車両用空調装置
【課題】非接触温度センサによる表面度に基づいた日射補正制御において、窓の開放などによる影響を考慮した精度の高い空調制御を実施する車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置は、車室内の複数部位の表面温度を検出するIRセンサ70、71と、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ83a、83bと、IRセンサ70、71によって検出された表面温度に基づいて車室内の空調補正量を算出して空調制御を行うエアコンECU8と、を備える。そして、エアコンECU8は、日射センサ83a、83bによって検出された日射量に基づいて日射がないと判断した場合には、当該検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくする。
【解決手段】車両用空調装置は、車室内の複数部位の表面温度を検出するIRセンサ70、71と、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ83a、83bと、IRセンサ70、71によって検出された表面温度に基づいて車室内の空調補正量を算出して空調制御を行うエアコンECU8と、を備える。そして、エアコンECU8は、日射センサ83a、83bによって検出された日射量に基づいて日射がないと判断した場合には、当該検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の日射量に基づいた空調補正量を反映して空調制御を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空調装置としては、車両左右のサイドウインドウシールドの温度をそれぞれ検出する赤外線温度センサと、日射センサと、を備え、検出された車両左右のサイドウインドウシールドの温度差に基づき、左右領域のそれぞれに照射される日射補正量を推定し、左右領域のそれぞれの空調状態を補正するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−59678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の車両用空調装置では、サイドウインドウシールドを開放した場合には、車内への外気の流入などによる外乱によって赤外線温度センサの検出値が変化することがある。そして、赤外線温度センサの検出値が変化したときには、実際に日射がない状態であっても日射がある状態とみなして積極的に日射補正を行ってしまうという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、上記点を鑑みたものであり、非接触温度センサによる表面度に基づいた日射補正制御において、サイドウインドウシールドの開放などによる影響を考慮した精度の高い空調制御を実施する車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、以下に示す技術的手段を採用する。すなわち、車両用空調装置に係る第1の発明は、車室内の複数部位の表面温度を検出する非接触温度センサ(70、71)と、車室内に照射される日射量を検出する日射量検出手段(83)と、非接触温度センサ(70、71)によって検出された表面温度に基づいて車室内の空調補正量を算出して空調制御を行う空調制御手段(8)と、を備えたものであり、この空調制御手段(8)は、日射量検出手段(83)によって検出された日射量に基づいて日射がないと判断した場合には、当該検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくすることを特徴とする。なお、日射の有無の判断は、あらかじめ設定された日射量と検出された日射量との比較により行うものとする。
【0006】
この発明によれば、日射がないと判断した場合には、検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくすることにより、サイドウインドウシールドを開放したときなどに起こる外乱によって非接触温度センサの検出値が変化してもその影響を受けない空調制御を提供することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、空調制御手段(8)は、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断し、車室内のいずれか一方側に日射がないと判断した場合は、日射がないと判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量に比べて小さくすることが好ましい。
【0008】
この発明によれば、日射の有無に加えて、日射の方向を考慮して空調補正量を決定することにより、乗員に対してより快適性の高い空調を提供できる。
【0009】
さらに上記第1の発明において、空調制御手段(8)は、非接触温度センサ(70、71)によって検出された表面温度は窓ガラスの温度であることが好ましい。この発明によれば、窓ガラスの表面温度を検出することにより、低仰角の日射による影響を検出できるとともに、窓ガラスの温度は乗員の着衣などと比較して日射方向の変化に対する追従が遅いため、さらに、乗員に対して快適性の高い空調を提供できる。
【0010】
さらに上記第2の発明において、空調制御手段(8)は、非接触温度センサ(70、71)が車両の窓ガラスの温度を検出することにより、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断することが好ましい。この発明によれば、窓ガラスの温度は乗員の着衣などと比較して日射方向の変化に対する追従が遅いため、日射の方向を考慮した空調補正量の決定を乗員に対してより快適性の高いものにできる。
【0011】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1実施形態における車両用空調装置を図1ないし図21に基づいて説明する。図1は車両用空調装置の全体構成を示した構成図である。図2は日射センサ83a、83bおよび非接触温度センサ70、71の配置場所を示した斜視図である。図3は非接触温度センサ70、71の温度検出範囲を示す斜視図である。
【0013】
本実施形態は、車室内のうち、前席側の左右、後席側の左右のそれぞれに位置する空調ゾーン1a、1b、1c、1dをそれぞれ独立して空調制御する車両用空調装置に本発明を適用した一例を示している。
【0014】
車両用空調装置は、図1に示すように、空調ゾーン1a、1bをそれぞれ独立に空調するための前席空調ユニット5と、空調ゾーン1c、1dとをそれぞれ独立に空調するための後席空調ユニット6とから構成されている。前席空調ユニット5は、計器盤7内側に配置されており、後席空調ユニット6は、車室内の最後方に配置されている。
【0015】
前席空調ユニット5は、車室内に送風するための前席ユニットダクト50を備え、この前席ユニットダクト50には、車室内から内気を導入するための内気導入口50a、および、車室外から外気を導入するための外気導入口50bが設けられている。
【0016】
さらに、前席ユニットダクト50には、外気導入口50bおよび内気導入口50aを選択的に開閉する内外気切替ドア51が設けられ、この内外気切替ドア51には、駆動手段としてのサーボモータ51aが連結されている。
【0017】
また、前席ユニットダクト50内であって外気導入口50bおよび内気導入口50aの空気下流側には、車室内に向けて吹き出される空気流を発生させる送風機52が設けられており、送風機52は、羽根車およびこの羽根車を回転させるブロアモータ52aを備えている。
【0018】
さらに、前席ユニットダクト50内であって送風機52の空気下流側には、空気を冷却する空気冷却手段としてのエバポレータ53が設けられており、このエバポレータ53の空気下流側には、空気加熱手段としてのヒータコア540が設けられている。
【0019】
そして、前席ユニットダクト50内であってエバポレータ53の空気下流側には、仕切り板57が設けられており、この仕切り板57は、前席ユニットダクト50内を運転席側通路50cと助手席側通路50dとに仕切っている。
【0020】
ここで、運転席側通路50cのうちヒータコア540の側方には、バイパス通路50eが形成されており、バイパス通路50eは、ヒータコア540に対してエバポレータ53により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0021】
そして、助手席側通路50dのうちヒータコア540の側方には、バイパス通路50fが形成されており、バイパス通路50fは、ヒータコア540に対してエバポレータ53により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0022】
ヒータコア540の空気上流側には、エアミックスドア55b、55cが設けられ、これらと、仕切り板57、運転手席側通路50c、助手席側通路50d、およびヒータコア540とでヒータユニット54を構成している。エアミックスドア55bは、その開度により、運転手席側通路50cを流通する冷風のうち、ヒータコア540を通る量とバイパス通路50eを通る量との比を調整する働きがある。
【0023】
他方、エアミックスドア55cは、その開度により、助手席側通路50dを流通する冷風のうち、ヒータコア540を通る量とバイパス通路50fを通る量との比を調整する働きがある。なお、エアミックスドア55b、55cには、駆動手段としてのサーボモータ55a、55dがそれぞれ連結されており、その開度は、エアコンECU8が制御するサーボモータ55a、55dによって、調整される。
【0024】
また、エバポレータ53は、図示しないコンプレッサ、凝縮器、受液器、減圧器とともに、周知の冷凍サイクルを構成している熱交換器であり、このエバポレータ53は、前席ユニットダクト50内を流れる空気を冷却する。ここで、コンプレッサは、当該自動車のエンジンに電磁クラッチ(図示しない)を介して連結されるものであり、このコンプレッサは、電磁クラッチを断続制御することによって駆動停止制御される。
【0025】
ヒータコア540は、当該自動車のエンジン冷却水(温水)を熱源とする熱交換機であり、このヒータコア540は、エバポレータ53によって冷却された冷風を加熱する。また、前席ユニットダクト50のうちヒータコア540の空気下流側には、運転席側フェイス吹出口FrDrが開口されており、運転席側フェイス吹出口FrDrは、運転席側通路50cから運転席に着座する運転者の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0026】
ここで、前席ユニットダクト50のうちフェイス吹出口FrDrの空気上流部には、フェイス吹出口FrDrを開閉する吹出口切替ドア56cが設けられており、この吹出口切替ドア56cは、駆動手段としてのサーボモータ56aによって、開閉駆動される。
【0027】
また、図には省略されているが、前席ユニットダクト50には、運転席側通路50cから運転者の下半身に空気を吹き出す運転席側フット吹出口、およびフロントウインドシールドの内表面のうち運転席側領域に空気を吹き出す運転席側デフロスタ吹出口が設けられている。
【0028】
そして、運転席側フット吹出口および運転席側デフロスタ吹出口の空気上流部には、それぞれの吹出口を開閉する吹出口切替ドアが設けられており、それぞれの吹出口切替ドアは、サーボモータによって、開閉駆動される。
【0029】
また、前席ユニットダクト50のうちヒータコア540の空気下流側には、助手席側フェイス吹出口FrPaが開口されており、助手席側フェイス吹出口FrPaは、助手席側通路50dから助手席に着座する乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0030】
ここで、前席ユニットダクト50のうちフェイス吹出口FrPaの空気上流部には、フェイス吹出口FrPaを開閉する吹出口切替ドア56bが設けられており、この吹出口切替ドア56bは、駆動手段としてのサーボモータ56dによって、開閉駆動される。
【0031】
また、図には省略されているが、前席ユニットダクト50には、助手席側通路50dから助手席の乗員の下半身に空気を吹き出す助手席側フット吹出口、およびフロントウインドシールドの内表面のうち助手席側領域に空気を吹き出す助手席側デフロスタ吹出口が設けられている。
【0032】
そして、助手席側フット吹出口および助手席側デフロスタ吹出口の空気上流部には、それぞれの吹出口を開閉する吹出口切替ドアが設けられており、それぞれの吹出口切替ドアは、サーボモータによって、開閉駆動される。
【0033】
次に、後席空調ユニット6は、車室内に送風するための後席ユニットダクト60を備えており、この後席ユニットダクト60内には、車室内から内気導入口60aを通して内気のみが導入される。ここで、内気導入口60aの空気下流側には、車室内に向けて吹き出される空気流を発生させる送風機62が設けられており、送風機62は、羽根車およびこの羽根車を回転させるブロアモータ62aを有して構成されている。
【0034】
さらに、後席ユニットダクト60内において送風機62の空気下流側には、空気を冷却する空気冷却手段としてのエバポレータ63が設けられており、このエバポレータ63の空気下流側には、空気を加熱する空気加熱手段としてのヒータコア640が設けられている。
【0035】
そして、後席ユニットダクト60内のうちエバポレータ63の下流部分には仕切り板67が設けられており、この仕切り板67は、後席ユニットダクト60内を運転席側通路60cおよび助手席側通路60dに仕切っている。ここで、運転席側通路60cのうちヒータコア640の側方には、バイパス通路60eが形成されており、バイパス通路60eは、ヒータコア640に対してエバポレータ63により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0036】
そして、助手席側通路60dのうちヒータコア640の側方には、バイパス通路60fが形成されており、バイパス通路60fは、ヒータコア640に対してエバポレータ63により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0037】
ヒータコア640の空気上流側には、エアミックスドア65a、65bが設けられ、これらと、仕切り板67、後席運転手席側通路60c、後席側助手席側通路60d、およびヒータコア640とでヒータユニット64を構成している。エアミックスドア65aは、その開度により、後席運転手席側通路60cを流通する冷風のうち、ヒータコア6400を通る量とバイパス通路60fを通る量との比を調整する働きがある。
【0038】
他方、エアミックスドア65bは、その開度により、後席側助手席側通路60bを流通する冷風のうち、ヒータコア640を通る量とバイパス通路60fを通る量との比を調整する働きがある。なお、エアミックスドア65a、55bには、駆動手段としてのサーボモータ65c、65dがそれぞれ連結され、その開度は、エアコンECU8が制御するサーボモータ65c、65dによって、調整される。
【0039】
ここで、エバポレータ63は、上述のエバポレータ63に対して並列的に配管結合されるものであって、冷凍サイクルの一構成要素をなす熱交換器である。ヒータコア640は、当該自動車のエンジン冷却水を熱源とする熱交換機であり、ヒータコア640は、上述のヒータコア540に対し並列的に接続されて、エバポレータ63によって冷却される冷風を加熱する。
【0040】
また、後席ユニットダクト60のうちヒータコア640の空気下流側には、運転席側フェイス吹出口RrDrが開口されており、運転席側フェイス吹出口RrDrは、運転席側通路60cから後席4の右側、すなわち、運転席の後側に着座する乗員(以下、後部右側乗員とする)の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0041】
ここで、フェイス吹出口RrDrの空気上流部には、フェイス吹出口RrDrを開閉する吹出口切替ドア66aが設けられており、この吹出口切替ドア66aは、駆動手段としてのサーボモータ66cによって、開閉駆動される。そして、図には、省略されているが、後席ユニットダクト60には、運転席側通路60cから後部右側乗員の下半身に空気を吹き出す運転席側フット吹出口が設けられている。
【0042】
また、当該運転席側フット吹出口の空気上流部には、吹出口を開閉する吹出口切替ドアが設けられており、この吹出口切替ドアは、サーボモータによって、開閉駆動される。また、後席ユニットダクト60のうちヒータコア640の空気下流側には、フェイス吹出口RrPaが開口されており、このフェイス吹出口RrPaは、助手席側通路60dから後席の左側、すなわち、助手席の後側に着座する乗員(以下、後部左側乗員とする)の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0043】
ここで、フェイス吹出口RrPaの空気上流部には、フェイス吹出口RrPaを開閉する吹出口切替ドア66bが設けられており、この吹出口切替ドア66bは、駆動手段としてのサーボモータ66dによって、開閉駆動される。
【0044】
また、図には省略されているが、後席ユニットダクト60には、助手席側通路60dから後部左側乗員の下半身に空気を吹き出すフット吹出口が設けられている。このフット吹出口の空気上流部には、吹出口を開閉する吹出口切替ドアが設けられており、この吹出口切替ドアは、サーボモータによって、開閉駆動される。
【0045】
また、車両用空調装置には、前席空調ユニット5および後席空調ユニット6をそれぞれ制御するための空調制御手段である電子制御装置8(以下、エアコンECU8とする)が設けられている。
【0046】
このエアコンECU8には、外気温度センサ81、冷却水温度センサ82、日射量検出手段である日射センサ83を構成し、車室内前方に配置される日射センサ83aおよび車室内後方に配置される日射センサ83b、内気温度センサ84、85、および蒸発器温度センサ86、87により検出された温度情報、日射量情報などが入力されるように接続されている。
【0047】
外気温度センサ81は、車室外温度を検出しその検出温度に応じた外気温度信号TamをエアコンECU8に出力する。冷却水温度センサ82は、エンジンの冷却水の温度を検出しその検出温度に応じた冷却水温度信号TwをエアコンECU8に出力する。
【0048】
車室内前方に配置された日射センサ83aは、フロントウインドウの内側にて車両左右方向の略中央部分に配置された2素子(2D)タイプの日射センサであり、車室内の運転席側空調ゾーン1aに入射される日射量と助手席側空調ゾーン1bに入射される日射量とを検出し、それら検出した各日射量に応じた日射量信号TsDrおよびTsPaをエアコンECU8に出力する。
【0049】
車室内後方に配置される日射センサ83bは、1素子(1D)タイプの日射センサであり、車両後方から車室内に入射される日射量を検出し、その検出した日射量に応じた日射量信号TsRrをエアコンECU8に出力する。
