説明

車両用空調装置

【課題】助手席側や後席側の吹出部を完全に閉塞し運転席のみに集中的に暖房するドア機構が無くても、車両用空調装置全体の暖房熱量を低減し、車両の燃費向上を実現させることが出来る車両用空調装置を得る。
【解決手段】1席優先スイッチ65のON等で、運転席のみに乗員が在席していると判定し(S32、S42)、かつ暖房運転判定手段(S33、S44)において暖房条件が成立したと判定された場合に、独立したエアミックスドアから成る吹出温度調整機構15、16を制御し、助手席側の吹出温度Tpを運転席側の吹出温度Tdよりも低くするように制御する。これにより、助手席等の運転席以外の箇所は、運転者のために使用する車両用空調装置の放熱量よりも小さい放熱量となるようにすることが出来、運転者を優先的に暖房しながら、車両全体の暖房熱量を低減し車両の燃費向上を実現させることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内への吹出空気の吹出温度を左右独立に調整可能な車両用空調用装置において、乗員在席状態に応じて運転者を優先して空調することが出来る車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行用のエンジンと走行用のモータとを併用するハイブリッド車両(HV)が普及している。このHVにおいては、エンジンの高効率化に伴って暖房時のエンジン負荷を削減する傾向にある。つまり、冬季といえども、燃費向上のためには暖房のためのエンジン負荷を下げ、できるだけ暖房熱量を削減することが求められている。
【0003】
また、近年、エンジンの高効率化によって、暖房のための熱源を確保しにくいという低熱源が問題になっている。このような状況下にあって、従来、特許文献1に記載の車両用空調装置が知られている。
【0004】
この特許文献1の装置は、車室内の搭乗人員に関係なく一定の冷暖房能力で定められた位置から空調空気を吹き出すと、搭乗者が存在しない位置にも空調空気が吹き出され、搭乗者が存在する位置がすみやかに冷暖房されにくいという問題に鑑みて、搭乗者の在席状態を検出して、その在席信号に応じて、冷暖房能力を定め、かつ、吹き出し状態の制御を行なうものである。
【0005】
このために、上記特許文献1では、搭乗者の心拍、呼吸に伴う細体動を検出して在席状態を判定する在席検出手段を有し、在席検出手段からの信号に応じて冷暖房能力および吹出し状態を制御するものである。
【0006】
具体的には、在席検出手段が搭乗者の心拍、呼吸に伴う細体動に基づいて在席の有無を知る。そして、在席が検出された場合、在席人数に応じて冷暖房能力を決定し、在席者の位置のみに空調空気を吹き出して冷暖房を行なう。乗員判定により、運転者以外の乗員が不在と判断された場合(1席時)は、運手席の箇所のみを集中して空調するものである。
【0007】
また、従来、特許文献2に記載の車両用空調装置が知られている。この特許文献2の装置は、運転席空間を効率良く設定温度に近付けることのできる車両用空調装置を提供するために、制御手段は、着座検出手段の検出結果より、乗員が運転者のみと判定された場合、運転席空間を急速に温度調節する運転席集中モードで運転して、複数の吹出口のうち、運転席空間以外に開口した吹出口を、吹出口切替手段にて全て閉じて(シャットして)、空調運転を行うものである。これにより特許文献2の装置では、運転席空間にだけ空調風を集中的に吹出すため、運転席空間を効率良く設定温度に近付けることができる。
【0008】
更に、従来、特許文献3に記載の車両用空調装置が知られている。この特許文献3の装置は、運転席と助手席というような2箇所のゾーンに向けてそれぞれ独立して空調を行うと、運転席と助手席の一方のみにおいて、送風モードをあるモードから他のモードに手動により変更して、通気抵抗が変化すると、全体の通気抵抗が変化することから、他方における吹出風量が変化するという問題に対処したものである。
【0009】
このために、特許文献3の装置では、1つのゾーンに対する吹出モードを切り替えた際に、他方のゾーンに対する風量が変化することがないようにするために、自動制御の実行中に、手動により2つのゾーンの一方のみの吹出モードが変更されたときには、他方の吹出モードを変更させることなく、この一方の吹出モード変更により他方のゾーンに向けて吹出す吹出風量が変化しないように、予め記憶された通気抵抗に基づいて、ファンモータの駆動を補正する風量補正演算回路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2960243号公報
【特許文献2】特開2008−296717号公報
【特許文献3】特許第3573682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1、及び特許文献2の技術によると、1席集中空調を行なうことが出来る。この1席集中空調により、省動力を実現することが出来る。この公知の1席集中空調の課題は、助手席側や後席側の吹出部を完全にシャット(閉塞)して運転席のみに集中させる機構が必要となり、構造複雑化及び部品費用が余分に必要である点にある。これによって空調ユニットが高価になるという問題がある。
【0012】
次に、特許文献3は、手動で車室内ゾーンの一方のみの吹出モードを変更した時に、他方の車室内ゾーンの風量が変化しないようにファンの駆動を補正制御して、運転者側風量変化による違和感を補正する内容である。この特許文献2の空調制御では、空調風の熱量を運転席側と助手席側とで変更する機能は持っていない。
【0013】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、助手席側や後席側の吹出部を完全にシャット(閉塞)し運転席のみに集中的に暖房する機構が無くても、車両用空調装置全体の暖房熱量を低減し、車両の燃費向上を実現させることが出来る車両用空調装置を得ることにある。
【0014】
従来技術として列挙された特許文献の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、内気または外気から導入した空気を内部の暖房用熱交換器(42)により空調風に変換して車両の乗員が着座する車室内に吹出口から吹出す空調ユニット(1)を供え、車室内の運転席側の吹出温度調整機構(15)及び助手席側の吹出温度調整機構(16)を空調ユニット(1)内に独立に備えた車両用空調装置であって、
運転席の在席の有無を判定し運転席のみに乗員が在席していることを判定するする運転席在席判定手段(S32、S42)と、運転席側の空調状態が暖房運転か否かを判定する暖房運転判定手段(S33、S44)と、運転席在席判定手段(S32、S42)が運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定しているときに、吹出温度調整機構(15、16)を制御し、運転席に在席している乗員の快適性を損なわない範囲で、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように制御して運転席優先暖房を行なう制御手段(10)とを備えることを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、運転席在席判定手段(S32、S42)が運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定しているときに、吹出温度調整機構(15、16)を制御し、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように制御するから、助手席側や後席側の吹出部を完全にシャットして運転席のみに集中させる機構が無くても、冬季に運転者のみが運転席に在席していると判定がされた場合、運転席以外の箇所は、運転者のために使用する車両用空調装置の放熱量よりも小さい放熱量となるように、吹出温度調整機構(15、16)を制御することが出来、運転者を優先的に暖房しながら、車両全体の暖房熱量を低減し車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【0017】
請求項2に記載の発明では、更に、吹出温度調整機構(15、16)は、暖房用熱交換器(42)を通過する風量と通過しない風量を温風吹出温度調整ドアにより制御する機構からなり、温風吹出温度調整ドアは運転席側温風吹出温度調整ドア(15)と助手席側温風吹出温度調整ドア(16)とから成ることを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、吹出温度調整機構(15、16)は、暖房用熱交換器(42)を通過する風量と通過しない風量を温風吹出温度調整ドアにより制御する機構からなり、温風吹出温度調整ドアは運転席側温風吹出温度調整ドア(15)と助手席側温風吹出温度調整ドア(16)とから成るから、これらの運転席側温風吹出温度調整ドア(15)と助手席側温風吹出温度調整ドア(16)とを個々に制御することにより、冬季に運転者のみが運転席に在席していると判定がされた場合、運転席以外の箇所は、運転者のために使用する車両用空調装置の放熱量よりも小さい放熱量となるようにすることが出来、運転席側以外の助手席側や後席側の吹出部を完全にシャットする機構が無くても、車両全体の暖房熱量を低減し、車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【0019】
請求項3に記載の発明では、更に、空調ユニット(1)は内外気2層ユニットから成り、外気を空調ユニット(1)内に導入する外気導入時は空調ユニット(1)から吹出す空調風が流れる領域を車室内の上層部だけとし、内気を空調ユニット内に導入する内気導入時は空調ユニット(1)から吹出す空調風が流れる領域を車室内の乗員の足元が位置する車室内の下層部だけとすることを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、運転席在席判定手段(S32、S42)が運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定しているときに、吹出温度調整機構(15、16)を制御し、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように吹出温度調整機構(15、16)を制御するシステムであるが、空調ユニット(1)は足元に向けた下層部の吹出は内気循環になるため、従来のような全外気導入に対しさらに車両全体の暖房熱量を低減し、車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【0021】
請求項4に記載の発明では、更に、空調ユニット(1)は吹出口を成す助手席側乗員の顔面方向に空調風を吹出し助手席側フェイス吹出口(31a、31b)または車室内の窓に空調風を吹出すデフロスタ吹出口(20a、20b)の開閉が可能な吹出口開閉機構(24、34、35)、及び車両の窓曇りの状態を演算する窓曇り演算手段(S45)を備え、暖房運転判定手段(S44)が暖房運転と判定した場合に、吹出温度調整機構(15、16)を制御し、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように制御しながら、窓曇り演算手段(S45)が演算した窓曇りの状態において所定の窓曇りがなければ助手席側フェイス吹出口(31a、31b)、または、デフロスタ吹出口(吹き出し口(20a、20b)の両方もしくはいずれか一方)の開閉を吹出口開閉機構(24、34、35)を用いて閉塞方向に調整し、上層部で使う暖房熱量を最小化し、且つ、下層部は内気循環にし、吸い込んだ空気をそのまま吹き出すことで助手席側の暖房熱量を、例えば全く使わないように温度調整機構を調整し車両全体の暖房熱量をさらに低減し、車両の燃費向上を実現させるものである。
【0022】
この発明によれば、暖房運転判定手段(S44)が暖房運転と判定した場合に、吹出温度調整機構(15、16)を制御し、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように制御して、運転席優先モードで運転を行いながら、窓曇り状態に応じて、助
手席側フェイス吹出口(31a、31b)、または、デフロスタ吹出口(20a、20b)の開閉を吹出口開閉機構(24、34、35)で調整するから、窓曇りをより確実に避けながら、車両全体の暖房熱量を低減し、車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【0023】
請求項5に記載の発明では、更に、空調ユニット(1)は、車室内の乗員の足元に空調風を吹出すフット吹出口(23a、23b、33a、33b)と、運転席側に着座した運転者の膝部分に空調風を吹出す膝向け吹出口(27)を備え、運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定しているときに、吹出温度調整機構(15、16)を制御し、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように制御するとともに、運転者の膝部分に膝向け吹出口(27)から空調風を吹出すことを特徴としている。
【0024】
この発明によれば、運転席優先モードで暖房運転を行なっているときに、助手席側の空調が優先されないので、助手席側からの冷たい冷気が運転席側に流れてくるが、運転者の膝部分に空調風を吹出す膝向け吹出口(27)を備えているため、冷気による膝部分の不快感を軽減することが出来る。
【0025】
請求項6に記載の発明では、更に、助手席側にシートを暖房するシート空調手段(100)が供えられており、制御手段(10)は、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように吹出温度調整機構(15、16)を制御する助手席側の暖房目標値と運転席側の暖房目標値を設定する手段を備え、シート空調手段(100)が作動しているときに、シート空調手段(100)が作動していないときに比べ助手席側の暖房目標値を冷温側に下げることを特徴としている。
【0026】
この発明によれば、助手席側のシート空調手段(100)が作動しているときに、シート空調手段(100)が作動していないときに比べ助手席側の暖房目標値を冷温側に下げるから、更に、助手席側の暖房を低減することが出来、車両全体の暖房熱量を低減して、車両の燃費を更に向上させることが出来る。
【0027】
請求項7に記載の発明では、暖房用熱交換器(42)は、運転席側と助手席側で夫々独立した運転席側暖房用熱交換器(42a)と助手席側暖房用熱交換器(42b)から成り、運転席側暖房用熱交換器(42a)と助手席側暖房用熱交換器(42b)を通過する温水流量を制御する温水流量制御手段(45a、45b)を備え、運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定しているときに、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように、吹出温度調整機構を成す温水流量制御手段(45a、45b)を制御することを特徴としている。
