説明

車両用画像処理装置および画像処理方法

【課題】車両周辺画像の画像処理装置において、画像変換を行なった場合でも画像歪の影響を受けずに立体物を精度よく判別する。
【解決手段】時間をずらせて撮像した画像から画像変換したトップビュー画像においてエッジを抽出し、各エッジ要素の直線パラメータ(傾きθ,切片b)を投票空間であるθ−b平面に投票して、投票頻度値の高い注目領域の動きを時系列で観察する。時系列で移動する注目領域Gr1やGr2はエッジが立体物に帰属し、移動しない注目領域Gh1やGh2は路面など平面に帰属するものと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周囲の画像から立体物を路面と識別して検出する車両用画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載のカメラで撮像した車両周囲の画像から他車両や道路施設などの立体物を検出し、ディスプレイ等に表示して運転を支援する車両運転支援装置が例えば特開2007−172501号公報に開示されている。
この車両運転支援装置においては、路面を含む水平方向のサイドビューを異なる位置で撮像した複数の画像をそれぞれ視点位置を車両上空に設定したトップビュー画像に変換し、重複領域において同一特徴を有する物体の2つの異なる特徴点の対応関係から、立体物を検出する画像処理を行なっている。
【特許文献1】特開2007−172501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の従来装置における画像処理では、トップビュー画像上での異なる2つの特徴点の対応関係から立体物を検出するようにしているので、カメラによるサイドビューの撮像画像からトップビュー画像へ変換することによる画像歪の影響で、2つの特徴点の対応関係をとることができず、そのため立体物の検出に失敗するおそれがある。
【0004】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、画像変換を行なった場合でも画像歪の影響を受けることなく、立体物を精度よく検出することができる車両用画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両周辺の画像を時系列で取得し、その画像をから自車両上方の視点位置から見下ろした俯瞰画像に生成した上で特徴点を抽出してそのパラメータを投票空間に投票し、投票結果である点群の時系列の状態に基づいて、上記の特徴点が立体物に帰属するかどうかを判別するものとした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、投票空間における点群の例えば動きから立体物を判別できるため、たとえサイドビュー撮像画像からトップビューなどへの画像変換によって画像歪が発生したとしても、その影響を受けることなく立体物を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに本発明の実施の形態を、実施例により説明する。
図1は、第1の実施例の構成を示すブロック図である。
画像処理装置1は、カメラ2に接続された画像メモリ3と、画像メモリ3に順次接続された変換画像作成部4、エッジ抽出部5、エッジパラメータ算出部6、パラメータ投票部7、注目領域抽出部8、および平面・立体判別部9を有している。変換画像作成部4、エッジ抽出部5、エッジパラメータ算出部6、パラメータ投票部7、注目領域抽出部8、および平面・立体判別部9はそれぞれ作業メモリ部10とも接続している。
【0008】
カメラ2は例えばCCD撮像素子を備えて路面を含む車両周辺を撮像可能に車両Vに設置され、撮像した画像データを画像処理装置1の画像メモリ3へ出力する。カメラ2の設置位置は周囲環境を把握したい周辺領域に応じて、例えば駐車場における駐車枠周りが対象であるときは図2に示すように、運転席と反対側のドアミラーMの下部に前側方を撮像範囲Sとして1台設定されるが、そのほか把握対象に応じて車両前部、車両後部、あるいは各角部など、適宜部位に必要に応じて複数台設けることもできる。なお、図2の(a)は車両の側面図、(b)は上面図である。
【0009】
画像メモリ3はRAM(Random Access Memory)で構成され、カメラ2からの画像データを所定時間間隔で取り込み、記憶する。
変換画像作成部4は、画像メモリ3に記憶された画像データに基づくサイドビュー画像を、視点位置を車両上空に設定して当該視点から車両周囲を見下ろしたトップビュー画像に変換する。
