車両用空調装置
【課題】除霜運転による乗員の暖房感の低下を抑制する。
【解決手段】ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクルと、内燃機関の冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段と、室外熱交換器が着霜した場合に、室内熱交換器にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクルを作動させて室外熱交換器の除霜制御を行う制御手段とを備える。そして、制御手段は、室外熱交換器が着霜した場合に、内燃機関に対して作動要求信号を出力することで、内燃機関の冷却水を熱源とする暖房を行う。これによれば、車両走行の駆動源として内燃機関を作動させていない場合であっても、除霜制御時の暖房用の熱源を確保することができるので、除霜制御時に乗員の暖房感が低下することを抑制できる。
【解決手段】ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクルと、内燃機関の冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段と、室外熱交換器が着霜した場合に、室内熱交換器にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクルを作動させて室外熱交換器の除霜制御を行う制御手段とを備える。そして、制御手段は、室外熱交換器が着霜した場合に、内燃機関に対して作動要求信号を出力することで、内燃機関の冷却水を熱源とする暖房を行う。これによれば、車両走行の駆動源として内燃機関を作動させていない場合であっても、除霜制御時の暖房用の熱源を確保することができるので、除霜制御時に乗員の暖房感が低下することを抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプサイクルを備える車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプサイクルを有する車両用空調装置では、ヒートポンプサイクルの室外熱交換器が着霜した場合、ヒートポンプサイクルをクーラサイクルに切り替えて、室外熱交換器の除霜を行っている。
【0003】
また、特許文献1には、ヒートポンプサイクルと、エンジン冷却水を熱源として車室内への送風空気を加熱するヒータコアとを有する車両用空調装置が記載されている。そして、この車両用空調装置では、除霜運転中においても十分な暖房感を確保するため、ヒートポンプサイクルの室外熱交換器が着霜した場合であって、エンジン冷却水が所定温度よりも高いときに、ヒートポンプサイクルをクーラサイクルに切り替えて、室外熱交換器の除霜を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−174474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前者の車両用空調装置において、ヒートポンプサイクルの室外熱交換器が着霜した場合に、ヒートポンプサイクルをクーラサイクルに切り替えて、室外熱交換器の除霜を行う際、除霜時間が長いと、乗員の暖房感が低下してしまうという問題がある。
【0006】
また、後者の特許文献1に記載の車両用空調装置は、ハイブリッド車両の電気モータ走行時や、アイドリングストップ車両の停車時のように、車両走行の駆動源としてエンジン作動を必要としない場合には、除霜運転中においても十分な暖房感を確保するという目的を達成できないという問題がある。
【0007】
すなわち、エンジン冷却水の温度が低い状態のまま、エンジンが停止している場合、エンジン停止中は、いつまでたっても除霜が行えないか、エンジン停止中にヒートポンプサイクルによる暖房運転からクーラサイクルによる除霜運転に切り替えると、暖房に必要な熱源が不足するため、吹出温が低下してしまい、乗員の暖房感が低下するという問題が生じる。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、除霜運転による乗員の暖房感の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段(36)と、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力することを特徴とする。
【0010】
これによると、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、内燃機関(EG)が停止していれば、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力して、内燃機関(EG)を作動させるので、内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする暖房を行うことができる。したがって、本発明によれば、車両走行の駆動源として内燃機関を作動させていない場合であっても、除霜制御時の暖房用の熱源を確保することができるので、除霜制御時に乗員の暖房感が低下することを抑制できる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、制御手段(50)は、室外熱交換器(16)が着霜した場合において、冷却水の温度が所定温度よりも低いときは、冷凍サイクル(10)をヒートポンプサイクルとして作動させるとともに、冷却水の温度が所定温度よりも高いときに、除霜制御を行うことを特徴とする。
【0012】
ここで、内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする暖房を行う場合であっても、冷却水が十分に暖まっていない状態で、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えてしまうと、吹出温が低下してしまう。
【0013】
これに対して、本発明によれば、室外熱交換器が着霜した場合、内燃機関の冷却水の温度が所定温度まで上昇するまでは、ヒートポンプサイクルによる暖房を継続し、内燃機関の冷却水の温度が所定温度まで上昇して、暖房用の熱源を十分に確保できた状態になったとき、除霜制御に切り替わるようにすることができる。したがって、本発明によれば、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えても、吹出温を低下させることなく、暖房を継続することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、制御手段(50)は、ヒートポンプサイクル時に室外熱交換器を流れる冷媒の温度が判定基準よりも低い場合に除霜制御を行うとともに、内燃機関(EG)の作動中の判定基準を、内燃機関(EG)の停止時の判定基準よりも高い温度に設定することを特徴とする。
【0015】
ここで、車両走行の駆動源として内燃機関を作動させていない場合に、内燃機関を作動させると、その分、燃費が悪化し、排ガスの排出量が増加してしまう。このため、内燃機関の停止時に除霜制御を行うよりも、内燃機関の作動時に除霜制御を行う方が好ましい。
【0016】
そこで、本発明では、内燃機関の停止時よりも作動中に除霜制御が実行されやすいように、内燃機関の作動中での除霜制御を行うか否かの判定基準を、内燃機関の停止時の判定基準よりも高い温度に設定する。これにより、本発明によれば、内燃機関の作動時と停止時で同じ判定基準を用いる場合と比較して、車両走行の駆動源として内燃機関を作動させていない場合に、除霜制御のために内燃機関を作動させる頻度を低減でき、燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、制御手段(50)は、エコノミースイッチ(60d)が操作されてエコノミーモードが設定されているときに、室外熱交換器(16)が着霜した場合、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力しないとともに、電気ヒータ(37、48)に対して制御信号を出力して、電気ヒータ(37、48)による暖房を行うことを特徴とする。
【0018】
これによれば、エコノミーモードが設定されているときは、除霜制御のために内燃機関を作動させないので、車両走行の駆動源として内燃機関を作動させていない場合に、除霜制御のために内燃機関を作動させることによる燃費の悪化を抑制できる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、制御手段(50)は、除霜制御時において、室外熱交換器(16)を流れる冷媒の温度が所定温度よりも高い場合に、除霜制御を終了することを特徴とする。
【0020】
これによれば、除霜制御時に、室外熱交換器を流れる冷媒の温度が所定温度よりも高くなって、除霜が完了したと推測できる場合に、除霜制御を終了するようにしているので、除霜制御時間を必要最小限に抑えることができる。このため、本発明によれば、除霜制御時の暖房のために内燃機関を作動させる時間を短くでき、除霜制御のために内燃機関を作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、制御手段(50)は、外気温が所定温度よりも低い場合に、除霜制御の実行時間を第1所定時間に設定し、外気温が所定温度よりも高い場合に、第1所定時間よりも短い第2所定時間に設定して、除霜制御を行うことを特徴とする。
【0022】
室外熱交換器の除霜は外気温が高いほど早く完了することから、本発明のように、外気温が高い場合に、除霜制御の実行時間を短く設定することで、除霜制御時間を必要最小限に抑えることができる。このため、本発明によれば、除霜制御時の暖房のために内燃機関を作動させる時間を短くでき、除霜制御のために内燃機関を作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0023】
請求項7に記載の発明では、制御手段(50)は、室外熱交換器(16)が着霜した場合であって、乗員もしくは乗員周辺の温度が所定温度よりも低く、乗員の暖房感が低いと判定した場合に、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力し、
室外熱交換器(16)が着霜した場合であって、乗員もしくは乗員周辺の温度が所定温度よりも高く、乗員の暖房感が高いと判定した場合に、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力しないとともに、電気ヒータ(37、48)に対して制御信号を出力して、電気ヒータ(37、48)による暖房を行うことを特徴とする。
【0024】
ここで、乗員の暖房感が高い場合、内燃機関の冷却水を熱源とする暖房を行わなくても、電気ヒータによる暖房によって、乗員は十分な暖房感が得られる。したがって、本発明によれば、除霜制御時において、乗員の暖房感が高ければ、除霜制御のために内燃機関を作動させる代わりに、電気ヒータによる暖房を行うことで、十分な暖房感を確保しつつ、内燃機関を作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0025】
請求項8に記載の発明では、制御手段(50)は、除霜制御時における室内熱交換器(26)の目標温度を、除霜制御以外でのクーラサイクル時における室内熱交換器(26)の目標温度と比較して、低く設定することを特徴とする。
【0026】
これによれば、除霜制御時における室内熱交換器の目標温度を、除霜制御以外での室内熱交換器の目標温度よりも低くすることで、除霜制御時の冷房負荷を上げ、除霜制御時の室外熱交換器の温度を、除霜制御以外のときよりも高くすることできる。このため、本発明によれば、除霜制御時における室内熱交換器の目標温度が除霜制御以外のときと同じ場合と比較して、除霜を早く完了することができ、除霜時間を短縮できる。
【0027】
請求項9に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を開始する乗車前空調制御を行っているときは、除霜制御を行わないとともに、乗車前空調制御を行っていないときに、除霜制御を行うことを特徴とする。
【0028】
ところで、乗車前空調制御中にヒートポンプサイクルによる暖房から除霜制御に切り替えると、クーラサイクル作動によって室温が低下してしまうため、除霜制御中に乗員が乗り込むと、十分な暖房感が得られず、通常の乗車前空調制御中に乗員が乗り込んだ場合と比較して、暖房感が低下するという問題が生じる。
【0029】
これに対して、本発明では、乗車前空調制御を行っているときは、除霜制御を行わないので、暖房感が低下するという問題を解消できる。
【0030】
請求項10に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
室外熱交換器(16)は、室外熱交換器(16)を通過する風の流れが水平方向よりも下側を向くように、鉛直方向に対して斜めに配置されていることを特徴とする。
【0031】
これによれば、室外熱交換器を通過する風の流れが水平方向よりも下側を向くように、室外熱交換器を鉛直方向に対して斜めに配置することで、除霜制御時に生じる解氷水分や溶けかけの氷を落ちやすくしているので、早期に除霜を完了でき、除霜時間を短縮することができる。
【0032】
そして、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えると、室温が低下して、乗員の暖房感が低下してしまうところ、本発明によれば、除霜時間を短縮できることから、除霜制御からヒートポンプサイクルによる暖房に早期に切り替えられるので、乗員の暖房感の低下を抑制できる。
【0033】
また、除霜制御によって生じた解氷水分が室外熱交換器に残っていると、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じてしまう。これに対して、本発明によれば、解氷水分が落ちやすくなっているので、解氷水分が室外熱交換器に残ることを防止でき、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じることを防止できる。
【0034】
請求項11に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、除霜制御時において、外気温が解氷温度域の所定温度よりも高い場合、室外送風機(16a)の稼働率を、外気温が所定温度よりも低い場合に設定する室外送風機(16a)の稼働率と比較して、高く設定することを特徴とする。
【0035】
ここで、除霜制御時において、外気温が解氷温度域の所定温度よりも高ければ、外気温によって解氷が促進する。したがって、本発明のように、外気温が解氷温度域の所定温度よりも高い場合に、室外送風機の稼働率を高くすることで、解氷を促進させることができ、除霜時間を短縮することができる。
【0036】
そして、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えると、室温が低下して、乗員の暖房感が低下してしまうところ、本発明によれば、除霜時間を短縮できることから、除霜制御からヒートポンプサイクルによる暖房に早期に切り替えられるので、乗員の暖房感の低下を抑制できる。
【0037】
また、除霜制御によって生じた解氷水分が室外熱交換器に残っていると、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じてしまう。これに対して、本発明によれば、室外送風機の稼働率を高くすることで、解氷水分を飛ばすことができるので、解氷水分が室外熱交換器に残ることを防止でき、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じることを防止できる。
【0038】
請求項12に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、 室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、除霜制御時において、外気温が氷結温度域の所定温度よりも低い場合、室外送風機(16a)の稼働率を、外気温が所定温度よりも高い場合に設定する室外送風機(16a)の稼働率と比較して、低く設定することを特徴とする。
【0039】
ここで、除霜制御時の外気温が氷結温度域の所定温度よりも低い場合、室外送風機から室外熱交換器への送風量が多いと、解氷水分の再氷結を促してしまい、除霜が阻害されて除霜時間が長くなってしまう。
【0040】
これに対して、本発明では、除霜制御時の外気温が氷結温度域の所定温度よりも低い場合に、室外送風機の稼働率を低くしているので、解氷水分の再氷結を抑制でき、除霜時間を短縮することができる。
【0041】
そして、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えると、室温が低下して、乗員の暖房感が低下してしまうところ、本発明によれば、除霜時間を短縮できることから、除霜制御からヒートポンプサイクルによる暖房に早期に切り替えられるので、乗員の暖房感の低下を抑制できる。
【0042】
請求項13に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、 室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、除霜制御時において、室外熱交換器(16)に付着した霜の解氷が進んだ場合、室外送風機(16a)の稼働率を、解氷が進んでいない場合に設定する室外送風機(16a)の稼働率と比較して、高く設定することを特徴とする。
【0043】
これによれば、室外熱交換器に付着した霜の解氷が進んだ場合に、室外送風機の稼働率を高くすることで、解氷水分や溶けかけの氷を飛ばすことができるので、早期に除霜を完了でき、除霜時間を短縮することができる。
【0044】
そして、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えると、室温が低下して、乗員の暖房感が低下してしまうところ、本発明によれば、除霜時間を短縮できることから、除霜制御からヒートポンプサイクルによる暖房に早期に切り替えられるので、乗員の暖房感の低下を抑制できる。
【0045】
また、除霜制御によって生じた解氷水分が室外熱交換器に残っていると、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じてしまう。これに対して、本発明によれば、室外送風機(16a)の稼働率を高くすることで、解氷水分を飛ばすことができるので、解氷水分が室外熱交換器に残ることを防止でき、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じることを防止できる。
【0046】
請求項14に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、 室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、除霜制御時において、室外熱交換器(16)に付着した霜が解氷する前の除霜初期段階の場合、室外送風機(16a)の稼働率を、除霜制御時の除霜初期段階以外の場合に設定する室外送風機(16a)の稼働率と比較して、低く設定することを特徴とする。
【0047】
ここで、除霜制御では、冷凍サイクルの運転モードをクーラサイクルとし、室外熱交換器の温度を上昇させることで、室外熱交換器に生じた霜を溶かすが、除霜初期段階の場合に、室外送風機の稼働率が高いと、室外熱交換器の温度上昇が阻害され、解氷が進まなくなってしまう。
【0048】
これに対して、本発明によれば、除霜初期段階の場合、室外送風機の稼働率を低くしているので、除霜制御時の室外熱交換器の温度上昇を促進でき、解氷を促進できるので、除霜時間を短縮することができる。
【0049】
そして、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えると、室温が低下して、乗員の暖房感が低下してしまうところ、本発明によれば、除霜時間を短縮できることから、除霜制御からヒートポンプサイクルによる暖房に早期に切り替えられるので、乗員の暖房感の低下を抑制できる。
【0050】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、冷房モード時を示している。
【図2】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、暖房モード時を示している。
【図3】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、第1除湿モード時を示している。
【図4】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、第2除湿モード時を示している。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部の構成図である。
【図6】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS14の詳細を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態の車両用空調装置の各運転モードにおける除湿能力および暖房能力を示す図表である。
【図9】第1実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図10】第1実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図13】第4実施形態の室外熱交換器16の車両搭載構造を示す図である。
【図14】第5実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図15】第6実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図16】第7実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図17】第8実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0053】
(第1実施形態)
図1〜図9により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の車両用空調装置を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用している。図1〜図4は、車両用空調装置1の全体構成図である。
【0054】
この車両用空調装置は、車室内を冷房する冷房モード(COOLサイクル)、車室内を暖房する暖房モード(HOTサイクル)、車室内を除湿する第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)の冷媒回路を切替可能に構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を備えている。図1〜図4は、それぞれ、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モード時の冷媒の流れを実線矢印で示している。
なお、冷房モードは、冷凍サイクル10をクーラサイクルとして運転するモードであり、冷却能力および除湿能力を有している。したがって、冷房モードを冷却除湿モードと表現することもできる。
【0055】
また、暖房モードおよび第1、第2除湿モードは、冷凍サイクル10をヒートポンプサイクルとして運転するモードである。このヒートポンプサイクルによる3つのモードのうち暖房モードは、高い暖房能力を有しているが除湿能力を有していない。したがって、暖房モードを除湿無しヒートポンプサイクルと表現することもできる。
【0056】
ヒートポンプサイクルによる3つのモードのうち第1、第2除湿モードは、除湿能力を有しているが暖房能力は暖房モードよりも劣る。したがって、第1、第2除湿モードを除湿有りヒートポンプサイクルと表現することもできる。
【0057】
より具体的には、第1除湿モードは、暖房能力に対して除湿能力を優先する除湿モードであり、第2除湿モードは、除湿能力に対して暖房能力を優先する除湿モードである。したがって、第1除湿モードを低温除湿モードあるいは単なる除湿モード、第2除湿モードを高温除湿モードあるいは除湿暖房モードと表現することもできる。
【0058】
因みに、図8の図表は、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モードの除湿能力および暖房能力を比較して示したものである。すなわち、冷房モードは、除湿能力は最も大きいが暖房能力は無い。したがって、暖房時に冷房モードを選択するときは、冷凍サイクル10以外の加熱手段(本例では、後述するヒータコア36やPTCヒータ37)を併用することとなる。
【0059】
暖房モードは、除湿能力は無いが暖房能力は最も大きい。第1除湿モードは、除湿能力は中程度であるが暖房能力は小さい。第2除湿モードは、除湿能力は小さいが暖房能力は中程度である。
【0060】
冷凍サイクル10は、圧縮機11、室内熱交換器としての室内凝縮器12および室内蒸発器26、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての温度式膨張弁27および固定絞り14、並びに、冷媒回路切替手段としての複数(本実施形態では5つ)の電磁弁13、17、20、21、24等を備えている。
【0061】
また、この冷凍サイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0062】
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
【0063】
電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。したがって、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0064】
圧縮機11の吐出側には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、車両用空調装置の室内空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器26通過後の送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット30の詳細については後述する。
【0065】
室内凝縮器12の冷媒出口側には、電気式三方弁13が接続されている。この電気式三方弁13は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。
【0066】
より具体的には、電気式三方弁13は、電力が供給される通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続する冷媒回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続する冷媒回路に切り替える。
【0067】
固定絞り14は、暖房モード、第1および第2除湿モード時に、電気式三方弁13から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房除湿用の減圧手段である。この固定絞り14としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。もちろん、暖房除湿用の減圧手段として、空調制御装置50から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構を採用してもよい。固定絞り14の冷媒出口側には、後述する第3三方継手23の冷媒流入出口が接続されている。
【0068】
第1三方継手15は、3つの冷媒流入出口を有し、冷媒流路を分岐する分岐部として機能するものである。このような三方継手は、冷媒配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。また、第1三方継手15の別の冷媒流入出口には、室外熱交換器16の一方の冷媒流入出口が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、低圧電磁弁17の冷媒入口側が接続されている。
【0069】
低圧電磁弁17は、冷媒流路を開閉する弁体部と、弁体部を駆動するソレノイド(コイル)を有し、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。より具体的には、低圧電磁弁17は、通電状態で開弁して非通電状態で閉弁する、いわゆるノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。
【0070】
低圧電磁弁17の冷媒出口側には、第1逆止弁18を介して、後述する第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第1逆止弁18は、低圧電磁弁17側から第5三方継手28側へ冷媒が流れることのみを許容している。
【0071】
室外熱交換器16は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン16aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0072】
さらに、本実施形態の送風ファン16aは、室外熱交換器16のみならず、エンジンEGの冷却水を放熱させるラジエータ(図示せず)にも室外空気を送風している。具体的には、送風ファン16aから送風された車室外空気は、室外熱交換器16→ラジエータの順に流れる。
【0073】
また、図1〜図4の破線で示す冷却水回路には、冷却水を循環させるための図示しない冷却水ポンプが配置されている。この冷却水ポンプは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0074】
室外熱交換器16の他方の冷媒流入出口には、第2三方継手19の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第2三方継手19の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第2三方継手19の別の冷媒流入出口には、高圧電磁弁20の冷媒入口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、熱交換器遮断電磁弁21の一方の冷媒流入出口が接続されている。
【0075】
高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。ただし、高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、通電状態で閉弁して非通電状態で開弁する、いわゆるノーマルオープン型の開閉弁として構成されている。
【0076】
高圧電磁弁20の冷媒出口側には、第2逆止弁22を介して、後述する温度式膨張弁27の絞り機構部入口側が接続されている。この第2逆止弁22は、高圧電磁弁20側から温度式膨張弁27側へ冷媒が流れることのみを許容している。
【0077】
熱交換器遮断電磁弁21の他方の冷媒流入出口には、第3三方継手23の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第3三方継手23の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第3三方継手23の別の冷媒流入出口には、前述の如く、固定絞り14の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、除湿電磁弁24の冷媒入口側が接続されている。
【0078】
除湿電磁弁24は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。さらに、除湿電磁弁24もノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。そして、本実施形態の冷媒回路切替手段は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、高圧電磁弁20、熱交換器遮断電磁弁21、除湿電磁弁24の複数(5つ)の電磁弁によって構成される。
【0079】
除湿電磁弁24の冷媒出口側には、第4三方継手25の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第4三方継手25の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第4三方継手25の別の冷媒流入出口には、温度式膨張弁27の絞り機構部出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、室内蒸発器26の冷媒入口側が接続されている。
【0080】
室内蒸発器26は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
【0081】
室内蒸発器26の冷媒出口側には、温度式膨張弁27の感温部入口側が接続されている。温度式膨張弁27は、絞り機構部入口から内部へ流入した冷媒を減圧膨張させて絞り機構部出口から外部へ流出させる冷房用の減圧手段である。
【0082】
より具体的には、本実施形態では、温度式膨張弁27として、室内蒸発器26出口側冷媒の温度および圧力に基づいて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度を検出する感温部27aと、感温部27aの変位に応じて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように絞り通路面積(冷媒流量)を調整する可変絞り機構部27bとを1つのハウジング内に収容した内部均圧型膨張弁を採用している。
【0083】
