説明

車両用制動装置

【課題】 車両の制動に伴って発生する熱エネルギーを効率よく回収し利用する車両用制動装置を提供すること。
【解決手段】 電子制御ユニット31は、バッテリモニタ32からバッテリ23のバッテリ容量Wを入力し、容量Wが上限値Wm以上であるか否かを判定する。そして、ユニット31は容量Wが上限値Wm以上であるときには切替回路22をバッテリ23から熱電変換部21に向けた電気エネルギーの流れを許可する状態に切り替える。これにより、変換部21がバッテリ23から放電された電気エネルギーを消費してキャリパ12aを冷却する。一方、ユニット31は、容量Wが上限値Wm未満であるときには回路22を変換部21からバッテリ23に向けた電気エネルギーの流れを許可する状態に切り替える。これにより、変換部21は、キャリパ12aに発生した熱エネルギーを回収し、変換した電気エネルギーをバッテリ23に充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両用制動装置に関し、特に、車両の車輪を制動することに加えてこの制動に伴って発生する熱エネルギーを回収する車両用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の熱源から熱エネルギーを回収し、この回収した熱エネルギーを、例えば、電気エネルギーに変換して利用することが盛んに研究されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、回転部にブレーキパッドを圧着してブレーキをかけるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに接続するヒートパイプと、ヒートパイプの放熱側端に接続する熱電変換素子と、熱電変換素子の冷却側面に接続する放熱器と、熱電変換素子に接続する蓄電池とを備えた回生ブレーキ装置が示されている。この回生ブレーキ装置においては、制動により生じた摩擦熱がヒートパイプを介して熱電変換素子の加熱面に伝達される一方で熱電変換素子の冷却面が放熱器によって冷却されるため、熱電変換素子は加熱面側と冷却面側との間の温度差により電力を発生することができる。したがって、制動により運動エネルギーを熱エネルギー(摩擦熱)として回収して電気エネルギーに変換できるようになっている。
【0004】
また、例えば、下記特許文献2には、ブレーキ装置本体のシリンダーボデーの油圧伝達液体部を熱吸収側とし、ブレーキ装置本体の大気中部を熱放熱側として、ブレーキ装置本体のシリンダーボデー内部に熱電変換素子を埋設したブレーキ装置が示されている。このブレーキ装置においては、熱電変換素子が油圧伝達液体部の熱を電気に変換するとともにペルチェ効果を利用して変換した電気を冷却エネルギーに変換するようになっている。これにより、油圧伝達液体部を冷却してベーパーロック現象の発生を防止するようになっている。
【0005】
さらに、例えば、下記特許文献3には、排気熱を利用した発電と通電することによる冷却あるいは加熱とを選択的に行える熱電素子と、この熱電素子の出力端が接続されたコンデンサとを備えた内燃機関の排気管冷却装置が示されている。この排気管冷却装置においては、エンジンルーム内の雰囲気温度をモニターし、雰囲気温度が所定値以上のときに、触媒に装着された熱電素子が排気管からの放熱を利用して電力を発生させてコンデンサに蓄電し、排気マニホールドに装着された熱電素子がコンデンサに蓄電された電気を用いてエンジンルーム内の雰囲気温度を低減するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−220804号公報
【特許文献2】特開昭64−22657号公報
【特許文献3】特開平11−257064号公報
【発明の概要】
【0007】
ところで、上記特許文献1ないし特許文献3に記載された従来の装置のように、熱エネルギーを回収し、回収した熱エネルギーを電気エネルギーに変換して利用する場合、熱エネルギーの回収効率を向上させるために、変換された電気エネルギーを適切に消費または蓄電する必要がある。特に、上記特許文献1および特許文献3に記載された従来の装置のように、蓄電手段(蓄電池やコンデンサ)に変換された電気エネルギー(電力)を蓄電する場合には、例えば、変換された電気エネルギー(電力)が蓄電の上限を超えると、それ以上の熱エネルギーの回収が不能となる。このため、蓄電手段の蓄電状態に応じて、蓄電された電気エネルギー(電力)を適切に消費する必要がある。
【0008】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的は、車両を適切に制動するとともに、制動に伴って発生する熱エネルギーの回収と熱エネルギーから変換された電気エネルギーの利用とを効率よく行う車両用制動装置を提供することにある。