説明

車両用空調制御装置

【課題】車両用空調制御装置において、アイドリングストップ車の空調装置の性能とブレーキの踏力のアシストとを両立することにある。
【解決手段】制御手段(70)は、内燃機関(1)の始動時に予め定められた時間だけ空調装置(75)のコンプレッサ(76)を停止するコンプレッサ駆動手段(70A)と、予め定められた停止条件が成立した時に内燃機関(1)を自動停止させる自動停止手段(70B)と、予め定められた始動条件が成立した時に内燃機関(1)を自動再始動させる自動再始動手段(70C)と、自動停止手段(70B)により内燃機関(1)が自動停止されてから自動再始動手段(70C)により内燃機関(1)が自動再始動されるまでの時間を計測する時間計測手段(70D)とを備え、コンプレッサ駆動手段(70A)に用いられる予め定められた時間を時間計測手段(70D)により計測された時間に基づいて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調制御装置に係り、特にアイドリングストップ車の空調装置を駆動制御する車両用空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、空調装置(以下「エアコン」という)を駆動制御するために、空調制御装置を設けている。
アイドリングストップ車に搭載された空調装置の空調制御装置には、制御手段のコンプレッサ駆動手段により、内燃機関の始動時に予め定められた時間(以下「エアコンカット時間」という)だけエアコンのコンプレッサを停止しているものがある。
【0003】
従来の空調制御を、図5、図6のタイムチャートに基づいて説明する。
図5のタイムチャートは、内燃機関を自動停止してから再始動するまでの時間(以下「アイドリングストップ時間」という)が長い場合であって、内燃機関の始動時にエアコンを駆動(オン)する通常の始動時の制御を示すものである。
図5に示すように、内燃機関の再始動前において、内燃機関が駆動状態(オン)から自動停止し(オフ)、エアコンスイッチがオンのままであり、エアコンが駆動状態(オン)から非駆動(オフ)になったときには(時間t0)、エンジン負圧は無い(0)が、マスタバック負圧は第一の値X1になっている。この時間t0からは、マスタバック負圧が第一の値X1から所定の勾配α1で徐々に弱くなっている。
そして、時間t0からのアイドリングストップ時間D1を経て内燃機関が再始動(オン)すると(時間t1)、エンジン負圧及びマスタバック負圧が上記の第一の値X1よりも強い第二の値Y1になり、さらに、内燃機関の再始動時(時間t1)からエアコンカット時間M1の経過後に、エアコンが駆動すると(オン)(時間t2)、エンジン負圧が上記の第一の値X1と略同等の第三の値Z1まで弱くなるとともに、マスタバック負圧が徐々に弱くなる。
【0004】
一方、図6のタイムチャートは、アイドリングストップ時間が短い場合であって、内燃機関の始動時にエアコンを駆動(オン)する制御を示すものである。
図6に示すように、内燃機関の再始動前において、内燃機関が駆動状態(オン)から自動停止(オフ)し、エアコンスイッチがオンのままであり、エアコンが駆動状態(オン)から非駆動(オフ)になったときには(時間t0)、エンジン負圧が無い(0)が、マスタバック負圧は図5の第一の値X1と略同等の第一の値X2になっている。この時間t0からは、マスタバック負圧が第一の値X2から勾配α2で徐々に弱くなっている。
そして、時間t0から図5のアイドリングストップ時間D1よりも短いアイドリングストップ時間D2を経て内燃機関が再始動(オン)すると(時間t1)、エンジン負圧及びマスタバック負圧が上記の第一の値X2よりも強く且つ上記の第二の値Y1と略同等の第二の値Y2になり、さらに、内燃機関の再始動時(時間t1)から図5のエアコンカット時間M1と略同等のエアコンカット時間M2の経過後に、エアコンが駆動すると(オン)(時間t2)、エンジン負圧が上記の第一の値X2と略同等の第三の値Z2まで弱くなるとともに、マスタバック負圧が徐々に弱くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−195836号公報
【0006】
特許文献1に係る車両用補機の駆動制御装置は、内燃機関の始動中及び始動後に検出された内燃機関の温度に応じて設定された時間を経過するまでの間、補機の駆動を強制的に停止させ、真空倍力装置による制動性能を維持するものであり、アイドリングストップ機能の無い車両で、空調装置を使用している時の内燃機関の始動時に、ブレーキの踏力を稼ぐため(マスタバック負圧を維持するため)、内燃機関の始動後、数秒程度のエアコンカット制御を採用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来、アイドリングストップ機能の無い空調制御装置による空調制御のままでは、アイドリングストップ車においては、エアコンカット制御が頻繁に作動してしまうため、エアコンの効きが悪くなって性能が低下するという不都合があった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、アイドリングストップ車において空調装置の性能とブレーキの踏力のアシストとを両立できる車両用空調制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、内燃機関の始動時に予め定められた時間だけ空調装置のコンプレッサを停止するコンプレッサ駆動手段が備えられた制御手段を設けた車両用空調制御装置において、前記制御手段は、予め定められた停止条件が成立した時に前記内燃機関を自動停止させる自動停止手段と、予め定められた始動条件が成立した時に前記内燃機関を自動再始動させる自動再始動手段と、前記自動停止手段により前記内燃機関が自動停止されてから前記自動再始動手段により前記内燃機関が自動再始動されるまでの時間を計測する時間計測手段とを備え、前記コンプレッサ駆動手段に用いられる予め定められた時間を前記時間計測手段により計測された時間に基づいて設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明の車両用空調制御装置は、アイドリングストップ車でも空調装置の性能とブレーキの踏力のアシストとを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は空調制御のフローチャートである。(実施例)
【図2】図2はアイドリングストップ時間が長い場合の空調制御のタイムチャートである。(実施例)
【図3】図3はアイドリングストップ時間が短い場合の空調制御のタイムチャートである。(実施例)
【図4】図4は車両用空調制御装置のシステム構成図である。(実施例)
【図5】図5は従来においてアイドリングストップ時間が長い場合の空調制御のタイムチャートである。(従来例)
【図6】図6は従来においてアイドリングストップ時間が短い場合の空調制御のタイムチャートである。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明は、アイドリングストップ車でも空調装置の性能とブレーキの踏力のアシストとを両立する目的を、アイドリングストップ車の内燃機関の自動再始動時に、ブレーキの踏力をアシストしつつ、エアコンカット時間を通常の始動時よりも短くして実現するものである。
【実施例】
【0013】
図1〜図4は、この発明の実施例を示すものである。
図4において、1は、アイドリングストップ車に搭載される多気筒用の内燃機関である。この内燃機関1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3とシリンダヘッドカバー4とが一体的になって構成されている。
シリンダブロック2には、気筒毎に各シリンダ5が形成されているとともにこのシリンダ5にピストン6が摺動可能に設けられ、また、シリンダヘッド3と共働した燃焼室7が形成される。
シリンダヘッド3には、吸気側において、吸気ポート8が形成され、また、吸気カム軸9が設置され、さらに、この吸気カム軸9で駆動されて吸気ポート8を開閉する吸気弁10が設けられている。
また、シリンダヘッド3には、排気側において、排気ポート11が形成され、また、排気カム軸12が設置され、さらに、この排気カム軸12で駆動されて排気ポート11を開閉する排気弁13が設けられている。
【0014】
内燃機関1は、吸気装置14を備えている。この吸気装置14においては、エアクリーナ15と、このエアクリーナ15から内燃機関1側に吸入空気を導く吸気通路16を形成するように、吸気管17と、スロットルバルブ18を備えたスロットルボディ19と、サージタンク20を備えてシリンダヘッド3に取り付けられる吸気マニホルド21とが、順次に接続している。
【0015】
内燃機関1は、排気装置22を備えている。この排気装置22においては、内燃機関1からの排気を導く排気通路23を形成するように、シリンダヘッド3に取り付けられる排気マニホルド24と、触媒コンバータ25を備えた排気管26とが、順次に設けられている。
【0016】
内燃機関1は、過給機(ターボチャージャ)27を備えている。この過給機27は、吸気マニホルド21の上流側に配設され、エアクリーナ15側からの吸入空気を過給し、この過給された空気を内燃機関1側に供給するものである。
過給機27は、過給機ケース28内で、吸気管17の途中に配設されたコンプレッサ29と、排気マニホルド24と排気管26の間に配設されて排気流で駆動するタービン30と、コンプレッサ29とタービン30とを連結する回転軸31とを備えている。
過給機ケース28には、ウェストゲート装置32を構成するように、タービン30の上流側と下流側との吸気通路16に連通するウェストゲート通路33と、このウェストゲート通路33を開閉するウェストゲートバルブ34を設けている。このウェストゲートバルブ34は、作動ロッド35を介してウェストゲートアクチュエータ36で開閉動作される。このウェストゲートアクチュエータ36は、コンプレッサ30下流側の吸気通路16に連通している。
