説明

車両用情報表示装置

【課題】 ELディスプレイ装置が他の表示部と隣接されて設けられていても、造形の自由度を確保しつつ、他の表示部の照明を暗くすることが無い均等なバックライト照明を得られ、スペース効率の良好な車両用情報表示装置を提供する。
【解決手段】
各配線24a〜24sのうち、開口部19の正面視左上端縁のコーナ部19aによって、文字盤2aの裏面側に隠れる部分の配線24a〜24kが、このコーナ部19aの曲線に沿って、順次切断されることにより、LED4のバックライト照明を透光可能として、他の表示部2dと、この有機ELディスプレイ装置18が重複する部分であっても、LED4の照明光を、文字盤2aの他の表示部2dの表面側まで透過させる透光部25が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイ装置等によるEL表示部を有して、表示面の面積を有効に用いる車両用情報表示装置に関し、特に、EL表示部とアナログ表示部とが隣接配置されている車両用情報表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のメータとして、図10に示すようなコンビネーションメータ1が知られている。
【0003】
このようなコンビネーションメータ1では、スピードメータ部2に、数値部2b及び目盛り部2cが備えられてなる文字盤2aと、文字盤2aの背面側に配置されて、開口部2dから表示面3aを露出させる液晶表示装置3と、前記文字盤2aの裏面側に配置された複数のバックライト光源としてのLED4…とを有して主に構成されている。
【0004】
また、このコンビネーションメータ1は、図示省略のムーブメントにより駆動される指針5を有しており、この指針5が液晶表示装置3の前面側を回動してアナログ表示ができるように構成されている。
【0005】
更に、近年、このような従来の車両用情報表示装置の液晶表示装置3に代えて、有機ELディスプレイ装置6を用いる場合が考えられている。
【0006】
有機ELディスプレイ装置6は、図11に示すように、ガラス等の透明基板7上に、陽極としてのITO(Indium Tin Oxide)透明導電膜層8…が、平行に複数本、一定間隔で形成されると共に、このITO透明導電膜層8…の上に、正孔注入層9,正孔輸送層10,発光層11,電子輸送層12及び電子注入層13が、順次積層されて、5層の有機膜層15が形成されている。
【0007】
そして、この電子注入層13の上には、陰極としてのアルミ金属蒸着膜層14…が、前記ITO透明導電膜層8…の延設方向と直交する延設方向を有して、平行に複数本、一定間隔で形成されていて短冊状を呈している。図10では、説明の為、このアルミ金属蒸着膜層14が一本のみ示されている。
【0008】
次に、この車両用情報表示装置1の作用について説明する。
【0009】
この車両用情報表示装置1では、前記文字盤2a部分が、白色等の印刷により形成されて、透光可能とされている。
【0010】
このため、前記文字盤2aの裏面側に設けられたLED4…を点灯すると、照明光が、図示しない拡散板を介して、この文字盤2aを裏面側から照光して、透過照明が行われる。
【0011】
また、前記有機ELディスプレイ装置6では、発光させたいマトリックスの前記ITO透明導電膜層8及びアルミ金属蒸着膜層14に通電が行われると、通電された前記ITO透明導電膜層8及びアルミ金属蒸着膜層14が交差された部分の有機膜層15の電子と正孔とが再結合して有機分子を励起して発光が行われる。
【0012】
なお、液晶表示部を、文字盤2aの裏面側略全面に渡り設けることにより、量産され安価で流通している方形の液晶表示装置を使用可能として、製造コストを減少させているものも知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開平11−271100号公報(第6−8頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このような従来の車両用情報表示装置では、液晶表示装置3に代えて用いられる前記有機ELディスプレイ装置6の表示面の外形形状が、一般的に略長方形形状である。
【0014】
このため、このような有機ELディスプレイ装置6を前記文字盤2aに開口された楕円形等、異形の開口部2dに用いると、表示面の外形形状が、この開口部2dの形状と、造形上一致しないことがある。
【0015】
この場合、長方形の表示面を有する有機ELディスプレイ装置6を開口部2dよりも大きめに設定することが考えられる。
【0016】