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車輪の回転に対して制動力を付与するとともにこの制動力の付与に伴って発生する熱エネルギーを回収する車両用制動装置において、前記車輪の回転に対して摩擦による制動力を付与する制動力付与手段と、前記制動力付与手段に設けられて、前記摩擦によって発生する熱エネルギーを回収して電気エネルギーに変換するとともに、電気エネルギーの供給により前記制動力付与手段を冷却する熱電変換手段と、前記熱電変換手段によって変換された電気エネルギーを蓄電する蓄電手段と、前記熱電変換手段と前記蓄電手段とを電気的に接続し、前記熱電変換手段から前記蓄電手段に向けた前記変換された電気エネルギーの流れを許可する状態と、前記蓄電手段から前記熱電変換手段に向けた前記供給による電気エネルギーの流れを許容する状態とに切り替える切替手段と、前記蓄電手段に蓄電された電気エネルギーの蓄電容量を検出する蓄電容量検出手段と、前記蓄電容量検出手段によって検出された前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量と前記蓄電手段に予め設定された蓄電の上限値とを比較し、前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記上限値以上であるか否かを判定する蓄電容量判定手段と、前記蓄電容量判定手段によって前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記上限値未満であると判定されると、前記切替手段を前記熱電変換手段から前記蓄電手段に向けた前記変換された電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替え、前記蓄電容量判定手段によって前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記上限値以上であると判定されると、前記切替手段を前記蓄電手段から前記熱電変換手段に向けた前記供給による電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替える制御手段とを備えたことにある。
【0010】
この場合、前記蓄電容量判定手段は、さらに、前記蓄電容量検出手段によって検出された前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量と前記上限値よりも小さな値に予め設定された所定値とを比較して、前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記所定値以下であるか否かを判定し、前記制御手段は、前記蓄電容量判定手段によって前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記上限値未満であり、かつ、前記蓄電容量判定手段によって前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記所定値以下であると判定されると、前記切替手段を前記熱電変換手段から前記蓄電手段に向けた前記変換された電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替えるとよい。
【0011】
そして、これらの場合、さらに、前記制動力付与手段に設けられて、前記制動力付与手段の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出された前記制動力付与手段の温度が、前記摩擦による制動力の低下する所定温度以上であるか否かを判定する温度判定手段とを備え、前記制御手段は、前記温度判定手段によって検出された前記制動力付与手段の温度が前記所定温度未満であると判定されると、前記切替手段を前記熱電変換手段から前記蓄電手段に向けた前記変換された電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替え、前記温度判定手段によって検出された前記制動力付与手段の温度が前記所定温度以上であると判定されると、前記切替手段を前記蓄電手段から前記熱電変換手段に向けた前記供給による電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替えるとよい。
【0012】
また、これらの場合、前記制動力付与手段は、例えば、前記車輪と一体的に回転するディスクロータとこのディスクロータにブレーキパッドを圧着させるブレーキキャリパとを有し、前記ディスクロータと前記ブレーキパッドの一面側との摩擦によって制動力を付与するものであり、前記熱電変換手段を、前記ブレーキキャリパ内に収容するとともに、前記ブレーキパッドに接触させて設けるとよい。
【0013】
これらによれば、蓄電容量判定手段が蓄電容量検出手段によって検出される蓄電手段に蓄電された電気エネルギーの蓄電容量の大きさを判定し、制御手段が蓄電容量判定手段によって判定された蓄電容量の大きさに応じて切替手段を切り替えて電気エネルギーの流れる方向を切り替えることができる。すなわち、制御手段は、蓄電手段に蓄電された蓄電容量が上限値以上であるときには、切替手段を蓄電手段から熱電変換手段に向けた電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替え、蓄電手段に蓄電された電気エネルギーを放電させて熱電変換手段に供給させることができる。これにより、熱電変換手段は、蓄電手段に上限値まで蓄電された電気エネルギーを消費して、制動力付与手段を冷却することができる。
【0014】
一方、制御手段は、蓄電手段に蓄電された蓄電容量が上限値未満であるときには、切替手段を熱電変換手段から蓄電手段に向けた電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替え、熱電変換手段から蓄電手段に電気エネルギーを供給させることができる。これにより、熱電変換手段は、制動力付与手段において摩擦によって発生する熱エネルギーを回収することができ、蓄電手段は上限値まで電気エネルギーを蓄電することができる。
【0015】
このように、蓄電手段が蓄電している電気エネルギーの蓄電容量の大きさに応じて切替手段が切り替えられることにより、蓄電手段が繰り返し充放電することができるため、熱エネルギーの回収と制動力付与手段の冷却を断続的に行うことができる。したがって、熱エネルギーの回収効率を向上させることができるとともに、熱エネルギーから変換された電気エネルギーを効率よく利用して制動力付与手段の温度の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用制動装置の構成を概略的に示す概略構成図である。
