説明

車両用成形天井及びその製造方法

【課題】ルーフパネルの室内面側に取り付けられる成形天井及びその製造方法であって、ルーフパネル形状に左右されることなく、フラットな製品面形状を維持でき、かつルーフパネルと成形天井間に衝撃吸収パットやハーネス等の収容を可能にするとともに、断熱性、遮音性を高める。
【解決手段】成形天井10は、所望の凹凸形状に成形されるパネル側基材11と、製品面形状を維持するほぼフラットな面形状に成形された室内側基材12との二層構造からなる基材表面に表皮13を貼付して構成されており、ルーフパネル1のレインフォース部1a等の突起形状を回避できるとともに、衝撃吸収パットやハーネス類を背面側に簡単に収容できるようにパネル側基材11が所望の凹凸形状に成形され、かつパネル側基材11と、室内側基材12との間に中空部14を形成することで、断熱性、吸音性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用成形天井及びその製造方法に係り、特に、所望の凹凸形状に成形されるパネル側基材と、製品面形状を形成するようにほぼフラット面形状に成形される室内側基材との二層基材構造を採用することで、パネルとの干渉を避け、しかも、中空部を有効に利用するとともに、外観上、並びに手触り感においても良好な車両用成形天井及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図17に示すように、自動車のルーフパネル1の室内面側には、成形天井2が装着されており、この成形天井2は、図18に示すように、保形性並びにルーフパネル1に対する取付剛性を備えた基材3の表面に手触り感、表面外観を向上させるための表皮4が貼付された二層構造体から構成されている。
【0003】
通常、基材3の素材としては、ガラス繊維入り樹脂板や、ガラス繊維と樹脂繊維とをマット状に集積したものをプレス成形により板状に成形した繊維質成形体、PPO(ポリフェニレンオキシド)発泡樹脂基材、ウレタン樹脂基材、PET不織布成形体等が使用されており、表皮4としては、織布、不織布、合成樹脂シート等が適宜選択されている。
【0004】
そして、成形天井2は、ルーフパネル1の室内面に接着剤を介して接着固定されるか、あるいはクリップやビス等の取付具を介して機械式に固定されるが、例えば、ルーフパネル1の車幅方向に沿って補強を目的としたレインフォース部1aがあるため、実際に成形天井2をルーフパネル1の室内面に装着した状態では、レインフォース部1a相当箇所において、室内側に膨出する膨出部2aが室内側に突出してしまうのが実情である(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−85486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の成形天井2をルーフパネル1の室内面側に装着した際、ルーフパネル1のレインフォース部1a相当部分が膨出部2aとして室内側に突出し、意匠性や手触り感に劣るという欠点がある。また、成形天井2の形状がルーフパネル1の面形状に制約を受けることから、ルーフパネル1の形状を複雑な曲面形状や凹凸部を多数有する形状に設定することができず、ルーフパネル1の造形上の制約が多いという問題がある。
【0007】
更に、ルーフパネル1の室内面に成形天井2を接着固定、あるいはクリップ等の取付具を介して固定するため、ルーフパネル1と成形天井2との間に殆どスペースがなく、衝撃吸収パット等の衝撃吸収部材を設けることができないとともに、電装ケーブル等のハーネスを収容するスペースを確保することも困難である。しかも、成形天井2が広い面積でルーフパネル1に接しているため、騒音や熱がパネルから室内側に伝達され易く、遮音性、並びに断熱性に劣るという欠点も指摘されている。