なお、複数台のカメラで車両周辺の各方向を撮像した場合には、1つの画像への合成も変換画像作成部4において行なう。
【0010】
エッジ抽出部5は、一般的なSobelフィルタを用いて、トップビュー画像の特徴点として縦方向および横方向のエッジを抽出する。ここで、エッジの縦方向の微分値(dx)と横方向の微分値(dy)が得られる。
エッジパラメータ算出部6は、エッジとして抽出された部位の画素(以下、エッジ要素と呼ぶ)ごとに直線方程式を求め、その傾きと切片をエッジ要素パラメータとして算出する。
【0011】
ここで、エッジパラメータ算出部6ではパラメータ算出に際して、上記所定時間間隔でカメラ2からの画像データが取り込まれる間の車両の移動による画像座標の変化を補正する。すなわち、1つの画像における車両の位置、姿勢を絶対座標として定義して、車両が移動した場合にはその移動、姿勢変化分を加味して、次の画像におけるエッジ要素の傾きと切片を上記絶対座標上に算出する。
【0012】
パラメータ投票部7は、投票空間に各エッジ要素のエッジ要素パラメータを投票する。ここでの投票空間は、直線の傾きと切片を横軸、縦軸とする平面からなる。
注目領域抽出部8は、1フレームの画像に対するエッジ要素パラメータの投票結果から、投票頻度値の高い注目領域を抽出する。
平面・立体判別部9は、注目領域を時系列で比較し、エッジ抽出部5で抽出されたエッジが路面など平面に描かれた模様に帰属するものか、それとも立体物に帰属するものかを判断する。
【0013】
作業メモリ部10は、画像メモリ3と同様にRAMから構成され、変換画像作成部4で変換されたトップビュー画像を記憶するとともに、エッジ抽出部5で抽出したエッジ、エッジパラメータ算出部6で算出されたエッジ要素パラメータ、パラメータ投票部7が使用する投票空間やその投票結果、注目領域抽出部8の抽出結果、平面・立体判別部9の判別結果等を各部の作業用に一時格納する。なお、後述のフローチャートにおいては各部による作業メモリ部10への格納処理についてとくに触れない。
変換画像作成部4、エッジ抽出部5、エッジパラメータ算出部6、パラメータ投票部7、注目領域抽出部8、および平面・立体判別部9はそれぞれの機能を統合したCPUとして構成することができる。
【0014】
つぎに、画像処理装置1における立体物かどうかの判別処理の流れを図3のフローチャートにより説明する。
まず、ステップ100において、画像メモリ3にカメラ2からの画像データを1フレーム分ずつ所定時間間隔で取り込み、記憶する。
ステップ101では、変換画像作成部4が画像メモリ3から画像データを読み出し、トップビュー画像に変換する。
続いてステップ102において、エッジ抽出部5がトップビュー画像内のエッジを抽出する。ここでは、Sobelフィルタを用いることにより、エッジの縦方向の微分値(dx)と横方向の微分値(dy)が得られる。
【0015】
ステップ103において、エッジパラメータ算出部6が、抽出されたエッジ要素ごとのエッジ要素パラメータを算出する。
すなわち、エッジ要素のもつ角度(傾き)はエッジの各方向の微分値を用いて、
θ=tan−1(dy/dx)
で求められる。したがって、エッジ要素(画素)の直線方程式y=ax+bについて、エッジ要素の位置(x,y)は既知であり、係数aもθから算出できるから切片bも算出できる。1つのエッジ要素について1組の傾きθと切片bからなるエッジ要素パラメータが求められる。
【0016】
ステップ104において、パラメータ投票部7が、投票空間に各エッジ要素のエッジ要素パラメータを投票する。
ここでは1つのエッジ要素のエッジ要素パラメータ(θ,b)が、投票空間Tとしてθ−b平面に1点としてプロットされることになる。
例えば図4の(a)に示すような駐車枠Wがトップビュー画像として得られている場合、(b)のようなエッジ画像が得られる。そしてエッジ画像におけるE1部分のエッジ要素のエッジ要素パラメータは(c)の投票空間TにおいてF1の投票点群となり、同様に(b)のエッジ画像におけるE2、E3部分は(c)の投票空間TにおいてそれぞれF2、F3の投票点群としてプロットされることになる。
なお、投票空間Tのθ−b平面は、とくに図示はしないが、例えば横軸θを0°から360°まで1°刻みとし、縦軸bを3ピクセル刻みのメッシュに区切ってある。
【0017】
ステップ105において、注目領域抽出部8が、投票空間Tにおけるエッジ要素パラメータ投票点群の密度が高い高頻度値領域を注目領域として抽出する。すなわちプロット数が所定の閾値(例えば100点)より高いメッシュ領域を注目領域として抽出する。
ステップ106では、平面・立体判別部9は、前回のトップビュー画像についての注目領域の抽出結果が作業メモリ部10に格納されているかどうかをチェックする。
