0025】
第9の発明によれば、継続踏込操作があったか否かを閾値を用いた簡単な処理で判定することができる。
【0026】
第10の発明によれば、自車両の走行状況や、自車両と障害物との状況に応じて自動制動を解除し易くすることができる。例えば、自車両の走行速度が比較的大きい状況では、仮に自動制動が誤って開始された場合に自車両が後続車に追突される危険性が高いと考えられる状況では、継続踏込操作が行われたと判定され易くなるよう開度閾値を算出することができる。つまり、自動制動の解除が必要と考えられる状況では自動制動を解除し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置1の構成を示すブロック図の一例
【図2】本発明の実施形態に係る衝突判定ECU20が実行する処理の詳細を示すフローチャートの一例
【図3】衝突判定ECU20が実行する継続踏込操作判定処理の詳細を示すフローチャートの一例
【図4】開度閾値Kthを算出するための関数の一例を示す図
【図5】衝突判定ECU20が実行する連続踏込操作判定処理の詳細を示すフローチャートの一例
【図6】車両用制動制御装置1がドライバーの継続踏込操作を検出して自動制動を解除する様子を示す図
【図7】車両用制動制御装置1がドライバーの連続踏込操作を検出して自動制動を解除する様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置1について説明する。車両用制動制御装置1は、自車両に搭載され、当該自車両についての自動制動の実行状態を制御する装置である。自動制動とは、ドライバーの操作に関わらず車両のブレーキ装置を制御して、自車両に自動的な制動力を発生させる制動制御のことを言う。車両用制動制御装置1は、自車両と障害物とが衝突する危険性が高い場合に自動制動を実行し、ドライバーが自動制動を解除するための操作(以下、自動制動解除操作と称する)を行った場合に自動制動を停止する。
【0029】
先ず、図1を参照して車両用制動制御装置1の構成について説明する。なお、図1は、車両用制動制御装置1の構成を示すブロック図の一例である。図1に示すように、車両用制動制御装置1は、レーダー装置11、アクセル装置12、車速センサ13、加速度センサ14、衝突判定ECU20、およびブレーキ制御ECU30を備える。
【0030】
レーダー装置11は、自車両の周囲に電磁波を送信し、障害物によって反射された当該電磁波を受信することによって障害物を検出する装置である。レーダー装置11は、障害物を検出した場合、自車両に対する当該障害物情報を検出する。具体的には、レーダー装置11は、障害物走行情報として、当該障害物自車両に対する相対速度Vr(km/h)、および当該障害物から自車両までの距離L(km)を検出する。そして、レーダー装置11は、相対速度Vrおよび距離Lを示すデータを衝突判定ECU20へ送信する。なお、レーダー装置11が相対速度Vrおよび距離Lを検出する方法は、従来周知の任意の手法を用いて良い。
【0031】
アクセル装置12は、自車両のドライバーからの入力操作を受け付け、自車両を加速させる装置である。ドライバーはアクセル装置12に備えられたアクセルペダルを踏み込むことによって上記入力操作を行う。アクセル装置12は、ドライバーによるアクセルペダルの踏み込み量に応じて増減するアクセル開度Kの値を、衝突判定ECU20へ送信する。なお、アクセル開度Kは、ドライバーがアクセルペダルを深く踏み込むほど大きな値となるものとする。
【0032】
車速センサ13は、自車両の走行速度Vs(km/h)を検出するセンサ装置である。車速センサ13は、検出した自車両の走行速度Vsを示すデータを衝突判定ECU20へ送信する。なお、車速センサ13が走行速度Vsを検出する方法は、従来周知の任意の手法を用いて良い。
【0033】
加速度センサ14は、自車両の加速度AC(m/s2)を検出するセンサ装置である。加速度センサ14は、検出した自車両の加速度ACを示すデータを衝突判定ECU20へ送信する。なお、加速度センサ14が加速度ACを検出する方法は、従来周知の任意の手法を用いて良い。
【0034】
衝突判定ECU20は、レーダー装置11、アクセル装置12、車速センサ13、および加速度センサ14から得た情報に基づいて制動動作の実行および停止の指示をブレーキ制御ECU30へ行う制御装置である。衝突判定ECU20は、典型的には、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)などの情報処理装置、メモリなどの記憶装置、およびインターフェース回路などを備える制御装置である。衝突判定ECU20が実行する処理の詳細については後述する。