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ルーフパネルの面形状に左右されることなく、フラットな製品表面外観が得られ、意匠性並びに手触り感に優れるとともに、成形天井の裏面に衝撃吸収部材やケーブル、ハーネス等の収容スペースが確保でき、モジュール化に好適であり、しかも、遮音性、断熱性に優れた車両用成形天井及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、発明者は、鋭意研究の結果、従来一層であった基材構成として、裏面側に位置するパネル側基材と、表面側に位置する室内側基材の二層基材構造を採用し、相方の基材形状を相違させることにより、ルーフパネルのレインフォース部等の突起物を回避しつつ、製品表面のほぼフラット面形状を維持できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本願発明は、所要形状に成形された基材からなり、ルーフパネルの室内面側に装着される車両用成形天井であって、前記基材は、所望の凹凸形状に成形されるパネル側基材と、製品面形状を形成するようにほぼフラット面形状に成形される室内側基材の二層基材構造が採用され、上記パネル側基材のルーフパネル側に凹設される凹部と室内側基材との間に、中空部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
更に、この成形天井の製造方法は、真空吸引機構をそれぞれ備えた成形金型が型開き状態にある時、パネル側基材の原反シートと室内側基材の原反シートを加熱軟化処理した後、成形金型内に投入する原反シートのセット工程と、成形金型にそれぞれ真空吸引力を作用させ、一方側の原反シートを一方側の金型の型面に沿って真空成形し、所要の凹凸形状を備えたパネル側基材を成形するとともに、他方側の金型の型面に沿って他方側の原反シートを真空成形して、製品面形状を備えた室内側基材を成形する基材の真空成形工程と、成形金型の型面にそれぞれパネル側基材、室内側基材を真空吸引力により保持した状態で、成形金型を型締めし、パネル側基材の凹部と室内側基材との間に中空部を形成するとともに、パネル側基材の凸部と、室内側基材とを圧着接合することにより、二層構造の基材を一体化する基材の一体化工程とからなることを特徴とする。
【0012】
ここで、二層構造体を構成する各基材(裏面側に位置するパネル側基材と表面側に位置する室内側基材)の素材としては、所要形状に真空成形することが必要であるため、非通気性で、かつ熱成形可能な素材であれば、合成樹脂製シート、ガラス繊維等の補強材を混入した熱可塑性樹脂シート、あるいは独立気泡タイプの発泡樹脂シート等が使用できるが、例えば、ガラス繊維と熱可塑性樹脂繊維とをマット状に集積プレスした不織布材料や、連続気泡型の発泡樹脂シート等、通気性を備えた素材であれば、非通気性フィルムを貼着することで、非通気性を付加するようにしても良い。
【0013】
そして、パネル側基材及び室内側基材の素材である原反シートをまず加熱軟化処理した後、型開きされている成形金型内にセットし、パネル側基材の素材である原反シートを一方側の金型の型面形状に沿って真空吸引力を作用させ、所望の凹凸形状を備えるようにパネル側基材を真空成形するとともに、室内側基材の原反シートと表皮の原反シートとを予めラミネートしておき、他方側の金型の型面形状に沿ってほぼフラットな面形状を備えるように真空成形する。
【0014】
次いで、成形金型でそれぞれ所要形状に成形したパネル側基材と室内側基材を成形金型の型締めにより一体化する。この時、パネル側基材の凹部と室内側基材との間で中空部が形成されるとともに、パネル側基材の凸部と室内側基材との間で強固な接合が行なわれる。また、所望ならば、中空部を形成する際、中空部内に圧空エアを吹き込むことで、圧空エアアシスト工法を援用することもできる。更に、成形天井をルーフパネルの室内面に取り付けるには、パネル側基材の裏面に接着剤を塗布してルーフパネルに接着固定するか、あるいは、クリップ、ビス止め等、取付具を介して成形天井を機械式に固定しても良い。
【0015】
従って、本発明に係る成形天井は、成形天井の基材構造をパネル側基材と室内側基材の二層構造としたため、例えば、ルーフパネルの形状に即してパネル側基材を所望の凹凸形状に成形するとともに、製品面形状を形作る室内側基材はほぼフラット面形状に成形すれば良い。よって室内側基材はルーフパネルの面形状に影響されることがないため、成形天井の製品表面はフラット感を強調でき、外観見栄えに優れるとともに、手触り感も良好である。また、成形天井の製品形状とは独立してルーフパネルの形状を設定できることから、ルーフパネルの造形自由度を向上させることができる。