温度式膨張弁27の感温部出口側には、第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第5三方継手28の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第5三方継手28の別の冷媒流入出口には、前述のごとく、第1逆止弁18の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、アキュムレータ29の冷媒入口側が接続されている。
【0084】
アキュムレータ29は、第5三方継手28から、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ29の気相冷媒出口には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
【0085】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内蒸発器26、室内凝縮器12、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
【0086】
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱40が配置されている。
【0087】
より具体的には、内外気切替箱40には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口40aおよび外気を導入させる外気導入口40bが形成されている。さらに、内外気切替箱40の内部には、内気導入口40aおよび外気導入口40bの開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア40cが配置されている。
【0088】
したがって、内外気切替ドア40cは、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア40cは、内外気切替ドア40c用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0089】
また、吸込口モードとしては、内気導入口40aを全開とするとともに外気導入口40bを全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口40aを全閉とするとともに外気導入口40bを全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口40aおよび外気導入口40bの開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0090】
内外気切替箱40の空気流れ下流側には、内外気切替箱40を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0091】
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器26が配置されている。さらに、室内蒸発器26の空気流れ下流側には、室内蒸発器26通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
【0092】
加熱用冷風通路33には、室内蒸発器26通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。ヒータコア36およびPTCヒータ37は、冷媒以外を熱源として送風空気を加熱する加熱手段である。
【0093】
ヒータコア36は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と室内蒸発器26通過後の空気とを熱交換させて、室内蒸発器26通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0094】
また、PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、電力を供給されることによって発熱して、室内凝縮器12通過後の空気を加熱する電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37は、複数本(具体的には3本)設けられており、空調制御装置50が、通電するPTCヒータ37の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ37全体としての加熱能力が制御される。
【0095】
一方、冷風バイパス通路34は、室内蒸発器26通過後の空気を、ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。したがって、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0096】
そこで、本実施形態では、室内蒸発器26の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア38を配置している。
【0097】
したがって、エアミックスドア38は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア38は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0098】
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口41〜43が配置されている。この吹出口41〜43としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口41、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口42、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口43が設けられている。
【0099】
また、フェイス吹出口41、フット吹出口42、およびデフロスタ吹出口43の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口41の開口面積を調整するフェイスドア41a、フット吹出口42の開口面積を調整するフットドア42a、デフロスタ吹出口43の開口面積を調整するデフロスタドア43aが配置されている。
【0100】
これらのフェイスドア41a、フットドア42a、デフロスタドア43aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0101】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口41を全開してフェイス吹出口41から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口41とフット吹出口42の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口42を全開するとともにデフロスタ吹出口43を小開度だけ開口して、フット吹出口42から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口42およびデフロスタ吹出口43を同程度開口して、フット吹出口42およびデフロスタ吹出口43の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0102】
さらに、乗員が後述する操作パネル60の吹出口モードスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口43を全開してデフロスタ吹出口43から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0103】
要するに、吹出口モードとしてフットモードが選択されているときには、空気を少なくともフット吹出口42から吹き出し、フットデフロスタモードまたはデフロスタモードが選択されているときには、デフロスタ吹出口43から吹き出される空気の風量割合がフットモードよりも多くなって窓曇りが防止される。よって、フットデフロスタモードおよびデフロスタモードを防曇モードと表現することもできる。
【0104】
なお、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両は、車両用空調装置とは別に、電熱デフォッガ47およびシート暖房装置48を備えている。電熱デフォッガ47とは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。
【0105】
シート暖房装置48とは、座席(シート)の内部あるいは表面に配置された補助暖房装置であって、乗員の体を直接的に温めて乗員の温感を効果的に高めるものである。本例では、シート暖房装置48として、電力が供給されることにより発熱する電気ヒータを用いている。
【0106】
この電熱デフォッガ47およびシート暖房装置48についても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
【0107】
次に、図5により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、冷媒回路切替手段を構成する各電磁弁13、17、20、21、24、送風ファン16a、送風機32、各種電動アクチュエータ62、63、64等の作動を制御する。
【0108】
なお、空調制御装置50は、上述した各種機器を制御する制御手段が一体に構成されたものである。例えば、空調制御装置50は、上述した冷房モード、暖房モード、および第1、第2除湿モードの切替制御を行う制御手段を構成する。
【0109】
本実施形態では、特に、圧縮機11の吐出能力変更手段である電動モータ11bの作動(冷媒吐出能力)を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を吐出能力制御手段50aとする。もちろん、吐出能力制御手段50aを空調制御装置50に対して別体で構成してもよい。
【0110】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、室内蒸発器26からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、第1三方継手15と低圧電磁弁17との間を流通する冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ57、エンジン冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために必要な検出値を検出するRHWセンサ45(窓ガラス表面相対湿度検出手段)等のセンサ群の検出信号が入力される。ここで、窓ガラス表面相対湿度RHWは、窓ガラス室内側表面の相対湿度のことである。
【0111】
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に室内蒸発器26の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器26のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器26を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。
【0112】
また、本実施形態のRHWセンサ45は、具体的には、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサの3つのセンサで構成されている。
【0113】
本例では、RHWセンサ45を車両窓ガラスの車室内側の表面(例えば車両フロント窓ガラスの中央上部にあるバックミラーのすぐ横)に配置している。
【0114】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフ(具体的には圧縮機11のオン・オフ)を切り替えるエアコンスイッチ60a、車両用空調装置1の自動制御を設定・解除するオートスイッチ60b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機32の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ60c、冷凍サイクルの省動力化を優先させる指令を出力するエコノミースイッチ60d等が設けられている。
【0115】
次に、図6により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図6は、本実施形態の車両用空調装置1の制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両システムが停止している場合でも、バッテリから空調制御装置50に電力が供給されることによって実行される。なお、図中の各ステップの機能は、空調制御装置50が有する各機能手段に相当する。
【0116】
まず、ステップS1では、プレ空調のスタートスイッチ、あるいは操作パネル60の車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されたか否かを判定する。そして、プレ空調のスタートスイッチ、あるいは車両用空調装置1の作動スイッチが投入されるとステップS2へ進む。
【0117】
なお、プレ空調とは、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を開始する乗車前空調制御である。プレ空調のスタートスイッチは、乗員が携帯する無線端末(リモコン)に設けられている。したがって、乗員は車両から離れた場所から車両用空調装置1を始動させることができる。
【0118】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両では、バッテリに対して商用電源(外部電源)から電力を供給することによって、バッテリの充電を行うことができる。そこで、プレ空調は、車両が外部電源に接続されている場合は所定時間(例えば、30分間)だけ行われ、外部電源に接続されていない場合は、バッテリ残量が所定量以下となるまで行うようになっている。
【0119】
ステップS2では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。次のステップS3では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS4へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ60cによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機32の風量の設定信号等がある。
【0120】
ステップS4では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜57の検出信号を読み込んで、ステップS5へ進む。ステップS5では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。さらに、暖房モードでは、暖房用熱交換器目標温度を算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ60cによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0121】
また、暖房用熱交換器目標温度は、基本的に上述の数式F1にて算出される値となるが、消費電力の抑制のために数式F1にて算出されるTAOよりも低い値とする補正が行われる場合もある。
【0122】
続くステップS6〜S16では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS6では、空調環境状態に応じて、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの選択およびPTCヒータ37の通電有無の決定が行われる。本実施形態のステップS6のより詳細な内容については後述する。
【0123】
ステップS7では、送風機32により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には電動モータに印加するブロワモータ電圧をステップS5にて決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。
【0124】
具体的には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
【0125】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にするようになっている。
【0126】
ステップS8では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱40の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0127】
ステップS9では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0128】
したがって、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0129】
ステップS10では、エアミックスドア38の目標開度SWを上記TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された室内蒸発器26からの吹出空気温度TE、加熱器温度に基づいて算出する。
【0130】
ここで、加熱器温度とは、加熱用冷風通路33に配置された加熱手段(ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37)の加熱能力に応じて決定される値であって、具体的には、エンジン冷却水温度Twを採用できる。したがって、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。
SW=[(TAO−TE)/(Tw−TE)]×100(%)…(F2)
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア38の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア38の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
【0131】
ステップS11では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数)を決定する。本実施形態の基本的な圧縮機11の回転数の決定手法は以下の通りである。例えば、冷房モードでは、ステップS5で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器26からの吹出空気温度TEの目標吹出温度TEOを決定する。
【0132】
さらに、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度TEの偏差En(TEO−TE)を算出し、この偏差Enと、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量ΔfCを求める。そして、前回の圧縮機回転数fCn−1に回転数変化量ΔfCを加算したものを今回の圧縮機回転数fCnとする。
【0133】
また、暖房モードでは、ステップS4で決定した暖房用熱交換器目標温度等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、吐出冷媒圧力Pdの目標高圧PDOを決定し、この目標高圧PDOと吐出冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出する。さらに、この偏差Pnと、前回算出された偏差Pn−1に対する偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、ファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fHn−1に対する回転数変化量ΔfHを求める。そして、前回の圧縮機回転数fHn−1に回転数変化量ΔfHを加算したものを今回の圧縮機回転数fHnとする。
【0134】
ステップS12では、室外熱交換器16に向けて外気を送風する送風ファン(室外送風機)16aの稼働率を決定する。本実施形態の基本的な送風ファン16aの稼働率の決定手法は以下の通りである。つまり、圧縮機11吐出冷媒温度Tdの増加に伴って送風ファン16aの稼働率が増加するように第1の仮稼働率を決定し、エンジン冷却水温度Twの上昇に伴って送風ファン16aの稼働率が増加するように第2の仮稼働率を決定する。
【0135】
さらに、第1、第2の仮稼働率のうち大きい方を選択し、選択された稼働率に対して、送風ファン16aの騒音低減や車速を考慮した補正を行った値を送風ファン16aの稼働率に決定する。
【0136】
ステップS13では、PTCヒータ37の作動本数の決定および電熱デフォッガ47の作動状態の決定が行われる。PTCヒータ37の作動本数は、例えば、ステップS6にてPTCヒータ37への通電が必要とされたときに、暖房モード時にエアミックスドア38の目標開度SWが100%となっても、暖房用熱交換器目標温度を得られない場合に、内気温Trと暖房用熱交換器目標温度との差に応じて決定すればよい。
【0137】
また、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガ47を作動させる。
【0138】
次に、ステップS14にて、上述のステップS6で決定された運転モードに応じて、冷媒回路切替手段である各電磁弁13、17、20、21、24の作動状態を決定する。この際、本実施形態では、サイクルに応じた冷媒回路を実現するため、基本的には冷媒が流通する冷媒流路が開となるように各電磁弁を制御し、冷媒圧力の高低圧関係によって冷媒が流通しない冷媒流路については各電磁弁を非通電状態として、消費電力の抑制を行う。
【0139】
ステップS14の詳細については、図7のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS14aで、ステップS6で決定された運転モードをメモリCYCLE_VALVEに読み込む。次に、ステップS14bにて、車両用空調装置1が停止しているか否か、すなわち車室内の空調を行わないか否かが判定される。
【0140】
ステップS14bにて、車両用空調装置1が停止していると判定された場合は、ステップS14cにて、メモリCYCLE_VALVEを冷房モード(COOLサイクル)に設定してステップS14dへ進む。ステップS14cにて、車両用空調装置1が停止していないと判定された場合は、ステップS14dへ進む。
【0141】
ステップS14dでは、各電磁弁13、17、20、21、24の作動状態が決定される。具体的には、メモリCYCLE_VALVEが冷房モード(COOLサイクル)に設定されている場合は、全ての電磁弁を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが冷房モード(HOTサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24および熱交換器遮断電磁弁21を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とする。
【0142】
つまり、本実施形態では、いずれの運転モードの冷媒回路に切り替えた場合であっても、各電磁弁13、17、20、21、24のうち少なくとも1つの電磁弁に対する電力の供給が停止されるように構成されている。
【0143】
ステップS15では、エンジンEGの作動要求有無を決定する。ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、常時エンジンを作動させているのでエンジン冷却水も常時高温となる。したがって、通常の車両ではエンジン冷却水をヒータコア36に流通させることで充分な暖房性能を発揮することができる。
【0144】
これに対して、本実施形態のようなハイブリッド車両では、バッテリ残量に余裕があれば、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することができる。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、エンジンEGが停止しているとエンジン冷却水温度が40℃程度にしか上昇せず、ヒータコア36にて充分な暖房性能が発揮できなくなる。
【0145】
そこで、本実施形態では、暖房に必要な熱源を確保するため、高い暖房性能が必要な場合であってもエンジン冷却水温度Twが予め定めた基準冷却水温度よりも低いときは、空調制御装置50からエンジンEGの制御に用いられるエンジン制御装置(図示せず)に対して、エンジンEGを作動するように要求信号を出力する。
【0146】
これにより、エンジン冷却水温度Twを上昇させて高い暖房性能を得るようにしている。なお、このようなエンジンEGの作動要求信号は、車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させる必要の無い場合であってもエンジンEGを作動させることになるので、車両燃費を悪化させる要因となる。このため、エンジンEGの作動要求信号を出力する頻度は極力低減させることが望ましい。
【0147】
ステップS16では、室外熱交換器16に着霜が生じたか否かを判定する。着霜が生じていれば、除霜制御を実行するように、除霜モードに設定する。
【0148】
ここで、暖房モードの冷媒回路のように、室外熱交換器16にて冷媒に吸熱作用を発揮させる際に、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度が−12℃程度まで低下すると、室外熱交換器16に着霜が生じることが知られている。このような着霜が生じると、室外熱交換器16に車室外空気が流通できなくなり、室外熱交換器16にて冷媒と車室外空気とが熱交換できなくなってしまう。
【0149】
そこで、本実施形態では、室外熱交換器16に着霜が生じた際には、このステップS16で除霜モードに設定することで、ステップS6で強制的に冷房モードを選択する除霜制御を実行するようになっている。後述するように冷房モードの冷媒回路では、室外熱交換器16にて冷媒が放熱するので、室外熱交換器16に生じた霜を溶かすことができる。本実施形態のステップS16のより詳細な内容については後述する。
【0150】
ステップS17では、上述のステップS6〜S16で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器61、13、17、20、21、24、16a、32、62、63、64に対して制御信号および制御電圧が出力される。例えば、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61に対しては、圧縮機11の回転数がステップS11で決定された回転数となるように制御信号が出力される。
【0151】
次のステップS18では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS3に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
【0152】
次に、上述のステップS16の着霜判定処理のより詳細な内容を説明する。
【0153】
図9はステップS16の要部を示すフローチャートである。ステップS16の着霜判定処理では、まず、ステップS20で、エンジンEGが作動中(エンジンON)か否かを判定する。これは、エンジンEGが作動中のときと停止のときでは、異なる着霜判定値を用いて、ステップS23で着霜判定を行うからである。そして、エンジンEGが停止の場合(NO判定の場合)、ステップS21で、判定基準となる着霜判定値を第1基準温度、本例では−12℃に設定する。一方、エンジンEGが作動中の場合(YES判定の場合)、ステップS22で、着霜判定値を第1基準温度よりも高い第2基準温度、本例では−11℃に設定する。
【0154】
続いて、ステップS23で、室外熱交換器16が着霜したか否かを判定する。本例では、暖房モード時に室外熱交換器16を通過した冷媒の温度を吸入温度センサ57で検出し、吸入温度センサ57が検出した冷媒吸入温度が着霜判定値よりも低いか否かを判定する。
【0155】
そして、冷媒吸入温度が着霜判定値よりも低い場合(YES判定の場合)、室外熱交換器16に着霜が生じていると判断してステップS24に進む。ステップS24で、除霜フラグが0であるか否かを判定し、除霜フラグが0であると判定した場合(YES判定の場合)、ステップS25〜S27を経て、ステップS28で、除霜フラグを1に設定、すなわち、除霜モードに設定する。
【0156】
ここで、本実施形態では、ステップS20〜S22において、ステップS23の着霜判定に用いる着霜判定値について、エンジン停止時よりもエンジン作動中の方を高く設定しているので、エンジン作動中の方がエンジン停止時よりも除霜モードになりやすくなっている。ちなみに、車両が高速走行によりバッテリ走行が出来ないときやバッテリ残量が少なくなったときに、車両走行用の駆動源としてエンジンEGが作動するので、本実施形態では、これらのときに、除霜モードになりやすい。
【0157】
また、ステップS25〜S27では、外気温に応じて除霜制御を行う際のタイマ設定を行う。具体的には、ステップS25で、外気温が所定温度、本例では0℃よりも高いか否かを判定する。このとき、外気温が0℃よりも低い場合(NO判定の場合)、ステップS26で、除霜制御の実行時間である除霜カウントを第1所定時間、本例では2400(10分)に設定する。一方、外気温が0℃よりも高い場合(YES判定の場合)、外気温が解氷温度域であることから、短時間で除霜可能であると判断し、ステップS27で、除霜カウントを第1所定時間よりも短い第2所定時間、本例では1200(5分)に設定する。
【0158】
また、ステップS23での着霜判定において、冷媒吸入温度が着霜判定値よりも高い場合(NO判定の場合)、ステップS29に進む。また、ステップS23での着霜判定において、冷媒吸入温度が着霜判定値よりも低い場合(YES判定の場合)であっても、既に除霜フラグが1に設定されている場合(ステップS24でNO判定の場合)、ステップS29に進む。
【0159】
ステップS29では、除霜カウント中(除霜カウント>0)か否かを判定する。ステップS29の判定において、ステップS23でYES判定をしておらず、除霜モードが設定されていなければ、除霜カウントが設定されていないので、除霜カウント中ではないと判定(NO判定)し、ステップS30に進む。このように、冷媒吸入温度が着霜判定値よりも高い場合であって、除霜モードが設定されていなければ(除霜フラグが0であれば)、室外熱交換器16は着霜していないと判断して、ステップS30で、除霜フラグを0のままとし、除霜以外モードを維持する。
【0160】
一方、ステップS29の判定において、除霜モードが既に設定されている場合(除霜フラグ=1の場合)、ステップS26、27のように、除霜カウントが設定されているので、除霜カウント中であると判定(YES判定)し、ステップS31で、除霜カウントを1減らし、ステップS32に進む。
【0161】
ステップS32では、冷媒吸入温度が所定温度、本例では10℃よりも高いか否かを判定する。そして、冷媒吸入温度が10℃よりも高い場合(YES判定の場合)、除霜が完了したと推測し、ステップS33で除霜カウントを0に設定する。続いて、ステップS30で、除霜フラグを0に設定することで、除霜制御を終了させる。
【0162】
一方、ステップS32の判定において、冷媒吸入温度が10℃以下の場合(NO判定の場合)、除霜が完了していないと推測できるので、除霜制御を続けるために、ステップS34で、除霜フラグ=1に保持し、除霜モードを保持する。
【0163】
因みに、図6の制御処理において、ステップS16で室外熱交換器16が着霜したと判定した結果は、ステップS18の後に続く、ステップS3以降の次のフローにおけるステップS6のサイクル・PTC選択処理に反映される。
【0164】
次に、上述のステップS6のサイクル・PTC選択処理のより詳細な内容を説明する。
【0165】
図10は、図6中のステップS6の要部を示すフローチャートである。ステップS6では、まず、ステップS40で、除霜フラグ=1、すなわち、除霜モードが設定されているか否かを判定する。
【0166】
そして、除霜フラグが1の場合(YES判定の場合)、除霜制御ができる環境とするために、ステップS41に進む。
【0167】
ステップS41では、エコノミースイッチ60dが乗員に操作されてONになっているか、または、室温が25℃よりも高いか否かを判定する。すなわち、冷凍サイクルの省動力化を優先させるエコノミーモードが設定されているか、または、大きな暖房能力は必要が無いかどうかを判定する。このとき、エコノミースイッチ60dがOFFでエコノミーモードが設定されておらず、かつ、室温が25度よりも低い場合(NO判定の場合)、車室内の暖房手段として、エンジン冷却水を熱源として送風空気を加熱するヒータコア36を選択するために、ステップS42に進む。
【0168】
ステップS42で、冷却水温度がTAOよりも高いか否かを判定する。このとき、エンジンEGが停止中であって冷却水温度がTAOよりも低かった場合(NO判定の場合)、エンジン冷却水を熱源とする暖房では、TAOに応じた吹出温を作り出すことができないので、ステップS43で、エンジンEGの作動(エンジンON)を選択する。
【0169】
この結果、エンジンEGが停止していれば、図6中のステップS15にてエンジン制御装置に対してエンジンEGを始動するように要求信号を出力することとなり、エンジンEGが作動することで、エンジン冷却水の温度を上昇させることができる。
【0170】
そして、エンジン冷却水の温度が上昇してTAOを超えると、図6のステップS2〜S18の制御フローが繰り返し実行されている際に、再び、図10に示すステップS6のサイクル選択処理において、ステップS42で、冷却水温度がTAOよりも高いと判定される。
【0171】
ステップS42において、冷却水温度がTAOよりも高いと判定された場合(YES判定の場合)、エンジン冷却水を熱源とする暖房によって、TAOに応じた吹出温を十分に作り出すことができるので、ステップS44に進み、室外熱交換器16の除霜のためにクーラサイクル(冷房モード)を選択する。この結果、クーラサイクルによって室外熱交換器16の温度が上昇し、除霜が行われる。
