説明

車両用空調装置

【課題】乗車前車室内空調(プレ空調)において周辺環境への騒音低減を図る車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置100は、ヒートポンプサイクル1の冷媒流れを制御することにより実施されるCOOLサイクル(冷房サイクル運転)及びHOTサイクル(暖房サイクル運転)によって、乗員の乗車前に車室内を空調する。エアコンECU50は、ヒートポンプサイクル1の冷媒流れを制御して冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転を制御すると共に、室外ファン6の作動を制御する。エアコンECU50は、プレ空調(乗車前空調)運転における室外ファン6の出力量を乗車中空調運転時よりも低減するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の空調を実施する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置の一例として、ヒートポンプサイクルによる運転によって、乗車前の車室内空調(以下、単に「プレ空調」ともいう)を実施する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の車両用空調装置は、乗員が乗車前に車両に近接したことを検知して空調運転を静穏モードにて制御する。
【0003】
具体的には、当該車両用空調装置は、乗員が携帯している空調遠隔操作部からの電波を受信すると、乗員が車両に近接していると判定し、プレ空調時の空調装置を静穏モードで制御する。この静穏モードでは、乗車前に圧縮機や車室内送風用のブロワファンの騒音及び風量を低減させるようにする。そして、乗員搭乗判定部によって乗員が乗車したと判定されると、乗員が設定した空調状態に速やかに復帰する復帰モードでの空調制御を実施する。このように当該車両用空調装置では、プレ空調時に乗員が車両に近接すると、静穏モードで空調装置が制御されるため、乗員が乗車するときの空調風による不快感と騒音とを軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−69657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、駐車中の車両に乗員が近接する場合のみに空調装置を静穏モードで制御するため、乗員が非近接であるときのプレ空調では、通常の騒音レベルの運転が実施されてしまう。このため、乗員に対しては騒音レベルを抑えた空調運転を提供できるが、駐車車両の周辺環境に対する騒音という観点では十分な静穏性を確保できるものではない。また、このプレ空調の実施時間帯、運転時間の長さ、実施場所等によっては、周辺環境に不快感を与えることにもなりかねない。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗車前の車室内空調(プレ空調)において周辺環境への騒音低減を図る車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。なお、特許請求の範囲および下記各手段に記載の括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【0008】
請求項1に記載の発明は、サイクル(1,1A)を流れる冷媒の作用により乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置に係る発明であって、
冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、室外ファンの作動を制御する制御装置(50)と、を備え、制御装置は、乗車前空調運転における室外ファンの出力量を乗車中空調運転時よりも低減するように制御することを特徴とする。
【0009】
室外ファンは、例えば車室内から離れた車両のエンジンコンパートメント等に配置されているため、車両用空調装置を構成する他の部品よりも車両の周囲環境への騒音について大きな影響を与えるものである。本発明によれば、乗車前空調運転時に室外ファンの出力量が抑制されるため、車外に与える作動音の影響が大きい室外ファンから発生する車外への騒音レベルを乗車中空調運転時に比べて低減することができる。したがって、サイクルを流れる冷媒の作用により乗車前の車室内空調において、自宅、駐車場等の周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。なお、室外ファンの出力量は、室外ファンの風量、仕事量に相当するものであり、例えば供給電力、印加電圧等によって制御することができる。そして室外ファンの出力量は、同じ空調負荷条件下で乗車前空調運転時の方が乗車中空調運転時よりも低く制御されるものである。
【0010】
請求項2に記載の発明によると、制御装置は、サイクルを流れる高圧側の冷媒圧力に基づいて前記室外ファンの出力量を増加させるように制御し、室外ファンの出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、乗車前空調運転時において乗車中空調運転時よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、室外ファンの出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準が乗車前空調運転時では高いため、乗車前空調運転時の室外ファンの出力量は、乗車中空調運転時よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。これにより、乗車前空調運転時の室外ファンの出力量は増加し難くなり、乗車中空調運転時に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば乗車中空調運転時の方が室外ファンの出力量を増加する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファンの出力量増加が乗車前空調運転時に抑制されるため、サイクルの負荷が増加しても乗員不在時の車外への騒音レベルを抑制する乗車前空調運転が提供できる。
【0012】
請求項3に記載の発明によると、制御装置は早朝時または夜間時であるか否かを判定する時間帯判定手段(S1110A,S1120A)を備え、制御装置は、時間帯判定手段において早朝時または夜間時であると判定された場合、室外ファンの出力量を早朝時または夜間時以外の時間帯であると判定された場合よりも低減することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、時間帯判定手段によって早朝時または夜間時であると判定された場合は室外ファンの出力量をこれ以外の時間帯と判定された場合よりも低減するため、車両の周囲環境が比較的静かな時間帯に車外への騒音レベルを抑制する空調運転を提供することができる。また、早朝または夜間の時間帯は、乗車前空調運転時だけでなく、乗車中空調運転時であっても周囲環境に対する配慮を優先した空調を提供する車両用空調装置が得られる。
【0014】
請求項4に記載の発明によると、制御装置は要求される熱源の出力に応じて車両のエンジン(30)の起動を要求する信号を出力し、制御装置は、乗車前空調運転時には乗車中空調運転時と比べてエンジン起動の要求信号の出力頻度を低くすることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、乗車前空調運転において要求される熱源の出力に応じてエンジン起動の要求信号の出力頻度を低くするため、乗車前空調運転ではエンジンの起動機会が抑制される。このため、エンジン起動による暖房能力向上よりも周囲環境に対する配慮を優先した乗車前空調運転を提供することができる。さらに、乗員不在時のエンジン運転による発車等を低減することにも寄与する。
【0016】
請求項5に記載の発明によると、制御装置はエンジンを起動するか否かを判定するエンジン起動判定手段(S140〜S144)を備え、エンジン起動判定手段では乗車前空調運転時はエンジンを起動しないと判定することを特徴とする。この発明によれば、エンジン起動判定手段によって乗車前空調運転時にはエンジンを起動しない判定がなされるため、エンジン音が発生しない乗車前空調運転が確実に行われ、さらに一層の、周囲環境に対する静穏性の確保及び上記乗員不在時の発車の防止が図れる。
【0017】
請求項6に記載の発明によると、さらに乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、制御装置は、低騒音モードが設定された乗車前空調運転時に、低騒音モードが設定されていない場合の乗車前空調運転時に比べて、エンジン起動の要求信号の出力頻度を低減するように制御することを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、当該低騒音モードを設定することによって乗車前空調運転時にエンジン起動の要求信号の出力頻度を低減する制御が行われるため、ユーザーが自宅の環境、駐車場所の周囲環境等に応じて、当該低騒音モードを設定してエンジン起動の要求信号の出力頻度を調整することにより乗車前空調時の周囲に与える静穏性を調節することができる。したがって、周囲環境への静穏性、乗車前空調による車室内の快適性向上のいずれを優先するかを選択可能で、ユーザーの要求に対応可能な車両用空調装置を提供できる。
【0019】
請求項7に記載の発明によると、車室内への送風空気を与える室内用送風手段(21)を備え、圧縮機または室内用送風手段の作動は、制御装置によって制御され、制御装置は、サイクルを流れる高圧側の冷媒圧力が所定値以上であるときに、圧縮機の出力量または室内用送風手段の出力量を低減させるように制御することを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、サイクルの高圧側の冷媒圧力が異常な高圧になることを防止することができると共に、上記の乗車前空調において自宅、駐車場等の周囲環境に対する配慮を優先した騒音低減が図れる。なお、室内用送風手段の出力量は、室外ファンの場合と同様に、室内用送風手段の風量、仕事量等に相当するものであり、例えば供給電力、印加電圧等によって制御することができる。また、圧縮機の出力量についても、圧縮機の冷媒吐出量、回転数等に相当するものである。
【0021】
請求項8に記載の発明によると、圧縮機の作動は制御装置によって制御され、制御装置は、乗車前空調運転及び乗車中空調運転の少なくともいずれか一方において、車両が予め設定されている駐車場所にあると判定した場合、当該駐車場所から所定の距離以内にあると判定した場合、及び停車時間が所定時間以上継続中と判定した場合、のいずれかであるときは、当該判定結果以外の判定がされたときと比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、空調運転時に、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあるときにはさらに室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することにより、駐車場付近での周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。
【0023】
請求項9に記載の発明によると、圧縮機の作動は制御装置によって制御され、制御装置は、乗車中空調運転において、車両が所定の車速条件を満たす場合、及びイグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合、のいずれかであるときは、当該場合以外のときと比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、乗車中空調運転の初期段階においても、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあると想定される場合、車両の走行後間もない場合等、周辺環境への騒音が懸念されるときには、さらに室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することにより、さらに一層の周囲環境に対する配慮を優先し、騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。
【0025】
請求項10に記載の発明によると、車両は、エンジン(30)及び電動モータを駆動源とするハイブリッド車両であり、圧縮機の作動は制御装置によって制御され、制御装置は、乗車中空調運転において、電動モータを駆動源にして走行する電気走行モードのときに、エンジン及び電動モータを駆動源にして走行するハイブリッド走行モードのときに比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0026】
ハイブリッド車両においては電気走行モードのときにエンジンが停止しているため、相対的に空調装置から発生する騒音が車外で聞こえ易くなり、空調装置の作動音が周囲環境に与える影響が大きい。そこでこの発明によれば、さらに電気走行モード時にハイブリッド走行モード時に比べて室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することにより、比較的静かな電気走行モード時の空調装置の相対的騒音レベルを下げることができる。したがって、さらに一層の周囲環境に対する配慮を優先し、騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。なお、圧縮機の出力量は、同じ空調負荷条件下では電気走行モード時の方がハイブリッド走行モード時よりも低く制御されるものである。
【0027】
請求項11に記載の発明によると、さらに乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、圧縮機の作動は制御装置によって制御され、制御装置は、低騒音モードが設定された乗車前空調運転時に、低騒音モードが設定されていない場合の乗車前空調運転時に比べて、室外ファンの出力量、圧縮機の出力量、のうちの少なくとも一方を低減するように制御することを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、当該低騒音モードを設定することによって乗車前空調運転時に室外ファンの出力量、圧縮機の出力量、のうちの少なくとも一方を低減する制御が行われるため、ユーザーが自宅の環境、駐車場所の周囲環境等に応じて、当該低騒音モードを設定して室外ファンまたは圧縮機の出力量を調整することにより乗車前空調時の周囲に与える静穏性を調節することができる。したがって、周囲環境への静穏性、乗車前空調による車室内の快適性向上のいずれを優先するかを選択可能でユーザーの要求に対応可能な車両用空調装置を提供できる。
【0029】
請求項12に記載の発明によると、さらに、車室内への送風空気を加熱するために通電により発熱する電気式補助熱源(24)と、車両の窓に装着されて通電により発熱する電気抵抗体と、を備え、制御装置は、乗車前空調運転において、車両の空調運転に使用可能な許可電力と乗車前空調運転で消費される使用電力との差が予め設定された電力以上である場合には、電気式補助熱源または電気抵抗体に通電することを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、上記の周囲環境に対する配慮を優先する乗車前空調により騒音低減を図る効果に加え、許可電力に余裕があるときには乗車前空調運転における空気加熱能力を向上させるため、乗車前空調の短時間化、乗車時の防曇効果及び快適性向上が図れる。
【0031】
請求項13に記載の発明は、サイクルを流れる冷媒の作用により乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置に係る発明であって、
冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、室外ファンまたは圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、制御装置は、乗車中空調運転において、車両が所定の車速条件を満たす場合、イグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合、及び車両が予め設定されている駐車場所から所定の距離以内にある場合、のいずれかであるときは、当該場合以外のときと比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、乗車中空調運転の初期段階において、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあると想定される場合、車両の走行後間もない場合等、周辺環境への騒音が懸念されるときには、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減する。したがって、車室内空調において、自宅、駐車場等付近の周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。なお、室外ファンの出力量は、室外ファンの風量、仕事量に相当するものであり、例えば供給電力、印加電圧等によって制御することができる。そして室外ファンの出力量は、同じ空調負荷条件下で当該場合のときの方が当該場合以外のときよりも低く制御されるものである。また、圧縮機の出力量についても、圧縮機の冷媒吐出量、回転数等に相当するものである。
【0033】
請求項14に記載の発明は、サイクルを流れる冷媒の作用により乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置に係る発明であって、
冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、室外ファンまたは圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、車両は、エンジン(30)及び電動モータを駆動源とするハイブリッド車両であり、制御装置は、車室内の空調運転において、電動モータを駆動源にして走行する電気走行モードのときに、エンジン及び電動モータを駆動源にして走行するハイブリッド走行モードのときと比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0034】
ハイブリッド車両においては電気走行モードのときにエンジンが停止しているため、相対的に空調装置から発生する騒音が車外で聞こえ易くなり、空調装置の作動音が周囲環境に与える影響が大きい。そこでこの発明によれば、電気走行モード時にハイブリッド走行モード時に比べて室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することにより、比較的静かな電気走行モード時の空調装置の相対的騒音レベルを下げることができる。したがって、車両の周囲環境に対する配慮を優先し、騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。なお、室外ファンの出力量は、室外ファンの風量、仕事量に相当するものであり、例えば供給電力、印加電圧等によって制御することができる。また、圧縮機の出力量についても、圧縮機の冷媒吐出量、回転数等に相当するものである。そして室外ファンの出力量または圧縮機の出力量は、同じ空調負荷条件下では電気走行モード時の方がハイブリッド走行モード時よりも低く制御されるものである。
【0035】
請求項15に記載の発明は、サイクルを流れる冷媒の作用により乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置に係る発明であって、
冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、室外ファンまたは圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、制御装置は、車室内の空調運転において、車両が予め設定されている駐車場所にあると判定した場合、当該駐車場所から所定の距離以内にあると判定した場合、及び停車時間が所定時間以上継続中と判定した場合、のいずれかであるときは、当該判定以外のときと比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0036】
この発明によれば、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあるときにはさらに室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することにより、乗車前空調運転時だけでなく乗車中空調運転時においても、周囲への騒音の影響が想定される駐車場付近では、周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。
【0037】
請求項16に記載の発明は、サイクルを流れる冷媒の作用により乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置に係る発明であって、
冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、要求される熱源の出力量に応じて車両のエンジンの起動を要求する信号を出力する制御装置(50)と、を備え、制御装置は、乗車前空調運転時には乗車中空調運転時と比べてエンジン起動の要求信号の出力頻度を低くすることを特徴とする。
【0038】
この発明によれば、乗車前空調運転においてはエンジン起動の要求信号の出力頻度を低くするため、エンジンの起動機会が抑制される。したがって、ヒートポンプサイクルを用いて実施される乗車前の車室内空調において、エンジン起動による暖房能力向上よりも自宅、駐車場等の周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る乗車前空調運転を提供することができる。さらに、乗員不在時のエンジン運転による発車等を低減することにも寄与する。
【0039】
請求項17に記載の発明によると、制御装置はエンジンを起動するか否かを判定するエンジン起動判定手段(S140〜S144)を備えており、エンジン起動判定手段では乗車前空調運転時にエンジンを起動しないと判定することを特徴とする。
【0040】
この発明によれば、エンジン起動判定手段によって乗車前空調運転時にはエンジンを起動しない判定がなされるため、エンジン音が発生しない乗車前空調運転時が確実に行われ、さらに一層の、周囲環境に対する静穏性の確保及び上記乗員不在時の発車の防止が図れる。
【0041】
請求項18に記載の発明によると、車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風し、制御装置によって作動が制御される室外ファン(6)を備え、さらに乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、制御装置は、低騒音モードが設定された乗車前空調運転時に、低騒音モードが設定されていない場合の乗車前空調運転時に比べて、室外ファンの出力量、圧縮機の出力量、エンジン起動の要求信号の出力頻度のうちの少なくとも一方を低減するように制御することを特徴とする。
【0042】
この発明によれば、当該低騒音モードを設定することによって乗車前空調運転時にエンジン起動の要求信号の出力頻度を低減する制御が行われるため、ユーザーが自宅の環境、駐車場所の周囲環境等に応じて、エンジン運転の頻度を制御することにより乗車前空調時の周囲に与える静穏性を調節することができる。したがって、周囲環境への静穏性、乗車前空調による車室内の快適性向上のいずれを優先するかをユーザーにとって選択可能な車両用空調装置を提供できる。
【0043】
請求項19に記載の発明は、ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置に係る発明であって、
ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方を制御すると共に、室外ファンの作動を制御する制御装置(50)と、を備え、制御装置は、乗車前空調運転における室外ファンの出力量を乗車中空調運転時よりも低減するように制御することを特徴とする。
【0044】
室外ファンは、例えば車室内から離れた車両のエンジンコンパートメント等に配置されているため、車両用空調装置を構成する他の部品よりも車両の周囲環境への騒音について大きな影響を与えるものである。本発明によれば、乗車前空調運転時に室外ファンの出力量が抑制されるため、車外に与える作動音の影響が大きい室外ファンから発生する車外への騒音レベルを乗車中空調運転時に比べて低減することができる。したがって、ヒートポンプサイクルを用いて実施される乗車前の車室内空調において、自宅、駐車場等の周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。なお、室外ファンの出力量は、室外ファンの風量、仕事量に相当するものであり、例えば供給電力、印加電圧等によって制御することができる。そして室外ファンの出力量は、同じ空調負荷条件下で乗車前空調運転時の方が乗車中空調運転時よりも低く制御されるものである。
【0045】
請求項20に記載の発明では、制御装置は、ヒートポンプサイクルを流れる高圧側の冷媒圧力に基づいて室外ファンの出力量を増加させるように制御し、室外ファンの出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、乗車前空調運転時において乗車中空調運転時よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0046】
この発明によれば、室外ファンの出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準が乗車前空調運転時では高いため、乗車前空調運転時の室外ファンの出力量は、乗車中空調運転時よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。これにより、乗車前空調運転時の室外ファンの出力量は増加し難くなり、乗車中空調運転時に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば乗車中空調運転時の方が室外ファンの出力量を増加する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファンの出力量増加が乗車前空調運転時に抑制されるため、ヒートポンプサイクルの負荷が増加しても乗員不在時の車外への騒音レベルを抑制する乗車前空調運転が提供できる。
【0047】
請求項21に記載の発明では、制御装置は早朝時または夜間時であるか否かを判定する時間帯判定手段(S1110A,S1120A)を備え、制御装置は、時間帯判定手段において早朝時または夜間時であると判定された場合、室外ファンの出力量を早朝時または夜間時以外の時間帯であると判定された場合よりも低減することを特徴とする。
【0048】
この発明によれば、時間帯判定手段によって早朝時または夜間時であると判定された場合は室外ファンの出力量をこれ以外の時間帯と判定された場合よりも低減するため、車両の周囲環境が比較的静かな時間帯に車外への騒音レベルを抑制する空調運転を提供することができる。また、早朝または夜間の時間帯は、乗車前空調運転時だけでなく、乗車中空調運転時であっても周囲環境に対する配慮を優先した空調を提供する車両用空調装置が得られる。
【0049】
請求項22に記載の発明では、制御装置は、暖房サイクル運転時に暖房に要求される出力に応じて車両のエンジン(30)の起動を要求する信号を出力し、制御装置は、乗車前空調運転時には乗車中空調運転時と比べてエンジン起動の要求信号の出力頻度を低くすることを特徴とする。
【0050】
この発明によれば、乗車前空調運転において暖房サイクル運転が行われるときにエンジン起動の要求信号の出力頻度を低くするため、乗車前空調運転ではエンジンの起動機会が抑制される。このため、エンジン起動による暖房能力向上よりも周囲環境に対する配慮を優先した乗車前空調運転を提供することができる。さらに、乗員不在時のエンジン運転による発車等を低減することにも寄与する。
【0051】
請求項23に記載の発明では、制御装置は、暖房サイクル運転時に車両のエンジンを起動するか否かを判定するエンジン起動判定手段(S140〜S144)を備え、エンジン起動判定手段では乗車前空調運転時はエンジンを起動しないと判定することを特徴とする。
【0052】
この発明によれば、エンジン起動判定手段によって乗車前空調運転時にはエンジンを起動しない判定がなされるため、エンジン音が発生しない乗車前空調運転が確実に行われ、さらに一層の、周囲環境に対する静穏性の確保及び上記乗員不在時の発車の防止が図れる。
【0053】
請求項24に記載の発明では、さらに乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、制御装置は、低騒音モードが設定された乗車前空調運転時に、低騒音モードが設定されていない場合の乗車前空調運転時に比べて、エンジン起動の要求信号の出力頻度を低減するように制御することを特徴とする。
【0054】
この発明によれば、当該低騒音モードを設定することによって乗車前空調運転時にエンジン起動の要求信号の出力頻度を低減する制御が行われるため、ユーザーが自宅の環境、駐車場所の周囲環境等に応じて、当該低騒音モードを設定してエンジン起動の要求信号の出力頻度を調整することにより乗車前空調時の周囲に与える静穏性を調節することができる。したがって、周囲環境への静穏性、乗車前空調による車室内の快適性向上のいずれを優先するかを選択可能で、ユーザーの要求に対応可能な車両用空調装置を提供できる。
【0055】
請求項25に記載の発明では、制御装置は、ヒートポンプサイクルを流れる高圧側の冷媒圧力に基づいて室外ファンの出力量を増加させるように制御し、室外ファンの出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、暖房サイクル運転時において冷房サイクル運転時よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0056】
この発明によれば、室外ファンの出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準が暖房サイクル運転時では高いため、暖房サイクル運転時の室外ファンの出力量は、冷房サイクル運転時よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。これにより、暖房サイクル運転時の室外ファンの出力量は増加し難くなり、冷房サイクル運転時に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば冷房サイクル運転時の方が室外ファンの出力量を増加する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファンの出力量増加がさらに暖房サイクル運転時に抑制されるため、ヒートポンプサイクルの負荷が増加しても乗員不在時の車外への騒音レベルを抑制する暖房サイクル運転が提供できる。
【0057】
請求項26に記載の発明では、車室内への送風空気を与える室内用送風手段(21)を備え、圧縮機または室内用送風手段の作動は制御装置によって制御され、制御装置は、ヒートポンプサイクルを流れる高圧側の冷媒圧力が所定値以上であるときに、圧縮機の出力量または室内用送風手段の出力量を低減させるように制御することを特徴とする。
【0058】
この発明によれば、ヒートポンプサイクルの高圧側の冷媒圧力が異常な高圧になることを防止することができると共に、上記の乗車前空調において自宅、駐車場等の周囲環境に対する配慮を優先した騒音低減が図れる。なお、室内用送風手段の出力量は、室外ファンの場合と同様に、室内用送風手段の風量、仕事量等に相当するものであり、例えば供給電力、印加電圧等によって制御することができる。また、圧縮機の出力量についても、圧縮機の冷媒吐出量、回転数等に相当するものである。
【0059】
