説明

車両用補機搭載構造

【課題】前面衝突時に衝突エネルギーの一部を吸収することができると共に損傷から保護すべき補機については保護することができる車両用補機搭載構造を提供する。
【解決手段】車両前部10内に車両幅方向に沿って配置されるクロス部材26には、充電器36及びPCU38が上下二段に配置されている。充電器36の前端36AはPCU38の前端38Aよりも車両前方側に位置されている。さらに、充電器36からはフランジ42が水平に延出されており、PCU38からはPCU取付ブラケット48の脚部52が垂下されている。フランジ42及び脚部52は取付ボルト56でクロス部材26に共締めされている。衝突荷重が入力されるとフランジ42がせん断方向に破断し、充電器36が後退するが、PCU取付ブラケット48は破断しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用補機搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、エンジンルームに設けられたパワー制御ユニット(以下、単に「PCU」と称す。)を前面衝突時の衝撃から保護するための構造が開示されている。簡単に説明すると、PCUはインバータトレイ上に載置され、この状態で離脱可能にインバータトレイに取り付けられている。また、このインバータトレイには、ガイド部が設けられている。前面衝突時、PCUに衝突荷重が入力されると、PCUはインバータトレイのガイド部によって所定方向へガイドされながら車両後方側へと移動する。これにより、PCUとエンジンマウントとの衝突を回避し、PCUを適切に保護するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−173567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、以下に説明する課題がある。すなわち、PCUには高圧ケーブルが接続されている。このため、PCUが車両後方側へ移動する際に、PCUによって高圧ケーブルが破損することが考えられる。従って、上記先行技術は、この点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、前面衝突時に衝突エネルギーの一部を吸収することができると共に損傷から保護すべき補機については保護することができる車両用補機搭載構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る車両用補機搭載構造は、車両前部に配置された車両骨格部材に第1の取付部を介して取り付けられた第1の補機と、前記車両骨格部材に第2の取付部を介して取り付けられた第2の補機と、を有する車両に適用され、前記第1の補機の前端は前記第2の補機の前端より車両前方側に位置されており、更に前面衝突時の衝突荷重が当該第1の補機の前端に入力されることにより前記第2の取付部は破断することなく第1の取付部が破断する。
【0007】
請求項2記載の本発明に係る車両用補機搭載構造は、請求項1記載の発明において、前記第1の補機の車両上方側に前記第2の補機が配置されており、前記第1の取付部は前記第2の取付部よりも基端部から取付点までの長さが短く設定されている、ことを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の本発明に係る車両用補機搭載構造は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記第1の取付部は、前記第1の補機の外郭を形成しているハウジングに一体に形成されていると共に、前記衝突荷重が入力されるとせん断方向に当該衝突荷重を受けて破断する、ことを特徴としている。
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、第1の補機は、車両前部に配置された車両骨格部材に第1の取付部を介して取り付けられている。第2の補機も、この車両骨格部材に第2の取付部を介して取り付けられている。そして、本発明では、第1の補機の前端が第2の補機の前端よりも車両前方側に位置されている。
【0010】
このような車両が前面衝突すると、その際の衝突荷重は、より車両前方側に位置する第1の補機の前端に入力される。本発明では、第1の補機の前端に衝突荷重が入力されると、当該衝突荷重が直接入力される第1の取付部は破断するものの、第2の取付部は破断しない。このため、第1の補機は荷重入力方向である車両後方側へ移動するが、第2の補機は車両骨格部材への取付状態が維持される。従って、第1の補機は他の部品に干渉して損傷を受けると思われるが、第2の補機は損傷を殆ど受けずに済む。よって、例えば高圧ケーブルが接続されて高圧電流が流れるPCUについては第2の補機として車両骨格部材に取り付け、低圧ケーブルが接続されて低圧電流しか流れないため損傷しても差し支えない例えば充電器については第1の補機として車両骨格部材に取り付けるようにすればよい。
【0011】
また、上記の通り、第1の取付部が破断する過程や第1の補機が車両後方側へ移動して他の部品に干渉して変形する過程で、衝突エネルギーの一部が吸収されるので、エネルギー吸収性能も確保される。
【0012】