【0035】
ブレーキ制御ECU30は、自車両のブレーキ装置の動作を制御する制御装置である。ブレーキ制御ECU30は、衝突判定ECU20からの指示信号およびドライバーのブレーキペダル(図示せず)を介した入力操作に応じて自車両のブレーキ装置を動作させる。ブレーキ制御ECU30は、衝突判定ECU20から自動制動を開始する指示信号を受けた場合、ドライバーのブレーキペダルへの操作の有無に関わらずブレーキ装置を動作させて、自車両に自動的に制動力を発生させる。
【0036】
次いで、衝突判定ECU20が実行する処理について説明する。衝突判定ECU20は、レーダー装置11等から得た情報に基づいて自動制動を開始する。そして、衝突判定ECU20は、アクセル装置12等から得た情報に基づいて、ドライバーが自動制動解除操作を行ったか否か判定し、当該判定結果に基づいて自動制動を解除させる。以下、図2を参照して、衝突判定ECU20が実行する処理について詳細に説明する。図2は、本発明の実施形態に係る衝突判定ECU20が実行する処理の詳細を示すフローチャートの一例である。衝突判定ECU20は、例えば、自車両に備えられた入力デバイス(図示せず)によってユーザーが自動制動システムの動作をオン状態にした場合に、図2の処理を実行する。衝突判定ECU20は、図2のフローチャートの処理を開始すると、先ず、ステップS1の処理を実行する。
【0037】
ステップS1において、衝突判定ECU20は、障害物を検出したか否か判定する。具体的には、衝突判定ECU20は、レーダー装置11から障害物に関する情報を受信した場合、障害物を検出したと判定し、処理をステップS2へ進める。一方、衝突判定ECU20は、レーダー装置11から障害物に関する情報を受信していない場合、障害物を検出していないと判定し、処理をステップS8へ進める。
【0038】
ステップS2において、衝突判定ECU20は、障害物と自車両とが衝突する危険性が高いか否か判定する。具体的には、先ず、衝突判定ECU20は、障害物と自車両とが衝突するまでに要すると予想される時間(以下、衝突予測時間TTCと称する)を算出する。より詳細には、衝突判定ECU20は、ステップS1においレーダー装置11から受信した相対速度Vrおよび距離Lを用い、式(1)に基づいて衝突予測時間TTCを算出する。
TTC=L/Vr …(1)
次いで、衝突判定ECU20は、衝突予測時間TTCが予め定められた閾値TTCthより短いか否か判定する。そして、衝突判定ECU20は、衝突予測時間TTCが予め定められた閾値TTCthより短い場合、障害物と自車両とが衝突する危険性が高いと判定し、処理をステップS3へ進めて自動制動を開始する。一方、衝突判定ECU20は、衝突予測時間TTCが予め定められた閾値TTCthより長い場合、障害物と自車両とが衝突する危険性が低いと判定し、処理をステップS8へ進める。なお、上記ステップS2の処理は一例であり、衝突判定ECU20は、障害物と自車両とが衝突する危険性が高い
【0039】
ステップS3において、衝突判定ECU20は、自動制動を開始する。具体的には、衝突判定ECU20は、ブレーキ制御ECU30へ自動制動を開始する指示信号を送信する。衝突判定ECU20は、ステップS3の処理を完了すると、処理をステップS4へ進め、ドライバーが自動制動を解除する操作を行っているか否か判定する。
【0040】
ステップS4において、衝突判定ECU20は、継続踏込操作判定処理を実行する。継続踏込操作処理は、自動制動解除操作の一つである継続踏込操作がドライバーによって行われたか否かを判定する処理である。継続踏込操作は、自車両のドライバーが前記アクセルペダルを踏み込んだ状態を維持する操作である。衝突判定ECU20は、ドライバーが継続踏込操作を行ったと判定した場合、自動制動を停止させる。以下、図3を参照して、衝突判定ECU20が実行する継続踏込操作判定処理について説明する。図3は、衝突判定ECU20が実行する継続踏込操作判定処理の詳細を示すフローチャートの一例である。衝突判定ECU20は、図3のフローチャートの処理を開始すると、先ず、ステップS41の処理を実行する。
【0041】
ステップS41において、衝突判定ECU20は、加速度センサ14から加速度ACを取得する。衝突判定ECU20は、ステップS41の処理を完了すると、処理をステップS42へ進める。