前回の注目領域の抽出結果が作業メモリ部10に格納されていないときは、ステップ100へ戻り、カメラ2から新たな画像データを取り込んで、上述の処理を繰り返す。
【0018】
前回の注目領域の抽出結果がある場合には、ステップ107において、平面・立体判別部9が、注目領域に対応するエッジが立体物に帰属するものか路面など平面に帰属するものか判断する。
具体的には、投票空間Tにおける前回の注目領域と今回の注目領域を比較して相対的な位置関係をチェックする。
例えば路面など平面に描かれている駐車枠のペイントであれば、時間経過に伴って車両が移動しても、図5の(a)に示すように、車両の移動や回転分を考慮すれば注目領域Gh1、Gh2等は投票空間Tにおいてほとんど移動しない。図において、白丸の点群は前回の注目領域の点群、黒丸の点群は今回の注目領域の点群を示す。
【0019】
一方、立体物の場合には、当該立体物が移動したり、車両が移動して、相対関係が変化するとエッジの出現方向や位置が変化するため、図5の(b)に矢印で示すように、注目領域Gr1、Gr2等の投票空間における位置が移動する。
したがって、1台のカメラ2で撮像した画像に基づく場合でも、時系列における(すなわち前回と今回の)投票空間T上の注目領域の位置変化の状態により、エッジが立体物と平面のいずれに属するかが判断できる。
【0020】
この後、ステップ108において、作業メモリ部10に格納したトップビュー画像等とともに、エッジにかかる対象が立体物か否かの判別結果を運転支援装置など後段装置へ出力して1回の判断処理を終わる。なお、この際出力するトップビュー画像は後段装置の目的に応じて前回の画像または今回の画像が適宜に選択される。
【0021】
本実施例においては、図3のフローチャートにおけるステップ100と101とで発明における画像取得手段を構成し、ステップ102が特徴点抽出手段に該当する。
また、ステップ103と104とで投票手段を構成し、とくにステップ103がエッジ要素パラメータ算出手段に該当している。そして、ステップ105〜107が判別手段を構成している。
【0022】
本実施例は以上のように構成され、カメラ2で時間をずらせて撮像したサイドビュー画像に基づいてそれぞれトップビュー画像を作成し、トップビュー画像からエッジを抽出し、各エッジ要素のパラメータを投票空間Tに投票して、投票空間における投票点群の時系列の状態に基づいて、エッジが立体物に帰属するかどうかを判断するものとしたので、トップビュー画像がサイドビュー画像から画像変換されたものであっても、画像変換に伴う歪の影響を受けることなく立体物を精度良く抽出することができる。
【0023】
とくに、エッジ要素のパラメータを直線の傾きθと切片bとすることにより、1つのエッジ要素からは1つの投票点が生じるので、ハフ変換などと比較して投票量を大幅に低減することができ、処理の高速化が図れる。
さらに、立体物かどうかの判断は投票空間Tにおけるとくに投票頻度値の高い注目領域の状態に基づいて行うので、この点でも処理が迅速となる。
また、2つの画像におけるエッジ要素パラメータの傾きθと切片bは、車両の移動による画像座標の変化を補正した絶対座標上で算出することにより、注目領域が時系列で移動しているときは当該領域に対応するエッジが立体物に属し、注目領域が移動していないときは当該領域に対応するエッジが路面など平面の模様に帰属する旨、容易に判別することができる。
【0024】
つぎに、第2の実施例について説明する。
図6は第2の実施例の構成を示すブロック図である。
本実施例の画像処理装置1Aは、第1の実施例に対して、エッジパラメータ算出部6A、パラメータ投票部7A、平面・立体判別部9Aが異なり、注目領域抽出部の代わりにグループ化演算部11を備える点が相違する。
エッジパラメータ算出部6Aは、エッジ要素の傾きθによって直線の切片をx軸ととるか、y軸ととるかを切り換える。
【0025】
ここでは基本概念として、図7に示すように、画面中心Qからの向きによって水平方向+−45°の範囲αに属するエッジの傾きと、垂直方向+−45°の範囲βに属するエッジの傾きとに分類する。そして、傾きがθ1のように範囲αの場合はy軸を切片として直線式y=ax−bからエッジ要素パラメータ(θ,b)を算出し、傾きがθ2のように範囲βの場合はx軸を切片として直線式x=ay−bからエッジ要素パラメータ(θ,b)を算出する。
これによれば、図8に示すように、画面Kの角(隅)部を通る+−45°の直線で囲まれる領域内が投票空間Tの切片範囲となり、切片b、bは当該領域内に限定されることになる。
