説明

車両用制御システム

【課題】 車両とユーザーに携行される携帯キーとの間での無線通信によるコード照合の結果に応じた車両制御を実施する車両用制御システムにおいて、その携帯キーが家庭内の電子機器から発生するノイズの影響を受け難く、なおかつシステムの小型化・低コスト化を図る。
【解決手段】 車両10と携帯キー20との間での無線通信によるコード照合の結果に応じて、少なくとも車両10のドアの施開錠に係る制御を実施させる車両用制御システム1において、車両10は、車外の特定の送信エリア内に所定の送信信号を無線送信し、その送信信号に対する車外からの応答信号を無線受信する車両側アンテナ110を備え、携帯キー20は、車両10からの送信信号を無線受信するとともにその送信信号に対応する応答信号を無線送信する送受信共用のアンテナ24を備え、それら無線送受信で使用される電磁波の周波数帯がRF帯域である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には、車両外の所定の送信エリア内に定期的にポーリング信号を無線送信する送信手段と、上記送信エリア内に存在する携帯キー(スマートキー)が上記ポーリング信号に対する返送信号として無線送信するIDコードを無線受信する受信手段と、受信した該IDコードと予め記憶されたマスターコードとを照合する照合手段と、その照合結果に基づいて所定の車両制御を実施する車両制御手段とを備えた車両用制御システムを搭載するものがある。例えば、その照合結果に基づいて、車両のドアロックを所定の開錠操作により開錠可能となる開錠許可状態と開錠不可となる開錠禁止状態との間で切り替えるスマートエントリーシステムや、照合結果に基づいて、車両のエンジンを所定の始動操作により始動させたり、始動を禁止したりするスマートスタートシステム等である(特許文献1)。
【0003】
こうした車両用制御システムにおいては、車両側から携帯キー側に送信される送信電磁波には所定のLF(長波)帯域の電磁波が使用され、携帯キー側から車両側に送信される送信電磁波にはRF(高周波)帯域の電磁波が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−205186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この場合、LF帯域の電磁波を受信する携帯キーは、家庭内での保管位置次第では、家庭内の電子機器から発生するLF帯域のノイズの影響を受けて頻繁にウェイクアップし、これにより電池を消耗して、通常よりも電池寿命が短くなってしまうという課題がある。一方で、LF帯域の電磁波受信のためのアンテナはコストの高い部品であり、システム全体のコストアップの要因になっているという課題もある。特に、LF帯域の電磁波を送信する車両側の送信アンテナは巻線アンテナとして形成されており、サイズも大きく、かつコストも高いため、小型化・低コスト化が求められている。
【0006】
本発明の課題は、車両とユーザーに携行される携帯キーとの間での無線通信によるコード照合の結果に応じた車両制御を実施する車両用制御システムにおいて、その携帯キーが家庭内の電子機器から発生するノイズの影響を受け難く、なおかつシステムの小型化・低コスト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するための車両用制御システムは、
車両とユーザーに携行される携帯キーとの間での無線通信によるコード照合の結果に応じて、少なくとも前記車両のドアの施開錠に係る制御を実施させる車両用制御システムであって、
前記車両は、車外の特定の送信エリア内に所定の送信信号を無線送信する送信アンテナと、その送信信号に対する車外からの応答信号を無線受信する受信アンテナとを有した車両側アンテナを備え、それら無線送受信で使用される電磁波の周波数帯がRF帯域であり、
前記携帯キーは、前記送信信号を無線受信するとともに無線受信した送信信号に対応する前記応答信号を無線送信する送受信共用のアンテナであって、それら無線送受信で使用される電磁波の周波数帯がRF帯域であり、前記送信信号が予め定められたIDコード要求信号であった場合には、前記応答信号として前記コード照合に用いる当該携帯キー固有のIDコードのデータを無線送信するキー側アンテナを備えることを特徴とする。
【0008】
上記本発明の構成によれば、無線通信に使用される電磁波の周波数帯がRF帯域に設定されているため、家庭内で多く発生するLF帯域のノイズ電磁波の影響を受けることが無くなる。また、LF帯域よりも高い周波数帯を使用しているため、アンテナを小型化することも可能となり、コストダウンを図ることもできる。なお、RF帯域とは、300MHz〜500MHzの範囲の周波数帯である。