【0050】
内気温度センサ84は、前席側空調領域である空調ゾーン1a、1bの空気温度を検出し、その検出温度に応じた内気温度信号TrFrをエアコンECU8に出力するものであり、内気温度センサ85は、後席側空調領域である空調ゾーン1c、1dの空気温度を検出し、その検出温度に応じた内気温度信号TrRrをエアコンECU8に出力するものである。
【0051】
蒸発器温度センサ86は、エバポレータ53の吹出空気温度を検出しその検出温度に応じた蒸発器吹出温度信号TeFrをエアコンECU8に出力するものであり、蒸発器温度センサ87は、エバポレータ63の吹出空気温度を検出しその検出温度に応じた蒸発器吹出温度信号TeRrをエアコンECU8に出力する。
【0052】
また、エアコンECU8には、乗員が温度設定スイッチ9、10、11、12を操作することによりそれぞれ設定される、空調ゾーン1a、1b、1c、1dのそれぞれの設定温度信号TsetFrDr、TsetFrPa、TsetRrDr、TsetRrPaが入力されるように接続されている。ここで、前席側をFr、後席側をRr、車両右側をDr、車両左側をPaと表し、これらを組み合わせることで各空調ゾーン1a〜1dの座席を表すこととする。
【0053】
なお、温度設定スイッチ9、10、11、12のそれぞれ近傍には、設定温度等の設定内容を表示する設定温度表示手段としてのディスプレイ9a、10a、11a、12aが備えられている。
【0054】
さらに、エアコンECU8には、サイドウインドウシールド、乗員等の複数部位の表面温度を検出する非接触温度センサ70が接続されている。この非接触温度センサ70は、入力される赤外線量の変化に対応した起電力変化を温度変化として検出するサーモパイル型検出素子が用いられたマトリクス型のIRセンサであって、複数の温度検出セル70aにより構成され、車室内の複数箇所における所定範囲の温度情報をそれぞれマトリクス状に検出するものである。
【0055】
図2に示すように、非接触温度センサ70は、運転席側の空調ゾーン1aおよび1cの表面温度を検出するセンサと助手席側の空調ゾーン1bおよび1dの表面温度を検出するセンサとが一つのケースに収納されて車室内前方の略中央部に配置されている。なお、非接触温度センサ70と同様の構成であり、車室内天井の略中央部に配置されている非接触温度センサ71によって、後席側運転席(空調ゾーン1c)の表面温度、および後席側助手席(空調ゾーン1d)の表面温度を検出するように構成してもよい。この場合、非接触温度センサ71は、空調ゾーン1cの表面温度を検出するセンサと空調ゾーン1dの表面温度を検出するセンサとを一つのケースに収納して構成されている。
【0056】
図3に示すように、非接触温度センサ70の検温範囲は、一方のセンサによって、車室内の前席側運転席FrDr側のサイドウインドウシールド21における温度検出範囲25と、空調ゾーン1aに着座する前席側運転席FrDrの乗員の上半身温度を検出可能な温度検出範囲26、27と、空調ゾーン1cに着座する後席運転席側RrDrの乗員の上半身温度を検出可能な温度検出範囲32と、を有している。
【0057】
さらに、他方のセンサによって、非接触温度センサ70の検温範囲は、前席側助手席FrPa側のサイドウインドウシールド22における温度検出範囲28と、空調ゾーン1bに着座する前席側助手席FrPaの乗員の上半身温度を検出可能な温度検出範囲29、30と、空調ゾーン1dに着座する後席助手席側RrPaの乗員の上半身温度を検出可能な温度検出範囲33と、を有している。
【0058】
なお、図中に示す符号31は、前席と後席の中間部、および運転席と助手席との中間部における検出可能な温度検出範囲を示しており、いずれか一方のセンサで検出される。
【0059】
エアコンECU8は、アナログ/デジタル変換器、マイクロコンピュータ等を有して構成される。非接触温度センサ70、71、日射センサ83a、83b、各温度センサ81、82、84、86、87、および温度設定スイッチ9、10、11、12からそれぞれ出力される出力信号は、アナログ/デジタル変換器によりアナログ/デジタル変換されてマイクロコンピュータにそれぞれ入力されるように構成されている。
【0060】
また、マイクロコンピュータは、ROM、RAMなどのメモリ、およびCPU(中央演算装置)等から構成され、イグニッションスイッチがオンされたときに図示しないバッテリから電力供給される。
【0061】
次に、上記構成の車両用空調装置における空調補正の制御を図4ないし図21を用いて説明する。図4は、エアコンECU8による空調補正の制御処理を示すフローチャートである。
【0062】
図4に示すように、空調補正の制御処理フローにおける主なステップは、設定温度の読込みステップ(S100)、各種センサの検出信号の読込みステップ(S200)、非接触温度センサ(IRセンサ)の時定数の算出ステップ(S300)、熱履歴補正量の算出ステップ(S400)、肩寒補正量の算出ステップ(S500)、日射補正量の算出ステップ(S600)、各部の目標吹出温度の算出ステップ(S700)、および空調装置部品の制御実行ステップ(S800)である。そして、イグニッションスイッチ(以下、IGスイッチとする)がONされてバッテリから電源が供給されると、各ステップにおける処理を順に実行し、これらの各ステップを繰り返し反復することで、IGスイッチがONの間、常に空調の補正制御を実行することになる。
【0063】
まず、エアコンECU8は電源が投入されると、空調が開始され、ROM、RAMなどのメモリに記憶された制御プログラムがスタートし、RAMに記憶されるデータなどを初期化して図4に示すフローチャートに従って空調補正の制御を開始する。
【0064】
そして、エアコンECU8は、ステップS100にて、温度設定スイッチ9、10、11、12から、それぞれの設定温度信号TsetFrDr、TsetFrPa、TsetRrDr、TsetRrPaを読み込む。さらに、エアコンECU8は、ステップS200にて、外気温度センサ81から外気温度信号Tam、日射センサ83a、83bから日射量信号TsDr、TsPa、RrTs、内気温度センサ84,85からFrTr、RrTrを読み込む。さらに、これに加えて、非接触温度センサ70や71から複数部位の検出温度信号Tiを読み込む。
【0065】
ここで、検出温度信号Tiは、前席側運転席FrDrの運転者の上半身の表面温度、前席側助手席FrPaの乗員の上半身の表面温度、後席運転席側RrDrの乗員の上半身の表面温度、後席助手席側RrPaの乗員の上半身の表面温度と、これらの温度の他に、前席側運転席FrDr側のサイドウインドウシールドの表面温度、および前席側助手席FrPa側のサイドウインドウシールドの表面温度である。
【0066】
次に、エアコンECU8はステップS300にて非接触温度センサ(以下、IRセンサとする)の時定数を算出する。このIRセンサの時定数の算出は、非接触温度センサ70、71(以下、IRセンサ70、71とする)による検出値に基づいた空調制御に持たせる時間遅れ量を算出するステップであり、この演算処理手順を図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0067】
図5に示すように、エアコンECU8は、ステップS310にて、IRセンサの検出値に応じた補正係数f1を算出する。この算出ステップは、空調開始初期時のIRセンサによる検出値[℃]に対応する補正係数f1を図6に示す制御マップによって算出するものである。この補正係数f1は、IRセンサによる検出値が所定範囲を外れる場合は、この所定範囲内である場合に比べて大きい値に算出されることになる。このようにf1が大きい値に算出されると、IRセンサの時定数が大きくなる方向に働くため、空調制御に持たせる時間遅れが大きくなる。
【0068】
図6に示す制御マップによれば、この所定範囲の一例として20℃以上30℃以下が採用されている。そして、IRセンサ検出値が20℃以上30℃以下である場合にはf1は0と算出され、この範囲を外れる20℃未満および30℃を超える場合には、f1は0より大きい値に算出される。特に、IRセンサ検出値が、20℃未満のときはその値が小さいほどf1が0から30の範囲で大きく算出され、30以上50℃未満のときはその値が大きいほどf1が0から30の範囲で大きく算出される。また、IRセンサ検出値が50℃以上の場合は、f1は30の一定値に算出される。
【0069】
さらに、エアコンECU8は、ステップS320にて、空調開始時からの経過時間に応じた補正係数f2を算出する。この算出ステップは、空調開始時からの経過時間[分]に対応する補正係数f2を図7に示す制御マップによって算出するものである。この補正係数f2は、空調開始時からの経過時間が所定時間を経過するまでは、この所定時間経過後に比べて大きい値に算出されることになる。このようにf2が大きい値に算出されると、IRセンサの時定数が大きくなる方向に働くため、空調制御に持たせる時間遅れが大きくなる。
【0070】
図7に示す制御マップによれば、この所定時間の一例として空調開始時から20分が採用されている。そして、空調開始時からの経過時間が20分以上である場合にはf2は0と算出され、20分未満である場合には、f2は0から1の範囲に算出される。特に、空調開始時からの経過時間が、20分未満のときはその値が小さいほどf2が大きく算出される。
【0071】
そして、エアコンECU8は、算出されたf1およびf2を用いてIRセンサの時定数を算出する(ステップS330)。この時定数は、次の数式5により算出する。
【0072】
時定数=(f1×f2)+30 …(数式5)
なお、数式5の時定数の単位は秒であり、f1またはf2が0の場合には時定数は30秒となり、最大の場合で60秒と算出される。また、この時定数の更新は、4秒に1回実行されることとする。
【0073】
最後に、エアコECU8は、算出された時定数を用いて、実際の制御に用いるIRセンサ値を算出する(ステップS340)。この制御に用いるIRセンサ値は、次の数式6により算出する。
【0074】
制御に用いるIRセンサ値=前回用いたIRセンサ値+(今回のIR検出値−前回用いたIRセンサ値)/R …(数式6)
なお、数式6の単位は[W/m2]である。また、係数Rは時定数によって変化する値であり、時定数が30秒の場合は7.5が採用され、60秒の時は15が採用される。30秒から60秒の間の数値である場合は、7.5から15の間で補間された値が採用されるものとする。
【0075】
このようにステップS310からS330の処理による時定数は、例えばウォームアップ中、クールダウン中などにおけるIRセンサ周囲の雰囲気温度が急激に変化しやすい状況においては大きい値として算出されるので、IRセンサによる温度検出は、雰囲気温度が比較的安定した状態で実行されることになる。また、この雰囲気温度の変化は、空調開始時から一定の時間が経過すると比較的安定した状態になるため、逆に、このときに検出を実行するIRセンサの時定数は、大きい値に変更して応答性を遅らせる必要がないので、例えば1秒程度の小さい値が採用される。
【0076】
次に、エアコンECU8はステップS400にて熱履歴補正量を算出する。この熱履歴補正量は乗員の車両乗り込み時における乗員の着衣温度の熱履歴を補正するものであって、この演算処理手順を図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0077】
図8に示すように、ステップS410において、乗員の乗り込み判定と、乗り込みが発生した場合の乗り込み時からの経過時間の計測を行う。乗り込み判定は、概略、次のように行う。まず、IRセンサ70で検出された乗員の上半身の表面温度が、夏季では約2.5℃以上上がったとき、あるいは冬季では約3℃以上下がったときを、IRセンサ70の検温範囲の各空調ゾーン1a〜1dに乗り込んだものと判定する。
【0078】
ここで、夏季と冬季との判定基準温度の違いは夏季では冬季と比べて、乗員の乗り込み時の温度変化が少ないことを考慮している。また、夏季または冬季の判定は、外気温度Tamが所定温度以上、例えば、10℃以上のときを夏季と判定し、外気温度Tamが所定温度未満のときを冬季と判定する。
【0079】
なお、温度上昇、または下降は、例えば、250ms毎に読み込まれるIRセンサ70で検出された検出値を、それぞれ、例えば、4sec毎に16個のサンプリング値を時間平均するときの前回平均値と今回平均値との差分によって判定される。
【0080】
また、この4sec毎の検温範囲における複数部位の各時間平均値による平均値を、IRセンサ70による各空調ゾーン1a〜1dにおける乗員の表面温度とする。TiFrDr、TiFrPa、TiRrDr、TiRrPaとする。
【0081】
そして、エアコンECU8は、乗員の乗り込みが発生した時点からの経過時間に応じて補正係数fsを算出する(ステップS420)。この補正係数fsは、図9に示す制御マップによって算出するものであり、乗り込み判定直後ではfs=1とし、乗り込み3分に近づくほどfsは直線的に減少し、乗り込み3分以降はfs=0とする。
【0082】
エアコンECU8は、このように算出された補正係数fsを用いて、空調ゾーン1a〜1d毎の熱履歴補正量RirekiFrDr、RirekiFrPa、RirekiRrDr、およびRirekiRrPaを次の数式7ないし数式14により算出する(ステップS430)。ここで、数式7ないし数式10は冬季における熱履歴補正量であり、数式11ないし14は夏季における熱履歴補正量である。
【0083】
冬季乗り込み判定ONのとき、
RirekiFrDr=−12×fs×MIN((TiFrDr−TsetFrDr),0) …(数式7)
RirekiFrPa=−12×fs×MIN((TiFrPa−TsetFrPa),0) …(数式8)
RirekiRrDr=−12×fs×MIN((TiRrDr−TsetRrDr),0) …(数式9)
RirekiRrPa=−12×fs×MIN((TiRrPa−TsetRrPa),0) …(数式10)
夏季乗り込み判定ONのとき、
RirekiFrDr=−3×fs×MAX((TiFrDr−TsetFrDr),0) …(数式11)
RirekiFrPa=−3×fs×MAX((TiFrPa−TsetFrPa),0) …(数式12)
RirekiRrDr=−3×fs×MAX((TiRrDr−TsetRrDr),0) …(数式13)
RirekiRrPa=−3×fs×MAX((TiRrPa−TsetRrPa),0) …(数式14)
ここで、MINは括弧内のパラメータの最小値を採用することであり、MAXは括弧内のパラメータの最大値を採用することである。さらに、TiFrDrは、前席側運転席FrDrの運転者の上半身温度の温度検出範囲26と27をIRセンサ70で検出し、これら二つの検出温度信号Tiの平均値を算出した着衣温度である。
【0084】
また、TiFrPaは、前席側助手席FrPaの運転者の上半身温度の温度検出範囲29と30をIRセンサ70で検出し、これら二つの検出温度信号Tiの平均値を算出した着衣温度である。また、TiRrDrは、後席運転席側RrDrの乗員の上半身温度の温度検出範囲32をIRセンサ70または71で検出した着衣温度である。また、TiRrPaは、後席助手席側RrPaの乗員の上半身温度の温度検出範囲33をIRセンサ70または71で検出した着衣温度である。
【0085】
次に、エアコンECU8は、ステップS500にて肩寒補正量を算出する。この肩寒補正量は乗員がサイドウインドウシールドの温度によって肩部の冷え感じることに対して空調補正するものであり、この演算処理手順を図10に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0086】
図10に示すように、まずエアコンECU8は、各空調ゾーン1a〜1dについて補正量f1〜f4を算出する(ステップS510)。つまり、図11(a)〜図11(d)に示す制御マップにより補正量f1〜f4を算出する。
【0087】
具体的には、空調ゾーン1aの補正量f1(ΔTsetFrDr)[℃]は、TiFrDr−TsetFrDr[℃]との関係から算出する。つまり、TiFrDr−TsetFrDr=−21の場合はf1(ΔTsetFrDr)=0、TiFrDr−TsetFrDr=−25の場合はf1(ΔTsetFrDr)=16とし、TiFrDrとTsetFrDrとの温度差が−25〜−21℃のときにはf1(ΔTsetFrDr)は直線的に補間される。
【0088】
なお、ここで、前席側のTiFrDrは、サイドウインドウシールド21における温度検出範囲25から検出されたサイドウインドウシールド21の表面温度である。また、TiFrPaは、サイドウインドウシールド22における温度検出範囲28から検出されたサイドウインドウシールド22の表面温度である。
【0089】
また、後席側のTiRrDrおよびTiRrPaは、それらの前席側のサイドウインドウシールド21、22の表面温度を用いて算出している。つまり、後席側の空調ゾーン1c、1dでは、前席側のサイドウインドウシールド21、22の表面温度を共用している。
【0090】
次に、エアコンECU8は、図12に示す制御マップを用いて車両の車速に応じた補正係数f6(S)を算出する(ステップS520)。この制御マップによれば、車速が40km/hの場合はf6(S)=0とし、車速が40から130km/hまでは、f6(S)は直線的に増加し、車速が130km/h以上の場合はf6(S)=1とする。車速が速くなると補正係数f6(S)が増加するように補正する。
【0091】
さらに、エアコンECU8は、図13に示す制御マップを用いて内気温度FrTrに応じた補正係数f7(FrTr)を算出する(ステップS530)。この制御マップによれば、内気温度FrTrが20℃〜35℃のときには補正係数f7(FrTr)=1とし、FrTrが20℃から15℃に至る間は直線的に減少し、FrTrが15℃以下になると補正係数f7(FrTr)=0とし、また、FrTrが35℃から40℃に至る間は直線的に減少し、FrTrが40℃以上となると補正係数f7(FrTr)=0とする。
【0092】
そして、このように算出された補正係数f6(S)、補正係数f7(FrTr)、f1(ΔTsetFrDr)、f2(ΔTsetFrPa)、f3(ΔTsetRrDr)、およびf4(ΔTsetRrPa)を用いて各空調ゾーン1a〜1dについて肩寒補正量KataFrDr、KataFrPa、KataRrDr、およびKataRrPaを次の数式15ないし数式18により算出する(ステップS540)。
【0093】
KataFrDr=f1(ΔTsetFrDr)×f6(S)×f7(FrTr)
…(数式15)
KataFrPa=f2(ΔTsetFrPa)×f6(S)×f7(FrTr)
…(数式16)
KataRrDr=f3(ΔTsetRrDr)×f6(S)×f7(FrTr)
…(数式17)
KataRrPa=f4(ΔTsetRrPa)×f6(S)×f7(FrTr)
…(数式18)
【0094】