【0172】
ここで、ヒートポンプサイクル時に室外熱交換器16に着霜が生じることから、ステップS41で、除霜フラグが1であると判定されるのは、冷凍サイクル10の運転モードがヒートポンプサイクルのときである。
【0173】
したがって、ステップS42により、本実施形態では、除霜モードに設定されても、冷却水温度がTAOまで上昇するまでは、ヒートポンプサイクル運転が継続され、冷却水温度がTAOを超えて、除霜制御ができる環境になった場合に、クーラサイクルに切り替わるようになっている。
【0174】
なお、ステップS42での判定において、エンジンEGが作動中の場合や、エンジンが停止していていも、エンジンEGの停止直後から短時間しか経過していない場合に、エンジン冷却水の温度がTAOを超えているときがあるので、このような場合では、エンジンEGの作動を要求せずに、ステップS44に進み、クーラサイクルを選択する。
【0175】
また、ステップS41の判定において、エコノミースイッチ60dがONである場合や、室温が25℃よりも高い場合や、その両方の場合に、YSEと判定して、ステップS45に進む。そして、ステップS45では、エンジンEGの作動(エンジンON)を選択せず、PTCヒータ37の作動(PTCヒータON)を選択する。その後、ステップS44に進み、室外熱交換器16の除霜のためにクーラサイクルを選択する。
【0176】
この結果、図6中のステップS17においてPTCヒータ37に対して制御信号を出力することで、PTCヒータ37が送風空気を加熱することとなる。よって、PTCヒータ37による暖房を行いながら、クーラサイクルによる室外熱交換器16の除霜が行われる。
【0177】
また、ステップ40の判定において、除霜フラグが1ではない場合(NO判定の場合)、除霜モードではないので、通常のサイクル選択を実行するために、ステップS46に進む。
【0178】
ステップS46では、TAOに基づいて決定された吹出口モード(オート吹出口)がフェイスモードであるか否かを判定する。これは、暖房の必要性を判断するためである。
【0179】
そして、吹出口モードがフェイスモードである場合(YES判定の場合)には、暖房の必要無しと判断してステップS44に進み、冷凍サイクルの運転モードとしてクーラサイクル(冷房モード)を選択する。一方、吹出口モードがフェイスモードでない場合(NO判定の場合)には、暖房の必要有りと判断してステップS47以降に進み、除湿の必要性に応じてHOTサイクル、DRY_EVAサイクル、DRY_ALLサイクル(暖房モード、第1除湿モード、第2除湿モード)のいずれかを選択する。
【0180】
因みに、上述のように、TAOに基づく吹出口モードの決定は図6のステップS9で行われる。このため、ステップS46の判定が初めて実行される場合には、まだ吹出口モード(オート吹出口)が決定されていないこととなる。そこで、ステップS46の判定が初めて実行される場合には、ステップS46以降(具体的にはステップS46、S44、S47〜S51)を省略するか、仮の吹出口モード(吹出口モードの初期設定)でステップS46の判定を行う等の処理を行う。
【0181】
ステップS47では、窓曇りの可能性があるか否かを、窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて判定する。本例では、RHWが100よりも高いか否かを判定する。そして、RHWが100よりも高い場合(YES判定の場合)には、窓曇りの可能性があると判断してステップS48に進む。
【0182】
ステップS48では、除湿の必要度合い(必要性)を蒸発器吹出空気温度Teに基づいて判定し、その判定結果に応じて、ステップS49〜S51で暖房モード、第1除湿モード、第2除湿モードのいずれかを選択する。
【0183】
具体的には、蒸発器吹出空気温度Teが高い場合には、除湿の必要有り(必要度合いが大)と判断して、除湿能力の高いDRY_EVAサイクル(第1除湿モード)を選択する(ステップS49)。蒸発器吹出空気温度Teが低い場合には、除湿の必要無しと判断して、除湿能力はないが暖房能力の高いHOTサイクル(暖房モード)を選択する(ステップS51)。蒸発器吹出空気温度Teが中程度である場合には、除湿の必要度合いは小さいと判断して、除湿能力の小さいDRY_ALLサイクル(第1除湿モード)を選択する(ステップS50)。
【0184】
本例では、蒸発器吹出空気温度Teと、図10のステップS48中に示すマップとに基づいて、除湿要否度合いを判定する。当該マップを用いて運転モードを選択することにより、室内蒸発器26の温度はおおよそ2℃に制御されることとなる。
【0185】
一方、ステップS47でRHWが100以下である場合(NO判定の場合)には、窓曇りの可能性がないと判断してステップS51に進み、除湿能力はないが暖房能力の高いHOTサイクル(暖房モード)を選択する。
【0186】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上のごとく制御されるので、制御ステップS6にて選択された運転モードに応じて以下のように作動する。
【0187】
(a)冷房モード(COOLサイクル:図1参照)
冷房モードでは、空調制御装置50が全ての電磁弁を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続し、低圧電磁弁17が閉弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
【0188】
これにより、図1の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→第1三方継手15→室外熱交換器16→第2三方継手19→高圧電磁弁20→第2逆止弁22→温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0189】
この冷房モードの冷媒回路では、電気式三方弁13から第1三方継手15へ流入した冷媒は、低圧電磁弁17が閉弁しているので低圧電磁弁17側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第2三方継手19へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の可変絞り機構部27bから流出した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。さらに、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって第2逆止弁22側に流出することはない。
【0190】
したがって、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却され、さらに、室外熱交換器16にて外気と熱交換して冷却され、温度式膨張弁27にて減圧膨張される。温度式膨張弁27にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器26へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却される。
【0191】
この際、前述の如くエアミックスドア38の開度が調整されるので、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が冷風バイパス通路34から混合空間35へ流入し、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が加熱用冷風通路33へ流入してヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて混合空間35へ流入する。
【0192】
これにより、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の冷房を行うことができる。なお、冷房モードでは、送風空気の除湿能力も高いが、暖房能力は殆ど発揮されない。
【0193】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0194】
(b)暖房モード(HOTサイクル:図2参照)
暖房モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が閉弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
【0195】
これにより、図2の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0196】
この暖房モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。また、熱交換器遮断電磁弁21から第2三方継手19へ流入した冷媒は、高圧電磁弁20が閉弁しているので高圧電磁弁20側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉じているので温度式膨張弁27側へ流出することはない。
【0197】
したがって、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて送風機32から送風された送風空気と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。この際、エアミックスドア38の開度が調整されるので、冷房モードと同様に、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の暖房を行うことができる。なお、暖房モードでは、送風空気の除湿能力は発揮されない。
【0198】
また、室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0199】
(c)第1除湿モード(DRY_EVAサイクル:図3参照)
第1除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、熱交換器遮断電磁弁21および除湿電磁弁24を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
【0200】
これにより、図3の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0201】
この第1除湿モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第1逆止弁18の作用によって第1逆止弁18側へ流出することはない。
【0202】
したがって、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室内蒸発器26へ流入する。
【0203】
室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。したがって、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。すなわち、車室内の除湿を行うことができる。なお、第1除湿モードでは、送風空気の除湿能力を発揮できるが、暖房能力は小さい。
【0204】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0205】
(d)第2除湿モード(DRY_ALLサイクル:図4参照)
第2除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
【0206】
これにより、図4の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0207】
つまり、第2除湿モードでは、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒が熱交換器遮断電磁弁21側および除湿電磁弁24側の双方に流出して、第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒および温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒の双方が第5三方継手28にて合流してアキュムレータ29側へ流出する。
【0208】
なお、この第2除湿モードの冷媒回路では、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。
【0209】
したがって、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧された後、第3三方継手23にて分岐されて室外熱交換器16および室内蒸発器26へ流入する。
【0210】
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、第5三方継手28へ流入する。室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。
【0211】
したがって、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。この際、第2除湿モードでは、第1除湿モードに対して、室外熱交換器16にて吸熱した熱量を室内凝縮器12にて放熱することができるので、送風空気を第1除湿モードよりも高温に加熱できる。すなわち、第2除湿モードでは、高い暖房能力を発揮させながら除湿能力も発揮させる除湿暖房を行うことができる。
【0212】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、第5三方継手28へ流入して室外熱交換器16から流出した冷媒と合流し、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0213】
次に、本実施形態の車両用空調装置50が奏する主な効果について説明する。
【0214】
(1)空調制御装置50は、図10のステップS40、S43、S15のごとく、室外熱交換器16が着霜した場合に、エンジンEGに対して作動要求信号を出力して、エンジンEGを作動させるので、除霜制御中に、エンジン冷却水を熱源とする暖房を行うことができる。
【0215】
したがって、本実施形態によれば、ハイブリッド車両が走行の駆動源として電動モータを作動させ、エンジンEGを作動させていない場合であっても、除霜制御のためにエンジンEGを作動させることで、除霜制御時の暖房用の熱源を確保することができるので、除霜制御時に乗員の暖房感が低下することを抑制できる。
【0216】
なお、除霜制御時の暖房用の熱源を確保するための他の手段として、除霜制御時の暖房専用に、燃焼式ヒータや、PTCヒータ等の電気ヒータを用いることが考えられる。しかし、除霜制御時の暖房専用にこれらの暖房手段を設けると、空調装置全体がコストアップしてしまうという問題が生じる。
【0217】
これに対して、本実施形態では、車両に搭載されているエンジンEGの冷却水を熱源として用いるので、除霜制御時の暖房用の熱源をコストアップ無しに確保することができる。さらに、燃焼式ヒータを用いる場合では、排気ガスの浄化の手段が必要となり、排気ガスの浄化が困難となるが、本実施形態によれば、既存のエンジン排気ガス浄化装置を用いることができるので、燃焼式ヒータよりもエンジン排気ガスを十分に浄化できる。また、本実施形態によれば、電気ヒータを用いる場合と比較して、高い暖房能力が得られる。
【0218】
(2)空調制御装置50は、図10のステップS42、S43、S44のごとく、室外熱交換器16が着霜して除霜モードを設定した場合、冷却水温度がTAOよりも低い場合、エンジンEGの作動を選択するとともに、ヒートポンプサイクルを選択したままとし、冷却水温度がTAOよりも高い場合に、クーラサイクルを選択するようになっている。これにより、除霜モードに設定されても、冷却水温度がTAOまで上昇するまでは、ヒートポンプサイクル運転を継続し、冷却水温度がTAOを超えて、除霜制御ができる環境になった場合に、クーラサイクルに切り替えて除霜制御を行うようになっている。
【0219】
ここで、ステップS42を省略し、ステップS41でNO判定した後、単に、ステップS43のエンジンONを選択し、その後、ステップS44でクーラサイクルを選択する制御を行うと、冷却水が十分に暖まっていなければ、吹出温が低下してしまい、暖房が継続されないという問題が生じる。
【0220】
これに対して、本実施形態によれば、冷却水温度がTAOを超えて、暖房用の熱源が十分に確保されて除霜制御ができる環境になった場合に、クーラサイクルに切り替えて除霜制御を行うので、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えても、吹出温を低下させることなく、暖房を継続することができる。なお、本実施形態では、ステップS42で冷却水温度とTAOとを比較したが、TAO以外の他の所定温度と比較しても良い。
【0221】
(3)車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させる必要の無い場合であっても、除霜制御時にエンジンEGを作動させると、除霜制御時にエンジンEGを作動させない従来のハイブリッド車両と比較して、エンジン作動となる頻度が多くなって、車両燃費が悪化し、排ガスの排出量が増加してしまうという問題が生じる。このため、エンジン停止時に除霜制御を行うよりも、エンジン作動時に除霜制御を行う方が好ましい。
【0222】
そこで、本実施形態の車両用空調装置50は、図9のステップS22のごとく、エンジン停止時よりもエンジン作動時に除霜制御が実行されやすいように、ステップS23の着霜判定に用いる着霜判定値を、エンジン停止時よりもエンジン作動中の方が高くなるように設定している。これにより、本実施形態によれば、エンジンEGの作動時と停止時で同じ着霜判定値を用いる場合と比較して、車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させていない場合に、除霜制御のためにエンジンEGを作動させる頻度を低減でき、燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0223】
なお、本実施形態では、ステップS23で、室外熱交換器16よりも冷媒流れ下流側に設けた吸入温度センサ57で検出した冷媒の温度を用いて着霜判定したが、室外熱交換器16に設けた温度センサによって検出した冷媒の温度を用いて着霜判定しても良い。
【0224】
また、ステップS21、S22で選択した着霜判定値(第1、第2基準温度)を、それぞれ、他の温度に変更しても良く、第1、第2基準温度の差を本実施形態よりも大きくしたり、小さくしたりしても良い。
【0225】
(4)本実施形態の車両用空調装置50は、図10のステップS41、S45のごとく、エコノミーモードが設定されているときに、室外熱交換器16が着霜して除霜モードが設定された場合、エンジンEGに対して作動要求信号を出力しないとともに、PTCヒータ37に対して制御信号を出力して、PTCヒータ37による暖房を行うようになっている。
【0226】
これによれば、エコノミーモードが設定されているときは、除霜制御のためにエンジンEGを作動させないので、車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させていない場合に、除霜制御のためにエンジンEGを作動させることによる燃費の悪化を抑制できる。
【0227】
なお、本実施形態では、ステップS45で、PTCヒータ37の作動(PTCヒータON)を選択したが、ヒートポンプサイクルによる暖房時に、補助暖房としてPTCヒータ37が稼働している場合では、PTCヒータ37の稼働率を向上させるようにしても良い。例えば、PTCヒータ37が補助暖房装置として稼働している場合よりも、多い作動本数を選択して、PTCヒータ37の消費電力(加熱能力)を増大させても良い。
【0228】
また、本実施形態では、ステップS45で、PTCヒータ37の作動(PTCヒータON)を選択したが、PTCヒータ37の作動の代わり、もしくは、PTCヒータ37の作動に加えて、補助暖房用のシート暖房装置48の作動を選択しても良い。
【0229】
(5)本実施形態の車両用空調装置50は、図10のステップS41、S45のごとく、室外熱交換器16が着霜して除霜モードが設定された場合であって、室温が所定温度(本例では25℃)よりも高いと判定した場合に、乗員の暖房感が高いと判断して、エンジンEGに対して作動要求信号を出力しないとともに、PTCヒータ37に対して制御信号を出力して、PTCヒータ37による暖房を行うようになっている。
【0230】
本実施形態のように、室温が所定温度(本例では25℃)よりも高く、乗員の暖房感が高い場合では、エンジン冷却水による暖房のような大きな暖房能力は必要無く、PTCヒータ37による暖房を行っても、乗員は十分な暖房感が得られる。また、本実施形態によれば、除霜制御時であっても内燃機関を作動させないので、内燃機関を作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0231】
なお、ステップS41での判定に用いる所定温度は、25℃に限らず、他の温度に変更しても良い。また、本実施形態では、室温に基づいて乗員の暖房感が高いと判定したが、乗員の温度やシートの温度等に基づいて乗員の暖房感が高いか否かを判定しても良い。要するに、乗員の温度もしくは乗員周辺の温度に基づいて乗員の暖房感が高いか否かを判定すれば良い。因みに、乗員の温度を検出する手段としては、例えば、赤外線センサが採用可能であり、シート温度を検出する手段としては、シートに設置した温度センサ等が採用可能である。
【0232】
また、本実施形態では、ステップS45で、PTCヒータ37の作動(PTCヒータON)を選択したが、ヒートポンプサイクルによる暖房時に、補助暖房としてPTCヒータ37が稼働している場合では、PTCヒータ37の稼働率を向上させるようにしても良い。例えば、PTCヒータ37が補助暖房装置として稼働している場合よりも、多い作動本数を選択して、PTCヒータ37の消費電力(加熱能力)を増大させても良い。
【0233】
また、本実施形態では、ステップS45で、PTCヒータ37の作動(PTCヒータON)を選択したが、PTCヒータ37の作動の代わり、もしくは、PTCヒータ37の作動に加えて、補助暖房用のシート暖房装置48の作動を選択しても良い。
【0234】
(6)車両用空調装置50は、図9のステップS32、S33のごとく、除霜制御時に、吸入温度センサ57で検出した室外熱交換器16を流れる冷媒の温度が所定温度よりも高くなって、除霜が完了したと推測できる場合に、除霜制御を終了するようにしているので、除霜制御時間を必要最小限に抑えることができる。
【0235】
このため、本実施形態によれば、除霜制御時の暖房のためにエンジンEGを作動させる時間を短くでき、図9のステップS32、S33を実行しない場合と比較して、除霜制御のためにエンジンEGを作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0236】
なお、本実施形態では、ステップS32で、室外熱交換器16よりも冷媒流れ下流側に設けた吸入温度センサ57で検出した冷媒の温度を用いて判定したが、室外熱交換器16に設けた温度センサによって検出した冷媒の温度を用いて判定しても良い。
【0237】
(7)車両用空調装置50は、図9のステップS25、S26、S27のごとく、外気温が0℃よりも低い場合、除霜制御の実行時間を第1所定時間に設定し、外気温が0℃よりも高い場合、除霜制御の実行時間を第1所定時間よりも短い第2所定時間に設定している。
【0238】
ここで、室外熱交換器16の除霜は、外気温が高いほど早く完了し、特に、外気温が0℃よりも高い解氷温度域の場合の方が、外気温が氷結温度域の場合よりも早く完了する。
【0239】
よって、本実施形態のように、外気温が0℃よりも高い場合に、除霜制御の実行時間を短く設定することで、除霜制御時間を必要最小限に抑えることができる。このため、本実施形態によれば、除霜制御時の暖房のためにエンジンEGの作動時間を短くでき、除霜制御のためにエンジンEGを作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0240】
なお、本実施形態では、ステップS25での判定に用いる判定基準を0℃としたが、0℃よりも低い温度や、0℃よりも高い温度を判定基準としても良い。ただし、上述の通り、外気温が解氷温度域のとき除霜が早く完了することから、判定基準を解氷温度域の所定温度に設定することが好ましい。
【0241】
(第2実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS11で実行する圧縮機11の回転数決定処理に関するものである。
【0242】
図11は、ステップS11の要部を示すフローチャートであり、クーラサイクル(冷房モード)時における室内蒸発器26からの吹出空気の目標温度である目標吹出温度TEOの決定処理を示している。
【0243】
ここで、クーラサイクル時における圧縮機11の回転数は、上述のステップS11の説明の通り、室内蒸発器26の目標吹出温度TEOに基づいて、空調制御装置50に予め記憶されている制御マップを参照して決定される。
【0244】
本実施形態では、室内蒸発器26の目標吹出温度TEOを、下記の図11に示す制御処理によって決定する。
【0245】
まず、ステップS60で、空調制御装置50に予め記憶されている制御マップを参照し、外気温に基づいて仮の目標吹出温度f(TAMdisp)を設定する。本例では、図中のステップS60に記載のマップの通り、外気温が低いほどf(TAMdisp)を低く設定する。なお、f(TAMdisp)の最小温度を2℃とし、最高温度を9℃とする。
【0246】
続いて、ステップS61で、空調制御装置50に予め記憶されている制御マップを参照して、TAOに基づいて仮の目標吹出温度f(TAO)を設定する。本例では、図中のステップS61に記載のマップの通り、TAOが低いほどf(TAO)を低く設定する。なお、f(TAO)の最小温度を2℃とし、最高温度を9℃とする。
【0247】
続いて、ステップS62で、除霜カウント中か否かを判定する。すなわち、除霜モード(除霜フラグ=1)であるか否かを判定する。
【0248】
このとき、除霜中でなければ(NO判定の場合)、ステップS63で、除霜中か否かに基づく仮の目標吹出温度f(除霜)をf(TAMdisp)およびf(TAO)の最大温度である9℃に設定する。一方、除霜中であれば(YES判定の場合)、ステップS64で、除霜中か否かに基づく仮の目標吹出温度f(除霜)をf(TAMdisp)およびf(TAO)の最小温度よりも低い1℃に設定する。
【0249】
その後、ステップS65で、クーラサイクル時における室内蒸発器26の目標吹出温度TEOとして、f(TAMdisp)、f(TAO)および f(除霜)のうち最も小さい値を選択する。このため、室内蒸発器26の目標吹出温度TEOは、除霜制御時であれば、必ず、ステップS64で設定された温度(1℃)に決定され、すなわち、ステップS60、S61で選択されたTEOに対して減少補正される。一方、除霜制御以外であれば、ステップS63で決定された温度に制限されることなく、ステップS60、S61で外気温やTAOに応じて設定された温度に決定される。
【0250】
そして、このようにして決定された目標吹出温度TEOを用いて、クーラサイクル時における圧縮機11の回転数を決定する。すなわち、除霜制御時では、TEOが1℃となるように、圧縮機11の回転数を決定し、除霜制御以外では、TEOが2〜9℃の所望温度となるように、圧縮機11の回転数を決定する。
【0251】
このように、本実施形態では、空調制御装置50は、ステップS62、S64、S65によって、除霜制御時のTEOを除霜制御以外のTEOよりも低い温度に設定することで、除霜制御時の冷房負荷を上げ、除霜制御時の室外熱交換器16の温度を、除霜制御以外のときよりも高くすることできる。
【0252】
このため、本実施形態によれば、除霜制御時における室内熱交換器16の目標吹出温度TEOが除霜制御以外のときと同じ場合と比較して、除霜を早く完了することができ、除霜時間を短縮できる。
【0253】
この結果、本実施形態によれば、除霜制御時の暖房のためにエンジンEGを作動させる時間を短くでき、除霜制御時のTEOを除霜制御以外のTEOと同様に設定する場合と比較して、除霜制御のためにエンジンEGを作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0254】
また、本実施形態では、除霜制御以外のTEOを、除霜制御時のTEOよりも高い温度に設定することで、除霜制御以外でのクーラサイクル時のコンプレッサ稼動率を、除霜制御時よりも低減でき、省電力運転が可能となる。
【0255】
(第3実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS11で実行する圧縮機(コンプレッサ)11の回転数決定処理に関するものである。
【0256】
図12(a)は、ステップS11の要部を示すフローチャートである。図12(a)のフローチャートの制御処理は、オートスイッチ60bがオン(ON)されているとき等に実行される。
【0257】
ステップS70では、上述したヒートポンプサイクル(暖房モード)における基本的な決定手法を用いて前回のコンプレッサ回転数fHn−1に対する回転数変化量ΔfHを求める。図12(b)は、回転数変化量ΔfHを求めるためのファジー推論のルールの一例を示すものである。
【0258】
ステップS71では、前回のコンプレッサ回転数と回転数変化量ΔfHとを用いて、仮の今回のコンプレッサ回転数を求める。このとき、仮の今回のコンプレッサ回転数=前回のコンプレッサ回転数+回転数変化量ΔfHとする。
【0259】
続いて、ステップS72では、冷媒吸入温度が着霜判定値、本例では−12℃よりも低いか否かを判定する。すなわち、ステップS72では、室外熱交換器16が着霜したか否かを判定する。
【0260】
このとき、冷媒吸入温度が−12℃よりも低ければ(YES判定の場合)、ステップS73に進み、プレ空調中か否かを判定する。そして、プレ空調中であれば(YES判定の場合)、ステップS74に進み、コンプレッサ最高回転数を0[rpm]に設定することで、コンプレッサの停止を選択する。
【0261】
また、ステップS72で、冷媒吸入温度が−12℃よりも高いと判定した場合(NO判定の場合)や、ステップS73で、プレ空調中でないと判定した場合(NO判定の場合)、ステップS75に進み、コンプレッサ最高回転数を10000[rpm]に設定する。コンプレッサ最高回転数をこのように設定するのは、実質的にコンプレッサの回転数を制限しないという意味である。
【0262】
ステップS74もしくはステップS75の後、ステップS76で、今回のコンプレッサ回転数を最終決定する。本例では、ステップS71の仮の今回のコンプレッサ回転数およびステップS74、S75で設定したコンプレッサ最高回転数のうち小さい方を今回のコンプレッサ回転数とする(今回のコンプレッサ回転数=MIN(仮の今回のコンプレッサ回転数、コンプレッサ最高回転数))。
【0263】
なお、本実施形態では、図6のステップS6で、プレ空調中であれば、エンジンEGの作動を選択しないようにする。
【0264】
ところで、エンジンEGを作動させずにプレ空調を行う車両においては、第1実施形態のように、除霜制御時の暖房用の熱源を確保するために、エンジンEGを作動させることができない。
【0265】
したがって、プレ空調中にヒートポンプサイクルによる暖房から除霜制御に切り替えると、クーラサイクル作動によって室温が低下してしまうため、除霜制御中に乗員が乗り込むと、十分な暖房感が得られず、通常のプレ空調中に乗員が乗り込んだ場合と比較して、暖房感が低下するという問題が生じる。
【0266】
これに対して、本実施形態では、ステップS73、S74のごとく、プレ空調を行っているときは、コンプレッサを停止させ、冷凍サイクルの運転を停止させることにより、除霜制御を行わないので、暖房感が低下するという問題を解消できる。
【0267】
また、本実施形態では、ステップS73、S74で、ヒートポンプサイクルによる暖房時に室外熱交換器16が着霜して、暖房効率が悪くなったときに、ヒートポンプサイクルの作動を停止することとなる。そして、ヒートポンプサイクルの作動を停止させれば、室外熱交換器16の霜が外気温で徐々に解氷するので、乗員の乗車後に除霜制御する時間を短縮できる。
【0268】
因みに、プレ空調中に、室外熱交換器16が着霜した場合、上述の通り、ヒートポンプサイクルの作動を停止するが、室内凝縮器12が十分に暖まっている間、ケーシング内31の送風機32を作動させて、送風空気を加熱させても良い。
【0269】
(第4実施形態)
本実施形態は、図1〜4に記載の室外熱交換器16の車両搭載構造に関するものである。 図13は、本実施形態の室外熱交換器16の車両搭載構造を示している。なお、図13中の上下方向が鉛直方向である。
【0270】
本実施形態では、ヒートポンプサイクル時に吸熱器として機能する室外熱交換器16を、ラジエータ46および送風ファン16aと一体化して、車両のエンジンルーム内に配置している。このとき、室外熱交換器16を通過する風の流れ方向が水平方向よりも下側を向くように、室外熱交換器16を鉛直方向に対して斜めに配置している。
【0271】
具体的には、室外熱交換器16は、冷媒が内部を流れる扁平チューブ161およびチューブの外面に設けられた図示しないフィンを有している。扁平チューブ161およびフィンは、室外熱交換器16を通過する風の流れ方向が、熱交換コア面162、163に対して略垂直となるように設置されている。ここで、熱交換コア面162、163とは、冷媒と空気との間で熱交換を行う熱交換コアのうち、熱交換コアを流通する空気の流れ方向での端面を言う。そして、風上側の熱交換コア面162および風下側の熱交換コア面163は、鉛直方向に対して所定角度θをなしている。このため、室外熱交換器16を通過する風の流れ方向は、水平方向ではなく、水平方向に対して斜め下向きとなる。
【0272】