【0009】
また、上記本発明における前記携帯キーは、
車両から前記送信信号として無線送信される起動信号を、前記送受信共用のアンテナを介して受信するべく常時動作保持される受信部と、
制御モードとして、通常制御モードと該通常制御モードよりも低消費電力な低消費電力制御モードとを有した制御部であって、前記低消費電力制御モードに設定された状態において前記受信部にて前記起動信号が受信された場合には、前記制御モードを前記通常制御モードに切り替える制御モード切替手段と、前記通常制御モードに切り替わった後に、当該起動信号に対応する前記応答信号を、前記送受信共用のアンテナを介して前記車両に無線送信させる送信指示手段と、を有した制御部と、を備えて構成することができる。
【0010】
上記本発明の構成によれば、携帯キー側では、周波数帯がRF帯域の送信信号を常時受信できるように、内蔵する受信部(受信IC)に対して常に電源(電池)から電力を供給して受信待機状態を継続しておく一方で、それとは別に設けられた制御部に関しては、車両側から起動用の信号(起動信号)を受信した場合にのみ起動(ウェイクアップ)し、それ以外の未使用時においてはスリープモード(低消費電力状態)が設定されるように構成されるから、無駄な電力消耗を抑制することができる。家庭内の電子機器から多く発生するLF帯域のノイズの影響を受けることもないため、制御部が頻繁に起動して、電源(電池)の電力を無駄に消費することもない。
【0011】
本発明における車両側アンテナは、前記送信アンテナと前記受信アンテナとが兼用された送受信共用のアンテナとして構成できる。送信アンテナと受信アンテナが兼用化されることにより、システム全体の小型化・低コスト化を図ることができる。
【0012】
本発明における車両側アンテナは、前記車両のドアの施開錠に係る制御を実施させるための無線通信を行う前記送信アンテナを、該車両に対し1つだけ設けるようにすることもできる。RF帯域の電磁波であれば車両を中心とする10m程度の送信エリアを形成できるから、従来のように多数の送信アンテナを設ける必要が無く、システム全体の小型化・低コスト化を図ることができる。この場合、当該送信アンテナは、前記車両の天井部に設けることができる。これにより、車両周辺に存在するユーザーが携行する携帯キーとの間でより確実に無線通信を行うことができる。特に、当該送信アンテナは、前記車両の車室内側の天井部に設けられ、車両の窓ガラスを介して車外に送信信号を無線送信可能に構成することで、より車両に接近したユーザーが携行する携帯キーとの間でも、より確実に無線通信を行うことができる。
【0013】
本発明における車両側アンテナは、前記受信アンテナとして、前記車両のドアの施開錠に係る第一の車両制御を実施させるための無線通信を行うための第一の受信アンテナと、前記車両のエンジン始動に係る第二の車両制御を実施させるための無線通信を行うための第二の受信アンテナとを有し、前記第一の受信アンテナが車外側に、前記第二の受信アンテナが車室内側に設けられるとともに、前記車両は、それら受信アンテナが受信した受信信号に基づいて受信強度が大きい方の受信アンテナを特定する受信アンテナ特定手段と、特定された受信アンテナに対応する車両制御を実施させる制御指令手段(特定された受信アンテナに対応する車両制御を実施する車両制御手段に対し制御指令を出力する制御指令手段)と、を備えて構成することができる。これにより、携帯キーが車外にあるのか車内にあるのかを特定することができ、その存在位置に適した車両制御を行うことが可能となる。
【0014】
本発明における車両側アンテナの送信アンテナは、前記車両のドア、あるいはドアミラー等に設けることができる。これにより、携帯キーを携行してドアの施開錠を行うユーザーがいた場合に、その携帯キーとの無線通信がより確実に可能となる。具体的にいえば、本発明の車両側アンテナの送信アンテナは、車両のドアのドアノブ下の所定領域に設けることができる。ドアノブ下にはキーシリンダーやドアノブを掴みやすくするための窪みなどが設けられているため、送信アンテナをこの部分に設けることで、アンテナ自体が目立たなくなる。
【0015】
本発明における車両側アンテナは、車両の所定構造物上に又は車両に取り付けられた基板上にパターン印刷されたパターンアンテナとすることができる。これにより、システム全体の小型化・低コスト化を図ることができる。例えば、車両側アンテナの送信アンテナは、車両の窓ガラス(例えばサイドガラス等)上にパターン印刷されたパターンアンテナとすることができる。これにより、車両周辺に存在するユーザーが携行する携帯キーとの間でより確実に無線通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の車両用制御システムの概略的な構成を示す模式図。