【0042】
ステップS42において、衝突判定ECU20は、加速度ACが加速度閾値ACth以下であるか否か判定する。加速度閾値ACthは、衝突判定ECU20の記憶装置に予め記憶された定数値であり、例えばゼロである。すなわち、ステップS42において衝突判定ECU20は、自車両の加速度ACが負であるか否か判定する。衝突判定ECU20は、加速度ACが加速度閾値ACth以下であると判定した場合、処理をステップS43へ進める。一方、衝突判定ECU20は、加速度ACが加速度閾値ACthより大きいと判定した場合、処理をステップS51へ進める。
【0043】
自動制動が開始されている場合、加速度ACが負となっている可能性が高い。したがって、上述ステップS42のような処理によって、自動制動が実行されている可能性が高いか否か判定することができる。自動制動が行われていない状況では自動制動解除操作の有無を判定する処理は不要であるため、自動制動が実行されている可能性が高い場合にのみ以下に示す処理を行うことによって、不要な処理の実行を抑制することができる。
【0044】
ステップS43において、衝突判定ECU20は、走行速度Vsを車速センサ13から取得する。衝突判定ECU20は、ステップS43の処理を完了すると、処理をステップS44へ進める。
【0045】
ステップS44において、衝突判定ECU20は、ステップS43において取得した走行速度Vsに基づいて開度閾値Kthを算出する。開度閾値Kthは、自車両のドライバーが継続踏込操作を実行したか否か判定するためのアクセル開度Kについての閾値である。衝突判定ECU20は、例えば、走行速度Vsが大きいほど、開度閾値Kthを小さな値として算出する。より具体的には、図4に示すような走行速度Vsを変数とする関数に基づいて開度閾値Kthを算出する。なお、図4は、開度閾値Kthを算出するための関数の一例を示す図である。なお、上記ステップS44の処理は一例であり、衝突判定ECU20が走行速度Vsに基づいて開度閾値Kthを算出可能であれば、従来周知の任意の手法を用いて開度閾値Kthを算出しても良い。衝突判定ECU20は、ステップS44の処理を完了すると、処理をステップS45へ進める。
【0046】
上記ステップS44のように開度閾値Kthを算出することによって、走行速度Vsが比較的大きい状況、すなわち、仮に自動制動が誤って開始された場合に自車両が後続車に追突される危険性が高いと考えられる状況では、継続踏込操作が行われたと判定され易くなるよう開度閾値Kthを算出し、自動制動を解除し易くすることができる。
【0047】
ステップS45において、衝突判定ECU20は、アクセル装置12からアクセル開度Kを取得する。衝突判定ECU20は、ステップS45の処理を完了すると、処理をステップS46へ進める。
【0048】
ステップS46において、衝突判定ECU20は、アクセル開度Kが開度閾値Kth以上であるか否か判定する。衝突判定ECU20は、アクセル開度Kが開度閾値Kth以上であると判定した場合、処理をステップS47へ進める。一方、衝突判定ECU20は、アクセル開度Kが開度閾値Kth未満であると判定した場合、処理をステップS48へ進める。
【0049】
ステップS47において、衝突判定ECU20は、タイマー値Tをインクリメントする。タイマー値Tは、アクセル開度Kが開度閾値Kthを越えた状態の継続時間を示す数値である。タイマー値Tは、衝突判定ECU20の記憶装置に記憶される変数であり、初期値は例えばゼロに予め設定されている。衝突判定ECU20は、本ステップS47において、予め定められた定数値(例えば、1)をタイマー値Tに加算する。衝突判定ECU20は、ステップS47の処理を完了すると、処理をステップS49へ進める。
【0050】
ステップS48において、衝突判定ECU20は、タイマー値Tの値をリセット、すなわち初期化する。衝突判定ECU20は、ステップS48の処理を完了すると、処理をステップS49へ進める。
【0051】
ステップS49において、衝突判定ECU20は、タイマー値Tがタイマー閾値Tth以上であるか否か判定する。衝突判定ECU20は、タイマー値Tがタイマー閾値Tth以上であるであると判定した場合、処理をステップS50へ進める。一方、衝突判定ECU20は、タイマー値Tがタイマー閾値T未満であると判定した場合、処理をステップS51へ進める。
【0052】