【0028】
この発明によれば、運転席側暖房用熱交換器(42a)と助手席側暖房用熱交換器(42b)を通過する温水流量を制御して、運転者のみが運転席に在席していると判定がされた場合、運転席以外の箇所は、運転者のために使用する車両用空調装置の放熱量よりも小さい放熱量となるようにすることが出来、車両全体の暖房熱量を低減し車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【0029】
請求項8に記載の発明では、空調ユニット(1)は、吹出口として車室内の乗員の足元に空調風を吹出すフット吹出口(23a、23b、33a、33b)と車室内の乗員の顔面に空調風を吹出すフェイス吹出口(21a、21b、31a、31b)とを備え、暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定するのは、フット吹出口(23a、23b、33a、33b)から空調風が吹出されるモードの場合、及びフット吹出口(23a、23b、33a、33b)とフェイス吹出口(21a、21b、31a、31b)の両方から空調風が吹出されるモードの場合のうちいずれか一方のモードのときであることを特徴としている。
【0030】
この発明によれば、暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転であると判定するのは、フット吹出口(23a、23b、33a、33b)から空調風が吹出されるモードの場合、及びフット吹出口(23a、23b、33a、33b)とフェイス吹出口(21a、21b、31a、31b)の両方から空調風が吹出されるモードの場合のうちいずれか一方のときであるから、暖房運転を的確に判別することが出来る。
【0031】
請求項9に記載の発明では、更に、車両外部の外気温を検出する手段(72)を備え、外気温が低くなるにつれて助手席側の吹出温度が高くなるように、助手席側温度調整機構(16)を制御手段(10)が制御することを特徴としている。
【0032】
この発明によれば、助手席側の吹出温度は、外気温が低くなるにつれて高くなるように助手席側温度調整機構(16)を制御手段(10)で制御するから、外気温が低い時に、助手席からの回りこみ風により運転席の運転者が寒く感じることを抑制することが出来る。
【0033】
請求項10に記載の発明では、制御手段(10)は、少なくとも乗員が設定した設定温度に基づいて目標吹出温度を演算する目標吹出温度演算手段(S3)を有し、演算された目標吹出温度に基づいて吹出温度調整機構(15、16)を制御しており、運転席在席判定手段(S32、S42)が運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定しているときに、助手席側の吹出温度と前記運転席側の吹出温度との格差が、前記目標吹出温度が低くなるにつれて拡大するように、前記吹出温度調整機構(15、16)を制御することを特徴としている。
【0034】
この発明によれば、運転席在席判定手段(S32、S42)が運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定しているときに、助手席側の吹出温度と運転席側の吹出温度との格差が、目標吹出温度が低くなるにつれて拡大するように、吹出温度調整機構(15、16)を制御するから、暖房負荷が高いときは、車室内全体を暖房して運転者が寒いと感じるのを防止しながら、極力助手席側への暖房用熱量の供給を少なく出来るため、車両全体の暖房熱量を低減し車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【0035】
請求項11に記載の発明では、車両の車速または車室内への日射量に応じて、車速が高くなるほど助手席側の吹出温度が高くなるように、または、日射量が多くなるほど助手席側の吹出温度が低くなるように補正する補正手段(101)を備えることを特徴としている。
【0036】
この発明によれば、車速が高くなるほど助手席側の吹出温度が高くなるように、または、日射量が多くなるほど助手席側の吹出温度が低くなるように補正するから、車速が高くなり運転席前方の窓からの放射冷却が大きくなっても、それを補正して助手席側の吹出温度が高くなるように制御するか、または、日射量が多くなり車室内温度が上昇するほど助手席側の吹出温度が低くなるように制御されるため、運転者に不快感を与えず、助手席側への暖房用熱量の供給を少なくする補正が可能となり、更に車両全体の暖房熱量を低減し車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【0037】
請求項12に記載の発明では、助手席側の吹出温度調整機構(16)は、助手席側の上側の吹出温度を調整する助手席上側の吹出温度調整機構(16U)、助手席側の下側の吹出温度を調整する助手席下側の吹出温度調整機構(16D)を備え、制御手段(10)は、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように制御するときに、助手席下側の吹出温度調整機構(16D)を助手席上側の吹出温度調整機構(16U)よりも、クール側に設定し、かつ、助手席下側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くして運転席優先暖房を行なうことを特徴としている。
【0038】
この発明によれば、いわゆる左右上下独立の吹出温度調整機構を使用して、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように制御するときに、助手席下側の吹出温度調整機構(16D)を、助手席上側の吹出温度調整機構(16U)よりも、クール側に設定し、かつ、助手席下側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くして運転席優先暖房を行なうから、助手席上側の温度の低下と風の流れ込みと熱伝導とにより、運転席側の温熱快適性が悪化するのを防止することができる。
【0039】
請求項13に記載の発明では、制御手段(10)は、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように制御するときに、助手席上側のフェイス吹出口(31a、31b)を閉じることを特徴としている。
【0040】
この発明によれば、助手席上側のフェイス吹出口(31a、31b)を閉じるから、助手席に流れる風が運転席に流れて、運転席の温感が悪化するのを防止できる。
【0041】
請求項14に記載の発明では、窓曇り演算手段(S245)が窓曇りの危険があると判定したときは、制御手段(10)は、助手席側フェイス吹出口(31a、31b)、または、デフロスタ吹出口(20a、20b)を吹出口開閉機構(24、34、35)で開き、運転席優先暖房を行なわない通常制御を行い、窓曇り演算手段(S245)が窓曇りの危険が無いと判定したときは、制御手段(10)は、助手席側フェイス吹出口(31a、31b)、または、デフロスタ吹出口(20a、20b)を吹出口開閉機構(24、34、35)で閉じ、運転席優先暖房を行なうことを特徴としている。
【0042】
この発明によれば、窓曇りの危険があるときは、助手席側フェイス吹出口(31a、31b)、または、デフロスタ吹出口(20a、20b)を開いて通常制御を行うから、窓曇りを確実に無くすことができ、かつ、このときの乗員の温感の悪化を阻止することができる。
【0043】
なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号ないし説明は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を分かり易く示す一例であり、発明の内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態におけるオートエアコンシステムの全体構成を示す模式図である。
【図2】上記実施形態におけるインストルメントパネルの正面図である。
【図3】上記実施形態におけるエアコンECUの全体制御フローチャートである。
【図4】上記実施形態におけるエアコンECUの通常制御プログラムの一例を示したフローチャートである。
【図5】上記実施形態において、図3の1席優先モード制御に使用するマップである。
【図6】上記実施形態における温感テストの結果を示すグラフである。
【図7】上記実施形態と従来装置とのエネルギ比を比較して示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態における内外気2層ユニットから成る空調ユニットの模式構成図である。
【図9】上記第2実施形態における内外気2層ユニットから成る空調ユニットを採用した車両内の空調風の流れを説明する説明図である。
【図10】本発明の第3実施形態における車室内のフロント窓部分の湿度検出センサの取付け例を示す模式構成図である。
【図11】上記第3実施形態におけるオートエアコンシステムの全体構成を示す模式図である。
【図12】上記第3実施形態のエアコンECUの全体制御フローチャートである。
【図13】本発明の第4実施形態における暖房用熱交換器部分の空調ユニットの構成を示す模式構成図である。
【図14】本発明の第5実施形態における1席優先モード制御に使用するマップである。
【図15】本発明の第6実施形態における1席優先モード制御に使用するマップである。
【図16】本発明の第7実施形態における1席優先モード制御に使用するマップである。
【図17】本発明の第8実施形態における1席優先モード制御に使用するマップである。
【図18】上記第8実施形態において、図17のマップと共に用いられ車速補正値を求める補正用マップである。
【図19】上記第8実施形態において、図17のマップと共に用いられ日射量補正値を求める補正用マップである。
【図20】本発明の第9実施形態に用いる空調ユニットを模式的に示す模式図である。
【図21】上記第9実施形態のエアコンECUの全体制御フローチャートである。
【図22】上記第9実施形態における1席優先モードでの制御における左右上下独立温度コントロール手段の作動状態を説明する説明図である。
【図23】その他の実施形態における1席優先モード制御に使用するマップである。
【図24】その他の実施形態におけるエアコンECUの全体制御フローチャートである。
【図25】その他の実施形態での制御モードと、従来一般的な制御モードと、第1実施形態等での制御モードとにおいて、運転席側と助手席側とにおける吹出温度調整機構の作動の違いを説明するための説明図である。
【図26】その他の実施形態において、運転席側膝向け吹出口の吹出風をシャットしたり開放したりする開閉機構が装備されている空調装置に適用される吹出口温度の制御に使用するマップである。
【図27】その他の実施形態において、運転席側の目標吹出温度に基づいて制御される吹出口温度のエコモードへの切替制御に使用するマップである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0046】
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合わせばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0047】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1乃至図7を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るオートエアコンシステムの全体構成を示す模式図である。また、図2は、インストルメントパネルの正面図である。
【0048】
本実施形態の車両用空調装置、いわゆるカーエアコンは、走行用に水冷エンジンを搭載する自動車などの車両において、車室内を空調する空調ユニット1における各空調手段(アクチュエータ)を、エアコンECU(制御手段)10によって制御するように構成されたオートエアコンシステムである。
【0049】
空調ユニット1は、車室内の運転席側(運転席後方の後部座席を含む)空調空間と、助手席側(助手席後方の後部座席を含む)空調空間との温度調節を、互いに独立して行うことが可能なエアコンユニットである。空調ユニット1は、車両の車室内前方に配置された空調ダクト(通風路)2を備えている。
【0050】
この空調ダクト2の上流側には、内外気切替ドア(吸込部)3、およびブロワ(送風手段)4が設けられており、内外気送風手段としての送風機ユニットとなっている。内外気切替ドア3は吸込口切替手段と成り、サーボモータ5などのアクチュエータによって駆動され、内気吸込口(吸込部)6と外気吸込口(吸込部)7との開度(いわゆる吸込モード)を変更する。
【0051】
なお、空調ユニット1は、具体的には図示しないが、完全センタ置きといわれるタイプのものであり、車室内前方の計器盤下方部において、車両左右方向の中央位置に搭載されている。また、後述する熱交換器などを収めた空調ユニットの本体部に対して、上記の送風機ユニットがその車両前方側に配設されている。そして、送風機ユニットの内気吸込口6は、運転席側の下方に開口しており、運転席側から車室内空気を吸い込むようになっている。
【0052】
ブロワ4は、ブロワ駆動回路8によって制御されるブロワモータ9により回転駆動されて、空調ダクト2内において車室内に向かう空気流を発生させる遠心式送風機である。なお、ブロワ4は、後述する運転席側、助手席側の各吹出口から車室内の運転席側、助手席側空調空間に向けてそれぞれ吹き出される空調風の吹出風量、または吹出風速を変更する吹出風量可変手段、または吹出風速可変手段を構成する。
【0053】
空調ダクト2の中央部には、空調ダクト2を通過する空気を冷却する冷却手段としての冷房用熱交換器(エバポレータ、または冷房用蒸発器とも言う)41が設けられている。
また、その冷房用熱交換器41の空気下流側には、第1、第2空気通路11、12を通過する空気を、エンジンの冷却水(温水)と熱交換して加熱する、加熱手段としての暖房用熱交換器(ヒータコアとも言う)42が設けられている。
【0054】
なお、第1、第2空気通路11、12は、仕切板14により区画されている。また、例えば電力を用いて走行する車両に用いられた車両用空調装置では、冷房用熱交換器41や暖房用熱交換器42をペルチェ素子に変更しても良い。
【0055】
暖房用熱交換器42の空気上流側には、車室内の運転席側空調空間と助手席側空調空間との温度調節を、互いに独立して行うための運転席側、助手席側吹出温度調整ドア15、16が設けられている。第1実施形態では運転席側、助手席側吹出温度調整ドア15、16が吹出温度調整機構を構成している。
【0056】
そして、運転席側、助手席側吹出温度調整ドア15、16は、サーボモータ17、18などのアクチュエータにより駆動されており、後述する運転席側、助手席側の各吹出口から車室内の運転席側、助手席側空調空間に向けて、それぞれ吹き出される空調風の吹出温度を変更する運転席側、助手席側吹出温度調整機構を構成する。