【図2】本発明の車両用制御システムの第一実施形態を示すブロック図。
【図3】携帯キーの制御部起動処理の流れをフローチャート。
【図4】本発明の車両用制御システムの第二実施形態を示すブロック図。
【図5】本発明の車両用制御システムの第三実施形態を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の車両用制御システムの一実施形態を、図面を用いて説明する。
【0018】
本発明の車両用制御システムは、車両とユーザーに携行される携帯キーとの間での無線通信によるコード照合の結果に応じて、少なくとも前記車両のドアの施開錠に係る制御を実施させるものであって、図1は、その一実施形態の概略的な構成を示す模式図であり、図2は、図1の実施形態の構成を簡略的に示すブロック図である。
【0019】
図1及び図2に示す本実施形態の車両用制御システム1は、車両10に搭載される照合ECU100と、スマートキー(いわゆる電子キー等と称される携帯型無線通信装置であって、本発明の携帯キーに相当する)20とを含んで構成される。この構成により、車外周辺の所定のキー探索エリア内にポーリング用の送信信号を無線出力し、その応答信号の無線受信に基づいて該キー探索エリア内に存在するスマートキー20を探索するとともに、当該スマートキー20から無線受信するIDコードを照合し、その照合結果に基づいてドアロックの開錠許可を与え、そのドアロックの開錠許可状態において所定のドアロック開錠操作が検知された場合にドアロック機構を作動して開錠する、という一連のスマートエントリー機能が実現される。
【0020】
照合ECU100は、CPU,ROM,RAM,メモリ,入出力部(I/O)等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品としている。また、照合ECU100には、外部の記憶装置101、送信部120、受信部111が接続されている。照合ECU100内の記憶部(ROM等)には、上述したようなスマートエントリー機能を実現するための各種プログラムが記憶されている。外部の記憶装置101には、車両照合用のIDコードが記憶されている。
【0021】
送信部120は、車外の特定の送信エリア内に所定の送信信号を、周波数帯がRF帯域(例えば300MHz)の電磁波として、送信アンテナ120Aから無線送信させる発信機であり、送信信号として、例えば、車外の特定の送信エリア内に定期的に送信されるポーリング用の信号や、IDコード要求用の信号等を送信する。この送信信号は、送信部120から約10m程度の予め定められた車外の送信エリア(キー応答エリア)内に届くようになっている。これにより、上記の車外の送信エリア内に存在するスマートキー20だけがこの送信信号を受信することができ、照合処理の対象となりうる。そして、照合が一致した場合には車両ドアのスイッチの操作によりドアの施錠/開錠を行うことが可能となる。ここではドアノブに設けられたタッチスイッチへのタッチ操作がドアロック開錠操作であり、ドアノブに設けられたプッシュスイッチへのプッシュ操作がドアロック施錠操作である。
【0022】
なお、本実施形態の送信アンテナ120Aは、車両10の運転席や助手席のドア及びトランク開閉用ドアにそれぞれ設けられている。ただし、図2では、それらのうちの1つのみを代表して図示している。送信アンテナ120Aは、車両に取り付けられる基板上にパターン印刷されたパターンアンテナであり、ここでは、各ドアのドアノブ(ドアハンドル)、あるいは各ドアのドアノブ下の所定領域(例えばドアノブ下のキーシリンダーやドアノブ下の窪みなど)に内蔵されている。
【0023】
受信部111は、周波数帯がRF帯域(例えば300MHz帯)の電磁波として受信アンテナ111Aが無線受信したスマートキー20からの応答信号の入力を受ける周知のチューナー機能を有し、応答信号に含まれるデータを照合ECU100に送信する。
【0024】
なお、本実施形態の受信アンテナ111Aは、車両に取り付けられる基板上にパターン印刷されたパターンアンテナであり、ここでは車両10の各ドアに設けられた各送信アンテナ120Aのそれぞれの送信エリアに存在するスマートキー20から応答信号が受信可能となるように(例えば車両天井部等)設けられている。
【0025】