請求項27に記載の発明では、圧縮機の作動は制御装置によって制御され、制御装置は、乗車前空調運転及び乗車中空調運転の少なくともいずれか一方において、車両が予め設定されている駐車場所にあると判定した場合、当該駐車場所から所定の距離以内にあると判定した場合、及び停車時間が所定時間以上継続中と判定した場合、のいずれかであるときは、当該判定結果以外の判定がされたときと比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0060】
この発明によれば、空調運転時に、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあるときにはさらに室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することにより、駐車場付近での周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。
【0061】
請求項28に記載の発明では、圧縮機の作動は制御装置によって制御され、制御装置は、乗車中空調運転において、車両が所定の車速条件を満たす場合、及びイグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合のいずれかであるときは、当該場合以外のときと比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0062】
この発明によれば、乗車中空調運転の初期段階においても、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあると想定される場合、車両の走行後間もない場合等、周辺環境への騒音が懸念されるときには、さらに室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することにより、さらに一層の周囲環境に対する配慮を優先し、騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。
【0063】
請求項29に記載の発明では、車両はエンジン(30)及び電動モータを駆動源とするハイブリッド車両であり、圧縮機の作動は制御装置によって制御され、制御装置は、乗車中空調運転において、電動モータを駆動源にして走行する電気走行モードのときに、エンジン及び電動モータを駆動源にして走行するハイブリッド走行モードのときに比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0064】
ハイブリッド車両においては電気走行モードのときにエンジンが停止しているため、相対的に空調装置から発生する騒音が車外で聞こえ易くなり、空調装置の作動音が周囲環境に与える影響が大きい。そこでこの発明によれば、さらに電気走行モード時にハイブリッド走行モード時に比べて室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することにより、比較的静かな電気走行モード時の空調装置の相対的騒音レベルを下げることができる。したがって、さらに一層の周囲環境に対する配慮を優先し、騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。なお、圧縮機の出力量は、同じ空調負荷条件下では電気走行モード時の方がハイブリッド走行モード時よりも低く制御されるものである。
【0065】
請求項30に記載の発明では、さらに乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、圧縮機の作動は制御装置によって制御され、制御装置は、低騒音モードが設定された乗車前空調運転時に、低騒音モードが設定されていない場合の乗車前空調運転時に比べて、室外ファンの出力量、圧縮機の出力量、のうちの少なくとも一方を低減するように制御することを特徴とする。
【0066】
この発明によれば、当該低騒音モードを設定することによって乗車前空調運転時に室外ファンの出力量、圧縮機の出力量、のうちの少なくとも一方を低減する制御が行われるため、ユーザーが自宅の環境、駐車場所の周囲環境等に応じて、当該低騒音モードを設定して室外ファンまたは圧縮機の出力量を調整することにより乗車前空調時の周囲に与える静穏性を調節することができる。したがって、周囲環境への静穏性、乗車前空調による車室内の快適性向上のいずれを優先するかを選択可能でユーザーの要求に対応可能な車両用空調装置を提供できる。
【0067】
請求項31に記載の発明では、圧縮機の回転数は制御装置によって制御され、暖房サイクル運転における圧縮機の最高回転数は、冷房サイクル運転における圧縮機の最高回転数よりも低く設定されることを特徴とする。
【0068】
暖房サイクル運転時は一般に冷媒圧力が高い状態に制御されるため、圧縮機の回転数が同じであっても冷房サイクル運転時よりも車外に与える騒音が大きくなる。そこでこの発明によれば、さらに暖房サイクル運転における圧縮機の最高回転数を冷房サイクル運転における圧縮機の最高回転数よりも低く設定するため、暖房サイクル運転時の周囲環境に与える騒音レベルを下げることができる。したがって、さらに一層の周囲環境に対する配慮を優先する空調が行われて騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。
【0069】
請求項32に記載の発明では、さらに、暖房サイクル運転時に冷媒の放熱作用によって車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(3)が配置される通路に設けられて、通電により発熱する電気式補助熱源(24)と、車両の窓に装着されて通電により発熱する電気抵抗体と、を備え、
制御装置は、乗車前空調運転において、車両の空調運転に使用可能な許可電力と乗車前空調運転で消費される使用電力との差が予め設定された電力以上である場合には、電気式補助熱源または電気抵抗体に通電することを特徴とする。
【0070】
この発明によれば、上記の周囲環境に対する配慮を優先する乗車前空調により騒音低減を図る効果に加え、許可電力に余裕があるときには乗車前空調運転における暖房能力を向上させるため、乗車前空調の短時間化、乗車時の防曇効果及び快適性向上が図れる。
【0071】
請求項33に記載の発明は、ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、車室内の空調運転を実施する車両用空調装置に係る発明であって、
ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方を制御すると共に、室外ファンまたは圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、制御装置は、乗車中空調運転において、車両が所定の車速条件を満たす場合、イグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合、及び車両が予め設定されている駐車場所から所定の距離以内にある場合、のいずれかであるときは、当該場合以外のときと比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0072】
この発明によれば、乗車中空調運転の初期段階において、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあると想定される場合、車両の走行後間もない場合等、周辺環境への騒音が懸念されるときには、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減する。したがって、ヒートポンプサイクルを用いて実施される車室内空調において、自宅、駐車場等付近の周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。なお、室外ファンの出力量は、室外ファンの風量、仕事量に相当するものであり、例えば供給電力、印加電圧等によって制御することができる。そして室外ファンの出力量は、同じ空調負荷条件下で当該場合のときの方が当該場合以外のときよりも低く制御されるものである。また、圧縮機の出力量についても、圧縮機の冷媒吐出量、回転数等に相当するものである。
【0073】
請求項34に記載の発明は、ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、車室内の空調運転を実施する車両用空調装置に係る発明であって、
ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転を制御すると共に、室外ファンまたは圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、
車両は、エンジン(30)及び電動モータを駆動源とするハイブリッド車両であり、制御装置は、車室内の空調運転において、電動モータを駆動源にして走行する電気走行モードのときに、エンジン及び電動モータを駆動源にして走行するハイブリッド走行モードのときと比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0074】
ハイブリッド車両においては電気走行モードのときにエンジンが停止しているため、相対的に空調装置から発生する騒音が車外で聞こえ易くなり、空調装置の作動音が周囲環境に与える影響が大きい。そこでこの発明によれば、電気走行モード時にハイブリッド走行モード時に比べて室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することにより、比較的静かな電気走行モード時の空調装置の相対的騒音レベルを下げることができる。したがって、車両の周囲環境に対する配慮を優先し、騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。なお、室外ファンの出力量は、室外ファンの風量、仕事量に相当するものであり、例えば供給電力、印加電圧等によって制御することができる。また、圧縮機の出力量についても、圧縮機の冷媒吐出量、回転数等に相当するものである。そして室外ファンの出力量または圧縮機の出力量は、同じ空調負荷条件下では電気走行モード時の方がハイブリッド走行モード時よりも低く制御されるものである。
【0075】
請求項35に記載の発明は、ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、車室内の空調運転を実施する車両用空調装置に係る発明であって、
ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転を制御すると共に、室外ファンまたは圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、
制御装置は、車室内の空調運転において、車両が予め設定されている駐車場所にあると判定した場合、当該駐車場所から所定の距離以内にあると判定した場合、及び停車時間が所定時間以上継続中と判定した場合、のいずれかであるときは、当該判定以外のときと比べて、室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することを特徴とする。
【0076】
この発明によれば、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあるときにはさらに室外ファンの出力量または圧縮機の出力量を低減することにより、乗車前空調運転時だけでなく乗車中空調運転時においても、周囲への騒音の影響が想定される駐車場付近では、周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。
【0077】
請求項36に記載の発明は、ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、車室内の空調運転を実施する車両用空調装置に係る発明であって、
ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転を制御すると共に、圧縮機の回転数を制御する制御装置(50)と、を備え、暖房サイクル運転における圧縮機の最高回転数は、冷房サイクル運転における圧縮機の最高回転数よりも低く設定されることを特徴とする。
【0078】
暖房サイクル運転時は一般に冷媒圧力が高い状態に制御されるため、圧縮機の回転数が同じであっても冷房サイクル運転時よりも車外に与える騒音が大きくなる。そこでこの発明によれば、暖房サイクル運転における圧縮機の最高回転数を冷房サイクル運転における圧縮機の最高回転数よりも低く設定するため、暖房サイクル運転時の周囲環境に与える騒音レベルを従来の暖房運転に比べて抑制することができる。したがって、周囲環境に対する配慮を優先する空調が行われて騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。
【0079】
請求項37に記載の発明は、ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置に係る発明であって、
ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転を制御すると共に、暖房サイクル運転時に暖房に要求される出力量に応じて車両のエンジンの起動を要求する信号を出力する制御装置(50)と、を備え、制御装置は、乗車前空調運転時には乗車中空調運転時と比べてエンジン起動の要求信号の出力頻度を低くすることを特徴とする。
【0080】
この発明によれば、乗車前空調運転において暖房サイクル運転が行われるときにエンジン起動の要求信号の出力頻度を低くするため、エンジンの起動機会が抑制される。したがって、ヒートポンプサイクルを用いて実施される乗車前の車室内空調において、エンジン起動による暖房能力向上よりも自宅、駐車場等の周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る乗車前空調運転を提供することができる。さらに、乗員不在時のエンジン運転による発車等を低減することにも寄与する。
【0081】
請求項38に記載の発明は、制御装置は、暖房サイクル運転時に車両のエンジンを起動するか否かを判定するエンジン起動判定手段(S140〜S144)を備えており、
エンジン起動判定手段では乗車前空調運転時にエンジンを起動しないと判定することを特徴とする。
【0082】
この発明によれば、エンジン起動判定手段によって乗車前空調運転時にはエンジンを起動しない判定がなされるため、エンジン音が発生しない乗車前空調運転時が確実に行われ、さらに一層の、周囲環境に対する静穏性の確保及び上記乗員不在時の発車の防止が図れる。
【0083】
請求項39に記載の発明は、車室外に設けられ、室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風し、制御装置によって作動が制御される室外ファン(6)を備え、さらに乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、
制御装置は、低騒音モードが設定された乗車前空調運転時に、低騒音モードが設定されていない場合の乗車前空調運転時に比べて、室外ファンの出力量、圧縮機の出力量、エンジン起動の要求信号の出力頻度のうちの少なくともいずれかを低減するように制御することを特徴とする。
【0084】
この発明によれば、当該低騒音モードを設定することによって乗車前空調運転時にエンジン起動の要求信号の出力頻度を低減する制御が行われるため、ユーザーが自宅の環境、駐車場所の周囲環境等に応じて、エンジン運転の頻度を制御することにより乗車前空調時の周囲に与える静穏性を調節することができる。したがって、周囲環境への静穏性、乗車前空調による車室内の快適性向上のいずれを優先するかをユーザーにとって選択可能な車両用空調装置を提供できる。
【0085】
なお、特許請求の範囲及び上記各手段に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態の車両用空調装置100の構成及びCOOLサイクル時の冷媒流れを説明するための模式図である。
【図2】車両用空調装置100の構成及びHOTサイクル時の冷媒流れを説明するための模式図である。
【図3】車両用空調装置100の構成及びDRY EVAサイクル時の冷媒流れを説明するための模式図である。
【図4】車両用空調装置100の構成及びDRY ALLサイクル時の冷媒流れを説明するための模式図である。
【図5】上記各サイクルにおいて各電磁弁11〜14及び三方弁4の動作状態を示す図表である。
【図6】車両用空調装置100における制御構成を示すブロック図である。
【図7】車両用空調装置100のエアコンECU50による基本的な空調制御処理を示したフローチャートである。
【図8】上記空調制御処理におけるサイクル・PTC選択処理(ステップ6)の詳細を示すフローチャートである。
【図9】上記空調制御処理におけるブロワ電圧決定処理(ステップ7)の詳細を示すフローチャートである。
【図10】上記空調制御処理における圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の一部を示すフローチャートである。
【図11】図10のステップ100でΔfCを求めるための偏差Enと偏差変化率EDOTとの関係を示すマップである。
【図12】上記空調制御処理における室外熱交換器5の室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図13】上記室外ファン6の各出力量及び圧縮機回転数と周辺環境への騒音との関係を示した実験データである。
【図14】上記空調制御処理におけるPTC出力・電熱デフォッガの決定処理(ステップ12)の詳細を示すフローチャートである。
【図15】図14のステップ1201でΔfHを求めるための偏差Pnと偏差変化率PDOTとの関係を示すマップである。
【図16】上記空調制御処理におけるエンジンON要求有無の決定処理(ステップ14)の詳細を示すフローチャートである。
【図17】第2実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図18】第3実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図19】第4実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図20】第5実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図21】第6実施形態における圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の一部を示すフローチャートである。
【図22】第7実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図23】第8実施形態における圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の一部を示すフローチャートである。
【図24】第9実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図25】第10実施形態における圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の一部を示すフローチャートである。
【図26】第11実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図27】第12実施形態における圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の一部を示すフローチャートである。
【図28】第13実施形態におけるエンジンON要求有無の決定処理(ステップ14)の詳細を示すフローチャートである。
【図29】第14実施形態における圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の一部を示すフローチャートである。
【図30】図29のフローチャートに従ったCOOLサイクル時及びHOTサイクル時における圧縮機回転数と周辺環境への騒音との関係を示した実験データである。
【図31】第15実施形態に係る車両用空調装置101の構成を説明するための模式図である。
【図32】車両用空調装置101のエアコンECU50による基本的な空調制御処理を示したフローチャートである。
【図33】第15実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図34】第15実施形態におけるPTC出力・電熱デフォッガの決定処理(ステップ12)の詳細を示すフローチャートである。
【図35】第16実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図36】第17実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図37】第18実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図38】第20実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図39】第21実施形態における圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)を示すフローチャートである。
【図40】第22実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【図41】第24実施形態における上記室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0088】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図16を用いて詳細に説明する。第1実施形態は、蒸気圧縮式冷凍機をハイブリッド自動車用の空調装置に適用したものである。
【0089】
ハイブリッド自動車は、ガソリン等の液体燃料を爆発燃焼させて動力を発生させる走行用内燃機関をなすエンジン30、走行補助用電動機機能及び発電機機能を備える走行補助用の電動発電機、エンジン30への燃料供給量や点火時期等を制御するエンジン用電子制御装置(以下、エンジンECU60ともいう)、電動発電機やエンジンECU60等に電力を供給する電池、電動発電機の制御及び無断変速機や電磁クラッチの制御を行うと共にエンジンECU60に制御信号を出力するハイブリッド電子制御装置(以下、ハイブリッドECU70ともいう)を備えている。ハイブリッドECU70は、電動発電機及びエンジン30のいずれの駆動力を駆動輪に伝達するかの駆動切替を制御する機能、及び電池の充放電を制御する機能を備えている。
【0090】
また電池は、車室内空調、走行等によって消費した電力を充電するための充電装置を備えており、例えばニッケル水素蓄電池、リチウムイオン電池等が用いられる。この充電装置は、電力供給源としての電気スタンドや商業用電源(家庭用電源)に接続されるコンセントを備えており、このコンセントに電源供給源を接続することにより、電池の充電を行うこともできる。
【0091】
具体的には、以下のような制御を行う。
(1)車両が停止しているときは、基本的にエンジン30を停止させる。
(2)走行中は、減速時を除き、エンジン30で発生した駆動力を駆動輪に伝達する。なお、減速時は、エンジン30を停止させて電動発電機にて発電して電池に充電する(電気走行モード)。
(3)発進時、加速時、登坂時及び高速走行時等の走行負荷が大きいときには、電動発電機を電動モータとして機能させてエンジン30で発生した駆動力に加えて、電動発電機に発生した駆動力を駆動輪に伝達する(ハイブリッド走行モード)。
(4)電池の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジン30の動力を電動発電機に伝達して電動発電機を発電機として作動させて電池の充電を行う。
(5)車両が停止しているときに電池の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジンECU60に対してエンジン30を始動する指令を発するとともに、エンジン30の動力を電動発電機に伝達する。
【0092】
車両用空調装置100は、乗員の乗車前に行われる車室内空調(以下、乗車前空調またはプレ空調という)運転が実施可能な空調装置である。車両のユーザーが、乗車前空調運転を行いたいときに携帯する携帯機52を操作すると、エアコンECU50は、携帯機52から送信される乗車前空調運転の命令信号を受信し、所定のプログラムによる演算を行って乗車前空調運転を実行するものである。
【0093】
ユーザーは、車両に乗車しようとする前に車室内の空調環境を快適にしておくために、携帯機52を操作して、通信局であるセンターを通じて車両の空調装置に対して乗車前空調運転の指令を送信する。この乗車前空調運転は、原則として、車両のイグニッションスイッチがOFF状態であること、あるいはエアコンECU50に対して乗員が乗車している信号が送信されていないことが許容条件となる。
【0094】
図1は、車両用空調装置100の構成及びCOOLサイクル(以下、冷房サイクルともいう)時の冷媒流れを説明するための模式図である。図2は、HOTサイクル(以下、暖房サイクルともいう)時の冷媒流れを説明するための模式図である。図3はDRY EVAサイクル(以下、第1の除湿サイクルともいう)時の冷媒流れを説明するための模式図である。図4は、DRY ALLサイクル(以下、第2の除湿サイクルともいう)時の冷媒流れを説明するための模式図である。図5は、上記各サイクルにおいて各電磁弁11〜14及び三方弁4の動作状態を示す図表である。各サイクルにおいて、冷媒が流れる経路は太字実線で示し、冷媒が流れない経路は破線で示している。
【0095】
車両用空調装置100は、アキュムレータ式冷凍サイクルであるヒートポンプサイクル1を用いた装置であり、車室内に送風空気を導く空調ケース20、この空調ケース20内に空気を導入して車室内へ送る室内用ブロワ21(室内用送風手段)、及びエンジンECU60に接続されたエアコン電子制御装置(以下、エアコンECU50ともいう)を備える。
【0096】
室内用ブロワ21は、ブロワケース(図示せず)、ファン、ブロワモータよりなり、このブロワモータへの印加電圧に応じて、ブロワモータの回転速度が決定される。ブロワモータへの印加電圧は、上記エアコンECU50からの制御信号に基づいて制御される。
【0097】
室内用ブロワ21のブロワケースには、車室内空気(内気)を導入する内気導入口(図示せず)と、車室外空気(外気)を導入する外気導入口(図示せず)とが形成されるとともに、内気導入口と外気導入口との開口割合を調節する内外気切替手段を成す内外気切替ドア25が設けられている。
【0098】
室内用ブロワ21よりも送風空気の下流側における空調ケース20内の通風路には、上流側から下流側に進むにしたがい順に、蒸発器8(冷却用熱交換器)、エアミックスドア22、ヒータコア23、凝縮器3(加熱用熱交換器)、PTCヒータ24(電気式補助熱源)が配置されている。
【0099】
空調ケース20の下流端(図1の上方)は、車両のフロントウィンドウに向かって送風空気を吐出するデフロスタ吹出口(図示せず)、乗員の上半身に向かって送風空気を吐出するフェイス吹出口(図示せず)、乗員足元に向かって送風空気を吐出するフット吹出口(図示せず)に連絡されている。
【0100】
蒸発器8は室内用ブロワ21直後の通路全体を横断するように配置されており、室内用ブロワ21から吹き出された空気全部が通過するようになっている。蒸発器8は冷房サイクル運転時や除湿サイクル運転時において内部を流れる冷媒の吸熱作用によって、送風空気を除湿したり冷却したりする冷却用熱交換器として機能する。
【0101】
ヒータコア23は少なくともその伝熱部分が空調ケース20内の温風側通路のみに位置するように蒸発器8よりも送風空気の下流側に配置されている。ヒータコア23は暖房サイクル運転時において、内部を流れるエンジン30の冷却水の熱を利用して周囲の空気を加熱する熱交換器として機能する。
【0102】
凝縮器3は、少なくともその伝熱部分が空調ケース20内の温風側通路のみに位置して配置されており、ヒータコア23よりもさらに送風空気の下流側に配置されている。凝縮器3は暖房サイクル運転時、除湿サイクル運転時および冷房サイクル運転時において内部を流れる冷媒の放熱作用によって温風側通路を流れる送風空気を加熱する加熱用熱交換器として機能する。
【0103】
PTCヒータ(positive temperature coefficient)24は、少なくともその伝熱部分が温風側通路のみに位置して設置されており、凝縮器3よりもさらに送風空気の下流側に配置されている。PTCヒータ24は暖房サイクル運転や冷房サイクル運転において温風側通路を流れる送風空気を加熱する補助的な加熱手段である。PTCヒータ24は、通電発熱素子部を備え、通電発熱素子部に通電されることによって発熱し、周囲の空気を暖めることができる。
【0104】
この通電発熱素子部は、耐熱性を有する樹脂材料(例えば、66ナイロンやポリブタジエンテレフタレートなど)で成形された樹脂枠の中に複数個のPTC素子を嵌め込むことにより構成したものである。また、PTCヒータ24は、さらに通電発熱素子部からの発熱を伝達する熱交換フィン部を有してもよい。この熱交換フィン部は、アルミニウムの薄板を波形状に成形したコルゲートフィンと、このコルゲートフィンを一定の形状に保つとともにPTC素子や電極板との接触面積を確保するアルミニウムプレートと、をろう付け接合することにより構成したものである。
【0105】
蒸発器8よりも下流側であってヒータコア23や凝縮器3よりも上流側の通風路には、蒸発器8を通過した空気を、凝縮器3を通る空気と凝縮器3を迂回する空気とに分けたり、切り替えたりして、これらの空気の風量比率を調整できるエアミックスドア22が設けられている。
【0106】
エアミックスドア22は、アクチュエータ等によりそのドア本体位置を変化させることで、空調ケース20内の二分された通路である温風側通路および冷風側通路のそれぞれの一部または全部を塞ぐことができる。そして、エアミックスドア22による温風側通路の開度は、温風側通路の横断方向の開口が開放される割合のことであり、0から100%の範囲で調整可能である。また、エアミックスドア22による冷風側通路の開度は、冷風側通路の横断方向の開口が開放される割合のことであり、0から100%の範囲で調整可能である。
【0107】
ヒートポンプサイクル1は、圧縮機2、凝縮器3、三方弁4、室外熱交換器5、第1膨張弁10、第2膨張弁7、蒸発器8、アキュムレータ9、及び各電磁弁11〜14を備える。ヒートポンプサイクル1は、冷凍サイクル内を流れる冷媒(例えば、R134a、CO2等)の状態変化を利用することにより、冷房用の蒸発器8と暖房用の凝縮器3によって冷房、暖房および除湿を行うことができる。また、蒸発器8と凝縮器3とは、室外熱交換器5に対して、室内熱交換器を構成する。
【0108】
冷房サイクル運転時の冷媒は、図1の太字実線の経路を白抜き矢印の向きに流れる。ヒートポンプサイクル1の冷房サイクルは、除湿能力が大きく、図1に示すように冷媒を吸入して吐出する圧縮機2と、圧縮機2から吐出された冷媒が流入する凝縮器3と、冷房サイクル運転時に凝縮器3から流入する冷媒が空気と熱交換して放熱する室外熱交換器5と、凝縮器3を流出した冷媒が室外熱交換器5に向かわせる三方弁4と、室外熱交換器5から蒸発器8への冷媒流れを制御するように設けられた電磁弁11と、電磁弁11によって開放された流路を通ってきた冷媒を減圧する第2膨張弁7と、第2膨張弁7で減圧された冷媒が蒸発して送風空気を冷却する蒸発器8と、冷媒を気液分離するアキュムレータ9と、を配管により環状に接続することにより形成されている。冷房サイクル運転経路は、圧縮機2→凝縮器3→三方弁4→室外熱交換器5→電磁弁11→第2膨張弁7→蒸発器8→アキュムレータ9→圧縮機2となる。
【0109】