なお、エッジ要素パラメータは、第1の実施例のエッジパラメータ算出部におけると同様に、車両の移動による画像座標の変化を補正した絶対座標上に算出する。
【0026】
パラメータ投票部7Aは、エッジの傾きを2つの範囲に分類したことに対応して、2つの投票空間T1、T2を設定し、各エッジ要素のエッジ要素パラメータを対応する投票空間に投票する。
なお、投票空間を2つに分ける傾きθが+−45°付近の領域については、投票値が2つの投票空間T1、T2に分散する可能性があるので、本実施例では図7に示すように、上述の基本概念における2つの範囲を分ける角度線(+−45°)を挟んで+−5°の重複領域δを作る。すなわち、範囲αは拡大して具体的には水平方向+−50°のA、範囲βも垂直方向+−50°のBに設定して、エッジの傾きθが重複領域δに現れた場合には双方の投票空間T1、T2にエッジ要素パラメータが投票されるようにする。この場合、切片b、bの範囲は図8に示した領域よりわずかに外方へ拡大することになる。
【0027】
グループ化演算部11は、それぞれの投票空間T1、T2において、エッジ要素パラメータの投票頻度が所定の閾値より高い高頻度領域を抽出し、その周囲に隣接する高頻度値領域は同一領域としてグルーピングする。
【0028】
平面・立体判別部9Aは、それぞれの投票空間において、第1の実施例の平面・立体判別部におけると同様に、各グループを時系列で比較し、グループに属するエッジが路面に描かれた模様に帰属するものか、それとも立体物に帰属するものかを判断する。
平面・立体判別部9Aはさらに、立体物に帰属すると判断したグループを代表する代表値を用いて、当該立体物が移動しているか、静止しているかも判断する。
【0029】
作業メモリ部10は、変換画像作成部4で変換されたトップビュー画像を記憶するとともに、エッジ抽出部5で抽出したエッジ、エッジパラメータ算出部6Aで算出されたエッジ要素パラメータ、パラメータ投票部7Aが使用する投票空間やその投票結果、グループ化演算部11によるグルーピングの結果、平面・立体判別部で算出するグループの代表値や判別結果等を各部の作業用に一時格納する。
変換画像作成部4、エッジ抽出部5、エッジパラメータ算出部6A、パラメータ投票部7A、グループ化演算部11、および平面・立体判別部9Aはそれぞれの機能を統合したCPUとして構成することができる。
その他の構成は、第1の実施例の構成と同じである。
【0030】
以下に、第2の実施例の画像処理装置1Aにおける判別処理の流れを図9のフローチャートにより説明する。
ステップ200〜202は第1の実施例における図3のステップ100〜102と同じである。
ステップ203において、エッジパラメータ算出部6Aは、抽出されたエッジ要素ごとの傾きθを算出し、傾きθが図7に示した範囲A、Bのいずれに属するかに応じて、直線式y=ax−bまたはx=ay−bからエッジ要素パラメータ(θ,b)または(θ,b)を算出する。
【0031】
ステップ204において、パラメータ投票部7Aが、傾きθの範囲AおよびBに対応する2つの投票空間T1、T2のいずれかあるいは双方にエッジパラメータ算出部6Aで算出された各エッジ要素パラメータを投票する。
つぎにグループ化演算部11が、ステップ205において、それぞれの投票空間において、エッジ要素パラメータの高頻度領域を抽出するとともに、ステップ206で隣接する高頻度値領域をグルーピングする。
【0032】
具体的には、投票空間T1、T2各々における全体の中でエッジ要素パラメータの投票頻度が周囲の領域と比較してとくに高い極大領域を抽出し、その周囲所定距離内において極大領域の投票頻度の50%以上の投票頻度をもつ領域を統合して1つのグループとする。これにより、極大領域を核とするグループが形成される。
各グループはそれぞれ例えばその重心など1つの代表パラメータで当該グループを代表させる。
【0033】
ステップ207では、平面・立体判別部9Aが、前回のトップビュー画像についての各投票空間におけるグルーピングの結果、すなわちグループが作業メモリ部10に格納されているかどうかをチェックする。
前回のグループが格納されていないときは、ステップ200へ戻り、カメラ2から新たな画像データを取り込んで、上述の処理を繰り返す。
【0034】
前回のグループがある場合には、ステップ208に進み、第1の実施例における注目領域の比較と同様に、平面・立体判別部9Aが各投票空間T1、T2における前回のグループと今回のグループを比較して、代表パラメータ(重心)が移動していれば当該グループに対応するエッジが立体物に帰属し、代表パラメータの位置が変化しなければ当該グループに対応するエッジが平面に帰属するものと判別する。