【0017】
また、コンプレッサ29とスロットルバルブ18との間の吸気管17の途中には、過給機27で過給された空気を冷却するインタクーラ37が設けられている。
【0018】
内燃機関1は、燃料噴射装置38を備えている。この燃料噴射装置38においては、燃料タンク39内で電磁式の燃料ポンプ40が設けられ、また、この燃料ポンプ40に燃料供給管41の一端側が接続している。この燃料供給管41の他端側は、燃料噴射弁42に接続している。この燃料噴射弁42は、吸気マニホルド21のシリンダヘッド3に接続する端部位に取り付けられ、燃料を吸気ポート8へ噴射する。
また、燃料供給管41の途中には、燃料タンク39側に燃料フィルタ43が設けられているとともに、この燃料フィルタ43よりも燃料噴射弁42側に燃料圧力レギュレータ44が設けられている。この燃料圧力レギュレータ44には、燃料戻り管45の一端側が接続している。この燃料戻り管45の他端側は、自由端となり、燃料タンク39内に開口している。
【0019】
内燃機関1は、蒸発燃料制御装置46を備えている。この蒸発燃料制御装置46においては、燃料タンク39の上部にエバポ管47の一端側が自由端として開口し、このエバポ管47の他端側にキャニスタ48が設けられている。エバポ管47の途中には、二ウェイバルブ49が設けられている。
また、キャニスタ48には、パージ管50の一端側が接続している。このパージ管50の他端側は、スロットルバルブ18よりも上流側のスロットルボディ19内に連通している。また、このパージ管50の途中には、ワンウェイバルブ51が設けられている。
【0020】
また、内燃機関1は、アイドル回転数制御装置(ISC装置)52を備えている。このアイドル回転数制御装置52においては、スロットルバルブ18を迂回してスロットルボディ19内とサージタンク20内とを連結するアイドルエア管53が設けられ、このアイドルエア管53の途中に内燃機関1へのアイドル空気量を調整するISCバルブ(アイドル空気量制御バルブ)54が設けられている。
【0021】
シリンダヘッドカバー4には、イグニションコイル55とPCVバルブ56とが取り付けられている。このPCVバルブ56には、サージタンク20に連結するタンク側ブローバイガス管57が接続している。
また、シリンダヘッドカバー4には、エアクリーナ15内に連結するクリーナ側ブローバイガス管58が接続している。
【0022】
シリンダブロック2には、吸気マニホルド21の一部に形成した冷却水通路59内の冷却水温度を検出する水温センサ60と、燃焼室7内のノッキングを検出するノッキングセンサ61とが取り付けられている。
スロットルボディ19には、スロットルバルブ18のスロットル開度を検出するスロットルセンサ62が設けられ、また、スロットルバルブ18よりも下流側に導圧管63の一端側が接続している。この導圧管63の他端側には、スロットルバルブ18の下流側の吸気通路16の圧力である吸気管圧力をエンジン負圧として検出する圧力センサ64が設けられている。
サージタンク20には、負圧管65を介してマスタバック(真空倍力装置)66が連結している。このマスタバック66には、ブレーキ操作時に利用されるマスタバック負圧を検出するマスタバック圧センサ67が取り付けられている。マスタバック66は、マスタシリンダの手前でこのマスタシリンダのピストンを押す力を倍力とするものであり、ブレーキの踏力のみでプッシュロッドを動かしてマスタシリンダのピストンを押すことができるものである。
また、サージタンク20には、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ68が取り付けられている。吸気温センサ68は、吸入空気の温度を検出して吸気温補正値の決定等に利用させる。
排気マニホルド24には、過給機27のタービン30よりも下流側に、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサ(O2センサ)69が取り付けられている。
【0023】
燃料ポンプ40と燃料噴射弁42とISCバルブ54とイグニションコイル55と水温センサ60とノッキングセンサ61とスロットルセンサ62と圧力センサ64とマスタバック圧センサ67と吸気温センサ68と酸素センサ69とは、制御手段(ECM)70に連絡している。
また、この制御手段70には、クランク角センサ71と、メインスイッチ72及びフューズ73を介したバッテリ74と、空調装置(以下「エアコン」という)75とが連絡している。
このエアコン75は、エアコンコンプレッサ76を備えるとともに、制御手段70に接続したエアコンコンプレッサリレー77とエアコンスイッチ78とを備える。エアコンコンプレッサリレー77は、バッテリ74に接続している。
なお、エアコンスイッチ78を他の装置に接続し、エアコンスイッチ78のオン・オフ情報を他の装置から通信によって制御手段70に取得させることも可能である。