このように冷房サイクル運転経路は、三方弁4を室外熱交換器5側の流路と連通するように切り替えることによって、冷房サイクル運転時に凝縮器3で送風空気と熱交換して冷却された冷媒が第1膨張弁10を通らないで室外熱交換器5に流入し、電磁弁11によって開放された流路を通り第2膨張弁7で減圧された後、蒸発器8に流入し、アキュムレータ9を経由して圧縮機2に吸入される経路である。冷房サイクル運転では、凝縮器として機能する室外熱交換器5から、熱が室外に放出され、蒸発器8から熱が吸収される。このとき、凝縮器3も発熱しているが、エアミックスドア22の位置制御で、車室内空気との熱交換量を少なくすることができる。また、電磁弁11と第2膨張弁7との間の通路には、逆流防止用の逆止弁15が設けられている。
【0110】
暖房サイクル運転時の冷媒は、図2の太字実線の経路を黒塗り矢印の向きに流れる。ヒートポンプサイクル1の暖房サイクルは、暖房性能が大であり、除湿能力無しの運転であり、図2に示すように圧縮機2と、暖房サイクル運転時に圧縮機2から吐出された冷媒と空気とを熱交換させて空気を加熱する凝縮器3と、暖房サイクル運転時に凝縮器3から流入した冷媒を減圧する減圧装置としての第1膨張弁10と、第1膨張弁10から室外熱交換器5への冷媒流れを制御するように設けられた電磁弁14と、暖房サイクル運転時に第1膨張弁10で減圧された冷媒を蒸発させる室外熱交換器5と、室外熱交換器5から圧縮機2への冷媒流れを制御するように設けられた電磁弁12と、アキュムレータ9と、を配管により環状に接続することにより形成されている。暖房サイクル運転経路は、圧縮機2→凝縮器3→三方弁4→第1膨張弁10→電磁弁14→室外熱交換器5→電磁弁12→アキュムレータ9→圧縮機2となる。また、電磁弁12とアキュムレータ9との間の通路には、逆流防止用の逆止弁16が設けられている。なお、室外空気が極めて低いときは、暖房サイクルによる暖房は効率が悪いので、冷房サイクルにてエンジン30を稼動させ、エンジン冷却水(温水)の温度を上げて、ヒータコア23の熱で車室内が暖房される。
【0111】
第1の除湿サイクル運転時の冷媒は、図3の太字実線の経路を斜線太矢印の向きに流れる。ヒートポンプサイクル1の第1の除湿サイクルは、暖房性能が小、除湿能力が中レベルの運転であり、例えば、操作パネル51の操作等により、暖房能力が小レベルで車室内の除湿を行うときに選択されて実行される。第1の除湿サイクルは、図3に示すように圧縮機2、凝縮器3、第1膨張弁10、第1膨張弁10から蒸発器8への冷媒流れを制御するように設けられた電磁弁13、第1膨張弁10で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器8、及びアキュムレータ9を配管により環状に接続することにより形成されている。第1の除湿サイクル運転経路は、圧縮機2→凝縮器3→三方弁4→第1膨張弁10→電磁弁13→蒸発器8→アキュムレータ9→圧縮機2となる。この第1の除湿サイクル運転経路は、第1膨張弁10で減圧された冷媒が室外熱交換器5に流入しないで蒸発器8に流入して送風空気を冷却した後、アキュムレータ9を経由して圧縮機2に吸入される経路である。
【0112】
第2の除湿サイクル運転時の冷媒は、図4の太字実線の経路を斜線太矢印の向きに流れる。ヒートポンプサイクル1の第2の除湿サイクルは、暖房性能が中レベル、除湿能力が小レベルの運転であり、例えば、操作パネル51の操作等により、暖房能力が中レベルで車室内の除湿を行うときに選択されて実行される。第2の除湿サイクルは、図4に示すように第1の除湿サイクル運転経路に加え、第1膨張弁10と電磁弁13の間で分岐した冷媒経路を有する。この分岐する冷媒経路は、第1膨張弁10と電磁弁13の間の通路から電磁弁14、室外熱交換器5及び電磁弁12を通り、蒸発器8とアキュムレータ9の間の通路に合流するようになっている。これにより、第2の除湿サイクル運転経路は、圧縮機2→凝縮器3→三方弁4→第1膨張弁10→電磁弁13→蒸発器8→アキュムレータ9→圧縮機2の経路と、第1膨張弁10→室外熱交換器5→電磁弁12→アキュムレータ9の経路とで構成される。この第2の除湿サイクル運転経路は、第1膨張弁10で減圧された冷媒が、室外熱交換器5に流入しないで蒸発器8に流入して送風空気を冷却した後、アキュムレータ9を経由して圧縮機2に吸入される経路と、室外熱交換器5に流入して空気から吸熱した後、アキュムレータ9を経由して圧縮機2に吸入される経路と、を有している。
【0113】
圧縮機2は、内蔵された電動モータ2aにより駆動され、回転数制御が可能であり、回転数に応じて冷媒吐出流量が可変である。圧縮機2はインバータ90により周波数が調整された交流電圧が印加されてその電動モータ2aの回転速度が制御される。インバータ90は車載電池から直流電源の供給を受け、エアコンECU50により制御される。
【0114】
室外熱交換器5は、エンジンコンパートメント等の車室外に配置されて、外気と冷媒との熱交換を行うもので、室外ファン6から強制的に送風を受けて暖房サイクル運転時には蒸発器として機能し、冷房サイクル運転時には凝縮器として機能する。
【0115】
第1膨張弁10は固定絞り等の固定式膨張弁(例えばキャピラリチューブ)、定圧式膨張弁、機械式膨張弁等で構成される。第1膨張弁10は、暖房サイクル運転時に室外熱交換器5へ供給される冷媒を減圧膨脹させる。第2膨張弁7は感温筒を備え、蒸発器8出口の冷媒の蒸発状態が適度な過熱度をもつように出口冷媒温度をフィードバックし適切な弁開度によって冷媒流量を制御する温度作動方式を採用している。暖房サイクル及び各除湿サイクルでは、第2膨張弁7で減圧された低圧冷媒を蒸発器8で吸熱して蒸発させ、蒸発器8を通過した冷媒をアキュムレータ9に流入させ、アキュムレータ9で蒸発器8の出口冷媒の気液を分離し、アキュムレータ9内のガス冷媒を圧縮機2に吸入させる。
【0116】
蒸発器8は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器であり、冷房サイクル運転時に蒸発器として機能する。この蒸発器8は、第2膨張弁7で減圧膨脹された低温低圧の冷媒と空気との熱交換を行うことにより、コア部を通過する空気を冷却する。
【0117】
凝縮器3は、送風空気を加熱する加熱用熱交換器であり、空調ケース20内で蒸発器8の下流(風下)に配設されて、圧縮機2で圧縮された高温高圧の冷媒と空気との熱交換を行うことにより、コア部を通過する空気を加熱する。ウォータポンプ31は、エンジン冷却水が循環する回路に設けられ、エンジン冷却水から成る温水をヒータコア23に供給する。このヒータコア23は、凝縮器3と共に送風空気を加熱する加熱器として機能する。
【0118】
エアミックスドア22は、蒸発器8からの冷風と凝縮器3等(加熱器)との暖風との混合割合を制御する。アキュムレータ9は、冷凍サイクル内の過剰冷媒を一時蓄えると共に、気相冷媒のみを送り出して、圧縮機2に液冷媒が吸い込まれるのを防止する。
【0119】
三方弁4、常開型の電磁弁11、常閉型の電磁弁12、常閉型の電磁弁13、及び常開型の電磁弁14は、流路切替手段であり、これらの上記各サイクルにおける動作状態は図5に示すとおりである。
【0120】
冷媒圧力センサ40は、ヒートポンプサイクル1の高圧側の流路に設けられ、凝縮器3よりも上流の冷媒の高圧圧力、すなわち圧縮機2の吐出圧力Preを検出する。また、冷媒吸入温度センサ41は、室外熱交換器5の冷媒流れの下流側に設けられ、冷媒吸入温度を検出する。
【0121】
エアコンECU50は、車室内の空調運転を制御する制御装置であり、マイクロコンピュータと、車室内前面に設けられた操作パネル51上の各種スイッチからの信号や、冷媒圧力センサ40、冷媒吸入温度センサ41、内気センサ42、外気センサ43、日射センサ44、入口温度センサ45等からセンサ信号が入力される入力回路と、各種アクチュエータに出力信号を送る出力回路と、を備えている。マイクロコンピュータは、ROM(読み込み専用記憶装置)、RAM(読み込み書き込み可能記憶装置)等のメモリおよびCPU(中央演算装置)等から構成されており、操作パネル51等から送信された運転命令に基づいた演算に使用される各種プログラムを有している。
【0122】
エアコンECU50は、上記の各サイクル運転時に、エアコン環境情報、エアコン運転条件情報及び車両環境情報を受信してこれらを演算し、圧縮機2の設定すべき容量を算出する。そして、エアコンECU50は、演算結果に基づいてインバータ90に対して制御信号を出力し、インバータ90によって圧縮機2の出力量は制御される。
【0123】
このように乗員による操作パネル51や携帯機52の操作によって、空調装置の運転・停止および設定温度などの操作信号などがエアコンECU50に入力されて各種センサの検出信号が入力されると、エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70、ナビゲーションECU80等と通信し、各種の演算結果に基づいて、圧縮機2、室内用ブロワ21、室外ファン6、PTCヒータ24、三方弁4、電磁弁11〜14、内外気切替ドア25、吹出口切替ドア26等の各機器の運転を制御する。
【0124】
図7は、エアコンECU50による基本的な制御処理を示したフローチャートである。図7において、イグニッションスイッチが投入されてエアコンECU50に電源が供給されると制御がスタートする。以降の各ステップに係る処理は、エアコンECU50によって実行されるものである。
【0125】
(プレ空調判定)
エアコンECU50は、上記の各種センサからの信号、操作パネル51に設けられた各種操作部材からの信号、または遠隔操作可能な操作手段である携帯機52からの信号等に基づいて、車室内を空調するように構成されている。車両が継続的に停止して乗員が搭乗していないときには、エアコンECU50は、上記携帯機52からのプレ空調要求の有無、または予め設定されたプレ空調運転指令を監視している。
【0126】
図7のステップ1では、携帯機52からプレ空調要求があった場合、または予め送信入力された空調要求時刻に基づいてプレ空調を開始するタイミングとなった場合には、車両が停止状態であるか否かを判断するとともに、電源電力がプレ空調作動時の要求電力に対し大きいか否か判断する。車両が停止状態であり、電源電力がプレ空調要求電力より大きいことを確認したら、プレ空調の実施を許可するためにプレ空調フラグを立てる。
【0127】
(イニシャライズ)
次に、ステップ2で図6のエアコンECU50内のRAM等の記憶されている各パラメータ等を初期化する。
【0128】
(スイッチ信号読み込み)
次に、ステップ3で操作パネル51等からのスイッチ信号等を読み込む。
【0129】
(センサ信号読み込み)
次に、ステップ4で上記の各種センサからの信号を読み込む。
【0130】
(TAO算出基本制御)
次に、ステップ5で、ROMに記憶された下記の数式1を用いて、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOを算出する。
【0131】
(数式1)
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C
ここで、Tsetは、温度設定スイッチにて設定された設定温度、Trは内気センサ42にて検出された内気温度、Tamは外気センサ43にて検出された外気温度、Tsは日射センサ44にて検出された日射量である。また、Kset,Kr,Kam及びKsは各ゲインであり、Cは全体にかかる補正用の定数である。そして、このTAO及び上記各種センサからの信号により、エアミックスドア22のアクチュエータの制御値及びウォータポンプ31の回転数の制御値等を算出する。
【0132】
(サイクル・PTC選択)
次に、ステップ6で、運転すべきサイクルの選択及びPTCヒータ24の通電本数の選択を実行する。このステップ6は、具体的には、図8に基づいて実行する。図8は、図7のステップ6におけるサイクル・PTC選択処理の詳細を示すフローチャートである。
【0133】
図8に示すように、制御がスタートすると、ステップ60でステップ1の処理結果としてプレ空調フラグが立っているか否かを判定する。プレ空調フラグが立っている場合は、ステップ61にて、外気温が−3℃より低いか否かを判定する。
【0134】
外気温が−3℃より低い場合は、ヒートポンプサイクル1による暖房の効率が悪くなり、かつ室外熱交換器5に着霜しやすくなるため、ステップ63aにてPTCヒータ24によるプレ空調を実施するのでPTCヒータ24に通電する。
【0135】
外気温が−3℃以上の場合は、ステップ62で自動運転での吹出口モードがフェイスモードか否かを判定する。フェイスモードの場合には、ヒートポンプサイクル1による暖房の必要なしと判断して、ステップ63bで冷房サイクルによるプレ空調を実施する。
【0136】
ステップ62でフェイスモード以外であると判定すると、ステップ63cで暖房サイクルによる暖房のプレ空調を実施する。なお、このときのプレ空調として、第1の除湿サイクル、または第2の除湿サイクルを実行してもよい。ステップ60において、プレ空調フラグが立っておらず、プレ空調でないと判定された場合は、ステップ64で外気温が−3℃より低いか否かを判定する。
【0137】
外気温が−3℃より低い場合は、暖房サイクルによる暖房の効率が悪くなり、かつ、室外熱交換器5に着霜しやすくなるため、ステップ66aで冷房サイクルによる空調を実施する。なお、このときは、エンジン30を稼動し、温水及びヒータコア23の温度を上昇させるようにする。
【0138】
ステップ64で、外気温が−3℃以上であると判定された場合は、ステップ65で自動運転での吹出口モードがフェイスモードか否かを判定する。フェイスモードである場合は、ヒートポンプサイクル1による暖房の必要なしと判断して、ステップ66bで冷房サイクルでの空調を実施する。ステップ65で、フェイスモードでないと判定された場合は、ヒートポンプサイクル1による暖房の必要有りと判断して、ステップ66cで暖房サイクルでの空調を実施する。
【0139】
なお、図3に示す第1の除湿サイクルまたは図4に示す第2の除湿サイクルは、暖房と除湿の必要度合に応じて、上述のステップ63c及び66cの暖房サイクルでの運転のときに自動的に選択するようにしてもよい。
【0140】
(ブロワ電圧決定)
次に、図7に示すステップ7において、ROMに記憶されたマップを用いて目標吹出温度TAOに対応するブロワ電圧(室内用ブロワ21のモータに印加する電圧)を決定する。すなわち、室内用ブロワ21のブロワモータへの印可電圧を決定する。このステップ7は、具体的には図9に基づいて実行される。図9は、図7のステップ7におけるブロワ電圧決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0141】
図9に示すように、まずステップ70で自動運転であるか否かを判定する。自動運転でない場合は、ステップ74にて、操作パネル51で操作された風量設定に相当する印加電圧が決定され(HIのときは12V、M3のときは10V、M2ときは8V、M1のときは6V、LOのときは4V)、ブロワ電圧決定処理を終了する。
【0142】
ステップ70で自動運転であると判定されると、ステップ71でTAOに応じて仮のブロワ電圧を算出する。この仮のブロワ電圧の算出処理は、図9に示すステップ71のマップを用いて算出される。このマップは、目標吹出温度TAO[℃]とブロワ電圧[V]との関係を表したものであり、仮のブロワ電圧は、TAOが10℃以上40℃以下のときは4V(LO風量レベル)に算出されるものである。次にステップ72で高圧側の冷媒圧力Preに応じて「冷媒圧力によるブロワ電圧補正」を算出する。この「冷媒圧力によるブロワ電圧補正」は、冷媒圧力Preが高い場合に適用されるブロワ電圧の補正量であるため、冷媒圧力Preが1.8[MPa]以上と高い場合には、0〜−2[V]の範囲で算出される。
【0143】
そして、ステップ71で算出した「仮のブロワ電圧」とステップ72で算出した「冷媒圧力によるブロワ電圧補正」とを足し算してブロワ電圧を算出し(ステップ73)、ブロワ電圧決定処理を終了する。このようにブロワ電圧を算出することにより、ヒートポンプサイクル1における高圧側の冷媒圧力Preが高い場合には室内用ブロワ21への印加電圧を低下させる制御が行われるため、当該サイクルの熱負荷を軽減することができる。これにより、当該サイクルの圧力異常を抑制し、機器の故障等を防ぐことに貢献できる。
【0144】
(吸込口モード決定)
次に、図7のステップ8で、ROMに記憶されたマップから、目標吹出温度TAOに対応する吸込口モードを決定する。具体的には、目標吹出温度TAOが高いときには、内気循環モードが選択され、目標吹出温度TAOが低いときには、外気導入モードが選択される。
【0145】
(吹出口モード決定)
次に、図7のステップ9で、ROMに記憶されたマップから、目標吹出温度TAOに対応する吹出口モードを決定する。具体的には、目標吹出温度TAOが高いときには、フットモードが選択され、目標吹出温度TAOの低下に伴ってバイレベルモード、さらにはフェイスモードの順に選択される。
【0146】
(圧縮機回転数等決定)
次に、図7のステップ10で圧縮機回転数等の決定を実行する。このステップでは周知の圧縮機の回転数の決定と共に、図1に示す冷房サイクルによる冷房運転時において、特に、以下の制御を実行する。
【0147】
図10は、図7のステップ10における圧縮機回転数等の決定を行うステップの一部を説明するフローチャートである。なお、このステップの一部とは、ヒートポンプサイクル1による冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定のステップのみを示したものということである。その他のサイクルにおける圧縮機回転数の決定は、周知の方法を採用するものとし、ここでは説明を省略する。
【0148】
まず、エアコンECU50は、ステップ100において、各種センサの検出信号を用いて算出した目標蒸発器後温度TEOと、実際の蒸発器後温度TEとの温度偏差Enを以下の数式2を用いて演算する。
【0149】
(数式2)
En=TEO−TE
さらに、以下の数式3を用いて偏差変化率EDOTを演算する。
【0150】
(数式3)
EDOT=En−En-1
ここで、Enは1秒に1回更新されるため、En-1はEnに対して1秒前の値となる。
【0151】
さらに、エアコンECU50は、算出したEn及びEDOTと、図11に示すマップとを用いて、1秒前の電動モータ2aの「冷房サイクル時の回転数変化量ΔfC」を算出する。この冷房サイクル時の回転数変化量ΔfCは、冷房サイクル時の熱交換器のフロスト防止に貢献する値である。図11に示すマップは、偏差Enと偏差変化率EDOTとの関係を示すマップであり、予めROMに記憶されている。
【0152】
次にステップ101で高圧側の冷媒圧力Preに応じて「冷媒圧力による圧縮機回転数補正」を演算する。この「冷媒圧力による圧縮機回転数補正」は、冷媒圧力Preが高い場合に適用される圧縮機の回転数補正量であるため、冷媒圧力Preが1.8〜2.2[MPa]の範囲である場合には、圧力の増加に伴って200から−200[rpm]まで減少するように算出され、さらに、冷媒圧力Preが2.2[MPa]以上と非常に高い場合には、−200[rpm]に算出される。
【0153】
次にステップ102では、ステップ100で算出した「冷房サイクル時の回転数変化量ΔfC」と、ステップ101で算出した「冷媒圧力による圧縮機回転数補正」とを比較し、このうち小さい値の方を圧縮機の回転数変化量Δfに決定する。
【0154】
そして、前回の圧縮機回転数とステップ102で算出した「圧縮機の回転数変化量Δf」とを足し算して今回の圧縮機回転数[rpm]を算出し(ステップ103)、冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定処理を終了する。なお、このステップ103は、1秒に1回更新されるものである。このように今回の圧縮機回転数を算出することにより、ヒートポンプサイクル1における高圧側の冷媒圧力Preが高い場合には圧縮機2の電動モータ2aの回転数を低下させる制御が行われるため、冷媒圧力を低下させることができ、当該サイクルの熱負荷を軽減することができる。これにより、当該サイクルの圧力異常を抑制し、機器の故障等を防ぐことに貢献できる。
【0155】
なお、この温度偏差En及び偏差変化率EDOTにおける回転数変化量ΔfCは、ROMに記憶された所定のメンバーシップ関数及びルールに基づいて、ファジー制御にて求めるようにしてもよい。
【0156】
(室外ファンの出力量決定)
次に、図7に示すステップ11で室外ファン6の出力量を決定する。ここでは、室外ファン6の出力量に相当する風量、仕事量等を制御するために、室外ファン6のモータへの印可電圧を決定する。決定される印加電圧は、複数の段階から選択されるもので、大きい印加電圧ほどファンの回転数が大きく、同様に風量及び騒音値も大きくなる。このステップ11は、具体的には図12に基づいて実行される。図12は、図7のステップ11における室外ファンの出力量決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0157】
図12に示すように、まずステップ110で、前述のステップ6で選択されたサイクルが冷房サイクルであるか否かを判定する。冷房サイクルである場合は、ステップ111にて冷房の空調負荷を判定する。この空調負荷の判定は、図12のステップ111に示すマップである、室温[℃]に基づく高室温または低室温の判定、冷媒圧力Pre[MPa]に基づく高圧力または低圧力の判定、外気温Tam[℃]に基づく高外気温または低外気温の判定、及び車速[km/h]に基づく高車速または低車速の判定によって行われる。各判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された室温、冷媒圧力Pre、外気温Tam、及び車速のそれぞれに基づく判定結果がRAMに書き込まれる。
【0158】
そして、ステップ112では、ステップ111でRAMに書き込まれた各判定結果と、ステップ1でのプレ空調判定の結果とを、予めROMに記憶されたステップ112に示すマップに適用する。このようにマップへ適用した結果により、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定される。
【0159】
通常、プレ空調時には車速が0[km/h]であるため、冷媒圧力や熱負荷に応じて室外ファン6による風量を大きくするが、ステップ112のマップではプレ空調の冷房時には室外ファン6の出力量はLOレベルに決定されるため、室外ファン6はプレ空調以外の運転時に比べて低回転数に制御されて、車両の周囲環境への騒音レベルが低減するようになる。また、ステップ112のマップではプレ空調以外の時で、かつ低車速、低圧力、低室温及び低外気温と判定された場合にも、室外ファン6の出力量はLOレベルに決定されるため、室外ファン6は低回転数に制御されて車両の周囲環境への騒音レベルを低減することができる。このようにステップ112で、プレ空調か否か、室温、冷媒圧力Pre、外気温Tam、及び車速の各パラメータを用いて室外ファン6の出力量が決定されると、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0160】
一方、ステップ110で冷房サイクルでないと判定されると、ステップ113にて暖房の空調負荷を判定する。この空調負荷の判定は、図12のステップ113に示すマップである、室温[℃]に基づく高室温または低室温の判定、冷媒圧力Pre[MPa]に基づく高圧力または低圧力の判定、外気温Tam[℃]に基づく高外気温または低外気温の判定、及び車速[km/h]に基づく高車速または低車速の判定によって行われる。各判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された室温、冷媒圧力Pre、外気温Tam、及び車速のそれぞれに基づく判定結果がRAMに書き込まれる。
【0161】
そして、ステップ114では、ステップ113でRAMに書き込まれた各判定結果と、ステップ1でのプレ空調判定の結果とを、予めROMに記憶されたステップ114に示すマップに適用する。このようにマップへ適用した結果により、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定される。
【0162】
ステップ114のマップではプレ空調の暖房時には室外ファン6の出力量はLOレベルに決定されるため、室外ファン6はプレ空調以外の運転時に比べて低回転数に制御されて、車両の周囲環境への騒音レベルが低減するようになる。また、ステップ114のマップではプレ空調以外の時でかつ低車速及び低圧力と判定された場合、またはプレ空調以外の時でかつ低室温及び低外気温以外、高圧力、低車速と判定された場合にも、室外ファン6の出力量はLOレベルに決定されるため、室外ファン6は低回転数に制御されて車両の周囲環境への騒音レベルを低減することができる。このようにステップ114でも、ステップ112と同様に、プレ空調か否か、室温、冷媒圧力Pre、外気温Tam、及び車速の各パラメータを用いて室外ファン6の出力量が決定されると、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。以上のように、室外ファン6の出力量決定処理では、プレ空調か否かまたは熱負荷(空調負荷)が高いか否かによって室外ファン6の出力量が決定される。
【0163】
図13は、室外ファン6の各出力量及び圧縮機回転数(横軸)と周辺環境への騒音(縦軸)との関係を示した実験データである。室外ファン6の出力量はHI,M,LOの3段階であり、各出力値を満たすための印加電圧は12V,9.6V,6.0Vである。横軸に直交する破線は停車時の圧縮機最高回転数FSを示し、縦軸に直交する破線は、車両周囲における騒音値の許容レベル(これを超えると気になる騒音レベル)を示している。図13に示すように、停車時(停車時の圧縮機最高回転数FSを示す破線よりも図13の左側の領域)には、室外ファン6の出力量がLOレベルであれば、HI及びMレベルに比べて当該許容レベルを大きく下回る騒音レベルに抑制できることがわかっている。特に圧縮機回転数が1000[rpm]のときの騒音値は、当該許容レベルよりも15dB程度低減でき、その騒音低減効果は顕著である。
【0164】
(PTC・デフォッガの作動決定)
次に、図7のステップ12でPTC・デフォッガの作動決定を実行する。このステップでは、空調運転に使用することが可能な使用許可電力と、実際の圧縮機2の消費電力との差に基づいて、圧縮機回転数の増減量を決定すると共に、PTCヒータ24またはデフォッガの作動を決定する。ここでいう使用許可電力は、プラグイン仕様により車両に供給される商用電源の電力量及び電池の充電量の少なくとも一方から求められる当該使用許可電力であり、空調運転に使用できる使用電力の制限を示している。また、当該使用許可電力は、電池から供給可能な電力またはプラグインにより供給される商用電源(100Vまたは200V)の電力の中から空調運転用に割り当てることができる電力であってもよい。
【0165】
実際の圧縮機2の消費電力は、ステップ10で求められた圧縮機回転数に伴う現状の圧縮機2の消費電力であり、計測または所定の演算による算出により求めるものである。このステップ12は、具体的には図14に基づいて実行される。図14は、図7のステップ12におけるPTC・デフォッガの作動決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0166】
図14に示すように、まず冷房サイクル時であればステップ1200で、前述の図10に示すステップ100と同様に、「冷房サイクル時の回転数変化量ΔfC」を算出する。次に、暖房サイクル時であればステップ1201で、「暖房サイクル時の回転数変化量ΔfH」を算出する。
【0167】
次にステップ1201では、目標圧力PDO、高圧圧力Pre(Preは冷媒圧力センサ40にて測定した高圧圧力)、偏差Pn、偏差変化率PDOTを用いて、圧縮機の回転数変化量を求める。なお、Pn-1は、偏差Pnの先回の値であり、nは自然数である。
【0168】
まず、ヒートポンプサイクル1による暖房サイクル運転時において、図14のステップ1201において、図7のステップ5で求められた目標吹出温度TAOを、冷凍サイクルの高圧側を流れる冷媒の目標圧力PDO(以下、単にPDOともいう)に変換する。この変換は、周知の方法を用いればよく、目標吹出温度TAOを変換用マップでPDOに変換してもよい。
【0169】
また、目標吹出温度TAOと、室内用ブロワ21の風量Vによって異なる温度効率φと、凝縮器3の吸入側空気温度とから飽和冷媒温度Tcを求め、この飽和冷媒温度Tcと飽和圧力Pc(凝縮器3の凝縮圧力)との関係に基づいて、上記飽和冷媒温度Tcに対応する飽和圧力Pcを求めて、この飽和圧力Pcを目標圧力PDOとしてもよい。
【0170】
次に、目標圧力PDOと、冷媒圧力センサ40にて検出された高圧圧力Preとの圧力偏差Pnを下記数式4によって算出する。
【0171】
(数式4)
Pn=PDO−Pre
また、偏差変化率PDOTを下記数式5によって算出する。
【0172】
(数式5)
PDOT=Pn−Pn-1
上述したように、Pn-1は、偏差Pnの先回の値である。
【0173】
図15は、圧力偏差Pnと、偏差変化率PDOTと、回転数変更分ΔfHとの関係を示すマップである。次に、このPnとPDOTとを用いて、エアコンECU50のROMに記憶された図15に示すマップを用いて1秒前の圧縮機回転数fn-1に対して,増減する回転数変更分ΔfHを求める。なお、この圧力偏差Pn及び偏差変化率PDOTにおける回転数変更分ΔfHは、ROMに記憶された所定のメンバーシップ関数及び所定のルールに基づいて、ファジー制御にて求めることもできる。
【0174】
次に、ステップ1202でプレ空調と判定されたか否かまたはプレ空調中であるか否かを判定する。プレ空調でない場合は、ステップ1220で通常の空調制御が行われ図14のサブルーチンは終了する。
【0175】
ステップ1202でプレ空調であると判定されると、ステップ1203で、上記の使用許可電力と実際の圧縮機2の消費電力との差に応じて圧縮機回転数の変化量ΔfPre[rpm]を算出する。圧縮機回転数の変化量ΔfPreの算出は、当該使用許可電力と実際の圧縮機2の消費電力との差(以下、余剰電力(I)ともいう)に対応する関数として表されるΔfPreのマップを用いて算出される。余剰電力(I)とΔfPreは比例関係にあり、この余剰電力(I)の値が小さいほど、ΔfPreは小さくなり、所定の余剰電力(I)値未満の場合はΔfPreがマイナス値になるため、圧縮機2の回転数が前回よりも低減するように制御されることになる。このマップは予めROMに記憶されており、このマップから算出されたΔfPreはRAMに書き込まれる。このステップ1203の算出処理は1秒に1回更新される。
【0176】
次に、ステップ1204で、前述のステップ6で選択されたサイクルが冷房サイクルであるか否かを判定する。冷房サイクルである場合は、ステップ1205aにおいてステップ1200で求めたΔfCと、ステップ1203で求めたΔfPreとを比較し、小さい方の値を圧縮機の回転数変化量Δfとして決定してRAMに書き込み、ステップ1206に進む。また、冷房サイクルでない(例えば暖房サイクルである)場合は、ステップ1205bにおいてステップ1201で求めたΔfHと、ステップ1203で求めたΔfPreとを比較し、小さい方の値を圧縮機の回転数変化量Δfとして決定してRAMに書き込み、ステップ1206に進む。このΔfCやΔfHは、性能を満足できる圧縮機回転数を算出できる回転数変化量でもある。
【0177】
ステップ1206では、前回の圧縮機回転数とステップ1205aまたは1205bで算出した圧縮機の回転数変化量Δfとを足し算して今回の圧縮機回転数[rpm]を算出する。ステップ1205aまたは1205bでΔfCやΔfHが選択された場合は、使用許可電力を最大限まで使用しない圧縮機回転数に制御するため、余剰電力が発生する。そしてステップ1207では、この余剰電力(I)を使用許可電力と実際の圧縮機2の消費電力との差と同値であると決定する。
【0178】
次に、決定された余剰電力(I)が500Wより大きく、かつ暖房サイクルであるか否かを判定する(ステップ1208)。ステップ1208でNOと判定した場合は、デフォッガ及びPTCヒータ24への通電は行わず不作動に制御し(ステップ1209)、本サブルーチンを終了する。ここでデフォッガは、電気抵抗体の一例であり、車両のフロントウィンドウ等に熱線抵抗体を装着してなる熱線式ウィンドウデフォッガである。デフォッガは、電池等からの電力が供給されて通電することにより、通電量や印加電圧に応じて発熱し窓曇り除去に貢献する。デフォッガの作動は、エアコンECU50によって制御される。
