説明

車両用空調装置

【課題】車両用空調装置に適用される冷凍サイクルから発生する不快な臭いの発生の抑制と冷凍サイクルを構成する圧縮機の消費動力の低減との両立を図る。
【解決手段】室内蒸発器に発生した結露水が排除されたことを判定するステップS601を備え、冷凍サイクルは、室内蒸発器にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させる冷房モードの冷媒回路、室外熱交換器にて吸熱した熱量を室内凝縮器にて放熱させる暖房モードの冷媒回路、並びに室内蒸発器および室外熱交換器の双方にて吸熱した熱量を室内凝縮器にて放熱させる除湿暖房モードの冷媒回路を切替える冷媒回路切替手段を有し、冷媒回路切替手段は、冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切替えた後、ステップS601によって結露水が排除されたと判定されるまで、暖房モードの冷媒回路に優先して冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを備える車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって、車室内へ送風される送風空気の温度調整や湿度調整を行う車両用空調装置が知られている。この種の車両用空調装置では、冷凍サイクルの室内蒸発器にて結露した結露水が乾く際、あるいは結露水が凍結する際に不快な臭いが発生し、この臭いが車室内に流入して乗員に不快感を与えるという問題があった。
【0003】
これに対して、特許文献1に記載の車両用空調装置では、冷凍サイクルの圧縮機が停止した後、室内蒸発器にて発生した結露水が乾き始める前に圧縮機を再起動させて、室内蒸発器の冷媒蒸発温度を送風空気の露点以下としている。これにより、結露水を乾かさないようにして不快な臭いの発生を抑制している。
【0004】
また、特許文献2に記載の車両用空調装置では、冷凍サイクルの起動時に圧縮機の冷媒吐出能力をサイクル内の冷媒圧力に基づいて制御することで、室内蒸発器の冷媒蒸発温度が結露水の凍結温度(0℃)以下となることを防止している。これにより、結露水の凍結を防止して不快な臭いの発生を抑制している。
【0005】
また、特許文献3には、冷凍サイクルの室内蒸発器にて吸熱した熱量を室外凝縮器にて放熱させて車室内に送風される送風空気を冷却する冷房モードの冷媒回路と、冷凍サイクルの室内蒸発器および室外熱交換器の双方で吸熱した熱量を室内凝縮器にて放熱させて送風空気を除湿して加熱する除湿暖房モードの冷媒回路とを切替可能に構成された車両用空調装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−130247号公報
【特許文献2】特開2008−13165号公報
【特許文献3】特開平7−32871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1および2に記載された結露水による不快な臭いの発生を抑制するための手段、すなわち室内蒸発器における冷媒蒸発温度を送風空気の露点以下であって凍結温度(0℃)以上とする手段を、特許文献3の車両用空調装置の除湿暖房モードに適用すると以下のような問題が生じる。
【0008】
つまり、特許文献3の車両用空調装置では、主に外気温に応じて運転モードを切り替えており、外気温が低いときに除湿暖房モードに切り替えられる。従って、除湿暖房モード時に室内蒸発器および室外熱交換器の双方で冷媒に吸熱作用を発揮させるためには、双方の熱交換器における冷媒蒸発温度を外気温よりも低温としなければならない。
【0009】
そのため、除湿暖房モード時に上記特許文献1および2に記載されたによる不快な臭いの発生を抑制するための手段を採用すると、結果的に、室内蒸発器および室外熱交換器における冷媒蒸発温度を外気温よりも低い凍結温度(0℃)近くまで低下させなければならず、圧縮機の消費動力が大きくなってしまうという問題が生じる。
【0010】
上記点に鑑みて、本発明は、冷凍サイクルを備える車両用空調装置において、不快な臭いの発生の抑制と圧縮機の消費動力の低減との両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、冷媒を吸入し、圧縮して吐出する圧縮機(11)、冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)、冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる室内蒸発器(26)、および冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する室内凝縮器(12)を有する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、室内蒸発器(26)に発生した結露水が排除されたことを判定する結露水排除判定手段(S601)とを備え、冷凍サイクル(10)は、室内蒸発器(26)にて吸熱した熱量を室外熱交換器にて放熱させて送風空気を冷却する冷房モードの冷媒回路、室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を室内凝縮器(12)にて放熱させて送風空気を加熱する暖房モードの冷媒回路、並びに、室内蒸発器(26)および室外熱交換器(16)の双方にて吸熱した熱量を室内凝縮器(12)にて放熱させて送風空気を除湿して加熱する除湿暖房モードの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替手段(13〜24)を有し、冷媒回路切替手段(13〜24)は、冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えた後、結露水排除判定手段(S601)によって結露水が排除されたと判定されるまで、暖房モードの冷媒回路に優先して冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切り替える車両用空調装置を特徴とする。
【0012】
これによれば、結露水排除判定手段(S601)を備え、冷媒回路切替手段(13〜24)が冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えた後は、暖房モードの冷媒回路に優先して冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えるので、不快な臭いの発生の抑制と圧縮機(11)の消費動力の低減との両立を図ることができる。
【0013】
つまり、冷媒回路切替手段(13〜24)が、一度、冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えると、室内蒸発器(26)にて結露水が発生することが予想される。
【0014】
従って、冷媒回路切替手段(13〜24)が冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えた後は、暖房モードの冷媒回路に優先して冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えることで、不快な臭いの発生の抑制できる。
【0015】
さらに、結露水排除判定手段(S601)によって室内蒸発器(26)に発生した結露水が排除されたと判定された後は、冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路が優先されることなく、暖房モードの冷媒回路にも切り替えられるので、圧縮機(11)の消費動力を低減できる。
【0016】
請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の車両用空調装置において、結露水排除判定手段(S601)は、具体的には、車両システムの停止から基準待機時間が経過すると室内蒸発器(26)に発生した結露水が排除されたことを判定するようになっている。
【0017】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置の冷房モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。
【図2】第1実施形態の車両用空調装置の暖房モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。
【図3】第1実施形態の車両用空調装置の第1除湿モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。
【図4】第1実施形態の車両用空調装置の第2除湿モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態の車両用空調装置の制御を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の車両用空調装置の制御の要部を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態の車両用空調装置の制御の別の要部を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態の車両用空調装置の制御の別の要部を示すフローチャートである。
【図10】第1実施形態の車両用空調装置の制御の別の要部を示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態の車両用空調装置の制御の要部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
図1〜10により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の車両用空調装置を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用している。図1〜4は、車両用空調装置1の全体構成図である。
【0020】
この車両用空調装置は、車室内を冷房する冷房モード(COOLサイクル)、車室内を暖房する暖房モード(HOTサイクル)、車室内を除湿する第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)の冷媒回路を切替可能に構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を備えている。図1〜4は、それぞれ、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モード時の冷媒の流れを実線矢印で示している。