次に、エアコンECU8は、ステップS600にて日射補正量を算出する。この日射補正量は、車室内への前方からの日射、側方からの日射、および後方からの日射の影響を空調制御に加味し、日射補正量として目標吹出温度に反映させるものである。この日射補正量の主な演算手順は図14のフローチャートに示すとおりであり、最終的に得られる空調ゾーン1a〜1dのそれぞれにおける日射補正量は、次の数式19〜数式22により演算されることになる(ステップS640)。
【0095】
SunFrDr=MIN(前方日射による補正量,側方日射による補正量,後方日射による補正量) …(数式19)
SunFrPa=MIN(前方日射による補正量,側方日射による補正量,後方日射による補正量) …(数式20)
SunRrDr=MIN(前方日射による補正量,側方日射による補正量,後方日射による補正量) …(数式21)
SunRrPa=MIN(前方日射による補正量,側方日射による補正量,後方日射による補正量) …(数式22)
なお、MINは括弧内の各日射補正量の中から最小値を採用することを意味している。
【0096】
以下に最終的な各部の日射補正量を算出するための各ステップについて図14〜図21を用いて説明する。まず、エアコンECU8は、数式19〜数式22の演算をするために必要となる各空調ゾーン1a〜1dについて前方日射による日射補正量を算出する(ステップS610)。各空調ゾーン1a〜1dの前方日射による日射補正量は、次に数式23〜数式26を演算して算出される。
【0097】
空調ゾーン1a:MAX(f8(ΔTsetFrDr),f28(TsFrDr))×f35(FrTr) …(数式23)
空調ゾーン1b:MAX(f9(ΔTsetFrPa),f29(TsFrPa))×f35(FrTr) …(数式24)
空調ゾーン1c:MAX(f10(ΔTsetRrDr),f30(TsFrDr))×f35(FrTr) …(数式25)
空調ゾーン1d:MAX(f11(ΔTsetRrPa),f31(TsFrPa))×f35(FrTr) …(数式26)
上記数式23〜数式26を演算するために用いる制御マップは、図15(a)〜(d)、図16(a)〜(d)、図17、図18(a)〜(d)、および図19(a)〜(d)に示したものであり、それぞれは、図14のステップS610(前方日射による各部の日射補正量算出)で用いる制御マップである。以下、ステップS610〜S640の各ステップを、空調ゾーン1aにおける日射補正量の演算手順を代表して説明する。
【0098】
エアコンECU8は、空調ゾーン1aの前方日射による日射補正量については、数式23に示すように、図15(a)に示す補正係数f8(ΔTsetFrDr)と、図18(a)に示す補正係数f28(TsFrDr)とを比較し、日射補正量が大きい方の補正係数f28もしくはf8を選択し、その大きい方の補正係数f28もしくはf8に×f35(FrTr)を積算する。
【0099】
ここで、補正係数f8(ΔTsetFrDr)は、前方からの日射の影響度合いを乗員の表面温度、前方から照射する日射量に基づいて算出したものであり、図15(a)の制御マップに示すTiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrの式から算出する値に応じて求められる。
【0100】
この数式のうち、TiFrDrは、前席側運転席FrDrに着座する乗員の着衣温度であって、IRセンサ70で検出された検出温度信号Tiのうち、前席側運転席FrDrの乗員が着座する温度検出範囲26、27から検出された二つの検出温度信号Tiから求めた平均温度である。
【0101】
このf55(TsFrDr)は、図16(a)に示す(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の数式から算出する値に応じて求められる補正係数である。ここで、TsFrDr[W/m2]は、車両前方に配設された日射センサ83aで検出された日射量信号TsDr、TsPaのうち、運転席側の日射量TsDrである。また、f65(TsFrDr)は、図19(a)に示す日射量TsDr比=TsFrDr/(TsFrDr+TsFrPa)の数式から算出する値に応じて求められる補正係数である。
【0102】
この補正係数f65(TsFrDr)は、日射センサ83aで検出された日射量信号TsDr、TsPaに対する運転席側の日射量TsDr比に応じて0〜1.0の値で算出される補正係数である。つまり、運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときに補正係数f65(TsFrDr)=0、日射量TsDr比が0.53以上のときに補正係数f65(TsFrDr)=1.0となるように設定している。
【0103】
そして、日射量TsDr比が0.5以上から0.53未満のときは、補正係数f65(TsFrDr)が0から1に直線的に増加するように設定されている。ここで、(TsFrDr+TsFrPa)が0となる日射がない場合には、日射補正誤動作を防止するためにTsFrDr/(TsFrDr+TsFrPa)=0とし、日射補正を行なわないように設定している。
【0104】
つまり、運転席側の日射量TsDr比が0.5以上であれば、0.53まで補正係数f65(TsFrDr)が0から1に直線的に増加し、0.53以上ならば補正係数f65(TsFrDr)は1である。また、運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のとき、すなわち、運転席側の日射量TsDr比よりも助手席Pa側の日射量TsPa比が大きいときは、補正係数f65(TsFrDr)は0である。
【0105】
言い換えれば、運転席側の日射量TsDr比が0.5未満であれば、運転席側の日射がないと判断され、このときのf65(TsFrDr)を0とすることにより、後述する図21(a)のf85(TsFrDr)が0と決定されるので、日射がないと判断された運転席側の車室内における空調補正量を、逆に日射があると判断したその他の空調補正量に比べて小さくする制御が行われる。
【0106】
また、横軸の(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)が5未満である場合には、その値が0に近づくほど図21(a)のf85(TsFrDr)は1.0から0に近づくように小さい値に決定されるので、後述する数式31のf45(TsFrDr)に与える影響が小さくなり、ひいては数式19の日射補正量SunFrDrを小さくすることになる。
【0107】
これは換言すれば、エアコンECU8が、日射センサ83a、83bによって検出された日射量に基づいて日射がないと判断した場合には、当該検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくすることである。
【0108】
そして、図19(a)の制御マップで算出した補正係数f65(TsFrDr)と、日射センサ83aで検出された日射量信号TsDrから求めた日射量[W/m2]と、を図16(a)に示す(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の数式に代入してこの数式の値を算出する。そして、この式の値に応じて補正係数f55(TsFrDr)を算出する。
【0109】
エアコンECU8は、例えば、図16(a)において、その横軸である(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)が3.3より大きいときに、空調ゾーン1aに着座する乗員に対して日射があると判断し、このとき縦軸であるf55(TsFrDr)は0より大きい正の値となる。この値は、図15(a)の横軸のTiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrに用いられることにより、エアコンECU8は、実際に検出された前席側運転席FrDrの乗員の着衣温度であるTiFrDrをより高い温度に補正した乗員の温度補正量を決定する。
【0110】
一方、エアコンECU8が日射がないと判断した場合は、例えば、図16(a)において、その横軸の(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)が3.3以下のときであり、このとき縦軸であるf55(TsFrDr)は0より小さい負の値となる。この値は、図15(a)の横軸のTiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrに用いられることにより、エアコンECU8は、実際に検出された前席側運転席FrDrの乗員の着衣温度であるTiFrDrをより低い温度に補正した乗員の温度補正量を決定する。
【0111】
このようにエアコンECU8は、前席側運転席FrDrの乗員が着座する空調ゾーン1aに日射があると判断したときには、図15(a)の補正係数f8(ΔTsetFrDr)がマイナスの方向となるように補正して、後述する目標吹出温度を低くする方向に寄与することになる。これにより、日射があるときで乗員に日射が当たっているにもかかわらず、汗の蒸発などで乗員の表面温度が比較的低く検出されてしまう状態を検出することができ、実際の熱負荷と空調温度との格差を低減した十分な空調補正量を確保することができる。
【0112】
また、ここでは、例えば、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときは、補正係数f55(TsFrDr)は−3に設定され、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の値が16.7であれば、補正係数f55(TsFrDr)は7.5となるように設定されている。
【0113】
また、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の値が3.3であれば、補正係数f55(TsFrDr)が0に設定され、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の値が8.3であれば、補正係数f55(TsFrDr)が4となるように設定されている。
【0114】
補正係数f55(TsFrDr)は、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときは−3であって、運転席側の日射量TsDr比が0.5以上のときは日射量TsDrの数値に応じて−3から最大7.5に増加する補正係数である。
【0115】
そして、エアコンECU8は、図15(a)の制御マップに示すTiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrの数式に、図16(a)で算出された補正係数f55(TsFrDr)、IRセンサ70で検出された二つの検出温度信号Tiから求めた平均値、および空調ゾーン1aにおける設定温度信号TsetFrDrから求めた設定温度を代入して、この式の値を算出する。
【0116】
そして、この式の値に対応する補正係数f8(ΔTsetFrDr)を図15(a)の制御マップにより算出する。この制御マップによれば、例えば、TiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrが7.2の場合は補正係数f8(ΔTsetFrDr)が−14℃に設定され、TiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrが1.5であれば補正係数f8(ΔTsetFrDr)が0℃に設定され、TiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrが1.5から7.2に増加すると補正係数f8(ΔTsetFrDr)が0から−14℃に直線的に下降するように設定される。
【0117】
言い換えると、前方からの日射の影響度合いが大きければ、TiFrDr+f55(TsFrDr)が大きくなることで補正係数f8(ΔTsetFrDr)が0から最小の−14℃となるように設定されている。つまり、日射補正量が大きいときは補正係数f8が−14℃に至るまで小さくなる。
【0118】
また、例えば、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満の場合は、f55(TsFrDr)が−3であるため、TiFrDrが設定温度TsetFrDrに対して4.5以上にならないと補正係数f8は0以上のマイナス側の補正係数とはならない。つまり、前方からの日射の影響度合いが小さいときは補正係数f8が最小の0℃となる。
【0119】
これにより、補正係数f8(ΔTsetFrDr)は、IRセンサ70で検出された検出温度と日射センサ83aで検出された日射量信号TsDrから求めた日射量[W/m2]とに基づいて車両前方から照射する日射の補正量を算出することができる。
【0120】
一方、数式23のf28(TsFrDr)は、前方からの日射の影響度合いを前方から照射する日射量に基づいて算出したものであり、図16(a)に示すf55(TsFrDr)を算出するときに用いた(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の式から算出する値に応じて求められる補正係数である。
【0121】
ここでは、例えば、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の式から算出される値が11.7であれば、補正係数f28(TsFrDr)が−20℃となるように設定され、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の式から算出される値が5.8であれば、補正係数f28(TsFrDr)が−10℃となるように設定される。また、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の式から算出される値が5.8から11.7に増加すれば、補正係数f28(TsFrDr)が−10から−20℃に直線的に下降するように設定されている。
【0122】
言い換えると、前方からの日射の影響度合いが大きければ、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)が−10から最小の−20℃となるように設定されている。つまり、日射補正量が大きいときは補正係数f8が最小の−20℃に至るまで小さくなる。
【0123】
また、例えば、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときは、補正係数f28(TsFrDr)は−10℃となる。つまり、日射補正量が小さいときは−10℃である。
【0124】
エアコンECU8は、この補正係数f28(TsFrDr)と上述した補正係数f8(ΔTsetFrDr)とを比較し、これらのうち、日射補正量が大きい方の補正係数を選択する。
【0125】
そして、エアコンECU8は、数式23に示すように、日射補正量が大きい側の補正係数に補正係数f35(FrTr)を積算する。ここで、f35(FrTr)は、図17に示す制御マップによって、内気温度センサ84で検出された内気温度信号FrTrから求めた内気温度に応じて求められる補正係数である。
【0126】
この場合には、図17に示すように、サンシェード(図示せず)の開閉状態に応じて補正係数f35(FrTr)は異なる。フロントウインドウの一部をサンシェードで覆うときがサンシェード閉時であり、その一部の覆いを取り除いたときがサンシェード開時であり、サンシェード開時の方の補正係数f35(FrTr)を大きく設定している。
【0127】
ここでは、例えば、内気温度センサ84で検出された内気温度信号FrTrから求めた内気温度が15℃以下であれば、補正係数f35(FrTr)は0に設定され、内気温度が20℃から35℃の範囲であれば、サンシェード開時における補正係数f35(FrTr)は1、サンシェード閉時における補正係数f35(FrTr)は0.5に設定されている。
【0128】
エアコンECU8は、それぞれ算出した補正係数f8(ΔTsetFrDr)と、補正係数f28(TsFrDr)とを比較し、日射補正量が大きい方の補正係数に補正係数f35(FrTr)を掛けることで前方日射による日射補正量を求めることができる(以上ステップS610)。
【0129】
次に、エアコンECU8は、数式19〜数式22の演算をするために必要となる各空調ゾーン1a〜1dについて側方日射による日射補正量を算出する(ステップS620)。各空調ゾーン1a〜1dの側方日射による日射補正量は、次に数式27〜数式30を演算して算出される。
【0130】
空調ゾーン1a:MAX(f45(TsFrDr),f28(TsFrDr))×f35(FrTr) …(数式27)
空調ゾーン1b:MAX(f46(TsFrPa),f29(TsFrPa))×f35(FrTr) …(数式28)
空調ゾーン1c:MAX(f47(TsFrDr),f30(TsFrDr))×f35(FrTr) …(数式29)
空調ゾーン1d:MAX(f48(TsFrPa),f31(TsFrPa))×f35(FrTr) …(数式30)
上記数式27〜数式30を演算するために用いる制御マップは、図17、図18(a)〜(d)、図19(a)〜(d)、図20(a)〜(d)、および図21(a)〜(d)に示したものであり、それぞれは、図14のステップS620(側方日射による各部の日射補正量算出)で用いる制御マップである。
【0131】
エアコンECU8は、数式27に示すように、補正係数f45(TsFrDr)と、補正係数f28(TsFrDr)とを比較し、日射補正量が大きい方の補正係数に補正係数f35(FrTr)を掛けることで側方日射による日射補正量を算出する。
【0132】
ここで、補正係数f45(TsFrDr)は、側方からの日射の影響度合いを乗員の表面温度、サイドウインドウシールドの表面温度、側方から照射する日射量に基づいて算出したものであり、次の数式31により算出する。
【0133】
f45(TsFrDr)=f75(ΔTsetFrDr)×f85(TsFrDr)
…(数式31)
また同様に、f46(TsFrPa)=f76(ΔTsetFrPa)×f86(TsFrPa) …(数式32)
f48(TsFrPa)=f77(ΔTsetRrDr)×f87(TsFrDr)
…(数式33)
f48(TsFrPa)=f78(ΔTsetRrPa)×f88(TsFrPa)
…(数式34)である。
【0134】
数式31に示すように、f45(TsFrDr)は、図20(a)の制御マップにより求めるf75(ΔTsetFrDr)と、図21(a)の制御マップにより求めるf85(TsFrDr)とを積算して算出する。この補正係数f75(ΔTsetFrDr)は、図20(a)の横軸のMAX(((TiFrDr)−TsetFrDr),0)−MAX(((TiFrPa)−TsetFrPa),0)の式から算出する値に応じて求められる補正係数である。このようにエアコンECU8は、IRセンサ70、71によって検出された運転席側や助手席側の窓ガラスの表面温度を用いて空調補正量を決定するものである。
【0135】
ここで、(TiFrDr)は、前席側運転席に着座する乗員の着衣温度と前席側運転席のサイドウインドウシールド温度との平均温度であり、IRセンサ70で検出された検出温度信号Tiのうち、空調ゾーン1aにおける温度検出範囲25、26、27から検出された三つの検出温度信号Tiから求めた平均温度である。