【0179】
ステップ1208でYESと判定した場合は、ステップ1210でデフォッガへ通電して作動させる。さらにステップ1211で余剰電力(II)を使用許可電力から実際の圧縮機2の消費電力及びデフォッガの消費電力を差し引いた値として算出する。次に、算出された余剰電力(II)が500Wより大きく、かつ暖房サイクルであるか否かを判定する(ステップ1212)。ステップ1212でNOと判定した場合は、PTCヒータ24への通電は行わず不作動に制御し(ステップ1214)、本サブルーチンを終了する。ステップ1212でYESと判定した場合は、PTCヒータ24へ通電して作動させ(ステップ1213)、本サブルーチンを終了する。
【0180】
以上のようにステップ12のPTC・デフォッガの作動決定処理では、上記の使用許可電力に余裕があるときは、使用許可電力の範囲内で窓の防曇効果が得られる空調制御を実施するため、乗員が乗車後に窓曇りを除去する時間の短縮が図れ、車両発進までの周囲環境へ騒音を与える時間を短縮することができる。デフォッガを作動させた場合にさらに使用許可電力に余裕がある場合は、さらにPTCヒータ24を作動させることにより、暖房時のプレ空調時間の短縮が図れ、さらに車両発進までの周囲環境へ騒音を与える時間を短縮することができる。
【0181】
(各弁ON/OFF決定)
次に、図7のステップ13において、所定の各サイクルで制御が実行できるよう、サイクル中の三方弁4及び電磁弁11〜14のONまたはOFF作動について決定する。この制御では、図5に示した各サイクルに対応する各弁の動作状態となるように、各弁の作動をオン、オフする出力信号を決定する。
【0182】
(エンジンON要求有無決定)
次に、図7に示すステップ14でエンジンONの要求有無を決定する。ここでは、プレ空調であるか否か、さらに暖房の熱源が不足しているか否かに応じてエンジンON要求の有無を決定するものである。このステップ14は、具体的には図16に基づいて実行される。図16は、図7のステップ14におけるエンジンON要求有無の決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0183】
図16に示すように、まずステップ140で、暖房の熱源が不足しているか否かを判定する。当該熱源の不足状態であるか否かは、現時点の加熱用機器(例えば凝縮器3またはPTCヒータ24)の出口空気温度が目標吹出温度TAOと比較して低いか否かによって判定する。ステップ140で当該熱源不足状態と判定すると、熱源不足フラグを1とし(ステップ142)、当該熱源不足状態でないと判定すると、熱源不足フラグを0とする(ステップ141)。
【0184】
次にステップ143で、ステップ1の処理結果としてプレ空調フラグが立っているか否かを判定する。プレ空調フラグが立っている場合は、エアコンECU50は、エンジンECU60に対してエンジンONの出力要求を実行せず(ステップ146)、本サブルーチンを終了する。プレ空調フラグが立っていない場合はステップ144で熱源フラグが1であるか否かを判定する。熱源フラグが1である場合は、エアコンECU50は、ステップ145にてエンジンECU60に対してエンジンONの出力要求を実行し、本サブルーチンを終了する。熱源フラグが0である場合は、ステップ146に進み、エアコンECU50はエンジンECU60に対してエンジンONの出力要求を実行せず、本サブルーチンを終了する。
【0185】
以上のようにステップ14のエンジンON要求有無決定処理では、プレ空調運転を実施する場合は、暖房熱源の不足か否かにかかわらず、エンジンを起動せず、エンジン運転による騒音を発生させないように制御する。さらにプレ空調運転を実施しない場合であって、暖房熱源が不足しているときは、エンジンを起動して、実際の吹出温度が目標吹出温度TAOに対して低下しないようにエンジン冷却水温度を上昇させ、空調能力の確保を図る制御を実施する。
【0186】
なお、上記のステップ140〜ステップ144の処理は、請求項に記載の「エンジン起動判定手段」に相当するものである。
【0187】
(着霜判定・除霜制御)
次に、図7のステップ15において、着霜判定を行い、着霜と判定されるときは除霜制御を実行する。着霜判定・除霜制御では、プレ空調及び乗車中空調(プレ空調以外の空調)において、冷媒吸入温度センサ41によって検出される冷媒吸入温度に応じて着霜か否かの判定を行い、着霜と判定された場合には暖房サイクル運転の停止、冷房サイクルによる除霜運転を実施する。
【0188】
(制御信号出力)
次に、図7のステップ16において、上記各ステップ1〜15で算出または決定された各制御状態が得られるように、エンジンECU60、インバータ90、PTCヒータ24、各種アクチュエータ、三方弁4及び電磁弁11〜14等に対して制御信号を出力する。そして、図7のステップ17において所定時間の経過を待って、ステップ3に戻り、継続して各ステップが実行される。
【0189】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。車両用空調装置100は、ヒートポンプサイクル1の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転によって、乗員の乗車前に車室内を空調する。エアコンECU50は、ヒートポンプサイクル1の冷媒流れを制御して冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転を制御すると共に、室外ファン6の作動を制御する。エアコンECU50は、プレ空調(乗車前空調)運転における室外ファン6の出力量を乗車中空調運転時よりも低減するように制御する。
【0190】
これによれば、プレ空調運転時に、車外に与える作動音の影響が大きい室外ファン6から発生する車外への騒音レベルを乗車中空調運転時に比べて低減することができる。これは、室外ファン6は、車室内から離れた車両のエンジンコンパートメント等に配置されているため、車両用空調装置100を構成する他の部品よりも車両の周囲環境への騒音について大きな影響を与えるからである。したがって、ヒートポンプサイクル1を用いて実施されるプレ空調において、自宅、駐車場等の周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置が得られる。
【0191】
また、エアコンECU50は、暖房サイクル運転時に暖房に要求される出力に応じてエンジン30の起動を要求する信号を出力し、プレ空調運転時には乗車中空調運転時と比べてエンジン30起動の要求信号の出力頻度を低くするものである。
【0192】
これによれば、プレ空調運転において暖房サイクル運転が行われるときにエンジン30起動の要求信号の出力頻度を低くするため、プレ空調運転ではエンジン30の起動機会が抑制される。このため、エンジン30起動による暖房能力向上よりも周囲環境に対する配慮を優先したプレ空調運転を実施できる。さらには、乗員不在時のエンジン30を運転することによる乗員不在時の発車等を抑制することができる。
【0193】
また、エアコンECU50は、暖房サイクル運転時にエンジン30を起動するか否かを判定するエンジン起動判定手段(S140〜S144)を有する。このエンジン起動判定手段ではプレ空調運転時はエンジン30を起動しないと判定するものである。
【0194】
これによれば、エンジン起動判定手段によってプレ空調運転時にはエンジン30を起動しない判定がなされるため、プレ空調運転時にはエンジン音が発生しない制御が確実に行われ、さらに一層の、周囲環境に対する静穏性の確保及び上記乗員不在時の発車の防止にも寄与する。
【0195】
また、エアコンECU50は、ヒートポンプサイクル1を流れる高圧側の冷媒圧力が所定値以上であるときに、圧縮機2の出力量または室内用ブロワ21の出力量を低減させるように制御する。これによれば、ヒートポンプサイクル1の高圧側の冷媒圧力が異常な高圧になることを防止することができると共に、上記のプレ空調においても自宅、駐車場等の周囲環境に対する配慮を優先した騒音の低減を実施できる。
【0196】
また、エアコンECU50は、プレ空調運転において、車両の空調運転に使用可能な許可電力とプレ空調運転で消費される使用電力との差が予め設定された電力以上である場合には、PTCヒータ24(電気式補助熱源)またはデフォッガ(窓に装着した電気抵抗体)に通電するものである。
【0197】
これによれば、周囲環境に対する配慮を優先するプレ空調運転によって騒音低減を図る効果に加え、許可電力に余裕があるときにはプレ空調運転における暖房能力を向上させることができる。このため、プレ空調運転の短時間化、乗車時の窓曇り除去効果及び車室内の快適性向上が図れる。
【0198】
(第2実施形態)
第2実施形態では、上記第1実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図17にしたがって説明する。図17は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0199】
第2実施形態における空調制御の処理フローは、第1実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、プレ空調と判定された場合に空調負荷が高圧力か低圧力かを判定するための冷媒圧力Pre[MPa]の判定基準を高く設定している点に特徴がある。なお、各構成部品、これらの作動、ステップ11以外の各処理手順については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0200】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理について図17にしたがって説明する。ここでは、第1実施形態の場合と同様に、室外ファン6の出力量に相当する風量、仕事量等を制御するために室外ファン6のモータへの印可電圧を決定する。決定される印加電圧は、複数の段階から選択されるもので、大きい印加電圧ほどファンの回転数が大きく、同様に風量及び騒音値も大きくなる。
【0201】
図17に示すように、まずステップ1100で、前述のステップ6で選択されたサイクルが冷房サイクルであるか否かを判定する。冷房サイクルである場合は、ステップ1110で、ステップ1の処理結果としてプレ空調フラグが立っているか否かを判定する。プレ空調フラグが立っていない場合は、ステップ1112にて冷房の空調負荷を判定する。この空調負荷の判定は、図17のステップ1112に示すマップである、冷媒圧力Pre[MPa]に基づく高圧力または低圧力の判定によって行われる。当該判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された冷媒圧力Preに基づく判定結果(高圧力か低圧力か)がRAMに書き込まれ、ステップ1113に進む。
【0202】
また、プレ空調フラグが立っている場合は、ステップ1111にて冷房の空調負荷を判定する。この空調負荷の判定は、図17のステップ1111に示すマップである、冷媒圧力Pre[MPa]に基づく高圧力または低圧力の判定によって行われる。当該判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された冷媒圧力Preに基づく判定結果(高圧力か低圧力か)がRAMに書き込まれ、ステップ1113に進む。このステップ1111に示すマップでは、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定基準が1.5[MPa]であり、ステップ1112に示すマップの1.2[MPa]よりも高い圧力に設定されている。同様に、ステップ1111に示すマップでは低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定基準が1.8[MPa]であり、ステップ1112に示すマップの1.5[MPa]よりも高い圧力に設定されている。このように、冷房の空調負荷を判定するための冷媒圧力の判定基準は、プレ空調時においてプレ空調以外の空調運転時よりも高く設定されているものである。
【0203】
さらにステップ1113で冷房の空調負荷を判定する。このステップの空調負荷の判定は、図17のステップ1113に示すマップである、室温[℃]に基づく高室温または低室温の判定、外気温Tam[℃]に基づく高外気温または低外気温の判定、及び車速[km/h]に基づく高車速または低車速の判定によって行われる。各判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された室温、外気温Tam、及び車速のそれぞれに基づく判定結果がRAMに書き込まれ、ステップ1114に進む。
【0204】
次に、ステップ1114では、ステップ1111または1112でRAMに書き込まれた判定結果と、ステップ1113でRAMに書き込まれた判定結果とを、予めROMに記憶されたステップ1114に示すマップに適用する。このようにマップへ適用した結果により、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0205】
通常、車速が低いときは室外ファン6による風量を大きくすることがあるが、ステップ1114のマップでは、低車速、低圧力、低室温、低外気温と判定されたときには室外ファン6の出力量はLOレベルに決定されるため、室外ファン6は、高室温・高外気温または高圧力と判定された場合に比べて低回転数に制御されて、車両の周囲環境への騒音レベルが低減するようになる。このようにステップ1114では、冷房のプレ空調のときには低圧力判定がされやすくなるとともに、室温、冷媒圧力Pre、外気温Tam、及び車速の各パラメータを用いた室外ファン6の出力量の決定が行われる。
【0206】
一方、ステップ1100で冷房サイクルでないと判定されると、ステップ1120で、ステップ1の処理結果としてプレ空調フラグが立っているか否かを判定する。プレ空調フラグが立っていない場合は、ステップ1122にて暖房の空調負荷を判定する。この空調負荷の判定は、図17のステップ1122に示すマップである、冷媒圧力Pre[MPa]に基づく高圧力または低圧力の判定によって行われる。当該判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された冷媒圧力Preに基づく判定結果(高圧力か低圧力か)がRAMに書き込まれ、ステップ1123に進む。
【0207】
また、プレ空調フラグが立っている場合は、ステップ1121にて暖房の空調負荷を判定する。この空調負荷の判定は、図17のステップ1121に示すマップである、冷媒圧力Pre[MPa]に基づく高圧力または低圧力の判定によって行われる。当該判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された冷媒圧力Preに基づく判定結果(高圧力か低圧力か)がRAMに書き込まれ、ステップ1123に進む。このステップ1121に示すマップでは、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定基準が1.5[MPa]であり、ステップ1122に示すマップの1.2[MPa]よりも高い圧力に設定されている。同様に、ステップ1121に示すマップでは低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定基準が1.8[MPa]であり、ステップ1122に示すマップの1.5[MPa]よりも高い圧力に設定されている。このように、暖房の空調負荷を判定するための冷媒圧力の判定基準は、プレ空調時においてプレ空調以外の空調運転時よりも高く設定されているものである。
【0208】
さらにステップ1123で冷房の空調負荷を判定する。このステップの空調負荷の判定は、図17のステップ1123に示すマップである、室温[℃]に基づく高室温または低室温の判定、外気温Tam[℃]に基づく高外気温または低外気温の判定、及び車速[km/h]に基づく高車速または低車速の判定によって行われる。各判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された室温、外気温Tam、及び車速のそれぞれに基づく判定結果がRAMに書き込まれ、ステップ1124に進む。
【0209】
次に、ステップ1124では、ステップ1121または1122でRAMに書き込まれた判定結果と、ステップ1123でRAMに書き込まれた判定結果とを、予めROMに記憶されたステップ1124に示すマップに適用する。このようにマップへ適用した結果により、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0210】
この場合も、ステップ1124のマップでは、低車速、低圧力と判定されたときには室外ファン6の出力量はLOレベルに決定されるため、室外ファン6は、高圧力、低室温、低外気温、低車速と判定された場合に比べて低回転数に制御されて、車両の周囲環境への騒音レベルが低減するようになる。このようにステップ1124では、暖房のプレ空調のときには低圧力判定がされやすくなるとともに、室温、冷媒圧力Pre、外気温Tam、及び車速の各パラメータを用いた室外ファン6の出力量の決定が行われる。
【0211】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。エアコンECU50は、ヒートポンプサイクル1を流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、プレ空調運転時において乗車中空調運転時(プレ空調以外の空調運転時)よりも高く設定されている(ステップ1111,1121)ものである。
【0212】
この制御によれば、当該冷媒圧力の判定基準がプレ空調運転時では高いため、プレ空調運転時の室外ファン6の出力量は、乗車中空調運転時よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、乗車中空調時よりもプレ空調時の方が低圧力に判定されやすい。よって、プレ空調運転時の室外ファン6の出力量は、乗車中空調時よりも増加する方向に制御され難くなり、乗車中空調運転時に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならばプ空調運転時の方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファン6の出力量増加がプレ空調運転時に抑制されるため、ヒートポンプサイクル1の負荷が増加するようなことがあっても乗員不在時に車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮したプレ空調運転を実施できる。
【0213】
(第3実施形態)
第3実施形態では、上記第2実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図18にしたがって説明する。図18は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0214】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第2実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図18のステップ1110Aおよびステップ1120Aの判定処理のみが異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態及び第2実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0215】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理について図18にしたがって説明する。ここでは、第2実施形態の場合と同様に、ヒートポンプサイクル1を流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。さらに、室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、空調運転を行うときの時間帯に応じて所定のレベルに設定されるようになっている。
【0216】
図18に示すように、第2実施形態と同様にステップ1100で、前述のステップ6で選択されたサイクルが冷房サイクルであるか否かを判定する。冷房サイクルである場合は、ステップ1110Aで、現在の時間が20時〜7時の範囲にあるか否かを判定する。この所定の時間帯は、早朝または夜間を想定した時間帯であり、この時間帯に該当する場合は、以降の処理により、室外ファン6の出力量を低減する制御が実施される。
【0217】
ステップ1110Aで当該所定の時間帯に入っていないと判定された場合は、前述のステップ1112、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、冷房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0218】
またステップ1110Aで当該所定の時間帯に入っていると判定された場合は、前述のステップ1111、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、冷房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0219】
このように、ステップ1110Aで早朝または夜間であると判定された場合には、ステップ1111の判定処理により、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が他の時間帯と判定された場合よりも高い判定基準(1.5[MPa])に基づいて行われ、低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が他の時間帯と判定された場合よりも高い判定基準(1.8[MPa])に基づいて行われることになる。
【0220】
また、ステップ1120Aもステップ1110Aと同様の判定処理であり、前述のステップ1121またはステップ1122、ステップ1123、ステップ1124を実行することにより、暖房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。なお、上記のステップ1110A及びステップ1120Aの各処理は、請求項に記載の「時間帯判定手段」に相当するものである。
【0221】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。エアコンECU50は、室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)において、早朝または夜間であるか否かを判定する時間帯判定手段(S1110A,S1120A)を備えている。エアコンECU50は、この時間帯判定手段において現在が早朝または夜間であると判定された場合、室外ファン6の出力量を早朝または夜間以外の時間帯であると判定された場合よりも低減する(ステップ1111,1114,1121,1124)ものである。
【0222】
この制御によれば、早朝時または夜間時であると判定された場合は室外ファン6の出力量をこれ以外の時間帯と判定された場合よりも低減するため、車両の周囲環境が比較的静かで迷惑がかかりやすい時間帯に車外への騒音レベルを抑制する空調運転を提供することができる。また、早朝または夜間の時間帯は、プレ空調運転時に限られず、乗車中空調運転時であっても周囲環境に対する配慮を優先した空調を提供することができる。
【0223】
また、早朝時または夜間時であると判定された場合は、当該冷媒圧力の判定基準がこれ以外の時間帯の場合よりも高いため、早朝時または夜間時の室外ファン6の出力量は、これ以外の時間帯の場合よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、早朝時または夜間時の方がこれ以外の時間帯の場合よりも低圧力に判定されやすい。よって、早朝時または夜間時の室外ファン6の出力量は、増加する方向に制御され難くなり、これ以外の時間帯の場合に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば早朝時または夜間時の方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファン6の出力量増加が早朝時または夜間時に抑制されるため、ヒートポンプサイクル1の負荷が増加するようなことがあっても早朝時または夜間時の乗員不在時に車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮した空調運転を実施できる。
【0224】
(第4実施形態)
第4実施形態では、上記第1実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図19にしたがって説明する。図19は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0225】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第1実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図19のステップ113Aの判定処理のみが異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0226】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理について図19にしたがって説明する。ここでは、第1実施形態の場合と同様に、ヒートポンプサイクル1を流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。さらに、室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、空調運転を行うときの時間帯に応じて所定のレベルに設定されるようになっている。
【0227】
図19に示すように、第1実施形態と同様にステップ110で、前述のステップ6で選択されたサイクルが暖房サイクルであると判定されると、ステップ113Aに進み、暖房の空調負荷を判定する。この空調負荷の判定は、図19のステップ113Aに示すマップによって行われる。ここで冷媒圧力Pre[MPa]に基づく高圧力または低圧力の判定において、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定基準が1.5[MPa]であり、冷房サイクル時のステップ111に示すマップの1.2[MPa]よりも高い圧力に設定されている。同様に、ステップ113Aに示すマップでは低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定基準が1.8[MPa]であり、冷房サイクル時のステップ111に示すマップの1.5[MPa]よりも高い圧力に設定されている。このように、空調負荷を判定するための冷媒圧力の判定基準は、暖房サイクルの空調運転時において暖房サイクル以外の空調(冷房サイクルの空調)運転時よりも高く設定されているものである。
【0228】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。エアコンECU50は、ヒートポンプサイクル1を流れる高圧側の冷媒圧力に基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、暖房サイクル運転時において冷房サイクル運転時よりも高く設定される(ステップ113A)ものである。
【0229】
この制御によれば、暖房サイクル運転時においては、当該冷媒圧力の判定基準が冷房サイクル運転時よりも高いため、暖房サイクル運転時の室外ファン6の出力量は、冷房サイクル運転時の場合よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、暖房サイクル運転時の方が低圧力に判定されやすい。よって、暖房サイクル運転時の室外ファン6の出力量は、増加する方向に制御され難くなり、冷房サイクル運転時の場合に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば暖房サイクル運転時の方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファン6の出力量増加が暖房サイクル運転時に抑制されるため、ヒートポンプサイクル1の負荷が増加するようなことがあっても暖房サイクル運転時の車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮した空調運転を実施できる。
【0230】
(第5実施形態)
第5実施形態では、上記第2実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図20にしたがって説明する。図20は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0231】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第2実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図20のステップ1110Bおよびステップ1120Bの判定処理のみが異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態及び第2実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0232】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理について図20にしたがって説明する。ここでは、第2実施形態の場合と同様に、ヒートポンプサイクル1を流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。さらに、室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、空調運転を行うときに車両が自宅付近等に存在するかどうか応じて所定のレベルに設定されるようになっている。
【0233】
図20に示すように、第2実施形態と同様にステップ1100で、前述のステップ6で選択されたサイクルが冷房サイクルであるか否かを判定する。冷房サイクルである場合は、ステップ1110Bで、車両が自宅または自宅付近に位置しているか否かを判定する。
【0234】
ステップ1110Bの判定は、ナビゲーションECU80によって送信される自車の位置情報を用いて行われるものである。ステップ1110Bでは、車両が予め設定されている駐車場所に位置しているか否か、当該設定された駐車場所から所定の距離以内に位置しているか否か、をナビゲーションECU80からの自車の位置情報から判定する。また、エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報から停車時間を検出し、ステップ1110Bの判定処理に代わりに、この停車時間が所定時間以上(例えば8時間以上)であるか否かの判定処理を採用してもよい。この場合、停車時間が所定時間以上であるときには駐車場所またはそれに順ずる場所に停車しているとみなす。
【0235】
ステップ1110Bで、車両が自宅またはその付近にあると判定された場合は、前述のステップ1111、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、冷房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0236】
ステップ1110Bで車両が当該自宅またはその付近にないと判定された場合は、前述のステップ1112、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、冷房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0237】