さらに、本発明のスマートエントリー機能は、照合ECU100と通信接続される各席のドアECU200と連携する形で実現されている。照合ECU100と各席のドアECU200とは車載LAN50を介して互いに通信可能とされている。
【0026】
各席のドアECU200は、車両10のドア(トランクのドアを含む)の施開錠制御を司る制御主体であり、CPU,ROM,RAM,メモリ,入出力部(I/O)等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品としている。各席のドアECU200にはそれぞれ、車外開錠操作部(例えばタッチセンサ)と、車外施錠操作部(タッチスイッチ)と、さらには、対応するドアのロック機構においてロック状態(施錠状態)とアンロック状態(開錠状態)との間の切り換えを実行するドアロック駆動部(アクチュエータやその駆動回路)と、そのロック機構が開錠状態であるか施錠状態であるかを検出するロック状態検出部(ロックポジションスイッチ)、ドアの開閉状態を検知するドア開閉検出部(ドアカーテシスイッチ)等が接続されている。
【0027】
なお、ドアECU200は各席のドア毎に対応して設けられるが、ここでは運転席のドアに係るもののみを図示し、それ以外の図示は省略している。ただし、他のドアECU200についても運転席のドアECU200と同様の機能を果たすよう構成されている。
【0028】
スマートキー20(携帯キー)は、照合ECU100との間でデータを送受信可能な携帯型無線通信装置としての機能を果たすものであり、本実施形態においては、制御部21に対し、受信部22、送信部23及び各種操作部25が接続する構成を有する。
【0029】
制御部21は、車両に固有のIDコードを記憶するためのメモリ21aを有するとともに、キーレスエントリー機能としてユーザー操作によりドアロックの開錠/施錠を実施する操作部やドア開閉等を実施する操作部などの周知の操作部25と接続している。また、制御部21は、キー20に内蔵された電源である電池から駆動電源の供給を受けて駆動するが、制御モードとして、通常制御モードと、該通常制御モードよりも低消費電力な低消費電力制御モード(ここではスリープモード)とを設定可能とされている。
【0030】
受信部22は、車両10から周波数帯がRF帯域(例えば300MHz帯)の電磁波として無線送信される各種信号を受信するアンテナ24と接続する受信ICであり、RF帯域の電磁波が常に受信できるように構成されている。つまり、受信部22は、キー20に内蔵された電池から駆動電源の供給を受けて常時動作状態を保持している。受信部22は、アンテナ24を介して受信した受信信号に含まれるデータを制御部21に送信し、これを受信する制御部21は、そのデータに基づいて、当該受信信号に対応した応答信号を車両に送信するべく送信部23に送信データを含む送信用の制御信号を送信する。
【0031】
送信部23は、制御部21から上記制御信号を受信するとともに当該制御信号に基づいて駆動し、上記応答信号を周波数帯がRF帯域(例えば300MHz帯)の電磁波としてアンテナ24から外部に無線送信する。なお、アンテナ24は、携帯キー20に内蔵された基板上にプリント印刷されたパターンアンテナである。
【0032】
即ち、本実施形態においては、車両10は、車外の特定の送信エリア内に所定の送信信号を無線送信する送信アンテナ120Aと、その送信信号に対する車外のスマートキー20からの応答信号を無線受信する受信アンテナ111Aとを有した車両側アンテナ110を備える一方、スマートキー20は、車両10側からの送信信号を無線受信するとともに無線受信した送信信号に対応する上記応答信号を無線送信する送受信共用のアンテナ(キー側アンテナ)24を備える。そして、車両10とスマートキー20との間でなされるそれらの無線送受信で使用される電磁波の周波数帯がRF帯域に定められている。スマートキー20は、受信した車両10からの送信信号が予め定められたIDコード要求信号であった場合、その応答信号として照合ECU100でのコード照合に用いる当該スマートキー20固有のIDコードのデータを無線送信する。
【0033】
なお、ここでいうRF帯域とは、300MHz〜500MHzの範囲の周波数帯である。
【0034】
ここで、スマートエントリー機能として実施されるドアロック開錠処理について説明する。
【0035】
照合ECU100は、エンジンOFFで全ドアロックが施錠状態であることを前提に、予め定められた送信周期で、車外の携帯キーを探索するためのポーリング用の送信信号(起動信号)の送信を送信部120に指示し、送信部120が送信アンテナ120Aからポーリング用の送信信号を無線出力する。これに対し、スマートキー20を携行したユーザーが、このスマートキー20を上記した車外の送信エリア内に位置させるようにする動作(操作)を行うと、スマートキー20は、アンテナ24にてポーリング用の送信信号を無線受信してその受信信号が受信部22に入力されるとともに、制御部21がこれに応答する所定の応答信号を送信部23から無線出力する。