【0136】
同様に、(TiFrPa)は、前席側助手席に着座する乗員の着衣温度と前席側助手席のサイドウインドウシールド温度との平均温度であり、IRセンサ70で検出された検出温度信号Tiのうち、空調ゾーン1bにおける温度検出範囲28、29、30から検出された三つの検出温度信号Tiから求めた平均温度である。
【0137】
ここでは、例えば、図20(a)の横軸の値が、20℃以上の場合は補正係数f75(ΔTsetFrDr)が−20℃に設定され、10℃以下の場合は補正係数f75(ΔTsetFrDr)が0℃に設定される。また、図20(a)の横軸の値が10から20℃の範囲にある場合は、20℃に近づくほど補正係数f75(ΔTsetFrDr)が0〜最小の−20℃に直線的に下降するように設定されている。
【0138】
言い換えると、側方からの日射の影響度合いを空調ゾーン1aと空調ゾーン1bとで比較して、空調ゾーン1a側が空調ゾーン1b側よりも10℃以上大きければf75(ΔTsetFrDr)が0から−20℃の範囲となるように設定されている。
【0139】
また、例えば、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときは、補正係数f75が0℃となる。つまり、運転席側の日射補正量が小さいときはf75は0℃となる。
【0140】
また、図21(a)の補正係数f85(TsFrDr)は、図18(a)に示すf28(TsFrDr)および図16(a)に示すf55(TsFrDr)を算出するときに用いた(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の式から算出される値に応じて求められる補正係数である。
【0141】
ここでは、例えば、図21(a)の横軸が5以上であれば、補正係数f85(TsFrDr)は1となるように設定され、0であれば、補正係数f85(TsFrDr)は0に設定され、が0から5までの範囲で増加すれば、補正係数f85(TsFrDr)は0から1まで直線的に増加するように設定されている。
【0142】
言い換えると、側方からの日射の影響度合いが大きければ、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)が増加して補正係数f85(TsFrDr)が0から1の範囲の値になる。つまり、空調ゾーン1aにおける日射補正量が大きいときは補正係数f85が最大1に至るまで大きくなる。
【0143】
また、例えば、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときは補正係数f85が0である。つまり、空調ゾーン1aにおける日射補正量が小さいときは最小の0である。
【0144】
エアコンECU8は、それぞれ算出した補正係数f75(ΔTsetFrDr)とf85(TsFrDr)とを積算することでf45(TsFrDr)を算出する。言い換えれば、空調ゾーン1a側の検出温度が大きいときは側方からの日射の影響度合いを受けていることでf45(TsFrDr)が最小の−20℃となるように設定されている。
【0145】
そして、エアコンECU8は、このf45(TsFrDr)と、前述した補正係数f28(TsFrDr)とを比較し、日射補正量が大きい方の補正係数に補正係数f35(FrTr)を掛けることで側方日射による日射補正量を求める。
【0146】
次に、エアコンECU8は、数式19〜数式22の演算をするために必要となる各空調ゾーン1a〜1dについて後方日射による日射補正量を算出する(ステップS630)。各空調ゾーン1a〜1dの後方日射による日射補正量は、次に数式35〜数式38を演算して算出される。
【0147】
空調ゾーン1a:−0.7×RrTs[W/m2]/60 …(数式35)
空調ゾーン1b:−0.7×RrTs[W/m2]/60 …(数式36)
空調ゾーン1c:−1.5×RrTs[W/m2]/60 …(数式37)
空調ゾーン1d:−1.5×RrTs[W/m2]/60 …(数式38)
エアコンECU8は、数式35に示すように、後方日射による日射補正量を算出するために、車両後方に配設された日射センサ83bで検出された日射量信号TsRrから求めた日射量TsRr[W/m2]を用いる。言い換えれば、後方からの日射の影響度が大きければ、−0.7×RrTs[W/m2]/60から算出した補正係数のマイナス値が最大となる。
【0148】
次に、エアコンECU8は、上述した数式19〜数式22に従い、空調ゾーン1a〜1d毎にそれぞれ算出した前方日射による補正量、側方日射による補正量、側方日射による補正量のうち、最小値を各日射補正量SunFrDr、SunFrPa、SunRrDr、およびSunRrPaとして算出する(ステップS640)。
【0149】
空調ゾーン1bにおける日射補正量SunFrPaは、その演算手順の詳細を省略するが、これまで述べてきた空調ゾーン1aにおける日射補正量SunFrDrと同一の考え方および同様の手順で、前方日射による補正量、側方日射による補正量、後方日射による補正量をそれぞれ算出し、数式20に従って算出する。なお、演算に使用する制御マップは、図15(b)、図16(b)、図17、図18(b)、図19(b)、図20(b)、および図21(b)である。
【0150】
また、空調ゾーン1cにおける日射補正量SunRrDrについても、その演算手順の詳細を省略するが、これまで述べてきた空調ゾーン1aにおける日射補正量SunFrDrと同一の考え方および同様の手順で、前方日射による補正量、側方日射による補正量、後方日射による補正量をそれぞれ算出し、数式21に従って算出する。なお、演算に使用する制御マップは、図15(c)、図16(c)、図17、図18(c)、図19(c)、図20(c)、および図21(c)である。
【0151】
また、空調ゾーン1dにおける日射補正量SunRrPaについても、その演算手順の詳細を省略するが、これまで述べてきた空調ゾーン1aにおける日射補正量SunFrDrと同一の考え方および同様の手順で、前方日射による補正量、側方日射による補正量、後方日射による補正量をそれぞれ算出し、数式22に従って算出する。なお、演算に使用する制御マップは、図15(d)、図16(d)、図17、図18(d)、図19(d)、図20(d)、および図21(d)である。
【0152】
ただし、空調ゾーン1cおよび1dでは、数式37および数式38に示すように、それぞれ後方日射による補正量において、係数が0.7から1.5に設定されている。つまり、空調ゾーン1c、1dに照射する日射の影響度合いを大きくするように設定している。
【0153】
次に、エアコンECU8は、図4のメイン制御フローに示すように、S400で算出された熱履歴補正量、S500で算出された肩寒補正量、およびS600で算出された日射補正量を用いて、各空調ゾーン1a〜1dについて目標吹出温度TAOFrDr、TAOFrPa、TAORrDr、およびTAORrPaを次の数式1から数式4により算出する(ステップS700)。
【0154】
ここで、これらの目標吹出温度TAOFrDr、TAOFrPa、TAORrDr、およびTAORrPaは、熱履歴補正量、熱履歴補正量および日射補正量を考慮した空調補正として算出される。
【0155】
TAOFrDr=Kset×TsetFrDr−Kr×FrTr−Kam×Tamdisp+RirekiFrDr+KataFrDr+SunFrDr−CF …(数式1)
TAOFrPa=Kset×TsetFrPa−Kr×FrTr−Kam×Tamdisp+RirekiFrPa+KataFrPa+SunFrPa−CF …(数式2)
TAORrDr=Kset×TsetRrDr−Kr×RrTr−Kam×Tamdisp+RirekiRrDr+KataRrDr+SunRrDr−CF …(数式3)
TAORrPa=Kset×TsetRrPa−Kr×RrTr−Kam×Tamdisp+RirekiRrPa+KataRrPa+SunRrPa−CF …(数式4)
ここで、Ksetは設定温度ゲインであり、例えば、7.0である。Krは内気温ゲインであり、例えば、3.0である。Kamは外気温度ゲインであり、例えば、1.1である。CFは全体に掛かる補正定数であり、例えば、41.5である。
【0156】
次に、エアコンECU8は、このように算出された各空調ゾーン1a〜1dについて目標吹出温度TAOFrDr、TAOFrPa、TAORrDr、およびTAORrPaに基づいて、以下に示す空調装置の各構成部品を制御することにより車両用空調装置の制御を実行する(ステップS800)。
【0157】
具体的には、TAOFrDrとTAOFrPaとの平均値、およびTAORrDrとTAORrPaとの平均値に基づいてブロアモータ52a、62aに印加する電圧を決定する。そして、TAOFrDr、TAOFrPa、TAORrDr、およびTAORrPaに基づいて内外気切替ドア51の開閉制御による内外気切替モードの決定、空調ゾーン1a〜1d毎の吹出口モード(フェイスモード、バイレベルモード、フットモードなど)の決定、およびエアミックスドア55b、55c、65a、および65bの目標開度の決定を行う。
【0158】
さらに、エアコンECU8は、決定されたブロアモータ52a、62aの印加電圧を制御する信号をブロアモータ52a、62aに出力して、送風機52、62の作動を制御する。これと同時に、内外気切替ドア51、吹出口切替ドア56b、56c、66a、66b、エアミックスドア55b、55c、65a、65bの目標開度のそれぞれを制御する信号をサーボモータ51a、56a、56d、66c、66d、55a、55d、65c、65dなどに出力して、各ドアの作動を制御する。
【0159】
そして、上記のようにして、空調補正に伴う車両用空調装置の制御が実行した後は、再度ステップS100に戻り、さらに、継続的にステップS100ないしS800の制御処理を実行することで日射の影響度合いを考慮した日射補正量SunFrDr、SunFrPa、SunRrDr、およびSunRrPaに基づく空調補正による空調制御を行うことができる。
【0160】
このように本実施形態の車両用空調装置は、車室内の複数部位の表面温度を検出するIRセンサ70、71と、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ83a、83bと、IRセンサ70、71によって検出された表面温度に基づいて車室内の空調補正量を算出して空調制御を行うエアコンECU8と、を備え、エアコンECU8は、日射センサ83a、83bによって検出された日射量に基づいて日射がないと判断した場合には、当該検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくする。
【0161】
この制御によれば、サイドウインドウシールドを開放したときなどに起こる外乱によってIRセンサの検出値が変化してもその影響を受けない空調制御が実行できる。
【0162】
また、エアコンECU8は、サイドウインドウシールドや乗員などの表面温度を検出したり、車室内の両側における日射量を検出したりすることにより、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断する。そして、車室内のいずれか一方側に日射がないと判断した場合は、日射がないと判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量に比べて小さくすることが好ましい。
【0163】
この制御を採用した場合には、日射の有無に加えて、日射の方向を考慮して空調補正量を決定することによって、より快適性の高い空調を実行できる。
【0164】
また、エアコンECU8は、IRセンサ70、71によって窓ガラスの温度を検出し、この表面温度を用いて空調補正量を決定することが好ましい。なお、ここでいう窓ガラスは、車室内両側のサイドウインドウシールド、フロントガラス、リアガラスなどである。この制御を採用した場合には、低仰角の日射による影響を検出できるとともに、窓ガラスの温度は乗員の着衣などと比較して日射方向の変化に対する追従が遅いため、さらに、快適性の高い空調を実行できる。
【0165】
また、エアコンECU8は、IRセンサ70、71が車室内両側のサイドウインドウシールド、フロントガラス、リアガラスなどの窓ガラスの温度を検出することにより、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断することが好ましい。この制御を採用した場合には、窓ガラスの温度は乗員の着衣などと比較して日射方向の変化に対する追従が遅いため、日射の方向を考慮した空調補正量の決定を乗員に対してより快適性の高いものにできる。
【0166】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0167】
上記実施形態の非接触温度センサ70は、車室内の各空調ゾーン1a、1c、1b、1dに着座する各乗員の表面温度をそれぞれ検出するように、複数個設けることとしてもよい。
【0168】
上記実施形態においては、車室内における前後方向の空調ゾーンとして、前席空調ゾーンと後席空調ゾーンの2分割した空調ゾーンを説明しているが、本発明をいわゆる3列シートを有する車両に適用する場合には、前後方向の空調ゾーンを3分割してそれぞれのゾーンが空調制御可能となる構成を採用する。
【0169】
また、上記実施形態では、車両の前方、左右側方の日射に対する日射補正量を算出するために日射センサ83aまたは非接触温度センサ70を車室内天井の前方中央部に配置し、車両の後方の日射に対する日射補正量を算出するために日射センサ83bを車室内後方に配置している。しかし、この構成の他に、車両の後方、左右側方の日射に対する日射補正量を算出するために非接触温度センサ71を車室内の天井中央部に配置する構成としてもよい。
【0170】
また、車両の左右側方の日射に対する日射補正量を算出するために非接触温度センサ70を車室内天井中央部もしくは車室内前方に配置し、車両の前方、後方の日射に対する日射補正量を算出するために日射センサ83a、83bを車室内前方および車室内後方に配置する構成としてもよい。
【0171】
また、上記実施形態の非接触温度センサ70は、運転席側の空調ゾーン1a、1cの表面温度を検出するセンサと助手席側の空調ゾーン1a、1dの表面温度を検出するセンサとを一つのケースに収納して車室内前方中央部に配置したものであるが、これに限らず、運転席側の空調ゾーン1a、1cの表面温度を検出するセンサと助手席側の空調ゾーン1a、1dの表面温度を検出するセンサとを二つに分けて各乗員の窓側に配置する構成としてもよい。
【0172】
また、上記実施形態において車室内後方に配置する非接触温度センサ71は、運転席側の空調ゾーン1a、1cの表面温度を検出するセンサと助手席側の空調ゾーン1a、1dの表面温度を検出するセンサとを一つのケースに収納して車室内前方中央部に配置した2Dタイプのセンサによって構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】本発明の第1、第2、および第3実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図2】第1、第2、および第3実施形態における日射センサおよび非接触温度センサの配置を示した斜視図である。
【図3】第1、第2、および第3実施形態における非接触温度センサによる温度検出範囲を示した斜視図である。
【図4】第1、第2、および第3実施形態における空調補正の制御処理を示したフローチャートである。
【図5】図4におけるIRセンサの時定数を算出するステップの処理を示したフローチャートである。
【図6】図5のステップS310で用いる制御マップである。
【図7】図5のステップS320で用いる制御マップである。
【図8】図4における熱履歴補正量算出ステップの処理を示したフローチャートである。
【図9】図8のステップS420で補正係数fsを算出するための制御マップである。
【図10】図5における肩寒歴補正量算出ステップの処理を示したフローチャートである。
【図11】(a)〜(b)のそれぞれは、図10のステップS510で各サイドウィンドウの表面温度に応じた補正係数を算出するための制御マップである。
【図12】図10のステップS520で車速に応じた補正係数f6(S)を算出するための制御マップである。
【図13】図10のステップS530で内気温度に応じた補正係数f7(FrTr)を算出するための制御マップである。
【図14】図5における日射補正量算出ステップの処理を示したフローチャートである。
【図15】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS610(前方日射による各部の日射補正量算出)で用いる制御マップである。
【図16】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS610で用いる制御マップである。
【図17】図14のステップS610およびステップS620(各部における側方日射による日射補正量算出)で用いる制御マップである。
【図18】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS610およびステップS620で用いる制御マップである。
【図19】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS610およびステップS620で用いる制御マップである。
【図20】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS620で用いる制御マップである。
【図21】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS620で用いる制御マップである。
【符号の説明】
【0174】
8 エアコンECU(空調制御手段)
70、71 非接触温度センサ、IRセンサ
