説明

車両用空調装置

【課題】バッテリに蓄えられた電力を大きく消費することなく、車室内の空間をプレ空調により快適な温度まで下げることができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】ユーザが携帯する携帯端末装置の操作入力に基づいて、ユーザが車両に接近する内容を含むユーザ接近情報を、携帯端末装置から車両に送信し、車両において、携帯端末装置からユーザ接近情報を受信したとき、車室内を予め空調するプレ空調を行う必要があるか否かを判定し、その判定結果に基づいて、車両に設けられた換気装置を動作させることによりプレ空調を行い、さらに、ユーザの車両への乗車意思があると判定したときに、蓄冷器に畜冷した冷気を放冷して車室内を冷房することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、特に、乗員が乗車する前に車室内を予め空調するプレ空調機能を備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用空調装置において、夏場など車室内温度が非常に高くなる環境下において、ユーザの乗車前に予め空調(プレ空調)を行うことで、乗車時の不快感を低減する方法が提案されている。また、車両用空調装置に畜冷材を設けて、車両用空調装置の冷気を畜冷して、車両の停車時に畜冷材に畜冷した冷気を放冷して車室内を冷房する技術が提案されている。
【0003】
例えば、走行中に畜冷器に畜冷して、畜冷器に畜冷した潜熱を利用してプレ空調を行う車両用空調装置において、プレ空調が必要な所定時間帯で、かつ冷房負荷が所定値以上の場合に畜冷器に畜冷するように制御し、所定時間帯または冷房負荷が所定値より小さい場合には畜冷器への畜冷は考慮せずに通常の空調制御を行うものが考案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、車両走行用エンジンおよび電動モータのうち選択されたいずれか一方により駆動される、冷凍サイクルの圧縮機と、圧縮機の駆動により冷媒が循環して、車室内吹出空気と熱交換する室内熱交換器と、乗員が降車してエンジンが停止している際に、乗員が所定時間内に乗車するか否かを予測する乗車予測手段とを備え、乗車予測手段により所定時間内の乗車が予測された場合には、電動モータにより圧縮機(コンプレッサ)を駆動させるプレ駆動制御を行う車両用空調装置が考案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、乗員の乗車前に車室内のプレ空調を行う場合、保冷制御された蓄冷材を放冷させて車室内を冷房することで、乗員の乗車後速やかに冷風を吹き出させることができ、乗員の快適性を向上させることができるとともに、炎天下等の熱負荷が高い場合でも消費電力を抑制し省電力化を図ることが可能な車両用空調装置が考案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−038912号公報
【特許文献2】特開2004−230936号公報
【特許文献3】特開2007−076546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プレ空調として車室内の換気を行う場合、換気用のファンを駆動するだけで、車室内の温度を外気温に近い温度まで下げることができる。しかし、外気温より低い温度まで下げることができないため、夏場など外気温が高い環境下では、乗車時の不快感を取り除くには至らない。
【0008】
また、特許文献1のように、プレ空調として畜冷器の放冷を用いる場合、換気のみの場合より冷房効果は高まるものの、畜冷器に蓄冷できる量に制限があるため、放冷できる量も制限されてしまう。
【0009】
また、特許文献2のように、プレ空調として電動モータによるコンプレッサ駆動を伴う冷房運転を行う場合、コンプレッサを駆動するのに大量の電力を消費してしまうため、長時間駆動することができない。
【0010】
また、特許文献3のように、乗員が車両に乗車しようとしているか否かの判断は、ドアの施錠状態あるいは開閉状態によって行っており、乗員が車両に乗り込む時点では、車室内が十分に冷却された状態とはなっていないという問題がある。