請求項2記載の本発明によれば、第1の補機の車両上方側に第2の補機が配置されているので、補機の搭載スペースが限られている場合にも第1の補機及び第2の補機の両方を納めることができる。
【0013】
また、第1の取付部は第2の取付部よりも基端部から取付点までの長さが短いので、第1の取付部が破断すると第1の補機は第2の補機を残したまま荷重入力方向である車両後方側へスライドするように移動していく。このように第1の取付部と第2の取付部との基端部から取付点までの長さを決めることで、第1の補機の移動軌跡(ひいては第1の補機が移動した後の第2の補機の移動軌跡)をコントロールすることができる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、前面衝突時の衝突荷重が第1の補機の前端から入力されると、第1の補機のハウジングに一体に形成された第1の取付部に衝突荷重が伝達される。これにより、第1の取付部はせん断方向に当該衝突荷重を受けて破断する。従って、第1の取付部が曲げ変形して破断する場合に比べてエネルギー吸収量が増加する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用補機搭載構造は、前面衝突時に衝突エネルギーの一部を吸収することができると共に損傷から保護すべき補機については保護することができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項2記載の本発明に係る車両用補機搭載構造は、補機の搭載スペースが狭い場合にも複数の補機を効率よく収納することができると共に、車両前部のスペース内での補機の移動軌跡を制御してエネルギー吸収性能の確保と損傷から保護すべき補機に対する保護性能の確保の両立を図ることができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項3記載の本発明に係る車両用補機搭載構造は、エネルギー吸収性能を高めることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る車両用補機搭載構造を示す車両前部の側断面図である。
【図2】(A)は前面衝突前の補機の組付状態を示す正面図であり、(B)は前面衝突後の補機の状態を示す正面図である。
【図3】前面衝突後の補機及び車体の状態を示す車両前部の側断面図である。
【図4】前面衝突した際に充電器のフランジが破断した状態を示す斜視図である。
【図5】第1実施形態に係る車両用補機搭載構造が適用された場合のF−S線図である。
【図6】第2実施形態に係る車両用補機搭載構造を示す図1に対応する側断面図である。
【図7】第3実施形態に係る車両用補機搭載構造を示す図2(A)に対応する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る車両用補機搭載構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0020】
図1には、本実施形態に係る車両用補機搭載構造が適用された車両前部の側断面図が示されている。なお、図1は、車両前部を車両幅方向の中央(センタ)で切断した状態を車両側方から見て示している。また、図2(A)には、衝突前の状態における車両用補機搭載構造の正面図が示されている。
【0021】
これらの図に示されるように、車両前部10の両サイドには、車両骨格部材としての左右一対のフロントサイドメンバ12が配設されている。フロントサイドメンバ12の断面形状は矩形状とされている。また、フロントサイドメンバ12は車両前後方向を長手方向として延在されている。さらに、各フロントサイドメンバ12の前端部には、矩形の筒形状に形成されたクラッシュボックス14が同軸上に接合されている。クラッシュボックス14は、軸方向荷重を受けると圧縮塑性変形してエネルギー吸収するようになっている。なお、側面視で見た場合、クラッシュボックス14の後端部付近にラジエータコンデンサ16が配設されている。
【0022】
上記左右のクラッシュボックス14の前端部は、車両前端部に車両幅方向に沿って配設されたフロントバンパリインフォースメント18に接合されている。フロントバンパリインフォースメント18は、フロントバンパ20の車両骨格部材を構成する部材であり、閉断面構造とされている。また、フロントバンパリインフォースメント18は、平面視では中央部が両端部よりも車両前方側に膨らんだ湾曲形状を成している。フロントバンパ20は、意匠面を構成するフロントバンパカバー22と、このフロントバンパカバー22とフロントバンパリインフォースメント18との間に介在されてバンパ緩衝部材として機能するフロントバンパアブソーバ24と、を主要部として構成されている。
【0023】
上述した左右のフロントサイドメンバ12の長手方向の中間部同士は、車両幅方向に沿って設けられたクロス部材26によって車両幅方向に連結されている。クロス部材26は、縦断面形状が略コ字状とされたアッパクロスメンバ28と、縦断面形状が略凸字状とされたロアクロスメンバ30と、の二部材によって構成されている。アッパクロスメンバ28の内側にロアクロスメンバ30が車両下方側から被嵌されて、ロアクロスメンバ30の頂部と前後端部の各位置でスポット溶接されることにより、クロス部材26は閉断面構造に構成されている。
【0024】