83、83a、83b 日射センサ(日射量検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の日射量に基づいた空調補正量を反映して空調制御を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空調装置としては、車両左右のサイドウインドウシールドの温度をそれぞれ検出する赤外線温度センサと、日射センサと、を備え、検出された車両左右のサイドウインドウシールドの温度差に基づき、左右領域のそれぞれに照射される日射補正量を推定し、左右領域のそれぞれの空調状態を補正するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−59678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の車両用空調装置では、サイドウインドウシールドを開放した場合には、車内への外気の流入などによる外乱によって赤外線温度センサの検出値が変化することがある。そして、赤外線温度センサの検出値が変化したときには、実際に日射がない状態であっても日射がある状態とみなして積極的に日射補正を行ってしまうという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、上記点を鑑みたものであり、非接触温度センサによる表面度に基づいた日射補正制御において、サイドウインドウシールドの開放などによる影響を考慮した精度の高い空調制御を実施する車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、以下に示す技術的手段を採用する。すなわち、車両用空調装置に係る第1の発明は、車室内の複数部位の表面温度を検出する非接触温度センサ(70、71)と、車室内に照射される日射量を検出する日射量検出手段(83)と、非接触温度センサ(70、71)によって検出された表面温度に基づいて車室内の空調補正量を算出して空調制御を行う空調制御手段(8)と、を備えたものであり、この空調制御手段(8)は、日射量検出手段(83)によって検出された日射量に基づいて日射がないと判断した場合には、当該検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくすることを特徴とする。なお、日射の有無の判断は、あらかじめ設定された日射量と検出された日射量との比較により行うものとする。
【0006】
この発明によれば、日射がないと判断した場合には、検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくすることにより、サイドウインドウシールドを開放したときなどに起こる外乱によって非接触温度センサの検出値が変化してもその影響を受けない空調制御を提供することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、空調制御手段(8)は、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断し、車室内のいずれか一方側に日射がないと判断した場合は、日射がないと判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量に比べて小さくすることが好ましい。
【0008】
この発明によれば、日射の有無に加えて、日射の方向を考慮して空調補正量を決定することにより、乗員に対してより快適性の高い空調を提供できる。
【0009】
さらに上記第1の発明において、空調制御手段(8)は、非接触温度センサ(70、71)によって検出された表面温度は窓ガラスの温度であることが好ましい。この発明によれば、窓ガラスの表面温度を検出することにより、低仰角の日射による影響を検出できるとともに、窓ガラスの温度は乗員の着衣などと比較して日射方向の変化に対する追従が遅いため、さらに、乗員に対して快適性の高い空調を提供できる。
【0010】
さらに上記第2の発明において、空調制御手段(8)は、非接触温度センサ(70、71)が車両の窓ガラスの温度を検出することにより、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断することが好ましい。この発明によれば、窓ガラスの温度は乗員の着衣などと比較して日射方向の変化に対する追従が遅いため、日射の方向を考慮した空調補正量の決定を乗員に対してより快適性の高いものにできる。
【0011】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1実施形態における車両用空調装置を図1ないし図21に基づいて説明する。図1は車両用空調装置の全体構成を示した構成図である。図2は日射センサ83a、83bおよび非接触温度センサ70、71の配置場所を示した斜視図である。図3は非接触温度センサ70、71の温度検出範囲を示す斜視図である。
【0013】
本実施形態は、車室内のうち、前席側の左右、後席側の左右のそれぞれに位置する空調ゾーン1a、1b、1c、1dをそれぞれ独立して空調制御する車両用空調装置に本発明を適用した一例を示している。
【0014】
車両用空調装置は、図1に示すように、空調ゾーン1a、1bをそれぞれ独立に空調するための前席空調ユニット5と、空調ゾーン1c、1dとをそれぞれ独立に空調するための後席空調ユニット6とから構成されている。前席空調ユニット5は、計器盤7内側に配置されており、後席空調ユニット6は、車室内の最後方に配置されている。
【0015】
前席空調ユニット5は、車室内に送風するための前席ユニットダクト50を備え、この前席ユニットダクト50には、車室内から内気を導入するための内気導入口50a、および、車室外から外気を導入するための外気導入口50bが設けられている。
【0016】
さらに、前席ユニットダクト50には、外気導入口50bおよび内気導入口50aを選択的に開閉する内外気切替ドア51が設けられ、この内外気切替ドア51には、駆動手段としてのサーボモータ51aが連結されている。
【0017】
また、前席ユニットダクト50内であって外気導入口50bおよび内気導入口50aの空気下流側には、車室内に向けて吹き出される空気流を発生させる送風機52が設けられており、送風機52は、羽根車およびこの羽根車を回転させるブロアモータ52aを備えている。
【0018】
さらに、前席ユニットダクト50内であって送風機52の空気下流側には、空気を冷却する空気冷却手段としてのエバポレータ53が設けられており、このエバポレータ53の空気下流側には、空気加熱手段としてのヒータコア540が設けられている。
【0019】
そして、前席ユニットダクト50内であってエバポレータ53の空気下流側には、仕切り板57が設けられており、この仕切り板57は、前席ユニットダクト50内を運転席側通路50cと助手席側通路50dとに仕切っている。
【0020】
ここで、運転席側通路50cのうちヒータコア540の側方には、バイパス通路50eが形成されており、バイパス通路50eは、ヒータコア540に対してエバポレータ53により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0021】
そして、助手席側通路50dのうちヒータコア540の側方には、バイパス通路50fが形成されており、バイパス通路50fは、ヒータコア540に対してエバポレータ53により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0022】
ヒータコア540の空気上流側には、エアミックスドア55b、55cが設けられ、これらと、仕切り板57、運転手席側通路50c、助手席側通路50d、およびヒータコア540とでヒータユニット54を構成している。エアミックスドア55bは、その開度により、運転手席側通路50cを流通する冷風のうち、ヒータコア540を通る量とバイパス通路50eを通る量との比を調整する働きがある。
【0023】
他方、エアミックスドア55cは、その開度により、助手席側通路50dを流通する冷風のうち、ヒータコア540を通る量とバイパス通路50fを通る量との比を調整する働きがある。なお、エアミックスドア55b、55cには、駆動手段としてのサーボモータ55a、55dがそれぞれ連結されており、その開度は、エアコンECU8が制御するサーボモータ55a、55dによって、調整される。
【0024】
また、エバポレータ53は、図示しないコンプレッサ、凝縮器、受液器、減圧器とともに、周知の冷凍サイクルを構成している熱交換器であり、このエバポレータ53は、前席ユニットダクト50内を流れる空気を冷却する。ここで、コンプレッサは、当該自動車のエンジンに電磁クラッチ(図示しない)を介して連結されるものであり、このコンプレッサは、電磁クラッチを断続制御することによって駆動停止制御される。
【0025】
ヒータコア540は、当該自動車のエンジン冷却水(温水)を熱源とする熱交換機であり、このヒータコア540は、エバポレータ53によって冷却された冷風を加熱する。また、前席ユニットダクト50のうちヒータコア540の空気下流側には、運転席側フェイス吹出口FrDrが開口されており、運転席側フェイス吹出口FrDrは、運転席側通路50cから運転席に着座する運転者の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0026】
ここで、前席ユニットダクト50のうちフェイス吹出口FrDrの空気上流部には、フェイス吹出口FrDrを開閉する吹出口切替ドア56cが設けられており、この吹出口切替ドア56cは、駆動手段としてのサーボモータ56aによって、開閉駆動される。
【0027】
また、図には省略されているが、前席ユニットダクト50には、運転席側通路50cから運転者の下半身に空気を吹き出す運転席側フット吹出口、およびフロントウインドシールドの内表面のうち運転席側領域に空気を吹き出す運転席側デフロスタ吹出口が設けられている。
【0028】
そして、運転席側フット吹出口および運転席側デフロスタ吹出口の空気上流部には、それぞれの吹出口を開閉する吹出口切替ドアが設けられており、それぞれの吹出口切替ドアは、サーボモータによって、開閉駆動される。
【0029】
また、前席ユニットダクト50のうちヒータコア540の空気下流側には、助手席側フェイス吹出口FrPaが開口されており、助手席側フェイス吹出口FrPaは、助手席側通路50dから助手席に着座する乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0030】
ここで、前席ユニットダクト50のうちフェイス吹出口FrPaの空気上流部には、フェイス吹出口FrPaを開閉する吹出口切替ドア56bが設けられており、この吹出口切替ドア56bは、駆動手段としてのサーボモータ56dによって、開閉駆動される。
【0031】
また、図には省略されているが、前席ユニットダクト50には、助手席側通路50dから助手席の乗員の下半身に空気を吹き出す助手席側フット吹出口、およびフロントウインドシールドの内表面のうち助手席側領域に空気を吹き出す助手席側デフロスタ吹出口が設けられている。
【0032】
そして、助手席側フット吹出口および助手席側デフロスタ吹出口の空気上流部には、それぞれの吹出口を開閉する吹出口切替ドアが設けられており、それぞれの吹出口切替ドアは、サーボモータによって、開閉駆動される。
【0033】
次に、後席空調ユニット6は、車室内に送風するための後席ユニットダクト60を備えており、この後席ユニットダクト60内には、車室内から内気導入口60aを通して内気のみが導入される。ここで、内気導入口60aの空気下流側には、車室内に向けて吹き出される空気流を発生させる送風機62が設けられており、送風機62は、羽根車およびこの羽根車を回転させるブロアモータ62aを有して構成されている。
【0034】
さらに、後席ユニットダクト60内において送風機62の空気下流側には、空気を冷却する空気冷却手段としてのエバポレータ63が設けられており、このエバポレータ63の空気下流側には、空気を加熱する空気加熱手段としてのヒータコア640が設けられている。
【0035】
そして、後席ユニットダクト60内のうちエバポレータ63の下流部分には仕切り板67が設けられており、この仕切り板67は、後席ユニットダクト60内を運転席側通路60cおよび助手席側通路60dに仕切っている。ここで、運転席側通路60cのうちヒータコア640の側方には、バイパス通路60eが形成されており、バイパス通路60eは、ヒータコア640に対してエバポレータ63により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0036】
そして、助手席側通路60dのうちヒータコア640の側方には、バイパス通路60fが形成されており、バイパス通路60fは、ヒータコア640に対してエバポレータ63により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0037】
ヒータコア640の空気上流側には、エアミックスドア65a、65bが設けられ、これらと、仕切り板67、後席運転手席側通路60c、後席側助手席側通路60d、およびヒータコア640とでヒータユニット64を構成している。エアミックスドア65aは、その開度により、後席運転手席側通路60cを流通する冷風のうち、ヒータコア6400を通る量とバイパス通路60fを通る量との比を調整する働きがある。
【0038】
他方、エアミックスドア65bは、その開度により、後席側助手席側通路60bを流通する冷風のうち、ヒータコア640を通る量とバイパス通路60fを通る量との比を調整する働きがある。なお、エアミックスドア65a、55bには、駆動手段としてのサーボモータ65c、65dがそれぞれ連結され、その開度は、エアコンECU8が制御するサーボモータ65c、65dによって、調整される。
【0039】
ここで、エバポレータ63は、上述のエバポレータ63に対して並列的に配管結合されるものであって、冷凍サイクルの一構成要素をなす熱交換器である。ヒータコア640は、当該自動車のエンジン冷却水を熱源とする熱交換機であり、ヒータコア640は、上述のヒータコア540に対し並列的に接続されて、エバポレータ63によって冷却される冷風を加熱する。
【0040】
また、後席ユニットダクト60のうちヒータコア640の空気下流側には、運転席側フェイス吹出口RrDrが開口されており、運転席側フェイス吹出口RrDrは、運転席側通路60cから後席4の右側、すなわち、運転席の後側に着座する乗員(以下、後部右側乗員とする)の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0041】
ここで、フェイス吹出口RrDrの空気上流部には、フェイス吹出口RrDrを開閉する吹出口切替ドア66aが設けられており、この吹出口切替ドア66aは、駆動手段としてのサーボモータ66cによって、開閉駆動される。そして、図には、省略されているが、後席ユニットダクト60には、運転席側通路60cから後部右側乗員の下半身に空気を吹き出す運転席側フット吹出口が設けられている。
【0042】
また、当該運転席側フット吹出口の空気上流部には、吹出口を開閉する吹出口切替ドアが設けられており、この吹出口切替ドアは、サーボモータによって、開閉駆動される。また、後席ユニットダクト60のうちヒータコア640の空気下流側には、フェイス吹出口RrPaが開口されており、このフェイス吹出口RrPaは、助手席側通路60dから後席の左側、すなわち、助手席の後側に着座する乗員(以下、後部左側乗員とする)の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0043】
ここで、フェイス吹出口RrPaの空気上流部には、フェイス吹出口RrPaを開閉する吹出口切替ドア66bが設けられており、この吹出口切替ドア66bは、駆動手段としてのサーボモータ66dによって、開閉駆動される。
【0044】
また、図には省略されているが、後席ユニットダクト60には、助手席側通路60dから後部左側乗員の下半身に空気を吹き出すフット吹出口が設けられている。このフット吹出口の空気上流部には、吹出口を開閉する吹出口切替ドアが設けられており、この吹出口切替ドアは、サーボモータによって、開閉駆動される。
【0045】
また、車両用空調装置には、前席空調ユニット5および後席空調ユニット6をそれぞれ制御するための空調制御手段である電子制御装置8(以下、エアコンECU8とする)が設けられている。
【0046】
このエアコンECU8には、外気温度センサ81、冷却水温度センサ82、日射量検出手段である日射センサ83を構成し、車室内前方に配置される日射センサ83aおよび車室内後方に配置される日射センサ83b、内気温度センサ84、85、および蒸発器温度センサ86、87により検出された温度情報、日射量情報などが入力されるように接続されている。
【0047】
外気温度センサ81は、車室外温度を検出しその検出温度に応じた外気温度信号TamをエアコンECU8に出力する。冷却水温度センサ82は、エンジンの冷却水の温度を検出しその検出温度に応じた冷却水温度信号TwをエアコンECU8に出力する。
【0048】
車室内前方に配置された日射センサ83aは、フロントウインドウの内側にて車両左右方向の略中央部分に配置された2素子(2D)タイプの日射センサであり、車室内の運転席側空調ゾーン1aに入射される日射量と助手席側空調ゾーン1bに入射される日射量とを検出し、それら検出した各日射量に応じた日射量信号TsDrおよびTsPaをエアコンECU8に出力する。
【0049】
車室内後方に配置される日射センサ83bは、1素子(1D)タイプの日射センサであり、車両後方から車室内に入射される日射量を検出し、その検出した日射量に応じた日射量信号TsRrをエアコンECU8に出力する。
【0050】
内気温度センサ84は、前席側空調領域である空調ゾーン1a、1bの空気温度を検出し、その検出温度に応じた内気温度信号TrFrをエアコンECU8に出力するものであり、内気温度センサ85は、後席側空調領域である空調ゾーン1c、1dの空気温度を検出し、その検出温度に応じた内気温度信号TrRrをエアコンECU8に出力するものである。
【0051】
蒸発器温度センサ86は、エバポレータ53の吹出空気温度を検出しその検出温度に応じた蒸発器吹出温度信号TeFrをエアコンECU8に出力するものであり、蒸発器温度センサ87は、エバポレータ63の吹出空気温度を検出しその検出温度に応じた蒸発器吹出温度信号TeRrをエアコンECU8に出力する。
【0052】
また、エアコンECU8には、乗員が温度設定スイッチ9、10、11、12を操作することによりそれぞれ設定される、空調ゾーン1a、1b、1c、1dのそれぞれの設定温度信号TsetFrDr、TsetFrPa、TsetRrDr、TsetRrPaが入力されるように接続されている。ここで、前席側をFr、後席側をRr、車両右側をDr、車両左側をPaと表し、これらを組み合わせることで各空調ゾーン1a〜1dの座席を表すこととする。
【0053】
なお、温度設定スイッチ9、10、11、12のそれぞれ近傍には、設定温度等の設定内容を表示する設定温度表示手段としてのディスプレイ9a、10a、11a、12aが備えられている。
【0054】
さらに、エアコンECU8には、サイドウインドウシールド、乗員等の複数部位の表面温度を検出する非接触温度センサ70が接続されている。この非接触温度センサ70は、入力される赤外線量の変化に対応した起電力変化を温度変化として検出するサーモパイル型検出素子が用いられたマトリクス型のIRセンサであって、複数の温度検出セル70aにより構成され、車室内の複数箇所における所定範囲の温度情報をそれぞれマトリクス状に検出するものである。
【0055】
図2に示すように、非接触温度センサ70は、運転席側の空調ゾーン1aおよび1cの表面温度を検出するセンサと助手席側の空調ゾーン1bおよび1dの表面温度を検出するセンサとが一つのケースに収納されて車室内前方の略中央部に配置されている。なお、非接触温度センサ70と同様の構成であり、車室内天井の略中央部に配置されている非接触温度センサ71によって、後席側運転席(空調ゾーン1c)の表面温度、および後席側助手席(空調ゾーン1d)の表面温度を検出するように構成してもよい。この場合、非接触温度センサ71は、空調ゾーン1cの表面温度を検出するセンサと空調ゾーン1dの表面温度を検出するセンサとを一つのケースに収納して構成されている。