ここで、除霜制御によって生じた解氷水分が室外熱交換器16に残っていると、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器16に着霜が生じてしまう。これに対して、本実施形態では、室外熱交換器16を斜めに搭載して、室外熱交換器16内を風が斜め下方向に流れるようにしているので、室外熱交換器16内部での水はけが良くなり、室外熱交換器16から解氷水分が落ちやすくなる。これにより、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器16に着霜が生じることを防止できる。
【0273】
さらに、本実施形態によれば、除霜制御時の溶けかけの氷も落ちやすいので、除霜時間を短縮化できる。この結果、暖房時に除霜制御に切り替わっても、早期に通常の暖房に切り替えられるので、乗員の暖房感を向上できる。また、第1実施形態のように、除霜のために、エンジンEGを作動させた状態が続くと、燃費が悪化してしまうところ、本実施形態によれば、エンジンEGの作動時間を短縮できるので、燃費の悪化を抑制できる。
【0274】
ところで、本実施形態とは異なり、室外熱交換器16を鉛直方向に延びるように配置し、チューブ、フィンを鉛直方向に対して斜めに配置することでも、本実施形態と同様の効果が得られるが、そのような構造の熱交換器は一般的ではないため、製造コストが高くなってしまう。
【0275】
これに対して、本実施形態では、室外熱交換器16自体を鉛直方向に対して斜めに搭載することで、室外熱交換器16におけるチューブ、フィンの配置構造を、冷凍サイクルに用いられる一般的な熱交換器と同じ配置構造を採用できる。よって、本実施形態によれば、室外熱交換器16として冷凍サイクルに用いられる一般的な熱交換器を流用したり、室外熱交換器16の製造の際に、一般的な熱交換器の生産ライン・製造ノウハウを利用したりできるので、室外熱交換器16の製造コストを抑えることができる。
【0276】
なお、本実施形態では、室外熱交換器16を鉛直方向に対して斜めに配置したが、室外熱交換器16を水平方向に延びるように配置しても良い。この場合、室外熱交換器16を通過する風の流れ方向は鉛直方向(下向き)となるので、解氷水分や溶けかけの氷が落ちやすくなる。ちなみに、本発明者の実験結果によれば、熱交換コア面162、163の鉛直方向に対する角度θを、10度以上90度以下としたときに、解氷水分や溶けかけの氷が落ちやすく、除霜時間の短縮化の効果が大きい。
【0277】
(第5実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS12で実行する室外熱交換器16に送風する送風ファン16aの稼働率の決定処理に関するものである。本実施形態では、除霜制御中において、外気温が解氷温度域の所定温度よりも高い場合に送風ファン16の稼働率を高く設定することで、除霜時間の短縮化を図る。
【0278】
図14は、本実施形態における送風ファン16aの稼働率決定処理の内容を示すフローチャートである。
【0279】
ステップS80において、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクル(除霜モードも含む)か否かを判定する。
【0280】
このとき、冷凍サイクルの運転モードがヒートポンプサイクルであれば(NO判定の場合)、ステップS81に進み、送風ファン16aの稼働率を決定するために必要な各パラメータを判定する。
【0281】
送風ファン16aの稼働率を決定のために必要なパラメータとして、図14中のステップS81に示すように、吐出圧力センサ55で検出した冷媒圧力が高圧力か低圧力かを判定し、高外気温か低外気温か判定し、高室温か低室温か判定し、高車速か低車速かを判定する。
【0282】
そして、その判定結果を用いて、ステップS82で、送風ファン16aの稼働率を決定する。すなわち、図14のステップS82内のマップに示すように、冷媒圧力、熱負荷、車速に基づいて、送風ファン16aの稼働率を、送風能力が最大である「HI」、送風能力が最小である「LO」、送風ファン16aを停止する「OFF」のいずれかに決定する。
【0283】
具体的には、冷媒圧力が高圧力で、熱負荷が低室温かつ低外気温の場合、熱負荷が大きく、高い暖房能力が必要なので、低車速であれば、送風ファン16aの稼働率を「HI」とする。また、冷媒圧力が高圧力で、熱負荷が(低室温かつ低外気温)以外の場合、熱負荷が小さく、高い暖房能力を必要としないので、低車速であれば、送風ファン16aの稼働率を「LO」とする。一方、冷媒圧力が低圧力であれば、高い暖房能力を必要としていないので、低車速であれば、送風ファンの稼働率を「LO」とする。なお、高車速であれば、送風ファンを稼働させなくても送風できるので、他のパラメータに関係なく、送風ファンの稼働率を「OFF」とする。
【0284】
また、ステップS80において、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクルであれば(YES判定の場合)、ステップS83に進み、除霜中であるか否かを判定する。このとき、除霜モードでなければ(NO判定の場合)、ステップS84に進み、高外気温か低外気温かを判定する。その後、ステップS86に進み、ステップS81と同様に、外気温以外の送風ファン16aの稼働率を決定するために必要な各パラメータを判定する。
【0285】
一方、ステップS83において、除霜モード(除霜フラグ=1)であれば(YES判定の場合)、ステップS85に進み、ステップS84の除霜中以外の場合よりも低い判定基準を用いて、高外気温か低外気温かを判定する。本例では、図14のステップS85内のマップに示すように、判定基準を0℃〜0.5℃とし、制御ハンチングを防止するために、ヒステリシスを設定している。その後、ステップS86に進み、ステップS81と同様に、外気温以外の送風ファン16aの稼働率を決定するために必要な各パラメータを判定する。
【0286】
そして、ステップS87では、ステップS84、S85、S86で判定した結果を用いて、ステップS87中のマップのように、送風ファン16aの稼働率を決定する。具体的には、冷媒圧力が低圧力で、熱負荷が低室温かつ低外気温の場合、熱負荷が小さく、高い冷房能力を必要としないので、低車速であれば、送風ファン16aの稼働率を「LO」とし、高車速であれば、送風ファン16aを稼働させる必要がないので、送風ファン16aを「OFF」とする。また、冷媒圧力が低圧力で、熱負荷が(低室温かつ低外気温)以外の場合や、冷媒圧力が高圧力の場合、熱負荷が大きく、高い冷房能力を必要とするので、送風ファン16aの稼働率を「HI」とする。
【0287】
本実施形態では、除霜制御中であれば、クーラサイクルが選択されるので、ステップS80、S83、S85、S86、S87の順に進む。
【0288】
そして、冬季では、通常、室温が28℃よりも低いので、ステップS86で低室温と判定され、外気温が0℃よりも低ければ、ステップS85で低外気温と判定される。したがって、冷媒圧力が低圧力であって、外気温が0℃よりも低い場合、図14のステップS87内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温なので、低車速であれば、送風ファン16aは「LO」で作動する。
【0289】
一方、除霜制御中であって、外気温が0.5℃よりも高ければ、ステップS85で高外気温と判定され、冬季であれば、ステップS86で低室温と判定される。したがって、冷媒圧力が低圧力であって、外気温が0.5℃よりも高い場合、図14のステップS87内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温に該当しないので、送風ファン16aは車速に関係なく「HI」作動となる。
【0290】
このように、本実施形態では、除霜制御中であって、外気温が判定基準よりも高い場合、送風ファン16aの稼働率を、外気温が判定基準よりも低い場合における送風ファン16aの稼働率と比較して高く設定している。また、本実施形態では、外気温の判定基準を氷が溶け始める温度である0℃〜0.5℃に設定している。
【0291】
ここで、除霜制御中において、冬季でも外気温が0℃よりも高ければ、外気温によって解氷が促進する。したがって、本実施形態のように、外気温が0℃よりも高い高外気温のときに、送風ファン16aを「HI」作動させることで、解氷を促進させることができ、除霜時間を短縮することができる。
【0292】
さらに、除霜制御中、解氷水分が室外熱交換器16内に残っていると、ヒートポンプサイクル運転の再開後、すぐに着霜が生じてしまうところ、本実施形態では、送風ファン16aを「HI」作動させることで、解氷水を飛ばして、再着霜を防止することができる。また、除霜制御中に送風ファン16aを「HI」作動させることで、溶けかけの氷も落ちやすくなるとともに、送風ファン16aの震動により、室外熱交換器16も震動することで、さらに、水や氷が落ちやすくなるため、除霜時間を短縮できる。
【0293】
なお、本実施形態では、外気温の判定基準を0℃〜0.5℃に設定したが、解氷温度域の温度であれば、他の温度に設定しても良い。例えば、外気温の判定基準を2℃〜2.5℃に設定しても良い。この場合、外気温が2.5℃よりも高ければ、送風ファン16aは車速に関係なく「HI」作動となり、外気温が2℃よりも低ければ、送風ファン16aは、車速に応じて、「LO」作動か、「OFF」となる。
【0294】
(第6実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS12で実行する室外熱交換器16に送風する送風ファン16aの稼働率の決定処理に関するものである。本実施形態では、除霜制御中において、外気温が凍結温度域の所定温度よりも低い場合に送風ファン16の稼働率を低く設定することで、除霜時間の短縮化を図る。
【0295】
図15は、本実施形態における送風ファン16aの稼働率決定処理の内容を示すフローチャートである。以下では、主に第5実施形態と異なる点について説明する。
【0296】
ステップS80において、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクル(除霜モードも含む)か否かを判定する。このとき、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクルであれば(YES判定の場合)、次のステップS91以降で、送風ファン16aの稼働率を決定するパラメータの1つである「低外気温下での除霜モード」か否かを判定する。
【0297】
すなわち、ステップS91で、外気温が0℃よりも低いか否かを判定し、外気温が0℃よりも高ければ(NO判定の場合)、低外気温下での除霜モードではないので、ステップS92で、「低外気温下での除霜モード以外」とする。
【0298】
一方、ステップS91で、外気温が0℃よりも低いと判定した場合(YES判定の場合)、ステップS93に進み、除霜中であるか否かを判定する。このとき、除霜中でなければ(NO判定の場合)、ステップS92に進み、「低外気温下での除霜モード以外」とする。また、除霜中であれば(YES判定の場合)、ステップS94に進み、「低外気温下での除霜モード」とする。
【0299】
ステップS92、S94の後、ステップS95で、低外気温下での除霜モードのパラメータを除く、送風ファン16aの稼働率を決定するための他のパラメータを判定する。他のパラメータは、例えば、外気温、室温、車速、冷媒圧力であり、本実施形態では、除霜中、除霜中以外に関係なく、外気温については同じ判定基準を用いている。
【0300】
続いて、ステップS96において、ステップS92、S94、S95で判定した結果を用いて、図15のステップS96内に記載のマップのように、送風ファン16aの稼働率を決定する。
【0301】
本実施形態では、除霜制御中であれば、クーラサイクルが選択されるので、ステップS80からステップS91以降に進む。
【0302】
そして、除霜制御中であって、外気温が0℃よりも高い場合では、ステップS91、S92の順に進んで「低外気温下での除霜モード以外」とされ、冬季であれば、ステップS95で室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図15のステップS96内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、低外気温下除霜のパラメータが除霜以外なので、低車速であれば、送風ファン16aは「LO」で作動し、高車速であれば、送風ファン16aは「OFF」となる。
【0303】
一方、除霜制御中であって、外気温が0℃よりも低い場合では、ステップS91、S93、S94の順に進んで「低外気温下での除霜モード」とされ、冬季であれば、ステップS95で室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図15のステップS96内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、低外気温下除霜のパラメータが除霜なので、送風ファン16aは、高車速、低車速であっても「OFF」となる。
【0304】
このように、本実施形態では、冷媒圧力が低圧力であって、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、車速が低車速であるときの送風ファン16aの稼働率を、除霜制御中の温度が0℃よりも高ければ、低外気温下での除霜以外なので「LO」とし、除霜制御中の温度が0℃よりも低ければ、除霜制御中の温度が0℃よりも高い場合の稼働率よりも低い「OFF」としている。
【0305】
ここで、除霜制御中の外気温が0℃よりも低い氷結温度域の場合、室外熱交換器16に送風すると、解氷水分の再氷結を促してしまい、除霜が阻害されて除霜時間が長くなってしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、除霜制御中の外気温が氷結温度域の場合に、送風ファン16aを停止することで、解氷水分の再氷結を抑制できるので、除霜時間を短縮することができる。
【0306】
なお、本実施形態では、除霜制御中の温度が0℃よりも低い場合に、送風ファン16を停止させていたが、除霜制御中の温度が0℃よりも高い場合と比較して、送風ファン16の稼働率を低くすれば良く、「LO」よりも低い送風量(送風能力)を選択しても良い。
【0307】
また、本実施形態では、ステップS91での外気温の判定基準を0℃としたが、氷結温度域の温度であれば他の温度に変更しても良い。例えば、外気温の判定基準を−1℃に設定しても良い。この場合、外気温が−1℃よりも高ければ、送風ファン16aを「LO」とし、外気温が−1℃よりも低ければ、送風ファン16aを「OFF」とする。
【0308】
(第7実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS12で実行する室外熱交換器16に送風する送風ファン16aの稼働率の決定処理に関するものである。本実施形態では、除霜制御中において、室外熱交換器16に付着した霜の解氷が進んだ場合に送風ファン16の稼働率を高くすることで、除霜時間の短縮化を図る。
【0309】
図16は、本実施形態における送風ファン16aの稼働率決定処理の内容を示すフローチャートである。以下では、主に第5実施形態と異なる点について説明する。
【0310】
ステップS80において、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクル(除霜モードも含む)か否かを判定する。このとき、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクルであれば(YES判定の場合)、次のステップ101以降で、送風ファン16aの稼働率を決定するパラメータの1つである「除霜促進モード」か否かを判定する。この「除霜促進モード」とは、除霜の後期段階のように、除霜が進んで室外熱交換器16に付着した霜(氷)が解氷した状態を意味し、例えば、解氷した領域の割合が、霜が残っている領域よりも多い状態を意味する。
【0311】
具体的には、ステップS101で、冷媒吸入温度が5℃よりも高いか否かを判定する。冷媒吸入温度が5℃よりも高い場合(YES判定の場合)、除霜中であれば、除霜が進んだと判断できるため、ステップS102に進み、除霜中か否かを判定する。そして、除霜中であれば(YES判定の場合)、ステップS103で、除霜促進モードパラメータを「除霜促進モード」とする。
【0312】
一方、ステップS101で、冷媒吸入温度が5℃よりも低いと判定した場合(NO判定の場合)は、除霜中であっても除霜が進んでいないと判断できるため、ステップS104に進み、除霜促進モードパラメータを「除霜促進モード以外」とする。また、ステップS102で、除霜中以外と判定した場合(NO判定の場合)も、ステップS104に進み、除霜促進モードパラメータを「除霜促進モード以外」とする。
【0313】
ステップS103、S104の後、ステップS105で、除霜促進モードのパラメータを除く、送風ファン16aの稼働率を決定するための他のパラメータを判定する。他のパラメータは、例えば、外気温、室温、車速、冷媒圧力であり、本実施形態では、除霜中、除霜中以外に関係なく、外気温については同じ判定基準を用いている。
【0314】
続いて、ステップS106において、ステップS103、S104、S105で判定した結果を用いて、図16のステップS106内に記載のマップのように、送風ファン16aの稼働率を決定する。
【0315】
本実施形態では、除霜制御中であれば、クーラサイクルが選択されるので、ステップS80からステップS101以降に進む。
【0316】
そして、除霜制御中であって、冷媒吸入温度が5℃以下の場合では、ステップS101で、除霜が進んでいないと判断されるので、ステップS104に進んで「除霜促進モード以外」とされる。また、冬季であれば、ステップS105で、外気温が低外気温と判定され、室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図16のステップS106内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、除霜促進モードのパラメータが促進以外なので、低車速であれば、送風ファン16aは「LO」で作動し、高車速であれば、送風ファン16aは「OFF」となる。
【0317】
一方、除霜制御中であって、冷媒吸入温度が5℃よりも高い場合では、ステップS101、S102、S103の順に進んで「除霜促進モード」とされる。また、ステップS105で、外気温が低外気温と判定され、室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図16のステップS106内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、除霜促進モードのパラメータが促進なので、送風ファン16aは、高車速、低車速であっても「HI」となる。
【0318】
このように、本実施形態では、除霜制御中の冷媒吸入温度が5℃よりも高ければ、除霜が進んだと判断して、除霜制御中の冷媒吸入温度が5℃以下の場合の稼働率(低車速のときLO、高車速のときOFF)よりも高い「HI」として、送風ファン16aの送風能力を向上(増大)させている。
【0319】
ここで、除霜制御中、解氷水分が室外熱交換器16内に残っていると、ヒートポンプサイクル運転の再開後、すぐに着霜が生じてしまうところ、本実施形態では、除霜が進んだと判断した場合に、送風ファン16aを「HI」作動させて解氷水分を飛ばす(落とす)ので、ヒートポンプサイクル運転の再開後の再着霜を防止することができる。
【0320】
さらに、本実施形態によれば、除霜制御中に送風ファン16aを「HI」作動させることで、溶けかけの氷も飛ばす(落とす)とともに、送風ファン16aの震動により、室外熱交換器16も震動することで、さらに、水や氷が落ちやすくなるため、除霜時間を短縮できる。
【0321】
なお、本実施形態では、ステップS101で冷媒吸入温度の判定基準を5℃に設定していたが、解氷が進んだと判断できる温度であれば、他の温度に変更しても良い。また、本実施形態では、ステップS101で、冷媒吸入温度が判定基準よりも高い場合に、解氷が進んだと判断したが、その代わりに、除霜時間が所定時間を経過した場合に、解氷が進んだと判断しても良い。
【0322】
(第8実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS12で実行する室外熱交換器16に送風する送風ファン16aの稼働率の決定処理に関するものである。本実施形態では、除霜制御中において、除霜が初期段階であれば、送風ファン16の稼働率を低くすることで、除霜時間の短縮化を図る。
【0323】
図17は、本実施形態における送風ファン16aの稼働率決定処理の内容を示すフローチャートである。以下では、主に第5実施形態と異なる点について説明する。
【0324】
ステップS80において、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクル(除霜モードも含む)か否かを判定する。このとき、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクルであれば(YES判定の場合)、次のステップS111以降で、送風ファン16aの稼働率を決定するパラメータの1つである「除霜モード」が「除霜初期」か「除霜初期以外」かを判定する。この「除霜初期」とは、霜が解氷していない解氷が進む前の状態を意味し、例えば、霜が残っている領域の割合が解氷した領域よりも多い状態を意味する。
【0325】
具体的には、ステップS111で、冷媒吸入温度が5℃よりも低いか否かを判定する。冷媒吸入温度が5℃よりも低い場合(YES判定の場合)、除霜中であれば、除霜初期と判断できるため、ステップS112に進み、除霜中か否かを判定する。そして、除霜中であれば(YES判定の場合)、ステップS113で、除霜モードパラメータを「除霜初期」とする。
【0326】
一方、ステップS111で、冷媒吸入温度が5℃以上と判定した場合(NO判定の場合)は、除霜中であっても除霜が進んだ除霜後期と判断できるため、ステップS114に進み、除霜モードパラメータを「除霜初期以外」とする。また、ステップS112で、除霜中以外と判定した場合(NO判定の場合)も、ステップS114に進み、除霜モードパラメータを「除霜初期以外」とする。
【0327】
ステップS113、S114の後、ステップS115で、除霜モードのパラメータを除く、送風ファン16aの稼働率を決定するための他のパラメータを判定する。他のパラメータは、例えば、外気温、室温、車速、冷媒圧力であり、本実施形態では、除霜中、除霜中以外に関係なく、外気温については同じ判定基準を用いている。
【0328】
続いて、ステップS116において、ステップS113、S114、S115で判定した結果を用いて、図17のステップS116内に記載のマップのように、送風ファン16aの稼働率を決定する。
【0329】
本実施形態では、除霜制御中であれば、クーラサイクルが選択されるので、ステップS80からステップS111以降に進む。
【0330】
そして、除霜制御中であって、冷媒吸入温度が5℃以上の場合では、ステップS111で、除霜初期ではないと判断されるので、ステップS114に進んで「除霜初期以外」とされる。また、冬季であれば、ステップS115で、外気温が低外気温と判定され、室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図17のステップS116内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、除霜モードのパラメータが除霜初期以外なので、低車速であれば、送風ファン16aは「LO」で作動し、高車速であれば、送風ファン16aは「OFF」となる。
【0331】
一方、除霜制御中であって、冷媒吸入温度が5℃よりも低い場合では、ステップS111、S112、S113の順に進んで「除霜初期」とされる。また、ステップS105で、外気温が低外気温と判定され、室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図17のステップS116内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、除霜モードのパラメータが除霜初期なので、送風ファン16aは、高車速、低車速どちらのときも「OFF」となる。
【0332】
このように、本実施形態では、車速が低車速のときを比較してわかるように、除霜制御中の冷媒吸入温度が5℃よりも低ければ、除霜初期であると判断して、送風ファン16aの稼働率を、除霜制御中の冷媒吸入温度が5℃以上の場合の稼働率(LO)よりも低い「OFF」として、送風ファン16aの送風能力を減少させている。
【0333】
ここで、除霜制御では、冷凍サイクルの運転モードをクーラサイクルとし、室外熱交換器16の温度を上昇させることで、室外熱交換器16に生じた霜を溶かすが、除霜初期に送風ファン16が室外熱交換器16に送風すると、室外熱交換器16で冷媒が放熱し、室外熱交換器16の温度上昇が阻害され、解氷が進まなくなってしまう。
【0334】
そこで、本実施形態では、除霜初期段階であれば、送風ファン16aを停止することにより、除霜制御時の室外熱交換器16の温度上昇を促進でき、解氷を促進できるので、除霜初期段階時に送風ファン16aを作動させる場合と比較して、除霜時間を短縮することができる。
【0335】
なお、本実施形態では、除霜初期段階の場合に送風ファン16を停止させていたが、除霜初期段階の場合の送風ファン16の稼働率を、「LO」よりも低い送風能力としても良く、このように、除霜初期段階以外の場合に決定される送風ファン16の稼働率よりも低くすることでも、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0336】
また、本実施形態では、ステップS111で冷媒吸入温度の判定基準を5℃に設定していたが、除霜初期段階と判断できる温度であれば、他の温度に変更しても良い。また、本実施形態では、ステップS111で、冷媒吸入温度が判定基準よりも低い場合に、除霜初期段階と判断したが、その代わりに、除霜の経過時間が所定時間よりも短い場合に、除霜初期段階と判断しても良い。
【0337】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、冷凍サイクル10が、室内凝縮器12と室内蒸発器26との2つの室内熱交換器を有していたが、ヒートポンプサイクルとクーラサイクルとが切替可能な構成であれば、冷凍サイクル10が1つの室内熱交換器を有する構成であっても良い。
【0338】
(2)上述の第3〜8実施形態では、第1実施形態と同様に、室外熱交換器16が着霜した場合に、空調制御装置50がエンジンEGに対して作動要求信号を出力して、エンジンEGを作動させていたが、第1実施形態と異なり、空調制御装置50がエンジンEGに対して作動要求信号をせずに除霜制御する場合に、第3〜8実施形態を実施することも可能である。
【0339】
(3)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。
【0340】
(4)上述の各実施形態では、本発明の車両用空調装置をハイブリッド車両に適用した例について説明したが、本発明の適用対象はハイブリッド車両に限定されるものではなく、例えばエンジンを停止することで省燃費を図るアイドリングストップ車両等、種々の車両に本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0341】
10 蒸気圧縮式冷凍サイクル
11 圧縮機
12 室内凝縮器(室内熱交換器)
16 室外熱交換器
16a 送風ファン(室外送風機)
26 室内蒸発器(室内熱交換器)
36 ヒータコア(加熱手段)
37 PTCヒータ(電気ヒータ)
48 シート暖房装置(電気ヒータ)
50 空調制御装置(制御手段)
EG エンジン(内燃機関)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプサイクルを備える車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプサイクルを有する車両用空調装置では、ヒートポンプサイクルの室外熱交換器が着霜した場合、ヒートポンプサイクルをクーラサイクルに切り替えて、室外熱交換器の除霜を行っている。
【0003】
また、特許文献1には、ヒートポンプサイクルと、エンジン冷却水を熱源として車室内への送風空気を加熱するヒータコアとを有する車両用空調装置が記載されている。そして、この車両用空調装置では、除霜運転中においても十分な暖房感を確保するため、ヒートポンプサイクルの室外熱交換器が着霜した場合であって、エンジン冷却水が所定温度よりも高いときに、ヒートポンプサイクルをクーラサイクルに切り替えて、室外熱交換器の除霜を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−174474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前者の車両用空調装置において、ヒートポンプサイクルの室外熱交換器が着霜した場合に、ヒートポンプサイクルをクーラサイクルに切り替えて、室外熱交換器の除霜を行う際、除霜時間が長いと、乗員の暖房感が低下してしまうという問題がある。
【0006】
また、後者の特許文献1に記載の車両用空調装置は、ハイブリッド車両の電気モータ走行時や、アイドリングストップ車両の停車時のように、車両走行の駆動源としてエンジン作動を必要としない場合には、除霜運転中においても十分な暖房感を確保するという目的を達成できないという問題がある。
【0007】
すなわち、エンジン冷却水の温度が低い状態のまま、エンジンが停止している場合、エンジン停止中は、いつまでたっても除霜が行えないか、エンジン停止中にヒートポンプサイクルによる暖房運転からクーラサイクルによる除霜運転に切り替えると、暖房に必要な熱源が不足するため、吹出温が低下してしまい、乗員の暖房感が低下するという問題が生じる。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、除霜運転による乗員の暖房感の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段(36)と、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力することを特徴とする。
【0010】
これによると、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、内燃機関(EG)が停止していれば、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力して、内燃機関(EG)を作動させるので、内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする暖房を行うことができる。したがって、本発明によれば、車両走行の駆動源として内燃機関を作動させていない場合であっても、除霜制御時の暖房用の熱源を確保することができるので、除霜制御時に乗員の暖房感が低下することを抑制できる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、制御手段(50)は、室外熱交換器(16)が着霜した場合において、冷却水の温度が所定温度よりも低いときは、冷凍サイクル(10)をヒートポンプサイクルとして作動させるとともに、冷却水の温度が所定温度よりも高いときに、除霜制御を行うことを特徴とする。
【0012】
ここで、内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする暖房を行う場合であっても、冷却水が十分に暖まっていない状態で、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えてしまうと、吹出温が低下してしまう。
【0013】
これに対して、本発明によれば、室外熱交換器が着霜した場合、内燃機関の冷却水の温度が所定温度まで上昇するまでは、ヒートポンプサイクルによる暖房を継続し、内燃機関の冷却水の温度が所定温度まで上昇して、暖房用の熱源を十分に確保できた状態になったとき、除霜制御に切り替わるようにすることができる。したがって、本発明によれば、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えても、吹出温を低下させることなく、暖房を継続することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、制御手段(50)は、ヒートポンプサイクル時に室外熱交換器を流れる冷媒の温度が判定基準よりも低い場合に除霜制御を行うとともに、内燃機関(EG)の作動中の判定基準を、内燃機関(EG)の停止時の判定基準よりも高い温度に設定することを特徴とする。
【0015】
ここで、車両走行の駆動源として内燃機関を作動させていない場合に、内燃機関を作動させると、その分、燃費が悪化し、排ガスの排出量が増加してしまう。このため、内燃機関の停止時に除霜制御を行うよりも、内燃機関の作動時に除霜制御を行う方が好ましい。
【0016】
そこで、本発明では、内燃機関の停止時よりも作動中に除霜制御が実行されやすいように、内燃機関の作動中での除霜制御を行うか否かの判定基準を、内燃機関の停止時の判定基準よりも高い温度に設定する。これにより、本発明によれば、内燃機関の作動時と停止時で同じ判定基準を用いる場合と比較して、車両走行の駆動源として内燃機関を作動させていない場合に、除霜制御のために内燃機関を作動させる頻度を低減でき、燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、制御手段(50)は、エコノミースイッチ(60d)が操作されてエコノミーモードが設定されているときに、室外熱交換器(16)が着霜した場合、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力しないとともに、電気ヒータ(37、48)に対して制御信号を出力して、電気ヒータ(37、48)による暖房を行うことを特徴とする。
【0018】