【0024】
制御手段70は、エアコンコンプレッサリレー77やエアコンスイッチ78と共に車両用空調制御装置79を構成するものであり、内燃機関1の始動時に予め定められた時間(以下「エアコンカット時間」という)だけエアコン75のエアコンコンプレッサ76を停止するコンプレッサ駆動手段70Aを備えるとともに、予め定められた停止条件が成立した時に内燃機関1を自動停止させる自動停止手段70Bと、予め定められた始動条件が成立した時に内燃機関1を自動再始動させる自動再始動手段70Cと、自動停止手段70Bにより内燃機関1が自動停止されてから自動再始動手段70Cにより内燃機関1が自動再始動されるまでの時間(以下「アイドリングストップ時間」という)を計測する時間計測手段70Dとを備え、コンプレッサ駆動手段70Aに用いられる予め定められた時間であるエアコンカット時間を時間計測手段70Dにより計測された時間であるアイドリングストップ時間に基づいて設定する。
つまり、アイドリングストップ車のアイドリングストップ時間に応じてマスタバック負圧を予測してエアコンカット時間を設定したり、アイドリングストップ時間から直接エアコンカット時間を設定したりして、アイドリングストップからの再始動時に、エアコンカット時間を決定する。そして、アイドリングストップ車のエアコン75の再始動時のエアコンカット時間を短くし、アイドリングストップ車のエアコン75の冷房性能等を向上させるとともに、ブレーキの踏力のアシストを効率良く実施させる。
【0025】
詳述すると、内燃機関1の停止時には、マスタバック負圧が徐々に低下するものである。そこで、この実施例では、上述のアイドリングストップ時間を、内燃機関1を自動停止してから再始動するまでの時間とする。
また、通常の始動時には、内燃機関1が長時間停止しているので、マスタバック負圧が十分低下している。更に、内燃機関1の始動時には、マスタバック負圧を強くするために、エアコンカットを実施する一方、アイドリングストップでは、内燃機関1を自動停止してから再始動するまでのアイドリングストップ時間が短いので、内燃機関1の再始動時には、マスタバック負圧の低下量は少ないと考えられる。従って、エアコンカット時間が短くてもよく、さらに、内燃機関1を自動停止してから再始動するまでのアイドリングストップ時間が特に短い場合には、エアコンカットをする必要がないものである。
ここで、上述のエアコンカットとは、エアコン75を停止することであるが、特に、エアコン75のエアコンコンプレッサ76を停止することを意味する。このエアコンコンプレッサ76を停止するには、制御手段70のコンプレッサ駆動手段70Aにより制御されるエアコンコンプレッサリレー77を遮断することで行う。
【0026】
次に、この実施例に係る空調制御を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、制御手段70のプログラムが開始すると(ステップA01)、先ず、内燃機関1を自動停止してから再始動するまでのアイドリングストップ時間を計測し(ステップA02)、そして、アイドリングストップからの内燃機関1の再始動があったか否かを判断する(ステップA03)。このステップA03がNOの場合には、前記ステップA02に戻す。
このステップA03がYESの場合には、エアコン75の駆動開始を遅延させる時間の設定、例えば、アイドリングストップ時間から直接エアコンカット時間を設定する(ステップA04)。なお、このステップA04においては、アイドリングストップ時間とマスタバック負圧とが反比例すると考えられることから、アイドリングストップ時間からマスタバック負圧を予測することが可能であり、アイドリングストップ時間からマスタバック負圧を予測して、マスタバック負圧の予想値からエアコンカット時間を設定することも可能である。
そして、エアコンカット時間が経過したか否かで、エアコン75の駆動(オン)条件が成立したか否かを判断する(ステップA05)。このステップA05がNOの場合には、この判断を継続する。
このステップA05がYESの場合には、エアコン75を駆動(オン)として(ステップA06)、プログラムを終了する(ステップA07)。
このステップA06においては、エアコンスイッチ78がオンに設定されていれば、エアコン75を駆動(オン)とする一方、エアコンスイッチ78がオフに設定されていれば、エアコン75を非駆動(オフ)のままとする。
【0027】
次に、この実施例に係る空調制御を、図2、図3のタイムチャートに基づいて説明する。
図2のタイムチャートは、内燃機関1を自動停止してから再始動するまでの時間であるアイドリングストップ時間が長い場合であって、内燃機関1の始動時にエアコン75を駆動(オン)する通常の始動時の制御を示すものである。