【0036】
この応答信号は、受信アンテナ111Aにて無線受信され、その受信信号が受信部111に入力される。受信部111は、その受信信号から所定のデータを抽出して照合ECU100に送信する。照合ECU100は、受信したデータに基づいて、自車10に対応するスマートキー20の存在確認を実施する。対応するスマートキー20の存在が確認された場合には、その対応するスマートキー20に対しキー固有のIDコードを要求するためのIDコード要求用の信号(IDコード要求信号:いわゆるリクエスト信号)の送信を送信部120に指示し、送信部120が送信アンテナ120AからIDコード要求用の信号(IDコード要求信号)を無線出力する。対応するスマートキー20であれば、このIDコード要求用の信号を受信部22にて無線受信すると、その制御部21が、これに応答する応答信号として、メモリ21aに記憶されているIDコードを含む信号を送信部23から無線出力する。
【0037】
この応答信号は、受信アンテナ111Aにて無線受信され、その受信信号が受信部111に入力される。受信部111は、その受信信号からIDコードのデータを抽出して照合ECU100に送信する。照合ECU100は、受信したIDコードと、自身が記憶装置101にて記憶するマスターコードとを照合し(照合処理)、その照合結果に基づいて、各席のドアECU200に対しドアロックの開錠許可を与える。これに伴いドアECU200は、ドアロックの開錠が禁止された開錠禁止モードから開錠が許可された開錠許可モードに切り替わり、所定のドアロック開錠操作が検知された場合にドアロック機構を作動してドアロックを開錠させる。即ち、照合ECU100は、受信したIDコードに基づく照合結果に応じて、車両のドアロックを、所定の開錠操作により開錠可能となる開錠許可状態と開錠不可となる開錠禁止状態との間で切り替える。
【0038】
ところで、本実施形態のスマートキー20において、制御部21は、未使用時においてはスリープモード(低消費電力制御モード)に設定されており、これにより、未使用時の電力消費が抑制されている。一方で、制御部21は、受信部22からのウェイクアップ信号を受信すると起動して、スリープモードから通常制御モードに切り替わる。
【0039】
以下では、制御部21に設定されている制御モードをスリープモードから通常制御モードに切り替えるために、受信部22が実施する制御部起動処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
まずS1では、受信部22が、アンテナ24において所定のRF帯域(例えば300MHz帯)の電磁波として無線送信された起動信号を受信したか否かを判定する。受信が無ければ受信待機状態を継続し、受信があった場合にはS2に進む。
【0041】
S2では、受信した信号の信号レベル(信号強度)が、予め定められた閾レベルを上回るか否かを判定する。閾レベルを上回らない場合にはS1に戻る。閾レベルを上回る場合にはS3に進み、特定された受信信号の信号データを読み取る。
【0042】
続くS4では、受信部22が、受信した信号が正規の起動信号であるか否かを判定する(起動信号判定手段)。信号データには、数ビット(例えば4ビット)程度のコードが含まれているので、S4にて受信部22が読み取った信号データが正規の起動信号であるか否かを、上記数ビットの所定コードに基づいて判定する。正規の起動信号でなければS1に戻る。正規の起動信号である場合にはS5に進む。
【0043】
なお、本実施形態においては、上述したポーリング用又はIDコード要求用の信号のいずれかを起動信号とすることができる。
【0044】
S5では、受信部22が、制御部21にウェイクアップ信号(起動指令信号)を出力する(通常制御モード切替指令手段)。これにより、受信部22における本処理は終了となる。本処理は所定周期にて繰り返し実施される。
【0045】
一方、制御部21は、このウェイクアップ信号の入力を受けることで、起動(ウェイクアップ)する。つまり、制御部21の制御モードがスリープモード(低消費電力制御モード)から通常制御モードに切り替わる(制御モード切替手段:通常制御モード設定手段)。切り替わった後には、アンテナ24において無線受信した起動信号(ポーリング用の信号)に対応する応答信号を車両10に無線送信させるための制御信号を、送信部23に出力する。つまり、制御部21は送信部23に対する送信指示手段として機能する。送信部23では、この制御信号を受信するとともに当該制御信号に基づいて、上記応答信号をアンテナ24から無線送信する。その後、制御部21は、予め定められた終了条件(例えば所定時間の経過)を満たすと、通常制御モードからスリープモードに切り替わる(制御モード切替手段:低消費電力制御モード設定手段)。