ステップS50において、衝突判定ECU20は、継続踏込フラグをオン状態に設定する。継続踏込フラグは、当該フラグがオン状態に設定されている場合に継続踏込操作があったことを示し、当該フラグがオフ状態に設定されている場合に継続踏込操作がないことを示すフラグデータである。継続踏込フラグは、初期状態ではオフ状態に設定されているものとする。衝突判定ECU20は、ステップS50の処理を完了すると、処理を図2のステップS5へ進める。
【0053】
ステップS51において、衝突判定ECU20は、継続踏込フラグをオフ状態に設定する。衝突判定ECU20は、ステップS51の処理を完了すると、処理を図2のステップS5へ進める。
【0054】
上記継続踏込操作判定処理によれば、アクセル開度Kが開度閾値Kthを越えた状態が所定時間継続した場合に、継続踏込操作があったと判定し、継続踏込フラグをオン状態に設定される。
【0055】
ステップS5において、衝突判定ECU20は、継続踏込フラグがオンか否か判定する。衝突判定ECU20は、継続踏込フラグがオンであると判定した場合、処理をステップS8へ進める。一方、衝突判定ECU20は、継続踏込フラグがオフであると判定した場合、処理をステップS6へ進める。
【0056】
ステップS6において、衝突判定ECU20は、連続踏込操作判定処理を実行する。連続踏込操作処理は、自動制動解除操作の一つである連続踏込操作がドライバーによって行われたか否かを判定する処理である連続踏込操作は、自車両のドライバーが自車両のアクセルペダルを連続して踏み込む操作である。以下、図5を参照して、衝突判定ECU20が実行する連続踏込操作判定処理について説明する。図5は、衝突判定ECU20が実行する連続踏込操作判定処理の詳細を示すフローチャートの一例である。衝突判定ECU20は、図5のフローチャートの処理を開始すると、先ず、ステップS61の処理を実行する。
【0057】
ステップS61において、衝突判定ECU20は、車速センサ13から走行速度Vsを取得する。なお、上述ステップS2において既に走行速度Vsを取得している場合には、本ステップS61の処理を省略しても構わない。衝突判定ECU20は、ステップS61の処理を完了すると、処理をステップS62へ進める。
【0058】
ステップS62において、衝突判定ECU20は、走行速度Vsに基づいて第1勾配閾値Dth1を算出する。第1勾配閾値Dth1は、ドライバーがアクセルペダルを踏み込む操作を行ったか否かを判定するための閾値である。衝突判定ECU20は、例えば、走行速度Vsが大きいほど、第1勾配閾値Dth1を小さな値として算出する。具体的には、衝突判定ECU20はステップS44と同様にして第1勾配閾値Dth1を算出する。衝突判定ECU20は、ステップS62の処理を完了すると、処理をステップS63へ進める。
【0059】
上記ステップS66のように第1勾配閾値Dth1を算出することによって、走行速度Vsが比較的大きい状況、すなわち、仮に自動制動が誤って開始された場合に自車両が後続車に追突される危険性が高いと考えられる状況では、継続踏込操作が行われたと判定され易くなるよう第1勾配閾値Dth1を算出し、自動制動を解除し易くすることができる。
【0060】
ステップS63において、衝突判定ECU20は、第2勾配閾値Dth2を算出する。第2勾配閾値Dth2は、ドライバーがアクセルペダルの踏み込みを緩める操作を行ったか否かを判定するための閾値である。衝突判定ECU20は、第2勾配閾値Dth2を第1勾配閾値Dth1より小さな値として算出する。衝突判定ECU20は、例えば、第1勾配閾値Dth1から予め定められた定数を減算することによって、第2勾配閾値Dth2を算出する。なお、上記の算出方法は一例であり、衝突判定ECU20は、第2勾配閾値Dth2を第1勾配閾値Dth1より小さな値として算出可能であれば、従来周知の任意の手法を用いて第2勾配閾値Dth2を算出して構わない。衝突判定ECU20は、ステップS63の処理を完了すると、処理をステップS64へ進める。
【0061】
ステップS64において、衝突判定ECU20は、アクセル開度勾配Dを算出する。アクセル開度勾配Dは単位時間あたりのアクセル開度Kの変化量を示す値である。具体的には、衝突判定ECU20は、先ず、現時点のアクセル開度Kを取得し、自身の記憶装置に記憶する。次いで、衝突判定ECU20は、予め定められた時間Δt前の時点に記憶したアクセル開度Kの値をK2とし、現時点のアクセル開度KをK1とした場合、式(2)に基づいてアクセル開度勾配Dを算出する。
D=(K1−K2)/Δt …(2)
衝突判定ECU20は、ステップS64の処理を完了すると、処理をステップS65へ進める。