【0057】
ここで、本実施形態の冷房用熱交換器41は、冷凍サイクルの一構成部品を成すものである。冷凍サイクルは図示しないが、車両のエンジンルーム内に搭載された車両走行用のエンジンの出力軸にベルト駆動されて、冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサ(冷媒圧縮機)と、このコンプレッサより吐出された冷媒を凝縮液化させるコンデンサ(冷媒凝縮器)と、このコンデンサより流入した液冷媒を気液分離するレシーバ(受液器)と、このレシーバより流入した液冷媒を断熱膨張させる膨張弁と、この膨張弁より流入した気液二相状態の冷媒を蒸発気化させる上記の冷房用熱交換器(冷媒蒸発器)41とから構成されている。
【0058】
これらのうち、コンプレッサは、制御手段を成すエアコンECU10から出力される制御電流によって、圧縮容量が可変される。つまり、本実施形態では、冷房用熱交換器後温度センサ74が検出する冷房用熱交換器後温度(Te)と、目標冷房用熱交換器後温度(TEO)との比較結果に応じて出力される制御信号に基づき、容量可変制御を行う電磁式容量可変制御弁を有する容量可変コンプレッサが用いられている。
【0059】
そして、第1空気通路11の空気下流側には、図1示すように、デフロスタ吹出口20、運転席側フェイス吹出口21a、21b、運転席側フット吹出口23a、及び運転席側後席フット吹出口23bが、各吹出ダクトを介して連通している。
【0060】
また、第2空気通路12の空気下流側には、図1に示すように、助手席側フェイス吹出口31a、31b、助手席側フット吹出口33a、及び助手席側後席フット吹出口33bが、各吹出ダクト部分を介して連通している。なお、デフロスタ吹出口20は運転席側デフロスタ吹出口20aと助手席側デフロスタ吹出口20bに区画されていてもよい。
【0061】
更に、運転席側には、運転者の膝に向けて運転席側フット吹出口23aと同様の空調風を吹出す運転席側膝向け吹出口27が設けられている。図1は、これら吹出口相互間のレイアウトを模式的に示している。なお、運転席側膝向け吹出口27は、運転席以外の場所から冷風回り込みによる不快感を防止するために設けてある。
【0062】
なお、デフロスタ吹出口20は、車両前方窓ガラスへ空調風(主に温風)を吹き出すための吹出口を構成する。運転席側および助手席側フェイス吹出口21a、21b、31a、31bは、運転者および助手席乗員の頭胸部へ空調風(主に冷風)を吹き出すための吹出口を構成する。運転席側および助手席側フット吹出口23a、33aは、運転者および助手席乗員の足元へ空調風(主に温風)を吹き出すための吹出口を構成する。
【0063】
なお、通常の車両用空調装置では、図1の第1および第2空気通路11、12内には、車室内の運転席側と助手席側との吹出モードの設定を、互いに独立して行う運転席側および助手席側吹出口切替ドアとして、運転席側および助手席側デフロスタドア、運転席側および助手席側フェイスドア、運転席側および助手席側フットドア等のドア機構が設けられているが、この第1実施形態においては全て備えられていない。
【0064】
通常は、これらの運転席側および助手席側吹出口切替ドアは、サーボモータなどのアクチュエータにより駆動され、運転席側および助手席側の吹出モードをそれぞれ切り替えるモード切替ドアとして機能し、運転席側および助手席側の吹出口モードとしては、フェイスモード、バイレベル(B/L)モード、フットモード、フット/デフロスタモード、デフロスタモードなどがあるが、この第1実施形態においては、これらのドアは全て省略(廃止)されている。そして、その分、コストを低減している。従って、空調風は、通風抵抗の割合によって全吹出口20、21a、21b、27、23a、23b、33a、33bから吹出される。
【0065】
100はシート空調装置であり、運転席と助手席のシートをPCTヒータで温めるようになっている。
【0066】
エアコンECU10は、エンジンの始動および停止を司るイグニッションスイッチが入れられた時に、車両に搭載された車載電源であるバッテリー(図示せず)から直流電源が供給され、演算処理や制御処理を開始するように構成されている。
【0067】
エアコンECU10には、図1および図2に示したように、インストルメントパネルに一体的に設置されたエアコン操作パネル51上の各種操作スイッチから、各スイッチ信号が入力されるように構成されている。
【0068】
エアコン操作パネル51には、図2に示すように、液晶ディスプレイ(液晶表示装置)52、内外気切替スイッチ53、フロントデフロスタスイッチ54、リヤデフロスタ(デフォッガ)スイッチ55、デュアルスイッチ56、ブロワ風量切替スイッチ58、エアコンスイッチ59、オートスイッチ60、オフスイッチ61、運転席側、助手席側温度設定器62、63、燃費向上スイッチ64、及び1席優先スイッチ65などが設置されている。57はシート空調装置の操作スイッチであり、運転席シートと助手席シートを個別に操作できるように構成されている。
【0069】
液晶ディスプレイ52には、運転席側、助手席側空調空間の設定温度を視覚表示する設定温度表示部、及びブロワ風量を視覚表示する風量表示部などが設けられている。なお、液晶ディスプレイ52に外気温表示部、吸込モード表示部、時刻表示部などが設けられていても良い。また、エアコン操作パネル51上の各種の操作スイッチは、液晶ディスプレイ52内にタッチスイッチとして設けられていても良い。
【0070】
上記のスイッチの内、フロントデフロスタスイッチ54は、前面窓ガラスの防曇能力を上げるか否かを指令する空調スイッチに相当するもので、吹出モードをデフロスタモードに設定(固定)するように要求するデフロスタモード要求手段である。デュアルスイッチ56は、運転席側空調空間内の温度調節と助手席側空調空間内の温度調節とを、互いに独立して行う左右独立温度コントロールを指令する左右独立制御指令手段である。
【0071】
エアコンスイッチ59は、冷凍サイクルのコンプレッサの稼働、または停止を指令する空調操作スイッチである。一般に、エアコンスイッチ59は、コンプレッサを非稼働にして、エンジンの回転負荷を減らすことで燃費効率を高めるために設けられている。
【0072】
運転席側および助手席側温度設定器62、63は、運転席側空調空間内と助手席側空調空間内のそれぞれ温度を、所望の設定温度(Tset)に設定するための運転席側および助手席側温度設定手段で、アップスイッチ62a、63aとダウンスイッチ62b、63bよりなる。
【0073】
燃費向上スイッチ64は、冷凍サイクルのコンプレッサの稼働率を下げて、低燃費および省動力を考慮した経済的な空調制御を行うか否かを指令するエコノミースイッチである。1席優先スイッチ65は、乗員のマニュアル操作に応じて、運転者のみしか車室内にいないことをエアコンECU10に通知する1席優先モード制御要求手段である。
【0074】
また、図1のエアコンECU10の内部には、演算処理や制御処理を行うCPU(中央演算装置)、ROMやRAMなどのメモリ、およびI/Oポート(入力/出力回路)などの機能を含んで構成される周知のマイクロコンピュータが設けられている。そして、各種センサからのセンサ信号がI/Oポート、もしくはA/D変換回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
【0075】
即ち、エアコンECU10には、内気温Trを検出する内気温検出手段としての内気温センサ71、車室外温度(外気温)を検出する外気温検出手段としての外気温センサ72、および日射検出手段としての日射センサ73が接続されている。
【0076】
また、冷房用熱交換器41を通過した直後の空気温度(冷房用熱交換器後温度Te)を検出する冷房用熱交換器後温度検出手段としての冷房用熱交換器後温度センサ74、車両のエンジン冷却水温(Tw)を検出して送風空気の加熱温度とする加熱温度検出手段としての冷却水温センサ75、車室内の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度検出センサ76、および各席の乗員の存否を検出する着座検出手段としての着座センサ77などが接続されている。
【0077】
これらのうち内気温センサ71、外気温センサ72、冷房用熱交換器後温度センサ74、および冷却水温センサ75は、例えばサーミスタなどの感温素子が使用されている。また、日射センサ73は、運転席側空調空間内に照射される日射量(日射強度)を検出する運転席側日射強度検出手段と、助手席側空調空間内に照射される日射量(日射強度)を検出する助手席側日射強度検出手段とを有しており、例えばフォトダイオードなどが使用されている。
【0078】
次に、エアコンECU10による制御方法を説明する。図3は第1実施形態のエアコンECU10の全体制御フローチャートである。ステップS31で制御がスタートすると、ステップS32の制御aにおいて、図2の1席優先スイッチ65がONされたか否かを判定する。1席優先スイッチ65がONされていない場合は後述する通常制御(制御d)を実行する。1席優先スイッチ65がONされている場合は、ステップS33(制御b)において、暖房条件モードが成立しているか否かを判定する。
【0079】
ここで暖房条件モードが成立しているか否かの判定は、第1に、外気温が所定温度以下(一例としては20℃以下)であること、第2に、目標吹出温度TAOが所定値以上(一例としては25℃以上)であることの、少なくとも2つの条件が全てクリヤしているときに暖房条件モードが成立していると判定する。
【0080】
なお、吹出モードが少なくとも運転者側だけでも設定可能な構造の場合は、第3の条件として1席優先スイッチ65がONされる前の吹出モードがフットモードもしくはバイレベルモードであることを、暖房条件モードが成立条件としてもよいが、この第1実施形態では、全吹出口のドアが省略されているため、上記2つの条件で暖房条件モードが成立しているとしている。
【0081】
図3のステップS33において、暖房条件モードが成立していないと判定されたときは、ステップS34で後述する通常制御(制御d)を実行する。一方、暖房条件モードが成立していると判定されたときは、ステップS35(制御c)に進み、図1の左右独立の吹出温度調整ドア15、16を使用して、運転席側の吹出温度Tdと、助手席側の吹出温度Tpとの関係が、運転席側の吹出温度Tdが助手席側の吹出温度Tp以上の温度になるように(Td≧Tp)、後述する通常制御を変形して1席優先モード制御を実行する。
【0082】
この時、運転者側は、車室内外のセンサ等で演算された目標吹出温度TAOとなるように温度調整ドア15を調整する。一方、助手席側は、温度調整ドア16を暖房用熱交換器42を空気が通らない方向に制御し、かつ空調負荷に応じて助手席側の吹出温度を制御する。そして、例えば、図5に示すように、外気温−5℃の時は、運転者席吹出温度が目標吹出温度TAOに基づく温度50℃前後、助手席側の吹出温度を25℃前後となるように、図1の吹出温度調整ドア15、16を制御する。
【0083】
外気温が高い場合は、助手席側の冷気の影響を運転者に与えにくくなるため、助手席側の温度調整ドア16をクール側にシフトし、より低温度を吹出す。逆に低外気温時は、助手席側の冷気の影響を運転者に与え易くなるため、助手席側の温度を運転者の吹出温度に近づける。この制御については後にも詳述する。
【0084】
次に、図4に基づいて図3の上記通常制御(制御d)を説明する。ここで図4は、エアコンECU10の通常制御プログラムの一例を示したフローチャートである。まず、イグニッションスイッチがオンされてエアコンECU10に直流電源が供給されると、予めメモリに記憶されている制御プログラム(図4のルーチン)の実行が開始される。
【0085】
(ステップS1)
まず、エアコンECU10内部のマイクロコンピュータに内蔵されたデータ処理用メモリの記憶内容などの初期化を行う。
【0086】
(ステップS2)
次に、各種データをデータ処理用メモリに読み込む。即ち、図1、図2のエアコン操作パネル51上の各種操作スイッチからのスイッチ信号や、各種センサからのセンサ信号を入力する。特に、内気温センサ71が検出する内気温Tr、外気温センサ72が検出する外気温Tam、日射センサ73が検出する日射量Ts、冷房用熱交換器後センサ74が検出する冷房用熱交換器後温度Te、冷却水温センサ75が検出する冷却水温Twを入力する。
【0087】
(ステップS3)
次に、上記の入力データを記憶している演算式に代入して、運転席側の目標吹出温度DrTAO、および助手席側の目標吹出温度PaTAOを演算し、その運転席側および助手席側の目標吹出温度DrTAO、PaTAOと外気温Tamから、目標冷房用熱交換器後温度TEOを演算する。
【0088】
なお、目標吹出温度PaTAO等のTAOは、周知のように、予めROMに記憶された下記の数式1に基づいて算出する。
【0089】
(数式1) TAO=Kset×Tset−KR×Tr−KAM×Tam−KS×Ts+C
尚、Tsetは、各席の温度設定レバーにて設定された設定温度、Trは内気温センサ71にて検出された内気温度、Tamは外気温センサ72にて検出された外気温度、Tsは日射センサ73にて検出された日射量である。また、Kset、KR、KAMおよびKSはゲインで、Cは補正用の定数である。
【0090】
(ステップS4)
次に、ステップS3で求めた運転席側および助手席側の目標吹出温度DrTAO、PaTAOに基づいてブロワ風量、すなわちブロワモータ9に印加するブロワ制御電圧VAを演算する。上記のブロワ制御電圧VAは、運転席側および助手席側の目標吹出温度DrTAO、PaTAOにそれぞれ適合したブロワ制御電圧VA(Dr)、VA(Pa)を、予め定めた特性パターンに基づいて求めるとともに、それらのブロワ制御電圧VA(Dr)、VA(Pa)を平均化処理することにより得ている。
【0091】
(ステップS5)
次に、ステップS3で求めた運転席側および助手席側の目標吹出温度DrTAO、PaTAOと上記の入力データとを、メモリに記憶されている演算式に代入して、運転席側吹出温度調整ドア15の吹出温度調整ドア開度DrSW(%)、および助手席側吹出温度調整ドア16の吹出温度調整ドア開度PaSW(%)を演算する。
【0092】
これらの吹出温度調整ドア開度SWは、周知のように、主に目標吹出温度および冷却水温に基づいて目標ダンパ開度SWとして、下記の数式2で各席毎に算出される。そして、算出された目標ダンパ開度SWに応じて、吹出温度調整ドア15、16の位置が制御され、加熱された空気と空調ユニット内に設けられた冷房用熱交換器41で冷却された空気とが混合されて、空気温度が調整される。
【0093】
(数式2)SW={(TAO−Te)/(Tw−Te)}×100(%)
ここで、TAOは目標吹出温度、Twは冷却水温、Teは冷却された空気温度(後述する実施形態中では冷房用熱交換器後温度としている)であり、目標ダンパ開度SWが大きい程、空調空気温度は高くなる。
【0094】
(ステップS6)