【図2】図1の熱電変換部の配置を示す概略図である。
【図3】図1の熱回収部および制御部の構成を概略的に示す概略構成図である。
【図4】図3の電子制御ユニットによって実行される充放電切替制御プログラムを示すフローチャートである。
【図5】本発明における比較例のバッテリ容量および制動部温度の変化を示すタイムチャートである。
【図6】図4の充放電切替制御プログラムを実行したときのバッテリ容量および制動部温度の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る車両用制動装置について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る車両用制動装置Sのシステム構成を概略的に示している。この車両用制動装置Sは、車両を制動することに加えて、制動に伴って発生する運動エネルギーを熱エネルギーとして回収し、さらに、この回収した熱エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄電するものである。
【0018】
このため、車両用制動装置Sは、図1に示すように、車輪Wに対して制動力を付与する制動部10と、この制動部10による制動に伴って発生する熱エネルギーを吸熱して回収するとともに回収された熱エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄電する熱回収部20と、熱回収部20の作動を制御する制御部30とを備えている。なお、図1においては、1輪に車両用制動装置Sを設けた場合を図示するが、例えば、車両の左右前輪側に車両用制動装置Sを設けたり、車両の左右後輪側や全輪に車両用制動装置Sを設けて実施可能であることはいうまでもない。
【0019】
制動力付与手段としての制動部10は、ディスクロータ11とブレーキキャリパ12とを備えたディスクブレーキユニットである。ディスクロータ11は、図示しないサスペンション装置を構成するナックルNに図示省略のベアリングを介して回転可能に支持されたハブHに対してナットにより組み付けられていて、車輪Wと一体的に回転するものである。ブレーキキャリパ12は、2枚一対のブレーキパッド12aを回転するディスクロータ11に対して圧着させて、摩擦係合による摩擦力を発生するものである。なお、ディスクブレーキユニットの詳細な構造および作動については、周知のディスクブレーキユニットと同様であり、また、本発明に直接関係しないため、その説明を省略する。
【0020】
このように構成された制動部10においては、運転者によって図示しないブレーキペダルが操作されるとブレーキキャリパ12にブレーキ液圧が供給される。これにより、ブレーキキャリパ12は、供給されるブレーキ液圧の増圧に伴って、ブレーキパッド12aをディスクロータ11に対して圧着させて摩擦係合させる。そして、車輪Wと一体的に回転するディスクロータ11に対してブレーキパッド12aを摩擦係合させることによって摩擦力が発生し、この摩擦力が車輪Wの回転を制動する制動力として付与される。
【0021】
また、車輪Wの回転に対して制動力すなわち摩擦力を付与することに伴い、ブレーキパッド12aおよびディスクロータ11には摩擦熱(熱エネルギー)が発生する。したがって、制動部10は、車両の制動に伴って運動エネルギーを摩擦によって熱エネルギー(摩擦熱)に変換することにより、回転する車輪Wを制動する。
【0022】
熱回収部20は、図1および図2に概略的に示すように、ブレーキキャリパ12内に収容された熱電変換手段としての熱電変換部21を備えている。熱電変換部21は、物質(具体的には、半導体)が有する周知のゼーベック効果およびペルチェ効果を利用して、付与された熱エネルギーを電気エネルギーに変換するとともに、供給された電気エネルギーにより熱エネルギーを熱移動(吸熱)するものである。この熱電変換部21は、図3に拡大して示すように、ブレーキキャリパ12内に収容されて、一面側21aが制動部10の発熱部分であるブレーキパッド12aに接触し、他面側21bがブレーキキャリパ12の内面に接触するように組み付けられている。このように組み付けられることにより、熱電変換部21は、後述するように、周知のゼーベック効果によって一面側21aと他面側21bとの間の温度差に応じた起電力(電気エネルギー)を発電するとともに、ペルチェ効果により一面側21aに接触するブレーキパッド12aおよびブレーキパッド12aと摩擦係合するディスクロータ11を冷却する。なお、以下の説明においては、熱電変換部21によって発電された起電力を回生電力(電気エネルギー)という。
【0023】
また、熱回収部20は、図3に示すように、切替回路22とバッテリ23とを備えている。切替手段としての切替回路22は、例えば、図示を省略する周知のスイッチング素子などを主要構成部品として熱電変換部21とバッテリ23とを電気的に接続する電気回路である。そして、切替回路22は、後述する制御部30の電子制御ユニット31による切替制御に従い、熱電変換部21によって発電された回生電力(電気エネルギー)のバッテリ23に向けた通電(以下、この通電を第1通電という)を許可する状態と、逆に、バッテリ23から熱電変換部21に向けた電力(電気エネルギー)の通電(以下、この通電を第2通電という)を許可する状態とに切り替えるものである。ここで、切替回路22は、電子制御ユニット31による切替制御により、通常時において第1通電を許可するように制御される。なお、切替回路22は、例えば、DC−DCコンバータやコンデンサなどによる変圧機能も有しており、第1通電または第2通電への切り替えに伴って通電される電力を適切に変圧するようにもなっている。