【0062】
ステップS65において、衝突判定ECU20は、踏込フラグがオン状態か否か判定する。踏込フラグは、ドライバーがアクセルペダルを踏み込む操作を行った場合にオン状態に設定され、その後、ドライバーが当該踏み込みを緩める操作を行った場合にオフ状態に設定されるフラグデータである。衝突判定ECU20は、踏込フラグがオン状態であると判定した場合、処理をステップS72へ進める。一方、衝突判定ECU20は、踏込フラグがオフ状態であると判定した場合、処理をステップS66へ進める。
【0063】
ステップS66において、衝突判定ECU20は、アクセル開度勾配Dが第1勾配閾値Dth1以上であるか否か判定する。衝突判定ECU20は、アクセル開度勾配Dが第1勾配閾値Dth1以上であると判定した場合、処理をステップS67へ進める。一方、衝突判定ECU20は、アクセル開度勾配Dが第1勾配閾値Dth1未満であると判定した場合、処理を図2のステップS7へ進める。
【0064】
ステップS67において、衝突判定ECU20は、踏込フラグをオン状態に設定する。衝突判定ECU20は、ステップS67の処理を完了すると、処理をステップS68へ進める。
【0065】
ステップS68において、衝突判定ECU20は、踏込カウンタNをインクリメントする。踏込カウンタNは、ドライバーがアクセルペダルを踏み込む操作を踏み込んだ回数を示す値である。踏込カウンタNの初期値は、例えば、ゼロに予め設定される。衝突判定ECU20は、踏込カウンタNに予め定められた定数(例えば1)を加算し、加算後の値を記憶装置に記憶する。衝突判定ECU20は、ステップS68の処理を完了すると、処理をステップS69へ進める。
【0066】
上記ステップS65からステップS68の処理によれば、踏込フラグがオフ状態からオン状態に切り替えられた場合、すなわち、ドライバーがアクセルペダルを踏み込むたびに踏込カウンタNの値が増加する。
【0067】
ステップS69において、衝突判定ECU20は、踏込カウンタNがカウンタ閾値Nth以上であるか否か判定する。カウンタ閾値Nthは、ドライバーが連続踏込操作を行ったか否か判定するための閾値である。カウンタ閾値Ntは、予め定められた定数(例えば2)である。衝突判定ECU20は、踏込カウンタNがカウンタ閾値Nth以上であると判定した場合、処理をステップS70へ進める。一方、衝突判定ECU20は、踏込カウンタNがカウンタ閾値Nth未満であると判定した場合、処理をステップS71へ進める。
【0068】
ステップS70において、衝突判定ECU20は、連続踏込フラグをオン状態に設定する。連続踏込フラグは、当該フラグがオン状態である場合にドライバーが連続踏込操作を行ったことを示し、当該フラグがオフ状態である場合にドライバーが連続踏込操作を行ったことを示すフラグデータである。連続踏込フラグは、初期状態ではオフ状態に設定されているものとする。衝突判定ECU20は、ステップS70の処理を完了すると、処理を図2のステップS7へ進める。
【0069】
ステップS71において、衝突判定ECU20は、連続踏込フラグをオフ状態に設定する。衝突判定ECU20は、ステップS71の処理を完了すると、処理を図2のステップS7へ進める。
【0070】
ステップS72において、衝突判定ECU20は、アクセル開度勾配Dが第2勾配閾値Dth2以下であるか否か判定する。衝突判定ECU20は、アクセル開度勾配Dが第2勾配閾値Dth2であると判定した場合、処理をステップS73へ進める。一方、衝突判定ECU20は、アクセル開度勾配Dが第2勾配閾値Dth2より大きいと判定した場合、処理を図2のステップS7へ進める。
【0071】
ステップS73において、衝突判定ECU20は、踏込フラグをオフ状態に設定する。衝突判定ECU20は、ステップS73の処理を完了すると、処理を図2のステップS7へ進める。
【0072】
ステップS7において、衝突判定ECU20は、連続踏込フラグがオン状態か否か判定する。衝突判定ECU20は、連続踏込フラグがオン状態であると判定した場合、処理をステップS8へ進め、自動制動を停止させる。一方、衝突判定ECU20は、連続踏込フラグがオフ状態であると判定した場合、処理をステップS9へ進める。
【0073】
ステップS8において、衝突判定ECU20は、ブレーキ制御ECU30へ自動制動を停止させる指示信号を送信する。なお、衝突判定ECU20は、本ステップS8において、自動制動を停止させるとともに、上述の継続踏込フラグ、連続踏込フラグ、踏込フラグ、タイマー値T、および踏込カウンタNを初期化する。衝突判定ECU20は、ステップS8の処理を完了すると、処理をステップS9へ進める。