【0016】
更に、パネル側基材を所望の凹凸形状に成形できることから、例えば、裏面側に衝撃吸収パット等の衝撃吸収部材を貼付したり、ハーネス等を収容するためのスペースを確保できることから、成形天井のモジュール化に好適である。
【0017】
また、ルーフパネルに対面するパネル側基材と室内側基材との間には、適宜箇所に中空部が形成されているため、断熱性に優れ、しかも、ルーフパネルの振動がパネル側基材に伝達されても、中空部によりエネルギー吸収が行なわれることから、遮音性能を高めることができる。
【0018】
更に、中空部の好適な態様としては、例えば、サンバイザ格納時の打音防止のために、サンバイザ収納凹部内のパネル側基材にエンボス状の凹凸部を設定することで、サンバイザ格納時の打音の周波数を分散させ、音量を低減することができる。また、中空部にエアのインレットとアウトレットを設定することで、エアダクトとして使用することもでき、別物のエアダクトを組み付けることに比べ、型費削減、工数低減等が期待できる。
【0019】
更に、本発明の好ましい実施の態様においては、所要形状に成形された基材からなり、ルーフパネルの室内面側に装着される車両用成形天井であって、前記基材は、所望の凹凸形状に成形されるパネル側基材と、製品面形状を形成するようにほぼフラット面形状に成形される室内側基材の二層基材構造が採用され、上記パネル側基材のルーフパネル側に凹設される凹部と室内側基材との間に、中空部が形成され、この中空部の一部において、室内側基材をくり抜き、開口を開設し、上記中空部を収納スペースとして使用するとともに、開口を蓋するようにカバー体が取り付けられていることを特徴とする。
【0020】
ここで、中空部の室内側基材をくり抜いてその開口に取り付ける部品としては、コンソール類やランプ類等が挙げられる。コンソール類の場合、取り付ける対象としてはカバー類だけで良いため、軽量化及びコストダウンに繋がり、天井への組付作業も低減できる。
【0021】
また、ルームランプ等のランプ類を中空部を利用して取り付けるには、中空部分の室内側をくり抜き、更に、カバーレンズを固定するための切欠き、ハーネスを通すための孔を開け、そこにランプスイッチ用のハーネスを組み付ける。また、必要に応じて反射板も一緒に組み付けることもでき、成形前の基材のルームランプとなる部位に光沢色のシールやフィルムを貼付しておいても良い。尚、光漏れ防止と光反射効率向上のために、室内側基材を黒色、パネル側基材を白色とするのが好ましい。
【0022】
従って、ランプ類のハウジング部分に樹脂成形体を成形する必要がないため、構造が簡素化でき、材料費を低減できる。また、モジュール化にも好適であり、しかも軽量化が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した通り、本発明に係る車両用成形天井及びその製造方法によれば、所望の凹凸形状に成形されるパネル側基材と製品面形状を形成するようにほぼフラットな面形状に成形される室内側基材との二層基材構造を採用したため、室内側基材は、ルーフパネル形状に何等左右されることなく、製品表面は、ほぼフラットな面形状を維持でき、美観並びに手触り感の優れた製品外観が得られ、かつルーフパネルの造形形状は、成形天井によって左右されることなく、自由なパネル加工が可能となり、パネルの造形自由度を高めることができるという効果を有する。
【0024】
また、室内側基材として、ほぼフラットな面形状を維持したままパネル側基材を所望の凹凸形状に成形できるため、衝撃吸収部材やハーネス等の収容を可能とし、モジュール化に好適であるとともに、上記凹凸形状により、中空部を形成できることから、断熱性、遮音性にも優れるという効果を有する。
【0025】
更に、中空部の室内側基材を開口し、コンソール類やランプ類等を中空部を利用して取り付ければ、コンソール類やランプ類のハウジングを廃止することができ、軽量化、構造の簡素化に貢献でき、しかもモジュール化に好適であるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る車両用成形天井及びその製造方法の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1乃至図5は本発明の第1実施例を示すもので、図1は車両用成形天井をルーフパネルに取り付ける状態を示す断面図、図2は同車両用成形天井をルーフパネルに取り付けた状態を示す断面図、図3乃至図5は図1に示す成形天井の製造方法の各工程を示す説明図である。