しかしながら、この有機ELディスプレイ装置6の表示面の面積が大きくなると、裏面の陰極としてのアルミ金属蒸着膜層14…が、アルミ金属蒸着膜若しくは、マグネシウム、銀又はカルシウム・銀金属等を使用しているので、この有機ELディスプレイ装置6で、前記LED4…のバックライト照明光が遮られて、文字盤2aの表面の開口周縁の照度が暗くなってしまうといった問題があった。
【0017】
特に、開口周縁に、アナログ表示部等、他の表示部の表示面を隣接配置すると、この隣接配置された部分が暗くなって、均等なバックライト照明を得ることができないといった問題があった。
【0018】
そこで、この本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ELディスプレイ装置が他の表示部と隣接されて設けられていても、造形の自由度を確保しつつ、他の表示部の照明を暗くすることが無い均等なバックライト照明を得られ、スペース効率の良好な車両用情報表示装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載されたものは、表示面内に、他の表示部と隣接配置されるEL表示面部を有するELディスプレイ装置を有して、該他の表示部の背面側に配置されて照明光を出射するバックライト光源を有することにより、前記他の表示部のバックライト照明が行われる車両用情報表示装置であって、前記EL表示面部のうち、前記他の表示部と重複する部分には、前記バックライト光源の照明光を透過させる透光部を有する車両用情報表示装置を特徴としている。
【0020】
また、請求項2に記載されたものは、前記透光部は、前記EL表示面部の不透明部分を切断して形成される請求項1記載の車両用情報表示装置を特徴としている。
【0021】
更に、請求項3に記載されたものは、前記透光部は、前記EL表示面部の不透明部分を寄せ集めて形成される請求項1記載の車両用情報表示装置を特徴としている。
【0022】
そして、請求項4に記載されたものは、前記透光部は、透明なITO透明導電膜を有する透明電極を用いて構成されている請求項1記載の車両用情報表示装置を特徴としている。
【0023】
また、請求項5に記載されたものは、前記透明電極の発光色を他の照明色と異ならせている請求項4記載の車両用情報表示装置を特徴としている。
【0024】
更に、請求項6に記載されたものは、前記EL表示面部では、表面側に貼設された円偏向板部材のうち、前記透光部に対応する箇所を切断して取り除いていることを特徴とする請求項1乃至5記載の車両用情報表示装置。
【発明の効果】
【0025】
このように構成された本願発明の請求項1記載のものは、前記EL表示面部のうち、前記他の表示部と重複する部分に設けられた透光部が、前記バックライト光源の照明光を透過させる。
【0026】
このため、前記EL表示面部の他の表示部が、バックライト光源からの照明光によって照明されて、重複していない部分と略同様のバックライト照明の照度が得られる。
【0027】
また、請求項2に記載されたものは、前記透光部が、前記EL表示面部の不透明部分を切断して形成されている。
【0028】
例えば、不透明部分が、アルミ金属蒸着膜である場合は、アルミ蒸着を行わないで、カットされた該透光部が形成される。また、重複している部分に対応して、表面に貼設されている偏光板の一部が、切断されて該透光部が形成される。
【0029】
このため、容易に透光部を形成することが出来る。
【0030】
更に、請求項3に記載されたものは、前記透光部は、前記EL表示面部の不透明部分が寄せ集められて形成されている。
【0031】
例えば、不透明部分が、アルミ金属蒸着膜によって構成される陰極線である場合は、陰極線の間隔又は幅寸法を小さく設定して、寄せ集めることにより該透光部が形成される。
【0032】
そして、請求項4に記載されたものは、前記透光部が、透明なITO透明導電膜によって構成される透明電極を用いて構成されている。
【0033】
例えば、陰極として用いられているアルミ金属蒸着膜の陰極線の一部又は全部をITO透明導電膜に置き換えることにより、透光部が形成される。
【0034】
このため、前記EL表示面部の途中でも、透光部を形成できるので、造形の自由度を向上させることができる。
【0035】
また、請求項5に記載されたものは、前記透明電極の発光色が、他の照明色と異なるため、例えば、他の表示部の周囲の照明色をバックライト照明の照明色とは、異なる照明色とすることができる。
【0036】
更に、請求項6に記載されたものは、前記EL表示面部では、表面側に貼設された円偏向板部材のうち、前記透光部に対応する箇所が切断されて取り除かれている。