【0011】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、バッテリに蓄えられた電力を大きく消費することなく、車室内の空間をプレ空調により快適な温度まで下げることができる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0012】
上記課題を解決するための車両用空調装置は、
ユーザが携帯し、車両に備えられた車両側通信部と通信する端末側通信部と、ユーザが操作入力を行うための操作入力部と、を有し、ユーザの操作入力部の操作に基づいて、ユーザが車両に接近する旨の内容を含むユーザ接近情報を、端末側通信部から車両に送信する携帯端末装置と、
車両に設けられ、車両の車室内の換気を行う換気装置と、車両側通信部を介して携帯端末装置から受信したユーザ接近情報に基づいて、車室内を予め空調するプレ空調を行う必要があるか否かを判定するプレ空調判定部と、プレ空調判定部の判定結果に基づいて、換気装置を動作させることによりプレ空調を行う空調制御部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記構成によって、ユーザが車両にある程度近づいたときに換気のみを行い、冷凍サイクルによる冷房運転を行わないため、バッテリーの消費電力を抑えることができるとともに、ユーザの乗車時の不快感を軽減することができる。
【0014】
また、本発明の車両用空調装置における車両は、プレ空調を行う際に、車両に設けられたパワーウインドウの開放動作を行うパワーウインドウ動作制御部を備える。
【0015】
上記構成によって、プレ空調を行う際に、車両の窓(パワーウインドウ)を開いて車内の暖まった空気を車外に排出することで、換気の効率を高めることができる。
【0016】
また、本発明の車両用空調装置における車両は、換気装置の動作中に、ユーザの乗車意思の有無を判定する乗車意思判定部と、蓄冷材を含む蓄冷器と、蓄冷材の放冷により冷却された空気を車室内へ送る送風機と、を備え、空調制御部は、ユーザに乗車意思があると判定したとき、蓄冷材を放冷し、放冷により冷却された空気を車室内へ吹き出すように送風機を駆動制御する。
【0017】
上記構成によって、ユーザが車両にある程度近づいたときに換気のみを行い、ユーザの乗車直前に蓄冷材に蓄冷した熱量を一気に放冷することで、蓄冷材を有効活用でき、車室内全体の温度を程度下げることができる。また、放冷の前に車室内の換気を行っているので、従来技術の構成に比べて冷却効果が高まる。さらに、冷凍サイクルによる冷房運転を行わないため、消費電力を抑えることができる。
【0018】
また、本発明の車両用空調装置における乗車意思判定部は、車両のドアロックの開錠操作が行われた旨の内容を含む開錠操作情報を取得する開錠操作情報取得部を有し、開錠操作情報を取得したときに、ユーザに乗車意思があると判定する。
【0019】
近年、携帯型の無線携帯キーの操作に応じて、ドアの開錠/施錠を行うキーレスエントリシステム、また、無線携帯キーと車両との間で認証を行い、その認証結果に基づいて該車両のドアロック機構の状態を開錠/施錠の間で切り替え制御するスマートキーレスエントリシステムが広く普及している。ドアの開錠を行うということは、ユーザが車両に乗車する意思があると見なしてよい。上記構成によって、新規に装置を追加することなく、ユーザに乗車意思があるか否かを判定することができる。
【0020】
また、本発明の車両用空調装置における空調制御部は、冷却された空気を車室内のうち運転席周辺にのみ吹き出すように送風機を制御する。
【0021】
乗車時の不快感は、主に乗車直後の温度変化に伴うものである。上記構成によって、車室内の温度全体を均一に冷やすことができなくとも、最初に乗り込む確率が最も高いと考えられる運転席周りの温度を一時的にでも外気温よりも低い温度まで冷やすことができれば、乗車時の不快感を軽減することができる。
【0022】
また、本発明の車両用空調装置における車両は、充電されたバッテリーから供給された電力により、冷凍サイクルを循環する冷媒を圧縮するコンプレッサと、圧縮された冷媒を気化する蒸発器と、蒸発器により冷却された空気を車両の車室内へ送風する送風機とを有し、車室内の空調を行う空調ユニットを備え、空調制御部は、ユーザに乗車意思があると判定し蓄冷材を放冷する際に、空調ユニットにより車室内の冷房を行うように、送風機およびコンプレッサの動作を制御する。