これによれば、エコノミーモードが設定されているときは、除霜制御のために内燃機関を作動させないので、車両走行の駆動源として内燃機関を作動させていない場合に、除霜制御のために内燃機関を作動させることによる燃費の悪化を抑制できる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、制御手段(50)は、除霜制御時において、室外熱交換器(16)を流れる冷媒の温度が所定温度よりも高い場合に、除霜制御を終了することを特徴とする。
【0020】
これによれば、除霜制御時に、室外熱交換器を流れる冷媒の温度が所定温度よりも高くなって、除霜が完了したと推測できる場合に、除霜制御を終了するようにしているので、除霜制御時間を必要最小限に抑えることができる。このため、本発明によれば、除霜制御時の暖房のために内燃機関を作動させる時間を短くでき、除霜制御のために内燃機関を作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、制御手段(50)は、外気温が所定温度よりも低い場合に、除霜制御の実行時間を第1所定時間に設定し、外気温が所定温度よりも高い場合に、第1所定時間よりも短い第2所定時間に設定して、除霜制御を行うことを特徴とする。
【0022】
室外熱交換器の除霜は外気温が高いほど早く完了することから、本発明のように、外気温が高い場合に、除霜制御の実行時間を短く設定することで、除霜制御時間を必要最小限に抑えることができる。このため、本発明によれば、除霜制御時の暖房のために内燃機関を作動させる時間を短くでき、除霜制御のために内燃機関を作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0023】
請求項7に記載の発明では、制御手段(50)は、室外熱交換器(16)が着霜した場合であって、乗員もしくは乗員周辺の温度が所定温度よりも低く、乗員の暖房感が低いと判定した場合に、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力し、
室外熱交換器(16)が着霜した場合であって、乗員もしくは乗員周辺の温度が所定温度よりも高く、乗員の暖房感が高いと判定した場合に、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力しないとともに、電気ヒータ(37、48)に対して制御信号を出力して、電気ヒータ(37、48)による暖房を行うことを特徴とする。
【0024】
ここで、乗員の暖房感が高い場合、内燃機関の冷却水を熱源とする暖房を行わなくても、電気ヒータによる暖房によって、乗員は十分な暖房感が得られる。したがって、本発明によれば、除霜制御時において、乗員の暖房感が高ければ、除霜制御のために内燃機関を作動させる代わりに、電気ヒータによる暖房を行うことで、十分な暖房感を確保しつつ、内燃機関を作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0025】
請求項8に記載の発明では、制御手段(50)は、除霜制御時における室内熱交換器(26)の目標温度を、除霜制御以外でのクーラサイクル時における室内熱交換器(26)の目標温度と比較して、低く設定することを特徴とする。
【0026】
これによれば、除霜制御時における室内熱交換器の目標温度を、除霜制御以外での室内熱交換器の目標温度よりも低くすることで、除霜制御時の冷房負荷を上げ、除霜制御時の室外熱交換器の温度を、除霜制御以外のときよりも高くすることできる。このため、本発明によれば、除霜制御時における室内熱交換器の目標温度が除霜制御以外のときと同じ場合と比較して、除霜を早く完了することができ、除霜時間を短縮できる。
【0027】
請求項9に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を開始する乗車前空調制御を行っているときは、除霜制御を行わないとともに、乗車前空調制御を行っていないときに、除霜制御を行うことを特徴とする。
【0028】
ところで、乗車前空調制御中にヒートポンプサイクルによる暖房から除霜制御に切り替えると、クーラサイクル作動によって室温が低下してしまうため、除霜制御中に乗員が乗り込むと、十分な暖房感が得られず、通常の乗車前空調制御中に乗員が乗り込んだ場合と比較して、暖房感が低下するという問題が生じる。
【0029】
これに対して、本発明では、乗車前空調制御を行っているときは、除霜制御を行わないので、暖房感が低下するという問題を解消できる。
【0030】
請求項10に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
室外熱交換器(16)は、室外熱交換器(16)を通過する風の流れが水平方向よりも下側を向くように、鉛直方向に対して斜めに配置されていることを特徴とする。
【0031】
これによれば、室外熱交換器を通過する風の流れが水平方向よりも下側を向くように、室外熱交換器を鉛直方向に対して斜めに配置することで、除霜制御時に生じる解氷水分や溶けかけの氷を落ちやすくしているので、早期に除霜を完了でき、除霜時間を短縮することができる。
【0032】
そして、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えると、室温が低下して、乗員の暖房感が低下してしまうところ、本発明によれば、除霜時間を短縮できることから、除霜制御からヒートポンプサイクルによる暖房に早期に切り替えられるので、乗員の暖房感の低下を抑制できる。
【0033】
また、除霜制御によって生じた解氷水分が室外熱交換器に残っていると、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じてしまう。これに対して、本発明によれば、解氷水分が落ちやすくなっているので、解氷水分が室外熱交換器に残ることを防止でき、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じることを防止できる。
【0034】
請求項11に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、除霜制御時において、外気温が解氷温度域の所定温度よりも高い場合、室外送風機(16a)の稼働率を、外気温が所定温度よりも低い場合に設定する室外送風機(16a)の稼働率と比較して、高く設定することを特徴とする。
【0035】
ここで、除霜制御時において、外気温が解氷温度域の所定温度よりも高ければ、外気温によって解氷が促進する。したがって、本発明のように、外気温が解氷温度域の所定温度よりも高い場合に、室外送風機の稼働率を高くすることで、解氷を促進させることができ、除霜時間を短縮することができる。
【0036】
そして、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えると、室温が低下して、乗員の暖房感が低下してしまうところ、本発明によれば、除霜時間を短縮できることから、除霜制御からヒートポンプサイクルによる暖房に早期に切り替えられるので、乗員の暖房感の低下を抑制できる。
【0037】
また、除霜制御によって生じた解氷水分が室外熱交換器に残っていると、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じてしまう。これに対して、本発明によれば、室外送風機の稼働率を高くすることで、解氷水分を飛ばすことができるので、解氷水分が室外熱交換器に残ることを防止でき、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じることを防止できる。
【0038】
請求項12に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、 室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、除霜制御時において、外気温が氷結温度域の所定温度よりも低い場合、室外送風機(16a)の稼働率を、外気温が所定温度よりも高い場合に設定する室外送風機(16a)の稼働率と比較して、低く設定することを特徴とする。
【0039】
ここで、除霜制御時の外気温が氷結温度域の所定温度よりも低い場合、室外送風機から室外熱交換器への送風量が多いと、解氷水分の再氷結を促してしまい、除霜が阻害されて除霜時間が長くなってしまう。
【0040】
これに対して、本発明では、除霜制御時の外気温が氷結温度域の所定温度よりも低い場合に、室外送風機の稼働率を低くしているので、解氷水分の再氷結を抑制でき、除霜時間を短縮することができる。
【0041】
そして、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えると、室温が低下して、乗員の暖房感が低下してしまうところ、本発明によれば、除霜時間を短縮できることから、除霜制御からヒートポンプサイクルによる暖房に早期に切り替えられるので、乗員の暖房感の低下を抑制できる。
【0042】
請求項13に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、 室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、除霜制御時において、室外熱交換器(16)に付着した霜の解氷が進んだ場合、室外送風機(16a)の稼働率を、解氷が進んでいない場合に設定する室外送風機(16a)の稼働率と比較して、高く設定することを特徴とする。
【0043】
これによれば、室外熱交換器に付着した霜の解氷が進んだ場合に、室外送風機の稼働率を高くすることで、解氷水分や溶けかけの氷を飛ばすことができるので、早期に除霜を完了でき、除霜時間を短縮することができる。
【0044】
そして、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えると、室温が低下して、乗員の暖房感が低下してしまうところ、本発明によれば、除霜時間を短縮できることから、除霜制御からヒートポンプサイクルによる暖房に早期に切り替えられるので、乗員の暖房感の低下を抑制できる。
【0045】
また、除霜制御によって生じた解氷水分が室外熱交換器に残っていると、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じてしまう。これに対して、本発明によれば、室外送風機(16a)の稼働率を高くすることで、解氷水分を飛ばすことができるので、解氷水分が室外熱交換器に残ることを防止でき、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器に着霜が生じることを防止できる。
【0046】
請求項14に記載の発明では、ヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、 室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、室外熱交換器(16)が着霜した場合に、室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、冷凍サイクル(10)を作動させて、室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、除霜制御時において、室外熱交換器(16)に付着した霜が解氷する前の除霜初期段階の場合、室外送風機(16a)の稼働率を、除霜制御時の除霜初期段階以外の場合に設定する室外送風機(16a)の稼働率と比較して、低く設定することを特徴とする。
【0047】
ここで、除霜制御では、冷凍サイクルの運転モードをクーラサイクルとし、室外熱交換器の温度を上昇させることで、室外熱交換器に生じた霜を溶かすが、除霜初期段階の場合に、室外送風機の稼働率が高いと、室外熱交換器の温度上昇が阻害され、解氷が進まなくなってしまう。
【0048】
これに対して、本発明によれば、除霜初期段階の場合、室外送風機の稼働率を低くしているので、除霜制御時の室外熱交換器の温度上昇を促進でき、解氷を促進できるので、除霜時間を短縮することができる。
【0049】
そして、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えると、室温が低下して、乗員の暖房感が低下してしまうところ、本発明によれば、除霜時間を短縮できることから、除霜制御からヒートポンプサイクルによる暖房に早期に切り替えられるので、乗員の暖房感の低下を抑制できる。
【0050】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、冷房モード時を示している。
【図2】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、暖房モード時を示している。
【図3】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、第1除湿モード時を示している。
【図4】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、第2除湿モード時を示している。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部の構成図である。
【図6】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS14の詳細を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態の車両用空調装置の各運転モードにおける除湿能力および暖房能力を示す図表である。
【図9】第1実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図10】第1実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図13】第4実施形態の室外熱交換器16の車両搭載構造を示す図である。
【図14】第5実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図15】第6実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図16】第7実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図17】第8実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0053】
(第1実施形態)
図1〜図9により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の車両用空調装置を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用している。図1〜図4は、車両用空調装置1の全体構成図である。
【0054】
この車両用空調装置は、車室内を冷房する冷房モード(COOLサイクル)、車室内を暖房する暖房モード(HOTサイクル)、車室内を除湿する第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)の冷媒回路を切替可能に構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を備えている。図1〜図4は、それぞれ、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モード時の冷媒の流れを実線矢印で示している。
なお、冷房モードは、冷凍サイクル10をクーラサイクルとして運転するモードであり、冷却能力および除湿能力を有している。したがって、冷房モードを冷却除湿モードと表現することもできる。
【0055】
また、暖房モードおよび第1、第2除湿モードは、冷凍サイクル10をヒートポンプサイクルとして運転するモードである。このヒートポンプサイクルによる3つのモードのうち暖房モードは、高い暖房能力を有しているが除湿能力を有していない。したがって、暖房モードを除湿無しヒートポンプサイクルと表現することもできる。
【0056】
ヒートポンプサイクルによる3つのモードのうち第1、第2除湿モードは、除湿能力を有しているが暖房能力は暖房モードよりも劣る。したがって、第1、第2除湿モードを除湿有りヒートポンプサイクルと表現することもできる。
【0057】
より具体的には、第1除湿モードは、暖房能力に対して除湿能力を優先する除湿モードであり、第2除湿モードは、除湿能力に対して暖房能力を優先する除湿モードである。したがって、第1除湿モードを低温除湿モードあるいは単なる除湿モード、第2除湿モードを高温除湿モードあるいは除湿暖房モードと表現することもできる。
【0058】
因みに、図8の図表は、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モードの除湿能力および暖房能力を比較して示したものである。すなわち、冷房モードは、除湿能力は最も大きいが暖房能力は無い。したがって、暖房時に冷房モードを選択するときは、冷凍サイクル10以外の加熱手段(本例では、後述するヒータコア36やPTCヒータ37)を併用することとなる。
【0059】
暖房モードは、除湿能力は無いが暖房能力は最も大きい。第1除湿モードは、除湿能力は中程度であるが暖房能力は小さい。第2除湿モードは、除湿能力は小さいが暖房能力は中程度である。
【0060】
冷凍サイクル10は、圧縮機11、室内熱交換器としての室内凝縮器12および室内蒸発器26、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての温度式膨張弁27および固定絞り14、並びに、冷媒回路切替手段としての複数(本実施形態では5つ)の電磁弁13、17、20、21、24等を備えている。
【0061】
また、この冷凍サイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0062】
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
【0063】
電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。したがって、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0064】
圧縮機11の吐出側には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、車両用空調装置の室内空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器26通過後の送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット30の詳細については後述する。
【0065】
室内凝縮器12の冷媒出口側には、電気式三方弁13が接続されている。この電気式三方弁13は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。
【0066】
より具体的には、電気式三方弁13は、電力が供給される通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続する冷媒回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続する冷媒回路に切り替える。
【0067】
固定絞り14は、暖房モード、第1および第2除湿モード時に、電気式三方弁13から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房除湿用の減圧手段である。この固定絞り14としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。もちろん、暖房除湿用の減圧手段として、空調制御装置50から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構を採用してもよい。固定絞り14の冷媒出口側には、後述する第3三方継手23の冷媒流入出口が接続されている。
【0068】
第1三方継手15は、3つの冷媒流入出口を有し、冷媒流路を分岐する分岐部として機能するものである。このような三方継手は、冷媒配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。また、第1三方継手15の別の冷媒流入出口には、室外熱交換器16の一方の冷媒流入出口が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、低圧電磁弁17の冷媒入口側が接続されている。
【0069】
低圧電磁弁17は、冷媒流路を開閉する弁体部と、弁体部を駆動するソレノイド(コイル)を有し、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。より具体的には、低圧電磁弁17は、通電状態で開弁して非通電状態で閉弁する、いわゆるノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。
【0070】
低圧電磁弁17の冷媒出口側には、第1逆止弁18を介して、後述する第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第1逆止弁18は、低圧電磁弁17側から第5三方継手28側へ冷媒が流れることのみを許容している。
【0071】
室外熱交換器16は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン16aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0072】
さらに、本実施形態の送風ファン16aは、室外熱交換器16のみならず、エンジンEGの冷却水を放熱させるラジエータ(図示せず)にも室外空気を送風している。具体的には、送風ファン16aから送風された車室外空気は、室外熱交換器16→ラジエータの順に流れる。
【0073】
また、図1〜図4の破線で示す冷却水回路には、冷却水を循環させるための図示しない冷却水ポンプが配置されている。この冷却水ポンプは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0074】
室外熱交換器16の他方の冷媒流入出口には、第2三方継手19の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第2三方継手19の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第2三方継手19の別の冷媒流入出口には、高圧電磁弁20の冷媒入口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、熱交換器遮断電磁弁21の一方の冷媒流入出口が接続されている。
【0075】
高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。ただし、高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、通電状態で閉弁して非通電状態で開弁する、いわゆるノーマルオープン型の開閉弁として構成されている。
【0076】
高圧電磁弁20の冷媒出口側には、第2逆止弁22を介して、後述する温度式膨張弁27の絞り機構部入口側が接続されている。この第2逆止弁22は、高圧電磁弁20側から温度式膨張弁27側へ冷媒が流れることのみを許容している。
【0077】
熱交換器遮断電磁弁21の他方の冷媒流入出口には、第3三方継手23の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第3三方継手23の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第3三方継手23の別の冷媒流入出口には、前述の如く、固定絞り14の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、除湿電磁弁24の冷媒入口側が接続されている。
【0078】
除湿電磁弁24は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。さらに、除湿電磁弁24もノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。そして、本実施形態の冷媒回路切替手段は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、高圧電磁弁20、熱交換器遮断電磁弁21、除湿電磁弁24の複数(5つ)の電磁弁によって構成される。
【0079】
除湿電磁弁24の冷媒出口側には、第4三方継手25の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第4三方継手25の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第4三方継手25の別の冷媒流入出口には、温度式膨張弁27の絞り機構部出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、室内蒸発器26の冷媒入口側が接続されている。
【0080】
室内蒸発器26は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
【0081】
室内蒸発器26の冷媒出口側には、温度式膨張弁27の感温部入口側が接続されている。温度式膨張弁27は、絞り機構部入口から内部へ流入した冷媒を減圧膨張させて絞り機構部出口から外部へ流出させる冷房用の減圧手段である。
【0082】
より具体的には、本実施形態では、温度式膨張弁27として、室内蒸発器26出口側冷媒の温度および圧力に基づいて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度を検出する感温部27aと、感温部27aの変位に応じて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように絞り通路面積(冷媒流量)を調整する可変絞り機構部27bとを1つのハウジング内に収容した内部均圧型膨張弁を採用している。
【0083】
温度式膨張弁27の感温部出口側には、第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第5三方継手28の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第5三方継手28の別の冷媒流入出口には、前述のごとく、第1逆止弁18の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、アキュムレータ29の冷媒入口側が接続されている。
【0084】
アキュムレータ29は、第5三方継手28から、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ29の気相冷媒出口には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
【0085】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内蒸発器26、室内凝縮器12、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
【0086】
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱40が配置されている。
【0087】
より具体的には、内外気切替箱40には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口40aおよび外気を導入させる外気導入口40bが形成されている。さらに、内外気切替箱40の内部には、内気導入口40aおよび外気導入口40bの開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア40cが配置されている。
【0088】
したがって、内外気切替ドア40cは、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア40cは、内外気切替ドア40c用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0089】
また、吸込口モードとしては、内気導入口40aを全開とするとともに外気導入口40bを全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口40aを全閉とするとともに外気導入口40bを全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口40aおよび外気導入口40bの開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0090】
内外気切替箱40の空気流れ下流側には、内外気切替箱40を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0091】
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器26が配置されている。さらに、室内蒸発器26の空気流れ下流側には、室内蒸発器26通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
【0092】
加熱用冷風通路33には、室内蒸発器26通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。ヒータコア36およびPTCヒータ37は、冷媒以外を熱源として送風空気を加熱する加熱手段である。
【0093】
ヒータコア36は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と室内蒸発器26通過後の空気とを熱交換させて、室内蒸発器26通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0094】
また、PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、電力を供給されることによって発熱して、室内凝縮器12通過後の空気を加熱する電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37は、複数本(具体的には3本)設けられており、空調制御装置50が、通電するPTCヒータ37の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ37全体としての加熱能力が制御される。
【0095】
一方、冷風バイパス通路34は、室内蒸発器26通過後の空気を、ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。したがって、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0096】
そこで、本実施形態では、室内蒸発器26の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア38を配置している。
【0097】
したがって、エアミックスドア38は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア38は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0098】
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口41〜43が配置されている。この吹出口41〜43としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口41、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口42、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口43が設けられている。
【0099】
また、フェイス吹出口41、フット吹出口42、およびデフロスタ吹出口43の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口41の開口面積を調整するフェイスドア41a、フット吹出口42の開口面積を調整するフットドア42a、デフロスタ吹出口43の開口面積を調整するデフロスタドア43aが配置されている。
【0100】
これらのフェイスドア41a、フットドア42a、デフロスタドア43aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0101】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口41を全開してフェイス吹出口41から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口41とフット吹出口42の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口42を全開するとともにデフロスタ吹出口43を小開度だけ開口して、フット吹出口42から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口42およびデフロスタ吹出口43を同程度開口して、フット吹出口42およびデフロスタ吹出口43の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0102】
さらに、乗員が後述する操作パネル60の吹出口モードスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口43を全開してデフロスタ吹出口43から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0103】
要するに、吹出口モードとしてフットモードが選択されているときには、空気を少なくともフット吹出口42から吹き出し、フットデフロスタモードまたはデフロスタモードが選択されているときには、デフロスタ吹出口43から吹き出される空気の風量割合がフットモードよりも多くなって窓曇りが防止される。よって、フットデフロスタモードおよびデフロスタモードを防曇モードと表現することもできる。
【0104】