【0037】
このため、この透光部の透過率が上昇するので、更に、バックライト光源からの照明光の光量が、該透光部を通過する際に減少する虞がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態の車両用情報表示装置について説明する。
【0039】
図1乃至図9は、この発明の実施の形態の車両用情報表示装置を示すものである。
なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
【0040】
まず、構成から説明すると、この実施の形態では、図1に示すように、車両用情報表示装置としてのコンビネーションメータ16では、スピードメータ部2の数値部2b及び目盛り部2cが設けられた文字盤2aの周囲が、筐体を構成する合成樹脂製のハウジング部材17によって覆われて、主に構成されている。
【0041】
この文字盤2aの背面側には、ELディスプレイ装置としての有機ELディスプレイ装置18が配置されている。
【0042】
また、この文字盤2aには、スピードメータ部2に隣接するように、このEL表示装置18のEL表示面部18aの少なくとも一部である情報が表示される部分を視認可能に露出させる開口部19が形成されている。
【0043】
更に、この文字盤2aの裏面側には、複数のバックライト光源としてのLED4…が、配置されていて、前記スピードメータ部2の数値部2b及び目盛り部2cが設けられた他の表示面2dを略全面に渡り、裏面側からバックライト照明するように構成されている。
【0044】
また、このコンビネーションメータ16は、図1に示すムーブメント20により駆動される指針21を有しており、この指針21が、前記文字盤2aの前面側を回動してアナログ指針表示ができるように構成されている。
【実施例1】
【0045】
実施例1の有機ELディスプレイ装置18は、図11に示すように、ガラス等の透明基板7上に、陽極としてのITO(Indium Tin Oxide)透明導電膜層8が形成されている。
【0046】
このITO透明導電膜層8は、平行に複数本の配線8a…を一定間隔で形成することにより短冊状を呈していて、正面視下縁側で集められた結線部8tが構成されると共に、このITO透明導電膜層8の上に、正孔注入層9,正孔輸送層10,発光層11,電子輸送層12及び電子注入層13が、順次積層されて、5層の有機膜層15が形成されている。
【0047】
また、この電子注入層13の上には、図3に示すように、陰極としてのアルミ金属蒸着膜層24が、設けられている。
【0048】
このアルミ金属蒸着膜層24は、前記ITO透明導電膜層8の各配線8a…の延設方向と直交する延設方向を有して、平行に一定間隔を置いて形成される複数本の配線24a〜24sによって、短冊状を呈して設けられている。
【0049】
これらの配線24a〜24sは、アルミ金属の蒸着膜によって構成されているので、不透明である。なお、従来と共通の図10では、説明の為、このアルミ金属蒸着膜層24の配線24a等と同様に構成されるアルミ金属蒸着膜層14が一本のみ示されている。
【0050】
そして、これらの配線24a〜24sは、正面視右側端縁で、集められて、結線部24tを構成している。この結線部24tは、図示省略の基板状に設けられた制御部とコネクタ等を介して接続されている。
【0051】
更に、この実施例1では、前記開口部19の左,右両上端縁近傍が、円弧形状を呈するコーナ部19a,19aとして構成されていて、正面視の形状を変形した略長円形形状となるように構成されている。
【0052】
そして、この実施例1では、これらの各配線24a〜24sのうち、前記開口部19の正面視左上端縁のコーナ部19aによって、文字盤2aの裏面側に隠れる部分の配線24a〜24kが、このコーナ部19aの曲線に沿って、順次切断されることにより、前記LED4のバックライト照明を透光可能として、前記他の表示部2dと、この有機ELディスプレイ装置18が重複する部分であっても、前記LED4の照明光を、文字盤2aの他の表示部2dの表面側まで透過させる透光部25が形成されている。
【0053】
また、この実施例1では、図3に示すように、前記有機ELディスプレイ装置18のEL表示面部18aの表面側には、円偏向板部材22が、貼設されている。
【0054】
この円偏向板部材22は、太陽光を反射することにより、前記有機膜層15等で構成されて内部に発光層11を有する発光部分のコントラストが低下しないように構成されている。
【0055】