【0074】
ステップS9において、衝突判定ECU20は、ユーザーによって自動制動システムがオフ状態に設定されたか否か判定する。衝突判定ECU20は、自動制動システムがオフ状態に設定されたと判定した場合、図2の処理を終了する。一方、衝突判定ECU20は、自動制動システムがオフ状態に設定されていないと判定した場合、処理をステップS1へ戻し、上述各ステップの処理を繰り返し実行する。
【0075】
次いで、車両用制動制御装置1によって、自動制動が解除される様子を図6および図7を参照して説明する。図6は、車両用制動制御装置1がドライバーの継続踏込操作を検出して自動制動を解除する様子を示す図である。図7は、車両用制動制御装置1がドライバーの連続踏込操作を検出して自動制動を解除する様子を示す図である。
【0076】
図6の(a)に示すグラフにおいて、縦軸はアクセル開度Kを表し、横軸は時刻tを表す。なお、図6の(a)において、点線は開度閾値Kthを示す。図6の(b)に示すグラフにおいて、縦軸は自車両に発生している自動制動の制動力(以下、自動制動力Pと称する)を表し、横軸は時刻tを表す。図6の(a)に示すように、自車両のドライバーは時刻t1からアクセルペダルの踏み込み操作を開始し、時刻t2から略一定量の踏み込みを維持した状態となっているものとする。
【0077】
図6の(b)に示すように先ず、時刻t1の時点で、自動制動が開始される(ステップS3)。自動制動が開始されると図6の(a)に示すように自車両の速度が徐々に低下するため、開度閾値Kthの値が徐々に増加する。その後、図6の(a)に示すように時刻t2の時点においてアクセル開度Kの値が開度閾値Kthを越える(ステップS46でYes)。アクセル開度Kの値が開度閾値Kthを越えた状態のまま、時刻t2からタイマー閾値Tthに応じた時間が経過すると(ステップS49でYes)継続踏込フラグがオン状態に設定される(ステップS50)。そして、継続踏込フラグがオン状態となった時刻t3において(ステップS5でYes)、自動制動が停止され(ステップS8)、図6の(b)に示すように自動制動力Pの値がゼロとなる。
【0078】
このように、本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置1によれば、ドライバーがアクセルペダルを踏み込み続ける継続踏込操作を実行した場合に、自動制動の実行を停止することができる。
【0079】
図7の(a)に示すグラフにおいて、縦軸はアクセル開度Kを表し、横軸は時刻tを表す。図7の(b)に示すグラフにおいて、縦軸はアクセル開度勾配Dを表し、横軸は時刻tを表す。なお、図7の(b)において、一点鎖線は第1勾配閾値Dth1を示し、二点鎖線は第2勾配閾値Dth2を示す。図7の(c)に示すグラフにおいて、縦軸は自動制動力Pを表し、横軸は時刻tを表す。図7の(a)に示すように、自車両のドライバーは時刻t5からアクセルペダルの踏み込み操作を開始し、時刻t6において当該踏み込みを緩める。その後、ドライバーは時刻t7において再度踏み込み操作を実行しているものとする。
【0080】
図7の(c)に示すように、先ず、時刻t4の時点で、車両用制動制御装置1は自動制動を開始する(ステップS3)。その後、図7の(b)に示すように時刻t5の時点においてアクセル開度勾配Dの値が第1勾配閾値Dth1を越えると(ステップS66でYes)、踏込フラグがオン状態に設定され(ステップS67)、踏込カウンタNの値が1となる(ステップS68)。この時点で踏込カウンタNの値は閾値Nthの2以下であることから(ステップS69でNo)、連続踏込フラグはオフの状態のまま(ステップS71)処理が繰り返される。その後、時刻t6において、アクセル開度勾配Dの値が第2勾配閾値Dth2を下回ると(ステップS72でYes)、踏込フラグが一旦オフ状態に設定される(ステップS73)。さらにその後、時刻t7において、アクセル開度勾配Dの値が再び第1勾配閾値Dth1を越えると(ステップS66でYes)、踏込フラグが再度オン状態に設定され(ステップS67)、踏込カウンタNの値が2となる(ステップS68)。この時点で踏込カウンタNの値は閾値Nthを越えることから(ステップS69でYes)、連続踏込フラグがオン状態に設定される(ステップS71)。連続踏込フラグがオン状態に設定されると(ステップS7でYes)、自動制動が停止され(ステップS8)、図7の(c)に示すように自動制動力Pの値がゼロとなる。