【0028】
図1,図2において、ルーフパネル1の室内面側に取り付けられる成形天井10は、所望の凹凸形状に成形されたパネル側基材11と製品面形状を形作るほぼフラットな面形状をなす室内側基材12とからなる二層の基材11,12と、室内側基材12の表面に貼付される表皮13とからなる積層構造体から構成されている。
【0029】
更に詳しくは、パネル側基材11及び室内側基材12は、それぞれ保形性、成形性、コスト等を考慮して、ガラス繊維を混入したPP(ポリプロピレン)樹脂が使用され、表皮13としては、ポリエステル不織布が使用されている。そして、上記パネル側基材11は、ルーフパネル1側に凹設される凹部11aと、室内側基材12側に突出する凸部11bを有する所望の凹凸形状に成形されており、凹部11a、凸部11bをいずれの箇所に設定するかは、ルーフパネル1の造形形状、すなわち、レインフォース部1aとの干渉を避けるためや、あるいは別部品取付用のハーネス収容スペース等の設定を考慮して、凹部11a、凸部11bの形状が決定される。また、パネル側基材11の凹部11aと室内側基材12との間には、図示するように中空部14が形成され、この中空部14は、ルーフパネル1の形状に左右されることなく、成形天井10の製品表面形状をほぼフラット形状に維持するために必要であり、また、この中空部14は、断熱性、遮音性についても効果がある。
【0030】
そして、この成形天井10をルーフパネル1の室内面側に取り付けるには、この第1実施例では、パネル側基材11の凹部11a裏面に接着剤15を塗布しておき、ルーフパネル1の室内面に成形天井10を接着固定する構造を採用する。尚、クリップやビス止め等により、ルーフパネル1に成形天井10を機械式に固定する構造に置き換えても良い。また、表皮13を廃止して、室内側基材12の製品表面側に絞加工や印刷加工を施すようにしても良い。
【0031】
このように、成形天井10をパネル側基材11と室内側基材12の二層構造とすることにより、ルーフパネル1の形状がどのような形状であっても、成形天井10の製品表面形状をほぼフラット状に成形でき、見栄え、手触り感を向上させることができるとともに、逆に、成形天井10により、ルーフパネル1の造形形状が束縛されることなく、ルーフパネル1の自由度を高めることができる。更に、パネル側基材11と室内側基材12との間に形成される中空部14により、上述したように、断熱性、遮音性を高めることができるとともに、また、所望の凹凸形状を設定することで、衝撃吸収部材やハーネス等を設置するスペースを設けることもでき、モジュール化にも最適である。
【0032】
次に、上述した成形天井10の製造方法の概要について、図3乃至図5に基づいて説明する。図3において、成形金型20は、上下動可能な成形上型21、成形下型22とから構成され、成形上型21は、昇降シリンダ23により所定ストローク上下動するとともに、成形下型22についても、昇降シリンダ24により所定ストローク上下動する。更に、成形上下型21,22には、真空吸引機構25,26がそれぞれ配設されている。
【0033】
そして、成形上下型21,22が型開き状態にある時、この成形金型20内に成形天井10の素材をそれぞれセットする。この第1実施例では、パネル側基材11の原反シートS1をクランプ装置27により周縁を保持した状態でセットする。一方、室内側基材12の原反シートS2と、表皮13の原反シートS3とを予め熱ラミした状態で、その周縁をクランプ装置28により保持した状態でセットする。尚、原反シートS1は単独で、かつ原反シートS2と表皮原反シートS3とは予め熱ラミにより一体化した状態でそれぞれ図示しない加熱手段により加熱軟化処理した状態でそれぞれ成形金型20内に投入される。
【0034】