更に、この円偏光板部材22は、前記透光部25に対応する箇所で、図4に示すような前記文字盤2aの開口部19のうち、正面視左上のコーナ部19aに隠れる部分22aが、切断されて取り除かれている(図3参照)。
【0056】
次に、この実施例1の車両用情報表示装置の作用について説明する。
【0057】
この実施例1の車両用情報表示装置では、前記有機ELディスプレイ装置18のEL表示面部18aのうち、前記隣接配置された他の表示部であるスピードメータ部2の表示部2dと重複する部分に設けられた透光部25が、前記スピードメータ部2のバックライト光源であるLED4の照明光を透過させる。
【0058】
このため、前記EL表示面部18aの透光部25は、LED4の照明光によって照明されて、重複していない他のスピードメータ部2の表示面と略同様の略均一のバックライト照明の照度が得られる。
【0059】
従って、この文字盤2aのうち、前記有機ELディスプレイ装置18が設けられた開口部19の周囲にも照明ムラが発生することなく、外観品質が良好である。
【0060】
また、前記透光部25が、前記EL表示面部18aの不透明部分を切断して形成されている。
【0061】
この実施例1では、図3に示すように、前記不透明部分が、表示面部18aの裏面側に設けられたアルミ金属蒸着膜によって構成される前記配線24a〜24sであり、前記配線24a〜24sのうち、前記開口部19の正面視左上端縁のコーナ部19aによって、文字盤2aの裏面側に隠れる部分の配線24a〜24kが、このコーナ部19aの曲線に沿って、順次切断されるように蒸着が行われないでカットされた透光部25が形成される。
【0062】
また、重複している部分に対応して、表面に貼設されている偏光板22の一部が、切断されて、透光部22aが形成される。
【0063】
この透光部22aは、前記透光部25と対応して、略同一形状となるように形成されている。このため、前記他の表示部2dの透過率が上昇するので、更に、LED4からの照明光の光量が、この透光部25を通過する際に減少する虞がない。
【0064】
このため、前記開口部19のコーナ部19aの形状に合わせて、容易に透光部25及び偏光板22の透光部22aを形成することが出来る。
【0065】
しかも、この実施例1では、バックライト照明光を遮らないように、異形形状のELディスプレイ装置を用いる必要が無い。従って、正面視で、通常の長方形形状の有機ELディスプレイ装置18を用いることが出来、製造コストの上昇を抑えて、文字盤2a内のスペース効率の良好なコンビネーションメータ16を提供出来る。
【実施例2】
【0066】
図5乃至図8は、この発明の実施の形態の実施例2の車両用情報表示装置を示すものである。
【0067】
なお、前記実施例1と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
【0068】
この実施例2の車両用情報表示装置では、コンビネーションメータ26の透光部35が、ELディスプレイ装置としての有機ELディスプレイ装置28の表示面部に設けられたアルミ金属蒸着膜層34を構成する配線34a〜34sのうち、結線部34t近傍の正面視上縁側に設けられる数本の配線34a〜34dの右上端を、寄せ集めて、透明なスペースを設けることにより形成されている。
【0069】
すなわち、この実施例2では、通常の配線34a等の幅が、ドットサイズの縦寸法である約0.35mm程度であるが、この寄せ集める部分の配線34a等の幅を約0.05mmとして、配線34a,34b間等の間隔を約0.05mmと、通常よりも比較的狭く設定されている。
【0070】
また、この実施例2では、図7に示すように、前記有機ELディスプレイ装置28の表示面28aの表面側には、円偏向板部材32が、貼設されている。
【0071】
この円偏向板部材32は、太陽光を反射することにより、前記有機膜層15等で構成される発光部分のコントラストが低下しないように構成されている。
【0072】
更に、この円偏光板部材32は、前記透光部35に対応する箇所で、図8に示すような前記文字盤2aの開口部29のうち、正面視右上のコーナ部29aに隠れる部分32aが、切断されて取り除かれている(図7参照)。
【0073】
次に、この実施例2の車両用情報表示装置の作用について説明する。
【0074】
この実施例2の車両用情報表示装置では、前記透光部35が、前記EL表示面部の裏面側に設けられた不透明部分であるアルミ金属蒸着膜層34を構成する配線34a〜34sのうち、正面視上縁側に設けられる数本の配線34a〜34dの右上端を、寄せ集めて、透明なスペースを設けることにより形成されている。
【0075】