【0021】
なお、第1除湿モードは、暖房能力に対して除湿能力を優先する除湿モードであり、第2除湿モードは、除湿能力に対して暖房能力を優先する除湿モードである。従って、第1除湿モードを低温除湿モードあるいは単なる除湿モード、第2除湿モードを高温除湿モードあるいは除湿暖房モードと表現することもできる。
【0022】
冷凍サイクル10は、圧縮機11、室内熱交換器としての室内凝縮器12および室内蒸発器26、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての温度式膨張弁27および固定絞り14、並びに、冷媒回路切替手段としての複数(本実施形態では5つ)の電磁弁13、17、20、21、24等を備えている。
【0023】
また、この冷凍サイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0024】
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
【0025】
電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0026】
圧縮機11の吐出側には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、車両用空調装置の室内空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器26通過後の送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット30の詳細については後述する。
【0027】
室内凝縮器12の冷媒出口側には、電気式三方弁13が接続されている。この電気式三方弁13は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。
【0028】
より具体的には、電気式三方弁13は、電力が供給される通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続する冷媒回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続する冷媒回路に切り替える。
【0029】
固定絞り14は、暖房モード、第1および第2除湿モード時に、電気式三方弁13から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房除湿用の減圧手段である。この固定絞り14としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。もちろん、暖房除湿用の減圧手段として、空調制御装置50から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構を採用してもよい。固定絞り14の冷媒出口側には、後述する第3三方継手23の冷媒流入出口が接続されている。
【0030】
第1三方継手15は、3つの冷媒流入出口を有し、冷媒流路を分岐する分岐部として機能するものである。このような三方継手は、冷媒配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。また、第1三方継手15の別の冷媒流入出口には、室外熱交換器16の一方の冷媒流入出口が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、低圧電磁弁17の冷媒入口側が接続されている。
【0031】
低圧電磁弁17は、冷媒流路を開閉する弁体部と、弁体部を駆動するソレノイド(コイル)を有し、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。より具体的には、低圧電磁弁17は、通電状態で開弁して非通電状態で閉弁する、いわゆるノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。
【0032】
低圧電磁弁17の冷媒出口側には、第1逆止弁18を介して、後述する第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第1逆止弁18は、低圧電磁弁17側から第5三方継手28側へ冷媒が流れることのみを許容している。
【0033】
室外熱交換器16は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン16aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0034】
さらに、本実施形態の送風ファン16aは、室外熱交換器16のみならず、エンジンEGの冷却水を放熱させるラジエータ(図示せず)にも室外空気を送風している。具体的には、送風ファン16aから送風された車室外空気は、室外熱交換器16→ラジエータの順に流れる。
【0035】
また、図1〜4の破線で示す冷却水回路には、冷却水を循環させるための図示しない冷却水ポンプが配置されている。この冷却水ポンプは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。具体的には、冷却水ポンプはエンジンEGの作動に連動して作動させればよい。
【0036】
室外熱交換器16の他方の冷媒流入出口には、第2三方継手19の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第2三方継手19の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第2三方継手19の別の冷媒流入出口には、高圧電磁弁20の冷媒入口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、熱交換器遮断電磁弁21の一方の冷媒流入出口が接続されている。
【0037】
高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。但し、高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、通電状態で閉弁して非通電状態で開弁する、いわゆるノーマルオープン型の開閉弁として構成されている。
【0038】
高圧電磁弁20の冷媒出口側には、第2逆止弁22を介して、後述する温度式膨張弁27の絞り機構部入口側が接続されている。この第2逆止弁22は、高圧電磁弁20側から温度式膨張弁27側へ冷媒が流れることのみを許容している。
【0039】
熱交換器遮断電磁弁21の他方の冷媒流入出口には、第3三方継手23の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第3三方継手23の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第3三方継手23の別の冷媒流入出口には、前述の如く、固定絞り14の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、除湿電磁弁24の冷媒入口側が接続されている。
【0040】
除湿電磁弁24は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。さらに、除湿電磁弁24もノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。そして、本実施形態の冷媒回路切替手段は、電力の供給が停止されると予め定めた開弁状態あるいは閉弁状態となる電気式三方弁13、低圧電磁弁17、高圧電磁弁20、熱交換器遮断電磁弁21、除湿電磁弁24の複数(5つ)の電磁弁によって構成される。
【0041】
除湿電磁弁24の冷媒出口側には、第4三方継手25の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第4三方継手25の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第4三方継手25の別の冷媒流入出口には、温度式膨張弁27の絞り機構部出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、室内蒸発器26の冷媒入口側が接続されている。
【0042】
室内蒸発器26は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
【0043】
室内蒸発器26の冷媒出口側には、温度式膨張弁27の感温部入口側が接続されている。温度式膨張弁27は、絞り機構部入口から内部へ流入した冷媒を減圧膨張させて絞り機構部出口から外部へ流出させる冷房用の減圧手段である。
【0044】
より具体的には、本実施形態では、温度式膨張弁27として、室内蒸発器26出口側冷媒の温度および圧力に基づいて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度を検出する感温部27aと、感温部27aの変位に応じて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように絞り通路面積(冷媒流量)を調整する可変絞り機構部27bとを1つのハウジング内に収容した内部均圧型膨張弁を採用している。
【0045】
温度式膨張弁27の感温部出口側には、第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第5三方継手28の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第5三方継手28の別の冷媒流入出口には、前述の如く、第1逆止弁18の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、アキュムレータ29の冷媒入口側が接続されている。
【0046】
アキュムレータ29は、第5三方継手28から、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ29の気相冷媒出口には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
【0047】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内蒸発器26、室内凝縮器12、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
【0048】