このように、ステップ1110Bで車両が自宅またはその付近にあると判定された場合には、ステップ1111の判定処理により、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、車両が当該自宅またはその付近にないと判定された場合よりも高い判定基準(1.5[MPa])に基づいて行われ、低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、車両が当該自宅またはその付近にないと判定された場合よりも高い判定基準(1.8[MPa])に基づいて行われることになる。
【0238】
また、ステップ1120Bもステップ1110Bと同様の判定処理であり、前述のステップ1121またはステップ1122、ステップ1123、ステップ1124を実行することにより、暖房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0239】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。エアコンECU50は、プレ空調運転及びプレ空調以外の空調運転の少なくともいずれか一方において、車両が予め設定されている駐車場所にあると判定した場合、当該駐車場所から所定の距離以内にあると判定した場合、及び停車時間が所定時間以上継続中と判定した場合、のいずれかであるときは、当該判定結果以外の判定がされた場合と比べて、室外ファン6の出力量を低減するものである。
【0240】
この制御によれば、空調運転時に、車両が所定の駐車場、自宅またはその付近にあると判定されたときにはさらにこれ以外の判定がされたときに比べて室外ファン6の出力量を低減することにより、駐車場付近での周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図ることができる。また、車両が所定の駐車場等及びその付近にあるときには、プレ空調運転時に限られず、乗車中空調運転時であっても周囲環境に対する配慮を優先した空調を提供することができる。
【0241】
また、車両が所定の駐車場等及びその付近にあると判定されたときは、当該冷媒圧力の判定基準は当該判定がされない場合よりも高いため、駐車場等付近にある車両の室外ファン6の出力量は、当該判定がされない場合よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、所定の駐車場等及びその付近にある場合の方が低圧力に判定されやすい。よって、当該車両の室外ファン6の出力量は、増加する方向に制御され難くなり、当該判定がされない場合に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば所定の駐車場等及びその付近にある場合の方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。したがって、所定の駐車場等及びその付近にある場合に、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファン6の出力量増加が抑制されるため、ヒートポンプサイクル1の負荷が増加するようなことがあっても駐車場等付近では乗員不在時に車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮した空調運転を実施できる。
【0242】
(第6実施形態)
第6実施形態では、上記第1実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける圧縮機回転数決定の変形例を図21にしたがって説明する。図21は、空調制御のメインルーチンにおける圧縮機回転数等の決定を行うステップの一部を説明するフローチャートである。なお、このステップの一部とは、ヒートポンプサイクル1による冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定のステップのみを示したものということである。その他のサイクルによる冷房運転時等の圧縮機回転数の決定は、周知の方法を採用するものとし、ここでは説明を省略する。
【0243】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第1実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図21のステップ101Aが大きく異なり、これに伴ってステップ102Aおよびステップ103Aの処理も異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0244】
図21に示すように、ステップ100によって冷房サイクル時の圧縮機回転数変化量ΔfCを算出した後、ステップ101Aでは、車両と自宅等との距離に応じて「自宅等からの距離による圧縮機回転数補正」を演算する。当該圧縮機回転数補正は、自宅等からの距離が短い場合に適用される圧縮機の回転数補正量であるため、例えば当該距離が10〜50[m]の範囲である場合には、距離の減少(自宅等に近づくこと)とともに200から−200[rpm]まで減少するように算出され、さらに、当該距離が10[m]未満である場合には、−200[rpm]に算出される。なお、自宅等からの距離は、自宅からの距離、予め設定された駐車場所からの距離を含むものである。また、ステップ101Aの当該距離は、ナビゲーションECU80によって送信される自車の位置情報を用いて検出されるものである。
【0245】
次にステップ102Aでは、ステップ100で算出した「冷房サイクル時の回転数変化量ΔfC」と、ステップ101Aで算出した「自宅等からの距離による圧縮機回転数補正」とを比較し、このうち小さい値の方を圧縮機の回転数変化量Δfに決定する。
【0246】
そして、前回の圧縮機回転数とステップ102Aで算出した「圧縮機の回転数変化量Δf」とを足し算して今回の圧縮機回転数[rpm]を算出し(ステップ103A)、冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定処理を終了する。なお、このステップ103Aは、1秒に1回更新されるものである。このように今回の圧縮機回転数を算出することにより、車両が自宅等から近い位置にある場合には圧縮機2の電動モータ2aの回転数を低下させる制御が行われるため、圧縮機の作動音を低下させることができ、車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮した空調運転を実施できる。
【0247】
また、エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報から停車時間を検出し、ステップ101Aのマップにおける「自宅等からの距離」の代わりに「停車時間」を採用してもよい。そして、当該停車時間が増加するにつれて「圧縮機回転数補正」をマイナス側に低下させるようにしたり、当該停車時間が所定時間以上であるときは、「圧縮機回転数補正」をマイナス値に低下させるようにしたりしてもよい。
【0248】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。エアコンECU50は、プレ空調運転及びプレ空調以外の空調運転の少なくともいずれか一方において、車両が予め設定されている駐車場所にあると判定した場合、当該駐車場所から所定の距離以内にあると判定した場合、及び停車時間が所定時間以上継続中と判定した場合、のいずれかであるときは、当該判定結果以外の判定がされた場合と比べて、圧縮機2の出力量を低減するものである。
【0249】
この制御によれば、空調運転時に、車両が所定の駐車場、自宅またはその付近にあると判定されたときにはさらにこれ以外の判定がされたときに比べて圧縮機2の出力量を低減することにより、駐車場付近での周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図ることができる。また、車両が所定の駐車場等及びその付近にあるときには、プレ空調運転時に限られず、乗車中空調運転時であっても周囲環境に対する配慮を優先した空調を提供することができる。
【0250】
(第7実施形態)
第7実施形態では、上記第2実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図22にしたがって説明する。図22は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0251】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第2実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図22のステップ1110Cおよびステップ1120Cの判定処理のみが異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態及び第2実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0252】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理について図22にしたがって説明する。ここでは、第2実施形態の場合と同様に、ヒートポンプサイクル1を流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。さらに、室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、空調運転を行うときの車両の速度状態に応じて所定のレベルに設定されるようになっている。
【0253】
図22に示すように、第2実施形態と同様にステップ1100で、前述のステップ6で選択されたサイクルが冷房サイクルであるか否かを判定する。冷房サイクルである場合は、ステップ1110Cで、車速が発進してから0km/hから20km/h以上に達した後停車する回数を検出し、この回数が1回以内であるか否かを判定する。エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報から、当該20km/h後停車の回数を検出する。ステップ1110Cの判定処理によれば、車両が一旦発進後、徐行速度である車速が20km/hに達した後、駐車場を出るとき、信号、交差点等で停車する回数が1回以内であると、車両が駐車場(自宅を含む)の周辺に存在していると判定することができる。
【0254】
このようにステップ1110Cの判定処理において、YESと判定されると、車両が駐車場付近に存在しているため、ステップ1111のマップに示すように、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が他の車速条件と判定された場合よりも高い判定基準(1.5[MPa])に基づいて行われ、低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が他の車速条件と判定された場合よりも高い判定基準(1.8[MPa])に基づいて行われることになる。そして、以降の各処理により、室外ファン6の出力量を低減する制御が実施される。
【0255】
ステップ1110Cの判定処理において、NOと判定されると、前述のステップ1112、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、冷房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0256】
また、ステップ1120Cもステップ1110Cと同様の判定処理であり、前述のステップ1121またはステップ1122、ステップ1123、ステップ1124を実行することにより、暖房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0257】
また、エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報からイグニッションスイッチのオン後の経過時間を検出し、ステップ1110C及び1120Cの判定処理において、「イグニッションスイッチのオン後の経過時間が所定時間以内であるか否か」を判定基準に採用してもよい。そして、当該経過時間が所定時間以内である場合は、車両が駐車場(自宅を含む)の周辺に存在していると判定することができる。
【0258】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。エアコンECU50は、乗車中空調運転において、車両が所定の車速条件を満たす場合(ステップ1110C,1120C)、及びイグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合のいずれかであるときは、当該場合以外のときと比べて、室外ファン6の出力量を低減するものである。
【0259】
この制御によれば、乗車中空調運転の初期段階においても、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあると想定される場合、車両の走行後間もない場合等、徐行速度で走行するなど周辺環境への騒音が懸念されるときには、さらに室外ファン6の出力量を低減することにより、さらに周囲環境に対する配慮を優先した空調を提供することができ、騒音低減を図ることができる。
【0260】
また、空調運転において車両が所定の車速条件を満たす場合(ステップ1110C,1120C)、及びイグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合のいずれかであるときは、当該冷媒圧力の判定基準がこれ以外の場合よりも高いため、室外ファン6の出力量は、これ以外の場合よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、車両が駐車場等周辺にあるときの方がこれ以外の場合よりも低圧力に判定されやすい。よって、車両が駐車場等周辺にあるときの室外ファン6の出力量は、増加する方向に制御され難くなり、これ以外の場合に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば車両が駐車場等周辺にあるときの方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファン6の出力量増加が、車両が駐車場等周辺にあるときに抑制されるため、ヒートポンプサイクル1の負荷が増加するようなことがあっても乗員不在時に車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮した空調運転を実施できる。
【0261】
(第8実施形態)
第8実施形態では、上記第1実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける圧縮機回転数決定の変形例を図23にしたがって説明する。図23は、空調制御のメインルーチンにおける圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の一部を示すフローチャートである。なお、このステップの一部とは、ヒートポンプサイクル1による冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定のステップのみを示したものということである。その他のサイクルによる冷房運転時等の圧縮機回転数の決定は、周知の方法を採用するものとし、ここでは説明を省略する。
【0262】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第1実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図23のステップ1010,1012,1013,1014及び1015の処理が異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0263】
図23に示すように、まず、エアコンECU50は、前述のステップ100と同様のステップ1000を実行し、1秒前の電動モータ2aの「冷房サイクル時の回転数変化量ΔfC」を算出する。この冷房サイクル時の回転数変化量ΔfCは、冷房サイクル時の熱交換器のフロスト防止に貢献する値である。
【0264】
次にステップ1010で、車速が発進してから0km/hから20km/h以上に達した後停車する回数を検出し、この回数が1回以内であるか否かを判定する。エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報から、当該20km/h後停車の回数を検出する。ステップ1010の判定処理によれば、車両が一旦発進後、徐行速度である車速が20km/hに達した後、駐車場を出るとき、信号、交差点等で停車する回数が1回以内であると、車両が駐車場(自宅を含む)の周辺に存在していると判定することができる。
【0265】
ステップ1010でNOと判定すると、圧縮機2の最高回転数を9000[rpm]に決定し(ステップ1012)、ステップ1014に進む。ステップ1010でYESと判定すると、圧縮機2の最高回転数を4000[rpm]に決定し(ステップ1012)、ステップ1014に進む。
【0266】
次に、ステップ1014で、前回の圧縮機回転数とステップ1000で算出した「冷房サイクル時の回転数変化量ΔfC」とを足し算して「仮の今回の圧縮機回転数」を算出する。さらに、ステップ1014で算出した「仮の今回の圧縮機回転数」と、ステップ1012または1013で算出した「圧縮機2の最高回転数」とを比較し、このうち小さい値の方を今回の圧縮機2の回転数に決定し(ステップ1015)、冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定処理を終了する。なお、このステップ1015は、1秒に1回更新されるものである。
【0267】
このように今回の圧縮機回転数を算出することにより、冷房サイクル運転時における圧縮機2の電動モータ2aの回転数を低下させる制御が行われる。特に車両が駐車場付近に存在している場合には、ステップ1013とステップ1015により、圧縮機2の最高回転数を通常走行時よりも低く設定することが可能になる。
【0268】
また、エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報からイグニッションスイッチのオン後の経過時間を検出し、ステップ1010の判定処理において、「イグニッションスイッチのオン後の経過時間が所定時間以内であるか否か」を判定基準に採用してもよい。そして、当該経過時間が所定時間以内である場合は、車両が駐車場(自宅を含む)の周辺に存在していると判定することができる。
【0269】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。エアコンECU50は、乗車中空調運転において、車両が所定の車速条件を満たす場合(ステップ1010)、及びイグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合のいずれかであるときは、当該場合以外のときと比べて、圧縮機2の出力量を低減するものである。
【0270】
この制御によれば、乗車中空調運転の初期段階においても、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあると想定される場合、車両の走行後間もない場合等、徐行速度で走行するなど周辺環境への騒音が懸念されるときには、さらに圧縮機2の出力量を低減することにより、さらに周囲環境に対する配慮を優先した空調を提供することができ、騒音低減を図ることができる。
【0271】
(第9実施形態)
第9実施形態では、上記第2実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図24にしたがって説明する。図24は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0272】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第2実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図24のステップ1110Dおよびステップ1120Dの判定処理のみが異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態及び第2実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0273】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理について図24にしたがって説明する。ここでは、第2実施形態の場合と同様に、ヒートポンプサイクル1を流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。さらに、室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、空調運転を行うときのハイブリッド車両が電気走行モードであるかどうかに応じて所定のレベルに設定されるようになっている。
【0274】
図24に示すように、第2実施形態と同様にステップ1100で、前述のステップ6で選択されたサイクルが冷房サイクルであるか否かを判定する。冷房サイクルである場合は、次にステップ1110Dで、走行状態が電動モータを駆動源にして走行する電気走行モード(以下、EVモードともいう)であるか否かを判定する。エアコンECU50は、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報から、走行モードがEVモードであることを検出できる。
【0275】
このようにステップ1110Dの判定処理において、EVモードであると判定されると、ステップ1111のマップに示すように、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、EVモード以外(例えば、エンジン30及び電動モータを駆動源にして走行するハイブリッド走行モード(以下、HEVモードともいう))と判定された場合よりも高い判定基準(1.5[MPa])に基づいて行われる。さらに低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、EVモード以外と判定された場合よりも高い判定基準(1.8[MPa])に基づいて行われることになる。そして、以降の各処理により、冷房サイクル時の室外ファン6の出力量を低減する制御が実施される。
【0276】
ステップ1110Dの判定処理において、EVモード以外の例えばHEVモードであると判定されると、前述のステップ1112、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、冷房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0277】
また、ステップ1120Dもステップ1110Dと同様の判定処理であり、前述のステップ1121またはステップ1122、ステップ1123、ステップ1124を実行することにより、暖房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0278】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。エアコンECU50は、乗車中空調運転において、電動モータを駆動源にして走行するEVモードのときに、エンジン及び電動モータを駆動源にして走行するHEVモードのときに比べて、室外ファン6の出力量を低減するものである。
【0279】
この制御によれば、EVモード時にHEVモード時に比べて室外ファン6の出力量を低減することにより、比較的静かなEVモードにおける空調装置の相対的騒音レベルを下げることができる。これは、ハイブリッド車両においてはEVモードのときにエンジン30が停止しているため、相対的に空調装置から発生する騒音が車外で聞こえ易くなり、空調装置の作動音が周囲環境に与える影響が大きいからである。したがって、ハイブリッド車両においてEVモードのときに上記制御を実施することにより、さらに一層の周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置を提供できる。
【0280】
また、空調運転においてEVモードである場合(ステップ1110D,1111,1120D,1121)は、当該冷媒圧力の判定基準がEVモード以外の場合よりも高いため、EVモードのときの室外ファン6の出力量は、EVモード以外の場合よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、走行モードがEVモードのときの方が低圧力に判定されやすい。よって、EVモードのときの室外ファン6の出力量は、増加する方向に制御され難くなり、EVモード以外の場合に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならばEVモードのときの方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファン6の出力量増加が、EVモードのときに抑制されるため、ヒートポンプサイクル1の負荷が増加するようなことがあっても乗員不在時に車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮した空調運転を実施できる。
【0281】
(第10実施形態)
第10実施形態では、上記第8実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける圧縮機回転数決定の変形例を図25にしたがって説明する。図25は、空調制御のメインルーチンにおける圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の一部を示すフローチャートである。なお、このステップの一部とは、ヒートポンプサイクル1による冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定のステップのみを示したものということである。その他のサイクルによる冷房運転時等の圧縮機回転数の決定は、周知の方法を採用するものとし、ここでは説明を省略する。
【0282】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第8実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図25のステップ1010Aの処理が異なっている。図25のステップ1012A,1013A,1014A,1015Aは、それぞれ図23の1012,1013,1014,1015に相当する同様の処理であり、その説明は第8実施形態と同様である。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態及び第8実施形態と同様である。
【0283】
図25に示すように、まず、エアコンECU50は、前述のステップ1000を実行し、1秒前の電動モータ2aの「冷房サイクル時の回転数変化量ΔfC」を算出する。
【0284】
次にステップ1010Aで、走行状態が電動モータを駆動源にして走行する電気走行モード(以下、EVモードともいう)であるか否かを判定する。エアコンECU50は、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報から、走行モードがEVモードであることを検出できる。
【0285】
このようにステップ1010Aの判定処理において、EVモードであると判定されると、以降、ステップ1013A,1014A,1015Aの各処理を順に実行して今回の圧縮機回転数が決定されて、冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定処理を終了する。なお、このステップ1015Aは、1秒に1回更新されるものである。
【0286】
ステップ1010Aの判定処理において、EVモード以外の例えばHEVモードであると判定されると、以降、ステップ1012A,1014A,1015Aの各処理を順に実行して今回の圧縮機回転数が決定されて、冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定処理を終了する。
【0287】
このように今回の圧縮機回転数を算出することにより、冷房サイクル運転時における圧縮機2の電動モータ2aの回転数を低下させる制御が行われる。特にEVモードである場合には、ステップ1013Aとステップ1015Aにより、圧縮機2の最高回転数を通常走行時よりも低く設定することが可能になる。
【0288】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。エアコンECU50は、乗車中空調運転において、電動モータを駆動源にして走行するEVモードのときに、エンジン及び電動モータを駆動源にして走行するHEVモードのときに比べて、圧縮機2の出力量を低減するものである。
【0289】
この制御によれば、EVモード時にHEVモード時に比べて圧縮機2の出力量を低減することにより、比較的静かなEVモードにおける空調装置の相対的騒音レベルを下げることができる。これは、ハイブリッド車両においてはEVモードのときにエンジン30が停止しているため、相対的に空調装置から発生する騒音が車外で聞こえ易くなり、空調装置の作動音が周囲環境に与える影響が大きいからである。したがって、ハイブリッド車両においてEVモードのときに上記制御を実施することにより、さらに一層の周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置を提供できる。
【0290】
(第11実施形態)
第11実施形態では、上記第2実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図26にしたがって説明する。図26は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0291】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第2実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、ステップ1110の判定処理で「プレ空調である」と判定された場合に図26のステップ1110Eの判定処理を実行し、ステップ1120の判定処理で「プレ空調である」と判定された場合に図26のステップ1120Eの判定処理を実行する点が異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態及び第2実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0292】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理について図26にしたがって説明する。ここでは、第2実施形態の場合と同様に、ヒートポンプサイクル1を流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。さらに、室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、プレ空調運転時であって、かつ後述する低騒音モードが設定されているかどうかに応じて所定のレベルに設定されるようになっている。
【0293】
図26に示すように、第2実施形態と同様にステップ1100で、前述のステップ6で選択されたサイクルが冷房サイクルであるか否かを判定する。冷房サイクルである場合は次にステップ1110で、ステップ1の処理結果としてプレ空調フラグが立っているか否かを判定する。プレ空調フラグが立っていない場合は、ステップ1112にて冷房の空調負荷を判定する。プレ空調フラグが立っている場合は、ステップ1110Eで「低騒音モード」が設定されているか否かを判定する。低騒音モードは、プレ空調時に外部への騒音を低減する空調運転を実施するモードであり、ユーザーが操作パネル51に設けられた所定の操作部を操作したり、予めプログラミングによりモード設定されていたりすることにより、設定することができる。
【0294】