この第1実施例では、パネル側基材11及び室内側基材12共ガラス繊維を混入したPP樹脂材料を使用し、表皮13としてポリエステル不織布を使用しているため、それぞれクランプ装置27,28により周縁を保持した状態でセットした後、図4に示すように、成形上下型21,22の各昇降シリンダ23,24を駆動させるか、あるいは原反シートS1を保持するクランプ装置27、原反シートS2、表皮原反シートS3を保持するクランプ装置28をそれぞれ可動させることで、図示するように、成形上型21の型面に沿って原反シートS1を真空成形して、パネル側基材11を成形すると同時に、成形下型22の型面に沿って原反シートS2、表皮原反シートS3を真空成形して、室内側基材12、表皮13を一体成形する。
【0035】
そして、図5に示すように、成形上下型21,22の昇降シリンダ23,24をそれぞれ駆動させ、成形上下型21,22を型締めすることで、パネル側基材11と室内側基材12とを一体化するとともに、中空部14を所定箇所に形成する。この時、図示はしないが、中空部14を形成するために、中空部14内に圧空エアを吹き込んで成形性を高めるようにしても良い。
【0036】
このように、上述した成形天井10の製造方法を使用すれば、パネル側基材11を所望の凹凸形状に成形できる一方、室内側基材12についてもほぼフラットな面形状を維持することができるとともに、両者間に所望の中空部14を適宜形成することができる。尚、成形上下型21,22でそれぞれパネル側基材11と室内側基材12を予め真空成形することが必要であるため、使用する素材としては、上述したように、非通気性の原反シートS1,S2を使用することが必要であるが、例えば、連続気泡型の発泡樹脂シートや不織布マット等の通気性素材を使用する際には、非通気性を付与するためにフィルム等を片面に貼付しておけば良い。
【0037】
従って、型締め、型開きできる成形金型20に真空吸引機構25,26を付設するだけの簡単な設備で機能性を高めた成形天井10を簡単に量産することができる。尚、成形上型21で室内側基材12を成形する一方、成形下型22でパネル側基材11を成形し、成形上下型21,22の型締めにより、双方の基材11,12を一体化することも可能である。そして、この場合には、表皮原反シートS3が成形上型21の型面に対向するようにセットする必要がある。
【実施例2】
【0038】
図6乃至図9は本発明の第2実施例を示すもので、図6は成形天井をパネル側からみた平面図、図7,図8は同成形天井におけるサンバイザ収納凹部の構造を示す平面図並びに断面図、図9は同成形天井の中空部をエアダクトとして使用する構成を示す断面図である。
【0039】
この第2実施例においても、車両用成形天井10は、所望の凹凸形状に成形されたパネル側基材11と、ほぼフラットな面形状に成形された室内側基材12との二層基材構造が採用され、表皮13が貼付された室内側基材12とパネル側基材11の間に中空部14が形成されるという構成は第1実施例と同様である。
【0040】
そして、この第2実施例においては、中空部14に機能性を付与したことが特徴である。すなわち、図7,図8に拡大して示すように、成形天井10の前縁側両側には、サンバイザ16を格納できるように、サンバイザ格納凹部16aがパネル側に凹設される形状に設定されており、特にサンバイザ16を格納操作する際、サンバイザ16が成形天井10の製品面にぶつかり、打音が生じ易いことを考慮して、サンバイザ格納凹部16aに相当する箇所のパネル側基材11には、ビード状の凹部11aが形成されており、この凹部11aと室内側基材12との間に打音防止用中空部14Aが形成されている。従って、サンバイザ16の格納操作時における不快音を防止できるという効果がある。
【0041】
また、図9に示すように、成形天井10の前後方向ほぼ中央部において、パネル側基材11は2箇所に仕切り凸部11cが形成され、この仕切り凸部11cにより凹部11aが3箇所に区画形成されている。すなわち、仕切り凸部11c間の中空部14は、断熱機能や遮音機能を発揮するとともに、仕切り凸部11cの外側は、エアダクト用中空部14Bとして設定されている。従って、エアダクト用中空部14Bを形成するには、室内側基材12及び表皮13にそれぞれエアインレット、エアアウトレットの開口を設ければ、エアダクト用中空部14Bを別物で取り付ける必要がなく、エアダクト用中空部14Bを形成するだけで、簡単かつ廉価にエアダクト構造を提供することができる。