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する図示しない内外気切替箱が配置されている。
【0049】
より具体的には、内外気切替箱には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替箱の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
【0050】
従って、内外気切替ドアは、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0051】
また、吸込口モードとしては、内気導入口を全開とするとともに外気導入口を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口を全閉とするとともに外気導入口を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0052】
内外気切替箱の空気流れ下流側には、内外気切替箱を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0053】
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器26が配置されている。さらに、室内蒸発器26の空気流れ下流側には、室内蒸発器26通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
【0054】
加熱用冷風通路33には、室内蒸発器26通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。ヒータコア36は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と室内蒸発器26通過後の空気とを熱交換させて、室内蒸発器26通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0055】
また、PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、電力を供給されることによって発熱して、室内凝縮器12通過後の空気を加熱する電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37は、複数本(具体的には3本)設けられており、空調制御装置50が、通電するPTCヒータ37の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ37全体としての加熱能力が制御される。
【0056】
一方、冷風バイパス通路34は、室内蒸発器26通過後の空気を、ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0057】
そこで、本実施形態では、室内蒸発器26の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア38を配置している。
【0058】
従って、エアミックスドア38は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア38は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0059】
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口(図示せず)が配置されている。この吹出口としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口が設けられている。
【0060】
また、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
【0061】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0062】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口およびデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口およびデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0063】
さらに、乗員が後述する操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0064】
なお、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両は、車両用空調装置とは別に、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガとは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行うものである。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
【0065】
次に、図5により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、冷媒回路切替手段を構成する各電磁弁13、17、20、21、24、送風ファン16a、送風機32、各種電動アクチュエータ62、63、64等の作動を制御する。
【0066】
なお、空調制御装置50は、上述した各種機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、本実施形態では、特に、圧縮機11の吐出能力変更手段である電動モータ11bの作動(冷媒吐出能力)を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を吐出能力制御手段50aとする。もちろん、吐出能力制御手段50aを空調制御装置50に対して別体で構成してもよい。
【0067】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11の吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、室内蒸発器26からの吹出空気温度(冷媒蒸発温度、蒸発器温度に対応)Teを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、第1三方継手15と低圧電磁弁17との間を流通する冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ57、エンジン冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等のセンサ群の検出信号が入力される。
【0068】
なお、本実施形態の圧縮機11の吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdは、冷房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力であり、その他の運転モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から固定絞り14入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力となる。なお、吐出圧力センサ55は、一般的な冷凍サイクルにおいても、高圧側冷媒圧力の異常上昇を監視するために設けられている。
【0069】
蒸発器温度センサ56は、具体的に室内蒸発器26の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器26のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器26を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。
【0070】
湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。すなわち、湿り空気線図を用いることにより、窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度と、窓ガラス近傍の車室内空気の温度と、窓ガラス表面温度とから窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出できる。
【0071】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ、冷凍サイクルの省動力化を優先させる指令を出力するエコノミースイッチ等が設けられている。
【0072】
次に、図6により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図6は、本実施形態の車両用空調装置1の制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両システムが停止している場合でも、バッテリから空調制御装置50に電力が供給されることによって実行される。
【0073】
まず、ステップS1では、プレ空調のスタートスイッチ、あるいは操作パネル60の車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されたか否かを判定する。そして、プレ空調のスタートスイッチ、あるいは車両用空調装置の作動スイッチが投入されるとステップS2へ進む。
【0074】
なお、プレ空調とは、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を開始する空調制御である。プレ空調のスタートスイッチは、乗員が携帯する無線端末(リモコン)に設けられている。従って、乗員は車両から離れた場所から車両用空調装置1を始動させることができる。
【0075】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両では、バッテリに対して商用電源(外部電源)から電力を供給することによって、バッテリの充電を行うことができる。そこで、プレ空調は、車両が外部電源に接続されている場合は所定時間(例えば、30分間)だけ行われ、外部電源に接続されていない場合は、バッテリ残量が所定量以下となるまで行うようになっている。
【0076】
ステップS2では、フラグ、タイマ、制御変数等のイニシャライズ(初期化)、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。
【0077】