このため、前記有機ELディスプレイ装置28のEL表示面部28aのうち、前記隣接配置された他の表示部であるスピードメータ部2の数値部2bと重複する部分に設けられた透光部35が、前記スピードメータ部2のバックライト光源であるLED4の照明光を透過させる。
【0076】
更に、前記円偏光板部材32で、前記透光部35に対応する箇所で、図8に示すような前記文字盤2aの開口部29のうち、正面視右上のコーナ部29aに隠れる部分32aが、切断されて取り除かれている。
【0077】
従って、正面視での数値部2b(図5中メーター値160km近傍)の減光量は少なく、前記結線部34t近傍の不透明部分である陰極線34a〜34dも、陰極線34a〜34dの間隔又は幅寸法を小さく設定して、寄せ集めることにより、透光部35を形成して、略均一のバックライト照明を隣接配置されるスピードメータ部2に与えることが出来る。
【0078】
他の構成、及び作用効果については、前記実施例1と同一乃至均等であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0079】
図9は、この発明の実施の形態の実施例3の車両用情報表示装置に用いられるELディスプレイ装置としての有機ELディスプレイ装置38を示すものである。
【0080】
なお、図9では、前記図11と略同様に説明の為、実施例1のアルミ金属蒸着膜層24の配線24a等に相当するアルミ金属蒸着膜層44部分が一本のみ示されている。
【0081】
この表示面部の裏面側に設けられたアルミ金属蒸着膜層44の一部には、前記電子注入層13及び電子輸送層12に至るまで、切り欠かれた切欠部45が凹設形成されて、透光部55が構成されている。
【0082】
この切欠部45内には、前記発光層11の裏面側に形成されるITO用電子輸送層46及びITO用電子注入層47が積層されて形成されると共に、裏面側には、両端部48a,48aを前記アルミ金属蒸着膜層44の端縁部44a,44aに重複させて、透明なITO透明導電膜48が積層形成されることにより、透明電極50が構成されている。
【0083】
この透明電極50では、通常の発光部分と同様に通電により発光が行われる。
【0084】
発光原理は、カソード(陰極)であるアルミ金属蒸着膜層44の端部44a,44aを介して、前記透明なITO透明導電膜48と、前記アノード(陰極)としての間に電圧が印可されると、電子と正孔とが、各々前記ITO用電子注入層47及び正孔注入層9とに注入される。
【0085】
この電子と正孔とが各々ITO用電子輸送層46及び正孔輸送層10を通過して発光層11で、結合される。
【0086】
そして、結合状態から再び基底状態に戻る際に光を発生する。
【0087】
このようなサンドイッチ構造は、ヘテロ構造と呼ばれるが、電子と正孔とを各々別の層に閉じこめることにより、効率的な反応を起こさせることができる。
【0088】
これらの正孔輸送層10及び発光層11には、各々ジアニン、アントラセン等の有機物が使われる。この原理はLEDと同じキャリア注入型である。
【0089】
この実施例3では、発光層11への両キャリアのバランスの良い注入による再結合効率の最適化によってホール輸送性の化合物と電子輸送性の化合物を積層する素子構造を、採用することにより、高輝度、高効率素子が得られている。
【0090】
前記実施例1と同様に、ITO透明導電膜層8には、正孔注入効率の良い(仕事関数の大きい)ITO、酸化銅、金等のうち、外部に光を取り出すため透明なITOが用いられている。
【0091】
また、前記アルミ金属蒸着膜層44としては、仕事関数の小さな金属、合金のうち、化学的安定性の比較的良好なAL/Li系合金、又は、LiF/Al系を用いていいて、一般的なパッシブマトリクスを構成している。
【0092】
作動原理は、例えば、横256ドット、縦64ドットのパッシブマトリックスELの場合、アルミ金属蒸着膜層44の配線本数は、横方向に64本ある。その線を駆動するロウ(行)ドライバはどちらか一方の端に位置している。前記実施例1では、右端にロウドライバを配置している。この構造において、左側に伸びているアルミ蒸着膜(線)は透明にしたい透光部としての切欠部45には、蒸着が行われない。そして、このアルミ非蒸着部にはITO透明導電膜48が蒸着される。
【0093】