【0023】
上記構成によって、ハイブリッド車両やプラグインハイブリッド車両、電気自動車などにおいて、電動コンプレッサを駆動するために十分な電力が得られる場合は、放冷に加えてコンプレッサ駆動を伴う冷房運転を行うことで、より短時間で車室内を快適な状態とすることができるとともに、ユーザの乗車時の不快感をより軽減することができる。この場合は、ユーザが乗車しようとしているとき(すなわち、ユーザに乗車意思があるとき)であるため、バッテリー電力の無駄な消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車両用空調装置の構成を示すブロック図。
【図2】車両用空調装置の空調ユニット関連の詳細構成を示すブロック図。
【図3】プレ空調制御処理を説明するフロー図。
【図4】換気停止制御処理を説明するフロー図。
【図5】放冷停止制御処理を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の車両用空調装置の一実施例を、図面を用いて説明する。図1に、車両用空調装置1の構成を示す。また、図2に、車両用空調装置1のうち、空調ユニットUおよび空調に関連するセンサ,アクチュエータ(空調関連部)の詳細構成を示す。
【0026】
車両用空調装置1は、空調に関連する空調関連部に含まれる空調ユニットUおよびセンサ,アクチュエータ、および、それらが接続された制御装置50を含んで構成される。また、制御装置50は、車内LAN(Local Area Network)130を介して、キーレスECU100,スマートECU110,パワーウインドウECU120とデータ通信可能にネットワーク接続されている。
【0027】
キーレスECU100は、ワイヤレスキーともいわれるユーザの所持する携帯キー101からの電波を受信し、受信した内容に基づいて車両のドアロック機構を開錠/施錠の間で切り替え制御するキーレスエントリシステムとしての制御を行う。
【0028】
スマートECU110は、ユーザが車両に接近してドアを開けようとした(すなわち、ドアノブあるいはその近傍に取り付けられたスイッチであるドアノブSW111を押下した)際に、ユーザの所持するスマートキー112との間で認証(いわゆるスマート認証)を行いその認証結果に基づいて車両のドアロック機構の状態を開錠/施錠の間で切り替え制御するスマートキーレスエントリシステムとしての制御を行う。
【0029】
パワーウインドウECU120は、ユーザのスイッチ(図示せず)操作により、車両の窓(パワーウインドウ,例えば122)を、モータ121を含むアクチュエータにより開閉駆動制御を行う。
【0030】
また、車両用空調装置1は、制御装置50に含まれ、周知の無線通信機として構成される車両側通信部507により、車外に設置された基地局91を経由して、ユーザの所持する例えば携帯電話機のような携帯端末装置(以降、「携帯端末」と略称する)90と通信可能となっている。基地局91を経由せず、車両側通信部507と携帯端末90とが直接通信可能となるようにしてもよい。
【0031】
制御装置50は、上述の車両側通信部507の他に、LAN I/F506,メモリ509,およびこれらが接続された制御回路508を含んで構成される。なお、制御装置50が本発明のプレ空調判定部,空調制御部,乗車意思判定部,パワーウインドウ動作制御部に相当する。
【0032】
LAN I/F506は、車内LAN130を介して、キーレスECU100,スマートECU110,パワーウインドウECU120のような他の車載機器やセンサとのデータの遣り取りを行うためのインターフェース回路である。なお、LAN I/F506が本発明の開錠操作情報取得部に相当する。
【0033】
制御回路508は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU508a,ROM508b,RAM508c,A/D変換部508d,入出力回路であるI/O508e,およびこれらの構成を接続するバスライン508fが備えられている。CPU508aは、ROM508bに記憶された空調制御プログラム(図示せず)を実行することで、車両用空調装置1としての機能を実現する。
【0034】