【0024】
蓄電手段としてのバッテリ23は、切替回路22が第1通電を許可するときに熱電変換部21から出力された回生電力(電気エネルギー)を蓄電(充電)するとともに、切替回路22が第2通電を許可するときに蓄電(充電)された回生電力を含む電力(電気エネルギー)を放電して熱電変換部21に供給する。ここで、バッテリ23においては、蓄電可能なバッテリ容量として、予め設定された上限値Wmまで電力(電気エネルギー)を蓄電するようになっている。
【0025】
このように構成された熱回収部20において、熱電変換部21の一面側21aは、ブレーキパッド12aに接触しているため、ディスクロータ11とブレーキパッド12aとの摩擦係合により発生する摩擦熱(熱エネルギー)によって加熱される。一方、熱電変換部21の他面側21bは、外気に曝されているブレーキキャリパ12の内面に接触しているため、冷却される。言い換えれば、制動部10が回転している車輪Wに制動力を付与している状況においては、熱電変換部21の一面側21a(加熱側)と他面側21b(冷却側)との間に温度差が生じるため、熱電変換部21は、周知のゼーベック効果により発生した温度差に応じた回生電力(電気エネルギー)を発電することができる。このため、熱電変換部21は、切替回路22が第1通電を許可する通常時においては発電した回生電力(電気エネルギー)をバッテリ23に対して出力することができ、バッテリ23は出力された回生電力(電気エネルギー)を充電(蓄電)することができる。
【0026】
一方、熱回収部20は、切替回路22が第2通電を許可するときには、バッテリ23に蓄電された電力(電気エネルギー)を熱電変換部21に供給することができる。すなわち、バッテリ23は、切替回路22が第2通電を許可するときには、充電(蓄電)した電力(電気エネルギー)を熱電変換部21に対して放電することができる。これにより、熱電変換部21は供給された電力(電気エネルギー)を利用(消費)して、熱電変換部21の一面側21aにて、周知のペルチェ効果により他面側21bに向けて熱移動が生じて冷却されるため、ブレーキパッド12aが冷却される。したがって、ブレーキパッド12aと摩擦係合するディスクロータ11も冷却される。
【0027】
次に、制御部30を説明する。制御部30は、図3に示すように、制御手段としての電子制御ユニット31を備えている。電子制御ユニット31は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、後述するプログラムを実行することにより、熱回収部20(より具体的には、切替回路22)を切替制御する。このため、電子制御ユニット31の入力側には、蓄電容量検出手段としてのバッテリモニタ32が接続されている。バッテリモニタ32は、バッテリ23に蓄電されている電力(電気エネルギー)を表すバッテリ容量Wを検出するためのセンサであり、充電時または放電時にバッテリ23に流れる電流値およびバッテリ23の温度を検出する。そして、バッテリモニタ32は、充放電時の電流値にバッテリ温度などの補正値を加えて、蓄電容量であるバッテリ容量Wを算出して電子制御ユニット31に出力する。
【0028】
次に、制御部30(より詳しくは電子制御ユニット31)による制御について詳細に説明する。電子制御ユニット31は、運転者によって図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされると、図4に示す充放電切替制御プログラムを所定の短い時間間隔により繰り返し実行する。
【0029】
すなわち、電子制御ユニット31は、ステップS10にて充放電切替プログラムの実行を開始し、続くステップS11にて、バッテリモニタ32からバッテリ容量Wを入力する。そして、電子制御ユニット31は、バッテリ容量Wを入力すると、ステップS12に進む。
【0030】
ステップS12においては、電子制御ユニット31は、前記ステップS11にて入力したバッテリ容量Wとバッテリ23に予め設定されている上限値Wmとを比較し、バッテリ容量Wが上限値Wm以上となる(または一致する)状態(以下、この状態を満充電という)であるか否かを判定する。なお、ステップS12におけるステップ処理は本発明の蓄電容量判定手段に対応する。
【0031】
すなわち、電子制御ユニット31は、前記ステップS11にて入力したバッテリ容量Wが上限値Wm以上であればバッテリ23が満充電であるため、「Yes」と判定してステップS13に進む。一方、前記ステップS11にて入力したバッテリ容量Wが上限値Wmと一致していない、より具体的には、入力したバッテリ容量Wが上限値Wm未満であればバッテリ23が満充電ではなく回生電力(電気エネルギー)を充電(蓄電)することができるため、「No」と判定してステップS17に進む。
【0032】
ステップS13においては、電子制御ユニット31は、満充電のバッテリ23から熱電変換部21に対して電力(電気エネルギー)を放電させる。そして、熱電変換部21が供給された電力(電気エネルギー)を消費して、周知のペルチェ効果により制動部10を冷却する。具体的に説明すると、電子制御ユニット31は、切替制御によって、熱回収部20の切替回路22が第1通電を許可する状態から第2通電を許可する状態に切り替える。これにより、満充電のバッテリ23から切替回路22を介して熱電変換部21に電力(電気エネルギー)が供給される。
【0033】