【0046】
本実施形態によれば、S1で受信する起動信号がRF帯域の周波数帯の電磁波として送信されるため、家庭内の電子機器から多く発生するLF帯域のノイズによって、制御部が誤って起動(ウェイクアップ)することがない。また、全てのアンテナ111A,120A,24がRF帯域の周波数帯の電磁波を送信ないし受信するものであるから、従来のLF帯域の電磁波を受信するアンテナよりも周波数が高いため、より小型化することができ、例えばパターンアンテナ等ととすることも可能であり、小型化・低コスト化を図ることができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、システム全体の小型化・低コスト化を図るために、図4に示すように、車両側アンテナ110は、送信アンテナと受信アンテナとが兼用された送受信共用のアンテナ110Aを備える形で構成できる。
【0049】
また、RF帯域の電磁波であれば車両を中心とする10m程度の比較的広い送信エリアを形成できるから、従来のように、ドアの数に応じて複数の送信アンテナを設けてもよいが、それよりも少なくすることも可能となる。このため、例えば車両側アンテナ110に関して、車両10のドアの施開錠に係る制御を実施させるための無線通信を行う送信アンテナ120A(図2)や110A(図4)を、該車両10に対し1つだけ設ける形で構成できる。この場合、その送信アンテナは、例えば車両の天井部、特に天井中心部に設けることで、送信エリアが車両を中心に比較的バランスよく形成できる。特に、送信機能を有するアンテナ120Aや110Aは、車両10の窓ガラスを介して車外に送信信号が送出されるように車両10の車室内側の天井部に設けることで、より車両に近い位置にいる接近したユーザーが携行する携帯キーとの間で、より確実な無線通信を行うことができる。
【0050】
なお、図4の場合、車両側アンテナ110は、送信アンテナだけでなく受信アンテナも1つであるといえる。さらにいえば、それら送信アンテナ及び受信アンテナが、双方が兼用される送受信共用のアンテナ110Aとして1つだけ存在しており、この場合も、唯一の送受信共用のアンテナ110Aを、上記したように、車両の天井部、特に天井中心部に設けることができる。
【0051】
また、上記実施形態における車両用制御システム1は、車両のドアの施開錠に係る制御を実施させるための構成について説明しているが、車両のエンジン始動に係る制御を実施させるための構成を有していてもよい。例えば、図5に示すように、車両側アンテナ110は、受信アンテナとして、車両10のドアの施開錠に係る制御を実施させるための無線通信を行うための第一の受信アンテナ112Aと、車両10のエンジン始動に係る制御を実施させるための無線通信を行うための第二の受信アンテナ113Aとを有し、第一の受信アンテナ112Aを第二の受信アンテナ113Aよりも車外側に、第二の受信アンテナ113Aを第一の受信アンテナ112Aよりも車室内側に位置させる形で設けるとともに、車両10側では、照合ECU100が、それら受信アンテナ112A,113Aが受信した受信信号に基づいて受信強度が大きい方の受信アンテナ112A,113Aを特定し(受信アンテナ特定手段)、特定された受信アンテナ112A,113Aに対応する制御を実施するECU(車両制御手段)200,300,400に対し制御指令を出力する(制御指令手段)ように構成することができる。
【0052】
具体的にいえば、送信アンテナ120Aから送信される送信信号は、車両を中心とする10m程度の比較的広い送信エリアに送信されるため、仮に送信アンテナ120Aを1つのみ設けるような構成の場合は、車室内も送信エリアに含む形で構成される。この場合、受信した応答信号が、車室内にあるスマートキー20からのものなのかを、車外にあるスマートキー20からのものなのかを、受信した応答信号によって識別することができない。このため、第一の受信アンテナ112Aを車外側、第二の受信アンテナ113Aを車室内側に位置させる。このようにすれば、車外にスマートキー20がある場合には、第一の受信アンテナ112Aが受信する応答信号の受信強度が第二の受信アンテナ113Aで受信する応答信号の受信強度よりも強く、車室内にスマートキー20がある場合には、第二の受信アンテナ113Aが受信する応答信号の受信強度が第一の受信アンテナ112Aで受信する応答信号の受信強度よりも強くなるから、車外と車室内のいずれにスマートキー20が存在するのかを特定することができる。信号受信強度の強弱は、受信信号の振幅等の比較によって容易に判定できるため、照合ECU100は、各受信アンテナ112A,113Aに対応する各受信部112,113から、受信信号の信号強度情報を取得し、これらを比較する。