A/D変換部508dは、周知のA/D変換器を含んで構成され、例えば、各センサ(図2参照)からの検出信号(アナログ値)を、CPU508aで演算可能なデジタル値に変換する。
【0035】
メモリ509は、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体により構成され、車両用空調装置1の動作に必要な情報を記憶する。
【0036】
携帯端末90は、端末側通信部90a,キースイッチ等の操作入力部90bを含んで構成される。ユーザが操作入力部90bを操作することによって、車両用空調装置1と通信可能となり、所定のデータを送信することができる。例えば、ユーザが接近している旨の情報を送信することができる。また、LCDのような表示部を備えてもよい。
【0037】
図2のように、空調ユニットUは、いわゆるHVAC(Heating, Ventilating and Air-Conditioning)ユニットであり、例えば、車室内の空調状態を運転席側と助手席側とで独立して調整可能に構成されている。
【0038】
空調ダクト10の一端には車内の空気を取り入れるための内気取入れ口22,22’、車外の空気を取り入れるための外気取り入れ口24,24’が設けられている。内気取入れ口22,22’から内気を取り入れて内気循環モードとするか外気取入れ口24,24’から外気を取り入れて外気導入モードとするかは、ダンパ14,15を駆動することにより切り替えられるようになっている。ダンパ14,15は、制御装置50からの指示により作動する吸込口切替アクチュエータ62によって駆動される。
【0039】
一方、空調ダクト10の他端には、吹出口として、フロントガラス曇り止め用のデフロスタ吹出口27がフロントガラスの内面下縁に対応するインパネ(インストルメントパネル)上方奥に、運転席側フェイス吹出口25がインパネの正面中央右寄りと右隅に、運転席側フット吹出口26がインパネ下面右奥の運転席側足元に、助手席側フェイス吹出口25’がインパネの正面中央左寄りと左隅に、助手席側フット吹出口26’がインパネ下面左奥の助手席側足元に、それぞれ開口しており、それぞれの吹出口に対応するダンパ18,16,17,16',17'を駆動することにより開閉状態が切り替えられる。これらダンパは、制御装置50からの指示により作動する吹出口切替アクチュエータ60によって駆動される。
【0040】
空気取入れ口22,22’,24,24’の下側には、これらの空気取入れ口から取り入れられた空気をフェイス吹出口25,25’、フット吹出口26,26’、デフロスタ吹出口27へ向けて送風する送風ファン40が設けられている。この送風ファン40は、モータ41により回転駆動される。
【0041】
送風ファン40の回転数は、制御装置50の指令によりファン速度制御装置42によって制御される。ファン速度制御装置42は、例えばパワートランジスタ等を含んで構成することができる。この場合、パワートランジスタのベースにかかる電圧のデューティ比を変更することによりファン速度を変更することができる。なお、送風ファン40,モータ41,ファン速度制御装置42が本発明の送風機に相当する。
【0042】
送風ファン40の下流側には冷却用熱交換器であるエバポレータ34が配置されている。このエバポレータ34、圧縮器としてのコンプレッサ43、凝縮器としてのコンデンサ46、および減圧器としてのエキスパンションバルブ47により冷媒の循環路による冷凍サイクルを構成している。エバポレータ34によって冷凍サイクルを循環する低温の冷媒が蒸発し、この蒸発潜熱によりエバポレータ34を通過する空気が冷却される。
【0043】
エバポレータ34の下流側には、蓄冷器36が配置されている。蓄冷器36には蓄冷材が充填され、これがエバポレータ34で冷却された空気によって冷却されて液体から固体に凝固し、このときの潜熱で大きい熱量が蓄冷される。
【0044】
蓄冷材として、例えば、デカノール,テトラデカン等を用いることができる。これらの蓄冷材は融点(凝固点)が7°Cあるいは6°Cなので、エバポレータ34通過後の空気の温度を例えば3°Cまで下げれば、その空気でそのまま冷却し蓄冷材を融点以下にして凝固することができ、しかもエバポレータ34をフロストさせることもない。なお、蓄冷器の構成およびその動作については、特許文献3と同様であるため、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0045】