次に、ステップS3で求めた運転席側および助手席側の目標吹出温度DrTAO、PaTAOに基づき、車室内へ取り込む空気流の吸込モード、つまり外気導入か内気循環かを決定する。
【0095】
(ステップS7)
次に、ステップS3で求めた運転席側および助手席側の目標吹出温度DrTAO、PaTAOと冷房用熱交換器後センサ74が検出する実際の冷房用熱交換器後流温度Teとが一致するように、フィードバック制御(PI制御)にてコンプレッサを目標吐出量とするための制御電流値を決定する。
【0096】
具体的には、コンプレッサに付設された電磁式容量制御弁の電磁ソレノイドに供給する制御電流の目標値となるソレノイド電流(制御電流:In)を、メモリに記憶されている演算式に基づいて演算する。
【0097】
(ステップS8)
次に、ステップS4で決定されたブロワ制御電流VAとなるように、ブロワ駆動回路8に制御信号を出力する。
【0098】
(ステップS9)
次に、ステップS5で決定された吹出温度調整ドア開度DrSW、PaSWとなるように、サーボモータ17、18に制御信号を出力する。
【0099】
(ステップS10)
次に、ステップS6で決定された吸込モードとなるように、サーボモータ5に制御信号を出力する。
【0100】
(ステップS11)
次に、ステップS7で決定されたソレノイド電流(制御電流:In)をコンプレッサに付設された電磁式容量制御弁の電磁ソレノイドに出力する。その後にステップS2の制御処理に戻る。なお、マニュアル設定時には、その操作設定値に従って図4の制御プログラムが実行される。
【0101】
次に、図3において、1席優先スイッチ65がONされている場合で、暖房条件モードが成立している場合のステップS35の1席優先モード制御(制御c)について説明する。この1席優先モード制御では、前述したように、運転席側の吹出温度Tdと、助手席側の吹出温度Tpとの関係が、運転席側の吹出温度Tdが助手席側の吹出温度Tp以上の温度になるように(Td≧Tp)制御が実行される。
【0102】
上述の図4の通常制御においては、ステップS3において、運転席側の目標吹出温度DrTAO、および助手席側の目標吹出温度PaTAOを演算し、その運転席側および助手席側の目標吹出温度DrTAO、PaTAOと外気温Tamから、目標冷房用熱交換器後温度TEOを演算した。このステップS34の1席優先モード制御は、基本的には図4の通常制御の一部を、この1席優先モード制御の期間中だけ変更したものである。
【0103】
また、ステップS5において、運転席側および助手席側の目標吹出温度DrTAO、PaTAOから運転席側吹出温度調整ドア15の吹出温度調整ドア開度DrSW(%)、および助手席側吹出温度調整ドア16の吹出温度調整ドア開度PaSW(%)を演算した。
【0104】
しかし、上記1席優先モード制御では、上記運転席側の目標吹出温度DrTAO、および助手席側の目標吹出温度PaTAOを一時的にクリヤして、外気温に基づいた1席優先目標吹出温度DrTAOP、および助手席側の1席優先目標吹出温度PaTAOPを図5のマップに基づいて決定する。図5は、第1実施形態において、図3のステップS35で示した1席優先モード制御(制御c)に使用するマップである。
【0105】
この図5のマップを見て判明するように、外気温が低いときは、運転席側の1席優先目標吹出温度DrTAOPと助手席側の1席優先目標吹出温度PaTAOPに差がない。しかし外気温が高くなるにつれて運転席側の1席優先目標吹出温度DrTAOPと助手席側の1席優先目標吹出温度PaTAOPとの格差が拡大するようにマップが形成されている。
【0106】
つまり、外気温が高くなるにつれて、助手席側の1席優先目標吹出温度PaTAOPをクール側にシフトし、より低温度を吹き出すようにしている。逆に、低外気温時は助手席側の冷気の影響を運転者に与えやすくなるため、助手席側の温度を運転者の吹出温度に近づけている。外気温が−20℃の場合は、運転席側、助手席側の両方とも50℃程度の空調風を吹出して全室を暖めないと、乗員が寒さを感じてしまう。
【0107】
そして、このようにして求めた運転席側の1席優先目標吹出温度DrTAOPと助手席側の1席優先目標吹出温度PaTAOPと上記の入力データとを、メモリに記憶されている演算式に代入して、運転席側吹出温度調整ドア15の吹出温度調整ドア開度DrSW(%)、および助手席側吹出温度調整ドア16の吹出温度調整ドア開度PaSW(%)を演算する。
【0108】
この結果、運転席側の吹出温度Tdと、助手席側の吹出温度Tpとの関係が、運転席側の吹出温度Tdが助手席側の吹出温度Tp以上の温度になるように(Td≧Tp)、1席優先モード制御が実行される。
【0109】
この時、助手席側においては、助手席側吹出温度調整ドア16が暖房用熱交換器42を空気が通らない方向に制御し、かつ空調負荷に応じて助手席側吹出温度を制御する。例えば、図5に示すように外気温−5℃時は、運転者側吹出温度Tdが目標吹出温度TAOに基づく温度50℃前後、助手席側吹出温度Tpが25℃前後となるように、吹出温度調整ドア15、16を制御する。外気温が高い場合は、 助手席側の冷気の影響を運転者が受けにくくなるため、大幅に助手席側吹出温度Tpを低下させる。
【0110】
なお、1席優先スイッチ65がOFFされるか、または暖房条件モードが成立しなくなったときには、通常制御(制御d)が実行される。なお、1席優先モード制御が行なわれているときの、吹出温度調整ドア開度演算以外の他のステップS1からステップS11の制御は、通常制御(制御d)と同じである。
【0111】
(第1実施形態のまとめと作用効果)
以上のように、上記第1実施形態では、内気または外気から導入した空気を内部の暖房用熱交換器42(図1)により空調風に変換して吹出口から車両の乗員が着座する車室内に吹出す空調ユニット1を供え、車室内の運転席側の吹出温度調整機構15及び助手席側の吹出温度調整機構16を空調ユニット1内に独立に備えている。
【0112】
運転席の在席の有無を判定し運転席のみに乗員が在席していることを判定するする運転席在席判定手段(図3のステップS32)を設けている。吹出温度調整機構15、16(図1)によって運転席側の空調状態が暖房運転か否かを判定する暖房運転判定手段(図3のステップS33)を備えている。
【0113】
運転席在席判定手段(図3のステップS32)が運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段(図3のステップS33)が暖房運転と判定しているときに、吹出温度調整機構15、16(図1)を制御し、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするようにして1席優先モード制御を行なう制御手段となるエアコンECU10(図1)を備えている。
【0114】
これにより、助手席側や後席側の運転席以外の吹出口からの空調風の吹出しを完全にシャットする機構が無くても、冬季に運転者のみが運転席に在席していると判定がされた場合、運転席以外の箇所は、運転者のために使用する車両用空調装置の放熱量よりも小さい放熱量となるように、吹出温度調整機構15、16を制御することが出来る。
【0115】
図6は上記第1実施形態における温感テストの結果を示すグラフである。図6において、横軸に助手席側のフット吹出口から吹出されるフット吹出温度(Pa FOOT吹出温)を取り、縦軸に温感のフィーリングテストの結果を示す。
【0116】
この図6の温感テストは、運転席側の吹出し温度を50℃一定に固定して助手席側の吹出温度を低下させていったときの温感を評価したものである。また、外気温を−5℃の一定とし、日射量がない実験状態で確認したものである。
【0117】
基準線Lsは達成することが望ましいレベルを示している。FR車両と有るのは、フロントエンジン・フロントドライブ方式で運転席と助手席の間に空調風をさえぎる部分が無く、運転席と助手席の間でウォークスルーが可能となる車両である。
【0118】
FF車両とあるのは、フロントエンジン・リアドライブ方式でありプロペラシャフトを有し、フロア中央に立体的なフロアトンネルが設けられているため、運転席と助手席の間に空調風をさえぎる部分が存在する車両である。
【0119】
この図6から分かるように助手席側の吹出温度を25℃程度まで下げても運転者の温感は現行4席の車両と同様の「やや暖かい」となり、かつFF車両、FR車両共に外気温が25℃程度までは基準線を略クリヤし問題が無い。また、運転席と助手席の間に空調風をさえぎる部分が無いFF車両の方が、温感が低下する傾向が見られる。
【0120】
また、図6の中の現行4席と記入された星印は、従来の一般的な車両における車両用空調装置であり、運転席側と助手席側とに優先非優先の差別を設けず、運転席側のフット吹出口と助手席側とのフット吹出口とにおいて共に同じ50℃の温風を吹出す車両用空調装置(運転席と助手席の間では独立した空調制御が可能であるが4席独立空調制御できるものではない)が搭載された4席の一般的車両を示している。
【0121】
図7は、この第1実施形態と上記現行4席と記入された車両に搭載された従来の空調装置とのエネルギ比を比較して示すグラフであり、実験条件は図6のときと同じである。この図7では、横軸に、第1実施形態の車両用空調装置と、上記黒い星印の従来一般的な現行4席車両における車両用空調装置とをとり、縦軸に消費エネルギ比を示している。
【0122】
上記黒い星印の従来の一般的な現行4席車両における車両用空調装置の消費エネルギ比を1としたとき、第1実施形態では0.8程度の消費エネルギ比となり、熱量は20%程度削減でき、省熱量効果が確認された。
【0123】
このように、1席側である運転者側に優先的に空調を実施する際、助手席側に空調風を吹出す吹出口を完全にシャットする構造を設けることなく、膝吹き出しの作用と、助手席側の温度を低くし、暖房用熱交換器放熱量を最小化にする作用とにより、全体の暖房熱量を最小化し、エンジンの負荷を低減することができる。
【0124】
更に、吹出温度調整機構15、16(図1)は、暖房用熱交換器42を通過する風量と通過しない風量を温風吹出温度調整ドア(吹出温度調整ドアまたはエアミックスドアとも言う)により制御する機構からなり、この温風吹出温度調整ドアは、運転席側温風吹出温度調整ドア15と助手席側温風吹出温度調整ドア16とから成る。
【0125】
これによれば、運転席側温風吹出温度調整ドア15と助手席側温風吹出温度調整ドア16とを個々に制御することにより、助手席側や後席側の吹出部を完全にシャットする機構が無くても、冬季に運転者のみが運転席に在席していると判定がされた場合に、運転席以外の箇所は、運転者のために使用する車両用空調装置の放熱量よりも小さい放熱量となるようにすることが出来る。
【0126】
更に、空調ユニット1は、車室内の運転者の足元に空調風を吹出すフット吹出口23a(図1)と、運転席側の着座した運転者の膝部分に空調風を吹出す膝向け吹出口27を備える。運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段が暖房運転と判定しているときに、吹出温度調整機構15、16を制御し、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように制御する。
【0127】
これによれば、運転席優先暖房を行なっているときに、助手席側からの冷たい冷気が運転席側に流れてくるが、運転者の膝部分に空調風を吹出す膝向け吹出口27を備えているため、冷気による膝部分の不快感を軽減することが出来る。
【0128】
更に、車両外部の外気温を検出する手段を成す外気温センサ72を備え、助手席側の吹出温度は、外気温が低くなるにつれて高くなるように助手席側温度調整機構16を制御手段10が制御している。
【0129】
これによれば、助手席側の吹出温度は、外気温が低くなるにつれて高くなるように助手席側温度調整機構16を制御手段10が制御するから、外気温が低い時に運転席のみを優先的に暖房することで車両全体の暖房熱量が低下し、かつ運転者が寒く感じることを抑制することが出来る。
【0130】
制御手段10は、少なくとも乗員が設定した設定温度に基づいて目標吹出温度を演算する手段(図4のステップS3)を有する。そして、演算された目標吹出温度に基づいて吹出温度調整機構15、16を制御している。
【0131】
運転席在席判定手段(図3のステップS32)が運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段(図3のステップS33)が暖房運転と判定しているときに、助手席側の吹出温度と運転席側の吹出温度との格差が、図5のように、外気温(または、後述するように目標吹出温度)目標吹出温度が低くなるにつれて拡大するように、吹出温度調整機構15、16を制御している。
【0132】
これによれば、暖房負荷が高いときは、車室内全体を暖房して運転者が寒いと感じるのを防止しながら、極力助手席側への暖房用熱量の供給を少なくするため、車両全体の暖房熱量を低減し車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【0133】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。
【0134】
この第2実施形態と上述の第1実施形態との相違は、空調ユニット1(図1)として、内外気2層ユニット(内外気2層流れを形成するユニット)を採用した点である。なお、この内外気2層ユニット自体は、外気導入時の外気導入を車室内の上層部分だけとし、足元の下層部は内気循環固定の層構造にして、換気損失の半減を図るものとして、特開2003−165322号公報等で公知であるが、この構成と第1実施形態の構成とを組み合わせて相乗効果を発揮するのが第2実施形態である。
【0135】
図8は、内外気2層ユニットから成る空調ユニット1の模式構成図であり、図9は内外気2層ユニットから成る空調ユニットを採用した車両内の空調風の流れを説明する説明図である。
【0136】
図8及び図9において、6は内気導入口、7は外気導入口である。外気導入口7から取り込まれた低湿度で新鮮な外気は、空調ユニット1内の冷房用熱交換器41、及び暖房用熱交換器42を通過したのち、デフロスタ吹出口20から吹出されてフロントウインドの曇りを防止し、車両上方部分(天方向部分)に新鮮な空気を供給する一方、内気を内気導入口6から導入してフット吹出口23a、33a等から足元に暖かい空気を吹出す。
【0137】
この第2実施形態においては、図8の内外気2層ユニットと本発明の第1実施形態とを組み合わせている。内外気2層ユニットの場合、フット吹出口23a等が内気のため、図2の1席優先スイッチ65が押され、図3のステップS33における暖房条件が成立した場合は、助手席側の吹出温度調整ドア16(図1)をマックスクール(MAX COOL)側にして、暖房用熱交換器42を通気しないようにし、車室内の温度をそのまま助手席側フット吹出口33a(図1)に吹き出すことが出来る。
【0138】
このように、内外気2層ユニットと本発明の第1実施形態との相乗効果により、助手席側に全く暖房をするための熱量を加えず、運転席側のみを効率よく暖房することが可能となる。
【0139】