従来の有機ELディスプレイでは、コダック社のC.W.Tang、S.VanSlykeらによって低分子の有機ELデバイスがつくられた構造は、有機層が二層のもので、 正孔輸送層(HTL;Hole Transfer Layer)にNPB (N,N-di(naphthalene-1-yl)-N,N-diphenyl-benzidene)、発光層(EML;EMissive Layer)と電子輸送層(ETL;Electron Transport Layer)アルミニウムキノリノール錯体(aluminato-tris-8-hydroxyquinolate (Alq3))。陰極にはマグネシウム銀合金、陽極にはITOが使われていた。
【0094】
現在の低分子有機ELは、分子を真空状態で昇華させ、ガラス基板である透明基板7に膜を蒸着させるという方法で製造されている。まずITO透明電極(アノード)が成膜してある透明基板7に,粉体の低分子有機材料を真空中のルツボに入れて加熱蒸発させ,メタルマスク蒸着によって5層の有機薄膜を積層する。
【0095】
このときの温度は分子が気体になるような高温でなければいけないが、有機分子が分解するような高温(250℃〜450℃)は避けなくてはいけない。
【0096】
この後、冷却した透明基板7に膜を成長させるが、これは単分子膜レベルで正確に制御する必要がある。5層の有機膜はITO陽極側から、正孔注入層9、正孔輸送層10、発光層11、電子輸送層12(透明電極50部分では、ITO用電子輸送層46)、電子注入層13(透明電極50部分では、ITO用電子注入層47)、であり、金属陰極としてのアルミ金属蒸着膜層44の配線となる。
【0097】
正孔注入層9、正孔輸送層10として、正孔の移動度が大きく正孔注入と輸送をされやすくするためにイオン化ポテンシャルの小さいである、芳香族ジアミン類のトリフェニルジアミン誘導体(TPD)、高分子材料のポリビニルカルバゾール(PVCz)、芳香族アミン芳香族アミン化合物がある。電子注入層13と電子輸送層12には、電子親和力の値ができるだけ大きな材料を選ぶ。耐久性が優れた高性能な電子輸送材料として緑色発光材料のAlq3がある。他にはオキサジアゾール誘導体(BND)などがある。
【0098】
発光には2つの方法があり、(1)発光層そのものが発光する方法。(2)発光層(ホスト)に別の発光材料(ドーパント)を微量にドーピングすることでドーパントを発光させる方法がある。
【0099】
各々の発光層材料はキャリア注入が必要なので、蛍光を有するとともにキャリア輸送性を有するものでなければならない。
【0100】
そこで、アルミキノリノール錯体(Alq3)がキャリア輸送性を有するものとして用いられる。ドーパントとしては、クマリン540(C540)、ナイルレッド(Nailered)、DCMが代表として上げられる。
【0101】
また、陰極の非アルミ蒸着部においては、ITO透明導電膜48に適する有機層のITO用電子輸送層46、ITO用電子注入層47が形成されている。
【0102】
一例として、ITO用電子輸送層46、ITO用電子注入層47としては、アルカリメタルドープ・電子輸送層が用いられる。
【0103】
また、透明陰極としてIZO(In2O3-ZnO)が用いられる。
【0104】
透明電極50を製膜する際には、有機層成膜後にスパッタするので、スパッタ衝撃により有機膜が損傷しないよう配慮すべきで、メタルマスクで非スパッタ部を覆うように構成されている。
【0105】
次に、この実施例3の車両用情報表示装置の作用効果について説明する。
【0106】
この実施例3では、図9に示すように、前記透光部55が、透明なITO透明導電膜によって構成される透明電極50のITO透明導電膜48が、切欠部45によって切り欠かれた前記アルミ金属蒸着膜層44の端縁部44a,44a間を接続するように用いられて構成されている。
【0107】
この透明電極50が、途中に形成される前記アルミ金属蒸着膜層44の配線に、通電が行われると、アルミ部分の約1/10程度ではあるが、発光させることができる。
【0108】
このため、例えば、他の表示部の周囲の照明色をバックライト照明の照明色とは、異なる照明色とすることができる。
【0109】
このように、陰極として用いられているアルミ金属蒸着膜層44の陰極線の一部又は全部がITO透明導電膜48に置き換えられることにより、透明な透光部55が形成される。
【0110】
このため、前記有機ELディスプレイ装置38の表示面部の途中でも、隣接配置される他の表示部のバックライト照明を遮ることのない透光部55を形成することができるので、造形の自由度を向上させることができる。
【0111】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態の実施例1乃至3を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0112】