【0081】
このように、本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置1によれば、ドライバーがアクセルペダルを連続的に踏み込む連続踏込操作を実行した場合に、自動制動の実行を停止することができる。
【0082】
以上に示したように、本発明の実施形態に係る車両用制御装置1によれば、ドライバーが連続踏込操作および継続踏込操作を行った場合、すなわち自車両を加速させる意図を持ってアクセルペダルを操作した場合に、自動制動の実行を停止することができる。
【0083】
なお、上記実施形態では、衝突判定ECU20が開度閾値Kthおよび第1勾配閾値Dth1を各々走行速度Vsに基づいて算出する例について示したが、衝突判定ECU20は、開度閾値Kthおよび第1勾配閾値Dth1を各々他のパラメータに基づいて算出しても構わない。例えば、衝突判定ECU20は、開度閾値Kthおよび第1勾配閾値Dth1を各々衝突判定時間TTCに基づいて算出しても構わない。より具体的には、衝突判定ECU20は、衝突判定時間TTCが小さいほど、開度閾値Kthおよび第1勾配閾値Dth1が大きくなるよう各々算出しても構わない。また、衝突判定ECU20は、開度閾値Kthおよび第1勾配閾値Dth1を障害物との相対速度Vrに基づいて算出しても構わない。より具体的には、衝突判定ECU20は、自車両と障害物との相対速度Vrが自車両に接近する方向に速いほど、開度閾値Kthおよび第1勾配閾値Dth1が大きくなるよう各々算出しても構わない。このように開度閾値Kthおよび第1勾配閾値Dth1を算出すれば、衝突する可能性が比較的高い場合等においては自動制動が解除され難くなり、誤って自動制動が解除されることを防ぐことができる。
【0084】
また、衝突判定ECU20は、自動制動開始した時点からの経過時間、すなわち自動制動を実行している時間の長さをカウントし、当該時間に基づいて開度閾値Kthおよび第1勾配閾値Dth1を算出しても構わない。自動制動の開始直後と、開始後一定時間が経過した後とでは、ドライバーによる自動制動解除の要求度合いが異なると考えられる。したがって、制動時間の長さに応じて勾配閾値を算出することによって、ドライバーの要求に応じて自動制動を解除し易く(或いは解除し難く)することができる。なお、自動制動を解除し易くする場合、衝突判定ECU20は自動制動の実行時間が長いほど開度閾値Kthおよび第1勾配閾値Dth1の値を各々小さく算出し、自動制動を解除し難くする場合には、衝突判定ECU20は自動制動の実行時間が長いほど開度閾値Kthおよび第1勾配閾値Dth1の値を各々大きく算出する。
【0085】
また、衝突判定ECU20は、開度閾値Kth、第1勾配閾値Dth1、および第2勾配閾値Dth2の値を予め定数として記憶していても良い。この場合、閾値を算出する処理を省略して処理時間を短縮することができる。
【0086】
なお、上記衝突判定ECU20が実行する各ステップの処理の実行順序は一例であり、例えば、衝突判定ECU20は、ステップS6およびステップS7の処理を順次実行した後に、ステップS4およびステップS5の処理を順次実行しても良い。また、衝突判定ECU20は、上述ステップS63の処理を、踏込フラグがオン状態であると判定した後(ステップS65でYes)、ステップS72を実行する直前に実行しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る車両用制動制御装置は、ドライバーの意図に応じて的確に自動制動を解除可能な車両用制動制御装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 車両用制動制御装置
11 レーダー装置
12 アクセル装置
13 車速センサ
14 加速度センサ
20 衝突判定ECU
30 ブレーキ制御ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と障害物との衝突の危険性に応じて自動的に自車両を制動する車両用制動制御装置であって、
前記自車両と障害物との衝突の危険性が高いか否かを判定する衝突判定手段と、
前記衝突判定手段によって前記自車両と障害物との衝突の危険性が高いと判定された場合、前記自車両のブレーキ装置を制御して自動的に制動力を発生させる自動制動手段と、