換言すれば、内外気2層ユニットの場合、フット吹出口が内気のため、内外気2層モード時に、1席優先スイッチ65が押され、暖房条件が成立した場合は、助手席側の吹出温度調整ドア16をMAX COOL側にして、暖房用熱交換器42を通気しないようにし、車室内の温度をそのまま助手席側フット吹き出し口吹き出すことが可能である。
【0140】
この方式により、助手席側に全く暖房をするための熱量を加えず、運転者のみを効率よく暖房することが可能である。これによれば、第1実施形態の図7の0.8よりも更にエネルギ比を低減できる。
【0141】
以上のように、第2実施形態の空調ユニットは内外気2層ユニットから成り、外気を空調ユニット内に導入する外気導入時は空調ユニットから吹出す空調風が流れる領域を車室内の上層部だけとしている。これにより、内気を空調ユニット内に導入する内気導入時は、空調ユニットから吹出す空調風が流れる領域を車室内の乗員の足元が位置する車室内の下層部だけとしている。
【0142】
従って、運転席在席判定手段(図3のステップS32)が運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段(図3のステップS33)が暖房運転と判定して暖房条件が成立した場合に、吹出温度調整機構15、16を制御し、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように吹出温度調整機構を制御する。
【0143】
つまり、冬季に運転者のみが運転席に在席していると判定がされた場合、運転席以外の箇所は、運転者のために使用する車両用空調装置の放熱量よりも小さい放熱量となるように、吹出温度調整機構15、16を制御する。
【0144】
この制御と共に、外気を空調ユニット内に導入する外気導入時は、空調ユニットから吹出す空調風が流れる領域を車室内の上層部だけとし、内気を空調ユニット内に導入する内気導入時は空調ユニットから吹出す空調風が流れる領域を車室内の乗員の足元が位置する車室内の下層部だけとする。
【0145】
よって、運転席にしか乗員がいないときの暖房は、運転者の足元が位置する車室内の下層部を優先的に内気で暖めることが出来、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くしているから、助手席側の下層部への内気吹出しは、単に内気を循環させるだけで良く、暖房エネルギを使用しないから、一層、車両全体の暖房熱量を低減することが出来る。
【0146】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。この実施形態では、更に窓曇り判定手段を備える。この窓曇り判定手段は、窓が曇って運転に支障が出る程度を検出できるものであれば何でもよく、例えば、フロントガラスの表面に湿度検出センサを設置し窓曇りを判定しても良い。また、日射量、外気温、内気温、車速、目標吹出温度、ブロワ風量、吹出口モードのいずれかの値を用いて窓曇り状態を判定したり補正したりしても良い。
【0147】
一例としての更に具体的な窓曇り判定手段は、次のように構成される。図10は第3実施形態における車室内のフロント窓部分49aの湿度検出センサ76の取付け例を示す模式構成図である。
【0148】
この図10の車室内のフロント窓部分49aの内面付近には、車室内の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度検出センサ76が設けられ、この湿度検出センサ76内にフロント窓部分49aの内面付近の空気の代表的な湿度と温度を検出できる湿度センサ部47と空気温度センサ48と、ガラス温度検出温度センサ49(窓温度センサ49ともいう)が設けられている。湿度センサ部47は、感湿膜の誘電率が空気の相対湿度 に応じて変化し、それにより、静電容量が空気の相対湿度に応じて変化する容量変化型のものである。
【0149】
エアコンECU10(図1)は、湿度センサ部47の出力値に基づいて、フロント窓付近の車室内空気の相対湿度RHを演算する。すなわち、エアコンECU10は、湿度センサ部47の出力値を相対湿度RHに変換するための所定の演算式を予め記憶しており、この演算式に湿度センサ部47の出力値を適用することにより、相対湿度RHを演算する。下記の数式3は、この湿度演算式の具体例である。
(数式3)RH=αV+β
但し、Vは湿度センサ部47の出力値、αは制御係数、βは定数である。
【0150】
次に、エアコンECU10は、窓温度センサ49の出力値を予め記憶されている所定の演算式に適用することにより、窓ガラス温度を演算する。更に、相対湿度RH及び窓ガラス温度に基づいて窓ガラス表面相対湿度RHWを演算する。
【0151】
すなわち、湿り空気線図を用いることにより、相対湿度RHと上記空気温度と上記窓ガラス温度の3つから上記窓ガラス表面相対湿度RHWを演算する。これについては、特開2007−8449号公報に詳しく開示されている。
【0152】
図11は、第3実施形態に係るオートエアコンシステムの全体構成を示す模式図である。図11において、助手席側のフェイス吹出口31a、31b及びデフロスタ吹出口20a、20bが独立して開閉するドア機構24、34、35を備えている。
【0153】
このような車両用空調装置においては、図2の1席優先スイッチ65が押され、暖房条件及び窓曇り判定手段で窓曇りはなしと判断された場合、助手席側のフェイス吹出口31a、31bもしくはデフロスタ吹出口20a、20bからの送風を停止させるか、もしくは、通常よりも少ない風量となるように、ドア機構24、34、35のドア開度をエアコンECU10からの信号でサーボモータ28、38、39が調整する。これについては、図12を使用して詳述する。
【0154】
図12は第3実施形態のエアコンECU10の全体制御フローチャートである。図12において、ステップS41で制御がスタートすると、ステップS42において、図2の1席優先スイッチ65がONされたか否かを判定する。
【0155】
1席優先スイッチ65がONされていない場合は前述した通常制御をステップS43で実行する。1席優先スイッチ65がONされている場合は、ステップS44において、暖房条件モードが成立しているか否かを判定する。
【0156】
ここで暖房条件モードが成立しているか否かの判定は、第1に、外気温が所定温度以下(一例としては20℃以下)であること、第2に、目標吹出温度TAOが所定値以上(一例としては25℃以上)であることの、少なくとも2つの条件が全てクリヤしているときに暖房条件モードが成立していると判定する。
【0157】
なお、吹出モードが少なくとも運転者側だけでも設定可能な構造の場合は、第3の条件として1席優先スイッチ65がONされる前の吹出モードがフットモードもしくはバイレベルモードであることを、暖房条件モードが成立条件としてもよいが、この第3実施形態では、一部吹出口のドアが省略されているため、上記2つの条件で暖房条件モードが成立しているとしている。
【0158】
図12のステップS44において、暖房条件モードが成立していないと判定されたときは、ステップS43で通常制御を実行する。一方、暖房条件モードが成立していると判定されたときは、窓曇り演算手段を成すステップS45に進み、窓曇りを判定する。
【0159】
この窓曇り判定は、上述したように、エアコンECU10において、窓温度センサ49の出力値を予め記憶されている所定の演算式に適用することにより、窓ガラス温度を演算し、更に、相対湿度RH及び窓ガラス温度に基づいて窓ガラス表面相対湿度RHWを演算する。
【0160】
すなわち、湿り空気線図を用いることにより、相対湿度RHと上記空気温度と上記窓ガラス温度の3つから上記窓ガラス表面相対湿度RHWを演算する。そして、この窓ガラス表面相対湿度RHWが所定の基準値を超えるときに窓曇り状態信号が出される。
【0161】
図12のステップS46において、窓曇り状態信号が出されており所定の窓曇り状態と判断したときは、ステップS47に進み、図11の助手席側のフェイス吹出口31a、31b及びデフロスタ吹出口20a、20bの全てを、ドア機構24、34、35で、開状態またはそれに近い状態にする。
【0162】
一方、図12のステップS46において、窓曇り状態信号が出されておらず所定の窓曇りが無いと判断されたときは、ステップS48に進み、図11の助手席側のフェイス吹出口31a、31b及びデフロスタ吹出口20a、20bの全てを、ドア機構24、34、35で、閉状態またはそれに近い状態にする。
【0163】
その後、ステップS49に進み、運転席側の吹出温度Tdと、助手席側の吹出温度Tpとの関係が、運転席側の吹出温度Tdが助手席側の吹出温度Tp以上の温度になるように(Td≧Tp)、通常制御を変形して1席優先モード制御を実行する。これについては先に詳述した。
【0164】
次にステップS50に進み、図1のブロワ(送風手段)4の風量を調整する。すなわち、ステップS47、S48のドアの開閉に応じて、このドアが開閉する吹出口以外の吹出口の風量が変化するため、出来るだけ変化が少なくなるように、ブロワ4の風量が制御される。これは、ステップS47、S48のドアの開閉に応じた補正量をマップで演算し、ブロワ4に印加する直流電圧を増減する。
【0165】
これにより、助手席側のフェイス吹出口31a、31b(図11)もしくはデフロスタ吹出口20a、20bからの送風を停止させるか、もしくは、通常よりも少ない風量とした場合に、運転者側の風量が増えるので適正風量になるように全体風量を調整することが出来る。
【0166】
このように、この第3実施形態においては、空調ユニット1は吹出口を成す助手席側乗員の顔面方向に空調風を吹出す助手席側フェイス吹出口31a、31bまたは車室内の窓に空調風を吹出すデフロスタ吹出口20a、20bの開閉が個々に独立して可能な吹出口開閉機構を成すドア機構24、34、35を備えている。
【0167】
また、車両の窓曇りの状態を演算する窓曇り演算手段(図12のステップS45、S46)を備えている。そして運転者しか在席しておらず(ステップS42でYES)、暖房運転判定手段が暖房運転と判定して(ステップS44でYES)、暖房条件が成立した場合に、吹出温度調整機構(図11の15、16)を制御し、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように吹出温度調整機構を制御する。
【0168】
この制御に際して、窓曇り演算手段が演算した窓曇りの状態に応じて、助手席側フェイス吹出口31a、31b、または、デフロスタ吹出口20a、20bの開閉を上記吹出口開閉機構で調整している。これによれば、窓曇りをより確実に避けながら、車両全体の暖房熱量を低減し車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【0169】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。図13は第4実施形態における暖房用熱交換器部分の空調ユニットの構成を示す模式構成図である。
【0170】
第1実施形態においては、暖房用熱交換器を通る空気の量を吹出温度調整ドアで制御する吹出温度調整機構を採用したが、この第4実施形態は、助手席側の熱量を低減させる手段として、図13に示すように、運転席側と助手席側とに独立して温度調整できる暖房用熱交換器からなる暖房用熱交換器42a、42bを夫々設けたものである。
【0171】
この暖房用熱交換器42a、42b内にはエンジンの温められたエンジン冷却水が流れるが、この流量を暖房用熱交換器42a、42b毎に調整できるように、流量調整弁45a、45bが各暖房用熱交換器42a、42bに関連して設けられている。
【0172】
そして、図2の1席優先スイッチ65が押され、暖房条件が成立した1席優先モード制御においては、助手席側の流量調整弁45bの流量が制御手段をなすエアコンECU10からの信号で絞られる。
【0173】
このように、この第4実施形態においては、温調式の暖房システムが採用され、暖房用熱交換器42a、42bは、運転席側と助手席側で夫々独立した運転席側暖房用熱交換器42aと助手席側暖房用熱交換器42bから成る。
【0174】
また、運転席側暖房用熱交換器42aと助手席側暖房用熱交換器42bを通過する温水流量を制御する温水流量制御手段を成す流量調整弁45a、45bが設けられている。そして、運転席のみに乗員が在席していると判定し、かつ暖房運転判定手段が暖房運転と判定しているときに、吹出温度調整機構を成す温水流量制御手段、つまり流量調整弁45a、45bを制御している。
【0175】
これによれば、運転席側暖房用熱交換器42aと助手席側暖房用熱交換器42bを通過する温水流量を制御して、冬季に運転者のみが運転席に在席していると判定がされた場合、運転席以外の箇所は、運転者のために使用する車両用空調装置の放熱量よりも小さい放熱量となるようにすることが出来、車両全体の暖房熱量を低減し車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【0176】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。上記第1実施形態では、図5のマップに示したように外気温の変化に対応して1席優先モード制御時の目標吹出温度(優先時目標吹出温度)を設定したが、この第5実施形態においては、運転席側の目標吹出温度DrTAOに対応して優先時目標吹出温度を設定したものである。
【0177】
図14は第5実施形態における1席優先モード制御に使用するマップであり、第1実施形態の図3のステップS35相当の1席優先モード制御に使用する。つまり、第1実施形態は外気温の変化に応じてのみ運転席優先モードでの吹出温度が所定特性になるようにしたが、この第5実施形態においては、運転者側の目標吹出温度DrTAOを基準に制御している。
【0178】
これによれば、運転者側の目標吹出温度DrTAOは設定温度、日射量、外気温、内気温等の制御ファクタで制御されるため、これらの複数の制御ファクタの変化に対応して1席優先モード制御を行なうことが出来る。
【0179】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。図15は第6実施形態における1席優先モード制御に使用するマップであり、第1実施形態の図3のステップS35相当の1席優先モード制御に使用する。
【0180】
上記第1実施形態では図5のマップに示したように外気温の変化に対応して優先時目標吹出温度を設定したが、この第6実施形態においては、図15のように、運転席側の目標吹出温度DrTAOに対応して吹出温度調整ドア15、16、つまりエミックスドアの開度SWを変化させたものである。
【0181】
このように、通常制御においては、上記各数式1、2に基づいて、TAO:目標吹出温度、Tw:冷却水温、Te:冷却された空気温度(冷房用熱交換器後温度)をもとに開度SWが演算されるが、1席優先モード制御においては、図15のマップを用いて、運転席側の目標吹出温度DrTAOに対応して吹出温度調整ドア15、16つまりエミックスドアの開度SW直接的に求めて制御するものである。