図2(A)に示されるように、上述したアッパクロスメンバ28の頂壁部28Aの長手方向の中間部には、前後左右の合計4箇所に車両上方側へ膨出するボス部32が一体に形成されている。各ボス部32の中央部には図示しないボルト挿通孔が形成されており、更にその裏面にはウエルドナット34が予め溶着されている。そして、これらのボス部32に、第1の補機としての充電器36と第2の補機としてのPCU38が取り付けられており、以下に詳細に説明する。
【0025】
充電器36は扁平な略直方体形状を成している。また、充電器36の外郭は、アルミニウム製(アルミニウム合金製でもよいし、純アルミニウム製でもよい。)のハウジング40によって構成されている。このハウジング40の両側部40Aには、それぞれ前後二箇所ずつに第1の取付部としてのフランジ42が一体かつ水平に張り出されている。フランジ42は矩形平板状に形成されており、中央部には図示しないボルト挿通孔が形成されている。これら合計4枚のフランジ42が形成された位置は、前述したボス部32に重なる位置とされている。なお、ハウジング40及びフランジ42の材質は、必ずしもアルミニウム製でなくてもよく、硬質樹脂材製でもよい。
【0026】
上述した充電器36の車両上方側には、略直方体形状のPCU38が配置されている。PCU38は前後方向の長さが充電器36より短く、高さが充電器36より高いサイズとなっている。PCU38には高圧ケーブル44が接続されており、高圧電流が流れるようになっている。なお、上述した充電器36にもケーブル46が接続されているが、高圧電流が流れることはない。
【0027】
上記PCU38は、第2の取付部としての鉄製のPCU取付ブラケット48によってクロス部材26のボス部32に固定されている。PCU取付ブラケット48は、平面視でコ字状に形成された支持部材50と、この支持部材50の各側部の前後二箇所からそれぞれ垂下された合計4本(左右2本ずつ)の脚部52と、によって構成されている。支持部材50はPCU38の外周部に配置されており、PCU38の外郭を構成するハウジング54の外周部に固定されている。また、図2(A)に示されるように、脚部52は正面視でL字状に形成されている。脚部52の上端部は支持部材50に固定されている。また、脚部52の下端部には図示しないボルト挿通孔が形成されている。脚部52の下端部は、前述した充電器36のフランジ42に重ねられて、取付ボルト56がウエルドナット34に螺合されることにより、フランジ42と共締めされている。充電器36の基端部からボルト締結点(取付点)までの長さ(即ち、フランジ42の根元からボルト締結点までの長さ)L1は、PCU取付ブラケット48の上端部(第2の取付部の基端部)からボルト締結点までの長さL2よりも短く設定されている。なお、取付ボルト56及びウエルドナット34は、広義には締結具、取付具として把握される要素である。
【0028】
また、上記の如くして充電器36とPCU38とがクロス部材26に固定された状態では、充電器36の前端36Aの方がPCU38の前端38Aよりも車両前方側に位置されている。
【0029】
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
衝突前の状態では、充電器36はフランジ42を介して、又PCU38はPCU取付ブラケット48を介してそれぞれクロス部材26に締結固定されている。この状態では、充電器36の前端36Aの方がPCU38の前端38Aよりも車両前方側に位置されている。
【0030】
この状態から図3に示されるようにバリア(衝突体)58に前面衝突すると、その際の衝突荷重はフロントバンパリインフォースメント18から左右のクラッシュボックス14に入力される。このため、左右のクラッシュボックス14は軸方向に圧縮されて塑性変形し、エネルギー吸収する。そして更に、左右のフロントサイドメンバ12の前部が軸方向に圧縮されて塑性変形することによりエネルギー吸収する。この過程で、バリア58は、より車両前方側に位置された充電器36の前端36Aに当接し、これを車両後方側へ押圧する。その結果、図2(A)、図3及び図4に示されるように、充電器36から水平方向に張り出された合計4枚のフランジ42がその根元付近から破断される。
【0031】
より具体的には、充電器36のハウジング40の側部から一体に形成されると共に水平に張り出されたフランジ42は、充電器36のハウジング40との結合面積が小さい。このため、フランジ42は最弱部(脆弱部)となる。従って、衝突荷重(バリア58が充電器36の前端36Aを車両後方側へ押したときの荷重)が充電器36に入力されると、フランジ42はその根元付近で破断される。その結果、充電器36は車両後方側へスライドするように移動される。
【0032】
一方、図2(B)に示されるように、フランジ42が破断しても、締結部に損傷はない。従って、PCU取付ブラケット48は破断せず、PCU38は損傷を受けない。仮に、バリア58がPCU38の前端位置を多少超えて侵入してきた場合には、PCU38の前端38Aが車両後方側へ多少押圧される。しかし、PCU取付ブラケット48が(破断することなく)車両後方側へ曲げ変形することで、PCU38は車両後方側へ退避される。これにより、PCU38のクロス部材26への取付状態が維持される。従って、充電器36は他の部品に干渉して損傷を受けると思われるが、PCU38は損傷を殆ど受けずに済む。よって、高圧ケーブル44が断線することもない。