【0053】
照合ECU100は、取得した双方の信号強度情報に基づいて、第一の受信アンテナ112Aが受信した応答信号の信号強度の方が強いと判定された場合には、スマートキー20が車外にあると判断できるから、照合ECU100は、エンジンOFFで全ドアロックが施錠状態であることを前提に、上記実施形態と同様、IDコード要求用の信号を送信してスマートキー20からIDコードを取得して、これに基づく照合処理を実施し、その照合結果に基づいて、車両10のドアロックを、所定の開錠操作により開錠可能となる開錠許可状態と開錠不可となる開錠禁止状態との間で切り替える制御を実施する。具体的にいえば、照合OKの場合に限り、ドアECU200に対しドアロックの開錠許可が与えられ、その許可状態において所定のドアロック開錠操作が検出されることにより、ドアECU200が、ドアロック機構を作動してドアを開錠させる(スマートエントリー機能)。
【0054】
他方、照合ECU100は、取得した双方の信号強度情報に基づいて、第二の受信アンテナ113Aが受信した応答信号の信号強度の方が強いと判定された場合には、スマートキー20が車室内にあると判断できるから、上記実施形態と同様、IDコード要求用の信号を送信してスマートキー20からIDコードを取得して、これに基づく照合処理を実施し、その照合結果に基づいて、所定のエンジン始動操作により車両10のエンジンが始動可能となる始動許可状態と始動不可となる始動禁止状態との間で切り替える制御を実施する。具体的にいえば、照合OKの場合に限り、ボデーECU300に対し、イグニッション電源及びアクセサリー電源の電源投入許可、及びエンジンの始動許可が与えられ、その許可状態において所定のエンジン始動操作(エンジンスイッチへのプッシュ操作)が検出されることにより、ボデーECU300が、イグニッション電源及びアクセサリー電源といった電源投入を実施する一方で、エンジンECU400に対しエンジン始動要求を送信して、エンジンECU400がエンジンを始動させる(スマートスタート機能)。
【0055】
また、上記実施形態においては、車両側アンテナ110をドアに設ける構成であったが、ドアに設ける構成に限られるものではない。例えば、車両側アンテナ110の送信アンテナ120A,110Aは、車両10のドアミラーに設けることができる。また、本発明における車両側アンテナは、車両10のフロントガラスやサイドガラス等の窓ガラス上に設けてもよい。また、これらの場合も、車両側アンテナ110は車両の所定構造物(ドアやドアミラー、窓ガラス等)そのものの上に、あるいは車両に取り付けられた基板上にパターン印刷されたパターンアンテナとすることができる。
【0056】
また、上記実施形態のスマートキー20は、ユーザーが携行する非接触型のICカードとして構成もよい。例えば、パターンアンテナ24から給電される電力を使用して照合用のIDコードを車両に返送するICカードとして構成できる。これによれば、電池不要の薄型のカードキーを実現することができる。具体的に言えば、携帯キー20をなすICカードにおいて、車両10の車両側アンテナ110から送信信号として送信されるRF帯域(例えば300MHz帯)の電磁波を、電磁誘導により交流の誘導電圧に変換し、さらに整流して直流電圧に変換する。そして、この直流電力を利用して制御部21を駆動し、対応する応答信号としてRF帯域(例えば300MHz帯)の電磁波を、パターンアンテナ24から車両側アンテナ110に送信するように構成する。
【符号の説明】
【0057】
1 車両用制御システム
10 車両
20 スマートキー(携帯キー)
21 制御部
22 受信部
23 送信部
24 アンテナ
25 操作部
100 照合ECU
110 車両側アンテナ
111,112,113 受信部
111A,112A,113A 受信アンテナ
120 送信部
120A 送信アンテナ
200 ドアECU
300 ボデーECU
400 エンジンECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両とユーザーに携行される携帯キーとの間での無線通信によるコード照合の結果に応じて、少なくとも前記車両のドアの施開錠に係る制御を実施させる車両用制御システムであって、