前記自車両のドライバーによる前記自車両のアクセルペダルの操作頻度に基づいて、前記自動制動手段による前記自動的な制動力の発生を停止する自動制動解除手段とを備えることを特徴とする、車両用制動制御装置。
【請求項2】
前記自動制動解除手段は、前記自車両のドライバーが前記自車両のアクセルペダルを高い頻度で連続的に踏み込む連続踏込操作を行った否か判定する連続踏込操作判定手段を含み、
前記車両用制御装置は、
前記自車両のアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
前記アクセル開度の所定時間当たりの変化量をアクセル開度勾配として算出する開度勾配算出手段とをさらに備え、
前記連続踏込操作判別手段は、前記アクセル開度勾配と所定の勾配閾値との大小関係に基づいて前記連続踏込操作が行われたか否かを判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両用制動制御装置。
【請求項3】
前記勾配閾値には、第1の開度勾配閾値と、当該第1の開度勾配閾値より小さい第2の開度勾配閾値とが含まれ、
前記連続踏込操作判定手段は、前記アクセル開度勾配が第1の勾配閾値を越えた場合に
前記ドライバーが前記アクセルペダルを踏み込む操作を行ったと判定し、前記アクセル開度勾配が前記第2の勾配閾値を下回った場合に前記ドライバーが前記アクセルペダルの踏み込みを緩める操作を行ったと判定し、前記アクセルペダルを踏み込む操作と前記アクセルペダルの踏み込みを緩める操作が交互に所定回数以上実行されたと判定した場合、前記連続踏込操作が行われたと判定することを特徴とする、請求項2に記載の車両用制動制御装置。
【請求項4】
前記自車両の走行速度を検出する自車速度検出手段と、
前記自車両の走行速度に基づいて前記勾配閾値を算出する勾配閾値算出手段とをさらに備えることを特徴とする、請求項2から3の何れか1項に記載の車両用制動制御装置。
【請求項5】
前記自車両と前記障害物との相対速度を検出する相対速度算出手段と、
前記相対速度に基づいて前記勾配閾値を算出する勾配閾値算出手段とをさらに備えることを特徴とする、請求項2から3の何れか1項に記載の車両用制動制御装置。
【請求項6】
前記自車両と前記自車両の後続車とが衝突するまでに要する時間を衝突予測時間として算出する衝突予測時間算出手段と、
前記衝突予測時間に基づいて前記勾配閾値を算出する勾配閾値算出手段とをさらに備えることを特徴とする、請求項2から3の何れか1項に記載の車両用制動制御装置。
【請求項7】
前記自動制動手段が自動的な制動力の発生を開始した時点からの経過時間を制動時間として算出する自動制動時間算出手段と、
前記制動時間の長さに基づいて前記勾配閾値を算出する勾配閾値算出手段とをさらに備えることを特徴とする、請求項2から3の何れか1項に記載の車両用制動制御装置。
【請求項8】
前記自動制動解除手段は、前記自車両のドライバーが前記アクセルペダルを踏み込んだ状態を維持する継続踏込操作を行った否か判定する継続踏み込み操作判定手段を含むことを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載の車両用制動制御装置。
【請求項9】
前記自車両のアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段をさらに備え、
前記アクセル操作判定手段は、前記自車両のアクセル開度が所定の開度閾値を越えた状態が予め定められた時間以上継続している場合に、前記継続踏み込み操作を行ったと判定することを特徴とする、請求項8に記載の車両用制動制御装置。
【請求項10】
前記自車両の走行速度、前記障害物の前記自車両に対する相対速度、および前記自車両と前記障害物とが衝突するまでに要すると予測される衝突予測時間の少なくとも何れか1つを検出する車両状態量検出手段と、
前記走行速度、前記相対速度、および前記衝突予測時間の少なくとも何れか1つに基づいて前記開度閾値を算出する、開度閾値算出手段とをさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載の車両用制動制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−224119(P2012−224119A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91138(P2011−91138)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】