図2に示すように、内燃機関1の再始動前において、内燃機関1が駆動状態(オン)から自動停止し(オフ)、エアコンスイッチ78がオンのままであり、エアコン75が駆動状態(オン)から非駆動(オフ)になったときには(時間t0)、エンジン負圧は無い(0)が、マスタバック負圧は第一の値X1になっている。この時間t0からは、マスタバック負圧が第一の値X1から所定の勾配α1で徐々に弱くなっている。なお、この内燃機関1の再始動前においては、、エアコン75が非駆動(オフ)となっているが、エアコン75を駆動(オン)しておき、内燃機関1が始動(オン)する時に(時間t1)、エアコン75を非駆動(オフ)とすることも可能である。
そして、時間t0からのアイドリングストップ時間D1を経て内燃機関1が再始動(オン)すると(時間t1)、エンジン負圧及びマスタバック負圧が上記の第一の値X1よりも強い第二の値Y1になり、さらに、内燃機関1の再始動時(時間t1)からエアコンカット時間M1の経過後に、エアコン75が駆動すると(オン)(時間t2)、エンジン負圧が上記の第一の値X1と略同等の第三の値Z1まで弱くなるとともに、マスタバック負圧が徐々に弱くなる。
【0028】
一方、図3のタイムチャートは、アイドリングストップ時間が短い場合であって、内燃機関1の始動時にエアコン75を駆動(オン)する制御を示すものである。
図3に示すように、内燃機関1の再始動前において、内燃機関1が駆動状態(オン)から自動停止(オフ)し、エアコンスイッチ78がオンのままであり、エアコン75が駆動状態(オン)から非駆動(オフ)になったときには(時間t0)、エンジン負圧が無い(0)が、マスタバック負圧は図2の第一の値X1と略同等の第一の値X2になっている。この時間t0からは、マスタバック負圧が第一の値X2から勾配α2で徐々に弱くなっている。
そして、時間t0から図2のアイドリングストップ時間D1よりも短いアイドリングストップ時間D2を経て内燃機関1が再始動(オン)すると(時間t1)、エンジン負圧及びマスタバック負圧が上記の第一の値X2よりも強く且つ上記の第二の値Y1と略同等の第二の値Y2になり、さらに、内燃機関1の再始動時(時間t1)から図2のエアコンカット時間M1よりも短いエアコンカット時間M2の経過後に、エアコン75が駆動すると(オン)(時間t2)、エンジン負圧が上記の第一の値X2と略同等の第三の値Z2まで弱くなるとともに、マスタバック負圧が徐々に弱くなる。
なお、この図3においては、アイドリングストップ時間が短い場合に、エアコンカット時間を短くすることを示しており、さらに、アイドリングストップ時間が特に短い場合には、マスタバック負圧の低下量は少ないので、内燃機関1を駆動(オン)する時に、エアコンカットせずに、エアコン75を駆動(オン)することも可能である。
【0029】
この結果、内燃機関1が自動停止されてから内燃機関1が自動再始動されるまでの時間であるアイドリングストップ時間を計測し、そして、エアコンコンプレッサ76を停止する予め定められた時間であるエアコンカット時間を計測されたアイドリングストップ時間に基づいて設定することにより、アイドリングストップ車の内燃機関1の自動再始動時に、ブレーキの踏力をアシストしつつ、エアコンカット時間を通常の始動時よりも短くし、エアコン75の冷房の効きを悪くしないようにし、エアコン75の性能を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明に係る車両用空調制御装置を、過給機を備えない他のエンジンにも適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 内燃機関
66 マスタバック
67 マスタバック圧センサ
70 制御手段
70A コンプレッサ駆動手段
70B 自動停止手段
70C 自動再始動手段
70D 時間計測手段
75 空調装置(エアコン)
76 エアコンコンプレッサ
77 エアコンコンプレッサリレー
78 エアコンスイッチ
79 車両用空調制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の始動時に予め定められた時間だけ空調装置のコンプレッサを停止するコンプレッサ駆動手段が備えられた制御手段を設けた車両用空調制御装置において、前記制御手段は、予め定められた停止条件が成立した時に前記内燃機関を自動停止させる自動停止手段と、予め定められた始動条件が成立した時に前記内燃機関を自動再始動させる自動再始動手段と、前記自動停止手段により前記内燃機関が自動停止されてから前記自動再始動手段により前記内燃機関が自動再始動されるまでの時間を計測する時間計測手段とを備え、前記コンプレッサ駆動手段に用いられる予め定められた時間を前記時間計測手段により計測された時間に基づいて設定することを特徴とする車両用空調制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−218876(P2011−218876A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87488(P2010−87488)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】