エバポレータ34に蓄冷器36を含む構成としてもよい(例えば、特開2006−282109号公報参照)。
【0046】
蓄冷器36に周知のペルチェ素子38を取り付けて、蓄冷を行ってもよい。ペルチェ素子の構成およびその動作については、特許文献3と同様であるため、ここでの詳細な説明は割愛する。ペルチェ素子38の低温側フィンは、蓄冷器36の中の蓄冷材の一部に接触しているため、ペルチェ素子38に直流電圧を印加することにより、蓄冷材を冷却することができる。
【0047】
コンプレッサ43は電動式のコンプレッサであり、モータ44によって駆動される。コンプレッサ43の駆動用の電力は車両のバッテリー49から供給される。コンプレッサ43の回転数は、制御装置50の指令によりモータ速度制御装置45によって制御される。モータ速度制御装置45は、例えばパワートランジスタ等を含んで構成される。この場合、パワートランジスタのベースにかかる電圧のデューティ比を変更することによりコンプレッサ43の回転数を変更することができる。
【0048】
また、車両用空調装置1は、外気温センサ52,日射センサ54,車室内温度センサ56,エバポレータ後温度センサ58,蓄冷材温度センサ59,および空調用操作部61を備えており、これらは制御装置50に接続されている。
【0049】
外気温センサ52は、例えばサーミスタ等により構成され、外気温度を抵抗変化として感知し、外気温度に応じた外気温度信号を制御装置50へ出力する。この外気温センサ52は、例えば車両のフロントバンパーリインホースメントの下部等に設置される。
【0050】
日射センサ54は、フォトダイオード等の光検出手段等により構成され、日射量に応じた日射量信号を制御装置50へ出力する。この日射センサ54は、例えば車両のインストルメントパネル上部のデフロスタ吹出し口付近に設置される。
【0051】
車室内温度センサ56は、例えばサーミスタ等により構成され、車室内の温度を抵抗変化として感知し、車室内温度に応じた車室内温度信号を制御装置50へ出力する。この車室内温度センサ56は、例えば車両のインストルメントパネル内等の所定位置に設置される。
【0052】
エバポレータ後温度センサ58は、エバポレータ34の下流側に設置される。エバポレータ後温度センサ58は、例えばサーミスタ等により構成され、エバポレータ34通過後の空気の温度(エバポレータ後空気温度)を抵抗変化として感知し、その温度に応じたエバポレータ後温度信号を制御装置50へ出力する。
【0053】
蓄冷材温度センサ59は、例えば蓄冷器36内に設けられ、充填された蓄冷材の温度を検出し、その温度に応じた蓄冷材温度信号を制御装置50へ出力する。
【0054】
空調用操作部61は、運転者および助手席搭乗者により操作可能なインストルメントパネル正面中央に設けられたエアコンパネルに設けられており、ON/OFFスイッチ,風量切替スイッチ,温度設定スイッチ,吹出口切替スイッチ(MODEスイッチ),内外気切替スイッチ,デフロスタスイッチ,A/Cスイッチ,独立/一括制御切替スイッチ(DUALスイッチ)といったスイッチを含んで構成される。これらのスイッチは、各々周知の押圧操作部やダイアル操作部として構成されている。
【0055】
上述のような構成により、車両用空調装置1は、空調用操作部61の操作状態,および上述の各種センサの検出結果に基づいて、上述の各アクチュエータを駆動制御することにより、吹出温度制御,風量制御,内気吸気・外気吸気切替制御,および吹出口切替制御等の周知の空調制御を実行する。
【0056】
このような車両用空調装置は、エンジンおよび電気モータを駆動源とする所謂ハイブリッド車に適用することができるが、電動式のコンプレッサを用いるものであれば、エンジンのみまたは電気モータのみを駆動源とする車両にも適用可能である。
【0057】
