説明

車両用発電装置

【課題】車両のモータを駆動するための電力をエンジンの排熱を用いて常に効率良く発電することのできる。
【解決手段】温度センサ4によってエンジンEの温度Tを検出するとともに、検出温度Tが低いときはポンプ3の流量を低下させ、検出温度Tが高いときはポンプ3の流量を増加させるようにしたので、常にエンジンEの温度Tに応じた適正な量の作動流体をエンジンE側と熱交換させることができ、モータMを駆動するための電力をエンジンEの排熱を用いて常に効率良く発電することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン及びモータを駆動源とする車両に備わり、車両のモータを駆動するための電力を発電する車両用発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン及びモータを駆動源とする、いわゆるハイブリッド車両においては、モータを駆動源として使用していないときに、車両の制動力をモータの発電に利用してバッテリに充電しておき、モータを駆動源として走行する際にバッテリの電力を利用するようにしている。
【0003】
また、前記ハイブリッド車両に備わる車両用発電装置として、エンジンの排熱を利用して発電するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。即ち、この車両用発電装置は、車両のエンジンとの熱交換により蒸発した作動流体の膨張によって動力を発生する動力発生機と、動力発生機から流出した作動流体を凝縮させる凝縮器と、凝縮器から流出した作動流体を吸入してエンジン側に吐出するポンプとを備え、動力発生機により発電機を駆動して発電するようになっている。
【特許文献1】特開2002−115573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記発電装置では、車両の走行開始直後など、エンジンの温度が低下していると、エンジンの排熱で作動流体を十分に蒸発させることができず、この状態でポンプを作動すると、動力発生機に液体状態の作動流体が流入し、動力発生機の効率を低下させるという問題点があった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両のモータを駆動するための電力をエンジンの排熱を用いて常に効率良く発電することのできる車両用発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、車両のエンジンとの熱交換により蒸発した作動流体の膨張によって動力を発生する動力発生機と、動力発生機から流出した作動流体を凝縮させる凝縮器と、凝縮器から流出した作動流体を吸入してエンジン側に吐出するポンプとを備え、動力発生機によって発電機を駆動するとともに、発電機によって発電した電力を車両の走行用モータに供給するようにした車両用発電装置において、前記エンジン側の温度を検出する温度検出手段と、温度検出手段の検出温度が低いときはポンプの流量を低下させ、温度検出手段の検出温度が高いときはポンプの流量を増加させる制御手段を備えている。
【0007】
これにより、エンジン側の温度が低いときはポンプの流量が低下し、エンジン側の温度が高いときはポンプの流量が増加することがら、常にエンジンの温度に応じた適正な量の作動流体をエンジン側と熱交換させることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、常にエンジンの温度に応じた適正な量の作動流体をエンジン側と熱交換させることができるので、モータを駆動するための電力をエンジンの排熱を用いて効率良く発電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図3は本発明の一実施形態を示すもので、図1は車両用発電装置の概略構成図、図2及び図3は制御部の動作を示すフローチャートである。
【0010】
この車両用発電装置は、車両のエンジンEとの熱交換により蒸発した作動流体の膨張によって動力を発生する動力発生機1と、動力発生機1から流出した作動流体を凝縮させる凝縮器2と、凝縮器2から流出した作動流体を吸入してエンジンE側に吐出するポンプ3と、エンジンEの温度を検出する温度センサ4と、発電機Gによって発電した電力を充電するバッテリ5と、発電機Gによって発電した電力をバッテリ5及びモータMの何れか一方に供給する切換器6と、温度センサ4の検出温度に基づいてポンプ3の流量を制御する制御部7とを備え、作動流体には完全ハロゲン化炭化水素類を除くフロン冷媒(例えば、R245ca、R245fa、R600a等)が用いられる。
【0011】
動力発生機1は作動流体の流入側をエンジンE側に接続され、その回転軸は発電機Gに連結されている。この動力発生機1には、一対のスクロール部材間に作動流体を流入させ、作動流体の膨張によって一方のスクロール部材を回転させるようにした、いわゆるスクロール型膨張機が用いられている。
【0012】
凝縮器2は、内部を流通する作動流体を外部空気との熱交換により冷却して凝縮させるようになっており、凝縮器2には送風機2aによって空気が送風されるようになっている。
【0013】
ポンプ3は、モータ3aの回転数をインバータ3bで制御することにより流量を調整可能な周知の機器からなり、エンジンEと凝縮器2との間に設けられている。即ち、ポンプ3は、インバータ3bによってモータ3aの回転数を制御することにより、流量を任意に調整可能になっている。
【0014】
温度センサ4は、例えばエンジンEのシリンダブロックに取付けられ、エンジンEの温度を直接検知するようになっている。
【0015】
バッテリ5は切換器6を介して発電機G及びモータMに接続され、発電機Gの電力及びモータMの回生電力によって充電されるようになっている。
【0016】
切換器6は整流回路6aを介して発電機Gに接続され、整流回路6aによって直流電圧に整流された電力をバッテリ5またはモータMに供給するようになっている。
【0017】
制御部7はマイクロコンピュータによって構成され、ポンプ3のインバータ3b、温度センサ4及び切換器6に接続されている。
【0018】