【0042】
そして、この第2実施例においても、成形天井10を製造するには、第1実施例同様、成形上下型21,22にパネル側基材11と室内側基材12をそれぞれ真空成形により所要形状に成形した後、成形上下型21,22を型締めすることで一体化し、成形天井10を成形すれば良く、成形金型20の型面形状を変更することにより簡単に第2実施例における成形天井10を製造することができる。
【実施例3】
【0043】
図10乃至図16は本発明の第3実施例を示すもので、図10乃至図14は成形天井にオーバーヘッドコンソールをモジュール化した構成を示す各説明図、図15,図16は成形天井にルームランプをモジュール化した構成を示す各説明図である。上記成形天井10の構成は、第1実施例、第2実施例同様、パネル側基材11と、室内側基材12と表皮13とから構成されており、パネル側基材11の凹部11aと室内側基材12との間には中空部14が形成されている。
【0044】
そして、この第3実施例では、成形天井10に構造が簡素で軽量であり、しかもコストの廉価なオーバーヘッドコンソール30をモジュール化する構造である。すなわち、オーバーヘッドコンソール30は、取付フレーム31と、表面カバー体32と、この表面カバー体32に回動自在に取り付けられている開閉リッド33とから構成され、従来のハウジング構造を廃止し、備品を収容するスペースとしてパネル側基材11の凹部11aを利用したことが特徴である。そして、中空部14を収納スペース用中空部14Cとして有効活用することで、モジュール化を可能としている。
【0045】
図11に示すオーバーヘッドコンソール30を有する成形天井10の製造方法の概要を簡単に説明すると、図12に示すように、成形上型21の型面に沿ってパネル側基材11を真空成形すると同時に、成形下型22の型面に沿って室内側基材12、表皮13を真空成形し、その後、成形上下型21,22を型締めすることで、成形天井10が所要形状に成形される点は、上述した第1、第2実施例と同様である。
【0046】
そして、成形天井10を所要形状に成形した後、図13に示すように、収納スペース用中空部14Cに相当する室内側基材12、表皮13をカッター刃等によりくり抜き、端材12a,13aを取り除き開口17を開設した後、図14に示すように、オーバーヘッドコンソール30における取付フレーム31を接着固定することで、簡単にオーバーヘッドコンソール30を成形天井10にモジュール化することができる。従って、パネル側基材11の凹部11aの形状を利用して、この部位を収納スペース用中空部14Cとして有効に利用でき、かつオーバーヘッドコンソール30の構成についても、従来の重量の嵩むハウジングを廃止でき、オーバーヘッドコンソール30の構成を簡素化でき、軽量化、コスト低減等が図れ、しかも、取付作業性を向上させることができるという利点がある。
【0047】
次いで、図15,図16は第3実施例の変形例を示すもので、オーバーヘッドコンソール30に替えて、ルームランプ40に適用した実施例を示す。この変形例についても、成形天井10の構成は上述した各実施例と同様であり、パネル側基材11は、所望の凹凸形状に成形され、室内側基材12は、フラット形状に成形された二層の基材11,12を採用した構造であり、特に、パネル側基材11に成形した凹部11aをランプ類収納用中空部14Dとして活用したことが特徴である。
【0048】
そして、ルームランプ40の構成は、照光用のカバーレンズ41の裏面にサポート42aを介して電球42が支持されており、カバーレンズ41の裏面左右側に係止爪43が立設され、かつコネクタ44が一方側の係止爪43よりやや内側に突設形成されている。ここで、ランプ収容スペースと係止爪を係止する構成を加味して、パネル側基材11は、ランプ類収納用中空部14Dとして形成され、パネル側基材11には、段部11d、係止孔11e、コネクタ挿通孔11fが形成されており、図16に示すように、成形天井10にルームランプ40を取り付けるには、成形天井10をまず所望形状に成形する。すなわち、パネル側基材11に段部11dを備えた凹部11aを形成するとともに、係止孔11eやコネクタ挿通孔11fを開設した後、上記凹部11aの表面側に位置する室内側基材12及び表皮13をくり抜いて、開口17を開設する。そして、この開口17に軽量でかつ構造が簡易なルームランプ40を取り付ける。