【0033】
また、上記の通り、充電器36のフランジ42が破断する過程や充電器36が車両後方側へ移動して他の部品に干渉してハウジング40等が変形する過程で、衝突エネルギーの一部が吸収されるので、エネルギー吸収性能も確保される。
【0034】
その結果、本実施形態によれば、前面衝突時に衝突エネルギーの一部を吸収することができると共に損傷から保護すべき補機(PCU38)については保護することができる。つまり、本実施形態によれば、前面衝突時に損傷してもよい充電器36等についてはフランジ42の破断により或いは自身の変形(圧壊)により積極的にエネルギー吸収させ、損傷しない方がよい部品であるPCU38等については車両骨格部材(クロス部材26)への取付状態を維持して損傷を受けないようにすることができる。
【0035】
図5には、本実施形態に係る車両用補機搭載構造を適用した場合とそうでない場合とでエネルギー吸収性能を比較したグラフがF−S線図として示されている。なお、縦軸にはバリア58で検出された荷重(力)の大きさを採っており、横軸には車両ストロークを採っている。細い実線グラフAがベースとしたエンジン車の場合のF−S特性を表している。太い実線グラフBがエンジン車をベースとして電気自動車を設計しかつ本実施形態に係る車両用補機搭載構造が適用されていない場合のF−S特性の予測を表している。なお、エンジン車をベースにして電気自動車を設計した場合、エンジン車に比べて車両重量が増加する。このため、車両ストロークがX1だけ増加すると予測している。
【0036】
これに対し、破線グラフCが、本実施形態に係る車両用補機搭載構造を適用した場合のF−S特性である。a点が一次ピークである。この一次ピークはクラッシュボックス14の潰れ始めのときに現れている。その後、クラッシュボックス14によるエネルギー吸収過程に入り、b点でラジエータコンデンサ16とユニットが当たり始める。そして、c点でラジエータコンデンサ16が圧壊し、充電器36がクロス部材26と共に後退し始める。そして、d点で二次ピークを迎え、充電器36のフランジ42が圧壊する。このときの斜線部Sが充電器36のフランジ42がせん断荷重を受けて圧壊したときのエネルギー吸収量であり、フランジ42のせん断破壊がエネルギー吸収量の増加に効いている。また、予測(見積もり)時の設定速度に対し、実際の評価速度はこれを若干上回っていたが、車両ストロークはX1より僅かに長いX2となり、僅かな車両ストローク増に抑えることができた。つまり、重量増加分に対し、充分なエネルギー吸収性能が発揮された結果、車両ストロークは充分に抑えられた。車両ストロークが抑えられると、ボディーの変形がそれだけ少なくなるので、PCU38に与える影響も少なくなることを意味する。
【0037】
また、本実施形態では、充電器36の車両上方側にPCU38が配置されているので、補機の搭載スペースが限られている場合にも充電器36とPCU38の両方を納めることができる。特にエンジン車ベースで電気自動車を開発する場合には、ボディー構造が電気自動車用ではないため、補機の搭載スペースが限られることが多く、このような場合には本実施形態に係る車両用補機搭載構造が奏効する。
【0038】
さらに、充電器36を固定するためのフランジ42はPCU38を取り付けるためのPCU取付ブラケット48よりも基端部から取付点であるボルト締結点までの長さが短い(L1<L2)ので、フランジ42が破断すると充電器36はPCU38を残したまま荷重入力方向である車両後方側へスライドするように移動していく。このようにフランジ42とPCU取付ブラケット48との基端部からボルト締結点までの長さを決めることで、充電器36の移動軌跡(ひいては充電器36が移動した後のPCU38の移動軌跡)をコントロールすることができる。
【0039】
その結果、本実施形態によれば、補機の搭載スペースが狭い場合にも複数の補機を効率よく収納することができると共に、車両前部10のスペース内での補機の移動軌跡を制御してエネルギー吸収性能の確保と損傷から保護すべき補機に対する保護性能の確保の両立を図ることができる。
【0040】
また、前面衝突時の衝突荷重が充電器36の前端36Aから入力されると、充電器36のハウジング40に一体に形成されたフランジ42に衝突荷重が伝達される。これにより、フランジ42はせん断方向に当該衝突荷重を受けて破断する。従って、フランジ42が曲げ変形して破断する場合に比べてエネルギー吸収量が増加する。その結果、本実施形態によれば、エネルギー吸収性能を高めることができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
以下、図6を用いて、本発明に係る車両用補機搭載構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0042】
図6に示されるように、この第2実施形態では、充電器36とPCU38の上下の配置関係を逆にしている。従って、上段側に配置された充電器36の前端36Aが下段側に配置されたPCU38の前端38Aよりも車両前方側に位置されている。また、PCU38側にフランジ42と同様の舌片状のフランジ70を設けると共に、充電器36側にPCU取付ブラケット48と同様構造の充電器取付ブラケット72を設けている。