【0056】
図3に示すように、非接触温度センサ70の検温範囲は、一方のセンサによって、車室内の前席側運転席FrDr側のサイドウインドウシールド21における温度検出範囲25と、空調ゾーン1aに着座する前席側運転席FrDrの乗員の上半身温度を検出可能な温度検出範囲26、27と、空調ゾーン1cに着座する後席運転席側RrDrの乗員の上半身温度を検出可能な温度検出範囲32と、を有している。
【0057】
さらに、他方のセンサによって、非接触温度センサ70の検温範囲は、前席側助手席FrPa側のサイドウインドウシールド22における温度検出範囲28と、空調ゾーン1bに着座する前席側助手席FrPaの乗員の上半身温度を検出可能な温度検出範囲29、30と、空調ゾーン1dに着座する後席助手席側RrPaの乗員の上半身温度を検出可能な温度検出範囲33と、を有している。
【0058】
なお、図中に示す符号31は、前席と後席の中間部、および運転席と助手席との中間部における検出可能な温度検出範囲を示しており、いずれか一方のセンサで検出される。
【0059】
エアコンECU8は、アナログ/デジタル変換器、マイクロコンピュータ等を有して構成される。非接触温度センサ70、71、日射センサ83a、83b、各温度センサ81、82、84、86、87、および温度設定スイッチ9、10、11、12からそれぞれ出力される出力信号は、アナログ/デジタル変換器によりアナログ/デジタル変換されてマイクロコンピュータにそれぞれ入力されるように構成されている。
【0060】
また、マイクロコンピュータは、ROM、RAMなどのメモリ、およびCPU(中央演算装置)等から構成され、イグニッションスイッチがオンされたときに図示しないバッテリから電力供給される。
【0061】
次に、上記構成の車両用空調装置における空調補正の制御を図4ないし図21を用いて説明する。図4は、エアコンECU8による空調補正の制御処理を示すフローチャートである。
【0062】
図4に示すように、空調補正の制御処理フローにおける主なステップは、設定温度の読込みステップ(S100)、各種センサの検出信号の読込みステップ(S200)、非接触温度センサ(IRセンサ)の時定数の算出ステップ(S300)、熱履歴補正量の算出ステップ(S400)、肩寒補正量の算出ステップ(S500)、日射補正量の算出ステップ(S600)、各部の目標吹出温度の算出ステップ(S700)、および空調装置部品の制御実行ステップ(S800)である。そして、イグニッションスイッチ(以下、IGスイッチとする)がONされてバッテリから電源が供給されると、各ステップにおける処理を順に実行し、これらの各ステップを繰り返し反復することで、IGスイッチがONの間、常に空調の補正制御を実行することになる。
【0063】
まず、エアコンECU8は電源が投入されると、空調が開始され、ROM、RAMなどのメモリに記憶された制御プログラムがスタートし、RAMに記憶されるデータなどを初期化して図4に示すフローチャートに従って空調補正の制御を開始する。
【0064】
そして、エアコンECU8は、ステップS100にて、温度設定スイッチ9、10、11、12から、それぞれの設定温度信号TsetFrDr、TsetFrPa、TsetRrDr、TsetRrPaを読み込む。さらに、エアコンECU8は、ステップS200にて、外気温度センサ81から外気温度信号Tam、日射センサ83a、83bから日射量信号TsDr、TsPa、RrTs、内気温度センサ84,85からFrTr、RrTrを読み込む。さらに、これに加えて、非接触温度センサ70や71から複数部位の検出温度信号Tiを読み込む。
【0065】
ここで、検出温度信号Tiは、前席側運転席FrDrの運転者の上半身の表面温度、前席側助手席FrPaの乗員の上半身の表面温度、後席運転席側RrDrの乗員の上半身の表面温度、後席助手席側RrPaの乗員の上半身の表面温度と、これらの温度の他に、前席側運転席FrDr側のサイドウインドウシールドの表面温度、および前席側助手席FrPa側のサイドウインドウシールドの表面温度である。
【0066】
次に、エアコンECU8はステップS300にて非接触温度センサ(以下、IRセンサとする)の時定数を算出する。このIRセンサの時定数の算出は、非接触温度センサ70、71(以下、IRセンサ70、71とする)による検出値に基づいた空調制御に持たせる時間遅れ量を算出するステップであり、この演算処理手順を図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0067】
図5に示すように、エアコンECU8は、ステップS310にて、IRセンサの検出値に応じた補正係数f1を算出する。この算出ステップは、空調開始初期時のIRセンサによる検出値[℃]に対応する補正係数f1を図6に示す制御マップによって算出するものである。この補正係数f1は、IRセンサによる検出値が所定範囲を外れる場合は、この所定範囲内である場合に比べて大きい値に算出されることになる。このようにf1が大きい値に算出されると、IRセンサの時定数が大きくなる方向に働くため、空調制御に持たせる時間遅れが大きくなる。
【0068】
図6に示す制御マップによれば、この所定範囲の一例として20℃以上30℃以下が採用されている。そして、IRセンサ検出値が20℃以上30℃以下である場合にはf1は0と算出され、この範囲を外れる20℃未満および30℃を超える場合には、f1は0より大きい値に算出される。特に、IRセンサ検出値が、20℃未満のときはその値が小さいほどf1が0から30の範囲で大きく算出され、30以上50℃未満のときはその値が大きいほどf1が0から30の範囲で大きく算出される。また、IRセンサ検出値が50℃以上の場合は、f1は30の一定値に算出される。
【0069】
さらに、エアコンECU8は、ステップS320にて、空調開始時からの経過時間に応じた補正係数f2を算出する。この算出ステップは、空調開始時からの経過時間[分]に対応する補正係数f2を図7に示す制御マップによって算出するものである。この補正係数f2は、空調開始時からの経過時間が所定時間を経過するまでは、この所定時間経過後に比べて大きい値に算出されることになる。このようにf2が大きい値に算出されると、IRセンサの時定数が大きくなる方向に働くため、空調制御に持たせる時間遅れが大きくなる。
【0070】
図7に示す制御マップによれば、この所定時間の一例として空調開始時から20分が採用されている。そして、空調開始時からの経過時間が20分以上である場合にはf2は0と算出され、20分未満である場合には、f2は0から1の範囲に算出される。特に、空調開始時からの経過時間が、20分未満のときはその値が小さいほどf2が大きく算出される。
【0071】
そして、エアコンECU8は、算出されたf1およびf2を用いてIRセンサの時定数を算出する(ステップS330)。この時定数は、次の数式5により算出する。
【0072】
時定数=(f1×f2)+30 …(数式5)
なお、数式5の時定数の単位は秒であり、f1またはf2が0の場合には時定数は30秒となり、最大の場合で60秒と算出される。また、この時定数の更新は、4秒に1回実行されることとする。
【0073】
最後に、エアコECU8は、算出された時定数を用いて、実際の制御に用いるIRセンサ値を算出する(ステップS340)。この制御に用いるIRセンサ値は、次の数式6により算出する。
【0074】
制御に用いるIRセンサ値=前回用いたIRセンサ値+(今回のIR検出値−前回用いたIRセンサ値)/R …(数式6)
なお、数式6の単位は[W/m2]である。また、係数Rは時定数によって変化する値であり、時定数が30秒の場合は7.5が採用され、60秒の時は15が採用される。30秒から60秒の間の数値である場合は、7.5から15の間で補間された値が採用されるものとする。
【0075】
このようにステップS310からS330の処理による時定数は、例えばウォームアップ中、クールダウン中などにおけるIRセンサ周囲の雰囲気温度が急激に変化しやすい状況においては大きい値として算出されるので、IRセンサによる温度検出は、雰囲気温度が比較的安定した状態で実行されることになる。また、この雰囲気温度の変化は、空調開始時から一定の時間が経過すると比較的安定した状態になるため、逆に、このときに検出を実行するIRセンサの時定数は、大きい値に変更して応答性を遅らせる必要がないので、例えば1秒程度の小さい値が採用される。
【0076】
次に、エアコンECU8はステップS400にて熱履歴補正量を算出する。この熱履歴補正量は乗員の車両乗り込み時における乗員の着衣温度の熱履歴を補正するものであって、この演算処理手順を図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0077】
図8に示すように、ステップS410において、乗員の乗り込み判定と、乗り込みが発生した場合の乗り込み時からの経過時間の計測を行う。乗り込み判定は、概略、次のように行う。まず、IRセンサ70で検出された乗員の上半身の表面温度が、夏季では約2.5℃以上上がったとき、あるいは冬季では約3℃以上下がったときを、IRセンサ70の検温範囲の各空調ゾーン1a〜1dに乗り込んだものと判定する。
【0078】
ここで、夏季と冬季との判定基準温度の違いは夏季では冬季と比べて、乗員の乗り込み時の温度変化が少ないことを考慮している。また、夏季または冬季の判定は、外気温度Tamが所定温度以上、例えば、10℃以上のときを夏季と判定し、外気温度Tamが所定温度未満のときを冬季と判定する。
【0079】
なお、温度上昇、または下降は、例えば、250ms毎に読み込まれるIRセンサ70で検出された検出値を、それぞれ、例えば、4sec毎に16個のサンプリング値を時間平均するときの前回平均値と今回平均値との差分によって判定される。
【0080】
また、この4sec毎の検温範囲における複数部位の各時間平均値による平均値を、IRセンサ70による各空調ゾーン1a〜1dにおける乗員の表面温度とする。TiFrDr、TiFrPa、TiRrDr、TiRrPaとする。
【0081】
そして、エアコンECU8は、乗員の乗り込みが発生した時点からの経過時間に応じて補正係数fsを算出する(ステップS420)。この補正係数fsは、図9に示す制御マップによって算出するものであり、乗り込み判定直後ではfs=1とし、乗り込み3分に近づくほどfsは直線的に減少し、乗り込み3分以降はfs=0とする。
【0082】
エアコンECU8は、このように算出された補正係数fsを用いて、空調ゾーン1a〜1d毎の熱履歴補正量RirekiFrDr、RirekiFrPa、RirekiRrDr、およびRirekiRrPaを次の数式7ないし数式14により算出する(ステップS430)。ここで、数式7ないし数式10は冬季における熱履歴補正量であり、数式11ないし14は夏季における熱履歴補正量である。
【0083】
冬季乗り込み判定ONのとき、
RirekiFrDr=−12×fs×MIN((TiFrDr−TsetFrDr),0) …(数式7)
RirekiFrPa=−12×fs×MIN((TiFrPa−TsetFrPa),0) …(数式8)
RirekiRrDr=−12×fs×MIN((TiRrDr−TsetRrDr),0) …(数式9)
RirekiRrPa=−12×fs×MIN((TiRrPa−TsetRrPa),0) …(数式10)
夏季乗り込み判定ONのとき、
RirekiFrDr=−3×fs×MAX((TiFrDr−TsetFrDr),0) …(数式11)
RirekiFrPa=−3×fs×MAX((TiFrPa−TsetFrPa),0) …(数式12)
RirekiRrDr=−3×fs×MAX((TiRrDr−TsetRrDr),0) …(数式13)
RirekiRrPa=−3×fs×MAX((TiRrPa−TsetRrPa),0) …(数式14)
ここで、MINは括弧内のパラメータの最小値を採用することであり、MAXは括弧内のパラメータの最大値を採用することである。さらに、TiFrDrは、前席側運転席FrDrの運転者の上半身温度の温度検出範囲26と27をIRセンサ70で検出し、これら二つの検出温度信号Tiの平均値を算出した着衣温度である。
【0084】
また、TiFrPaは、前席側助手席FrPaの運転者の上半身温度の温度検出範囲29と30をIRセンサ70で検出し、これら二つの検出温度信号Tiの平均値を算出した着衣温度である。また、TiRrDrは、後席運転席側RrDrの乗員の上半身温度の温度検出範囲32をIRセンサ70または71で検出した着衣温度である。また、TiRrPaは、後席助手席側RrPaの乗員の上半身温度の温度検出範囲33をIRセンサ70または71で検出した着衣温度である。
【0085】
次に、エアコンECU8は、ステップS500にて肩寒補正量を算出する。この肩寒補正量は乗員がサイドウインドウシールドの温度によって肩部の冷え感じることに対して空調補正するものであり、この演算処理手順を図10に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0086】
図10に示すように、まずエアコンECU8は、各空調ゾーン1a〜1dについて補正量f1〜f4を算出する(ステップS510)。つまり、図11(a)〜図11(d)に示す制御マップにより補正量f1〜f4を算出する。
【0087】
具体的には、空調ゾーン1aの補正量f1(ΔTsetFrDr)[℃]は、TiFrDr−TsetFrDr[℃]との関係から算出する。つまり、TiFrDr−TsetFrDr=−21の場合はf1(ΔTsetFrDr)=0、TiFrDr−TsetFrDr=−25の場合はf1(ΔTsetFrDr)=16とし、TiFrDrとTsetFrDrとの温度差が−25〜−21℃のときにはf1(ΔTsetFrDr)は直線的に補間される。
【0088】
なお、ここで、前席側のTiFrDrは、サイドウインドウシールド21における温度検出範囲25から検出されたサイドウインドウシールド21の表面温度である。また、TiFrPaは、サイドウインドウシールド22における温度検出範囲28から検出されたサイドウインドウシールド22の表面温度である。
【0089】
また、後席側のTiRrDrおよびTiRrPaは、それらの前席側のサイドウインドウシールド21、22の表面温度を用いて算出している。つまり、後席側の空調ゾーン1c、1dでは、前席側のサイドウインドウシールド21、22の表面温度を共用している。
【0090】
次に、エアコンECU8は、図12に示す制御マップを用いて車両の車速に応じた補正係数f6(S)を算出する(ステップS520)。この制御マップによれば、車速が40km/hの場合はf6(S)=0とし、車速が40から130km/hまでは、f6(S)は直線的に増加し、車速が130km/h以上の場合はf6(S)=1とする。車速が速くなると補正係数f6(S)が増加するように補正する。
【0091】
さらに、エアコンECU8は、図13に示す制御マップを用いて内気温度FrTrに応じた補正係数f7(FrTr)を算出する(ステップS530)。この制御マップによれば、内気温度FrTrが20℃〜35℃のときには補正係数f7(FrTr)=1とし、FrTrが20℃から15℃に至る間は直線的に減少し、FrTrが15℃以下になると補正係数f7(FrTr)=0とし、また、FrTrが35℃から40℃に至る間は直線的に減少し、FrTrが40℃以上となると補正係数f7(FrTr)=0とする。
【0092】
そして、このように算出された補正係数f6(S)、補正係数f7(FrTr)、f1(ΔTsetFrDr)、f2(ΔTsetFrPa)、f3(ΔTsetRrDr)、およびf4(ΔTsetRrPa)を用いて各空調ゾーン1a〜1dについて肩寒補正量KataFrDr、KataFrPa、KataRrDr、およびKataRrPaを次の数式15ないし数式18により算出する(ステップS540)。
【0093】
KataFrDr=f1(ΔTsetFrDr)×f6(S)×f7(FrTr)
…(数式15)
KataFrPa=f2(ΔTsetFrPa)×f6(S)×f7(FrTr)
…(数式16)
KataRrDr=f3(ΔTsetRrDr)×f6(S)×f7(FrTr)
…(数式17)
KataRrPa=f4(ΔTsetRrPa)×f6(S)×f7(FrTr)
…(数式18)
【0094】
次に、エアコンECU8は、ステップS600にて日射補正量を算出する。この日射補正量は、車室内への前方からの日射、側方からの日射、および後方からの日射の影響を空調制御に加味し、日射補正量として目標吹出温度に反映させるものである。この日射補正量の主な演算手順は図14のフローチャートに示すとおりであり、最終的に得られる空調ゾーン1a〜1dのそれぞれにおける日射補正量は、次の数式19〜数式22により演算されることになる(ステップS640)。
【0095】
SunFrDr=MIN(前方日射による補正量,側方日射による補正量,後方日射による補正量) …(数式19)
SunFrPa=MIN(前方日射による補正量,側方日射による補正量,後方日射による補正量) …(数式20)
SunRrDr=MIN(前方日射による補正量,側方日射による補正量,後方日射による補正量) …(数式21)
SunRrPa=MIN(前方日射による補正量,側方日射による補正量,後方日射による補正量) …(数式22)
なお、MINは括弧内の各日射補正量の中から最小値を採用することを意味している。
【0096】
以下に最終的な各部の日射補正量を算出するための各ステップについて図14〜図21を用いて説明する。まず、エアコンECU8は、数式19〜数式22の演算をするために必要となる各空調ゾーン1a〜1dについて前方日射による日射補正量を算出する(ステップS610)。各空調ゾーン1a〜1dの前方日射による日射補正量は、次に数式23〜数式26を演算して算出される。
【0097】
空調ゾーン1a:MAX(f8(ΔTsetFrDr),f28(TsFrDr))×f35(FrTr) …(数式23)
空調ゾーン1b:MAX(f9(ΔTsetFrPa),f29(TsFrPa))×f35(FrTr) …(数式24)
空調ゾーン1c:MAX(f10(ΔTsetRrDr),f30(TsFrDr))×f35(FrTr) …(数式25)
空調ゾーン1d:MAX(f11(ΔTsetRrPa),f31(TsFrPa))×f35(FrTr) …(数式26)
上記数式23〜数式26を演算するために用いる制御マップは、図15(a)〜(d)、図16(a)〜(d)、図17、図18(a)〜(d)、および図19(a)〜(d)に示したものであり、それぞれは、図14のステップS610(前方日射による各部の日射補正量算出)で用いる制御マップである。以下、ステップS610〜S640の各ステップを、空調ゾーン1aにおける日射補正量の演算手順を代表して説明する。
【0098】
エアコンECU8は、空調ゾーン1aの前方日射による日射補正量については、数式23に示すように、図15(a)に示す補正係数f8(ΔTsetFrDr)と、図18(a)に示す補正係数f28(TsFrDr)とを比較し、日射補正量が大きい方の補正係数f28もしくはf8を選択し、その大きい方の補正係数f28もしくはf8に×f35(FrTr)を積算する。