【0035】
次のステップ209において、平面・立体判別部9Aは、立体物に帰属すると判断したエッジのグループについて、そのグループの代表値としての直線(傾きと切片)を算出する。グループの代表値は、例えば当該グループ全体のエッジ要素の位置(x,y)を用いた最小2乗法で直線当て嵌めにより求める。
そしてステップ210において、平面・立体判別部9Aは、作業メモリ部10に過去2回分のトップビュー画像についてグループの代表値が格納されているかどうかをチェックする。
過去2回分の代表値が作業メモリ部10に格納されていないときは、ステップ200へ戻り、カメラ2から新たな画像データを取り込んで、上述の処理を繰り返す。
【0036】
過去2回分の代表値がある場合には、ステップ211において、平面・立体判別部9Aが今回算出した分を含めた3つの直線(代表値)の絶対座標上での移動状態に基づいて、立体物が移動しているか、静止しているかを判断する。
静止している物体から得られる代表値である3本の直線は、例えば図10のように示され、移動する物体から得られる3本の直線は図11のように示される。これらはそれぞれ画像撮像の時系列における変化を示しており、図10においては時間の経過で直線がL1、L2、L3の順で移動し、図11では直線がL4、L5、L6の順で移動している。
ここで各直線の交点に着目すると、図10の静止物体にかかる各直線はほぼ同じ位置P0で交差している一方、図11の移動物体にかかる各直線はその交点がP1からP2へ変化している。したがって、直線の交点の変化の有無により、立体物が移動しているか静止しているかが判別できる。
【0037】
最後にステップ212において、平面・立体判別部9Aが、作業メモリ部10に格納した例えば最新(今回)のトップビュー画像等とともに、エッジにかかる対象が立体物か否か、および立体物は移動しているか静止しているかの判断結果を後段装置へ出力して1回の判断処理を終わる。
【0038】
本実施例においては、図9のフローチャートにおけるステップ200と201とで発明における画像取得手段を構成し、ステップ202が特徴点抽出手段に該当する。
また、ステップ203と204とで投票手段を構成し、とくにステップ203がエッジ要素パラメータ算出手段に該当している。
そして、ステップ205〜211が判別手段を構成し、とくにステップ205と206とがグループ化手段に該当し、ステップ209が代表値算出手段に該当している。
【0039】
本実施例は以上のように構成され、カメラ2を用いた時系列の撮像に基づく複数のトップビュー画像からエッジを抽出し、各エッジ要素のパラメータを投票空間T1、T2に投票して、投票空間における時系列の投票結果の状態に基づいて、エッジが立体物に帰属するかどうかを判断するものとしたので、トップビュー画像がカメラ2で撮像したサイドビュー画像から画像変換されたものであっても、画像変換に伴う歪の影響を受けることなく立体物を精度良く抽出することができる。
【0040】
とくに、エッジ要素のパラメータを直線の傾きθと切片bとすることにより、1つのエッジ要素からは1つの投票点が生じるので、ハフ変換などと比較して投票量を大幅に低減することができ、処理の高速化が図れる。
さらに、立体物かどうかの判断は投票空間T1、T2におけるとくに高頻度値領域の状態に基づいて行うので、この点でも処理が迅速となる。
また、時系列の2つの画像におけるエッジ要素パラメータの傾きθと切片bは、車両の移動による画像座標の変化を補正した絶対座標上で算出することにより、注目領域の位置が変化するか否かに基づいて、対応するエッジが立体物に帰属するのか路面の模様に帰属するのかを容易に判断することができる。
【0041】
そして、投票に際しては、エッジの要素の傾きに応じて切片をとる軸を切り換えるとともに、投票空間も切り換えるものとしたので、投票空間T1、T2を有限な領域に限定することができ、演算に必要な作業メモリ部10の容量も低減することが可能となる。
【0042】
またグループ化演算部11によって、投票空間において隣接する投票頻度値の高い領域をグルーピングし、グループの状態に基づいて、すなわち、時系列でグループが移動しているときは当該グループに対応するエッジが立体物に属し、グループが移動していないときは当該グループに対応するエッジが平面に属するものと判別するようにしたので、画像の揺らぎや、画像変換に伴うノイズに対して強く、安定した立体物判別ができる。
【0043】
グルーピングは、とくに投票頻度値の極大領域を抽出し、その極大領域を核として周辺の高頻度値領域をまとめるので、画像中では小さい物体として映っているようなものでも投票空間においてノイズとして排除されないようにすることができ、立体物の判別精度が向上する。