以上のように構成された車両用発電装置は、エンジンE及びモータMを駆動源とするハイブリッド車両に搭載される。即ち、この車両では、エンジンEの回転軸にベルト及びプーリを介してモータMを連結し、モータMを駆動源として使用していない減速時には車両の制動力をモータMの発電に利用してバッテリ5に充電しておき、モータMを駆動源として走行する際にはバッテリ5の電力を利用するようになっている。
【0019】
また、前記車両用発電装置においては、エンジンEで加熱されて蒸発した作動流体が動力発生機1に流入し、動力発生機1内で膨張する。これにより、動力発生機1が作動流体の膨張により回転し、動力発生機1によって発電機Gが駆動される。次に、動力発生機1から流出した作動流体は凝縮器2に流入し、凝縮器2によって凝縮した後、ポンプ3に吸入されてエンジンE側に吐出され、エンジンEの熱によって再び蒸発する。
【0020】
ここで、ポンプ3を制御する制御部7の動作について、図2のフローチャートを参照して説明する。まず、車両側から運転開始信号が出力され(S1)、温度センサ4によって検出されるエンジンEの温度Tが所定の基準温度W1 以上になると(S2)、ポンプ3を作動し(S3)、温度センサ4の検出温度Tに基づいてポンプ3の流量を制御する(S4)。即ち、検出温度Tが低いときはポンプ3の流量を低下させ、検出温度Tが高いときはポンプ3の流量を増加させる。この場合、ポンプ3の流量をインバータ4bによって多段階に切換えることが可能である。そして、運転終了信号が出力されると(S5)、ポンプ3を停止し(S6)、プログラムを終了する。
【0021】
次に、切換器6を制御する制御部7の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。まず、車両側から運転開始信号が出力され(S10)、車両が減速状態のとき(S11)、即ちモータMを駆動源として使用していないときは、切換器6によって発電機Gの電力をバッテリ5に供給する(S12)。また、車両が減速状態でないとき(S11)、即ち加速時にモータMを駆動源として使用するときは、切換器6によって発電機Gの電力をバッテリ5に供給する(S13)。そして、運転終了信号が出力されるまで(S14)、ステップS11〜S14の動作を繰り返し、運転終了信号が出力されと(S14)、プログラムを終了する。
【0022】
このように、本実施形態によれば、温度センサ4によってエンジンEの温度Tを検出するとともに、検出温度Tが低いときはポンプ3の流量を低下させ、検出温度Tが高いときはポンプ3の流量を増加させるようにしたので、常にエンジンEの温度Tに応じた適正な量の作動流体をエンジンE側と熱交換させることができ、モータMを駆動するための電力をエンジンEの排熱を用いて常に効率良く発電することができる。
【0023】
また、温度センサ4の検出温度Tが所定温度W1 よりも低いときは、温度W1 以上になった後にポンプ3の作動を開始するようにしたので、エンジンEの始動開始直後など、エンジンEの温度が作動流体を蒸発可能な温度まで達していない場合に液状の作動流体が動力発生機1に流入することがなく、運転開始時の動作不良を確実に防止することができる。
【0024】
更に、車両がモータMを駆動源としていないときは発電機Gの電力をバッテリ5に供給し、車両がモータMを駆動源としているときは発電機Gの電力をモータMに供給するようにしたので、発電機Gの電力をバッテリ5の充電及びモータMの駆動にそれぞれ有効に利用することができ、低燃費化に極めて有利である。
【0025】
また、動力発生機1として周知のスクロール型膨張機を用いるようにしたので、動力発生機1を小型で低コストに構成することができ、小型車両に搭載する場合に極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用発電装置の概略構成図
【図2】制御部の動作を示すフローチャート
【図3】制御部の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0027】
1…動力発生機、2…凝縮器、3…ポンプ、4…温度センサ、5…バッテリ、6…切換器、7…制御部、E…エンジン、G…発電機、M…モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンとの熱交換により蒸発した作動流体の膨張によって動力を発生する動力発生機と、動力発生機から流出した作動流体を凝縮させる凝縮器と、凝縮器から流出した作動流体を吸入してエンジン側に吐出するポンプとを備え、動力発生機によって発電機を駆動するとともに、発電機によって発電した電力を車両の走行用モータに供給するようにした車両用発電装置において、
前記エンジン側の温度を検出する温度検出手段と、
温度検出手段の検出温度が低いときはポンプの流量を低下させ、温度検出手段の検出温度が高いときはポンプの流量を増加させる制御手段を備えた
ことを特徴とする車両用発電装置。
【請求項2】
前記温度検出手段の検出温度が所定温度よりも低いときは、所定温度以上になった後にポンプの作動を開始する制御手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の車両用発電装置。
【請求項3】
前記発電機によって発電した電力を充電するバッテリと、
発電機の電力をバッテリ及びモータの何れか一方に供給する切換手段と、
車両がモータを駆動源としていないときは発電機の電力をバッテリに供給し、車両がモータを駆動源としているときは発電機の電力をモータに供給する制御手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用発電装置。
【請求項4】
前記動力発生機としてスクロール型膨張機を用いた
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の車両用発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−37720(P2006−37720A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213920(P2004−213920)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】