次のステップS3では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS4へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機32の風量の設定信号等がある。
【0078】
ステップS4では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜57の検出信号を読み込んで、ステップS5へ進む。ステップS5では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。さらに、暖房モードでは、暖房用熱交換器目標温度を算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された内気温、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0079】
また、暖房用熱交換器目標温度は、基本的に上述の数式F1にて算出される値となるが、消費電力の抑制のために数式F1にて算出されTAOよりも低い値とする補正が行われる場合もある。
【0080】
続くステップS6〜S16では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS6では、空調環境状態に応じて、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの選択およびPTCヒータ37に対する通電有無の決定が行われる。このステップS6の詳細については、図7を用いて説明する。
【0081】
まず、ステップS61では、プレ空調を行っているか否かを判定する。ステップS61にてプレ空調を行っていると判定された場合は、ステップS62へ進み、外気温Tamが−3℃よりも低いか否かを判定する。ステップS62にて外気温Tamが−3℃よりも低いと判定された場合は、ステップS63にてPTCヒータ37への通電の必要があると判定してステップS7へ進む。
【0082】
このように外気温Tamが−3℃よりも低いときにPTCヒータ37への通電が必要であると判定する理由は、外気温Tamが−3℃よりも低いときに冷凍サイクル10にて暖房を行うと、サイクルの高低圧差が大きくなり、サイクル効率(COP)が低下してしまうとともに、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度が低くなり、室外熱交換器16に着霜するおそれがあるからである。
【0083】
ステップS62にて外気温Tamが−3℃よりも低くなっていないと判定された場合は、ステップS64へ進み、吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。ステップS64にて吹出口モードがフェイスモードであると判定された場合は、ステップS65へ進み、COOLサイクルを選択してステップS7へ進む。その理由は、後述するステップS9で説明するように、フェイスモードは主に夏季に選択される運転モードだからである。
【0084】
ステップS64にて吹出口モードがフェイスモードでないと判定された場合は、ステップS66へ進み、操作パネル60のエコノミースイッチが投入(ON)されているか否かを判定する。ステップS66にてエコノミースイッチが投入(ON)されていると判定された場合は、ステップS67にて窓曇り判定値=110として、ステップS69へ進む。また、ステップS66にてエコノミースイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS68にて窓曇り判定値=100として、ステップS69へ進む。
【0085】
ステップS69では、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値から算出された相対湿度RHWが、窓曇り判定値より大きいか否かを判定する。ステップS69にて、相対湿度RHWが窓曇り判定値より大きくないと判定された場合は、ステップS73へ進み、HOTサイクルを選択してステップS7へ進む。
【0086】
ここで、ステップS66〜S68にて説明したように、エコノミースイッチが投入されているときよりも、投入されていないときの方が、窓曇り判定値が小さい値に設定される。従って、エコノミースイッチが投入されているときよりも、投入されていないときの方が、ステップS73へ進みやすい。すなわち、HOTサイクルが選択されやすい。
【0087】
ステップS69にて、相対湿度RHWが窓曇り判定値より大きいと判定された場合は、ステップS70へ進む。ステップS70では、車室内の除湿の必要度合を、「必要無」、「必要小」、「必要有」の三段階で判定する。
【0088】
具体的には、除湿の必要度合は、ステップS70に示すように、後述するステップS11にて説明する目標吹出空気温度TEOから蒸発器温度センサ56にて検出された冷媒蒸発温度Teを減算した偏差TEO−Teの大きさに応じて決定される。
【0089】
偏差TEO−Teが第1基準温度差としての2(℃)以上となるまで上昇すると、除湿の必要度合を「必要小」から「必要無」へ変更し、偏差TEO−Teが第2基準温度差としての1.5(℃)以下となるまで低下すると、除湿の必要度合を「必要無」から「必要小」へ変更する。
【0090】
同様に、偏差TEO−Teが第3基準温度としての1(℃)以上となるまで上昇すると、除湿の必要度合を「必要有」から「必要小」へ変更し、偏差TEO−Teが第4基準温度としての0.5(℃)以下となるまで低下すると、除湿の必要度合を「必要小」から「必要有」へ変更する。
【0091】
なお、第1基準温度差と第2基準温度差との温度差および第3基準温度と第4基準温度との温度差は、ハンチング防止のためのヒステリシス幅となる。そして、ステップS70にて除湿の必要度合が「必要無」と判定された場合は、ステップS73へ進み、HOTサイクルを選択してステップS7へ進む。
【0092】
ステップS70にて除湿の必要度合が「必要小」と判定された場合は、ステップS72へ進み、DRY_ALLサイクルを選択してステップS7へ進む。ステップS70にて除湿の必要度合が「必要有」と判定された場合は、ステップS71へ進み、DRY_EVAサイクルを選択してステップS7へ進む。
【0093】
一方、ステップS61にてプレ空調を行っていないと判定された場合は、ステップS74へ進み、外気温Tamが−3℃よりも低いか否かを判定する。ステップS74にて外気温Tamが−3℃よりも低いと判定された場合は、ステップS75へ進み、COOLサイクルを選択してステップS7へ進む。
【0094】
ステップS74にて外気温Tamが−3℃よりも低くなっていないと判定された場合は、ステップS76へ進み、吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。ステップS76にて吹出口モードがフェイスモードであると判定された場合は、ステップS77へ進み、COOLサイクルを選択してステップS7へ進む。その理由はステップS64と同様である。
【0095】
ステップS76にて吹出口モードがフェイスモードでないと判定された場合は、前述のステップS66へ進む。
【0096】
図6に示すステップS7では、送風機32により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧を、ステップS4で決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。
【0097】
より詳細には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
【0098】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にする。
【0099】
ステップS8では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0100】
ステップS9では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0101】
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサ等の検出値から算出される窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて、窓ガラスに曇りが発生する可能性が高いと判定された場合に、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0102】
ステップS10では、エアミックスドア38の目標開度SWを上記TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された室内蒸発器26からの吹出空気温度(冷媒蒸発温度)Te、加熱器温度に基づいて算出する。
【0103】
ここで、加熱器温度とは、加熱用冷風通路33に配置された加熱手段(ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37)の加熱能力に応じて決定される値であって、一般的には、エンジン冷却水温度Twを採用できる。従って、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。SW=[(TAO−Te)/(Tw−Te)]×100(%)…(F2)
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア38の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア38の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
【0104】
ステップS11では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数)を決定する。ここで、圧縮機11の基本的な回転数の決定手法を説明する。例えば、冷房モードでは、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器26からの吹き出す送風空気の温度、すなわち室内蒸発器26における冷媒蒸発温度の目標吹出空気温度TEOを決定する。
【0105】
そして、この目標吹出空気温度TEOと冷媒蒸発温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、この偏差Enと、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量ΔfCを求める。