【0182】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。この第7実施形態の車両用空調装置は、シート空調装置を併用したものである。シート空調装置には種々のものがあり、運転席のシート内にPCTヒータや電熱線を組み込んだものから、ペルチェ素子により加熱された空調風を多孔質シートから吹出すものまであるが、いずれのシート空調装置を使用してもよく、要は少なくとも助手席を補助的に暖房できるものであればよい。
【0183】
図16は第7実施形態における1席優先モード制御に使用するマップであり、第1実施形態の図3のステップS35相当の1席優先モード制御に使用する。そして、第7実施形態においては図16のマップに示したように、助手席側シートヒータをONしているときは、助手席側の温度特性を吹出温度が低下する方向に推移させたものである。なお、このときに助手席側のシートヒータ全体を加熱するのでなく、運転席に近い部分のみを部分的に加熱してもよい。
【0184】
このように第7実施形態においては、助手席側にシートを暖房するシート空調手段が供えられており、制御手段を成すエアコンECU10は、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように吹出温度調整機構となる例えば吹出温度調整ドア16(図1)を制御する。このために、助手席側の吹出温度が運転席側の吹出温度よりも低くなるように助手席側の暖房目標値となる、例えば吹出温度調整ドア開度SWと、運転席側の暖房目標値を設定する手段となる、例えば目標吹出温度DrTAOが演算される。
【0185】
助手席側の暖房目標値として助手席側の目標吹出温度PaTAOを演算してもよい。要は、1席優先モード制御のときに助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低く出来ればよい。
【0186】
シート空調手段が作動しているときに、シート空調手段が作動していないときに比べ助手席側の暖房目標値を冷温側に下げるようにすることによって、一層、助手席側の暖房熱量を低減することが出来、車両全体の暖房熱量を低減して、車両の燃費を更に向上させることが出来る。
【0187】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。この第8実施形態の車両用空調装置は、車速の変化及び日射量の変化に応じて補正前温度調整ドア開度SWoを補正するようにしたものである。
【0188】
図17は第8実施形態における1席優先モード制御に使用するマップであり、第1実施形態の図3のステップS35相当の1席優先モード制御に使用する。図18は、図17のマップと共に用いられ車速補正値SWVsを求める補正手段101を成す補正用マップである。また、図19は、図17のマップと共に用いられ日射量補正値SWTsを求める補正手段102を成す補正用マップである。
【0189】
車速が高いとフロントガラスが冷却され、フロントガラスからの放射冷却により乗員が寒く感じる。また、日射量が増えると乗員が暖かく感じる。よって、この第8実施形態では、助手席側の補正前温度調整ドア開度SWoを図17のマップを用いて、運転席側目標吹出温度DrTAOで決定すると共に、車速、及び日射量に応じた車速補正値SWVs、及び日射量補正値SWTsを図18及び図19のマップで求めている。
【0190】
そして、最終的な制御値としての助手席側吹出温度調整ドア開度SW(最終)を下記数式4により求めている。
【0191】
(数式4)SW(最終)=SWo+SWVs−SWTs
このように、第8実施形態においては、車両の車速または車室内への日射量に応じて、車速が高くなるほど助手席側の吹出温度が高くなるように、または、日射量が多くなるほど助手席側の吹出温度が低くなるように補正して1席優先モード制御による暖房を行なう。
【0192】
これによれば、車速が高く運転席前方の窓からの放射冷却が大きくなっても、それを補正して助手席側の吹出温度が高くなるように制御することが出来る。また、日射量が多くなり車室内温度が上昇するほど助手席側の吹出温度が低くなるように制御されるため、極力助手席側への暖房用熱量の供給を少なくする補正が可能となり、更に車両全体の暖房熱量を低減し車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【0193】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。この第9実施形態の車両用空調装置は、左右独立温度コントロール手段に加え、上下独立温度コントロール手段を備えた空調ユニットを持つ車両用空調装置に適用される。
【0194】
上記各実施形態では、冬季における1席優先モード制御を、左右独立温度コントロールが可能な空調ユニットにて実施している。これは、冬季において、運転席のみに乗員が乗車していると判定をされた時に、助手席側の吹出温度調整ドアを、運転席側の吹出温度調整ドアよりもクール側に位置させることで、助手席側に使用するヒータコアの放熱量を削減し、省熱量な暖房を実現するものである。
【0195】
ただし、助手席側のフェイス吹出口や、デフロスタ吹出口の吹出温度も低下するため、運転席乗員の温熱快適性を悪化させる要因となる。この場合、助手席側吹出風量調整機構にて吹出口を閉じることで、助手席のフェイス吹出口からの空調風の吹出による乗員への影響を低減できる。ただし、この結果、本来、助手席のフェイス吹出口から吹出す空気が、空調ユニット内で運転席側に流れ込み、運転席側の吹出温度を低下させる。
【0196】
この第9実施形態では、左右独立温度コントロール手段に追加して、上下独立温度コントロール手段を備えた空調装置において、助手席上側の温度コントロールは、クール側に制御せず、助手席下側の温度コントロールのみをクール側に制御する1席優先モード制御を行うことで、運転席乗員に対する空調風温度低下を防ぐものである。
【0197】
このために、助手席側吹出口の開度を小さくする機構(以下、助手席吹出口開度調整機構)を空調ユニット内部または外部に備え、運転席側と助手席側の吹出温度が、独立にコントロールされる空調装置において、乗員の胸より上の領域に向けて吹出す空調風温度と乗員の胸より下の領域に向けて吹出す空調風温度を独立にコントロール可能な上下温度コントロール手段を備える。
【0198】
また、冬季において、運転席のみに乗員が存在するとの判定がなされたときに、助手席側の下側吹出温度が、それ以外の吹出口の吹出温度よりも低くなるように、上下温度コントロール手段を制御するものである。
【0199】
以下、具体的に図面に基づいて、第9実施形態を説明する。図20は、本発明の第9実施形態に用いる空調ユニットを模式的に示す模式図である。この図20の車両用空調装置は、助手席側のフェイス吹出風量を調整できる機能を備えている。また、左右独立温度コントロール手段と、上下独立温度コントロール手段を備えている。助手席フェイス吹出風量は、空調ユニット内、もしくは空調ダクト内、もしくは吹出口のグリルに設けられた吹出口開度可変機構により調整される。
【0200】
図20において、1は、空調ユニット、20は、デフロスタ吹出口である。このデフロスタ吹出口20は運転席側デフロスタ吹出口20aと助手席側デフロスタ吹出口20bに区画されていてもよい。
【0201】
21a、21bは運転席側フェイス吹出口、31a、31bは助手席フェイス吹出口である。23aは運転席フット吹出口、33aは助手席フット吹出口、23b、33bは後席フット吹出口である。
【0202】
また、31cは助手席フェイス開閉機構、40aは左上独立温度コントロール手段、40bは右上独立温度コントロール手段、40cは左下独立温度コントロール手段、40dは右下独立温度コントロール手段である。これらの独立温度コントロール手段40a、40b、40c、40dは全体として左右上下独立温度コントロール手段40を形成している。
【0203】
左右上下独立温度コントロール手段40は、温度をコントロールすべき吹出口にいたる空調ダクト内に装備された冷房用熱交換器と暖房用熱交換器、およびエアミックスドアの組み合わせで構成される。
【0204】
具体的には、その空調ダクト内を流れる空気が冷房用熱交換器によって冷却された後にエアミックスドアで制御された割合だけ暖房用熱交換器を通過することで、その空調ダクト内を流れる空気を独立して温度コントロールすることができる。
【0205】
あるいは、左右上下独立温度コントロール手段40は、エアミックスドアを使用せずに、温度をコントロールすべき吹出口にいたる空調ダクト内に装備された冷房用熱交換器と図13と同様の、流量調整弁で温水の流量が調整される流量調整式の暖房用熱交換器(あるいは電気式暖房用熱交換器)の組み合わせ等で構成される。具体的には、その空調ダクト内を流れる空気が冷房用熱交換器によって冷却された後に、流量調整式の暖房用熱交換器を通過することで、その空調ダクト内を流れる空気を独立して温度コントロールすることができる。
【0206】
以下に説明する第9実施形態においては、前者の冷房用熱交換器と暖房用熱交換器、およびエアミックスドアの組み合わせで構成される左右上下独立温度コントロール手段40を用いる。
【0207】
図2を援用して説明すると、エアコン操作パネル51には、1席優先スイッチ65等が設置されている。図21は上記第9実施形態のエアコンECUの全体制御フローチャートである。図21において、ステップS61において制御がスタートすると、ステップS62において、図2の1席優先スイッチ65がONされたか否かを判定する。1席優先スイッチ65がONされていない場合は、ステップS63において、通常制御を実行する。
【0208】
1席優先スイッチ65がONされている場合は、ステップS64において、空調負荷を算出する。空調負荷とは、外気温度、車室内温度、日射量、設定温度から算出される目標吹出温度TAOや、所定温度と外気温度および車室内温度の差等により求められる。
【0209】
次に、ステップS65において、暖房条件モードが成立しているか否かを判定する。ここで暖房条件モードが成立しているか否かの判定は、第1に、外気温が所定温度以下(一例としては20℃以下)であること、第2に、目標吹出温度TAOが所定値以上(一例としては25℃以上)であることの、少なくとも2つの条件が全てクリヤしているときに暖房条件モードが成立していると判定する。
【0210】
なお、吹出モードが少なくとも運転者側だけでも設定可能な構造の場合は、第3の条件として1席優先スイッチ65がONされる前の吹出モードがフット吹出口から風が出るフットモード、もしくは、フット吹出口とフェイス吹出口の両方から風が出るバイレベルモードであることを、暖房条件モードが成立する条件としてもよい。
【0211】
図21のステップS65において、暖房条件モードが成立していないと判定されたときは、ステップS66で、暖房モード以外の1席優先モードでの制御を実行する。これは例えば、吹出モードをフェイス吹出口から風が出るフェイスモード、または、バイレベルモードにして、運転席の吹出温度よりも助手席の吹出温度を高く設定する。
【0212】
一方、暖房条件モードが成立していると判定されたときは、ステップS67に進み、冬季1席優先モードでの制御に移行する。このステップS67の冬季1席優先モードでの制御とは、吹出モードをフットモードにして、助手席側のエアミックスドアを運転席側よりもクール側に制御するモードである。
【0213】
この場合、この第9実施形態では、後述するように、上下エアミックスドアの下側のエアミックスドアのみをクール側に所定量移動することにより、運転席乗員の温熱快適性を悪化することなく省熱量暖房を実施可能としている。
【0214】
以下、具体的に、下側のエアミックスドアのみをクール側に所定量移動する冬季1席優先モードでの制御を図22に基づいて説明する。図22は、上記第9実施形態における冬季1席優先モードでの制御における左右上下独立温度コントロール手段40(図20)の作動状態を説明する説明図である。
【0215】
図22の(a)部分は左上独立温度コントロール手段40a(図20)である。(b)部分は右上独立温度コントロール手段40bである。(c)部分は左下独立温度コントロール手段40cである。(d)部分は右下独立温度コントロール手段40dである。図22は、各部分(a)(b)(c)(d)において、各作動状態をそれぞれ示している。上述したように、これらの独立温度コントロール手段40a、40b、40c、40dは、全体として左右上下独立温度コントロール手段40を形成している。
【0216】
41aU、41bU、41aD、41bDは、助手席フェイス吹出口(31a、31b)およびデフロスタ吹出口と、運転席フェイス吹出口(21a、21b)およびデフロスタ吹出口と、助手席後席フット吹出口(33a、33b)と、運転席後席フット吹出口(23a、23b)との、各吹出口にいたる空調ダクト部分に設置された冷房用熱交換器(エバポレータ、または冷房用蒸発器とも言う)の部分である。
【0217】
また、42aU、42bU、42aD、42bDは、上記各吹出口にいたる空調ダクト部分に設置された加熱手段としての暖房用熱交換器(ヒータコアとも言う)の部分である。各空調ダクト部分には、上記各吹出口にいたる空気の温度を調整する吹出温度調整機構(吹出温度調整ドアまたはエアミックスドアとも言う)となる運転席上側吹出温度調整ドア15U、運転席下側吹出温度調整ドア15D、助手席上側吹出温度調整ドア16U、助手席下側吹出温度調整ドア16Dが設けられている。
【0218】
冬季1席優先モードでの制御時には、運転席上側吹出温度調整ドア15Uと、運転席下側吹出温度調整ドア15Dと、助手席上側吹出温度調整ドア16Uとは、通常制御と同様に作動させる。一方、助手席下側吹出温度調整ドア16Dは、よりクール側に移動させる。また、助手席フェイス吹出口(31a、31b)および助手席側デフロスタ吹出口20b(図20)は、助手席フェイス開閉機構31c(図20)を含む吹出口開閉機構31ab(図22)を自動で閉じることにより吹出風が発生しないようにしている。
【0219】
前述した第1実施形態の考え方では、上下独立温度コントロール手段が無いため、助手席側全体をクール化することになる。この場合、空調ユニット内で運転席側に冷風が流れ込み、運転席吹出口温度を低下させることがあったが、この第9実施形態では、上側のエアミックスドアをクール側に移動しないため、助手席上側から運転席側に流れ込む空調風も冷たくならず、運転席側のフェイス吹出温度を低下させることがない。
【0220】
また、冬季1席優先モードでの制御(冬季1席集中制御とも言う)を簡易的に行うため、運転席助手席温度を独立して制御できる空調ユニットを利用し、助手席側の吹出温度を下げ、暖房熱量を削減することを基本とする。第1実施形態の場合、助手席側エアミックスドアをクール側に移動して温度を下げ、デフロスタ吹出口、助手席側フェイス吹出口を閉じておくと、空調ユニット内の助手席側に冷風が溜まることがある。
【0221】