なお、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両は、車両用空調装置とは別に、電熱デフォッガ47およびシート暖房装置48を備えている。電熱デフォッガ47とは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。
【0105】
シート暖房装置48とは、座席(シート)の内部あるいは表面に配置された補助暖房装置であって、乗員の体を直接的に温めて乗員の温感を効果的に高めるものである。本例では、シート暖房装置48として、電力が供給されることにより発熱する電気ヒータを用いている。
【0106】
この電熱デフォッガ47およびシート暖房装置48についても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
【0107】
次に、図5により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、冷媒回路切替手段を構成する各電磁弁13、17、20、21、24、送風ファン16a、送風機32、各種電動アクチュエータ62、63、64等の作動を制御する。
【0108】
なお、空調制御装置50は、上述した各種機器を制御する制御手段が一体に構成されたものである。例えば、空調制御装置50は、上述した冷房モード、暖房モード、および第1、第2除湿モードの切替制御を行う制御手段を構成する。
【0109】
本実施形態では、特に、圧縮機11の吐出能力変更手段である電動モータ11bの作動(冷媒吐出能力)を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を吐出能力制御手段50aとする。もちろん、吐出能力制御手段50aを空調制御装置50に対して別体で構成してもよい。
【0110】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、室内蒸発器26からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、第1三方継手15と低圧電磁弁17との間を流通する冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ57、エンジン冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために必要な検出値を検出するRHWセンサ45(窓ガラス表面相対湿度検出手段)等のセンサ群の検出信号が入力される。ここで、窓ガラス表面相対湿度RHWは、窓ガラス室内側表面の相対湿度のことである。
【0111】
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に室内蒸発器26の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器26のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器26を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。
【0112】
また、本実施形態のRHWセンサ45は、具体的には、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサの3つのセンサで構成されている。
【0113】
本例では、RHWセンサ45を車両窓ガラスの車室内側の表面(例えば車両フロント窓ガラスの中央上部にあるバックミラーのすぐ横)に配置している。
【0114】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフ(具体的には圧縮機11のオン・オフ)を切り替えるエアコンスイッチ60a、車両用空調装置1の自動制御を設定・解除するオートスイッチ60b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機32の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ60c、冷凍サイクルの省動力化を優先させる指令を出力するエコノミースイッチ60d等が設けられている。
【0115】
次に、図6により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図6は、本実施形態の車両用空調装置1の制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両システムが停止している場合でも、バッテリから空調制御装置50に電力が供給されることによって実行される。なお、図中の各ステップの機能は、空調制御装置50が有する各機能手段に相当する。
【0116】
まず、ステップS1では、プレ空調のスタートスイッチ、あるいは操作パネル60の車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されたか否かを判定する。そして、プレ空調のスタートスイッチ、あるいは車両用空調装置1の作動スイッチが投入されるとステップS2へ進む。
【0117】
なお、プレ空調とは、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を開始する乗車前空調制御である。プレ空調のスタートスイッチは、乗員が携帯する無線端末(リモコン)に設けられている。したがって、乗員は車両から離れた場所から車両用空調装置1を始動させることができる。
【0118】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両では、バッテリに対して商用電源(外部電源)から電力を供給することによって、バッテリの充電を行うことができる。そこで、プレ空調は、車両が外部電源に接続されている場合は所定時間(例えば、30分間)だけ行われ、外部電源に接続されていない場合は、バッテリ残量が所定量以下となるまで行うようになっている。
【0119】
ステップS2では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。次のステップS3では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS4へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ60cによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機32の風量の設定信号等がある。
【0120】
ステップS4では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜57の検出信号を読み込んで、ステップS5へ進む。ステップS5では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。さらに、暖房モードでは、暖房用熱交換器目標温度を算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ60cによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0121】
また、暖房用熱交換器目標温度は、基本的に上述の数式F1にて算出される値となるが、消費電力の抑制のために数式F1にて算出されるTAOよりも低い値とする補正が行われる場合もある。
【0122】
続くステップS6〜S16では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS6では、空調環境状態に応じて、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの選択およびPTCヒータ37の通電有無の決定が行われる。本実施形態のステップS6のより詳細な内容については後述する。
【0123】
ステップS7では、送風機32により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には電動モータに印加するブロワモータ電圧をステップS5にて決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。
【0124】
具体的には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
【0125】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にするようになっている。
【0126】
ステップS8では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱40の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0127】
ステップS9では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0128】
したがって、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0129】
ステップS10では、エアミックスドア38の目標開度SWを上記TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された室内蒸発器26からの吹出空気温度TE、加熱器温度に基づいて算出する。
【0130】
ここで、加熱器温度とは、加熱用冷風通路33に配置された加熱手段(ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37)の加熱能力に応じて決定される値であって、具体的には、エンジン冷却水温度Twを採用できる。したがって、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。
SW=[(TAO−TE)/(Tw−TE)]×100(%)…(F2)
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア38の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア38の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
【0131】
ステップS11では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数)を決定する。本実施形態の基本的な圧縮機11の回転数の決定手法は以下の通りである。例えば、冷房モードでは、ステップS5で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器26からの吹出空気温度TEの目標吹出温度TEOを決定する。
【0132】
さらに、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度TEの偏差En(TEO−TE)を算出し、この偏差Enと、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量ΔfCを求める。そして、前回の圧縮機回転数fCn−1に回転数変化量ΔfCを加算したものを今回の圧縮機回転数fCnとする。
【0133】
また、暖房モードでは、ステップS4で決定した暖房用熱交換器目標温度等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、吐出冷媒圧力Pdの目標高圧PDOを決定し、この目標高圧PDOと吐出冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出する。さらに、この偏差Pnと、前回算出された偏差Pn−1に対する偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、ファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fHn−1に対する回転数変化量ΔfHを求める。そして、前回の圧縮機回転数fHn−1に回転数変化量ΔfHを加算したものを今回の圧縮機回転数fHnとする。
【0134】
ステップS12では、室外熱交換器16に向けて外気を送風する送風ファン(室外送風機)16aの稼働率を決定する。本実施形態の基本的な送風ファン16aの稼働率の決定手法は以下の通りである。つまり、圧縮機11吐出冷媒温度Tdの増加に伴って送風ファン16aの稼働率が増加するように第1の仮稼働率を決定し、エンジン冷却水温度Twの上昇に伴って送風ファン16aの稼働率が増加するように第2の仮稼働率を決定する。
【0135】
さらに、第1、第2の仮稼働率のうち大きい方を選択し、選択された稼働率に対して、送風ファン16aの騒音低減や車速を考慮した補正を行った値を送風ファン16aの稼働率に決定する。
【0136】
ステップS13では、PTCヒータ37の作動本数の決定および電熱デフォッガ47の作動状態の決定が行われる。PTCヒータ37の作動本数は、例えば、ステップS6にてPTCヒータ37への通電が必要とされたときに、暖房モード時にエアミックスドア38の目標開度SWが100%となっても、暖房用熱交換器目標温度を得られない場合に、内気温Trと暖房用熱交換器目標温度との差に応じて決定すればよい。
【0137】
また、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガ47を作動させる。
【0138】
次に、ステップS14にて、上述のステップS6で決定された運転モードに応じて、冷媒回路切替手段である各電磁弁13、17、20、21、24の作動状態を決定する。この際、本実施形態では、サイクルに応じた冷媒回路を実現するため、基本的には冷媒が流通する冷媒流路が開となるように各電磁弁を制御し、冷媒圧力の高低圧関係によって冷媒が流通しない冷媒流路については各電磁弁を非通電状態として、消費電力の抑制を行う。
【0139】
ステップS14の詳細については、図7のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS14aで、ステップS6で決定された運転モードをメモリCYCLE_VALVEに読み込む。次に、ステップS14bにて、車両用空調装置1が停止しているか否か、すなわち車室内の空調を行わないか否かが判定される。
【0140】
ステップS14bにて、車両用空調装置1が停止していると判定された場合は、ステップS14cにて、メモリCYCLE_VALVEを冷房モード(COOLサイクル)に設定してステップS14dへ進む。ステップS14cにて、車両用空調装置1が停止していないと判定された場合は、ステップS14dへ進む。
【0141】
ステップS14dでは、各電磁弁13、17、20、21、24の作動状態が決定される。具体的には、メモリCYCLE_VALVEが冷房モード(COOLサイクル)に設定されている場合は、全ての電磁弁を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが冷房モード(HOTサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24および熱交換器遮断電磁弁21を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とする。
【0142】
つまり、本実施形態では、いずれの運転モードの冷媒回路に切り替えた場合であっても、各電磁弁13、17、20、21、24のうち少なくとも1つの電磁弁に対する電力の供給が停止されるように構成されている。
【0143】
ステップS15では、エンジンEGの作動要求有無を決定する。ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、常時エンジンを作動させているのでエンジン冷却水も常時高温となる。したがって、通常の車両ではエンジン冷却水をヒータコア36に流通させることで充分な暖房性能を発揮することができる。
【0144】
これに対して、本実施形態のようなハイブリッド車両では、バッテリ残量に余裕があれば、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することができる。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、エンジンEGが停止しているとエンジン冷却水温度が40℃程度にしか上昇せず、ヒータコア36にて充分な暖房性能が発揮できなくなる。
【0145】
そこで、本実施形態では、暖房に必要な熱源を確保するため、高い暖房性能が必要な場合であってもエンジン冷却水温度Twが予め定めた基準冷却水温度よりも低いときは、空調制御装置50からエンジンEGの制御に用いられるエンジン制御装置(図示せず)に対して、エンジンEGを作動するように要求信号を出力する。
【0146】
これにより、エンジン冷却水温度Twを上昇させて高い暖房性能を得るようにしている。なお、このようなエンジンEGの作動要求信号は、車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させる必要の無い場合であってもエンジンEGを作動させることになるので、車両燃費を悪化させる要因となる。このため、エンジンEGの作動要求信号を出力する頻度は極力低減させることが望ましい。
【0147】
ステップS16では、室外熱交換器16に着霜が生じたか否かを判定する。着霜が生じていれば、除霜制御を実行するように、除霜モードに設定する。
【0148】
ここで、暖房モードの冷媒回路のように、室外熱交換器16にて冷媒に吸熱作用を発揮させる際に、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度が−12℃程度まで低下すると、室外熱交換器16に着霜が生じることが知られている。このような着霜が生じると、室外熱交換器16に車室外空気が流通できなくなり、室外熱交換器16にて冷媒と車室外空気とが熱交換できなくなってしまう。
【0149】
そこで、本実施形態では、室外熱交換器16に着霜が生じた際には、このステップS16で除霜モードに設定することで、ステップS6で強制的に冷房モードを選択する除霜制御を実行するようになっている。後述するように冷房モードの冷媒回路では、室外熱交換器16にて冷媒が放熱するので、室外熱交換器16に生じた霜を溶かすことができる。本実施形態のステップS16のより詳細な内容については後述する。
【0150】
ステップS17では、上述のステップS6〜S16で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器61、13、17、20、21、24、16a、32、62、63、64に対して制御信号および制御電圧が出力される。例えば、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61に対しては、圧縮機11の回転数がステップS11で決定された回転数となるように制御信号が出力される。
【0151】
次のステップS18では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS3に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
【0152】
次に、上述のステップS16の着霜判定処理のより詳細な内容を説明する。
【0153】
図9はステップS16の要部を示すフローチャートである。ステップS16の着霜判定処理では、まず、ステップS20で、エンジンEGが作動中(エンジンON)か否かを判定する。これは、エンジンEGが作動中のときと停止のときでは、異なる着霜判定値を用いて、ステップS23で着霜判定を行うからである。そして、エンジンEGが停止の場合(NO判定の場合)、ステップS21で、判定基準となる着霜判定値を第1基準温度、本例では−12℃に設定する。一方、エンジンEGが作動中の場合(YES判定の場合)、ステップS22で、着霜判定値を第1基準温度よりも高い第2基準温度、本例では−11℃に設定する。
【0154】
続いて、ステップS23で、室外熱交換器16が着霜したか否かを判定する。本例では、暖房モード時に室外熱交換器16を通過した冷媒の温度を吸入温度センサ57で検出し、吸入温度センサ57が検出した冷媒吸入温度が着霜判定値よりも低いか否かを判定する。
【0155】
そして、冷媒吸入温度が着霜判定値よりも低い場合(YES判定の場合)、室外熱交換器16に着霜が生じていると判断してステップS24に進む。ステップS24で、除霜フラグが0であるか否かを判定し、除霜フラグが0であると判定した場合(YES判定の場合)、ステップS25〜S27を経て、ステップS28で、除霜フラグを1に設定、すなわち、除霜モードに設定する。
【0156】
ここで、本実施形態では、ステップS20〜S22において、ステップS23の着霜判定に用いる着霜判定値について、エンジン停止時よりもエンジン作動中の方を高く設定しているので、エンジン作動中の方がエンジン停止時よりも除霜モードになりやすくなっている。ちなみに、車両が高速走行によりバッテリ走行が出来ないときやバッテリ残量が少なくなったときに、車両走行用の駆動源としてエンジンEGが作動するので、本実施形態では、これらのときに、除霜モードになりやすい。
【0157】
また、ステップS25〜S27では、外気温に応じて除霜制御を行う際のタイマ設定を行う。具体的には、ステップS25で、外気温が所定温度、本例では0℃よりも高いか否かを判定する。このとき、外気温が0℃よりも低い場合(NO判定の場合)、ステップS26で、除霜制御の実行時間である除霜カウントを第1所定時間、本例では2400(10分)に設定する。一方、外気温が0℃よりも高い場合(YES判定の場合)、外気温が解氷温度域であることから、短時間で除霜可能であると判断し、ステップS27で、除霜カウントを第1所定時間よりも短い第2所定時間、本例では1200(5分)に設定する。
【0158】
また、ステップS23での着霜判定において、冷媒吸入温度が着霜判定値よりも高い場合(NO判定の場合)、ステップS29に進む。また、ステップS23での着霜判定において、冷媒吸入温度が着霜判定値よりも低い場合(YES判定の場合)であっても、既に除霜フラグが1に設定されている場合(ステップS24でNO判定の場合)、ステップS29に進む。
【0159】
ステップS29では、除霜カウント中(除霜カウント>0)か否かを判定する。ステップS29の判定において、ステップS23でYES判定をしておらず、除霜モードが設定されていなければ、除霜カウントが設定されていないので、除霜カウント中ではないと判定(NO判定)し、ステップS30に進む。このように、冷媒吸入温度が着霜判定値よりも高い場合であって、除霜モードが設定されていなければ(除霜フラグが0であれば)、室外熱交換器16は着霜していないと判断して、ステップS30で、除霜フラグを0のままとし、除霜以外モードを維持する。
【0160】
一方、ステップS29の判定において、除霜モードが既に設定されている場合(除霜フラグ=1の場合)、ステップS26、27のように、除霜カウントが設定されているので、除霜カウント中であると判定(YES判定)し、ステップS31で、除霜カウントを1減らし、ステップS32に進む。
【0161】
ステップS32では、冷媒吸入温度が所定温度、本例では10℃よりも高いか否かを判定する。そして、冷媒吸入温度が10℃よりも高い場合(YES判定の場合)、除霜が完了したと推測し、ステップS33で除霜カウントを0に設定する。続いて、ステップS30で、除霜フラグを0に設定することで、除霜制御を終了させる。
【0162】
一方、ステップS32の判定において、冷媒吸入温度が10℃以下の場合(NO判定の場合)、除霜が完了していないと推測できるので、除霜制御を続けるために、ステップS34で、除霜フラグ=1に保持し、除霜モードを保持する。
【0163】
因みに、図6の制御処理において、ステップS16で室外熱交換器16が着霜したと判定した結果は、ステップS18の後に続く、ステップS3以降の次のフローにおけるステップS6のサイクル・PTC選択処理に反映される。
【0164】
次に、上述のステップS6のサイクル・PTC選択処理のより詳細な内容を説明する。
【0165】
図10は、図6中のステップS6の要部を示すフローチャートである。ステップS6では、まず、ステップS40で、除霜フラグ=1、すなわち、除霜モードが設定されているか否かを判定する。
【0166】
そして、除霜フラグが1の場合(YES判定の場合)、除霜制御ができる環境とするために、ステップS41に進む。
【0167】
ステップS41では、エコノミースイッチ60dが乗員に操作されてONになっているか、または、室温が25℃よりも高いか否かを判定する。すなわち、冷凍サイクルの省動力化を優先させるエコノミーモードが設定されているか、または、大きな暖房能力は必要が無いかどうかを判定する。このとき、エコノミースイッチ60dがOFFでエコノミーモードが設定されておらず、かつ、室温が25度よりも低い場合(NO判定の場合)、車室内の暖房手段として、エンジン冷却水を熱源として送風空気を加熱するヒータコア36を選択するために、ステップS42に進む。
【0168】
ステップS42で、冷却水温度がTAOよりも高いか否かを判定する。このとき、エンジンEGが停止中であって冷却水温度がTAOよりも低かった場合(NO判定の場合)、エンジン冷却水を熱源とする暖房では、TAOに応じた吹出温を作り出すことができないので、ステップS43で、エンジンEGの作動(エンジンON)を選択する。
【0169】
この結果、エンジンEGが停止していれば、図6中のステップS15にてエンジン制御装置に対してエンジンEGを始動するように要求信号を出力することとなり、エンジンEGが作動することで、エンジン冷却水の温度を上昇させることができる。
【0170】
そして、エンジン冷却水の温度が上昇してTAOを超えると、図6のステップS2〜S18の制御フローが繰り返し実行されている際に、再び、図10に示すステップS6のサイクル選択処理において、ステップS42で、冷却水温度がTAOよりも高いと判定される。
【0171】
ステップS42において、冷却水温度がTAOよりも高いと判定された場合(YES判定の場合)、エンジン冷却水を熱源とする暖房によって、TAOに応じた吹出温を十分に作り出すことができるので、ステップS44に進み、室外熱交換器16の除霜のためにクーラサイクル(冷房モード)を選択する。この結果、クーラサイクルによって室外熱交換器16の温度が上昇し、除霜が行われる。
【0172】
ここで、ヒートポンプサイクル時に室外熱交換器16に着霜が生じることから、ステップS41で、除霜フラグが1であると判定されるのは、冷凍サイクル10の運転モードがヒートポンプサイクルのときである。
【0173】
したがって、ステップS42により、本実施形態では、除霜モードに設定されても、冷却水温度がTAOまで上昇するまでは、ヒートポンプサイクル運転が継続され、冷却水温度がTAOを超えて、除霜制御ができる環境になった場合に、クーラサイクルに切り替わるようになっている。
【0174】
なお、ステップS42での判定において、エンジンEGが作動中の場合や、エンジンが停止していていも、エンジンEGの停止直後から短時間しか経過していない場合に、エンジン冷却水の温度がTAOを超えているときがあるので、このような場合では、エンジンEGの作動を要求せずに、ステップS44に進み、クーラサイクルを選択する。
【0175】
また、ステップS41の判定において、エコノミースイッチ60dがONである場合や、室温が25℃よりも高い場合や、その両方の場合に、YSEと判定して、ステップS45に進む。そして、ステップS45では、エンジンEGの作動(エンジンON)を選択せず、PTCヒータ37の作動(PTCヒータON)を選択する。その後、ステップS44に進み、室外熱交換器16の除霜のためにクーラサイクルを選択する。
【0176】
この結果、図6中のステップS17においてPTCヒータ37に対して制御信号を出力することで、PTCヒータ37が送風空気を加熱することとなる。よって、PTCヒータ37による暖房を行いながら、クーラサイクルによる室外熱交換器16の除霜が行われる。
【0177】
また、ステップ40の判定において、除霜フラグが1ではない場合(NO判定の場合)、除霜モードではないので、通常のサイクル選択を実行するために、ステップS46に進む。
【0178】
ステップS46では、TAOに基づいて決定された吹出口モード(オート吹出口)がフェイスモードであるか否かを判定する。これは、暖房の必要性を判断するためである。
【0179】
そして、吹出口モードがフェイスモードである場合(YES判定の場合)には、暖房の必要無しと判断してステップS44に進み、冷凍サイクルの運転モードとしてクーラサイクル(冷房モード)を選択する。一方、吹出口モードがフェイスモードでない場合(NO判定の場合)には、暖房の必要有りと判断してステップS47以降に進み、除湿の必要性に応じてHOTサイクル、DRY_EVAサイクル、DRY_ALLサイクル(暖房モード、第1除湿モード、第2除湿モード)のいずれかを選択する。
【0180】
因みに、上述のように、TAOに基づく吹出口モードの決定は図6のステップS9で行われる。このため、ステップS46の判定が初めて実行される場合には、まだ吹出口モード(オート吹出口)が決定されていないこととなる。そこで、ステップS46の判定が初めて実行される場合には、ステップS46以降(具体的にはステップS46、S44、S47〜S51)を省略するか、仮の吹出口モード(吹出口モードの初期設定)でステップS46の判定を行う等の処理を行う。
【0181】
ステップS47では、窓曇りの可能性があるか否かを、窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて判定する。本例では、RHWが100よりも高いか否かを判定する。そして、RHWが100よりも高い場合(YES判定の場合)には、窓曇りの可能性があると判断してステップS48に進む。
【0182】
ステップS48では、除湿の必要度合い(必要性)を蒸発器吹出空気温度Teに基づいて判定し、その判定結果に応じて、ステップS49〜S51で暖房モード、第1除湿モード、第2除湿モードのいずれかを選択する。
【0183】
具体的には、蒸発器吹出空気温度Teが高い場合には、除湿の必要有り(必要度合いが大)と判断して、除湿能力の高いDRY_EVAサイクル(第1除湿モード)を選択する(ステップS49)。蒸発器吹出空気温度Teが低い場合には、除湿の必要無しと判断して、除湿能力はないが暖房能力の高いHOTサイクル(暖房モード)を選択する(ステップS51)。蒸発器吹出空気温度Teが中程度である場合には、除湿の必要度合いは小さいと判断して、除湿能力の小さいDRY_ALLサイクル(第1除湿モード)を選択する(ステップS50)。
【0184】
本例では、蒸発器吹出空気温度Teと、図10のステップS48中に示すマップとに基づいて、除湿要否度合いを判定する。当該マップを用いて運転モードを選択することにより、室内蒸発器26の温度はおおよそ2℃に制御されることとなる。
【0185】
一方、ステップS47でRHWが100以下である場合(NO判定の場合)には、窓曇りの可能性がないと判断してステップS51に進み、除湿能力はないが暖房能力の高いHOTサイクル(暖房モード)を選択する。
【0186】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上のごとく制御されるので、制御ステップS6にて選択された運転モードに応じて以下のように作動する。
【0187】
(a)冷房モード(COOLサイクル:図1参照)
冷房モードでは、空調制御装置50が全ての電磁弁を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続し、低圧電磁弁17が閉弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
【0188】
これにより、図1の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→第1三方継手15→室外熱交換器16→第2三方継手19→高圧電磁弁20→第2逆止弁22→温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0189】
この冷房モードの冷媒回路では、電気式三方弁13から第1三方継手15へ流入した冷媒は、低圧電磁弁17が閉弁しているので低圧電磁弁17側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第2三方継手19へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の可変絞り機構部27bから流出した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。さらに、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって第2逆止弁22側に流出することはない。
【0190】
したがって、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却され、さらに、室外熱交換器16にて外気と熱交換して冷却され、温度式膨張弁27にて減圧膨張される。温度式膨張弁27にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器26へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却される。
【0191】
この際、前述の如くエアミックスドア38の開度が調整されるので、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が冷風バイパス通路34から混合空間35へ流入し、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が加熱用冷風通路33へ流入してヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて混合空間35へ流入する。
【0192】
これにより、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の冷房を行うことができる。なお、冷房モードでは、送風空気の除湿能力も高いが、暖房能力は殆ど発揮されない。