このように電力(電気エネルギー)が供給された熱電変換部21においては、周知のペルチェ効果により、ブレーキパッド12aに接触している一面側21a(加熱側)からブレーキキャリパ12に接触している他面側21b(冷却側)に向けて熱エネルギーを移動させる、すなわち、ブレーキパッド12aに発生した摩擦熱(熱エネルギー)を吸熱する。これにより、ブレーキパッド12aが冷却されるとともに、ブレーキパッド12aと摩擦係合しているディスクロータ11も冷却される。したがって、制動部10、より具体的には、ディスクロータ11およびブレーキパッド12aの温度上昇を抑制することができ、ディスクロータ11およびブレーキパッド12aの温度上昇に伴い摩擦係数が低下する現象、所謂、フェード現象の発生を効果的に防止することができる。そして、電子制御ユニット31は、満充電のバッテリ23から熱電変換部21に対して電力(電気エネルギー)を放電させて、制動部10を冷却させると、ステップS14に進む。
【0034】
ステップS14においては、電子制御ユニット31は、放電状態にあるバッテリ23のバッテリ容量Wをバッテリモニタ32から入力する。そして、放電状態にあるバッテリ23のバッテリ容量Wを入力すると、電子制御ユニット31は、ステップS15に進む。
【0035】
ステップS15においては、電子制御ユニット31は、前記ステップS14にて入力した放電状態にあるバッテリ23のバッテリ容量Wが上限値Wmよりも小さくなるように予め設定された所定値Wo以下であるか否かを判定する。なお、ステップS15におけるステップ処理は本発明の蓄電容量判定手段に対応する。
【0036】
すなわち、電子制御ユニット31は、前記ステップS14にて入力したバッテリ容量Wが所定値Wo以下であれば、「Yes」と判定してステップS16に進む。一方、前記ステップS14にて入力したバッテリ容量Wが所定値Woよりも大きければ、「No」と判定する。そして、電子制御ユニット31は、ステップS15において、放電状態にあるバッテリ容量Wが所定値Wo以下となるまで、繰り返し、ステップS13およびステップS14の各ステップ処理を実行する。すなわち、電子制御ユニット31は、放電状態にあるバッテリ容量Wが所定値Woよりも大きいときには、バッテリ23を放電させて、熱電変換部21に電力(電気エネルギー)を供給して制動部10の冷却を継続する。
【0037】
ステップS16においては、電子制御ユニット31は、バッテリ23におけるバッテリ容量Wの低下に伴い、バッテリ23の放電を停止させて制動部10の冷却を中止する。具体的に説明すると、電子制御ユニット31は、切替制御により、熱回収部20の切替回路22を第2通電を許可する状態から第1通電を許可する状態に切り替えて、バッテリ23から熱電変換部21への電力(電気エネルギー)の供給を遮断する。これにより、電子制御ユニット31は、ペルチェ効果によって熱電変換部21の一面側21aがブレーキパッドの摩擦熱を吸熱(冷却)することを中止させる。そして、電子制御ユニット31は、ステップS17に進む。
【0038】
ステップS17においては、電子制御ユニット31は、熱電変換部21によって発電された電力(電気エネルギー)をバッテリ23に充電させる。すなわち、ステップS17においては、前記ステップS12または前記ステップS15のステップ処理を実行することにより、バッテリ23のバッテリ容量Wは上限値Wm未満である。また、ステップS17においては、電子制御ユニット31は、切替回路22が第1通電を許可する状態に切り替えている(または維持している)。
【0039】
このため、電子制御ユニット31は、熱電変換部21に積極的に摩擦熱(熱エネルギー)を回収させ、回収した摩擦熱(熱エネルギー)を電力(電気エネルギー)に変換させる。そして、電子制御ユニット31は、変換された電力(電気エネルギー)を切替回路22を介してバッテリ23に充電(蓄電)させる。これにより、バッテリ23は、バッテリ容量Wが上限値Wm以上となるまで電力(電気エネルギー)を充電(蓄電)することができる。
【0040】
次に、上記のように作動する車両用制動装置Sの効果を説明する。上述したように、車両用制動装置Sにおいては、電子制御ユニット31が、前記ステップS12または前記ステップS15のステップ処理を実行することによってバッテリ23のバッテリ容量Wを判定し、前記ステップS13または前記ステップS17のステップ処理を実行することによってバッテリ23の放電と充電(蓄電)とを切り替えることができる。これにより、車両用制動装置Sにおいては、電子制御ユニット31が、熱電変換部21を利用して、制動部10を冷却し、または、制動部10にて発生した摩擦熱(熱エネルギー)を電力(電気エネルギー)として回収することができる。
【0041】
ここで、車両用制動装置Sの効果をより明確に説明するために、例えば、電子制御ユニット31がバッテリモニタ32によって検出されたバッテリ容量Wの大きさを敢えて判定しない場合を比較例として想定する。この場合におけるバッテリ容量Wの変化と制動部10の温度T(以下、制動部温度Tという)の変化は、図5にて概略的に示すタイムチャートのように変化する。なお、図5の時間軸上に示した「1」は、熱電変換部21が制動部10の摩擦熱(熱エネルギー)を回収して電力(電気エネルギー)に変換し、回生電力(電気エネルギー)をバッテリ23に充電(蓄電)する処理を行う時間帯を示す。また、図5の時間軸上に示した「2」は、制動部10の摩擦熱(熱エネルギー)を回収することなく空間中に放出する処理を行う時間帯を示す。さらに、図5の時間軸上に示した「3」は、バッテリ23に充電(蓄電)した電力(電気エネルギー)を放電して熱電変換部21に供給し、この供給された電力(電気エネルギー)によって熱電変換部21が制動部10を冷却する処理を行う時間帯を示す。