このような状態において、窓曇り対応等で、乗員がデフロスタの操作スイッチを操作したとき、最初に冷風が出て、乗員の温感に影響を与える。よって、上下のエアミックスドアを独立して制御できる機構を持つ上下独立温度コントロール手段を利用して、助手席側の上側(デフロスタ、フェイス側)のエアミックスドアをクール側に移動しないように制御している。更に、デフロスタ吹出口、助手席側フェイス吹出口の吹出風をシャットしている。
【0222】
このようにして、上下独立温度コントロール手段を利用して、助手席側の下側(フット側)のエアミックスドアのみをクール側に駆動し、空調に必要な熱量を低減する。これにより、空調に必要な熱量を低減しながら、快適な空調状態を維持できる。なお、デフロスタ吹出口が助手席側と運転席側で分離されていない場合は、デフロスタ吹出口からの吹出風をシャットせず、助手席側フェイス吹出口の吹出風のみをシャットする。
【0223】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。よって、以下に、その他の実施形態を第1例から第14例まで説明する。第1例においては、例えば、上述の実施形態では、1席優先スイッチ65を操作して手動で暖房条件モードのときに1席優先モード制御を実行しているが、乗員の存否を検出するのに、シートに配された着座センサを用いて、運転者しか在席していないことを検出し、このときに、自動で暖房条件モードのときの1席優先モード制御を実行してもよい。
【0224】
また、着座センサの代わりにインストルメントパネルなどに配置したIR(非接触赤外線)温度センサにより、各席の乗員の存否を検出するようにしても良い。また、シートベルトの嵌着信号や各席のドアの開閉信号を用いて、各席の乗員の存否を推定するようにしても良いし、これらの手段を組み合わせて各席の乗員の存否を判断するものであっても良い。
【0225】
次に、第2例を説明する。上記第1実施形態では、吹出口のドア機構を全て省略してコストダウンを図ったが、助手席側の吹出口のドア機構のみ省略してもよい。この場合は、運転席側の吹出モードが、従来周知のように図4のステップS6部分で演算される。
【0226】
この場合、図3のステップS33における暖房運転判定手段が暖房運転と判定するのは、フット吹出口から空調風が吹出されているフット吹出しモードの場合、及びフット吹出口とフェイス吹出口の両方から空調風が吹出されているバイレベル吹出しモード場合のうちいずれか一方であることが暖房条件成立要件として追加される。
【0227】
これによれば、暖房運転判定手段が暖房運転であると判定するのは、フット吹出口から空調風が吹出されている場合、及びフット吹出口とフェイス吹出口の両方から空調風が吹出されている場合のうちいずれか一方であるから、暖房運転を的確に判別することが出来る。
【0228】
次に、第3例を説明する。第1実施形態では、運転席と助手席の両方において温度設定可能とし、運転席と助手席の両方において目標吹出温度TAOを個別に演算したが、運転席側のみ温度設定可能とし、運転席のみの目標吹出温度TAOを演算してもよい。
【0229】
次に、第4例を説明する。第1実施形態においては、吹出口のドア機構を全廃したので、吹出モードの切替は出来ないが、図4のステップS6において、従来と同じく、吹出しモードをTAO等から演算し、図3のステップS33における暖房運転判定手段が暖房運転と判定するのは、フット吹出しモードの場合、及びバイレベル吹出しモードの場合のうちいずれか一方であることを暖房条件成立要件として追加しても良い。
【0230】
これによれば、暖房運転判定手段が暖房運転であると判定するのは、フット吹出しモードの場合、及びバイレベル吹出しモードの場合のうちいずれか一方であるから、暖房運転をより的確に判別することが出来る。
【0231】
次に、第5例を説明する。第2実施形態に示したように、内外気2層ユニットを使用し、かつ、これに第3実施形態(図10〜図12)の構造の一部または全部を組み合わせてもよい。内外気2層ユニットは、助手席側において暖房熱量を節約するため、足元の床部分は内気が循環するが、天井部は外気が流れて寒く感じる。
【0232】
よって、第3実施形態と同様に、図11において、助手席側のフェイス吹出口31a、31b及びデフロスタ吹出口20a、20bが独立して開閉するドア機構24、34、35を備えてもよい。
【0233】
このような車両用空調装置においては、図2の1席優先スイッチ65が押され、暖房条件と判断された場合、助手席側のフェイス吹出口31a、31bもしくはデフロスタ吹出口20a、20bからの送風を停止させるか、もしくは、通常よりも少ない風量となるように、ドア機構24、34、35のドア開度をエアコンECU10からの信号でサーボモータ28、38、39が調整する。
【0234】
これによって、天井部は外気が流れて寒く感じるという問題を解消することが出来る。なお、手動操作で助手席側のフェイス吹出口31a、31bもしくはデフロスタ吹出口20a、20bからの送風を停止させるか、もしくは、通常よりも少ない風量となるように、ドア機構24、34、35のドア開度をコントロールワイヤ等で調整するようにしてもよい。
【0235】
次に、第6例を説明する。暖房目標値として、吹出温度調整ドア開度SWのほかに、すでに述べたように、目標吹出温度TAOや温調式の流量調整弁の開度を用いてもよい。あるいは吹出口に温度センサがある場合は、暖房目標値を目標吹出口温度としてもよい。
【0236】
次に、第7例を説明する。図23は、1席優先モード制御に使用するマップである。図14の第5実施形態においては、運転者側の目標吹出温度DrTAOを基準に制御して吹出温度を制御したが、図23に示すように、運転者側の目標吹出温度DrTAOを先に求め、この求めた値から、助手席側の目標吹出温度PaTAOを従属的に求めて制御を行ってもよい。
【0237】
これによれば、運転者側の目標吹出温度DrTAOが、設定温度、日射量、外気温、内気温等の制御ファクタで演算して求められるため、これらの複数の制御ファクタの変化に対応して、助手席側の目標吹出温度PaTAOを変化させて1席優先モード制御を行なうことが出来る。
【0238】
次に、第8例を説明する。図24は、エアコンECU10の全体制御フローチャートである。図24において、ステップS241で制御がスタートすると、ステップS242において、図2の1席優先スイッチ65がONされたか否かを判定する。
【0239】
1席優先スイッチ65がONされていない場合は、助手席側をクールにしない通常制御をステップS243で実行する。1席優先スイッチ65がONされている場合は、ステップS244において、暖房条件モードが成立しているか否かを判定する。
【0240】
ここで暖房条件モードが成立しているか否かの判定は、第1に、外気温が所定温度以下(一例としては20℃以下)であること、第2に、目標吹出温度TAOが所定値以上(一例としては25℃以上)であることの、少なくとも2つの条件が全てクリヤしているときに暖房条件モードが成立していると判定する。
【0241】
なお、吹出モードが少なくとも運転者側だけでも設定可能な構造の場合は、第3の条件として1席優先スイッチ65がONされる前の吹出モードがフットモードもしくはバイレベルモードであることを、暖房条件モードが成立条件としてもよい。
【0242】
ステップS244において、暖房条件モードが成立していないと判定されたときは、ステップS243で通常制御を実行する。一方、暖房条件モードが成立していると判定されたときは、窓曇り演算手段を成すステップS245に進み、窓曇りを判定する。
【0243】
この窓曇り判定は、上述したように、エアコンECU10において、窓温度センサ49の出力値を予め記憶されている所定の演算式に適用することにより、窓ガラス温度を演算し、更に、相対湿度RH及び窓ガラス温度に基づいて窓ガラス表面相対湿度RHWを演算する。
【0244】
すなわち、湿り空気線図を用いることにより、相対湿度RHと上記空気温度と上記窓ガラス温度の3つから上記窓ガラス表面相対湿度RHWを演算する。そして、この窓ガラス表面相対湿度RHWが所定の基準値を超えるときに窓曇り状態信号が出される。
【0245】
ステップS246において、窓曇り状態信号が出されており、所定の窓曇り状態と判断されたときは、ステップS248に進み、吹出口モードをフットデフモードF/DまたはデフロスタモードDEFとし、図11の助手席側のフェイス吹出口31a、31b及びデフロスタ吹出口20a、20bの全てを、ドア機構24、34、35で、開状態またはそれに近い状態にして、ステップS243の通常制御を行う。
【0246】
一方、ステップS246において、窓曇り状態信号が出されておらず所定の窓曇りの危険が無いと判断したときは、ステップS247に進み、図11の助手席側のフェイス吹出口31a、31b及びデフロスタ吹出口20a、20bの全てを、ドア機構24、34、35で、閉状態またはそれに近い状態にする。
【0247】
ステップS247の後、ステップS249に進み、運転席側の吹出温度Tdと、助手席側の吹出温度Tpとの関係が、運転席側の吹出温度Tdが助手席側の吹出温度Tp以上の温度になるように(Td≧Tp)、通常制御を変形して1席優先モード制御を実行する。
【0248】
このように、図24においては、ステップS248において、窓曇り危険判定時、フット吹出口とデフロスタ吹出口の両方から空調風を吹出すフットデフモードF/Dモード、または、デフロスタ吹出口から空調風を吹出すデフモード(DEFモード)とし、かつ、助手席フェイス吹出口とデフロスタ吹出口とを共に開として、ステップS243の通常制御に移行させ、助手席側の吹出温度を低下させない。これにより、助手席のフェイス吹出口やデフロスタ吹出口の助手席側半分より冷風が出ることによる運転者の温熱快適感悪化を防止できる。
【0249】
次に、図24のステップS249では、助手席側に空調風を吹き出す空調ダクト内において、空調風が暖房用熱交換器を通過する割合が低下するようにエアミックスドアがクール側に制御されるため、空調装置内の助手席側の通風抵抗が減少する。
【0250】
このため、単一のブロワからの風を運転席側と助手席側に分岐させる空調装置においては、助手席側に空調風が取られて、運手席側の吹出風量が減少する。一方、助手席側の吹出風量が増加する。これにより運転席乗員が寒さを感じ、温熱快適感が悪化するという問題がある。
【0251】
この問題を解消するために、ステップS250において、運転席側吹出風量が通常制御時の吹出風量と同等となるようにブロワ補正を行う。このブロワ補正における補正量は、運転席側と助手席側の吹出温度調整機構(エアミックスドア)の開度の差に基づいて決定する。
【0252】
上記ブロワ補正における補正量は、ブロワの回転速度を上げるために、ブロワモータに印加するブロワレベル電圧を全体的に所定量上昇させる補正量とする、または、電圧パルス幅の所定量の拡大(PWM制御等のパルス幅制御の場合)を行う。
【0253】
更には、エアコンECUが決定した運転席および助手席の吹出モードに応じて、あらかじめマップ化された補正式に従って、ブロワの風量をアップさせる補正量としてもよい。
【0254】
なお、図10に関わる第3実施形態においては、窓曇り判定手段として、車室内のフロント窓部分49aの湿度検出センサ76を利用した。そして、エアコンECU10(図1)は、湿度センサ部47の出力値に基づいて、フロント窓付近の車室内空気の相対湿度RHを演算した。
【0255】
すなわち、エアコンECU10は、湿度センサ部47の出力値を相対湿度RHに変換するための所定の演算式を予め記憶しており、この演算式に湿度センサ部47の出力値を適用することにより、相対湿度RHを演算した。
【0256】
次に、エアコンECU10は、窓温度センサ49の出力値を予め記憶されている所定の演算式に適用することにより、窓ガラス温度を演算した。更に、相対湿度RH及び窓ガラス温度に基づいて窓ガラス表面相対湿度RHWを演算した。
【0257】
このように、ガラス部に湿度センサを設置して窓曇り度合いを演算し窓曇り危険度を判定してもよいが、日射量、外気温、内気温、車速、目標吹出温度、ブロワ風量、吹出口モードのいずれかの値をもちいて窓曇り危険度を判定してもよい。
【0258】
次に、その他の実施形態の第9例を説明する。図25は、従来一般的な制御モードM1、第1実施形態等での制御モードM2、および以下に説明するその他の実施形態での制御モードM3において、運転席側と助手席側とにおける吹出温度調整機構の作動の違いを説明するための模式図である。
【0259】
図25において、41aは運転席側冷房用熱交換器、42aは運転席側暖房用熱交換器、41bは助手席側冷房用熱交換器、42bは助手席側暖房用熱交換器である。15は運転席側吹出温度調整ドア、16は助手席側吹出温度調整ドアである。
【0260】
従来一般的な制御モードM1においては、運転席側のフット吹出口温度50℃、助手席側のフット吹出口温度50℃で空調風を吹出しているとすると、制御モードM1を制御モードM2のように変更した場合、空調装置の構造によっては、助手席側の吹出温度を低く制御した時に、空調風の漏れや空調ダクト壁を介する熱伝達によって、助手席側の冷風の影響を受け、運転席側の吹出温度が低下することがある。
【0261】
例えば、図25の制御モードM1においては、運転席側のフット吹出口温度50℃、助手席側のフット吹出口温度50℃であったのが、制御モードM2においては、1席優先制御モードを行って助手席側のフット吹出口温度を25℃に低下させると、この助手席クール化の影響が運転席に波及し、運転席側のフット吹出口温度が45℃に低下することがある。
【0262】
これを防止するため、助手席側の吹出温度を低下させる時には、制御モードM3のように、運転席側吹出温度が通常時と同等となるように、運転席側吹出温度調整機構(エアミックスドア)15を暖かい側(HOT側)に補正して制御してもよい。この補正は、吹出温度調整ドア開度DrSW(%)または運転席側の目標吹出温度を所定量だけ上げるように補正する。
【0263】
次に、第10例を説明する。図26は、その他の実施形態を示し、運転席側膝向け吹出口27(図1)の吹出風をシャットしたり開放したりする開閉機構が装備されている空調装置に適用される吹出口温度の制御マップを示すグラフである。
【0264】
図1においては、運転者の膝に向けて運転席側フット吹出口23aと同様の空調風を吹出す運転席側膝向け吹出口27を設けた。このように、車両に運転席側膝向け吹出口27が設けられており、かつ運転席側膝向け吹出口27の吹出風を自動または手動によりシャットしたり開放したりする開閉機構が装備されている空調装置においては、開閉機構をシャットして膝吹出し無しで制御しているときは、開閉機構を開放して膝吹出し有りで制御しているときに比べ、乗員温熱感が悪化しやすい。
【0265】
よって、開閉機構を開放して膝吹出し有りで制御している状態から、開閉機構をシャットして膝吹出し無しで制御している状態に移行したときには、乗員温熱感が悪化しやすい。従って、このような場合は、図26の実線の状態から破線の状態のように、助手席側吹出温度もしくは運転席側吹出温度のうち少なくともいずれかの一方の吹出温度が高くなるように制御することにより、上記乗員温熱感の悪化を軽減させてもよい。