また、空調ユニットUには、外気取り入れ口24(24’でもよい)から分岐して空調ダクト10をバイパスするように、換気用ダクト97が設けられている。換気用ダクト97の他の一端(換気吹出口)は、例えば運転席側フェイス吹出口25,助手席側フェイス吹出口25’に接続されている。換気用ダクト97とこれら吹出口25,25’との接続部分に、換気用ダクト97から該吹出口への空気の導入/遮断を行うためのダンパを設けてもよい。換気吹出口は、各フット吹出口26,26’、デフロスタ吹出口27にも接続してよい。換気の際には、それぞれの吹出口が閉状態となり(例えば、空調ダクト10内の空気が車室内に流入しない)、換気用ダクト97のからの空気のみが車室内に流入するように、対応するダンパ16,16’,17,17’,18を駆動制御する。また、これら吹出口とは別に、独立した換気吹出口を車室内に設けてもよい。無論、換気用ダクト97の外気取り入れ口も、外気取り入れ口24とは別に設けてもよい。
【0058】
換気用ダクト97の中には、モータ・換気用ファンを含む換気用ファンユニット96が備えられている。換気用ファンの回転数は、制御装置50の指令により換気用ファン速度制御装置95によって制御される。これら、換気用ファン速度制御装置95,換気用ファンユニット96,換気用ダクト97により、換気装置が構成されている。
【0059】
図3を用いて、車両用空調装置1におけるプレ空調制御処理について説明する。なお、本処理は、CPU508aがROM508bに記憶された空調制御プログラムに含まれ、該プログラムに含まれる他の処理とともに繰り返し実行される。
【0060】
まず、制御装置50に含まれる車両側通信部507で、携帯端末90と通信可能なときには、携帯端末90からのデータを受信する(S11)。そして、受信したデータに、ユーザが車両に接近している旨の情報(すなわち、ユーザ接近情報)が含まれているか否かを判定する。
【0061】
ユーザ接近情報が含まれているとき(S12:Yes)、換気を開始する(S13)。すなわち、図2において、制御装置50からの指示により吸込口切替アクチュエータ62を作動させ、外気導入モードとするようにダンパ14,15を駆動する。また、制御装置50からの指示により吹出口切替アクチュエータ60を作動させ、運転席側フェイス吹出口25および助手席側フェイス吹出口25’から、換気用ダクト97から導入した外気を吹き出すようにダンパ16,16’,17,17’,18を駆動する(すなわち、各ダンパは閉状態となる)。さらに、制御装置50からの指示により、換気用ファンユニット96を予め定められた風量となるように回転駆動させる。このとき、RAM508c上の換気中フラグをセットする。
【0062】
フェイス吹出口25,25’の他に、フット吹出口26,26’、デフロスタ吹出口27を換気吹出口として用いるように換気用ダクト97を構成してもよいし、複数の吹出口を組み合わせても用いてもよい。また、換気用ファンユニット96の風量は、上述の各種センサの検出結果に基づいて算出してもよい。
【0063】
換気を行う際に、パワーウインドウECU120に指令を送り、1つあるいは複数の窓(122)を予め定められた開度となるように開けてもよい。
【0064】
また、車室内の換気を効率よく行うために、後部座席とトランクルームとを仕切る壁上の部材に、スリット状の開口部を設けてもよい。
【0065】
図3に戻り、ユーザの乗車意思の有無を判定するための乗車意思情報を取得する(S14)。そして、取得した乗車意思情報に基づいて、ユーザの乗車意思の有無を判定する。判定方法は、以下のうちの少なくとも一つを用いる。
【0066】
・キーレスECU100は、予め定められた周期でドアの施錠状態を示すドア施錠情報を車内LAN130に出力している。制御装置50は、車内LAN130を介してドア施錠情報を乗車意思情報として取得する。ユーザの携帯キー101の操作により、携帯キー101からキーレスECU100にドア開錠信号が送信されてドアが開錠され、ドア施錠情報に、ドアの施錠状態が「施錠」から「開錠」に変化したことを示す開錠操作情報が含まれているときに、ユーザに乗車意思があると判定する。
【0067】
・スマートECU110は、予め定められた周期でドアの施錠状態を示すドア施錠情報を車内LAN130に出力している。制御装置50は、車内LAN130を介してドア施錠情報を乗車意思情報として取得する。ユーザが車両に接近してドアノブSW111を押下した際に、スマートECU110とスマートキー112との間での認証の結果、ドアが開錠され、ドア施錠情報に、ドアの施錠状態が「施錠」から「開錠」に変化したことを示す開錠操作情報が含まれているときに、ユーザに乗車意思があると判定する。
【0068】