【0042】
具体的に比較例を説明すると、図5に示す時間帯1においては、実線で示すバッテリ23のバッテリ容量Wが上限値Wm未満であるため、切替回路22は第1通電を許可する状態に維持されており、熱電変換部21によって発電された回生電力(電気エネルギー)はバッテリ23に充電(蓄電)される。また、この時間帯1においては、熱電変換部21が回生電力(電気エネルギー)を発電し、バッテリ23が回生電力(電気エネルギー)を充電(蓄電)することによって、制動部10に発生した摩擦熱(熱エネルギー)が回収されるため、一点鎖線で示す制動部温度Tの上昇が抑制される。
【0043】
そして、時間帯1において回生電力(電気エネルギー)を充電(蓄電)してバッテリ容量Wが上限値Wmとなると、すなわち、満充電となると、バッテリ23はそれ以上回生電力(電気エネルギー)を充電(蓄電)することができなくなる。これにより、比較例においては、図5に示すように、時間帯1からバッテリ23が満充電を維持する時間帯2に移行する。このように、時間帯2に移行すると、切替回路22が第1通電を許可する状態であっても、バッテリ23は熱電変換部21から供給される回生電力(電気エネルギー)を充電(蓄電)することができないため、熱電変換部21は制動部10に発生した摩擦熱(熱エネルギー)を吸熱して回収することができない。したがって、この時間帯2においては、発生した摩擦熱(熱エネルギー)は制動部10の周囲(空間)に向けて放出されるのみであり、一点鎖線で示す制動部温度Tはフェード現象が発生するフェード温度Tfに向けて上昇を続ける。
【0044】
このように、制動部10の摩擦熱(熱エネルギー)を回収することなく空間中に放出する時間帯2において制動部温度Tがフェード温度Tf以上になると、図5に示すように、比較例では時間帯2からバッテリ23に放電させて制動部10を冷却する時間帯3に移行する。なお、この比較例においては、例えば、車両に搭載された他の装置や温度センサなどによる検出値に基づいて制動部10にフェード現象が発生していることを判定して時間帯2から時間帯3に移行するとよい。このように、時間帯3に移行すると、電子制御ユニット31によって切替回路22が第2通電を許可する状態に切り替えられて、バッテリ23に充電(蓄電)された電力(電気エネルギー)を熱電変換部21に放電する。これにより、時間帯3においては、熱電変換部21はバッテリ23から供給された電力(電気エネルギー)を用いて上述したペルチェ効果により制動部10を冷却するため、一点鎖線で示す制動部温度Tは降下する。
【0045】
ところで、この比較例における時間帯3においては、バッテリ23が一旦満充電まで充電(蓄電)した電力(電気エネルギー)を長時間に渡り放電する。このため、制動部温度Tがフェード温度Tf以上となるような高温となっている場合には、大きな電力(電気エネルギー)を熱電変換部21に供給して冷却する必要があり、図5に示すように、放電後の残存バッテリ容量が小さくなる。そして、比較例においては、残存バッテリ容量が小さくなると、ふたたび、時間帯1によりバッテリ容量Wが上限値Wmとなるまで充電(蓄電)する必要があるため、充放電する電力(電気エネルギー)が大きくなる。
【0046】
このように、電子制御ユニット31がバッテリ23のバッテリ容量Wの大きさを判定しない比較例の場合、発生した摩擦熱(熱エネルギー)を回収しない時間帯2が存在し、摩擦熱(熱エネルギー)を廃棄することによって制動部温度Tが上昇する。そして、時間帯3においては、時間帯2にて上昇した制動部温度Tを降下させる(冷却する)ために、バッテリ23は上限値Wmまで充電(蓄電)した電力(電気エネルギー)を多く放電する必要がある。すなわち、この比較例の場合には、制動部10にて発生した摩擦熱(熱エネルギー)を無駄に廃棄して熱エネルギーを電気エネルギーに効率よく変換することができないことに加えて、充放電する電力(電気エネルギー)が大きくなって効率的な充放電サイクルが確保できない。さらに、時間帯2において、バッテリ23のバッテリ容量Wが上限値Wmに維持されるため、例えば、バッテリ23の寿命が短くなる可能性がある。
【0047】
これに対して、上述したように、電子制御ユニット31がバッテリモニタ32によって検出されたバッテリ容量Wの大きさを判定する場合には、図6にて概略的に示すタイムチャートのように、バッテリ容量Wと制動部温度Tが変化する。なお、図6の時間軸上に示した「1」および「3」は、上述した比較例の場合と同様に、それぞれ、時間帯1および時間帯3を表すものである。
【0048】
具体的に説明すると、図6に示す時間帯1においては、実線で示すように、バッテリモニタ32によって検出されたバッテリ23のバッテリ容量Wが上限値Wm未満であるため、電子制御ユニット31は切替回路22が第1通電を許可する状態に切替制御し、熱電変換部21によって発電された回生電力(電気エネルギー)はバッテリ23に充電(蓄電)される。そして、熱電変換部21が回生電力(電気エネルギー)を発電し、バッテリ23が回生電力(電気エネルギー)を充電(蓄電)することによって、制動部10に発生した摩擦熱(熱エネルギー)が回収されるため、一点鎖線で示す制動部温度Tの上昇が抑制される。
【0049】
そして、バッテリモニタ32によって検出されたバッテリ23のバッテリ容量Wが上限値Wmになると(あるいは、近付くと)、電子制御ユニット31は切替回路22が第2通電を許可する状態に切替制御する。これにより、図6に示すように、時間帯1から時間帯3に移行させて、バッテリ23に充電(蓄電)された電力(電気エネルギー)を熱電変換部21に放電する。したがって、実線で示すようにバッテリ23のバッテリ容量Wが減少するとともに、熱電変換部21が上述したペルチェ効果によって制動部10を冷却するため、一点鎖線で示す制動部温度Tは降下する。