【0106】
また、暖房モードでは、ステップS4で決定した暖房用熱交換器目標温度等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdの目標高圧PDOを決定し、この目標高圧PDOと吐出側冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出する。さらに、この偏差Pnと、前回算出された偏差Pn−1に対する偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、ファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fHn−1に対する回転数変化量ΔfHを求める。
【0107】
本実施形態のステップS11のより詳細な制御内容については、図8、9を用いて説明する。なお、図8は、COOLサイクル時の回転数変化量ΔfCを決定するフローチャートであり、図9は、HOTサイクル、DRY_EVAサイクルおよびDRY_ALLサイクル時の回転数変化量ΔfHの決定と、回転数変化量ΔfCまたはΔfH決定後の処理を示すフローチャートである。
【0108】
まず、図8のステップS111では、外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器26の第1の仮目標吹出空気温度f(Tamdisp)を決定する。具体的には、第1の仮目標吹出空気温度f(Tamdisp)は、外気温Tamの増加に伴って増加するように決定される。さらに、第1の仮目標吹出空気温度f(Tamdisp)は、2℃≦f(Tamdisp)≦9℃の範囲で決定される。
【0109】
続くステップS112では、ステップS4で決定したTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器26の第2の仮目標吹出温度f(TAO)を決定する。具体的には、第2の仮目標吹出温度f(TAO)は、TAOの増加に伴って増加するように決定される。さらに、第2の仮目標吹出空気温度f(TAO)は、2℃≦f(TAO)≦9℃の範囲で決定される。
【0110】
ステップS113では、ステップS111にて決定された第1の仮目標吹出空気温度f(Tamdisp)およびステップS112にて決定された第2の仮目標吹出空気温度f(TAO)のうち小さい方の値を、室内蒸発器26から吹き出される送風空気の目標吹出空気温度TEOに決定する。
【0111】
これにより、窓曇りの可能性が高い低外気温時や乗員が温度の低い送風空気の吹出しを希望する低TAO時には、TEOを低く設定できる。また、その他は外気温の上昇および目標吹出温度TAOの上昇に伴ってTEOの値を増加させるので、圧縮機11の消費電力を低減できる。
【0112】
そして、ステップS114では、前述のファジー推論に基づいて、COOLサイクル時の回転数変化量ΔfCを求めて、図9のステップS121へ進む。なお、図8のステップS114には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて室内蒸発器26の着霜が防止されるようにΔfCが決定される。
【0113】
また、図9のステップS115では、エンジンEGの冷却水を循環させる冷却水ポンプが作動しているか否かを判定する。ステップS115にて冷却水ポンプが作動していると判定された場合は、ステップS116にて室内凝縮器12へ流入する入口側送風空気温度をエンジン冷却水温度TwとしてステップS118へ進む。
【0114】
その理由は、冷却水ポンプが作動している場合は、室内凝縮器12へ流入する送風空気は、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されたヒータコア36にて加熱されて、エンジン冷却水温度Twに相当する温度となるからである。
【0115】
ステップS115にて冷却水ポンプが作動していないと判定された場合は、ステップS117にて室内凝縮器12へ流入する入口側送風空気温度を室内蒸発器26の冷媒蒸発温度TeとしてステップS118へ進む。
【0116】
その理由は、冷却水ポンプが作動していない場合は、室内蒸発器26にて冷却された送風空気が、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されたヒータコア36にて加熱されることなく、そのまま室内凝縮器12へ流入するからである。
【0117】
ステップS118では、ステップS116またはステップS117にて設定された室内凝縮器12へ流入する入口側送風空気温度と、ステップS4で決定したTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、仮の目標高圧PDO’を算出する。
【0118】
続くステップS119では、送風機32の送風空気量に相関を有する物理量であるブロワモータ電圧に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、目標高圧PDO’を補正するPDO補正係数を決定する。ステップS120では、ステップS118にて算出された仮の目標高圧PDO’にステップS119にて決定された補正係数を乗算して、高圧側冷媒圧力Pdの目標高圧PDOを決定する。
【0119】
この目標高圧PDOを決定することにより、おおよその圧縮機11の冷媒吐出能力が決定される。従って、圧縮機11の吸入冷媒圧力、すなわち蒸発器として作用する熱交換器における冷媒蒸発圧力も決定されることになる。従って、ステップS119で目標高圧PDOを決定することは、例えば、第1、第2除湿モードにおける室内蒸発器26から吹き出される送風空気の目標吹出空気温度TEOを決定することに対応している。
【0120】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1の冷凍サイクル10のように、圧縮機11の吸入側にアキュムレータ29が設けられている冷凍サイクル10では、圧縮機11吸入冷媒が飽和気相冷媒となることから、圧縮機11の吐出冷媒温度Tdは高圧側冷媒圧力Pdに相関を有する物理量となる。従って、ステップS119で目標高圧PDOを決定することは、例えば、暖房モードおよび第1、第2除湿モードにおける室内凝縮器12における送風空気の目標加熱温度を決定することに対応している。
【0121】
本発明者らの検討によれば、ステップS6で決定された運転モード(サイクル)が第1、第2除湿モード(DRY_EVAサイクルあるいはDRY_ALLサイクル)である場合の目標吹出空気温度TEOは、2℃より低い値に決定されることが判っている。
【0122】
そして、ステップS121では、前述のファジー推論に基づいて、HOTサイクル、DRY_EVAサイクルおよびDRY_ALLサイクル時の回転数変化量ΔfHを求めて、ステップS121へ進む。なお、図9のステップS121には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Pnと偏差変化率Pdotに基づいて高圧側冷媒圧力Pdの異常上昇が防止されるようにΔfHが決定される。
【0123】
続くステップS122では、ステップS6で決定された運転モード(サイクル)がCOOLサイクルであるか否かを判定する。ステップS122にてステップS6で決定された運転モード(サイクル)がCOOLサイクルであると判定された場合は、ステップS123へ進み、前回の圧縮機回転数fn−1に図8のステップS114で決定された回転数変化量ΔfCを加えた値を、今回の圧縮機回転数fnとして、ステップS12へ進む。
【0124】
また、ステップS122にてステップS6で決定された運転モード(サイクル)がCOOLサイクルでないと判定された場合は、ステップS124へ進み、前回の圧縮機回転数fn−1に図9のステップS121で決定された回転数変化量ΔfHを加えた値を、今回の圧縮機回転数fnとして、ステップS12へ進む。
【0125】
なお、ステップS123、S124における今回の圧縮機回転数fnの決定は、制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
【0126】
上記説明から明らかなように、図8、9には図示していないものの、ステップS10からステップS11に移行した際に、ステップS6で決定された運転モード(サイクル)がCOOLサイクルであるか否かを判定して、COOLサイクルであれば、ステップS111へ進み、COOLサイクルサイクルでなければS115へ進む。
【0127】
さらに、本実施形態の制御ステップS113およびS120は、室内蒸発器12から吹き出される送風空気の目標吹出空気温度TEOを決定する目標吹出温度決定手段を構成している。
【0128】
さらに、制御ステップS120は、室内凝縮器12の目標加熱温度を決定する目標加熱温度決定手段としての機能も兼ね備えている。しかも、HOTサイクル、DRY_EVAサイクルおよびDRY_ALLサイクル時に決定される目標高圧PDOは同等であるから、HOTサイクル、DRY_EVAサイクルおよびDRY_ALLサイクル時に決定される目標加熱温度も同等となる。
【0129】
図6に示すステップS12では、室外熱交換器16に向けて外気を送風する送風ファン16aの稼働率(回転数)を決定する。本実施形態の基本的な送風ファン16aの稼働率(回転数)の決定手法は以下の通りである。つまり、圧縮機11の吐出冷媒温度Tdの増加に伴って送風ファン16aの稼働率(回転数)が増加するように第1の仮稼働率(回転数)を決定し、エンジン冷却水温度Twの上昇に伴って送風ファン16aの稼働率(回転数)が増加するように第2の仮稼働率(回転数)を決定する。
【0130】
さらに、第1、第2の仮稼働率(回転数)のうち大きい方を選択し、選択された稼働率(回転数)に対して、送風ファン16aの騒音低減や車速を考慮した補正を行った値を送風ファン16aの稼働率(回転数)に決定する。
【0131】
ステップS13では、PTCヒータ37の作動本数の決定および電熱デフォッガの作動状態の決定が行われる。PTCヒータ37の作動本数は、例えば、ステップS6にてPTCヒータ37への通電の必要があるとされたときに、暖房モード時にエアミックスドア38の目標開度SWが100%となっても、暖房用熱交換器目標温度を得られない場合に、内気温Trと暖房用熱交換器目標温度との差に応じて決定すればよい。
【0132】
また、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
【0133】