【0193】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0194】
(b)暖房モード(HOTサイクル:図2参照)
暖房モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が閉弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
【0195】
これにより、図2の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0196】
この暖房モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。また、熱交換器遮断電磁弁21から第2三方継手19へ流入した冷媒は、高圧電磁弁20が閉弁しているので高圧電磁弁20側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉じているので温度式膨張弁27側へ流出することはない。
【0197】
したがって、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて送風機32から送風された送風空気と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。この際、エアミックスドア38の開度が調整されるので、冷房モードと同様に、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の暖房を行うことができる。なお、暖房モードでは、送風空気の除湿能力は発揮されない。
【0198】
また、室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0199】
(c)第1除湿モード(DRY_EVAサイクル:図3参照)
第1除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、熱交換器遮断電磁弁21および除湿電磁弁24を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
【0200】
これにより、図3の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0201】
この第1除湿モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第1逆止弁18の作用によって第1逆止弁18側へ流出することはない。
【0202】
したがって、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室内蒸発器26へ流入する。
【0203】
室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。したがって、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。すなわち、車室内の除湿を行うことができる。なお、第1除湿モードでは、送風空気の除湿能力を発揮できるが、暖房能力は小さい。
【0204】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0205】
(d)第2除湿モード(DRY_ALLサイクル:図4参照)
第2除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
【0206】
これにより、図4の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0207】
つまり、第2除湿モードでは、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒が熱交換器遮断電磁弁21側および除湿電磁弁24側の双方に流出して、第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒および温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒の双方が第5三方継手28にて合流してアキュムレータ29側へ流出する。
【0208】
なお、この第2除湿モードの冷媒回路では、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。
【0209】
したがって、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧された後、第3三方継手23にて分岐されて室外熱交換器16および室内蒸発器26へ流入する。
【0210】
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、第5三方継手28へ流入する。室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。
【0211】
したがって、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。この際、第2除湿モードでは、第1除湿モードに対して、室外熱交換器16にて吸熱した熱量を室内凝縮器12にて放熱することができるので、送風空気を第1除湿モードよりも高温に加熱できる。すなわち、第2除湿モードでは、高い暖房能力を発揮させながら除湿能力も発揮させる除湿暖房を行うことができる。
【0212】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、第5三方継手28へ流入して室外熱交換器16から流出した冷媒と合流し、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0213】
次に、本実施形態の車両用空調装置50が奏する主な効果について説明する。
【0214】
(1)空調制御装置50は、図10のステップS40、S43、S15のごとく、室外熱交換器16が着霜した場合に、エンジンEGに対して作動要求信号を出力して、エンジンEGを作動させるので、除霜制御中に、エンジン冷却水を熱源とする暖房を行うことができる。
【0215】
したがって、本実施形態によれば、ハイブリッド車両が走行の駆動源として電動モータを作動させ、エンジンEGを作動させていない場合であっても、除霜制御のためにエンジンEGを作動させることで、除霜制御時の暖房用の熱源を確保することができるので、除霜制御時に乗員の暖房感が低下することを抑制できる。
【0216】
なお、除霜制御時の暖房用の熱源を確保するための他の手段として、除霜制御時の暖房専用に、燃焼式ヒータや、PTCヒータ等の電気ヒータを用いることが考えられる。しかし、除霜制御時の暖房専用にこれらの暖房手段を設けると、空調装置全体がコストアップしてしまうという問題が生じる。
【0217】
これに対して、本実施形態では、車両に搭載されているエンジンEGの冷却水を熱源として用いるので、除霜制御時の暖房用の熱源をコストアップ無しに確保することができる。さらに、燃焼式ヒータを用いる場合では、排気ガスの浄化の手段が必要となり、排気ガスの浄化が困難となるが、本実施形態によれば、既存のエンジン排気ガス浄化装置を用いることができるので、燃焼式ヒータよりもエンジン排気ガスを十分に浄化できる。また、本実施形態によれば、電気ヒータを用いる場合と比較して、高い暖房能力が得られる。
【0218】
(2)空調制御装置50は、図10のステップS42、S43、S44のごとく、室外熱交換器16が着霜して除霜モードを設定した場合、冷却水温度がTAOよりも低い場合、エンジンEGの作動を選択するとともに、ヒートポンプサイクルを選択したままとし、冷却水温度がTAOよりも高い場合に、クーラサイクルを選択するようになっている。これにより、除霜モードに設定されても、冷却水温度がTAOまで上昇するまでは、ヒートポンプサイクル運転を継続し、冷却水温度がTAOを超えて、除霜制御ができる環境になった場合に、クーラサイクルに切り替えて除霜制御を行うようになっている。
【0219】
ここで、ステップS42を省略し、ステップS41でNO判定した後、単に、ステップS43のエンジンONを選択し、その後、ステップS44でクーラサイクルを選択する制御を行うと、冷却水が十分に暖まっていなければ、吹出温が低下してしまい、暖房が継続されないという問題が生じる。
【0220】
これに対して、本実施形態によれば、冷却水温度がTAOを超えて、暖房用の熱源が十分に確保されて除霜制御ができる環境になった場合に、クーラサイクルに切り替えて除霜制御を行うので、ヒートポンプサイクルによる暖房からクーラサイクルによる除霜制御に切り替えても、吹出温を低下させることなく、暖房を継続することができる。なお、本実施形態では、ステップS42で冷却水温度とTAOとを比較したが、TAO以外の他の所定温度と比較しても良い。
【0221】
(3)車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させる必要の無い場合であっても、除霜制御時にエンジンEGを作動させると、除霜制御時にエンジンEGを作動させない従来のハイブリッド車両と比較して、エンジン作動となる頻度が多くなって、車両燃費が悪化し、排ガスの排出量が増加してしまうという問題が生じる。このため、エンジン停止時に除霜制御を行うよりも、エンジン作動時に除霜制御を行う方が好ましい。
【0222】
そこで、本実施形態の車両用空調装置50は、図9のステップS22のごとく、エンジン停止時よりもエンジン作動時に除霜制御が実行されやすいように、ステップS23の着霜判定に用いる着霜判定値を、エンジン停止時よりもエンジン作動中の方が高くなるように設定している。これにより、本実施形態によれば、エンジンEGの作動時と停止時で同じ着霜判定値を用いる場合と比較して、車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させていない場合に、除霜制御のためにエンジンEGを作動させる頻度を低減でき、燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0223】
なお、本実施形態では、ステップS23で、室外熱交換器16よりも冷媒流れ下流側に設けた吸入温度センサ57で検出した冷媒の温度を用いて着霜判定したが、室外熱交換器16に設けた温度センサによって検出した冷媒の温度を用いて着霜判定しても良い。
【0224】
また、ステップS21、S22で選択した着霜判定値(第1、第2基準温度)を、それぞれ、他の温度に変更しても良く、第1、第2基準温度の差を本実施形態よりも大きくしたり、小さくしたりしても良い。
【0225】
(4)本実施形態の車両用空調装置50は、図10のステップS41、S45のごとく、エコノミーモードが設定されているときに、室外熱交換器16が着霜して除霜モードが設定された場合、エンジンEGに対して作動要求信号を出力しないとともに、PTCヒータ37に対して制御信号を出力して、PTCヒータ37による暖房を行うようになっている。
【0226】
これによれば、エコノミーモードが設定されているときは、除霜制御のためにエンジンEGを作動させないので、車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させていない場合に、除霜制御のためにエンジンEGを作動させることによる燃費の悪化を抑制できる。
【0227】
なお、本実施形態では、ステップS45で、PTCヒータ37の作動(PTCヒータON)を選択したが、ヒートポンプサイクルによる暖房時に、補助暖房としてPTCヒータ37が稼働している場合では、PTCヒータ37の稼働率を向上させるようにしても良い。例えば、PTCヒータ37が補助暖房装置として稼働している場合よりも、多い作動本数を選択して、PTCヒータ37の消費電力(加熱能力)を増大させても良い。
【0228】
また、本実施形態では、ステップS45で、PTCヒータ37の作動(PTCヒータON)を選択したが、PTCヒータ37の作動の代わり、もしくは、PTCヒータ37の作動に加えて、補助暖房用のシート暖房装置48の作動を選択しても良い。
【0229】
(5)本実施形態の車両用空調装置50は、図10のステップS41、S45のごとく、室外熱交換器16が着霜して除霜モードが設定された場合であって、室温が所定温度(本例では25℃)よりも高いと判定した場合に、乗員の暖房感が高いと判断して、エンジンEGに対して作動要求信号を出力しないとともに、PTCヒータ37に対して制御信号を出力して、PTCヒータ37による暖房を行うようになっている。
【0230】
本実施形態のように、室温が所定温度(本例では25℃)よりも高く、乗員の暖房感が高い場合では、エンジン冷却水による暖房のような大きな暖房能力は必要無く、PTCヒータ37による暖房を行っても、乗員は十分な暖房感が得られる。また、本実施形態によれば、除霜制御時であっても内燃機関を作動させないので、内燃機関を作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0231】
なお、ステップS41での判定に用いる所定温度は、25℃に限らず、他の温度に変更しても良い。また、本実施形態では、室温に基づいて乗員の暖房感が高いと判定したが、乗員の温度やシートの温度等に基づいて乗員の暖房感が高いか否かを判定しても良い。要するに、乗員の温度もしくは乗員周辺の温度に基づいて乗員の暖房感が高いか否かを判定すれば良い。因みに、乗員の温度を検出する手段としては、例えば、赤外線センサが採用可能であり、シート温度を検出する手段としては、シートに設置した温度センサ等が採用可能である。
【0232】
また、本実施形態では、ステップS45で、PTCヒータ37の作動(PTCヒータON)を選択したが、ヒートポンプサイクルによる暖房時に、補助暖房としてPTCヒータ37が稼働している場合では、PTCヒータ37の稼働率を向上させるようにしても良い。例えば、PTCヒータ37が補助暖房装置として稼働している場合よりも、多い作動本数を選択して、PTCヒータ37の消費電力(加熱能力)を増大させても良い。
【0233】
また、本実施形態では、ステップS45で、PTCヒータ37の作動(PTCヒータON)を選択したが、PTCヒータ37の作動の代わり、もしくは、PTCヒータ37の作動に加えて、補助暖房用のシート暖房装置48の作動を選択しても良い。
【0234】
(6)車両用空調装置50は、図9のステップS32、S33のごとく、除霜制御時に、吸入温度センサ57で検出した室外熱交換器16を流れる冷媒の温度が所定温度よりも高くなって、除霜が完了したと推測できる場合に、除霜制御を終了するようにしているので、除霜制御時間を必要最小限に抑えることができる。
【0235】
このため、本実施形態によれば、除霜制御時の暖房のためにエンジンEGを作動させる時間を短くでき、図9のステップS32、S33を実行しない場合と比較して、除霜制御のためにエンジンEGを作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0236】
なお、本実施形態では、ステップS32で、室外熱交換器16よりも冷媒流れ下流側に設けた吸入温度センサ57で検出した冷媒の温度を用いて判定したが、室外熱交換器16に設けた温度センサによって検出した冷媒の温度を用いて判定しても良い。
【0237】
(7)車両用空調装置50は、図9のステップS25、S26、S27のごとく、外気温が0℃よりも低い場合、除霜制御の実行時間を第1所定時間に設定し、外気温が0℃よりも高い場合、除霜制御の実行時間を第1所定時間よりも短い第2所定時間に設定している。
【0238】
ここで、室外熱交換器16の除霜は、外気温が高いほど早く完了し、特に、外気温が0℃よりも高い解氷温度域の場合の方が、外気温が氷結温度域の場合よりも早く完了する。
【0239】
よって、本実施形態のように、外気温が0℃よりも高い場合に、除霜制御の実行時間を短く設定することで、除霜制御時間を必要最小限に抑えることができる。このため、本実施形態によれば、除霜制御時の暖房のためにエンジンEGの作動時間を短くでき、除霜制御のためにエンジンEGを作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0240】
なお、本実施形態では、ステップS25での判定に用いる判定基準を0℃としたが、0℃よりも低い温度や、0℃よりも高い温度を判定基準としても良い。ただし、上述の通り、外気温が解氷温度域のとき除霜が早く完了することから、判定基準を解氷温度域の所定温度に設定することが好ましい。
【0241】
(第2実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS11で実行する圧縮機11の回転数決定処理に関するものである。
【0242】
図11は、ステップS11の要部を示すフローチャートであり、クーラサイクル(冷房モード)時における室内蒸発器26からの吹出空気の目標温度である目標吹出温度TEOの決定処理を示している。
【0243】
ここで、クーラサイクル時における圧縮機11の回転数は、上述のステップS11の説明の通り、室内蒸発器26の目標吹出温度TEOに基づいて、空調制御装置50に予め記憶されている制御マップを参照して決定される。
【0244】
本実施形態では、室内蒸発器26の目標吹出温度TEOを、下記の図11に示す制御処理によって決定する。
【0245】
まず、ステップS60で、空調制御装置50に予め記憶されている制御マップを参照し、外気温に基づいて仮の目標吹出温度f(TAMdisp)を設定する。本例では、図中のステップS60に記載のマップの通り、外気温が低いほどf(TAMdisp)を低く設定する。なお、f(TAMdisp)の最小温度を2℃とし、最高温度を9℃とする。
【0246】
続いて、ステップS61で、空調制御装置50に予め記憶されている制御マップを参照して、TAOに基づいて仮の目標吹出温度f(TAO)を設定する。本例では、図中のステップS61に記載のマップの通り、TAOが低いほどf(TAO)を低く設定する。なお、f(TAO)の最小温度を2℃とし、最高温度を9℃とする。
【0247】
続いて、ステップS62で、除霜カウント中か否かを判定する。すなわち、除霜モード(除霜フラグ=1)であるか否かを判定する。
【0248】
このとき、除霜中でなければ(NO判定の場合)、ステップS63で、除霜中か否かに基づく仮の目標吹出温度f(除霜)をf(TAMdisp)およびf(TAO)の最大温度である9℃に設定する。一方、除霜中であれば(YES判定の場合)、ステップS64で、除霜中か否かに基づく仮の目標吹出温度f(除霜)をf(TAMdisp)およびf(TAO)の最小温度よりも低い1℃に設定する。
【0249】
その後、ステップS65で、クーラサイクル時における室内蒸発器26の目標吹出温度TEOとして、f(TAMdisp)、f(TAO)および f(除霜)のうち最も小さい値を選択する。このため、室内蒸発器26の目標吹出温度TEOは、除霜制御時であれば、必ず、ステップS64で設定された温度(1℃)に決定され、すなわち、ステップS60、S61で選択されたTEOに対して減少補正される。一方、除霜制御以外であれば、ステップS63で決定された温度に制限されることなく、ステップS60、S61で外気温やTAOに応じて設定された温度に決定される。
【0250】
そして、このようにして決定された目標吹出温度TEOを用いて、クーラサイクル時における圧縮機11の回転数を決定する。すなわち、除霜制御時では、TEOが1℃となるように、圧縮機11の回転数を決定し、除霜制御以外では、TEOが2〜9℃の所望温度となるように、圧縮機11の回転数を決定する。
【0251】
このように、本実施形態では、空調制御装置50は、ステップS62、S64、S65によって、除霜制御時のTEOを除霜制御以外のTEOよりも低い温度に設定することで、除霜制御時の冷房負荷を上げ、除霜制御時の室外熱交換器16の温度を、除霜制御以外のときよりも高くすることできる。
【0252】
このため、本実施形態によれば、除霜制御時における室内熱交換器16の目標吹出温度TEOが除霜制御以外のときと同じ場合と比較して、除霜を早く完了することができ、除霜時間を短縮できる。
【0253】
この結果、本実施形態によれば、除霜制御時の暖房のためにエンジンEGを作動させる時間を短くでき、除霜制御時のTEOを除霜制御以外のTEOと同様に設定する場合と比較して、除霜制御のためにエンジンEGを作動させることによる燃費の悪化と排ガスの排出量増加を抑制できる。
【0254】
また、本実施形態では、除霜制御以外のTEOを、除霜制御時のTEOよりも高い温度に設定することで、除霜制御以外でのクーラサイクル時のコンプレッサ稼動率を、除霜制御時よりも低減でき、省電力運転が可能となる。
【0255】
(第3実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS11で実行する圧縮機(コンプレッサ)11の回転数決定処理に関するものである。
【0256】
図12(a)は、ステップS11の要部を示すフローチャートである。図12(a)のフローチャートの制御処理は、オートスイッチ60bがオン(ON)されているとき等に実行される。
【0257】
ステップS70では、上述したヒートポンプサイクル(暖房モード)における基本的な決定手法を用いて前回のコンプレッサ回転数fHn−1に対する回転数変化量ΔfHを求める。図12(b)は、回転数変化量ΔfHを求めるためのファジー推論のルールの一例を示すものである。
【0258】
ステップS71では、前回のコンプレッサ回転数と回転数変化量ΔfHとを用いて、仮の今回のコンプレッサ回転数を求める。このとき、仮の今回のコンプレッサ回転数=前回のコンプレッサ回転数+回転数変化量ΔfHとする。
【0259】
続いて、ステップS72では、冷媒吸入温度が着霜判定値、本例では−12℃よりも低いか否かを判定する。すなわち、ステップS72では、室外熱交換器16が着霜したか否かを判定する。
【0260】
このとき、冷媒吸入温度が−12℃よりも低ければ(YES判定の場合)、ステップS73に進み、プレ空調中か否かを判定する。そして、プレ空調中であれば(YES判定の場合)、ステップS74に進み、コンプレッサ最高回転数を0[rpm]に設定することで、コンプレッサの停止を選択する。
【0261】
また、ステップS72で、冷媒吸入温度が−12℃よりも高いと判定した場合(NO判定の場合)や、ステップS73で、プレ空調中でないと判定した場合(NO判定の場合)、ステップS75に進み、コンプレッサ最高回転数を10000[rpm]に設定する。コンプレッサ最高回転数をこのように設定するのは、実質的にコンプレッサの回転数を制限しないという意味である。
【0262】
ステップS74もしくはステップS75の後、ステップS76で、今回のコンプレッサ回転数を最終決定する。本例では、ステップS71の仮の今回のコンプレッサ回転数およびステップS74、S75で設定したコンプレッサ最高回転数のうち小さい方を今回のコンプレッサ回転数とする(今回のコンプレッサ回転数=MIN(仮の今回のコンプレッサ回転数、コンプレッサ最高回転数))。
【0263】
なお、本実施形態では、図6のステップS6で、プレ空調中であれば、エンジンEGの作動を選択しないようにする。
【0264】
ところで、エンジンEGを作動させずにプレ空調を行う車両においては、第1実施形態のように、除霜制御時の暖房用の熱源を確保するために、エンジンEGを作動させることができない。
【0265】
したがって、プレ空調中にヒートポンプサイクルによる暖房から除霜制御に切り替えると、クーラサイクル作動によって室温が低下してしまうため、除霜制御中に乗員が乗り込むと、十分な暖房感が得られず、通常のプレ空調中に乗員が乗り込んだ場合と比較して、暖房感が低下するという問題が生じる。
【0266】
これに対して、本実施形態では、ステップS73、S74のごとく、プレ空調を行っているときは、コンプレッサを停止させ、冷凍サイクルの運転を停止させることにより、除霜制御を行わないので、暖房感が低下するという問題を解消できる。
【0267】
また、本実施形態では、ステップS73、S74で、ヒートポンプサイクルによる暖房時に室外熱交換器16が着霜して、暖房効率が悪くなったときに、ヒートポンプサイクルの作動を停止することとなる。そして、ヒートポンプサイクルの作動を停止させれば、室外熱交換器16の霜が外気温で徐々に解氷するので、乗員の乗車後に除霜制御する時間を短縮できる。
【0268】
因みに、プレ空調中に、室外熱交換器16が着霜した場合、上述の通り、ヒートポンプサイクルの作動を停止するが、室内凝縮器12が十分に暖まっている間、ケーシング内31の送風機32を作動させて、送風空気を加熱させても良い。
【0269】
(第4実施形態)
本実施形態は、図1〜4に記載の室外熱交換器16の車両搭載構造に関するものである。 図13は、本実施形態の室外熱交換器16の車両搭載構造を示している。なお、図13中の上下方向が鉛直方向である。
【0270】
本実施形態では、ヒートポンプサイクル時に吸熱器として機能する室外熱交換器16を、ラジエータ46および送風ファン16aと一体化して、車両のエンジンルーム内に配置している。このとき、室外熱交換器16を通過する風の流れ方向が水平方向よりも下側を向くように、室外熱交換器16を鉛直方向に対して斜めに配置している。
【0271】
具体的には、室外熱交換器16は、冷媒が内部を流れる扁平チューブ161およびチューブの外面に設けられた図示しないフィンを有している。扁平チューブ161およびフィンは、室外熱交換器16を通過する風の流れ方向が、熱交換コア面162、163に対して略垂直となるように設置されている。ここで、熱交換コア面162、163とは、冷媒と空気との間で熱交換を行う熱交換コアのうち、熱交換コアを流通する空気の流れ方向での端面を言う。そして、風上側の熱交換コア面162および風下側の熱交換コア面163は、鉛直方向に対して所定角度θをなしている。このため、室外熱交換器16を通過する風の流れ方向は、水平方向ではなく、水平方向に対して斜め下向きとなる。
【0272】
ここで、除霜制御によって生じた解氷水分が室外熱交換器16に残っていると、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器16に着霜が生じてしまう。これに対して、本実施形態では、室外熱交換器16を斜めに搭載して、室外熱交換器16内を風が斜め下方向に流れるようにしているので、室外熱交換器16内部での水はけが良くなり、室外熱交換器16から解氷水分が落ちやすくなる。これにより、ヒートポンプサイクルの運転再開後、すぐに、室外熱交換器16に着霜が生じることを防止できる。
【0273】
さらに、本実施形態によれば、除霜制御時の溶けかけの氷も落ちやすいので、除霜時間を短縮化できる。この結果、暖房時に除霜制御に切り替わっても、早期に通常の暖房に切り替えられるので、乗員の暖房感を向上できる。また、第1実施形態のように、除霜のために、エンジンEGを作動させた状態が続くと、燃費が悪化してしまうところ、本実施形態によれば、エンジンEGの作動時間を短縮できるので、燃費の悪化を抑制できる。
【0274】
ところで、本実施形態とは異なり、室外熱交換器16を鉛直方向に延びるように配置し、チューブ、フィンを鉛直方向に対して斜めに配置することでも、本実施形態と同様の効果が得られるが、そのような構造の熱交換器は一般的ではないため、製造コストが高くなってしまう。
【0275】
これに対して、本実施形態では、室外熱交換器16自体を鉛直方向に対して斜めに搭載することで、室外熱交換器16におけるチューブ、フィンの配置構造を、冷凍サイクルに用いられる一般的な熱交換器と同じ配置構造を採用できる。よって、本実施形態によれば、室外熱交換器16として冷凍サイクルに用いられる一般的な熱交換器を流用したり、室外熱交換器16の製造の際に、一般的な熱交換器の生産ライン・製造ノウハウを利用したりできるので、室外熱交換器16の製造コストを抑えることができる。
【0276】
なお、本実施形態では、室外熱交換器16を鉛直方向に対して斜めに配置したが、室外熱交換器16を水平方向に延びるように配置しても良い。この場合、室外熱交換器16を通過する風の流れ方向は鉛直方向(下向き)となるので、解氷水分や溶けかけの氷が落ちやすくなる。ちなみに、本発明者の実験結果によれば、熱交換コア面162、163の鉛直方向に対する角度θを、10度以上90度以下としたときに、解氷水分や溶けかけの氷が落ちやすく、除霜時間の短縮化の効果が大きい。
【0277】
(第5実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS12で実行する室外熱交換器16に送風する送風ファン16aの稼働率の決定処理に関するものである。本実施形態では、除霜制御中において、外気温が解氷温度域の所定温度よりも高い場合に送風ファン16の稼働率を高く設定することで、除霜時間の短縮化を図る。
【0278】
図14は、本実施形態における送風ファン16aの稼働率決定処理の内容を示すフローチャートである。
【0279】
ステップS80において、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクル(除霜モードも含む)か否かを判定する。
【0280】
このとき、冷凍サイクルの運転モードがヒートポンプサイクルであれば(NO判定の場合)、ステップS81に進み、送風ファン16aの稼働率を決定するために必要な各パラメータを判定する。
【0281】
送風ファン16aの稼働率を決定のために必要なパラメータとして、図14中のステップS81に示すように、吐出圧力センサ55で検出した冷媒圧力が高圧力か低圧力かを判定し、高外気温か低外気温か判定し、高室温か低室温か判定し、高車速か低車速かを判定する。
【0282】
そして、その判定結果を用いて、ステップS82で、送風ファン16aの稼働率を決定する。すなわち、図14のステップS82内のマップに示すように、冷媒圧力、熱負荷、車速に基づいて、送風ファン16aの稼働率を、送風能力が最大である「HI」、送風能力が最小である「LO」、送風ファン16aを停止する「OFF」のいずれかに決定する。
【0283】
具体的には、冷媒圧力が高圧力で、熱負荷が低室温かつ低外気温の場合、熱負荷が大きく、高い暖房能力が必要なので、低車速であれば、送風ファン16aの稼働率を「HI」とする。また、冷媒圧力が高圧力で、熱負荷が(低室温かつ低外気温)以外の場合、熱負荷が小さく、高い暖房能力を必要としないので、低車速であれば、送風ファン16aの稼働率を「LO」とする。一方、冷媒圧力が低圧力であれば、高い暖房能力を必要としていないので、低車速であれば、送風ファンの稼働率を「LO」とする。なお、高車速であれば、送風ファンを稼働させなくても送風できるので、他のパラメータに関係なく、送風ファンの稼働率を「OFF」とする。
【0284】
また、ステップS80において、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクルであれば(YES判定の場合)、ステップS83に進み、除霜中であるか否かを判定する。このとき、除霜モードでなければ(NO判定の場合)、ステップS84に進み、高外気温か低外気温かを判定する。その後、ステップS86に進み、ステップS81と同様に、外気温以外の送風ファン16aの稼働率を決定するために必要な各パラメータを判定する。
【0285】
一方、ステップS83において、除霜モード(除霜フラグ=1)であれば(YES判定の場合)、ステップS85に進み、ステップS84の除霜中以外の場合よりも低い判定基準を用いて、高外気温か低外気温かを判定する。本例では、図14のステップS85内のマップに示すように、判定基準を0℃〜0.5℃とし、制御ハンチングを防止するために、ヒステリシスを設定している。その後、ステップS86に進み、ステップS81と同様に、外気温以外の送風ファン16aの稼働率を決定するために必要な各パラメータを判定する。
【0286】
そして、ステップS87では、ステップS84、S85、S86で判定した結果を用いて、ステップS87中のマップのように、送風ファン16aの稼働率を決定する。具体的には、冷媒圧力が低圧力で、熱負荷が低室温かつ低外気温の場合、熱負荷が小さく、高い冷房能力を必要としないので、低車速であれば、送風ファン16aの稼働率を「LO」とし、高車速であれば、送風ファン16aを稼働させる必要がないので、送風ファン16aを「OFF」とする。また、冷媒圧力が低圧力で、熱負荷が(低室温かつ低外気温)以外の場合や、冷媒圧力が高圧力の場合、熱負荷が大きく、高い冷房能力を必要とするので、送風ファン16aの稼働率を「HI」とする。
【0287】
本実施形態では、除霜制御中であれば、クーラサイクルが選択されるので、ステップS80、S83、S85、S86、S87の順に進む。
【0288】
そして、冬季では、通常、室温が28℃よりも低いので、ステップS86で低室温と判定され、外気温が0℃よりも低ければ、ステップS85で低外気温と判定される。したがって、冷媒圧力が低圧力であって、外気温が0℃よりも低い場合、図14のステップS87内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温なので、低車速であれば、送風ファン16aは「LO」で作動する。
【0289】
一方、除霜制御中であって、外気温が0.5℃よりも高ければ、ステップS85で高外気温と判定され、冬季であれば、ステップS86で低室温と判定される。したがって、冷媒圧力が低圧力であって、外気温が0.5℃よりも高い場合、図14のステップS87内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温に該当しないので、送風ファン16aは車速に関係なく「HI」作動となる。
【0290】
このように、本実施形態では、除霜制御中であって、外気温が判定基準よりも高い場合、送風ファン16aの稼働率を、外気温が判定基準よりも低い場合における送風ファン16aの稼働率と比較して高く設定している。また、本実施形態では、外気温の判定基準を氷が溶け始める温度である0℃〜0.5℃に設定している。
【0291】
ここで、除霜制御中において、冬季でも外気温が0℃よりも高ければ、外気温によって解氷が促進する。したがって、本実施形態のように、外気温が0℃よりも高い高外気温のときに、送風ファン16aを「HI」作動させることで、解氷を促進させることができ、除霜時間を短縮することができる。
【0292】