このようにステップ1110Eの判定処理において、低騒音モードが設定されていると判定されると、ステップ1111のマップに示すように、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、低騒音モードが非設定である場合よりも高い判定基準(1.5[MPa])に基づいて行われる。さらに低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、低騒音モードが非設定である場合よりも高い判定基準(1.8[MPa])に基づいて行われることになる。そして、以降の各処理により、冷房サイクル時の室外ファン6の出力量を低減する制御が実施される。
【0295】
ステップ1110Eの判定処理において、低騒音モードが非設定であると判定されると、前述のステップ1112、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、冷房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0296】
また、ステップ1120Eもステップ1110Eと同様の判定処理であり、前述のステップ1121またはステップ1122、ステップ1123、ステップ1124を実行することにより、暖房サイクル時の室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0297】
本実施形態の車両用空調装置100は、プレ空調時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有する。エアコンECU50は、低騒音モードが設定されたプレ空調運転時に、低騒音モードが設定されていない場合のプレ空調運転時に比べて、室外ファン6の出力量を低減するように制御するものである。
【0298】
これによれば、当該低騒音モードを設定することによってプレ空調時に室外ファン6の出力量を低減する制御が行われるため、ユーザーが自宅の環境、駐車場所の周囲環境等に応じて、当該低騒音モードを設定して室外ファン6の出力量を調整することにより、プレ空調時の周囲に与える静穏性を調節することができる。したがって、周囲環境への静穏性、プレ空調による車室内の快適性向上のいずれを優先するかが選択可能であって、ユーザーの要求にも対応可能な車両用空調装置を提供できる。
【0299】
また、空調運転において低騒音モードが設定されている場合(ステップ1110E,1111,1120E,1121)は、当該冷媒圧力の判定基準が低騒音モード非設定の場合よりも高いため、低騒音モード設定の場合の室外ファン6の出力量は、低騒音モード非設定の場合よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、低騒音モード設定の場合の方が低圧力に判定されやすい。よって、低騒音モード非設定の場合の室外ファン6の出力量は、増加する方向に制御され難くなり、低騒音モード非設定の場合に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば低騒音モード設定の場合の方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファン6の出力量増加が、低騒音モード設定のときに抑制されるため、ヒートポンプサイクル1の負荷が増加するようなことがあっても乗員不在時に車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮した空調運転を実施できる。
【0300】
(第12実施形態)
第12実施形態では、上記第8実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける圧縮機回転数決定の変形例を図27にしたがって説明する。図27は、空調制御のメインルーチンにおける圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の一部を示すフローチャートである。なお、このステップの一部とは、ヒートポンプサイクル1による冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定のステップのみを示したものということである。その他のサイクルによる冷房運転時等の圧縮機回転数の決定は、周知の方法を採用するものとし、ここでは説明を省略する。
【0301】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第8実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、ステップ1000の判定処理後に、図27のステップ1010Bの判定処理を実行し「プレ空調である」と判定された場合に図27のステップ1011の判定処理を実行する点が異なっている。図27のステップ1012B,1013B,1014B,1015Bは、それぞれ図23の1012,1013,1014,1015に相当する同様の処理であり、その説明は第8実施形態と同様である。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態及び第8実施形態と同様である。
【0302】
図27に示すように、まず、エアコンECU50は、前述のステップ1000を実行し、1秒前の電動モータ2aの「冷房サイクル時の回転数変化量ΔfC」を算出する。
【0303】
次にステップ1010Bで、ステップ1の処理結果としてプレ空調フラグが立っているか否かを判定する。プレ空調フラグが立っていない場合は、ステップ1012Bの処理を実行する。プレ空調フラグが立っている場合は、ステップ1011で「低騒音モード」が設定されているか否かを判定する。低騒音モードは、プレ空調時に外部への騒音を低減する空調運転を実施するモードであり、ユーザーが操作パネル51に設けられた所定の操作部を操作したり、予めプログラミングによりモード設定されていたりすることにより、設定することができる。
【0304】
ステップ1010Bで「プレ空調フラグが立っている」と判定され、かつステップ1011の判定処理において「低騒音モード設定」と判定されると、以降、ステップ1013B,1014B,1015Bの各処理を順に実行して今回の圧縮機回転数が決定されて、冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定処理を終了する。なお、このステップ1015Bは、1秒に1回更新されるものである。
【0305】
ステップ1010Bの判定処理で「プレ空調フラグが立っていない」と判定された場合、またはステップ1011の判定処理で「低騒音モード非設定」と判定され場合は、以降、ステップ1012B,1014B,1015Bの各処理を順に実行して今回の圧縮機回転数が決定されて、冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定処理を終了する。
【0306】
このように今回の圧縮機回転数を算出することにより、冷房サイクル運転時における圧縮機2の電動モータ2aの回転数を低下させる制御が行われる。特に、低騒音モードが設定されている場合には、ステップ1013Bとステップ1015Bにより、圧縮機2の最高回転数を通常走行時よりも低く設定することが可能になる。
【0307】
本実施形態の車両用空調装置100は、プレ空調時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有する。エアコンECU50は、当該低騒音モードが設定されたプレ空調運転時に、低騒音モードが設定されていない場合のプレ空調運転時に比べて、圧縮機2の出力量を低減するものである。
【0308】
これによれば、当該低騒音モードを設定することによってプレ空調時に圧縮機2の出力量を低減する制御が行われるため、ユーザーが自宅の環境、駐車場所の周囲環境等に応じて、当該低騒音モードを設定して圧縮機2の出力量を調整することにより、プレ空調時の周囲に与える静穏性を調節することができる。したがって、周囲環境への静穏性、プレ空調による車室内の快適性向上のいずれを優先するかを選択可能であって、ユーザーの要求にも対応可能な車両用空調装置を提供できる。
【0309】
(第13実施形態)
第13実施形態では、上記第1実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおけるエンジンON要求有無の決定の変形例を図28にしたがって説明する。図28は、空調制御のメインルーチンにおけるエンジンON要求有無の決定処理(ステップ14)の詳細を示すフローチャートである。
【0310】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第1実施形態で図16にしたがって説明した空調制御の処理フローに対して、ステップ143のプレ空調判定において「プレ空調である」と判定された場合に図28のステップ143Aの判定処理を実行する点が異なっている。図28においてその他のステップは図16と同様の処理であり、その説明は第1実施形態と同様である。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態と同様である。
【0311】
図28に示すように、ステップ140でプレ空調フラグが立っていると判定された場合は、次にステップ143Aで「低騒音モード」が設定されているか否かを判定する。低騒音モードは、プレ空調時に外部への騒音を低減する空調運転を実施するモードであり、ユーザーが操作パネル51に設けられた所定の操作部を操作したり、予めプログラミングによりモード設定されていたりすることにより、設定することができる。
【0312】
低騒音モードが設定されている場合は、エアコンECU50は、エンジンECU60に対してエンジンONの出力要求を実行せず(ステップ146)、本サブルーチンを終了する。低騒音モードが非設定の場合はステップ144で熱源フラグが1であるか否かを判定する。熱源フラグが1である場合は、エアコンECU50は、ステップ145にてエンジンECU60に対してエンジンONの出力要求を実行し、本サブルーチンを終了する。熱源フラグが0である場合は、ステップ146に進み、エアコンECU50はエンジンECU60に対してエンジンONの出力要求を実行せず、本サブルーチンを終了する。
【0313】
以上のように本実施形態のエンジンON要求有無決定処理では、プレ空調運転を実施しかつ低騒音モードが設定されている場合は、暖房熱源の不足か否かにかかわらず、エンジンを起動せず、エンジン運転による騒音を発生させないように制御する。また、プレ空調運転を実施しない場合であって、暖房熱源が不足しているときは、エンジンを起動して、実際の吹出温度が目標吹出温度TAOに対して低下しないようにエンジン冷却水温度を上昇させ、空調能力の確保を図る制御を実施する。また、プレ空調運転を実施する場合であって低騒音モードが非設定である場合に暖房熱源が不足していないときには、エンジンを起動せず、エンジン運転による騒音を発生させないように制御する。
【0314】
なお、上記のステップ140〜143,ステップ143A及びステップ144の処理は、請求項に記載の「エンジン起動判定手段」に相当するものである。
【0315】
本実施形態の車両用空調装置100は、プレ空調時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有する。エアコンECU50は、低騒音モードが設定されたプレ空調運転時に、低騒音モードが設定されていない場合のプレ空調運転時に比べて、エンジン起動の要求信号の出力頻度を低減するように制御する。
【0316】
これによれば、当該低騒音モードを設定することによってプレ空調時にエンジン起動の要求信号の出力頻度を低減する制御が行われるため、ユーザーが自宅の環境、駐車場所の周囲環境等に応じて、当該低騒音モードを設定してエンジン起動の要求信号の出力頻度を調整することによりプレ空調時の周囲に与える静穏性を調節することができる。したがって、周囲環境への静穏性、乗車前空調による車室内の快適性向上のいずれを優先するかを選択可能であって、ユーザーの要求にも対応可能な車両用空調装置を提供できる。
【0317】
(第14実施形態)
第14実施形態では、上記第8実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける圧縮機回転数決定の変形例を図29にしたがって説明する。図29は、空調制御のメインルーチンにおける圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の一部を示すフローチャートである。なお、このステップの一部とは、ヒートポンプサイクル1による冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定のステップのみを示したものということである。その他のサイクルによる冷房運転時等の圧縮機回転数の決定は、周知の方法を採用するものとし、ここでは説明を省略する。
【0318】
本実施形態における空調制御では、冷房サイクル運転か暖房サイクル運転かに応じて圧縮機の回転数変化量Δf及び圧縮機の最高回転数を決定する処理を実行するものである。これにより、処理フローは、第8実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図29のステップ1005,1010C,1011a,1011b,1012C及び1013Cの処理が異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態及び第8実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0319】
図29に示すように、まず、エアコンECU50は、第8実施形態のステップ1000と同様のステップ1000を実行し、1秒前の電動モータ2aの「冷房サイクル時の回転数変化量ΔfC」を算出する。この冷房サイクル時の回転数変化量ΔfCは、冷房サイクル時の熱交換器のフロスト防止に貢献するパラメータである。
【0320】
さらに、第1実施形態のPTC・デフォッガの作動決定処理における図14のステップ1201と同様のステップ1005を実行する。ステップ1005の実行により、1秒前の電動モータ2aの「暖房サイクル時の回転数変化量ΔfH」が算出される。この暖房サイクル時の回転数変化量ΔfHは、暖房サイクル時のヒートポンプサイクル1の異常高圧防止に貢献するパラメータである。
【0321】
次に、ステップ1010Cで、前述のステップ6で選択されたサイクルが冷房サイクルであるか否かを判定する。冷房サイクルでなく暖房サイクルである場合は、ステップ1011aにおいて圧縮機の回転数変化量Δfを「暖房サイクル時の回転数変化量ΔfH」に決定しこれをRAMに書き込み、さらにステップ1012Cで圧縮機2の最高回転数を2950[rpm]に決定する。一方、冷房サイクルである場合は、ステップ1011bにおいて圧縮機の回転数変化量Δfを「冷房サイクル時の回転数変化量ΔfC」に決定しこれをRAMに書き込み、さらにステップ1013Cで圧縮機2の最高回転数を4100[rpm]に決定する。
【0322】
次に、暖房サイクルである場合には、ステップ1011aで決定したΔf(=ΔfH)と前回の圧縮機回転数とを足し算して「仮の今回の圧縮機回転数」を算出する(ステップ1014C)。さらに、ステップ1014Cで算出した「仮の今回の圧縮機回転数」と、ステップ1012Cで決定した「圧縮機2の最高回転数2950[rpm]」とを比較し、このうち小さい値の方を今回の圧縮機2の回転数に決定し(ステップ1015C)、暖房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定処理を終了する。
【0323】
また、冷房サイクルである場合には、ステップ1011bで決定したΔf(=ΔfC)と前回の圧縮機回転数とを足し算して「仮の今回の圧縮機回転数」を算出する(ステップ1014C)。さらに、ステップ1014Cで算出した「仮の今回の圧縮機回転数」と、ステップ1013Cで決定した「圧縮機2の最高回転数4100[rpm]」とを比較し、このうち小さい値の方を今回の圧縮機2の回転数に決定し(ステップ1015C)、冷房サイクル運転時の圧縮機回転数の決定処理を終了する。なお、このステップ1015Cは、1秒に1回更新されるものである。
【0324】
このように今回の圧縮機回転数を算出することにより、冷房サイクル運転時及び暖房サイクル運転時における圧縮機2の電動モータ2aの回転数を低下させる制御が行われる。特に暖房サイクル運転の場合は、圧縮機2の最高回転数がステップ1012Cによって冷房サイクル運転の場合よりも低く設定されることになる。
【0325】
通常、暖房サイクル運転時は、冷媒圧力が高い状態で作動するため、圧縮機の振動が大きくなり、冷媒が流れるホースが硬くなることから車両にも振動が伝わり易くなる。これにより、車外に伝わる騒音も冷房サイクル運転時よりも大きくなる。
【0326】
そこで、暖房サイクルにおける圧縮機2の最高回転数を冷房サイクルの場合よりも低く設定することの根拠を以下に説明する。図30は、図29のフローチャートに従った冷房サイクル時及び暖房サイクル時における圧縮機回転数と周辺環境への騒音との関係を示した実験データである。図30(a)では冷房サイクル時の圧縮機回転数と騒音値との関係を実線で示し、図30(b)では、暖房サイクル時の圧縮機回転数と騒音値との関係を実線で示している。図30(a)、(b)ともに、横軸に直交する破線は圧縮機の最高回転数を示し、縦軸に直交する破線は車両周囲における騒音値の許容レベル(静かと感じる騒音レベル)を示している。
【0327】
図30に示すように、冷房サイクル時では許容レベルの破線と実線のデータとの関係から、圧縮機2の最高回転数を4100[rpm]以下にすることが好ましく、暖房サイクル時では許容レベルの破線と実線のデータとの関係から、圧縮機2の最高回転数を4100[rpm]よりも低い2950[rpm]以下にすることが好ましいことがわかる。このように、暖房サイクル時は、回転数の全域において冷房サイクル時よりも車外への騒音値が高くなるため、圧縮機回転数の規制をかけることにより、暖房運転時の騒音を低減して周囲環境へ配慮した空調運転を実施するものである。
【0328】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。暖房サイクル運転における圧縮機2の最高回転数は、冷房サイクル運転における圧縮機2の最高回転数よりも低く設定されており、エアコンECU50は、当該最高回転数にしたがって暖房サイクル運転及び冷房サイクル運転を制御する。
【0329】
これによれば、暖房サイクル運転における圧縮機2の最高回転数を冷房サイクル運転における圧縮機2の最高回転数よりも低く設定するため、通常、冷媒圧力が高くなって騒音値高くなる傾向にある暖房サイクル運転において、周囲環境に与える騒音レベルを下げることができる。したがって、暖房サイクル時の騒音レベルを冷房サイクル時の騒音レベルに対して問題にならない程度に抑制することが可能になり、運転サイクルの全般に亘って、一層の周囲環境に対する配慮を優先した空調が行われる車両用空調装置を提供できる。
【0330】
(第15実施形態)
第15実施形態では、上記第1実施形態の車両用空調装置100に対して、他の形態である車両用空調装置101の構成、及び車両用空調装置101における空調制御処理について、図31〜図34を参照して説明する。図31は第15実施形態に係る車両用空調装置101の構成を説明するための模式図である。
【0331】
本実施形態の車両用空調装置101における室内空調ユニットは、車室内最前部のインストルメントパネルの内側に配置されて、その外殻を形成する空調ケース20内に室内用ブロワ21、蒸発器8、ヒータコア23、PTCヒータ24等を収容している。また、車両用空調装置101における制御構成は、図6に示すブロック図と同様である。以下に、車両用空調装置101に係る説明として、図31に示す形態を中心に第1実施形態と異なる構成について説明するとともに、第1実施形態と異なっている空調制御について、図32〜図41に示すフローチャートを参照して説明する。
【0332】
図31に示すように、空調ケース20は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れたポリプロピレン等の樹脂にて成形されている。空調ケース20内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切り替え導入する内外気切替箱が配置されている。
【0333】
内外気切替箱には、空調ケース20内に内気を導入させる内気導入口25aおよび外気を導入させる外気導入口25bが形成されている。さらに、内外気切替箱の内部には、内気導入口25aおよび外気導入口25bの開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア25が配置されている。
【0334】
内外気切替ドア25は、空調ケース20内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。内外気切替ドア25は、内外気切替ドア25用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、エアコンECU50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0335】
また、吸込口モードとしては、内気導入口25aを全開とするとともに外気導入口25bを全閉として空調ケース20内へ内気を導入する内気モード、内気導入口25aを全閉とするとともに外気導入口25bを全開として空調ケース20内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口25aおよび外気導入口25bの開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0336】
内外気切替箱の空気流れ下流側には、内外気切替箱を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する室内用ブロワ21が配置されている。この室内用ブロワ21は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機であり、エアコンECU50から出力される制御電圧によって回転数が制御される。
【0337】
室内用ブロワ21の空気流れ下流側には、蒸発器8が配置されている。蒸発器8は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器8は、圧縮機2、室外熱交換器5(凝縮器)、アキュムレータ9、膨張弁10等とともに、冷凍サイクル1Aを構成している。
【0338】
圧縮機2は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル1Aにおいて冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構を電動モータ2aにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ2aは、インバータ90から出力される交流電圧によって、その回転数が制御される交流モータである。
【0339】
凝縮器として機能する室外熱交換器5は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外ファン6から送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮された冷媒を凝縮液化させるものである。室外ファン6は、エアコンECU50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0340】
アキュムレータ9は、凝縮液化された冷媒を気液分離して余剰液冷媒を蓄えるとともに、液冷媒のみを下流に流す。膨張弁10は、液冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器8は、冷媒と送風空気との熱交換により、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させる。
【0341】
空調ケース20内において、蒸発器8の空気流れ下流側には、蒸発器8を通過した後の空気を流す加熱用冷風通路28a、冷風バイパス通路28bといった空気通路、並びに、加熱用冷風通路28aおよび冷風バイパス通路28bから流出した空気を混合させる混合空間29が形成されている。
【0342】
加熱用冷風通路28aには、蒸発器8を通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア23、およびヒータコア23を通過後の空気を再加熱するための補助加熱手段としてのPTCヒータ24が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。
【0343】
ヒータコア23は、車両走行用駆動力を出力するエンジン30の冷却水と蒸発器8を通過後の空気とを熱交換させて、蒸発器8を通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0344】
ヒータコア23とエンジン30との間に冷却水流路が設けられて、ヒータコア23とエンジン30との間を冷却水が循環する冷却水回路が構成されている。そして、この冷却水回路には、冷却水を循環させるためのウォータポンプ31が設置されている。ウォータポンプ31は、エアコンECU50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0345】
PTCヒータ24は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア24を通過後の空気を加熱する電気ヒータである。またPTCヒータ24としては、複数本、例えば、3本のPTCヒータ24a,24b,24cを用いている。エアコンECU50が、第1PTCヒータ24a、第2PTCヒータ24b、第3PTCヒータ24cの各PTC素子に対して設けられているスイッチ素子のON、OFFを制御することで、各PTCヒータ24a,24b,24cへの通電・非通電を制御するようになっている。そして、エアコンECU50が、通電するPTCヒータ24の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ24全体としての加熱能力が制御される。
【0346】
一方、冷風バイパス通路28bは、蒸発器8を通過後の空気を、ヒータコア23及びPTCヒータ24を通過させることなく、混合空間29に導くための空気通路である。したがって、混合空間29にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路28aを通過する空気および冷風バイパス通路28bを通過する空気の風量割合によって変化する。
【0347】
本実施形態では、蒸発器8の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路28a及び冷風バイパス通路28bの入口側には、加熱用冷風通路28a及び冷風バイパス通路28bへ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア22Aを配置している。
【0348】
したがって、エアミックスドア22Aは、混合空間29内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。エアミックスドア22Aは、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、エアコンECU50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0349】
さらに、空調ケース20の送風空気流れ最下流部には、混合空間29から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口27a,27b,27cが配置されている。この吹出口27a,27b,27cとしては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口27b、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口27c、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口27aが設けられている。
【0350】
また、フェイス吹出口27b、フット吹出口27c、及びデフロスタ吹出口27aの空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口27bの開口面積を調整するフェイスドア26b、フット吹出口27cの開口面積を調整するフットドア26c、デフロスタ吹出口27aの開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
【0351】
これらのフェイスドア26ba、フットドア26c、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、エアコンECU50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0352】
次に、本実施形態の車両用空調装置101における基本的な空調制御処理について図32を参照して説明する。図32は、車両用空調装置101のエアコンECU50による基本的な空調制御処理を示したフローチャートである。図32に示すフローチャートは、第1実施形態の図7を用いて説明したフローチャートに対して、ステップ1〜ステップ17までの各ステップにおいて決定すべき対象項目がステップ6Aのみ異なっている。ステップ6Aでは、PTCヒータ24の通電本数の選択を実行する。このステップ6では、図8に示すフローチャートに対して、ステップ63c,66cにおいて暖房サイクルによる空調を行う所を、ウォータポンプ341を動作させてヒータコア23による空気加熱を行う所が異なる。
【0353】
次に、ステップ1〜ステップ17までの各ステップにおける詳細の処理手順において、第1実施形態と異なる処理を図33及び図34を参照して説明する。図33は第15実施形態における室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。図34第15実施形態におけるPTC出力・電熱デフォッガの決定処理(ステップ12)の詳細を示すフローチャートである。以下、特に説明しない処理手順、作動、及び作用効果は、第1実施形態の説明と同様である。
【0354】
(室外ファンの出力量決定)
図33に示すように、ステップ111で空調負荷の判定を行う。空調負荷の判定は、図33のステップ111に示すマップである、室温[℃]に基づく高室温または低室温の判定、冷媒圧力Pre[MPa]に基づく高圧力または低圧力の判定、外気温Tam[℃]に基づく高外気温または低外気温の判定、及び車速[km/h]に基づく高車速または低車速の判定によって行われる。各判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された室温、冷媒圧力Pre、外気温Tam、及び車速のそれぞれに基づく判定結果がRAMに書き込まれる。
【0355】
次に、ステップ112では、ステップ111でRAMに書き込まれた各判定結果と、ステップ1でのプレ空調判定の結果とを、予めROMに記憶されたステップ112に示すマップに適用する。このようにマップへ適用した結果により、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定される。
【0356】
通常、プレ空調時には車速が0[km/h]であるため、冷媒圧力や熱負荷に応じて室外ファン6による風量を大きくするが、ステップ112のマップではプレ空調の冷房時には室外ファン6の出力量はLOレベルに決定されるため、室外ファン6はプレ空調以外の運転時に比べて低回転数に制御されて、車両の周囲環境への騒音レベルが低減するようになる。また、ステップ112のマップではプレ空調以外の時で、かつ低車速、低圧力、低室温及び低外気温と判定された場合にも、室外ファン6の出力量はLOレベルに決定されるため、室外ファン6は低回転数に制御されて車両の周囲環境への騒音レベルを低減することができる。このようにステップ112で、プレ空調か否か、室温、冷媒圧力Pre、外気温Tam、及び車速の各パラメータを用いて室外ファン6の出力量が決定されると、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。なお、室外ファン6の各出力量及び圧縮機回転数(横軸)と周辺環境への騒音(縦軸)との関係を示した実験データは図6に示すとおりである。