前記車両は、車外の特定の送信エリア内に所定の送信信号を無線送信する送信アンテナと、その送信信号に対する車外からの応答信号を無線受信する受信アンテナとを有した車両側アンテナを備え、それら無線送受信で使用される電磁波の周波数帯がRF帯域であり、
前記携帯キーは、前記送信信号を無線受信するとともに無線受信した送信信号に対応する前記応答信号を無線送信する送受信共用のアンテナであって、それら無線送受信で使用される電磁波の周波数帯がRF帯域であり、前記送信信号が予め定められたIDコード要求信号であった場合には、前記応答信号として前記コード照合に用いる当該携帯キー固有のIDコードのデータを無線送信するキー側アンテナを備えることを特徴とする車両用制御システム。
【請求項2】
前記携帯キーは、
前記車両から前記送信信号として無線送信される起動信号を、前記送受信共用のアンテナを介して受信するべく常時動作保持される受信部と、
制御モードとして、通常制御モードと該通常制御モードよりも低消費電力な低消費電力制御モードとを有した制御部であって、前記低消費電力制御モードに設定された状態において前記受信部にて前記起動信号が受信された場合には、前記制御モードを前記通常制御モードに切り替える制御モード切替手段と、前記通常制御モードに切り替わった後に、当該起動信号に対応する前記応答信号を、前記送受信共用のアンテナを介して前記車両に無線送信させる送信指示手段と、を有した制御部と、を備える請求項1に記載の車両用制御システム。
【請求項3】
前記車両側アンテナは、前記送信アンテナと前記受信アンテナとが兼用された送受信共用のアンテナである請求項1又は請求項2に記載の車両用制御システム。
【請求項4】
前記車両側アンテナは、前記車両のドアの施開錠に係る制御を実施させるための無線通信を行う前記送信アンテナが、前記車両の天井部に設けられている請求項3に記載の車両用制御システム。
【請求項5】
前記車両側アンテナは、前記車両のドアの施開錠に係る制御を実施させるための無線通信を行う前記送信アンテナが、該車両に対し1つ設けられている請求項3又は請求項4に記載の車両用制御システム。
【請求項6】
前記車両側アンテナは、前記受信アンテナとして、前記車両のドアの施開錠に係る制御を実施させるための無線通信を行うための第一の受信アンテナと、前記車両のエンジン始動に係る制御を実施させるための無線通信を行うための第二の受信アンテナとを有し、前記第一の受信アンテナが車外側に、前記第二の受信アンテナが車室内側に設けられるとともに、前記車両は、それら受信アンテナが受信した受信信号に基づいて受信強度が大きい方の受信アンテナを特定する受信アンテナ特定手段と、特定された受信アンテナに対応する制御を実施する車両制御手段に対し制御指令を出力する制御指令手段と、を備える請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用制御システム。
【請求項7】
前記車両側アンテナの前記送信アンテナは、前記車両のドアに設けられている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用制御システム。
【請求項8】
前記車両側アンテナの前記送信アンテナは、前記車両のドアのドアミラーに設けられている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用制御システム。
【請求項9】
前記車両側アンテナは、車両に取り付けられた基板上にパターン印刷されたパターンアンテナである請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用制御システム。
【請求項10】
前記車両側アンテナの前記送信アンテナは、前記車両の窓ガラス上にパターン印刷されたパターンアンテナである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用制御システム。
【請求項11】
前記車両側アンテナの前記送信アンテナは、前記車両のサイドガラスに設けられている請求項10に記載の車両用制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−25253(P2012−25253A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164930(P2010−164930)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】