そして立体物判別に際して、各グループはそれぞれ1つのパラメータで代表するので、類似の複数の高頻度値領域が抽出されて演算が煩雑となるのが防止される。
【0044】
さらに、本実施例では、立体物にかかるグループの代表値を直線として算出し、時系列での当該直線の交点が変化するとき、当該グループにかかる立体物が移動体であると判別するので、対象物体が立体物であるかどうかに加えて、それが移動しているか静止しているかまで、詳細な情報を得ることができる。
【0045】
なお、第2の実施例のグループ化演算部11では、投票頻度値が所定の閾値より高い高頻度領域を抽出して、所定距離範囲内に隣接する高頻度値領域を同一領域としてグルーピングするものとしたが、グルーピングとしてはこのほか、データの分類を階層的に行なう階層型手法や分割最適化手法などを含むクラスタリングを利用することもでき、この場合には、投票空間をあらかじめメッシュに区分せずに、傾きθと切片bの値をそのまま投票してグルーピングできる。
【0046】
また、平面・立体判別部9Aにおけるグループの代表値の算出は、最小2乗法による直線当て嵌めで行なうものとしたが、これに限定されず、グループの母数が少ない場合は単純な平均や、Medianなどの統計値を使用してもよく、あるいはまた、ノイズ成分が多く含まれるようなデータである場合は、RANSAC(RANdom SAmple Consensus)やLMedS(Least Median of Squares)などのロバスト推定によって求めてもよい。
さらに、代表値の算出は立体物にかかるグループについて行なったが、平面にかかるグループについて算出すれば、同様にそれが移動しているか静止しているかを区別できるため、路面に描かれた駐車枠などの検出精度が一層向上する。
【0047】
上述の各実施例では、カメラ2からの画像データを所定時間間隔で画像メモリ3に取り込み、その取り込まれた間隔で変換画像作成部4がトップビュー画像に変換するものとしたが、カメラ2からの画像データは逐次画像メモリ3に取り込み、変換画像作成部4が上記所定時間間隔で画像メモリ3から読み出してトップビュー画像に変換するようにしてもよい。
また、エッジ抽出のためにSobelフィルタを用いて縦方向と横方向の成分(dx,dy)からエッジ要素の傾きθを求めるものとしたが、これに限定されず、例えば高次局所自己相関(HLAC)で利用される空間フィルタも様々な方向のエッジ抽出と同様作用を有するので、その組み合わせにより必要なエッジの傾きを算出することもできる。
【0048】
なお、各実施例はサイドビュー画像からトップビュー画像へ画像変換した例について説明したが、カメラ2で撮像したままの例えばサイドビュー画像上で立体物と平面とを判別する場合にも本発明はそのまま適用できる。
あるいは逆に、画像変換機能をカメラに内蔵させて、変換済みの画像データを直接作業メモリ部10へ送出するようにしてもよい。この場合には画像処理装置側では画像メモリ3と変換画像作成部4が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】カメラの配置を示す説明図である。
【図3】立体物判別処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】エッジ画像と投票空間へのパラメータ投票の関係を示す図である。
【図5】投票空間における注目領域の時系列の変化態様を示す図である。
【図6】第2の実施例の構成を示すブロック図である。
【図7】投票空間切換えのためのエッジ要素の傾きの分類要領を示す図である。
【図8】傾きで切り換えたときのパラメータ切片の範囲を示す概念図である。
【図9】立体物判別処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】静止物体にかかる投票点のグループを代表する直線の時系列変化を示す図である。
【図11】移動物体にかかる投票点のグループを代表する直線の時系列変化を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1、1A 画像処理装置
2 カメラ
3 画像メモリ
4 変換画像作成部
5 エッジ抽出部
6、6A エッジパラメータ算出部
7、7A パラメータ投票部
8 注目領域抽出部
9、9A 平面・立体判別部
10 作業メモリ部
11 グループ化演算部
θ エッジ要素の傾き
b 切片
Gh1、Gh2、Gr1、Gr2 注目領域
L1、L2、L3、L4、L5、L6 直線(グループの代表値)