次に、ステップS14にて上述のステップS6で決定された運転モードに応じて、冷媒回路切替手段である各電磁弁13〜24の作動状態を決定する。この際、本実施形態では、サイクルに応じた冷媒回路を実現するため、基本的には冷媒が流通する冷媒流路が開となるように各電磁弁を制御し、冷媒圧力の高低圧関係によって冷媒が流通しない冷媒流路については各電磁弁を非通電状態として、消費電力の抑制を行う。
【0134】
ステップS14の詳細については、図10のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS141で、ステップS6で決定された運転モードをメモリCYCLE_VALVEに読み込む。次に、ステップS142にて車両用空調装置1が停止しているか否か、すなわち車室内の空調を行わないか否かが判定される。
【0135】
ステップS142にて車両用空調装置1が停止していると判定された場合は、ステップS143にてメモリCYCLE_VALVEを冷房モード(COOLサイクル)に設定してステップS144へ進む。ステップS142にて車両用空調装置1が停止していないと判定された場合は、ステップS144へ進む。
【0136】
なお、ステップS142における車両用空調装置1が停止しているとは、操作パネル60の車両用空調装置1の作動スイッチがOFFされたことのみを意味するものではなく、操作パネル60の風量設定スイッチによって送風機32の送風量が0に設定されていること、および、車両システム自体が停止していることを含む意味である。
【0137】
ステップS144では、各電磁弁13〜24の作動状態が決定される。具体的には、メモリCYCLE_VALVEが冷房モード(COOLサイクル)に設定されている場合は、全ての電磁弁を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが冷房モード(HOTサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24および熱交換器遮断電磁弁21を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とする。
【0138】
つまり、本実施形態では、いずれの運転モードの冷媒回路に切り替えた場合であっても、各電磁弁13〜24のうち少なくとも1つの電磁弁に対する電力の供給が停止されるように構成されている。
【0139】
ステップS15では、エンジンEGの作動要求有無を決定する。ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、常時エンジンを作動させているのでエンジン冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両の車両用空調装置ではエンジン冷却水をヒータコア36に流通させることで充分な暖房性能を発揮することができる。
【0140】
これに対して、本実施形態のようなハイブリッド車両では、バッテリ残量に余裕があれば、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することができる。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、エンジンEGが停止しているとエンジン冷却水温度が40℃程度にしか上昇せず、ヒータコア36にて充分な暖房性能が発揮できなくなる。
【0141】
そこで、本実施形態では、暖房に必要な熱源を確保するため、高い暖房性能が必要な場合であってもエンジン冷却水温度Twが予め定めた基準冷却水温度よりも低いときは、空調制御装置50からエンジンEGの制御に用いられるエンジン制御装置(図示せず)に対して、エンジンEGを作動するように要求信号を出力する。
【0142】
これにより、エンジン冷却水温度Twを上昇させて高い暖房性能を得るようにしている。なお、このようなエンジンEGの作動要求信号は、車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させる必要の無い場合であってもエンジンEGを作動させることになるので、車両燃費を悪化させる要因となる。このため、エンジンEGの作動要求信号を出力する頻度は極力低減させることが望ましい。
【0143】
ステップS16では、室外熱交換器16に着霜が生じている場合に、室外熱交換器16の除霜制御を行う。ここで、暖房モードの冷媒回路のように、室外熱交換器16にて冷媒に吸熱作用を発揮させる際に、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度が−12℃程度まで低下すると、室外熱交換器16に着霜が生じることが知られている。
【0144】
このような着霜が生じると、室外熱交換器16に車室外空気が流通できなくなり、室外熱交換器16にて冷媒と車室外空気とが熱交換できなくなってしまう。このため、室外熱交換器16に着霜が生じた際には、強制的に冷房モードとする制御処理を行う。冷房モードの冷媒回路では、後述するように室外熱交換器16にて高圧冷媒が放熱するので、室外熱交換器16に生じた霜を溶かすことができる。
【0145】
ステップS17では、上述のステップS6〜S16で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器61、13、17、20、21、24、16a、32、62、63、64に対して制御信号および制御電圧が出力される。例えば、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61に対しては、圧縮機11の回転数がステップS11で決定された回転数となるように制御信号が出力される。
【0146】
次に、ステップS18では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS3に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
【0147】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御されるので、制御ステップS6にて選択された運転モードに応じて以下のように作動する。
【0148】
(a)冷房モード(COOLサイクル:図1参照)
冷房モードでは、空調制御装置50が全ての電磁弁を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続し、低圧電磁弁17が閉弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
【0149】
これにより、図1の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→第1三方継手15→室外熱交換器16→第2三方継手19→高圧電磁弁20→第2逆止弁22→温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0150】
この冷房モードの冷媒回路では、電気式三方弁13から第1三方継手15へ流入した冷媒は、低圧電磁弁17が閉弁しているので低圧電磁弁17側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第2三方継手19へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の可変絞り機構部27bから流出した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。さらに、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって第2逆止弁22側に流出することはない。
【0151】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却され、さらに、室外熱交換器16にて外気と熱交換して冷却され、温度式膨張弁27にて減圧膨張される。温度式膨張弁27にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器26へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却される。
【0152】
この際、前述の如くエアミックスドア38の開度が調整されるので、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が冷風バイパス通路34から混合空間35へ流入し、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が加熱用冷風通路33へ流入してヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて混合空間35へ流入する。
【0153】
これにより、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の冷房を行うことができる。なお、冷房モードでは、送風空気の除湿能力も高いが、暖房能力は殆ど発揮されない。
【0154】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0155】
さらに、この冷房モードの冷媒回路では、図1の記載から明らかなように、冷凍サイクル10の冷媒流路内の異なる2箇所の部位が互いに連通している。換言すると、冷房モードの冷媒回路では、冷凍サイクル10を構成する冷媒流路内に他の部位と連通しない閉塞回路が形成されていない。
【0156】
(b)暖房モード(HOTサイクル:図2参照)
暖房モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が閉弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
【0157】
これにより、図2の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0158】
この暖房モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。また、熱交換器遮断電磁弁21から第2三方継手19へ流入した冷媒は、高圧電磁弁20が閉弁しているので高圧電磁弁20側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉じているので温度式膨張弁27側へ流出することはない。