即ち、前記実施の形態の実施例1乃至3では、図示説明の為、前記ITO透明導電膜層8の各配線8a…及び、アルミ金属蒸着膜層24の配線24a〜24sを複数本、例示して説明してきたが、特にこれに限らず、配線8a…を256本、配線24aを64本づつとして、縦64ドット、横256ドットのマトリックスとする等、配線8a…と配線24aとの本数が相違していても良く、数量、形状が特に限定されるものではない。
【0113】
また、前記実施例2では、アルミ金属蒸着膜層34を構成する配線34a〜34sのうち、結線部34t近傍の正面視上縁側に設けられる数本の配線34a〜34dの右上端を、寄せ集めて、透明なスペースを設けているが、特にこれに限らず、有機ELディスプレイ装置28の上辺部若しくは下辺部の略中央位置を、中心に向けて凹ませるように、配線34a等を寄せ集めて、透明なスペースを設けてもよく、形状及び透光部35の形成される箇所が特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用情報表示装置で、要部の構成を説明するコンビネーションメータのスピードメータ部周縁の一部透過正面図である。
【図2】実施例1の車両用情報表示装置で、全体の構成を説明するコンビネーションメータの正面図である。
【図3】実施例1の車両用情報表示装置で、有機ELディスプレイ装置の分解斜視図である。
【図4】実施例1の車両用情報表示装置で、コンビネーションメータ装置のハウジング及び文字盤を示す正面図である。
【図5】この発明の最良の実施の形態の実施例2の車両用情報表示装置で、要部の構成を説明するコンビネーションメータのスピードメータ部周縁の一部透過正面図である。
【図6】実施例2の車両用情報表示装置で、全体の構成を説明するコンビネーションメータの正面図である。
【図7】実施例2の車両用情報表示装置で、有機ELディスプレイ装置の分解斜視図である。
【図8】実施例2の車両用情報表示装置で、コンビネーションメータ装置のハウジング及び文字盤を示す正面図である。
【図9】実施例3の有機ELディスプレイ装置の内部の積層順序を模式的に示す一部省略斜視図である。
【図10】従来例の車両用情報表示装置で、コンビネーションメータ装置の正面図である。の有機ELディスプレイ装置の内部の積層順序を模式的に示す一部省略斜視図である。
【図11】一般的な有機ELディスプレイ装置のの内部の積層順序を模式的に示す一部省略斜視図である。
【符号の説明】
【0115】
2a 文字盤
2d 他の表示部
7 透明基板
8 ITO透明導電膜層
18 有機ELディスプレイ装置
18a 表示面部
24,34,44 アルミ金属蒸着膜層
25,35 透光部
28,38 有機ELディスプレイ装置
48 ITO透明導電膜
50 透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面内に、他の表示部と隣接配置されるEL表示面部を有するELディスプレイ装置を有して、該他の表示部の背面側に配置されて照明光を出射するバックライト光源を有することにより、前記他の表示部のバックライト照明が行われる車両用情報表示装置であって、
前記EL表示面部のうち、前記他の表示部と重複する部分には、前記バックライト光源の照明光を透過させる透光部を有することを特徴とする車両用情報表示装置。
【請求項2】
前記透光部は、前記EL表示面部の不透明部分を切断して形成されることを特徴とする請求項1記載の車両用情報表示装置。
【請求項3】
前記透光部は、前記EL表示面部の不透明部分を寄せ集めて形成されることを特徴とする請求項1記載の車両用情報表示装置。
【請求項4】
前記透光部は、透明なITO透明導電膜を有する透明電極を用いて構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用情報表示装置。
【請求項5】
前記透明電極の発光色を他の照明色と異ならせていることを特徴とする請求項4記載の車両用情報表示装置。
【請求項6】
前記EL表示面部では、表面側に貼設された円偏向板部材のうち、前記透光部に対応する箇所を切断して取り除いていることを特徴とする請求項1乃至5記載の車両用情報表示装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−349352(P2006−349352A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172024(P2005−172024)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】