【0043】
(作用・効果)
上記構成によれば、前面衝突時、バリア58には上段側に配置された充電器36の前端36Aが最初に当接する。このため、充電器36は充電器取付ブラケット72のボルト締結点を支点として車両後方側へ回転するようにして(換言すれば、倒れ込むようにして)変位する。このとき、充電器取付ブラケット72が曲げ変形するので、その過程でエネルギー吸収がなされる。また、上下の配置関係が替わっても、充電器36の前端36Aが先にバリア58に当接することに変わりはないので、PCU38の保護性能は得られる。従って、本実施形態においても、前述した第1実施形態と同様の作用並びに効果が得られる。但し、エネルギー吸収性能については、せん断変形ではなく、充電器取付ブラケット72の曲げ変形によるものなので低下する。
【0044】
〔第3実施形態〕
以下、図7を用いて、本発明に係る車両用補機搭載構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0045】
図7に示されるように、この第3実施形態では、充電器36とPCU38とを同一の取付点でボルト締結するのではなく、それぞれに取付点を設定している点に特徴がある。具体的には、クロス部材26の頂壁部28Aにおいて、第1実施形態等で説明したボス部32の内側に追加の一対のボス部80を設定している。そして、これら追加の内側のボス部80にPCU38のハウジング54の両側部から水平に張り出されたフランジ82が取付ボルト84及びウエルドナット86で締結固定されている。また、外側のボス部32に、充電器取付ブラケット72の下端部を取付ボルト56及びウエルドナット34で締結固定している。
【0046】
(作用・効果)
上記構成によっても、前述した第1実施形態、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、上記構成によれば、PCU38の取付点と充電器36の取付点とが別個独立に設定されており、PCU38の取付点の方が充電器36の取付点よりも車両幅方向内側にずれているので、第2実施形態の場合に比べて、フランジ82を短くすることができる。従って、その分、軽量化を図ることができる。
【0047】
〔上記実施形態の補足説明〕
上述した実施形態では、第1の補機として充電器36を挙げたが、前面衝突時に破損しても差し支えなく、むしろエネルギー吸収に利用できるものとしては、エアコンのコンプレッサ等があり、これらを第1の補機としてもよい。また、第2の補機としてPCU38を挙げたが、前面衝突時に破損させない方が好ましいものとしては、インバータやコンバータ等があり、これらを第2の補機としてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、本発明に係る車両用補機搭載構造を電気自動車に適用した場合を想定して説明したが、これに限らず、ハイブリッド車等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 車両前部
26 クロス部材(車両骨格部材)
34 ウエルドナット(取付点)
36 充電器(第1の補機)
36A 前端
38 PCU(第2の補機)
38A 前端
40 ハウジング
42 フランジ(第1の取付部)
48 PCU取付ブラケット(第2の取付部)
56 取付ボルト(取付点)
70 フランジ(第1の取付部)
72 充電器取付ブラケット〔第2の取付部(第2実施形態)、第1の取付部
(第3実施形態)〕
82 フランジ(第2の取付部)
84 取付ボルト(取付点)
86 ウエルドナット(取付点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に配置された車両骨格部材に第1の取付部を介して取り付けられた第1の補機と、
前記車両骨格部材に第2の取付部を介して取り付けられた第2の補機と、
を有する車両に適用され、
前記第1の補機の前端は前記第2の補機の前端より車両前方側に位置されており、更に前面衝突時の衝突荷重が当該第1の補機の前端に入力されることにより前記第2の取付部は破断することなく第1の取付部が破断する、
車両用補機搭載構造。
【請求項2】
前記第1の補機の車両上方側に前記第2の補機が配置されており、前記第1の取付部は前記第2の取付部よりも基端部から取付点までの長さが短く設定されている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用補機搭載構造。
【請求項3】
前記第1の取付部は、前記第1の補機の外郭を形成しているハウジングに一体に形成されていると共に、前記衝突荷重が入力されるとせん断方向に当該衝突荷重を受けて破断する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用補機搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−76540(P2012−76540A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222016(P2010−222016)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】