【0049】
従って、ルームランプ40は、カバーレンズ41の裏面に突設されている一対の係止爪43をパネル側基材11の係止孔11e内に差し込んだ後、折曲操作することで簡単に取り付けられる。更に、ハーネス50のコネクタ51をコネクタ44に接続することにより、簡単にハーネスの布設作業を完了させることができる。このように、成形天井10の中空部14Dを利用して、構造が簡易なルームランプ40を簡単にモジュール化することができ、このルームランプ40は、従来の重量の嵩むハウジングを廃止することで、軽量でかつコストを廉価に製作できる。また、ルームランプ40の照光効率を高めるために、電球42の背面側に位置する部位に光沢色のシールやフィルムを貼付しても良く、また、光漏れ防止と光効率向上のために、室内側基材12を黒色、パネル側基材11を白色に設定するのが良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る成形天井10の基本構造は、所望の凹凸形状に成形されたパネル側基材11と、ほぼフラット形状に成形された室内側基材12との二層構造を採用することで、両者間に中空部14を画成することができるとともに、ルーフパネル1の造形自由度を高め、かつ各種モジュールに有効に適用できるというものであるが、実施例では、非通気性を有する各素材を成形上下型21,22のそれぞれの形状に沿うように真空成形した後、型締めにより両者間に中空部14を形成するように一体化したが、真空成形を使用することなく、各基材11,12を別個に成形した後、圧着金型を使用して圧着一体化することも可能である。
【0051】
また、サンバイザ格納凹部16aに該当するパネル側基材11にビード状の凹部11aを形成し、打音防止としたが、この構造をアシストグリップ装着部分に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る車両用成形天井の第1実施例の概略構成を示すもので、成形天井をルーフパネルの室内面に取り付ける態様を示す説明図である。
【図2】図1に示す成形天井をルーフパネルに取り付けた状態を示す断面図である。
【図3】図1に示す成形天井の製造方法における各原反シートの成形型内への投入工程を示す説明図である。
【図4】図1に示す成形天井の製造方法における各基材の真空成形工程を示す説明図である。
【図5】図1に示す成形天井の製造方法における各基材の接合一体化工程を示す説明図である。
【図6】本発明に係る成形天井の第2実施例を示すもので、ルーフパネル側からみた成形天井の平面図である。
【図7】図6に示す成形天井におけるサンバイザ格納凹部を示す平面図である。
【図8】図7中VIII−VIII線断面図である。
【図9】図6中IX−IX線断面図である。
【図10】本発明に係る車両用成形天井の第3実施例を示すパネル側からみた外観図である。
【図11】本発明に係る車両用成形天井の第3実施例を示すもので、オーバーヘッドコンソールを成形天井に取り付けた状態を示す断面図である。
【図12】図11に示すオーバーヘッドコンソールを付設した成形天井の製造方法における成形天井の成形工程を示す説明図である。
【図13】図11に示すオーバーヘッドコンソールを付設した成形天井の製造方法における中空部のくり抜き工程を示す説明図である。
【図14】図11に示すオーバーヘッドコンソールを付設した成形天井の製造方法におけるオーバーヘッドコンソールの取付形態を示す説明図である。
【図15】本発明に係る車両用成形天井の第3実施例を示すもので、ルームランプを成形天井に取り付ける状態を示す説明図である。
【図16】図15に示すルームランプを成形天井に取り付けた構造を示す断面図である。
【図17】従来のルーフパネルとそれに装着する成形天井を示す説明図である。
【図18】従来の成形天井の取付構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ルーフパネル
1a レインフォース部
10 成形天井
11 パネル側基材(裏面側基材)
11a 凹部
11b 凸部
11c 仕切り凸部
11d 段部