【0357】
(PTC・デフォッガの作動決定)
図34に示すように、まず冷房サイクルであるのでステップ1200で、上記の図10に示すステップ100と同様に、「冷房サイクル時の回転数変化量ΔfC」を算出する。次に、暖房サイクル時であればステップ1201で、「暖房サイクル時の回転数変化量ΔfH」を算出する。
【0358】
次に、ステップ1202でプレ空調と判定されたか否かまたはプレ空調中であるか否かを判定する。プレ空調でない場合は、ステップ1220で通常の空調制御が行われ図34のサブルーチンは終了する。
【0359】
ステップ1202でプレ空調であると判定されると、ステップ1203で、上記の使用許可電力と実際の圧縮機2の消費電力との差に応じて圧縮機回転数の変化量ΔfPre[rpm]を算出する。圧縮機回転数の変化量ΔfPreの算出は、当該使用許可電力と実際の圧縮機2の消費電力との差(以下、余剰電力(I)ともいう)に対応する関数として表されるΔfPreのマップを用いて算出される。余剰電力(I)とΔfPreは比例関係にあり、この余剰電力(I)の値が小さいほど、ΔfPreは小さくなり、所定の余剰電力(I)値未満の場合はΔfPreがマイナス値になるため、圧縮機2の回転数が前回よりも低減するように制御されることになる。このマップは予めROMに記憶されており、このマップから算出されたΔfPreはRAMに書き込まれる。このステップ1203の算出処理は1秒に1回更新される。
【0360】
次に、ステップ1205aにおいてステップ1200で求めたΔfCと、ステップ1203で求めたΔfPreとを比較し、小さい方の値を圧縮機の回転数変化量Δfとして決定してRAMに書き込み、ステップ1206に進む。このΔfCは、性能を満足できる圧縮機回転数を算出できる回転数変化量でもある。
【0361】
ステップ1206では、前回の圧縮機回転数とステップ1205aで算出した圧縮機の回転数変化量Δfとを足し算して今回の圧縮機回転数[rpm]を算出する。ステップ1205aでΔfCが選択された場合は、使用許可電力を最大限まで使用しない圧縮機回転数に制御するため、余剰電力が発生する。そしてステップ1207では、この余剰電力(I)を使用許可電力と実際の圧縮機2の消費電力との差と同値であると決定する。
【0362】
次に、決定された余剰電力(I)が500Wより大きいか否かを判定する(ステップ1208A)。ステップ1208AでNOと判定した場合は、デフォッガ及びPTCヒータ24への通電は行わず不作動に制御し(ステップ1209)、本サブルーチンを終了する。ここでデフォッガは、電気抵抗体の一例であり、車両のフロントウィンドウ等に熱線抵抗体を装着してなる熱線式ウィンドウデフォッガである。デフォッガは、電池等からの電力が供給されて通電することにより、通電量や印加電圧に応じて発熱し窓曇り除去に貢献する。デフォッガの作動は、エアコンECU50によって制御される。
【0363】
ステップ1208AでYESと判定した場合は、ステップ1210でデフォッガへ通電して作動させる。さらにステップ1211で余剰電力(II)を使用許可電力から実際の圧縮機2の消費電力及びデフォッガの消費電力を差し引いた値として算出する。次に、算出された余剰電力(II)が500Wより大きいか否かを判定する(ステップ1212A)。ステップ1212AでNOと判定した場合は、PTCヒータ24への通電は行わず不作動に制御し(ステップ1214)、本サブルーチンを終了する。ステップ1212AでYESと判定した場合は、PTCヒータ24へ通電して作動させ(ステップ1213)、本サブルーチンを終了する。
【0364】
以上のようにステップ12のPTC・デフォッガの作動決定処理では、上記の使用許可電力に余裕があるときは、使用許可電力の範囲内で窓の防曇効果が得られる空調制御を実施するため、乗員が乗車後に窓曇りを除去する時間の短縮が図れ、車両発進までの周囲環境へ騒音を与える時間を短縮することができる。デフォッガを作動させた場合にさらに使用許可電力に余裕がある場合は、さらにPTCヒータ24を作動させることにより、暖房時のプレ空調時間の短縮が図れ、さらに車両発進までの周囲環境へ騒音を与える時間を短縮することができる。
【0365】
(第16実施形態)
第16実施形態では、上記第15実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図35にしたがって説明する。図35は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0366】
第16実施形態における空調制御の処理フローは、第15実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、プレ空調と判定された場合に空調負荷が高圧力か低圧力かを判定するための冷媒圧力Pre[MPa]の判定基準を高く設定している点に特徴がある。なお、各構成部品、これらの作動、ステップ11以外の各処理手順については、第15実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0367】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理について図35にしたがって説明する。図35に示すように、まずステップ1110で、ステップ1の処理結果としてプレ空調フラグが立っているか否かを判定する。プレ空調フラグが立っていない場合は、ステップ1112にて冷房の空調負荷を判定する。この空調負荷の判定は、図35のステップ1112に示すマップである、冷媒圧力Pre[MPa]に基づく高圧力または低圧力の判定によって行われる。当該判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された冷媒圧力Preに基づく判定結果(高圧力か低圧力か)がRAMに書き込まれ、ステップ1113に進む。
【0368】
また、プレ空調フラグが立っている場合は、ステップ1111にて冷房の空調負荷を判定する。この空調負荷の判定は、図35のステップ1111に示すマップである、冷媒圧力Pre[MPa]に基づく高圧力または低圧力の判定によって行われる。当該判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された冷媒圧力Preに基づく判定結果(高圧力か低圧力か)がRAMに書き込まれ、ステップ1113に進む。このステップ1111に示すマップでは、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定基準が1.5[MPa]であり、ステップ1112に示すマップの1.2[MPa]よりも高い圧力に設定されている。同様に、ステップ1111に示すマップでは低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定基準が1.8[MPa]であり、ステップ1112に示すマップの1.5[MPa]よりも高い圧力に設定されている。このように、冷房の空調負荷を判定するための冷媒圧力の判定基準は、プレ空調時においてプレ空調以外の空調運転時よりも高く設定されているものである。
【0369】
さらにステップ1113で冷房の空調負荷を判定する。このステップの空調負荷の判定は、図35のステップ1113に示すマップである、室温[℃]に基づく高室温または低室温の判定、外気温Tam[℃]に基づく高外気温または低外気温の判定、及び車速[km/h]に基づく高車速または低車速の判定によって行われる。各判定が行われるマップは、予めROMに記憶されており、実際に検出された室温、外気温Tam、及び車速のそれぞれに基づく判定結果がRAMに書き込まれ、ステップ1114に進む。
【0370】
次に、ステップ1114では、ステップ1111または1112でRAMに書き込まれた判定結果と、ステップ1113でRAMに書き込まれた判定結果とを、予めROMに記憶されたステップ1114に示すマップに適用する。このようにマップへ適用した結果により、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0371】
通常、車速が低いときは室外ファン6による風量を大きくすることがあるが、ステップ1114のマップでは、低車速、低圧力、低室温、低外気温と判定されたときには室外ファン6の出力量はLOレベルに決定されるため、室外ファン6は、高室温・高外気温または高圧力と判定された場合に比べて低回転数に制御されて、車両の周囲環境への騒音レベルが低減するようになる。このようにステップ1114では、冷房のプレ空調のときには低圧力判定がされやすくなるとともに、室温、冷媒圧力Pre、外気温Tam、及び車速の各パラメータを用いた室外ファン6の出力量の決定が行われる。
【0372】
(第17実施形態)
第17実施形態では、上記第16実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図36にしたがって説明する。図36は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0373】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第16実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図36のステップ1110Aの判定処理のみが異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の処理手順については、第15実施形態及び第16実施形態と同様である。以下、特に説明しない処理手順、作動、及び作用効果は、第15及び第16実施形態の説明と同様である。
【0374】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理について図36にしたがって説明する。ここでは、第16実施形態の場合と同様に、冷凍サイクル1Aを流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。さらに、室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、空調運転を行うときの時間帯に応じて所定のレベルに設定されるようになっている。
【0375】
図36に示すように、ステップ1110Aで、現在の時間が20時〜7時の範囲にあるか否かを判定する。この所定の時間帯は、早朝または夜間を想定した時間帯であり、この時間帯に該当する場合は、以降の処理により、室外ファン6の出力量を低減する制御が実施される。
【0376】
ステップ1110Aで当該所定の時間帯に入っていないと判定された場合は、前述のステップ1112、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0377】
またステップ1110Aで当該所定の時間帯に入っていると判定された場合は、前述のステップ1111、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0378】
このように、ステップ1110Aで早朝または夜間であると判定された場合には、ステップ1111の判定処理により、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が他の時間帯と判定された場合よりも高い判定基準(1.5[MPa])に基づいて行われ、低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が他の時間帯と判定された場合よりも高い判定基準(1.8[MPa])に基づいて行われることになる。なお、上記のステップ1110Aの各処理は、請求項に記載の「時間帯判定手段」に相当するものである。
【0379】
本実施形態によれば、エアコンECU50は、室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)において、早朝または夜間であるか否かを判定する時間帯判定手段(S1110A)を備えている。エアコンECU50は、この時間帯判定手段において現在が早朝または夜間であると判定された場合、室外ファン6の出力量を早朝または夜間以外の時間帯であると判定された場合よりも低減する(ステップ1111,1114)ものである。
【0380】
この制御によれば、早朝時または夜間時であると判定された場合は室外ファン6の出力量をこれ以外の時間帯と判定された場合よりも低減するため、車両の周囲環境が比較的静かで迷惑がかかりやすい時間帯に車外への騒音レベルを抑制する空調運転を提供することができる。また、早朝または夜間の時間帯は、プレ空調運転時に限られず、乗車中空調運転時であっても周囲環境に対する配慮を優先した空調を提供することができる。
【0381】
また、早朝時または夜間時であると判定された場合は、当該冷媒圧力の判定基準がこれ以外の時間帯の場合よりも高いため、早朝時または夜間時の室外ファン6の出力量は、これ以外の時間帯の場合よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、早朝時または夜間時の方がこれ以外の時間帯の場合よりも低圧力に判定されやすい。よって、早朝時または夜間時の室外ファン6の出力量は、増加する方向に制御され難くなり、これ以外の時間帯の場合に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば早朝時または夜間時の方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。
【0382】
(第18実施形態)
第18実施形態では、上記第16実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図37にしたがって説明する。図37は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0383】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第16実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図37のステップ1110Bの判定処理のみが異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第15実施形態及び第16実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0384】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理では、第16実施形態の場合と同様に、冷凍サイクル1Aを流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。さらに、室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、空調運転を行うときに車両が自宅付近等に存在するかどうか応じて所定のレベルに設定されるようになっている。
【0385】
図37に示すように、まず、ステップ1110Bで、車両が自宅または自宅付近に位置しているか否かを判定する。ステップ1110Bの判定は、ナビゲーションECU80によって送信される自車の位置情報を用いて行われるものである。ステップ1110Bでは、車両が予め設定されている駐車場所に位置しているか否か、当該設定された駐車場所から所定の距離以内に位置しているか否か、をナビゲーションECU80からの自車の位置情報から判定する。また、エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報から停車時間を検出し、ステップ1110Bの判定処理に代わりに、この停車時間が所定時間以上(例えば8時間以上)であるか否かの判定処理を採用してもよい。この場合、停車時間が所定時間以上であるときには駐車場所またはそれに順ずる場所に停車しているとみなす。
【0386】
ステップ1110Bで、車両が自宅またはその付近にあると判定された場合は、前述のステップ1111、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0387】
ステップ1110Bで車両が当該自宅またはその付近にないと判定された場合は、前述のステップ1112、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0388】
このように、ステップ1110Bで車両が自宅またはその付近にあると判定された場合には、ステップ1111の判定処理により、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、車両が当該自宅またはその付近にないと判定された場合よりも高い判定基準(1.5[MPa])に基づいて行われ、低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、車両が当該自宅またはその付近にないと判定された場合よりも高い判定基準(1.8[MPa])に基づいて行われることになる。
【0389】
本実施形態によれば、エアコンECU50は、プレ空調運転及びプレ空調以外の空調運転の少なくともいずれか一方において、車両が予め設定されている駐車場所にあると判定した場合、当該駐車場所から所定の距離以内にあると判定した場合、及び停車時間が所定時間以上継続中と判定した場合、のいずれかであるときは、当該判定結果以外の判定がされた場合と比べて、室外ファン6の出力量を低減するものである(ステップ1114)。
【0390】
この制御によれば、空調運転時に、車両が所定の駐車場、自宅またはその付近にあると判定されたときにはさらにこれ以外の判定がされたときに比べて室外ファン6の出力量を低減することにより、駐車場付近での周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図ることができる。また、車両が所定の駐車場等及びその付近にあるときには、プレ空調運転時に限られず、乗車中空調運転時であっても周囲環境に対する配慮を優先した空調を提供することができる。
【0391】
また、車両が所定の駐車場等及びその付近にあると判定されたときは、当該冷媒圧力の判定基準は当該判定がされない場合よりも高いため、駐車場等付近にある車両の室外ファン6の出力量は、当該判定がされない場合よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、所定の駐車場等及びその付近にある場合の方が低圧力に判定されやすい。よって、当該車両の室外ファン6の出力量は、増加する方向に制御され難くなり、当該判定がされない場合に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば所定の駐車場等及びその付近にある場合の方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。したがって、所定の駐車場等及びその付近にある場合に、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファン6の出力量増加が抑制されるため、冷凍サイクル1Aの負荷が増加するようなことがあっても駐車場等付近では乗員不在時に車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮した空調運転を実施できる。
【0392】
(第19実施形態)
第19実施形態は、上記第15実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の変形例である。第19実施形態で説明するステップ10のサブルーチンは上記の第6実施形態と同様の処理手順によって行われる。したがって第19実施形態のステップ10のサブルーチンは、図21に示すフローチャートにしたがった各処理を行うものであり、同様の作用効果を奏する。
【0393】
(第20実施形態)
第20実施形態では、上記第16実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図38にしたがって説明する。図38は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0394】
第20実施形態における空調制御の処理フローは、第16実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図38のステップ1110Fの判定処理のみが異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第15実施形態及び第16実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0395】
第20実施形態の室外ファンの出力決定処理では、第16実施形態の場合と同様に、冷凍サイクル1Aを流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。さらに、室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、空調運転を行うときの車両の速度状態に応じて所定のレベルに設定されるようになっている。
【0396】
図38に示すように、まず、ステップ1110Fで、車速が発進してから0km/hから1km/h以上に達した後停車する回数を検出し、この回数が1回以内であるか否かを判定する。エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報から、当該1km/h後停車の回数を検出する。ステップ1110Fの判定処理によれば、車両が一旦発進後、駐車場を出るときや、信号、交差点等で停車する回数が1回以内であると、車両が駐車場(自宅を含む)の周辺に存在していると判定することができる。
【0397】
このようにステップ1110Fの判定処理において、YESと判定されると、車両が駐車場付近に存在しているため、ステップ1111のマップに示すように、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が他の車速条件と判定された場合よりも高い判定基準(1.5[MPa])に基づいて行われ、低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が他の車速条件と判定された場合よりも高い判定基準(1.8[MPa])に基づいて行われることになる。そして、以降の各処理により、室外ファン6の出力量を低減する制御が実施される。
【0398】
ステップ1110Fの判定処理において、NOと判定されると、前述のステップ1112、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0399】
また、エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報からイグニッションスイッチのオン後の経過時間を検出し、ステップ1110Fでの判定処理において、「イグニッションスイッチのオン後の経過時間が所定時間以内であるか否か」を判定基準に採用してもよい。そして、当該経過時間が所定時間以内である場合は、車両が駐車場(自宅を含む)の周辺に存在していると判定することができる。
【0400】
本実施形態によれば、エアコンECU50は、乗車中空調運転において、車両が所定の車速条件を満たす場合(ステップ1110F)、イグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合のいずれかであるときは、当該場合以外のときと比べて、室外ファン6の出力量を低減するものである。この制御によれば、乗車中空調運転の初期段階においても、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあると想定される場合、車両の走行後間もない場合等、徐行速度で走行するなど周辺環境への騒音が懸念されるときには、さらに室外ファン6の出力量を低減することにより、さらに周囲環境に対する配慮を優先した空調を提供することができ、騒音低減を図ることができる。
【0401】
また、空調運転において車両が所定の車速条件を満たす場合(ステップ1110F)、イグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合のいずれかであるときは、当該冷媒圧力の判定基準がこれ以外の場合よりも高いため、室外ファン6の出力量は、これ以外の場合よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、車両が駐車場等周辺にあるときの方がこれ以外の場合よりも低圧力に判定されやすい。よって、車両が駐車場等周辺にあるときの室外ファン6の出力量は、増加する方向に制御され難くなり、これ以外の場合に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば車両が駐車場等周辺にあるときの方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファン6の出力量増加が、車両が駐車場等周辺にあるときに抑制されるため、冷凍サイクル1Aの負荷が増加するようなことがあっても乗員不在時に車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮した空調運転を実施できる。
【0402】
(第21実施形態)
第21実施形態では、上記第15実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける圧縮機回転数決定の変形例を図39にしたがって説明する。図39は、空調制御のメインルーチンにおける圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)を示すフローチャートである。
【0403】
第21実施形態における空調制御の処理フローは、第8実施形態で説明した図23に示す空調制御の処理フローに対して、図39のステップ1010Aの処理が異なっている。なお、その他の処理については、第8実施形態と同様である。
【0404】
図39に示すように、ステップ1000において回転数変化量ΔfCを演算した後、ステップ1010Aで、車速が発進してから0km/hから1km/h以上に達した後停車する回数を検出し、この回数が1回以内であるか否かを判定する。このステップ1010Aでの判定処理は、前述の第20実施形態におけるステップ1110Fの判定処理と同様に行う。
【0405】
ステップ1010Aの判定処理においてYESと判定されると、車両が駐車場付近に存在しているため、前述のステップ1013、ステップ1014、ステップ1015の順に演算を行い、圧縮機の最高回転数が低く設定されるようになる。ステップ1010Aの判定処理においてNOと判定されると、前述のステップ1012、ステップ1014、ステップ1015を順に実行することにより、車両が駐車場付近に存在する場合よりも、圧縮機の最高回転数が高く設定されるようになる。
【0406】
この実施形態によれば、乗車中空調運転の初期段階においても、車両が所定の駐車場、自宅、またはその付近にあると想定される場合、車両の走行後間もない場合等、徐行速度で走行するなど周辺環境への騒音が懸念されるときには、さらに圧縮機2の出力量を低減することにより、さらに周囲環境に対する配慮を優先した空調を提供することができ、騒音低減を図ることができる。
【0407】
(第22実施形態)
第21実施形態では、上記第16実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図40にしたがって説明する。図40は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0408】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第16実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、図40のステップ1110Dの判定処理のみが異なっている。なお、その他の処理については、第16実施形態と同様である。以下、特に説明しない処理手順、作動、及び作用効果は、第15及び第16実施形態の説明と同様である。
【0409】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理について図40にしたがって説明する。ここでは、第16実施形態の場合と同様に、冷凍サイクル1Aを流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。さらに、室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、空調運転を行うときの時間帯に応じて所定のレベルに設定されるようになっている。
【0410】
図40に示すように、ステップ1110Dで、走行状態が電動モータを駆動源にして走行する電気走行モード(以下、EVモードともいう)であるか否かを判定する。エアコンECU50は、ハイブリッドECU70等から送信される車両情報から、走行モードがEVモードであることを検出できる。
【0411】
このようにステップ1110Dの判定処理において、EVモードであると判定されると、ステップ1111のマップに示すように、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、EVモード以外(例えば、エンジン30及び電動モータを駆動源にして走行するハイブリッド走行モード(以下、HEVモードともいう))と判定された場合よりも高い判定基準(1.5[MPa])に基づいて行われる。さらに低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、EVモード以外と判定された場合よりも高い判定基準(1.8[MPa])に基づいて行われることになる。そして、以降の前述のステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、室外ファン6の出力量を低減する制御が実施される。
【0412】
ステップ1110Dの判定処理において、EVモード以外の例えばHEVモードであると判定されると、前述のステップ1112、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0413】
本実施形態によれば、EVモード時にHEVモード時に比べて室外ファン6の出力量を低減することにより、比較的静かなEVモードにおける空調装置の相対的騒音レベルを下げることができる。これは、ハイブリッド車両においてはEVモードのときにエンジン30が停止しているため、相対的に空調装置から発生する騒音が車外で聞こえ易くなり、空調装置の作動音が周囲環境に与える影響が大きいからである。したがって、ハイブリッド車両においてEVモードのときに上記制御を実施することにより、さらに一層の周囲環境に対する配慮を優先して騒音低減を図る車両用空調装置を提供できる。
【0414】
また、空調運転においてEVモードである場合(ステップ1110D,1111)は、当該冷媒圧力の判定基準がEVモード以外の場合よりも高いため、EVモードのときの室外ファン6の出力量は、EVモード以外の場合よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、走行モードがEVモードのときの方が低圧力に判定されやすい。よって、EVモード時の室外ファン6の出力量は、増加する方向に制御され難くなり、EVモード以外の場合に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならばEVモードのときの方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファン6の出力量増加が、EVモードのときに抑制されるため、冷凍サイクル1Aの負荷が増加するようなことがあっても乗員不在時に車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮した空調運転を実施できる。