さらに、除霜制御中、解氷水分が室外熱交換器16内に残っていると、ヒートポンプサイクル運転の再開後、すぐに着霜が生じてしまうところ、本実施形態では、送風ファン16aを「HI」作動させることで、解氷水を飛ばして、再着霜を防止することができる。また、除霜制御中に送風ファン16aを「HI」作動させることで、溶けかけの氷も落ちやすくなるとともに、送風ファン16aの震動により、室外熱交換器16も震動することで、さらに、水や氷が落ちやすくなるため、除霜時間を短縮できる。
【0293】
なお、本実施形態では、外気温の判定基準を0℃〜0.5℃に設定したが、解氷温度域の温度であれば、他の温度に設定しても良い。例えば、外気温の判定基準を2℃〜2.5℃に設定しても良い。この場合、外気温が2.5℃よりも高ければ、送風ファン16aは車速に関係なく「HI」作動となり、外気温が2℃よりも低ければ、送風ファン16aは、車速に応じて、「LO」作動か、「OFF」となる。
【0294】
(第6実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS12で実行する室外熱交換器16に送風する送風ファン16aの稼働率の決定処理に関するものである。本実施形態では、除霜制御中において、外気温が凍結温度域の所定温度よりも低い場合に送風ファン16の稼働率を低く設定することで、除霜時間の短縮化を図る。
【0295】
図15は、本実施形態における送風ファン16aの稼働率決定処理の内容を示すフローチャートである。以下では、主に第5実施形態と異なる点について説明する。
【0296】
ステップS80において、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクル(除霜モードも含む)か否かを判定する。このとき、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクルであれば(YES判定の場合)、次のステップS91以降で、送風ファン16aの稼働率を決定するパラメータの1つである「低外気温下での除霜モード」か否かを判定する。
【0297】
すなわち、ステップS91で、外気温が0℃よりも低いか否かを判定し、外気温が0℃よりも高ければ(NO判定の場合)、低外気温下での除霜モードではないので、ステップS92で、「低外気温下での除霜モード以外」とする。
【0298】
一方、ステップS91で、外気温が0℃よりも低いと判定した場合(YES判定の場合)、ステップS93に進み、除霜中であるか否かを判定する。このとき、除霜中でなければ(NO判定の場合)、ステップS92に進み、「低外気温下での除霜モード以外」とする。また、除霜中であれば(YES判定の場合)、ステップS94に進み、「低外気温下での除霜モード」とする。
【0299】
ステップS92、S94の後、ステップS95で、低外気温下での除霜モードのパラメータを除く、送風ファン16aの稼働率を決定するための他のパラメータを判定する。他のパラメータは、例えば、外気温、室温、車速、冷媒圧力であり、本実施形態では、除霜中、除霜中以外に関係なく、外気温については同じ判定基準を用いている。
【0300】
続いて、ステップS96において、ステップS92、S94、S95で判定した結果を用いて、図15のステップS96内に記載のマップのように、送風ファン16aの稼働率を決定する。
【0301】
本実施形態では、除霜制御中であれば、クーラサイクルが選択されるので、ステップS80からステップS91以降に進む。
【0302】
そして、除霜制御中であって、外気温が0℃よりも高い場合では、ステップS91、S92の順に進んで「低外気温下での除霜モード以外」とされ、冬季であれば、ステップS95で室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図15のステップS96内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、低外気温下除霜のパラメータが除霜以外なので、低車速であれば、送風ファン16aは「LO」で作動し、高車速であれば、送風ファン16aは「OFF」となる。
【0303】
一方、除霜制御中であって、外気温が0℃よりも低い場合では、ステップS91、S93、S94の順に進んで「低外気温下での除霜モード」とされ、冬季であれば、ステップS95で室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図15のステップS96内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、低外気温下除霜のパラメータが除霜なので、送風ファン16aは、高車速、低車速であっても「OFF」となる。
【0304】
このように、本実施形態では、冷媒圧力が低圧力であって、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、車速が低車速であるときの送風ファン16aの稼働率を、除霜制御中の温度が0℃よりも高ければ、低外気温下での除霜以外なので「LO」とし、除霜制御中の温度が0℃よりも低ければ、除霜制御中の温度が0℃よりも高い場合の稼働率よりも低い「OFF」としている。
【0305】
ここで、除霜制御中の外気温が0℃よりも低い氷結温度域の場合、室外熱交換器16に送風すると、解氷水分の再氷結を促してしまい、除霜が阻害されて除霜時間が長くなってしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、除霜制御中の外気温が氷結温度域の場合に、送風ファン16aを停止することで、解氷水分の再氷結を抑制できるので、除霜時間を短縮することができる。
【0306】
なお、本実施形態では、除霜制御中の温度が0℃よりも低い場合に、送風ファン16を停止させていたが、除霜制御中の温度が0℃よりも高い場合と比較して、送風ファン16の稼働率を低くすれば良く、「LO」よりも低い送風量(送風能力)を選択しても良い。
【0307】
また、本実施形態では、ステップS91での外気温の判定基準を0℃としたが、氷結温度域の温度であれば他の温度に変更しても良い。例えば、外気温の判定基準を−1℃に設定しても良い。この場合、外気温が−1℃よりも高ければ、送風ファン16aを「LO」とし、外気温が−1℃よりも低ければ、送風ファン16aを「OFF」とする。
【0308】
(第7実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS12で実行する室外熱交換器16に送風する送風ファン16aの稼働率の決定処理に関するものである。本実施形態では、除霜制御中において、室外熱交換器16に付着した霜の解氷が進んだ場合に送風ファン16の稼働率を高くすることで、除霜時間の短縮化を図る。
【0309】
図16は、本実施形態における送風ファン16aの稼働率決定処理の内容を示すフローチャートである。以下では、主に第5実施形態と異なる点について説明する。
【0310】
ステップS80において、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクル(除霜モードも含む)か否かを判定する。このとき、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクルであれば(YES判定の場合)、次のステップ101以降で、送風ファン16aの稼働率を決定するパラメータの1つである「除霜促進モード」か否かを判定する。この「除霜促進モード」とは、除霜の後期段階のように、除霜が進んで室外熱交換器16に付着した霜(氷)が解氷した状態を意味し、例えば、解氷した領域の割合が、霜が残っている領域よりも多い状態を意味する。
【0311】
具体的には、ステップS101で、冷媒吸入温度が5℃よりも高いか否かを判定する。冷媒吸入温度が5℃よりも高い場合(YES判定の場合)、除霜中であれば、除霜が進んだと判断できるため、ステップS102に進み、除霜中か否かを判定する。そして、除霜中であれば(YES判定の場合)、ステップS103で、除霜促進モードパラメータを「除霜促進モード」とする。
【0312】
一方、ステップS101で、冷媒吸入温度が5℃よりも低いと判定した場合(NO判定の場合)は、除霜中であっても除霜が進んでいないと判断できるため、ステップS104に進み、除霜促進モードパラメータを「除霜促進モード以外」とする。また、ステップS102で、除霜中以外と判定した場合(NO判定の場合)も、ステップS104に進み、除霜促進モードパラメータを「除霜促進モード以外」とする。
【0313】
ステップS103、S104の後、ステップS105で、除霜促進モードのパラメータを除く、送風ファン16aの稼働率を決定するための他のパラメータを判定する。他のパラメータは、例えば、外気温、室温、車速、冷媒圧力であり、本実施形態では、除霜中、除霜中以外に関係なく、外気温については同じ判定基準を用いている。
【0314】
続いて、ステップS106において、ステップS103、S104、S105で判定した結果を用いて、図16のステップS106内に記載のマップのように、送風ファン16aの稼働率を決定する。
【0315】
本実施形態では、除霜制御中であれば、クーラサイクルが選択されるので、ステップS80からステップS101以降に進む。
【0316】
そして、除霜制御中であって、冷媒吸入温度が5℃以下の場合では、ステップS101で、除霜が進んでいないと判断されるので、ステップS104に進んで「除霜促進モード以外」とされる。また、冬季であれば、ステップS105で、外気温が低外気温と判定され、室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図16のステップS106内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、除霜促進モードのパラメータが促進以外なので、低車速であれば、送風ファン16aは「LO」で作動し、高車速であれば、送風ファン16aは「OFF」となる。
【0317】
一方、除霜制御中であって、冷媒吸入温度が5℃よりも高い場合では、ステップS101、S102、S103の順に進んで「除霜促進モード」とされる。また、ステップS105で、外気温が低外気温と判定され、室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図16のステップS106内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、除霜促進モードのパラメータが促進なので、送風ファン16aは、高車速、低車速であっても「HI」となる。
【0318】
このように、本実施形態では、除霜制御中の冷媒吸入温度が5℃よりも高ければ、除霜が進んだと判断して、除霜制御中の冷媒吸入温度が5℃以下の場合の稼働率(低車速のときLO、高車速のときOFF)よりも高い「HI」として、送風ファン16aの送風能力を向上(増大)させている。
【0319】
ここで、除霜制御中、解氷水分が室外熱交換器16内に残っていると、ヒートポンプサイクル運転の再開後、すぐに着霜が生じてしまうところ、本実施形態では、除霜が進んだと判断した場合に、送風ファン16aを「HI」作動させて解氷水分を飛ばす(落とす)ので、ヒートポンプサイクル運転の再開後の再着霜を防止することができる。
【0320】
さらに、本実施形態によれば、除霜制御中に送風ファン16aを「HI」作動させることで、溶けかけの氷も飛ばす(落とす)とともに、送風ファン16aの震動により、室外熱交換器16も震動することで、さらに、水や氷が落ちやすくなるため、除霜時間を短縮できる。
【0321】
なお、本実施形態では、ステップS101で冷媒吸入温度の判定基準を5℃に設定していたが、解氷が進んだと判断できる温度であれば、他の温度に変更しても良い。また、本実施形態では、ステップS101で、冷媒吸入温度が判定基準よりも高い場合に、解氷が進んだと判断したが、その代わりに、除霜時間が所定時間を経過した場合に、解氷が進んだと判断しても良い。
【0322】
(第8実施形態)
本実施形態は、図6中のステップS12で実行する室外熱交換器16に送風する送風ファン16aの稼働率の決定処理に関するものである。本実施形態では、除霜制御中において、除霜が初期段階であれば、送風ファン16の稼働率を低くすることで、除霜時間の短縮化を図る。
【0323】
図17は、本実施形態における送風ファン16aの稼働率決定処理の内容を示すフローチャートである。以下では、主に第5実施形態と異なる点について説明する。
【0324】
ステップS80において、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクル(除霜モードも含む)か否かを判定する。このとき、冷凍サイクルの運転モードがクーラサイクルであれば(YES判定の場合)、次のステップS111以降で、送風ファン16aの稼働率を決定するパラメータの1つである「除霜モード」が「除霜初期」か「除霜初期以外」かを判定する。この「除霜初期」とは、霜が解氷していない解氷が進む前の状態を意味し、例えば、霜が残っている領域の割合が解氷した領域よりも多い状態を意味する。
【0325】
具体的には、ステップS111で、冷媒吸入温度が5℃よりも低いか否かを判定する。冷媒吸入温度が5℃よりも低い場合(YES判定の場合)、除霜中であれば、除霜初期と判断できるため、ステップS112に進み、除霜中か否かを判定する。そして、除霜中であれば(YES判定の場合)、ステップS113で、除霜モードパラメータを「除霜初期」とする。
【0326】
一方、ステップS111で、冷媒吸入温度が5℃以上と判定した場合(NO判定の場合)は、除霜中であっても除霜が進んだ除霜後期と判断できるため、ステップS114に進み、除霜モードパラメータを「除霜初期以外」とする。また、ステップS112で、除霜中以外と判定した場合(NO判定の場合)も、ステップS114に進み、除霜モードパラメータを「除霜初期以外」とする。
【0327】
ステップS113、S114の後、ステップS115で、除霜モードのパラメータを除く、送風ファン16aの稼働率を決定するための他のパラメータを判定する。他のパラメータは、例えば、外気温、室温、車速、冷媒圧力であり、本実施形態では、除霜中、除霜中以外に関係なく、外気温については同じ判定基準を用いている。
【0328】
続いて、ステップS116において、ステップS113、S114、S115で判定した結果を用いて、図17のステップS116内に記載のマップのように、送風ファン16aの稼働率を決定する。
【0329】
本実施形態では、除霜制御中であれば、クーラサイクルが選択されるので、ステップS80からステップS111以降に進む。
【0330】
そして、除霜制御中であって、冷媒吸入温度が5℃以上の場合では、ステップS111で、除霜初期ではないと判断されるので、ステップS114に進んで「除霜初期以外」とされる。また、冬季であれば、ステップS115で、外気温が低外気温と判定され、室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図17のステップS116内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、除霜モードのパラメータが除霜初期以外なので、低車速であれば、送風ファン16aは「LO」で作動し、高車速であれば、送風ファン16aは「OFF」となる。
【0331】
一方、除霜制御中であって、冷媒吸入温度が5℃よりも低い場合では、ステップS111、S112、S113の順に進んで「除霜初期」とされる。また、ステップS105で、外気温が低外気温と判定され、室温が低室温と判定される。したがって、この場合、図17のステップS116内のマップに示すように、熱負荷が低室温かつ低外気温であり、除霜モードのパラメータが除霜初期なので、送風ファン16aは、高車速、低車速どちらのときも「OFF」となる。
【0332】
このように、本実施形態では、車速が低車速のときを比較してわかるように、除霜制御中の冷媒吸入温度が5℃よりも低ければ、除霜初期であると判断して、送風ファン16aの稼働率を、除霜制御中の冷媒吸入温度が5℃以上の場合の稼働率(LO)よりも低い「OFF」として、送風ファン16aの送風能力を減少させている。
【0333】
ここで、除霜制御では、冷凍サイクルの運転モードをクーラサイクルとし、室外熱交換器16の温度を上昇させることで、室外熱交換器16に生じた霜を溶かすが、除霜初期に送風ファン16が室外熱交換器16に送風すると、室外熱交換器16で冷媒が放熱し、室外熱交換器16の温度上昇が阻害され、解氷が進まなくなってしまう。
【0334】
そこで、本実施形態では、除霜初期段階であれば、送風ファン16aを停止することにより、除霜制御時の室外熱交換器16の温度上昇を促進でき、解氷を促進できるので、除霜初期段階時に送風ファン16aを作動させる場合と比較して、除霜時間を短縮することができる。
【0335】
なお、本実施形態では、除霜初期段階の場合に送風ファン16を停止させていたが、除霜初期段階の場合の送風ファン16の稼働率を、「LO」よりも低い送風能力としても良く、このように、除霜初期段階以外の場合に決定される送風ファン16の稼働率よりも低くすることでも、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0336】
また、本実施形態では、ステップS111で冷媒吸入温度の判定基準を5℃に設定していたが、除霜初期段階と判断できる温度であれば、他の温度に変更しても良い。また、本実施形態では、ステップS111で、冷媒吸入温度が判定基準よりも低い場合に、除霜初期段階と判断したが、その代わりに、除霜の経過時間が所定時間よりも短い場合に、除霜初期段階と判断しても良い。
【0337】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、冷凍サイクル10が、室内凝縮器12と室内蒸発器26との2つの室内熱交換器を有していたが、ヒートポンプサイクルとクーラサイクルとが切替可能な構成であれば、冷凍サイクル10が1つの室内熱交換器を有する構成であっても良い。
【0338】
(2)上述の第3〜8実施形態では、第1実施形態と同様に、室外熱交換器16が着霜した場合に、空調制御装置50がエンジンEGに対して作動要求信号を出力して、エンジンEGを作動させていたが、第1実施形態と異なり、空調制御装置50がエンジンEGに対して作動要求信号をせずに除霜制御する場合に、第3〜8実施形態を実施することも可能である。
【0339】
(3)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。
【0340】
(4)上述の各実施形態では、本発明の車両用空調装置をハイブリッド車両に適用した例について説明したが、本発明の適用対象はハイブリッド車両に限定されるものではなく、例えばエンジンを停止することで省燃費を図るアイドリングストップ車両等、種々の車両に本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0341】
10 蒸気圧縮式冷凍サイクル
11 圧縮機
12 室内凝縮器(室内熱交換器)
16 室外熱交換器
16a 送風ファン(室外送風機)
26 室内蒸発器(室内熱交換器)
36 ヒータコア(加熱手段)
37 PTCヒータ(電気ヒータ)
48 シート暖房装置(電気ヒータ)
50 空調制御装置(制御手段)
EG エンジン(内燃機関)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として前記送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段(50)は、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合において、前記冷却水の温度が所定温度よりも低いときは、前記冷凍サイクル(10)を前記ヒートポンプサイクルとして作動させるとともに、前記冷却水の温度が所定温度よりも高いときに、前記除霜制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御手段(50)は、前記ヒートポンプサイクル時に前記室外熱交換器を流れる冷媒の温度が判定基準よりも低い場合に前記除霜制御を行うとともに、前記内燃機関(EG)の作動中の前記判定基準を、前記内燃機関(EG)の停止時の前記判定基準よりも高い温度に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
乗員に操作されることにより、前記冷凍サイクルの省動力化を優先させるエコノミーモードを設定するエコノミースイッチ(60d)と、
電力が供給されることにより発熱する補助暖房用の電気ヒータ(37、48)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記エコノミースイッチ(60d)が操作されて前記エコノミーモードが設定されているときに、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力しないとともに、前記電気ヒータ(37、48)に対して制御信号を出力して、前記電気ヒータ(37、48)による暖房を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時において、前記室外熱交換器(16)を流れる冷媒の温度が所定温度よりも高い場合に、前記除霜制御を終了することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記制御手段(50)は、外気温が所定温度よりも低い場合に、前記除霜制御の実行時間を第1所定時間に設定し、外気温が前記所定温度よりも高い場合に、前記第1所定時間よりも短い第2所定時間に設定して、前記除霜制御を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
電力が供給されることにより発熱する補助暖房用の電気ヒータ(37、48)を備えており、
前記制御手段(50)は、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合であって、乗員もしくは乗員周辺の温度が所定温度よりも低く、乗員の暖房感が低いと判定した場合に、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力し、
前記室外熱交換器(16)が着霜した場合であって、乗員もしくは乗員周辺の温度が前記所定温度よりも高く、乗員の暖房感が高いと判定した場合に、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力しないとともに、前記電気ヒータ(37、48)に対して制御信号を出力して、前記電気ヒータ(37、48)による暖房を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時における前記室内熱交換器(26)の目標温度を、前記除霜制御以外での前記クーラサイクル時における前記室内熱交換器(26)の目標温度と比較して、低く設定することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を開始する乗車前空調制御を行っているときは、前記除霜制御を行わないとともに、前記乗車前空調制御を行っていないときに、前記除霜制御を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項10】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記室外熱交換器(16)は、前記室外熱交換器(16)を通過する風の流れが水平方向よりも下側を向くように、鉛直方向に対して斜めに配置されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項11】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、
前記室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時において、外気温が解氷温度域の所定温度よりも高い場合、前記室外送風機(16a)の稼働率を、外気温が前記所定温度よりも低い場合に設定する前記室外送風機(16a)の稼働率と比較して、高く設定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項12】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、
前記室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時において、外気温が氷結温度域の所定温度よりも低い場合、前記室外送風機(16a)の稼働率を、外気温が前記所定温度よりも高い場合に設定する前記室外送風機(16a)の稼働率と比較して、低く設定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項13】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、
前記室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時において、前記室外熱交換器(16)に付着した霜の解氷が進んだ場合、前記室外送風機(16a)の稼働率を、解氷が進んでいない場合に設定する前記室外送風機(16a)の稼働率と比較して、高く設定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項14】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、
前記室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時において、前記室外熱交換器(16)に付着した霜が解氷する前の除霜初期段階の場合、前記室外送風機(16a)の稼働率を、前記除霜制御時の前記除霜初期段階以外の場合に設定する前記室外送風機(16a)の稼働率と比較して、低く設定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項1】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として前記送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段(50)は、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合において、前記冷却水の温度が所定温度よりも低いときは、前記冷凍サイクル(10)を前記ヒートポンプサイクルとして作動させるとともに、前記冷却水の温度が所定温度よりも高いときに、前記除霜制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御手段(50)は、前記ヒートポンプサイクル時に前記室外熱交換器を流れる冷媒の温度が判定基準よりも低い場合に前記除霜制御を行うとともに、前記内燃機関(EG)の作動中の前記判定基準を、前記内燃機関(EG)の停止時の前記判定基準よりも高い温度に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
乗員に操作されることにより、前記冷凍サイクルの省動力化を優先させるエコノミーモードを設定するエコノミースイッチ(60d)と、
電力が供給されることにより発熱する補助暖房用の電気ヒータ(37、48)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記エコノミースイッチ(60d)が操作されて前記エコノミーモードが設定されているときに、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力しないとともに、前記電気ヒータ(37、48)に対して制御信号を出力して、前記電気ヒータ(37、48)による暖房を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時において、前記室外熱交換器(16)を流れる冷媒の温度が所定温度よりも高い場合に、前記除霜制御を終了することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記制御手段(50)は、外気温が所定温度よりも低い場合に、前記除霜制御の実行時間を第1所定時間に設定し、外気温が前記所定温度よりも高い場合に、前記第1所定時間よりも短い第2所定時間に設定して、前記除霜制御を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
電力が供給されることにより発熱する補助暖房用の電気ヒータ(37、48)を備えており、
前記制御手段(50)は、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合であって、乗員もしくは乗員周辺の温度が所定温度よりも低く、乗員の暖房感が低いと判定した場合に、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力し、
前記室外熱交換器(16)が着霜した場合であって、乗員もしくは乗員周辺の温度が前記所定温度よりも高く、乗員の暖房感が高いと判定した場合に、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力しないとともに、前記電気ヒータ(37、48)に対して制御信号を出力して、前記電気ヒータ(37、48)による暖房を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時における前記室内熱交換器(26)の目標温度を、前記除霜制御以外での前記クーラサイクル時における前記室内熱交換器(26)の目標温度と比較して、低く設定することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を開始する乗車前空調制御を行っているときは、前記除霜制御を行わないとともに、前記乗車前空調制御を行っていないときに、前記除霜制御を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項10】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記室外熱交換器(16)は、前記室外熱交換器(16)を通過する風の流れが水平方向よりも下側を向くように、鉛直方向に対して斜めに配置されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項11】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、
前記室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時において、外気温が解氷温度域の所定温度よりも高い場合、前記室外送風機(16a)の稼働率を、外気温が前記所定温度よりも低い場合に設定する前記室外送風機(16a)の稼働率と比較して、高く設定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項12】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、
前記室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時において、外気温が氷結温度域の所定温度よりも低い場合、前記室外送風機(16a)の稼働率を、外気温が前記所定温度よりも高い場合に設定する前記室外送風機(16a)の稼働率と比較して、低く設定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項13】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、
前記室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時において、前記室外熱交換器(16)に付着した霜の解氷が進んだ場合、前記室外送風機(16a)の稼働率を、解氷が進んでいない場合に設定する前記室外送風機(16a)の稼働率と比較して、高く設定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項14】
冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)および冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器(12、26)を有し、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内熱交換器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室外熱交換器(16)に空気を送風する室外送風機(16a)と、
前記室外送風機(16a)の稼働率を制御するとともに、前記室外熱交換器(16)が着霜した場合に、前記室内熱交換器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させるクーラサイクルとして、前記冷凍サイクル(10)を作動させて、前記室外熱交換器(16)の除霜制御を行う制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記除霜制御時において、前記室外熱交換器(16)に付着した霜が解氷する前の除霜初期段階の場合、前記室外送風機(16a)の稼働率を、前記除霜制御時の前記除霜初期段階以外の場合に設定する前記室外送風機(16a)の稼働率と比較して、低く設定することを特徴とする車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−17474(P2011−17474A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161455(P2009−161455)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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