ユーザに乗車意思があると判定したとき(S15:Yes)、制御装置50からの指示により、換気用ファンユニット96の駆動を停止し、RAM508c上の換気中フラグをクリアする(S16)。窓(122)を開状態としているときには、パワーウインドウECU120に指令を送り、全ての窓を閉状態とする。
【0069】
続いて、蓄冷材によって冷却した空気をフェイス吹出口25,25’から吹き出させ、放冷によって車室内をプレ冷房する(S17)。すなわち、制御装置50からの指示により吸込口切替アクチュエータ62を作動させ、内気循環モードとするようにダンパ14,15を駆動する。また、制御装置50からの指示により運転席側フェイス吹出口25および助手席側フェイス吹出口25’から蓄冷器36の冷却された空気が吹き出されるように吹出口切替アクチュエータ60を駆動する。そして、ペルチェ素子38を含む構成の場合には、ペルチェ素子38の電源をオフとし、ペルチェ素子冷却通路12を閉じる。さらに、送風ファン40を回転駆動させる。このとき、RAM508c上の放冷中フラグをセットする。
【0070】
送風ファン40の風量は、上述の各種センサの検出結果に基づいて算出してもよい。また、プレ冷房は、運転席周辺のみを対象として行ってもよい。このとき、制御装置50からの指示により運転席側フェイス吹出口25および運転席側フット吹出口26のみから蓄冷器36の冷却された空気が吹き出されるように吹出口切替アクチュエータ60を駆動する。
【0071】
プレ冷房中に、上述の換気動作を継続してもよい。また、プレ冷房を開始してから予め定められた時間が経過した後に、窓(122)を閉状態としてもよい。
【0072】
また、プレ冷房中に、蓄冷器36の放冷に加えて、コンプレッサ43を駆動制御して、上述の冷凍サイクルによって冷房運転を行ってもよい。
【0073】
なお、蓄冷器36に対する蓄冷方法は、例えば、特許文献3における図6のS200〜S218,S224(第1実施形態)と同様である。また、ペルチェ素子を用いずに特許文献3の第2実施形態と同様に蓄冷を行ってもよい。
【0074】
図4を用いて、換気停止制御処理について説明する。なお、本処理は、CPU508aがROM508bに記憶された空調制御プログラムに含まれ、該プログラムに含まれる他の処理とともに繰り返し実行される。まず、換気が行われているか否かを判定する。図3のステップS13が実行されると、RAM508c上の換気中フラグがセットされるので、換気中フラグがセットされているとき、換気中であると判定する。
【0075】
換気中であるとき(S31:Yes)、換気停止条件が成立したか否かを判定する。判定方法は、以下のうちの少なくとも一つを用いる。
・換気開始後、予め定められた時間が経過しても、ユーザに乗車意思があると判定しないとき。
・バッテリー49の充電量が予め定めた所定閾値を下回るとき(充電量の検出方法は特許文献3に準ずる)。
・ユーザの携帯端末90の操作により、車両に接近しない旨の情報が制御装置50に送られてきたとき。
・プレ冷房が始まったとき。
【0076】
換気停止条件が成立したとき(S32:Yes)、制御装置50から換気用ファン速度制御装置95への指示により、換気用ファンユニット96の駆動を停止させる(S33)。このとき、RAM508c上の換気中フラグをクリアする。
【0077】
図5を用いて、放冷停止制御処理について説明する。なお、本処理は、CPU508aがROM508bに記憶された空調制御プログラムに含まれ、該プログラムに含まれる他の処理とともに繰り返し実行される。まず、プレ空調のうちの放冷が行われているか否かを判定する。図3のステップS17が実行されると、RAM508c上の放冷中フラグがセットされるので、放冷中フラグがセットされているとき、放冷中であると判定する。
【0078】
放冷中であるとき(S51:Yes)、換気停止条件が成立したか否かを判定する。判定方法は、以下のうちの少なくとも一つを用いる。
・放冷開始後、予め定められた時間が経過したとき。
・ユーザが乗車してドアが施錠されたとき。すなわち、ドア施錠情報に「開錠」から「施錠」に変化したことを示す施錠操作情報が含まれているとき。
・バッテリー49の充電量が予め定めた所定閾値を下回るとき(充電量の検出方法は特許文献3に準ずる)。
・車室内の温度が予め定められた温度となったとき。