T 投票空間
W 駐車枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列の撮像に基づく複数の車両周辺の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段で得られた撮像画像から、自車両上方の視点位置から見下ろした俯瞰画像を生成する俯瞰画像生成手段と、
前記俯瞰画像生成手段により得られた俯瞰画像から前記画像取得手段により得られた画像から特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、
特徴点のパラメータを投票空間に投票する投票手段と、
前記投票空間における投票点群の状態に基づいて、前記特徴点が立体物に帰属するかどうかを判断する判別手段とを備えることを特徴とする車両用画像処理装置。
【請求項2】
前記特徴点抽出手段が抽出する特徴点が前記画像内のエッジであり、
前記投票手段は、前記エッジの要素の直線方程式を形成する傾きと軸との切片を算出して前記パラメータとするエッジ要素パラメータ算出手段を有し、
前記判別手段は、投票空間における投票頻度値の高い領域の状態に基づいて前記特徴点が立体物に帰属するかどうかを判断することを特徴とする請求項1に記載の車両用画像処理装置。
【請求項3】
前記エッジ要素パラメータ算出手段は、1の画像における車両の位置および姿勢を絶対座標として定義し、前記複数の画像の取得時点間で車両が移動した場合には,その移動分を補正して絶対座標でのエッジ要素の前記傾きと切片を算出することを特徴とする請求項2に記載の車両用画像処理装置。
【請求項4】
前記エッジ要素パラメータ算出手段は、前記エッジの要素の傾きに応じて前記切片をとる軸を切り換え、
前記投票手段は、エッジの要素の傾きに応じて投票空間を切り換えることを特徴とする請求項3に記載の車両用画像処理装置。
【請求項5】
前記判別手段は、時系列で前記投票頻度値の高い領域が移動しているときは当該領域に対応するエッジが立体物に属し、前記投票頻度値の高い領域が移動していないときは当該領域に対応するエッジが平面に属するものとすることを特徴とする請求項3または4に記載の車両用画像処理装置。
【請求項6】
前記判別手段は、投票空間において隣接する投票頻度値の高い領域をグルーピングするグループ化手段を備え、グループの状態に基づいて前記特徴点が立体物に帰属するかどうかを判断することを特徴とする請求項3または4に記載の車両用画像処理装置。
【請求項7】
前記グループ化手段は、投票頻度値の極大領域を抽出し、当該極大領域を核としてグルーピングすることを特徴とする請求項6に記載の車両用画像処理装置。
【請求項8】
前記判別手段は、時系列で前記グループが移動しているときは当該グループに対応するエッジが立体物に属し、前記グループが移動していないときは当該グループに対応するエッジが平面に属するものと判別することを特徴とする請求項6または7に記載の車両用画像処理装置。
【請求項9】
前記判別に際して、前記グループはそれぞれ1つのパラメータで代表することを特徴とする請求項8に記載の車両用画像処理装置。
【請求項10】
前記判別手段は、さらに前記グループの代表値を算出する代表値算出手段を備え、時系列での前記代表値の状態に基づいて当該グループにかかる立体物または平面が移動体であるか静止体であるかを判別することを特徴とする請求項6から9のいずれか1に記載の車両用画像処理装置。
【請求項11】
前記代表値算出手段は、前記グループの代表値を直線として算出し、
前記判別手段は、時系列での前記直線の交点が変化するとき、当該グループにかかる立体物または平面が移動体であるとすることを特徴とする請求項10に記載の車両用画像処理装置。
【請求項12】
カメラで撮像した車両周辺の画像を処理する画像処理装置方法において、
前記車両周辺の画像を時系列で複数取得し、
取得した画像から自車両上方の視点位置から見下ろした俯瞰画像を生成し、
生成した俯瞰画像から特徴点を抽出してそのパラメータを投票空間に投票し、
該投票空間における投票点群の時系列の状態に基づいて、前記特徴点が立体物に帰属するかどうかを判別することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−169619(P2009−169619A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6235(P2008−6235)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】