11e 係止孔
11f コネクタ挿通孔
12 室内側基材
12a 端材
13 表皮
13a 端材
14 中空部
14A 打音防止用中空部
14B エアダクト用中空部
14C 収納スペース用中空部
14D ランプ類収納用中空部
15 接着剤
16 サンバイザ
16a サンバイザ格納凹部
17 開口
20 成形金型
21 成形上型
22 成形下型
23,24 昇降シリンダ
25,26 真空吸引機構
27,28 クランプ装置
30 オーバーヘッドコンソール
31 取付フレーム
32 表面カバー体
33 開閉リッド
40 ルームランプ
41 カバーレンズ
42 電球
43 係止爪
44 コネクタ
50 ハーネス
51 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要形状に成形された基材(11,12)からなり、ルーフパネル(1)の室内面側に装着される車両用成形天井(10)であって、
前記基材(11,12)は、所望の凹凸形状に成形されるパネル側基材(11)と、製品面形状を形成するようにほぼフラット面形状に成形される室内側基材(12)の二層基材構造が採用され、上記パネル側基材(11)のルーフパネル(1)側に凹設される凹部(11a)と室内側基材(12)との間に、中空部(14)が形成されていることを特徴とする車両用成形天井。
【請求項2】
所要形状に成形された基材(11,12)からなり、ルーフパネル(1)の室内面側に装着される車両用成形天井(10)であって、
前記基材(11,12)は、所望の凹凸形状に成形されるパネル側基材(11)と、製品面形状を形成するようにほぼフラット面形状に成形される室内側基材(12)の二層基材構造が採用され、上記パネル側基材(11)のルーフパネル(1)側に凹設される凹部(11a)と室内側基材(12)との間に、中空部(14)が形成され、この中空部(14)の一部において、室内側基材(12)をくり抜き、開口(17)を開設し、上記中空部(14)を収納スペースとして使用するとともに、開口(17)を蓋するようにカバー体(30,40)が取り付けられていることを特徴とする車両用成形天井。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用成形天井(10)を製造する車両用成形天井の製造方法において、
真空吸引機構をそれぞれ備えた成形金型(21,22)が型開き状態にある時、パネル側基材(11)の原反シート(S1)と室内側基材(12)の原反シート(S2)を加熱軟化処理した後、成形金型(21,22)内に投入する原反シート(S1,S2)のセット工程と、
成形金型(21,22)にそれぞれ真空吸引力を作用させ、一方側の原反シート(S1)を一方側の金型(21)の型面に沿って真空成形し、所要の凹凸形状を備えたパネル側基材(11)を成形するとともに、他方側の金型(22)の型面に沿って他方側の原反シート(S2)を真空成形して、製品面形状を備えた室内側基材(12)を成形する基材(11,12)の真空成形工程と、
成形金型(21,22)の型面にそれぞれパネル側基材(11)、室内側基材(12)を真空吸引力により保持した状態で、成形金型(21,22)を型締めし、パネル側基材(11)の凹部(11a)と室内側基材(12)との間に中空部(14)を形成するとともに、パネル側基材(11)の凸部(11b)と、室内側基材(12)とを圧着接合することにより、二層構造の基材(11,12)を一体化する基材(11,12)の一体化工程と、
からなることを特徴とする車両用成形天井の製造方法。
【請求項4】
前記成形金型(21,22)の型締めによる二層構造の基材(11,12)の一体化工程において、
中空部(14)内に圧空エアを吹き込み、圧空エアアシスト工法を援用したことを特徴とする請求項3に記載の車両用成形天井の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−36089(P2006−36089A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220770(P2004−220770)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】