【0415】
(第23実施形態)
第23実施形態は、上記第15実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の変形例である。第23実施形態で説明するステップ10のサブルーチンは上記の第10実施形態と同様の処理手順によって行われる。したがって第23実施形態のステップ10のサブルーチンは、図24に示すフローチャートにしたがった各処理を行うものであり、同様の作用効果を奏する。
【0416】
(第24実施形態)
第24実施形態では、上記第16実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける室外ファンの出力量決定の変形例を図41にしたがって説明する。図41は空調制御のメインルーチンにおける室外ファン6の出力決定処理(ステップ11)の詳細を示すフローチャートである。
【0417】
本実施形態における空調制御の処理フローは、第16実施形態で説明した空調制御の処理フローに対して、ステップ1110の判定処理で「プレ空調である」と判定された場合に図41のステップ1110Eの判定処理を実行する点が異なっている。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の処理手順については、第15実施形態及び第16実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0418】
本実施形態の室外ファンの出力決定処理について図41にしたがって説明する。ここでは、第16実施形態の場合と同様に、冷凍サイクル1Aを流れる高圧側の冷媒圧力Preに基づいて室外ファン6の出力量を増加させるように制御する。さらに、室外ファン6の出力量を増加させる冷媒圧力の判定基準は、プレ空調運転時であって、かつ後述する低騒音モードが設定されているかどうかに応じて所定のレベルに設定されるようになっている。
【0419】
図41に示すように、まずステップ1110で、ステップ1の処理結果としてプレ空調フラグが立っているか否かを判定する。プレ空調フラグが立っていない場合は、ステップ1112にて冷房の空調負荷を判定する。プレ空調フラグが立っている場合は、ステップ1110Eで「低騒音モード」が設定されているか否かを判定する。低騒音モードは、プレ空調時に外部への騒音を低減する空調運転を実施するモードであり、ユーザーが操作パネル51に設けられた所定の操作部を操作したり、予めプログラミングによりモード設定されていたりすることにより、設定することができる。
【0420】
このようにステップ1110Eの判定処理において、低騒音モードが設定されていると判定されると、ステップ1111のマップに示すように、高圧力判定から低圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、低騒音モードが非設定である場合よりも高い判定基準(1.5[MPa])に基づいて行われる。さらに低圧力判定から高圧力判定に切り替わる冷媒圧力の判定が、低騒音モードが非設定である場合よりも高い判定基準(1.8[MPa])に基づいて行われることになる。そして、以降の各処理により、冷房サイクル時の室外ファン6の出力量を低減する制御が実施される。
【0421】
ステップ1110Eの判定処理において、低騒音モードが非設定であると判定されると、前述のステップ1112、ステップ1113、ステップ1114を順に実行することにより、室外ファン6の出力量がOFF,LO,HIのレベルのいずれかに決定され、室外ファン6の出力量決定処理を終了する。
【0422】
本実施形態によれば、当該低騒音モードを設定することによってプレ空調時に室外ファン6の出力量を低減する制御が行われるため、ユーザーが自宅の環境、駐車場所の周囲環境等に応じて、当該低騒音モードを設定して室外ファン6の出力量を調整することにより、プレ空調時の周囲に与える静穏性を調節することができる。したがって、周囲環境への静穏性、プレ空調による車室内の快適性向上のいずれを優先するかが選択可能であって、ユーザーの要求にも対応可能な車両用空調装置を提供できる。
【0423】
また、空調運転において低騒音モードが設定されている場合(ステップ1110E、ステップ1111)は、当該冷媒圧力の判定基準が低騒音モード非設定の場合よりも高いため、低騒音モード設定の場合の室外ファン6の出力量は、低騒音モード非設定の場合よりも高い冷媒圧力において増加するようになる。このため、冷媒圧力を用いた空調負荷の判定において低圧力判定がなされ易い傾向になり、低騒音モード設定の場合の方が低圧力に判定されやすい。よって、低騒音モード非設定の場合の室外ファン6の出力量は、増加する方向に制御され難くなり、低騒音モード非設定の場合に比べて低く抑えられる。例えば、同じ冷媒圧力値ならば低騒音モード設定の場合の方が室外ファン6の出力量を低減する制御が実施され易い。したがって、冷媒圧力の上昇に伴う室外ファン6の出力量増加が、低騒音モード設定のときに抑制されるため、冷凍サイクル1Aの負荷が増加するようなことがあっても乗員不在時に車外への騒音を抑制することができ、周囲環境に配慮した空調運転を実施できる。
【0424】
(第25実施形態)
第25実施形態は、上記第15実施形態に対して、空調制御メインルーチンにおける圧縮機回転数等の決定を行う処理(ステップ10)の変形例である。第25実施形態で説明するステップ10のサブルーチンは上記の第12実施形態と同様の処理手順によって行われる。したがって第25実施形態のステップ10のサブルーチンは、図27に示すフローチャートにしたがった各処理を行うものであり、同様の作用効果を奏する。
【0425】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0426】
上記の、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態、第7実施形態、第9実施形態及び第11実施形態の各実施形態は、少なくとも二つの実施形態を組み合わせて実施することが可能である。このように複数の実施形態を組み合わす場合には、いずれかの実施形態によって求められた室外ファン6の出力量を採用するものである。
【0427】
また、第1実施形態、第6実施形態、第8実施形態、第10実施形態、第12実施形態、及び第14実施形態の各実施形態は、少なくとも二つの実施形態を組み合わせて実施することが可能である。このように複数の実施形態を組み合わす場合には、いずれかの実施形態によって求められた圧縮機2の回転数を採用するものである。
【0428】
また、上記実施形態において電気式補助熱源としてPTCヒータ24を採用しているが、これに限定するものではない。電気式補助熱源は、通電されることにより、発熱体等から発熱して周囲の空気や物体を加熱できれば他の装置でもよい。
【0429】
また、上記実施形態では、PTCヒータ24を凝縮器3よりも送風空気の下流側に配置しているが、凝縮器3よりも送風空気の上流側に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0430】
1…ヒートポンプサイクル(サイクル)
1A…冷凍サイクル(サイクル)
2…圧縮機
3…凝縮器(加熱用熱交換器)
5…室外熱交換器
6…室外ファン
8…蒸発器(冷却用熱交換器)
10…第1膨張弁(減圧装置)
21…室内用ブロワ(室内用送風手段)
24…PTCヒータ(電気式補助熱源)
30…エンジン
50…エアコンECU(制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクル(1,1A)を流れる冷媒の作用により乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置であって、
前記冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、
前記車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、
前記室外ファンの作動を制御する制御装置(50)と、を備え、
前記制御装置は、前記乗車前空調運転における前記室外ファンの出力量を乗車中空調運転時よりも低減するように制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記サイクルを流れる高圧側の冷媒圧力に基づいて前記室外ファンの出力量を増加させるように制御し、
前記室外ファンの出力量を増加させる前記冷媒圧力の判定基準は、前記乗車前空調運転時において前記乗車中空調運転時よりも高く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御装置は、早朝時または夜間時であるか否かを判定する時間帯判定手段(S1110A,S1120A)を備え、
前記制御装置は、前記時間帯判定手段において早朝時または夜間時であると判定された場合、前記室外ファンの出力量を早朝時または夜間時以外の時間帯であると判定された場合よりも低減することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記制御装置は、要求される熱源の出力に応じて車両のエンジン(30)の起動を要求する信号を出力し、
前記制御装置は、前記乗車前空調運転時には前記乗車中空調運転時と比べて前記エンジン起動の要求信号の出力頻度を低くすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記エンジンを起動するか否かを判定するエンジン起動判定手段(S140〜S144)を備え、
前記エンジン起動判定手段では前記乗車前空調運転時は前記エンジンを起動しないと判定することを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
さらに前記乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、
前記制御装置は、前記低騒音モードが設定された前記乗車前空調運転時に、前記低騒音モードが設定されていない場合の前記乗車前空調運転時に比べて、前記エンジン起動の要求信号の出力頻度を低減するように制御することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記車室内への送風空気を与える室内用送風手段(21)を備え、
前記圧縮機または前記室内用送風手段の作動は、前記制御装置によって制御され、
前記制御装置は、前記サイクルを流れる高圧側の冷媒圧力が所定値以上であるときに、前記圧縮機の出力量または前記室内用送風手段の出力量を低減させるように制御することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記圧縮機の作動は前記制御装置によって制御され、
前記制御装置は、前記乗車前空調運転及び前記乗車中空調運転の少なくともいずれか一方において、前記車両が予め設定されている駐車場所にあると判定した場合、当該駐車場所から所定の距離以内にあると判定した場合、及び停車時間が所定時間以上継続中と判定した場合、のいずれかであるときは、当該判定結果以外の判定がされたときと比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記圧縮機の作動は前記制御装置によって制御され、
前記制御装置は、前記乗車中空調運転において、前記車両が所定の車速条件を満たす場合、及びイグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合、のいずれかであるときは、当該場合以外のときと比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記車両は、エンジン(30)及び電動モータを駆動源とするハイブリッド車両であり、
前記圧縮機の作動は前記制御装置によって制御され、
前記制御装置は、前記乗車中空調運転において、前記電動モータを駆動源にして走行する電気走行モードのときに、前記エンジン及び前記電動モータを駆動源にして走行するハイブリッド走行モードのときに比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
さらに前記乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、
前記圧縮機の作動は前記制御装置によって制御され、
前記制御装置は、前記低騒音モードが設定された前記乗車前空調運転時に、前記低騒音モードが設定されていない場合の前記乗車前空調運転時に比べて、前記室外ファンの出力量、前記圧縮機の出力量、のうちの少なくとも一方を低減するように制御することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
さらに、前記車室内への送風空気を加熱するために通電により発熱する電気式補助熱源(24)と、前記車両の窓に装着されて通電により発熱する電気抵抗体と、を備え、
前記制御装置は、前記乗車前空調運転において、前記車両の空調運転に使用可能な許可電力と前記乗車前空調運転で消費される使用電力との差が予め設定された電力以上である場合には、前記電気式補助熱源または前記電気抵抗体に通電することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
サイクルを流れる冷媒の作用により乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置であって、
前記冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、
前記車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、
前記室外ファンまたは前記圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、
前記制御装置は、乗車中空調運転において、前記車両が所定の車速条件を満たす場合、イグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合、及び前記車両が予め設定されている駐車場所から所定の距離以内にある場合、のいずれかであるときは、当該場合以外のときと比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項14】
サイクルを流れる冷媒の作用により乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置であって、
前記冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、
前記車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、
前記室外ファンまたは前記圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、
前記車両は、エンジン(30)及び電動モータを駆動源とするハイブリッド車両であり、
前記制御装置は、前記車室内の空調運転において、前記電動モータを駆動源にして走行する電気走行モードのときに、前記エンジン及び前記電動モータを駆動源にして走行するハイブリッド走行モードのときと比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項15】
サイクルを流れる冷媒の作用により乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置であって、
前記冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、
前記車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、
前記室外ファンまたは前記圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、
前記制御装置は、前記車室内の空調運転において、前記車両が予め設定されている駐車場所にあると判定した場合、当該駐車場所から所定の距離以内にあると判定した場合、及び停車時間が所定時間以上継続中と判定した場合、のいずれかであるときは、当該判定以外のときと比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項16】
サイクルを流れる冷媒の作用により乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置であって、
前記冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、
前記車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、
要求される熱源の出力量に応じて車両のエンジンの起動を要求する信号を出力する制御装置(50)と、を備え、
前記制御装置は、前記乗車前空調運転時には乗車中空調運転時と比べて前記エンジン起動の要求信号の出力頻度を低くすることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項17】
前記制御装置は、前記エンジンを起動するか否かを判定するエンジン起動判定手段(S140〜S144)を備えており、
前記エンジン起動判定手段では前記乗車前空調運転時に前記エンジンを起動しないと判定することを特徴とする請求項16に記載の車両用空調装置。
【請求項18】
前記車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風し、前記制御装置によって作動が制御される室外ファン(6)を備え、
さらに前記乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、
前記制御装置は、前記低騒音モードが設定された前記乗車前空調運転時に、前記低騒音モードが設定されていない場合の前記乗車前空調運転時に比べて、前記室外ファンの出力量、前記圧縮機の出力量、前記エンジン起動の要求信号の出力頻度のうちの少なくとも一方を低減するように制御することを特徴とする請求項16または請求項17に記載の車両用空調装置。
【請求項19】
ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置であって、
前記ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、
前記車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、
前記冷房サイクル運転及び前記暖房サイクル運転の少なくとも一方を制御すると共に、前記室外ファンの作動を制御する制御装置(50)と、を備え、
前記制御装置は、前記乗車前空調運転における前記室外ファンの出力量を乗車中空調運転時よりも低減するように制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項20】
前記制御装置は、前記ヒートポンプサイクルを流れる高圧側の冷媒圧力に基づいて前記室外ファンの出力量を増加させるように制御し、
前記室外ファンの出力量を増加させる前記冷媒圧力の判定基準は、前記乗車前空調運転時において前記乗車中空調運転時よりも高く設定されていることを特徴とする請求項19に記載の車両用空調装置。
【請求項21】
前記制御装置は、早朝時または夜間時であるか否かを判定する時間帯判定手段(S1110A,S1120A)を備え、
前記制御装置は、前記時間帯判定手段において早朝時または夜間時であると判定された場合、前記室外ファンの出力量を早朝時または夜間時以外の時間帯であると判定された場合よりも低減することを特徴とする請求項19または請求項20に記載の車両用空調装置。
【請求項22】
前記制御装置は、前記暖房サイクル運転時に暖房に要求される出力に応じて車両のエンジン(30)の起動を要求する信号を出力し、
前記制御装置は、前記乗車前空調運転時には前記乗車中空調運転時と比べて前記エンジン起動の要求信号の出力頻度を低くすることを特徴とする請求項19から請求項21のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項23】
前記制御装置は、前記暖房サイクル運転時に車両のエンジンを起動するか否かを判定するエンジン起動判定手段(S140〜S144)を備え、
前記エンジン起動判定手段では前記乗車前空調運転時は前記エンジンを起動しないと判定することを特徴とする請求項22に記載の車両用空調装置。
【請求項24】
さらに前記乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、
前記制御装置は、前記低騒音モードが設定された前記乗車前空調運転時に、前記低騒音モードが設定されていない場合の前記乗車前空調運転時に比べて、前記エンジン起動の要求信号の出力頻度を低減するように制御することを特徴とする請求項22または請求項23に記載の車両用空調装置。
【請求項25】
前記制御装置は、前記ヒートポンプサイクルを流れる高圧側の冷媒圧力に基づいて前記室外ファンの出力量を増加させるように制御し、
前記室外ファンの出力量を増加させる前記冷媒圧力の判定基準は、前記暖房サイクル運転時において前記冷房サイクル運転時よりも高く設定されていることを特徴とする請求項19から請求項24のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項26】
前記車室内への送風空気を与える室内用送風手段(21)を備え、
前記圧縮機または前記室内用送風手段の作動は、前記制御装置によって制御され、
前記制御装置は、前記ヒートポンプサイクルを流れる高圧側の冷媒圧力が所定値以上であるときに、前記圧縮機の出力量または前記室内用送風手段の出力量を低減させるように制御することを特徴とする請求項19から請求項25のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項27】
前記圧縮機の作動は前記制御装置によって制御され、
前記制御装置は、前記乗車前空調運転及び前記乗車中空調運転の少なくともいずれか一方において、前記車両が予め設定されている駐車場所にあると判定した場合、当該駐車場所から所定の距離以内にあると判定した場合、及び停車時間が所定時間以上継続中と判定した場合、のいずれかであるときは、当該判定結果以外の判定がされたときと比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする請求項19から請求項26のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項28】
前記圧縮機の作動は前記制御装置によって制御され、
前記制御装置は、前記乗車中空調運転において、前記車両が所定の車速条件を満たす場合、及びイグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合、のいずれかであるときは、当該場合以外のときと比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする請求項19から請求項27のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項29】
前記車両は、エンジン(30)及び電動モータを駆動源とするハイブリッド車両であり、
前記圧縮機の作動は前記制御装置によって制御され、
前記制御装置は、前記乗車中空調運転において、前記電動モータを駆動源にして走行する電気走行モードのときに、前記エンジン及び前記電動モータを駆動源にして走行するハイブリッド走行モードのときに比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする請求項19から請求項28のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項30】
さらに前記乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、
前記圧縮機の作動は前記制御装置によって制御され、
前記制御装置は、前記低騒音モードが設定された前記乗車前空調運転時に、前記低騒音モードが設定されていない場合の前記乗車前空調運転時に比べて、前記室外ファンの出力量、前記圧縮機の出力量、のうちの少なくとも一方を低減するように制御することを特徴とする請求項19から請求項29のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項31】
前記圧縮機の回転数は前記制御装置によって制御され、
前記暖房サイクル運転における前記圧縮機の最高回転数は、前記冷房サイクル運転における前記圧縮機の最高回転数よりも低く設定されることを特徴とする請求項19から請求項30のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項32】
さらに、前記暖房サイクル運転時に前記冷媒の放熱作用によって前記車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(3)が配置される通路に設けられて、通電により発熱する電気式補助熱源(24)と、前記車両の窓に装着されて通電により発熱する電気抵抗体と、を備え、
前記制御装置は、前記乗車前空調運転において、前記車両の空調運転に使用可能な許可電力と前記乗車前空調運転で消費される使用電力との差が予め設定された電力以上である場合には、前記電気式補助熱源または前記電気抵抗体に通電することを特徴とする請求項19から請求項31のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項33】
ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、車室内の空調運転を実施する車両用空調装置であって、
前記ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、
前記車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、
前記冷房サイクル運転及び前記暖房サイクル運転の少なくとも一方を制御すると共に、前記室外ファンまたは前記圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、
前記制御装置は、乗車中空調運転において、前記車両が所定の車速条件を満たす場合、イグニッションスイッチのオン後所定時間内である場合、及び前記車両が予め設定されている駐車場所から所定の距離以内にある場合、のいずれかであるときは、当該場合以外のときと比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項34】
ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、車室内の空調運転を実施する車両用空調装置であって、
前記ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、
前記車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、
前記冷房サイクル運転及び前記暖房サイクル運転を制御すると共に、前記室外ファンまたは前記圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、
前記車両は、エンジン(30)及び電動モータを駆動源とするハイブリッド車両であり、
前記制御装置は、前記車室内の空調運転において、前記電動モータを駆動源にして走行する電気走行モードのときに、前記エンジン及び前記電動モータを駆動源にして走行するハイブリッド走行モードのときと比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項35】
ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、車室内の空調運転を実施する車両用空調装置であって、
前記ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、
前記車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風する室外ファン(6)と、
前記冷房サイクル運転及び前記暖房サイクル運転を制御すると共に、前記室外ファンまたは前記圧縮機の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、
前記制御装置は、前記車室内の空調運転において、前記車両が予め設定されている駐車場所にあると判定した場合、当該駐車場所から所定の距離以内にあると判定した場合、及び停車時間が所定時間以上継続中と判定した場合、のいずれかであるときは、当該判定以外のときと比べて、前記室外ファンの出力量または前記圧縮機の出力量を低減することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項36】
ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、車室内の空調運転を実施する車両用空調装置であって、
前記ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、
前記冷房サイクル運転及び前記暖房サイクル運転を制御すると共に、前記圧縮機の回転数を制御する制御装置(50)と、を備え、
前記暖房サイクル運転における前記圧縮機の最高回転数は、前記冷房サイクル運転における前記圧縮機の最高回転数よりも低く設定されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項37】
ヒートポンプサイクル(1)の冷媒流れを制御することにより実施される冷房サイクル運転及び暖房サイクル運転の少なくとも一方によって、乗員の乗車前に車室内を空調する乗車前空調運転を実施する車両用空調装置であって、
前記ヒートポンプサイクルの冷媒を吸入し吐出する圧縮機(2)と、
前記冷房サイクル運転及び前記暖房サイクル運転を制御すると共に、前記暖房サイクル運転時に暖房に要求される出力量に応じて車両のエンジンの起動を要求する信号を出力する制御装置(50)と、を備え、
前記制御装置は、前記乗車前空調運転時には乗車中空調運転時と比べて前記エンジン起動の要求信号の出力頻度を低くすることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項38】
前記制御装置は、前記暖房サイクル運転時に車両のエンジンを起動するか否かを判定するエンジン起動判定手段(S140〜S144)を備えており、
前記エンジン起動判定手段では前記乗車前空調運転時に前記エンジンを起動しないと判定することを特徴とする請求項37に記載の車両用空調装置。
【請求項39】
前記車室外に設けられる室外熱交換器内を流れる冷媒との間で熱交換する空気を送風し、前記制御装置によって作動が制御される室外ファン(6)を備え、
さらに前記乗車前空調運転時に外部への騒音を低減する空調運転が設定可能な低騒音モードを有し、
前記制御装置は、前記低騒音モードが設定された前記乗車前空調運転時に、前記低騒音モードが設定されていない場合の前記乗車前空調運転時に比べて、前記室外ファンの出力量、前記圧縮機の出力量、前記エンジン起動の要求信号の出力頻度のうちの少なくとも一方を低減するように制御することを特徴とする請求項37または請求項38に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2011−31876(P2011−31876A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115628(P2010−115628)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】