【0266】
次に、第11例を説明する。空調モードとして快適、ノーマル、エコ等の自動車全体または空調装置のみの制御モードを選択できるスイッチ手段を備える車両がある。例えば電気自動車にあっては、バッテリの節約のために、快適モードでの空調制御から通常制御、あるいは通常制御から、よりバッテリ電力をセーブできるエコ制御(エコノミ制御)を乗員が選択したり、自動的に選択したりすることが行われる。
【0267】
このように、エコ制御が選択された場合において、この制御モードのランクの低下に応じて、助手席側吹出温度もしくは運転席側吹出温度のうち少なくともいずれか一方を低く制御してもよい。以下、これについて図27を用いて説明する。
【0268】
図27は、上記第11例のその他の実施形態を示し、運転席側の目標吹出温度に基づいて制御される吹出口温度の制御マップを示すグラフである。図27において、通常の快適運転の状態を示す破線の状態から、エコノミ運転を指示するスイッチを乗員が操作したときに、実線のように運転席側の吹出温度および助手席側の吹出温度のうち少なくともいずれか一方を更に低下させている。
【0269】
次に、第12例を説明する。寒冷地仕様の空調装置等や電気自動車(EV)等においてPTCヒータ(電気ヒータ)を空調ダクト内における暖房用熱交換器として複数分散配置し、運転席と助手席との左右で独立に空調温度を制御できる左右独立温度コントロール手段を有する空調装置が考えられる。
【0270】
このような空調装置において、1席優先モードでの制御時には、助手席側の電気ヒータを使用しないか、もしくは、使用電力削減により助手席側の吹出温度を低下させ、空調能力の削減(使用電力量の削減)を行ってもよい。
【0271】
次に、第13例を説明する。1席優先モードでの制御時において、助手席に乗員が乗り込み1席空調が解除されるとき、数秒間空調風の吹出を止める、もしくはブロワ回転数を下げて吹出し風量を減らすことにより、助手席側の初期冷風の影響を小さくしてもよい。なお、助手席に乗り込んだか否かは、例えば着座センサからの信号で判定できる。
【0272】
次に、第14例を説明する。1席優先モードでの制御の結果、助手席に乗員が乗り込み、1席空調が解除された後は、助手席側の温度は運転席側より少し寒く設定されていたため、助手席に乗り込んだばかりの乗員が温感不足を感じることがある。
【0273】
この問題に対処するために、助手席に乗員が乗り込んでから、所定時間ホット側に、エアミックスドアを強制的に移動させて、温度制御を一時的にオーバーシュートさせ、助手席乗員の温熱快適感の早期向上を図ってもよい。
【符号の説明】
【0274】
1 空調ユニット
2 空調ダクト(通風路)
3 内外気切替ドア(吸込部)
6 内気導入口
10 エアコンECU(制御手段)
11、12 第1、第2空気通路
15 運転席側吹出温度調整ドア(運転席側吹出温度調整機構)
15U 運転席上側吹出温度調整ドア
15D 運転席下側吹出温度調整ドア
16 助手席側吹出温度調整ドア(助手席側吹出温度調整機構)
16U 助手席上側吹出温度調整ドア
16D 助手席下側吹出温度調整ドア
20、20a、20b デフロスタ吹出口
20a 運転席側デフロスタ吹出口
20b 助手席側デフロスタ吹出口
21a、21b 運転席側フェイス吹出口
23a 運転席側フット吹出口
23b 運転席側後席フット吹出口
24、34、35 ドア機構
27 運転席側膝向け吹出口
31a、31b 助手席側フェイス吹出口
31c 助手席フェイス開閉機構
33a 助手席側フット吹出口
33b 助手席側後席フット吹出口
40 左右上下独立温度コントロール手段
40a 左上独立温度コントロール手段
40b 右上独立温度コントロール手段
40c 左下独立温度コントロール手段
40d 右下独立温度コントロール手段
41 冷房用熱交換器
41a 運転席側冷房用熱交換器
41b 助手席側冷房用熱交換器
41aU、41bU、41aD、41bD 各吹出口にいたる空調ダクト部分に設置された冷房用熱交換器の部分
42 暖房用熱交換器
42a 運転席側暖房用熱交換器
42b 助手席側暖房用熱交換器
42aU、42bU、42aD、42bD 各吹出口にいたる空調ダクト部分に設置された暖房用熱交換器の部分
45a、45b 流量調整弁
49 窓温度センサ
65 1席優先スイッチ
71 内気温検出手段としての内気温センサ
72 外気温検出手段としての外気温センサ
73 日射検出手段としての日射センサ
74 冷房用熱交換器後温度センサ
75 加熱温度検出手段としての冷却水温センサ
76 湿度検出手段としての湿度検出センサ
77 着座センサ
100 シート空調装置
101、102 補正手段
DEF デフロスタモード
DrSW 運転席側吹出温度調整ドア開度
DrTAO 運転席側の目標吹出温度
DrTAOP 運転席側の1席優先目標吹出温度
F/D フットデフモード
Ls 基準線
PaSW 助手席側吹出温度調整ドア開度
PaTAO 助手席側の目標吹出温度
PaTAOP 助手席側の1席優先目標吹出温度
S32 運転席在席判定手段
S33 暖房運転判定手段
S35 1席優先モード制御
SW 吹出温度調整ドア開度
SWo 補正前温度調整ドア開度
SWTs 日射量補正値
SWVs 車速補正値
Td 運転席側の吹出温度
Te 冷房用熱交換器後温度
TEO 目標冷房用熱交換器後温度
Tp 助手席側の吹出温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内気または外気から導入した空気を内部の暖房用熱交換器(42)により空調風に変換して車両の乗員が着座する車室内に吹出口から吹出す空調ユニット(1)を供え、前記車室内の運転席側の吹出温度調整機構(15)及び助手席側の吹出温度調整機構(16)を前記空調ユニット(1)内に独立に備えた車両用空調装置であって、
運転席の在席の有無を判定し運転席のみに乗員が在席していることを判定するする運転席在席判定手段(S32、S42)と、前記運転席側の空調状態が暖房運転か否かを判定する暖房運転判定手段(S33、S44)と、前記運転席在席判定手段(S32、S42)が前記運転席のみに前記乗員が在席していると判定し、かつ前記暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定しているときに、前記吹出温度調整機構(15、16)を制御し、前記助手席側の吹出温度を前記運転席側の吹出温度よりも低くするように制御して運転席優先暖房を行なう制御手段(10)とを備えることを特徴する車両用空調装置。
【請求項2】
更に、前記吹出温度調整機構(15、16)は、暖房用熱交換器(42)を通過する風量と通過しない風量を温風吹出温度調整ドアにより制御する機構からなり、前記温風吹出温度調整ドアは運転席側温風吹出温度調整ドア(15)と助手席側温風吹出温度調整ドア(16)とから成ることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
更に、前記空調ユニット(1)は内外気2層ユニットから成り、外気を前記空調ユニット(1)内に導入する外気導入時は前記空調ユニット(1)から吹出す空調風が流れる領域を前記車室内の上層部だけとし、内気を前記空調ユニット内に導入する内気導入時は前記空調ユニット(1)から吹出す空調風が流れる領域を前記車室内の前記乗員の足元が位置する前記車室内の下層部だけとすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
更に、前記空調ユニット(1)は、前記吹出口を成し、助手席側乗員の顔面方向に前記空調風を吹出す助手席側フェイス吹出口(31a、31b)または前記車室内の窓に前記空調風を吹出すデフロスタ吹出口(20a、20b)の開閉が可能な吹出口開閉機構(24、34、35)、及び前記車両の窓曇りの状態を演算する窓曇り演算手段(S45)を備え、前記暖房運転判定手段(S44)が暖房運転と判定した場合に、前記吹出温度調整機構(15、16)を制御し、前記助手席側の吹出温度を前記運転席側の吹出温度よりも低くするように制御しながら、前記窓曇り演算手段(S45)が演算した窓曇りの状態に応じて、前記助手席側フェイス吹出口(31a、31b)、または、前記デフロスタ吹出口(20a、20b)の開閉を前記吹出口開閉機構(24、34、35)で調整する前記制御手段(10)を備えることを特徴する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
更に、前記空調ユニット(1)は、前記車室内の乗員の足元に空調風を吹出すフット吹出口(23a、23b、33a、33b)と、運転席側に着座した運転者の膝部分に前記空調風を吹出す膝向け吹出口(27)を備え、前記運転席のみに前記乗員が在席していると判定し、かつ前記暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定しているときに、前記吹出温度調整機構(15、16)を制御し、前記助手席側の吹出温度を前記運転席側の吹出温度よりも低くするように制御するとともに、前記運転者の膝部分に前記膝向け吹出口(27)から前記空調風を吹出すことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
更に、前記助手席側にシートを暖房するシート空調手段(100)が供えられており、前記制御手段(10)は、前記助手席側の吹出温度を前記運転席側の吹出温度よりも低くするように前記吹出温度調整機構(15、16)を制御する前記助手席側の暖房目標値と前記運転席側の暖房目標値を設定する手段を備え、前記シート空調手段(100)が作動しているときに、前記シート空調手段(100)が作動していないときに比べ前記助手席側の前記暖房目標値を冷温側に下げることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記暖房用熱交換器(42)は、前記運転席側と前記助手席側で夫々独立した運転席側暖房用熱交換器(42a)と助手席側暖房用熱交換器(42b)から成り、前記運転席側暖房用熱交換器(42a)と前記助手席側暖房用熱交換器(42b)を通過する温水流量を制御する温水流量制御手段(45a、45b)を備え、前記運転席のみに前記乗員が在席していると判定し、かつ前記暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定しているときに、前記助手席側の吹出温度を前記運転席側の吹出温度よりも低くするように、前記吹出温度調整機構を成す前記温水流量制御手段(45a、45b)を制御することを特徴する請求項1ないし6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記空調ユニット(1)は、前記吹出口として前記車室内の乗員の足元に前記空調風を吹出すフット吹出口(23a、23b、33a、33b)と前記車室内の乗員の顔面に前記空調風を吹出すフェイス吹出口(21a、21b、31a、31b)とを備え、前記暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定するのは、前記フット吹出口(23a、23b、33a、33b)から前記空調風が吹出されるモードの場合、及び前記フット吹出口(23a、23b、33a、33b)と前記フェイス吹出口(21a、21b、31a、31b)の両方から前記空調風が吹出されるモードの場合のうちいずれか一方のモードのときであることを特徴する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
更に、前記車両外部の外気温を検出する手段(72)を備え、前記外気温が低くなるにつれて前記助手席側の前記吹出温度が高くなるように、助手席側温度調整機構(16)を前記制御手段(10)が制御することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記制御手段(10)は、少なくとも前記乗員が設定した設定温度に基づいて目標吹出温度を演算する目標吹出温度演算手段(S3)を有し、演算された目標吹出温度に基づいて前記吹出温度調整機構(15、16)を制御しており、前記運転席在席判定手段(S32、S42)が前記運転席のみに前記乗員が在席していると判定し、かつ前記暖房運転判定手段(S33、S44)が暖房運転と判定しているときに、前記助手席側の吹出温度と前記運転席側の吹出温度との格差が、前記目標吹出温度が低くなるにつれて拡大するように、前記吹出温度調整機構(15、16)を制御することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記車両の車速または前記車室内への日射量に応じて、前記車速が高くなるほど前記助手席側の吹出温度が高くなるように、または、前記日射量が多くなるほど前記助手席側の吹出温度が低くなるように補正する補正手段(101)を備えることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記助手席側の吹出温度調整機構(16)は、前記助手席側の上側の吹出温度を調整する助手席上側の吹出温度調整機構(16U)、前記助手席側の下側の吹出温度を調整する助手席下側の吹出温度調整機構(16D)を備え、
前記制御手段(10)は、前記助手席側の吹出温度を前記運転席側の吹出温度よりも低くするように制御するときに、前記助手席下側の吹出温度調整機構(16D)を、前記助手席上側の吹出温度調整機構(16U)よりも、クール側に設定し、かつ、前記助手席下側の吹出温度を前記運転席側の吹出温度よりも低くして前記運転席優先暖房を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記制御手段(10)は、前記助手席側の吹出温度を前記運転席側の吹出温度よりも低くするように制御するときに、前記助手席上側のフェイス吹出口(31a、31b)を閉じることを特徴とする請求項12に記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記窓曇り演算手段(S45)が窓曇りの危険があると判定したときは、前記制御手段(10)は、前記助手席側フェイス吹出口(31a、31b)、または、前記デフロスタ吹出口(20a、20b)を前記吹出口開閉機構(24、34、35)で開き、前記運転席優先暖房を行なわない通常制御を行い、
前記窓曇り演算手段(S45)が窓曇りの危険が無いと判定したときは、前記制御手段(10)は、前記助手席側フェイス吹出口(31a、31b)、または、前記デフロスタ吹出口(20a、20b)を前記吹出口開閉機構(24、34、35)で閉じ、前記運転席優先暖房を行なうことを特徴する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−1200(P2012−1200A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30003(P2011−30003)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】