【0099】
ここで、補正係数f8(ΔTsetFrDr)は、前方からの日射の影響度合いを乗員の表面温度、前方から照射する日射量に基づいて算出したものであり、図15(a)の制御マップに示すTiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrの式から算出する値に応じて求められる。
【0100】
この数式のうち、TiFrDrは、前席側運転席FrDrに着座する乗員の着衣温度であって、IRセンサ70で検出された検出温度信号Tiのうち、前席側運転席FrDrの乗員が着座する温度検出範囲26、27から検出された二つの検出温度信号Tiから求めた平均温度である。
【0101】
このf55(TsFrDr)は、図16(a)に示す(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の数式から算出する値に応じて求められる補正係数である。ここで、TsFrDr[W/m2]は、車両前方に配設された日射センサ83aで検出された日射量信号TsDr、TsPaのうち、運転席側の日射量TsDrである。また、f65(TsFrDr)は、図19(a)に示す日射量TsDr比=TsFrDr/(TsFrDr+TsFrPa)の数式から算出する値に応じて求められる補正係数である。
【0102】
この補正係数f65(TsFrDr)は、日射センサ83aで検出された日射量信号TsDr、TsPaに対する運転席側の日射量TsDr比に応じて0〜1.0の値で算出される補正係数である。つまり、運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときに補正係数f65(TsFrDr)=0、日射量TsDr比が0.53以上のときに補正係数f65(TsFrDr)=1.0となるように設定している。
【0103】
そして、日射量TsDr比が0.5以上から0.53未満のときは、補正係数f65(TsFrDr)が0から1に直線的に増加するように設定されている。ここで、(TsFrDr+TsFrPa)が0となる日射がない場合には、日射補正誤動作を防止するためにTsFrDr/(TsFrDr+TsFrPa)=0とし、日射補正を行なわないように設定している。
【0104】
つまり、運転席側の日射量TsDr比が0.5以上であれば、0.53まで補正係数f65(TsFrDr)が0から1に直線的に増加し、0.53以上ならば補正係数f65(TsFrDr)は1である。また、運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のとき、すなわち、運転席側の日射量TsDr比よりも助手席Pa側の日射量TsPa比が大きいときは、補正係数f65(TsFrDr)は0である。
【0105】
言い換えれば、運転席側の日射量TsDr比が0.5未満であれば、運転席側の日射がないと判断され、このときのf65(TsFrDr)を0とすることにより、後述する図21(a)のf85(TsFrDr)が0と決定されるので、日射がないと判断された運転席側の車室内における空調補正量を、逆に日射があると判断したその他の空調補正量に比べて小さくする制御が行われる。
【0106】
また、横軸の(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)が5未満である場合には、その値が0に近づくほど図21(a)のf85(TsFrDr)は1.0から0に近づくように小さい値に決定されるので、後述する数式31のf45(TsFrDr)に与える影響が小さくなり、ひいては数式19の日射補正量SunFrDrを小さくすることになる。
【0107】
これは換言すれば、エアコンECU8が、日射センサ83a、83bによって検出された日射量に基づいて日射がないと判断した場合には、当該検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくすることである。
【0108】
そして、図19(a)の制御マップで算出した補正係数f65(TsFrDr)と、日射センサ83aで検出された日射量信号TsDrから求めた日射量[W/m2]と、を図16(a)に示す(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の数式に代入してこの数式の値を算出する。そして、この式の値に応じて補正係数f55(TsFrDr)を算出する。
【0109】
エアコンECU8は、例えば、図16(a)において、その横軸である(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)が3.3より大きいときに、空調ゾーン1aに着座する乗員に対して日射があると判断し、このとき縦軸であるf55(TsFrDr)は0より大きい正の値となる。この値は、図15(a)の横軸のTiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrに用いられることにより、エアコンECU8は、実際に検出された前席側運転席FrDrの乗員の着衣温度であるTiFrDrをより高い温度に補正した乗員の温度補正量を決定する。
【0110】
一方、エアコンECU8が日射がないと判断した場合は、例えば、図16(a)において、その横軸の(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)が3.3以下のときであり、このとき縦軸であるf55(TsFrDr)は0より小さい負の値となる。この値は、図15(a)の横軸のTiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrに用いられることにより、エアコンECU8は、実際に検出された前席側運転席FrDrの乗員の着衣温度であるTiFrDrをより低い温度に補正した乗員の温度補正量を決定する。
【0111】
このようにエアコンECU8は、前席側運転席FrDrの乗員が着座する空調ゾーン1aに日射があると判断したときには、図15(a)の補正係数f8(ΔTsetFrDr)がマイナスの方向となるように補正して、後述する目標吹出温度を低くする方向に寄与することになる。これにより、日射があるときで乗員に日射が当たっているにもかかわらず、汗の蒸発などで乗員の表面温度が比較的低く検出されてしまう状態を検出することができ、実際の熱負荷と空調温度との格差を低減した十分な空調補正量を確保することができる。
【0112】
また、ここでは、例えば、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときは、補正係数f55(TsFrDr)は−3に設定され、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の値が16.7であれば、補正係数f55(TsFrDr)は7.5となるように設定されている。
【0113】
また、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の値が3.3であれば、補正係数f55(TsFrDr)が0に設定され、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の値が8.3であれば、補正係数f55(TsFrDr)が4となるように設定されている。
【0114】
補正係数f55(TsFrDr)は、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときは−3であって、運転席側の日射量TsDr比が0.5以上のときは日射量TsDrの数値に応じて−3から最大7.5に増加する補正係数である。
【0115】
そして、エアコンECU8は、図15(a)の制御マップに示すTiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrの数式に、図16(a)で算出された補正係数f55(TsFrDr)、IRセンサ70で検出された二つの検出温度信号Tiから求めた平均値、および空調ゾーン1aにおける設定温度信号TsetFrDrから求めた設定温度を代入して、この式の値を算出する。
【0116】
そして、この式の値に対応する補正係数f8(ΔTsetFrDr)を図15(a)の制御マップにより算出する。この制御マップによれば、例えば、TiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrが7.2の場合は補正係数f8(ΔTsetFrDr)が−14℃に設定され、TiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrが1.5であれば補正係数f8(ΔTsetFrDr)が0℃に設定され、TiFrDr+f55(TsFrDr)−TsetFrDrが1.5から7.2に増加すると補正係数f8(ΔTsetFrDr)が0から−14℃に直線的に下降するように設定される。
【0117】
言い換えると、前方からの日射の影響度合いが大きければ、TiFrDr+f55(TsFrDr)が大きくなることで補正係数f8(ΔTsetFrDr)が0から最小の−14℃となるように設定されている。つまり、日射補正量が大きいときは補正係数f8が−14℃に至るまで小さくなる。
【0118】
また、例えば、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満の場合は、f55(TsFrDr)が−3であるため、TiFrDrが設定温度TsetFrDrに対して4.5以上にならないと補正係数f8は0以上のマイナス側の補正係数とはならない。つまり、前方からの日射の影響度合いが小さいときは補正係数f8が最小の0℃となる。
【0119】
これにより、補正係数f8(ΔTsetFrDr)は、IRセンサ70で検出された検出温度と日射センサ83aで検出された日射量信号TsDrから求めた日射量[W/m2]とに基づいて車両前方から照射する日射の補正量を算出することができる。
【0120】
一方、数式23のf28(TsFrDr)は、前方からの日射の影響度合いを前方から照射する日射量に基づいて算出したものであり、図16(a)に示すf55(TsFrDr)を算出するときに用いた(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の式から算出する値に応じて求められる補正係数である。
【0121】
ここでは、例えば、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の式から算出される値が11.7であれば、補正係数f28(TsFrDr)が−20℃となるように設定され、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の式から算出される値が5.8であれば、補正係数f28(TsFrDr)が−10℃となるように設定される。また、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の式から算出される値が5.8から11.7に増加すれば、補正係数f28(TsFrDr)が−10から−20℃に直線的に下降するように設定されている。
【0122】
言い換えると、前方からの日射の影響度合いが大きければ、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)が−10から最小の−20℃となるように設定されている。つまり、日射補正量が大きいときは補正係数f8が最小の−20℃に至るまで小さくなる。
【0123】
また、例えば、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときは、補正係数f28(TsFrDr)は−10℃となる。つまり、日射補正量が小さいときは−10℃である。
【0124】
エアコンECU8は、この補正係数f28(TsFrDr)と上述した補正係数f8(ΔTsetFrDr)とを比較し、これらのうち、日射補正量が大きい方の補正係数を選択する。
【0125】
そして、エアコンECU8は、数式23に示すように、日射補正量が大きい側の補正係数に補正係数f35(FrTr)を積算する。ここで、f35(FrTr)は、図17に示す制御マップによって、内気温度センサ84で検出された内気温度信号FrTrから求めた内気温度に応じて求められる補正係数である。
【0126】
この場合には、図17に示すように、サンシェード(図示せず)の開閉状態に応じて補正係数f35(FrTr)は異なる。フロントウインドウの一部をサンシェードで覆うときがサンシェード閉時であり、その一部の覆いを取り除いたときがサンシェード開時であり、サンシェード開時の方の補正係数f35(FrTr)を大きく設定している。
【0127】
ここでは、例えば、内気温度センサ84で検出された内気温度信号FrTrから求めた内気温度が15℃以下であれば、補正係数f35(FrTr)は0に設定され、内気温度が20℃から35℃の範囲であれば、サンシェード開時における補正係数f35(FrTr)は1、サンシェード閉時における補正係数f35(FrTr)は0.5に設定されている。
【0128】
エアコンECU8は、それぞれ算出した補正係数f8(ΔTsetFrDr)と、補正係数f28(TsFrDr)とを比較し、日射補正量が大きい方の補正係数に補正係数f35(FrTr)を掛けることで前方日射による日射補正量を求めることができる(以上ステップS610)。
【0129】
次に、エアコンECU8は、数式19〜数式22の演算をするために必要となる各空調ゾーン1a〜1dについて側方日射による日射補正量を算出する(ステップS620)。各空調ゾーン1a〜1dの側方日射による日射補正量は、次に数式27〜数式30を演算して算出される。
【0130】
空調ゾーン1a:MAX(f45(TsFrDr),f28(TsFrDr))×f35(FrTr) …(数式27)
空調ゾーン1b:MAX(f46(TsFrPa),f29(TsFrPa))×f35(FrTr) …(数式28)
空調ゾーン1c:MAX(f47(TsFrDr),f30(TsFrDr))×f35(FrTr) …(数式29)
空調ゾーン1d:MAX(f48(TsFrPa),f31(TsFrPa))×f35(FrTr) …(数式30)
上記数式27〜数式30を演算するために用いる制御マップは、図17、図18(a)〜(d)、図19(a)〜(d)、図20(a)〜(d)、および図21(a)〜(d)に示したものであり、それぞれは、図14のステップS620(側方日射による各部の日射補正量算出)で用いる制御マップである。
【0131】
エアコンECU8は、数式27に示すように、補正係数f45(TsFrDr)と、補正係数f28(TsFrDr)とを比較し、日射補正量が大きい方の補正係数に補正係数f35(FrTr)を掛けることで側方日射による日射補正量を算出する。
【0132】
ここで、補正係数f45(TsFrDr)は、側方からの日射の影響度合いを乗員の表面温度、サイドウインドウシールドの表面温度、側方から照射する日射量に基づいて算出したものであり、次の数式31により算出する。
【0133】
f45(TsFrDr)=f75(ΔTsetFrDr)×f85(TsFrDr)
…(数式31)
また同様に、f46(TsFrPa)=f76(ΔTsetFrPa)×f86(TsFrPa) …(数式32)
f48(TsFrPa)=f77(ΔTsetRrDr)×f87(TsFrDr)
…(数式33)
f48(TsFrPa)=f78(ΔTsetRrPa)×f88(TsFrPa)
…(数式34)である。
【0134】
数式31に示すように、f45(TsFrDr)は、図20(a)の制御マップにより求めるf75(ΔTsetFrDr)と、図21(a)の制御マップにより求めるf85(TsFrDr)とを積算して算出する。この補正係数f75(ΔTsetFrDr)は、図20(a)の横軸のMAX(((TiFrDr)−TsetFrDr),0)−MAX(((TiFrPa)−TsetFrPa),0)の式から算出する値に応じて求められる補正係数である。このようにエアコンECU8は、IRセンサ70、71によって検出された運転席側や助手席側の窓ガラスの表面温度を用いて空調補正量を決定するものである。
【0135】
ここで、(TiFrDr)は、前席側運転席に着座する乗員の着衣温度と前席側運転席のサイドウインドウシールド温度との平均温度であり、IRセンサ70で検出された検出温度信号Tiのうち、空調ゾーン1aにおける温度検出範囲25、26、27から検出された三つの検出温度信号Tiから求めた平均温度である。
【0136】
同様に、(TiFrPa)は、前席側助手席に着座する乗員の着衣温度と前席側助手席のサイドウインドウシールド温度との平均温度であり、IRセンサ70で検出された検出温度信号Tiのうち、空調ゾーン1bにおける温度検出範囲28、29、30から検出された三つの検出温度信号Tiから求めた平均温度である。
【0137】
ここでは、例えば、図20(a)の横軸の値が、20℃以上の場合は補正係数f75(ΔTsetFrDr)が−20℃に設定され、10℃以下の場合は補正係数f75(ΔTsetFrDr)が0℃に設定される。また、図20(a)の横軸の値が10から20℃の範囲にある場合は、20℃に近づくほど補正係数f75(ΔTsetFrDr)が0〜最小の−20℃に直線的に下降するように設定されている。
【0138】
言い換えると、側方からの日射の影響度合いを空調ゾーン1aと空調ゾーン1bとで比較して、空調ゾーン1a側が空調ゾーン1b側よりも10℃以上大きければf75(ΔTsetFrDr)が0から−20℃の範囲となるように設定されている。
【0139】
また、例えば、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときは、補正係数f75が0℃となる。つまり、運転席側の日射補正量が小さいときはf75は0℃となる。
【0140】
また、図21(a)の補正係数f85(TsFrDr)は、図18(a)に示すf28(TsFrDr)および図16(a)に示すf55(TsFrDr)を算出するときに用いた(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)の式から算出される値に応じて求められる補正係数である。
【0141】
ここでは、例えば、図21(a)の横軸が5以上であれば、補正係数f85(TsFrDr)は1となるように設定され、0であれば、補正係数f85(TsFrDr)は0に設定され、が0から5までの範囲で増加すれば、補正係数f85(TsFrDr)は0から1まで直線的に増加するように設定されている。
【0142】
言い換えると、側方からの日射の影響度合いが大きければ、(TsFrDr[W/m2]/60)×f65(TsFrDr)が増加して補正係数f85(TsFrDr)が0から1の範囲の値になる。つまり、空調ゾーン1aにおける日射補正量が大きいときは補正係数f85が最大1に至るまで大きくなる。
【0143】
また、例えば、日射がない場合もしくは運転席側の日射量TsDr比が0.5未満のときは補正係数f85が0である。つまり、空調ゾーン1aにおける日射補正量が小さいときは最小の0である。
【0144】