・車両のエンジンを始動させたとき。
【0079】
放冷停止条件が成立したとき(S52:Yes)、制御装置50からの指示により、送風ファン40の駆動を停止させる(S53)。このとき、RAM508c上の放冷中フラグをクリアする。
【0080】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 車両用空調装置
34 エバポレータ
36 蓄冷器
40 送風ファン(送風機)
41 モータ(送風機)
42 ファン速度制御装置(送風機)
43 コンプレッサ
49 バッテリー
50 制御装置(プレ空調判定部,空調制御部,乗車意思判定部,パワーウインドウ動作制御部)
506 LAN I/F(開錠操作情報取得部)
508 制御回路
507 車両側通信部
90 携帯端末
90a 端末側通信部
90b 操作入力部
95 換気用ファン速度制御装置
96 換気用ファンユニット
97 換気用ダクト
100 キーレスECU
110 スマートECU
120 パワーウインドウECU
130 車内LAN
U 空調ユニット(換気装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが携帯し、車両に備えられた車両側通信部と通信する端末側通信部と、前記ユーザが操作入力を行うための操作入力部と、を有し、前記ユーザの前記操作入力部の操作に基づいて、該ユーザが車両に接近する旨の内容を含むユーザ接近情報を、前記端末側通信部から前記車両に送信する携帯端末装置と、
前記車両に設けられ、
前記車両の車室内の換気を行う換気装置と、
前記車両側通信部を介して前記携帯端末装置から受信した前記ユーザ接近情報に基づいて、前記車室内を予め空調するプレ空調を行う必要があるか否かを判定するプレ空調判定部と、
前記プレ空調判定部の判定結果に基づいて、前記換気装置を動作させることによりプレ空調を行う空調制御部と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記車両は、前記プレ空調を行う際に、前記車両に設けられたパワーウインドウの開放動作を行うパワーウインドウ動作制御部を備える請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記車両は、前記換気装置の動作中に、前記ユーザの乗車意思の有無を判定する乗車意思判定部と、
蓄冷材を含む蓄冷器と、
前記蓄冷材の放冷により冷却された空気を前記車室内へ送る送風機と、を備え、
前記空調制御部は、前記ユーザに乗車意思があると判定したとき、前記蓄冷材を放冷し、放冷により冷却された空気を前記車室内へ吹き出すように前記送風機を駆動制御する請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記乗車意思判定部は、前記車両のドアロックの開錠操作が行われた旨の内容を含む開錠操作情報を取得する開錠操作情報取得部を有し、
前記開錠操作情報を取得したときに、前記ユーザに乗車意思があると判定する請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調制御部は、前記冷却された空気を前記車室内のうち運転席周辺にのみ吹き出すように前記送風機を制御する請求項3または請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記車両は、
充電されたバッテリーから供給された電力により、冷凍サイクルを循環する冷媒を圧縮するコンプレッサと、圧縮された冷媒を気化する蒸発器と、前記蒸発器により冷却された空気を車両の車室内へ送風する送風機とを有し、車室内の空調を行う空調ユニットを備え、
前記空調制御部は、ユーザに乗車意思があると判定し前記蓄冷材を放冷する際に、前記車室内の冷房を行うように、前記送風機および前記コンプレッサの動作を制御する請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−246030(P2011−246030A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122461(P2010−122461)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】