【0050】
また、時間帯3においてバッテリモニタ32によって検出されたバッテリ23のバッテリ容量Wが減少して所定値Woまで減少すると、電子制御ユニット31は切替回路22が第2通電を許可する状態から第1通電を許可する状態に切替制御して、図6に示すように、時間帯3から時間帯1に移行させる。これにより、バッテリ23は、実線で示すようにバッテリ容量Wが上限値Wmとなるまで熱電変換部21によって発電された回生電力(電気エネルギー)を充電(蓄電)する。そして、これ以降、時間帯1と時間帯3とを断続的に切り替えることにより、すなわち、上記比較例における時間帯2が存在しないことにより、図6に示すように、残存バッテリ容量を大きく確保するとともに、制動部温度Tの上昇を効果的に抑制する。
【0051】
このように、バッテリモニタ32によって検出されたバッテリ23のバッテリ容量Wの大きさを判定し、摩擦熱(熱エネルギー)の回収すなわち回生電力(電気エネルギー)を発電して充電(蓄電)することと、充電(蓄電)した電力(電気エネルギー)を放電して制動部10を冷却することとを繰り返し切り替える実施形態に係る車両用制動装置Sによれば、制動部10にて発生した摩擦熱(熱エネルギー)を無駄に廃棄することなく熱エネルギーを電気エネルギーに効率よく変換することができる。また、充放電を繰り返し実行することにより、充放電する電力(電気エネルギー)を小さくして効率的な充放電サイクルを確保することができ、放電後の残存バッテリ容量が大きくなる。さらに、充放電を繰り返し実行することに伴って、摩擦熱(熱エネルギー)の回収と制動部10の冷却を断続的に行うことができるため、制動部温度Tの上昇を抑制することができる。したがって、制動部10にフェード現象が発生することを効果的に抑制することができる。
【0052】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、電子制御ユニット31が、バッテリモニタ32によって検出されたバッテリ23のバッテリ容量Wの大きさを判定し、バッテリ23の充放電すなわち熱電変換部21による摩擦熱(熱エネルギー)の回収と制動部10の冷却を切り替えるように実施した。この場合、例えば、制動部10のブレーキキャリパ12(あるいはディスクロータ11)の温度を検出する温度センサを設けておき、電子制御ユニット31がこの温度センサによって検出されたブレーキキャリパ12(あるいはディスクロータ11)の温度に応じて、バッテリ23の充放電すなわち熱電変換部21による摩擦熱(熱エネルギー)の回収と制動部10の冷却を切り替えるように実施することも可能である。
【0054】
具体的には、電子制御ユニット31は、温度センサによって検出された制動部10のブレーキキャリパ12(あるいはディスクロータ11)の温度がフェード温度Tf未満であるときには、切替回路22が第1通電を許可する状態に切替制御する。これにより、熱電変換部21は、摩擦熱(熱エネルギー)を回収して回生電力(電気エネルギー)に変換し、この変換した回生電力(電気エネルギー)をバッテリ23に出力することができる。すなわち、温度センサによって検出された制動部10のブレーキキャリパ12(あるいはディスクロータ11)の温度がフェード温度Tf未満であるときには、熱電変換部21が摩擦熱(熱エネルギー)を回収しバッテリ23に充電することができる。
【0055】
一方、電子制御ユニット31は、温度センサによって検出された制動部10のブレーキキャリパ12(あるいはディスクロータ11)の温度がフェード温度Tf以上であるときには、切替回路22が第2通電を許可する状態に切替制御する。これにより、熱電変換部21は、バッテリ23から放電された電力(電気エネルギー)を用いて制動部10を冷却することができる。すなわち、温度センサによって検出された制動部10のブレーキキャリパ12(あるいはディスクロータ11)の温度がフェード温度Tf以上であるときには、熱電変換部21がバッテリ23に蓄電された電力(電気エネルギー)を消費することができる。したがって、この場合においても、摩擦熱(熱エネルギー)の回収と制動部10の冷却を断続的に行うことができ、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0056】
さらに、上記実施形態においては、制動部10がディスクロータ11とブレーキキャリパ12とを備えたディスクブレーキユニットであるとして実施した。この場合、制動部10が車輪と一体的に回転するブレーキドラムとこのブレーキドラムに収容されてブレーキドラムの内周面に対して圧着されるブレーキシューとを備えたドラムブレーキユニットであるとして実施することも可能である。この場合には、熱電変換部21を、例えば、ブレーキシューに設けることにより、熱電変換部21は、摩擦によって発生する摩擦熱(熱エネルギー)を回収して回生電力(電気エネルギー)を発電することができるとともに、バッテリ23から供給された電力(電気エネルギー)を利用してブレーキシューおよびブレーキドラムを冷却することができる。したがって、この場合においても、摩擦熱(熱エネルギー)の回収と制動部10の冷却を断続的に行うことができ、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0057】