エアコンECU8は、それぞれ算出した補正係数f75(ΔTsetFrDr)とf85(TsFrDr)とを積算することでf45(TsFrDr)を算出する。言い換えれば、空調ゾーン1a側の検出温度が大きいときは側方からの日射の影響度合いを受けていることでf45(TsFrDr)が最小の−20℃となるように設定されている。
【0145】
そして、エアコンECU8は、このf45(TsFrDr)と、前述した補正係数f28(TsFrDr)とを比較し、日射補正量が大きい方の補正係数に補正係数f35(FrTr)を掛けることで側方日射による日射補正量を求める。
【0146】
次に、エアコンECU8は、数式19〜数式22の演算をするために必要となる各空調ゾーン1a〜1dについて後方日射による日射補正量を算出する(ステップS630)。各空調ゾーン1a〜1dの後方日射による日射補正量は、次に数式35〜数式38を演算して算出される。
【0147】
空調ゾーン1a:−0.7×RrTs[W/m2]/60 …(数式35)
空調ゾーン1b:−0.7×RrTs[W/m2]/60 …(数式36)
空調ゾーン1c:−1.5×RrTs[W/m2]/60 …(数式37)
空調ゾーン1d:−1.5×RrTs[W/m2]/60 …(数式38)
エアコンECU8は、数式35に示すように、後方日射による日射補正量を算出するために、車両後方に配設された日射センサ83bで検出された日射量信号TsRrから求めた日射量TsRr[W/m2]を用いる。言い換えれば、後方からの日射の影響度が大きければ、−0.7×RrTs[W/m2]/60から算出した補正係数のマイナス値が最大となる。
【0148】
次に、エアコンECU8は、上述した数式19〜数式22に従い、空調ゾーン1a〜1d毎にそれぞれ算出した前方日射による補正量、側方日射による補正量、側方日射による補正量のうち、最小値を各日射補正量SunFrDr、SunFrPa、SunRrDr、およびSunRrPaとして算出する(ステップS640)。
【0149】
空調ゾーン1bにおける日射補正量SunFrPaは、その演算手順の詳細を省略するが、これまで述べてきた空調ゾーン1aにおける日射補正量SunFrDrと同一の考え方および同様の手順で、前方日射による補正量、側方日射による補正量、後方日射による補正量をそれぞれ算出し、数式20に従って算出する。なお、演算に使用する制御マップは、図15(b)、図16(b)、図17、図18(b)、図19(b)、図20(b)、および図21(b)である。
【0150】
また、空調ゾーン1cにおける日射補正量SunRrDrについても、その演算手順の詳細を省略するが、これまで述べてきた空調ゾーン1aにおける日射補正量SunFrDrと同一の考え方および同様の手順で、前方日射による補正量、側方日射による補正量、後方日射による補正量をそれぞれ算出し、数式21に従って算出する。なお、演算に使用する制御マップは、図15(c)、図16(c)、図17、図18(c)、図19(c)、図20(c)、および図21(c)である。
【0151】
また、空調ゾーン1dにおける日射補正量SunRrPaについても、その演算手順の詳細を省略するが、これまで述べてきた空調ゾーン1aにおける日射補正量SunFrDrと同一の考え方および同様の手順で、前方日射による補正量、側方日射による補正量、後方日射による補正量をそれぞれ算出し、数式22に従って算出する。なお、演算に使用する制御マップは、図15(d)、図16(d)、図17、図18(d)、図19(d)、図20(d)、および図21(d)である。
【0152】
ただし、空調ゾーン1cおよび1dでは、数式37および数式38に示すように、それぞれ後方日射による補正量において、係数が0.7から1.5に設定されている。つまり、空調ゾーン1c、1dに照射する日射の影響度合いを大きくするように設定している。
【0153】
次に、エアコンECU8は、図4のメイン制御フローに示すように、S400で算出された熱履歴補正量、S500で算出された肩寒補正量、およびS600で算出された日射補正量を用いて、各空調ゾーン1a〜1dについて目標吹出温度TAOFrDr、TAOFrPa、TAORrDr、およびTAORrPaを次の数式1から数式4により算出する(ステップS700)。
【0154】
ここで、これらの目標吹出温度TAOFrDr、TAOFrPa、TAORrDr、およびTAORrPaは、熱履歴補正量、熱履歴補正量および日射補正量を考慮した空調補正として算出される。
【0155】
TAOFrDr=Kset×TsetFrDr−Kr×FrTr−Kam×Tamdisp+RirekiFrDr+KataFrDr+SunFrDr−CF …(数式1)
TAOFrPa=Kset×TsetFrPa−Kr×FrTr−Kam×Tamdisp+RirekiFrPa+KataFrPa+SunFrPa−CF …(数式2)
TAORrDr=Kset×TsetRrDr−Kr×RrTr−Kam×Tamdisp+RirekiRrDr+KataRrDr+SunRrDr−CF …(数式3)
TAORrPa=Kset×TsetRrPa−Kr×RrTr−Kam×Tamdisp+RirekiRrPa+KataRrPa+SunRrPa−CF …(数式4)
ここで、Ksetは設定温度ゲインであり、例えば、7.0である。Krは内気温ゲインであり、例えば、3.0である。Kamは外気温度ゲインであり、例えば、1.1である。CFは全体に掛かる補正定数であり、例えば、41.5である。
【0156】
次に、エアコンECU8は、このように算出された各空調ゾーン1a〜1dについて目標吹出温度TAOFrDr、TAOFrPa、TAORrDr、およびTAORrPaに基づいて、以下に示す空調装置の各構成部品を制御することにより車両用空調装置の制御を実行する(ステップS800)。
【0157】
具体的には、TAOFrDrとTAOFrPaとの平均値、およびTAORrDrとTAORrPaとの平均値に基づいてブロアモータ52a、62aに印加する電圧を決定する。そして、TAOFrDr、TAOFrPa、TAORrDr、およびTAORrPaに基づいて内外気切替ドア51の開閉制御による内外気切替モードの決定、空調ゾーン1a〜1d毎の吹出口モード(フェイスモード、バイレベルモード、フットモードなど)の決定、およびエアミックスドア55b、55c、65a、および65bの目標開度の決定を行う。
【0158】
さらに、エアコンECU8は、決定されたブロアモータ52a、62aの印加電圧を制御する信号をブロアモータ52a、62aに出力して、送風機52、62の作動を制御する。これと同時に、内外気切替ドア51、吹出口切替ドア56b、56c、66a、66b、エアミックスドア55b、55c、65a、65bの目標開度のそれぞれを制御する信号をサーボモータ51a、56a、56d、66c、66d、55a、55d、65c、65dなどに出力して、各ドアの作動を制御する。
【0159】
そして、上記のようにして、空調補正に伴う車両用空調装置の制御が実行した後は、再度ステップS100に戻り、さらに、継続的にステップS100ないしS800の制御処理を実行することで日射の影響度合いを考慮した日射補正量SunFrDr、SunFrPa、SunRrDr、およびSunRrPaに基づく空調補正による空調制御を行うことができる。
【0160】
このように本実施形態の車両用空調装置は、車室内の複数部位の表面温度を検出するIRセンサ70、71と、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ83a、83bと、IRセンサ70、71によって検出された表面温度に基づいて車室内の空調補正量を算出して空調制御を行うエアコンECU8と、を備え、エアコンECU8は、日射センサ83a、83bによって検出された日射量に基づいて日射がないと判断した場合には、当該検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくする。
【0161】
この制御によれば、サイドウインドウシールドを開放したときなどに起こる外乱によってIRセンサの検出値が変化してもその影響を受けない空調制御が実行できる。
【0162】
また、エアコンECU8は、サイドウインドウシールドや乗員などの表面温度を検出したり、車室内の両側における日射量を検出したりすることにより、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断する。そして、車室内のいずれか一方側に日射がないと判断した場合は、日射がないと判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量に比べて小さくすることが好ましい。
【0163】
この制御を採用した場合には、日射の有無に加えて、日射の方向を考慮して空調補正量を決定することによって、より快適性の高い空調を実行できる。
【0164】
また、エアコンECU8は、IRセンサ70、71によって窓ガラスの温度を検出し、この表面温度を用いて空調補正量を決定することが好ましい。なお、ここでいう窓ガラスは、車室内両側のサイドウインドウシールド、フロントガラス、リアガラスなどである。この制御を採用した場合には、低仰角の日射による影響を検出できるとともに、窓ガラスの温度は乗員の着衣などと比較して日射方向の変化に対する追従が遅いため、さらに、快適性の高い空調を実行できる。
【0165】
また、エアコンECU8は、IRセンサ70、71が車室内両側のサイドウインドウシールド、フロントガラス、リアガラスなどの窓ガラスの温度を検出することにより、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断することが好ましい。この制御を採用した場合には、窓ガラスの温度は乗員の着衣などと比較して日射方向の変化に対する追従が遅いため、日射の方向を考慮した空調補正量の決定を乗員に対してより快適性の高いものにできる。
【0166】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0167】
上記実施形態の非接触温度センサ70は、車室内の各空調ゾーン1a、1c、1b、1dに着座する各乗員の表面温度をそれぞれ検出するように、複数個設けることとしてもよい。
【0168】
上記実施形態においては、車室内における前後方向の空調ゾーンとして、前席空調ゾーンと後席空調ゾーンの2分割した空調ゾーンを説明しているが、本発明をいわゆる3列シートを有する車両に適用する場合には、前後方向の空調ゾーンを3分割してそれぞれのゾーンが空調制御可能となる構成を採用する。
【0169】
また、上記実施形態では、車両の前方、左右側方の日射に対する日射補正量を算出するために日射センサ83aまたは非接触温度センサ70を車室内天井の前方中央部に配置し、車両の後方の日射に対する日射補正量を算出するために日射センサ83bを車室内後方に配置している。しかし、この構成の他に、車両の後方、左右側方の日射に対する日射補正量を算出するために非接触温度センサ71を車室内の天井中央部に配置する構成としてもよい。
【0170】
また、車両の左右側方の日射に対する日射補正量を算出するために非接触温度センサ70を車室内天井中央部もしくは車室内前方に配置し、車両の前方、後方の日射に対する日射補正量を算出するために日射センサ83a、83bを車室内前方および車室内後方に配置する構成としてもよい。
【0171】
また、上記実施形態の非接触温度センサ70は、運転席側の空調ゾーン1a、1cの表面温度を検出するセンサと助手席側の空調ゾーン1a、1dの表面温度を検出するセンサとを一つのケースに収納して車室内前方中央部に配置したものであるが、これに限らず、運転席側の空調ゾーン1a、1cの表面温度を検出するセンサと助手席側の空調ゾーン1a、1dの表面温度を検出するセンサとを二つに分けて各乗員の窓側に配置する構成としてもよい。
【0172】
また、上記実施形態において車室内後方に配置する非接触温度センサ71は、運転席側の空調ゾーン1a、1cの表面温度を検出するセンサと助手席側の空調ゾーン1a、1dの表面温度を検出するセンサとを一つのケースに収納して車室内前方中央部に配置した2Dタイプのセンサによって構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】本発明の第1、第2、および第3実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図2】第1、第2、および第3実施形態における日射センサおよび非接触温度センサの配置を示した斜視図である。
【図3】第1、第2、および第3実施形態における非接触温度センサによる温度検出範囲を示した斜視図である。
【図4】第1、第2、および第3実施形態における空調補正の制御処理を示したフローチャートである。
【図5】図4におけるIRセンサの時定数を算出するステップの処理を示したフローチャートである。
【図6】図5のステップS310で用いる制御マップである。
【図7】図5のステップS320で用いる制御マップである。
【図8】図4における熱履歴補正量算出ステップの処理を示したフローチャートである。
【図9】図8のステップS420で補正係数fsを算出するための制御マップである。
【図10】図5における肩寒歴補正量算出ステップの処理を示したフローチャートである。
【図11】(a)〜(b)のそれぞれは、図10のステップS510で各サイドウィンドウの表面温度に応じた補正係数を算出するための制御マップである。
【図12】図10のステップS520で車速に応じた補正係数f6(S)を算出するための制御マップである。
【図13】図10のステップS530で内気温度に応じた補正係数f7(FrTr)を算出するための制御マップである。
【図14】図5における日射補正量算出ステップの処理を示したフローチャートである。
【図15】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS610(前方日射による各部の日射補正量算出)で用いる制御マップである。
【図16】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS610で用いる制御マップである。
【図17】図14のステップS610およびステップS620(各部における側方日射による日射補正量算出)で用いる制御マップである。
【図18】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS610およびステップS620で用いる制御マップである。
【図19】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS610およびステップS620で用いる制御マップである。
【図20】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS620で用いる制御マップである。
【図21】(a)〜(d)のそれぞれは、図14のステップS620で用いる制御マップである。
【符号の説明】
【0174】
8 エアコンECU(空調制御手段)
70、71 非接触温度センサ、IRセンサ
83、83a、83b 日射センサ(日射量検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の複数部位の表面温度を検出する非接触温度センサ(70、71)と、
前記車室内に照射される日射量を検出する日射量検出手段(83)と、
前記非接触温度センサ(70、71)によって検出された表面温度に基づいて車室内の空調補正量を算出して空調制御を行う空調制御手段(8)と、を備え、
前記空調制御手段(8)は、前記検出された日射量に基づいて日射がないと判断した場合には、前記検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくすることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記空調制御手段(8)は、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断し、車室内のいずれか一方側に日射がないと判断した場合は、日射がないと判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量に比べて小さくすることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調制御手段(8)は、前記非接触温度センサ(70、71)によって検出された表面温度は窓ガラスの温度であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調制御手段(8)は、前記非接触温度センサ(70、71)が車両の窓ガラスの温度を検出することにより、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項1】
車室内の複数部位の表面温度を検出する非接触温度センサ(70、71)と、
前記車室内に照射される日射量を検出する日射量検出手段(83)と、
前記非接触温度センサ(70、71)によって検出された表面温度に基づいて車室内の空調補正量を算出して空調制御を行う空調制御手段(8)と、を備え、
前記空調制御手段(8)は、前記検出された日射量に基づいて日射がないと判断した場合には、前記検出された表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した場合の空調補正量に比べて小さくすることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記空調制御手段(8)は、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断し、車室内のいずれか一方側に日射がないと判断した場合は、日射がないと判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量を、日射があると判断した側の車室内における表面温度に基づいた空調補正量に比べて小さくすることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調制御手段(8)は、前記非接触温度センサ(70、71)によって検出された表面温度は窓ガラスの温度であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調制御手段(8)は、前記非接触温度センサ(70、71)が車両の窓ガラスの温度を検出することにより、車室内のいずれか一方側における日射の有無を判断することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2007−302021(P2007−302021A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129457(P2006−129457)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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