【0159】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて送風機32から送風された送風空気と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。この際、エアミックスドア38の開度が調整されるので、冷房モードと同様に、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の暖房を行うことができる。なお、暖房モードでは、送風空気の除湿能力は発揮されない。
【0160】
また、室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0161】
(c)第1除湿モード(DRY_EVAサイクル:図3参照)
第1除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、熱交換器遮断電磁弁21および除湿電磁弁24を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
【0162】
これにより、図3の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0163】
この第1除湿モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第1逆止弁18の作用によって第1逆止弁18側へ流出することはない。
【0164】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室内蒸発器26へ流入する。
【0165】
室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。すなわち、車室内の除湿を行うことができる。なお、第1除湿モードでは、送風空気の除湿能力を発揮できるが、暖房能力は小さい。
【0166】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0167】
(d)第2除湿モード(DRY_ALLサイクル:図4参照)
第2除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
【0168】
これにより、図4の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0169】
つまり、第2除湿モードでは、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒が熱交換器遮断電磁弁21側および除湿電磁弁24側の双方に流出して、第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒および温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒の双方が第5三方継手28にて合流してアキュムレータ29側へ流出する。
【0170】
なお、この第2除湿モードの冷媒回路では、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。
【0171】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧された後、第3三方継手23にて分岐されて室外熱交換器16および室内蒸発器26へ流入する。
【0172】
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、第5三方継手28へ流入する。室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。
【0173】
従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。この際、第2除湿モードでは、第1除湿モードに対して、室外熱交換器16にて吸熱した熱量を室内凝縮器12にて放熱することができるので、送風空気を第1除湿モードよりも高温に加熱できる。すなわち、第2除湿モードでは、高い暖房能力を発揮させながら除湿能力も発揮させる除湿暖房を行うことができる。
【0174】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、第5三方継手28へ流入して室外熱交換器16から流出した冷媒と合流し、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0175】
本実施形態の車両用空調装置は、以上の如く構成されて作動するので、以下のような優れた効果を発揮することができる。
【0176】
(A)本実施形態の冷凍サイクル10では、冷媒回路切替手段である各電磁弁13〜24への電力の供給を停止することで、冷房モードの冷媒回路(COOLサイクル)に切り替えることができるので、冷房モード時に電磁弁13〜24自体の温度が上昇してコイル等の劣化を促進させてしまうことを回避できる。すなわち、冷媒回路切替手段の耐久性の悪化を抑制することができる。延いては、冷凍サイクルを構成するサイクル構成機器の耐久性の悪化を抑制することができる。
【0177】
さらに、冷房モードは、主に夏季に利用されるので、各電磁弁13〜24が配置されるエンジンルーム内の温度が他の季節よりも高温になりやすい。このため、夏季に、各電磁弁13〜24に電力を供給し続けると、各電磁弁13〜24自体の温度の異常上昇を招きやすい。この点で、冷房モード時に各電磁弁13〜24自体の温度上昇を抑制できることは極めて有効である。
【0178】
しかも、暖房モードの冷媒回路(HOTサイクル)よりも使用頻度が高い冷房モード時に、各電磁弁13〜24への電力の供給が停止されるので、車両用空調装置全体としての消費電力を低減できる。その結果、年間を通じた消費電力の低減を図ることもできる。
【0179】
(B)制御ステップS70〜S73にて説明したように、本実施形態の車両用空調装置1では、偏差TEO−Teが第1基準温度差以上になったときに除湿暖房モードから暖房モードへ冷媒回路を切り替え、偏差TEO−Teが第2基準温度差以下になったときに暖房モードから除湿暖房モードへ冷媒回路に切り替えている。これにより、圧縮機11の消費動力の低減を図ることができる。
【0180】
つまり、偏差TEO−Teが第1基準温度差以上になったときには、室内蒸発器26の冷媒蒸発温度Teが充分に低下しているので、これ以上冷媒蒸発温度Teを低下させる必要がない。従って、室内蒸発器26にて吸熱作用を発揮させない暖房モードの冷媒回路に切り替えることで、室内蒸発器26を流通する冷媒の圧力を低下させるための圧縮機11の消費動力を低減できる。
【0181】
さらに、偏差TEO−Teが第2基準温度差以下になったときに暖房モードから除湿暖房モードへ冷媒回路を切り替えるので、乗員の空調フィーリングの悪化や、不快な臭いの発生を招くこともない。
【0182】
つまり、偏差TEO−Teが第2基準温度差以下になったときには、室内蒸発器26の冷媒蒸発温度Teが上昇して目標吹出空気温度TEOを上回るおそれがある。従って、室内蒸発器26にて吸熱作用を発揮させる除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えることで、室内蒸発器26の冷媒蒸発温度Teを再び低下させて、送風空気を除湿するとともに、室内蒸発器26にて結露した結露水が乾いてしまうことを防止できる。
【0183】
従って、本実施形態によれば、不快な臭いの発生の抑制と圧縮機11の消費動力の低減との両立を図ることができる。
【0184】
(C)制御ステップS66〜S68にて説明したように、本実施形態の車両用空調装置1では、エコノミースイッチが投入されているときよりも、投入されていないときの方が、暖房モード(HOTサイクル)が選択されやくなる。従って、室内蒸発器26にて吸熱作用を発揮させない暖房モードの冷媒回路に切り替えられる頻度を増加させて、室内蒸発器26を流通する冷媒の圧力を低下させるための圧縮機11の消費動力を低減させやすい。
【0185】
(D)制御ステップS111〜S113およびS120にて説明したように、本実施形態の車両用空調装置1では、COOLサイクルが選択されている際の目標吹出空気温度TEOは2℃以上に決定される。一方で、HOTサイクル、DRY_EVAサイクルおよびDRY_ALLサイクルが選択されている際の目標吹出空気温度TEOは2℃より低い値決定される。
【0186】
すなわち、本実施形態では、除湿暖房モードであるDRY_ALLサイクルが選択されている際に決定される目標吹出空気温度TEOが、冷房モードであるCOOLサイクルが選択されている際に決定される目標吹出空気温度TEOよりも低く設定される。これにより、室内蒸発器26の温度が結露水の露点を超えてしまうことを可能な限り抑制して、不快な臭いの発生を抑制できる。
【0187】
つまり、本実施形態では、室内蒸発器26にて吸熱作用を発揮させる除湿暖房モード(DRY_ALLサイクル)の冷媒回路では室内蒸発器26内に冷媒を流通するものの、室内蒸発器26にて吸熱作用を発揮させない暖房モード(HOTサイクル)の冷媒回路では室内蒸発器26内に冷媒を流通させない。従って、除湿暖房モードの冷媒回路と暖房モードの冷媒回路とでは、室内蒸発器26内を流通する冷媒流量が大きく変動する。
【0188】
このため、除湿暖房モードの冷媒回路と暖房モードの冷媒回路と切り替えた直後の過渡期には、室内蒸発器26に温度分布を生じやすい。従って、室内蒸発器26のうち温度の高い部分では、室内蒸発器26の温度が結露水の露点を超えてしまい、不快な臭いを発生させるおそれがある。
【0189】
これに対して、本実施形態では、除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えた際に決定される目標吹出空気温度TEOを、冷房モードの冷媒回路に切り替えた際に決定される目標吹出空気温度TEOよりも低く設定しているので、室内蒸発器26に温度分布が生じたとしても、室内蒸発器26のうち温度の高い部分が結露水の露点を超えてしまうことを抑制して、不快な臭いの発生を抑制できる。
【0190】
(E)制御ステップS120にて説明したように、本実施形態の車両用空調装置1では、暖房モードの冷媒回路、第1、第2除湿モードの冷媒回路に切り替えた際に決定される目標圧力PDOが同等となる。従って、HOTサイクル、DRY_EVAサイクルおよびDRY_ALLサイクルに切り替えた際に決定される目標加熱温度も同等となる。
【0191】
従って、上述の(B)で述べたように圧縮機11の消費動力低減のために、除湿暖房モードの冷媒回路から暖房モードの冷媒回路へ切り替えたとしても、目標加熱温度が同等となっているので、送風空気の温度の急変を抑制できる。従って、送風空気の温度の急変による乗員の空調フィーリングの悪化を抑制できる。