10…制動部、11…ディスクロータ、12…ブレーキキャリパ、12a…ブレーキパッド、20…熱回収部、21…熱電変換部、21a…一面側(加熱側)、21b…他面側(冷却側)、22…切替回路、23…バッテリ、30…制御部、31…電子制御ユニット、32…バッテリモニタ、S…車両用制動装置、W…車輪、H…ハブ、N…ナックル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転に対して制動力を付与するとともにこの制動力の付与に伴って発生する熱エネルギーを回収する車両用制動装置において、
前記車輪の回転に対して摩擦による制動力を付与する制動力付与手段と、
前記制動力付与手段に設けられて、前記摩擦によって発生する熱エネルギーを回収して電気エネルギーに変換するとともに、電気エネルギーの供給により前記制動力付与手段を冷却する熱電変換手段と、
前記熱電変換手段によって変換された電気エネルギーを蓄電する蓄電手段と、
前記熱電変換手段と前記蓄電手段とを電気的に接続し、前記熱電変換手段から前記蓄電手段に向けた前記変換された電気エネルギーの流れを許可する状態と、前記蓄電手段から前記熱電変換手段に向けた前記供給による電気エネルギーの流れを許容する状態とに切り替える切替手段と、
前記蓄電手段に蓄電された電気エネルギーの蓄電容量を検出する蓄電容量検出手段と、
前記蓄電容量検出手段によって検出された前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量と前記蓄電手段に予め設定された蓄電の上限値とを比較し、前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記上限値以上であるか否かを判定する蓄電容量判定手段と、
前記蓄電容量判定手段によって前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記上限値未満であると判定されると、前記切替手段を前記熱電変換手段から前記蓄電手段に向けた前記変換された電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替え、前記蓄電容量判定手段によって前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記上限値以上であると判定されると、前記切替手段を前記蓄電手段から前記熱電変換手段に向けた前記供給による電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替える制御手段とを備えたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車両用制動装置において、
前記蓄電容量判定手段は、さらに、
前記蓄電容量検出手段によって検出された前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量と前記上限値よりも小さな値に予め設定された所定値とを比較して、前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記所定値以下であるか否かを判定し、
前記制御手段は、
前記蓄電容量判定手段によって前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記上限値未満であり、かつ、前記蓄電容量判定手段によって前記蓄電された電気エネルギーの蓄電容量が前記所定値以下であると判定されると、前記切替手段を前記熱電変換手段から前記蓄電手段に向けた前記変換された電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替えることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した車両用制動装置において、さらに、
前記制動力付与手段に設けられて、前記制動力付与手段の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段によって検出された前記制動力付与手段の温度が、前記摩擦による制動力の低下する所定温度以上であるか否かを判定する温度判定手段とを備え、
前記制御手段は、
前記温度判定手段によって検出された前記制動力付与手段の温度が前記所定温度未満であると判定されると、前記切替手段を前記熱電変換手段から前記蓄電手段に向けた前記変換された電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替え、前記温度判定手段によって検出された前記制動力付与手段の温度が前記所定温度以上であると判定されると、前記切替手段を前記蓄電手段から前記熱電変換手段に向けた前記供給による電気エネルギーの流れを許容する状態に切り替えることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載された車両用制動装置において、
前記制動力付与手段は、
前記車輪と一体的に回転するディスクロータとこのディスクロータにブレーキパッドを圧着させるブレーキキャリパとを有し、前記ディスクロータと前記ブレーキパッドの一面側との摩擦によって制動力を付与するものであり、
前記熱電変換手段を、
前記ブレーキキャリパ内に収容するとともに、前記ブレーキパッドに接触させて設けたことを特徴とする車両用制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−109798(P2011−109798A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261711(P2009−261711)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】