【0192】
(F)制御ステップS70にて説明したように、本実施形態の車両用空調装置1では、車室内の除湿の必要度合を、「必要無」、「必要小」、「必要無」の三段階で判定し、除湿の「必要有」と判定した場合に、第1除湿モードの冷媒回路(DRY_EVAサイクル)に切り替えるので、圧縮機11の消費動力の低減に優先して車室内の窓ガラスの防曇を優先することができる。すなわち、車両走行時の安全性を優先することができる。
【0193】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、ステップS6の制御フローを図11のフローチャートに示すように変更した例を説明する。なお、図11は、第1実施形態の図7に対応する図面であって、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面においても同様である。
【0194】
具体的には、本実施形態のステップS6では、第1実施形態の図7に対して、制御ステップS601、S602、S691を追加し、制御ステップS65、S71、S72、S75、S77における制御内容を変更するとともに、制御ステップS66〜S68を廃止している。
【0195】
まず、ステップS601では、車両システムの停止から基準待機時間としての60分間を経過しているか否かを判定する。車両システムが停止しているときは、プレ空調も実行されていないので、車両用空調装置1も停止している。また、ステップS601における60分とは、室内蒸発器26に発生した結露水が自然乾燥する時間として、本発明者らが実験的に求めた値である。
【0196】
従って、基準待機時間の値は、60分より長時間としてもよい。なお、車両システムが停止している間は、車両用空調装置1の送風機32が停止しているので、室内蒸発器26に発生した結露水が蒸発しても、これによって発生した不快な臭いが車室内に流入してしまうことはない。つまり、本実施形態のステップS601は、室内蒸発器26に発生した結露水が排除されたことを判定する結露水排除判定手段を構成している。
【0197】
ステップS601にて、車両システムの停止から60分間を経過していると判定された場合は、ステップS601へ進み、結露フラグ=0とする。一方、車両システムの停止から60分間を経過していないと判定された場合は、ステップS61へ進む。この場合は、前回の結露フラグの値が維持される。
【0198】
また、ステップS65では、COOLサイクルを選択するだけでなく、結露フラグ=1としてステップS7へ進む。第1実施形態に対するこの変更は、ステップS71、S72、S75、S77についても同様である。さらに、本実施形態の窓曇り判定値は、ステップS2のイニシャライズ処理において100と設定される。
【0199】
ステップS691では、結露フラグ=1になっているか否かが判定される。ステップS691にて結露フラグ=1になっている場合は、ステップS70へ進む。一方、ステップS691にて結露フラグ=1になっていない場合は、ステップS73へ進み、HOTサイクルが選択される。
【0200】
つまり、ステップS691、S70〜S73では、結露フラグ=1になっている場合は、暖房モードの冷媒回路(HOTサイクル)に優先して第1除湿モードの冷媒回路(DRY_EVAサイクル)あるいは第2除湿モードの冷媒回路(DRY_ALL)に切り替えるようにしている。
【0201】
その他の車両用空調装置1の全体構成および制御については、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1は、第1実施形態の(A)、(B)、(D)〜(F)と同様の効果を得ることができるだけでなく、以下のような優れた効果を発揮することができる。
【0202】
(G)制御ステップS691、S70〜S73にて説明したように、本実施形態の車両用空調装置1では、各電磁弁13〜24が冷房モードの冷媒回路あるいは第1、第2除湿モードの冷媒回路に切り替えた後は結露フラグを1として、暖房モードの冷媒回路に優先して冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えるので、不快な臭いの発生の抑制と圧縮機11の消費動力の低減との両立を図ることができる。
【0203】
つまり、一度、冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えられた後は、室内蒸発器26に結露水が発生することが予想される。従って、冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えた後は、暖房モードの冷媒回路に優先して冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えることで、室内蒸発器26の目標吹出空気温度TEOを暖房モードよりも低くすることができる。
【0204】
これにより、車両用空調装置1の送風機32の作動中に、室内蒸発器26の結露水が乾くことを防止できるので、不快な臭いの発生を抑制できる。
【0205】
さらに、制御ステップS601にて、車両システムの停止から60分間を経過していると判定された際には、室内蒸発器26に発生した結露水が排除されたものとして冷房モードの冷媒回路あるいは除湿暖房モードの冷媒回路が優先されることなく、室内蒸発器26にて吸熱作用を発揮させない暖房モードの冷媒回路にも切り替えられるので、圧縮機11の消費動力を低減できる。
【0206】
従って、本実施形態によれば、不快な臭いの発生の抑制と圧縮機11の消費動力の低減との両立を図ることができる。
【0207】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0208】
(1)上述の第2実施形態の結露水排除判定手段を構成するステップS601では、車両システムの停止から予め定めた基準待機時間を経過しているか否かを判定しているが、もちろん、前回冷房モードの冷媒回路での運転、または第1、第2除湿モードでの運転が停止してから、基準待機時間を経過しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0209】
さらに、車両用空調装置1が停止してから、基準待機時間を経過しているか否かを判定するようにしてもよいし、送風機32が停止してから、基準待機時間を経過しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0210】
(2)上述の実施形態では、冷凍サイクル10の冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。例えば、炭化水素系冷媒、二酸化炭素を用いてもよい。さらに、冷凍サイクル10を、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルとして構成してもよい。
【0211】
(3)上述の実施形態では、例えば、第1実施形態のステップS62、S74では、外気温Tamが−3℃よりも低いか否かを判定しているが、もちろん、外気温Tamが−3℃以下であるか否かを判定するようにしてもよい。その他の判定ステップにおいても本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で同様とすることができる。
【0212】
(4)上述の各実施形態で説明した本発明の車両用空調装置1に適用された冷凍サイクル10は、据置型空調装置、空調機能付き給湯装置、自動販売機用冷却加熱装置等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0213】
10 冷凍サイクル
11 圧縮機
12 室内凝縮器
13 電気式三方弁
16 室外熱交換器
17 低圧電磁弁
20 高圧電磁弁
21 熱交換器遮断電磁弁
24 除湿電磁弁
26 室内蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吸入し、圧縮して吐出する圧縮機(11)、冷媒と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器(16)、冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる室内蒸発器(26)、および冷媒と前記送風空気とを熱交換させて前記送風空気を加熱する室内凝縮器(12)を有する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)と、
前記室内蒸発器(26)に発生した結露水が排除されたことを判定する結露水排除判定手段(S601)とを備え、
前記冷凍サイクル(10)は、前記室内蒸発器(26)にて吸熱した熱量を前記室外熱交換器にて放熱させて前記送風空気を冷却する冷房モードの冷媒回路、前記室外熱交換器(16)にて吸熱した熱量を前記室内凝縮器(12)にて放熱させて前記送風空気を加熱する暖房モードの冷媒回路、並びに、前記室内蒸発器(26)および前記室外熱交換器(16)の双方にて吸熱した熱量を前記室内凝縮器(12)にて放熱させて前記送風空気を除湿して加熱する除湿暖房モードの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替手段(13〜24)を有し、
前記冷媒回路切替手段(13〜24)は、前記冷房モードの冷媒回路あるいは前記除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えた後、前記結露水排除判定手段(S601)によって前記結露水が排除されたと判定されるまで、前記暖房モードの冷媒回路に優先して前記冷房モードの冷媒回路あるいは前記除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記結露水排除判定手段(S601)は、車両システムの停止から基準待機時間が経過すると前記室内蒸発器(26)に発生した結露水が排除されたことを判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−49429(P2013−49429A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−270548(P2012−270548)
【出願日】平成24年12月11日(2012.12.11)
【分割の表示】特願2009−157698(P2009−157698)の分割
【原出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】