説明

車両用走行制御装置

【課題】 ドライバの加速意図を反映しつつドライバの違和感を抑制することができる車両走行制御装置を提供すること。
【解決手段】 車両がカーブ路を走行する際、カーブ路の曲率に基づいて算出された目標車速V0*となるように車両を加減速制御し、加減速制御中にドライバのアクセルペダル操作が検出されると、検出されたアクセルペダル操作量(アクセル開度AP)に基づいて目標車速V0*を修正するとともに、目標車速V0*により発生する車両の横加速度αyよりも大きい横加速度を許容する許容車速Vuprよりも高くならないように目標車速V*を制限し、目標車速V*の制限中に許容車速Vuprが上昇した場合、アクセルペダルの操作反力Fを発生させると共に、アクセルペダル操作が検出されなくなるまで、加減速制御における車両の加速度を、許容車速Vuprを実現する加速度αy'よりも小さくなるように制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両がカーブ路を走行する際、カーブ路の曲率に基づいて算出された目標車速となるように車両を加減速制御する車両用走行制御装置が知られている。例えば特許文献1に記載の装置は、加減速制御の作動中にドライバのアクセルペダル操作が検出されると、検出されたアクセルペダル操作量に基づいて目標車速を修正することで、ドライバの加速操作の意図を反映した適切な加減速制御の実現を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2007−230440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の装置では、ドライバのアクセルペダル操作の内容によってはドライバが意図するよりも大きな加速が行われ、ドライバに違和感を与えるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ドライバの加速意図を反映しつつドライバの違和感を抑制することができる車両走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両走行制御装置では、加減速制御中にドライバのアクセルペダル操作が検出されると、検出されたアクセルペダル操作量に基づいて目標車速を修正するとともに、所定の許容車速以上にならないように車速を制限し、車速の制限後もアクセルペダル操作が行われた場合、アクセルペダル操作が行われなくなるまで車両加速度を制限することとした。
【発明の効果】
【0007】
よって、アクセルペダル操作量に基づいて目標車速を修正することでドライバの加速意図を反映しつつ、車速の制限後もアクセルペダル操作が行われた場合に車両加速度を制限することでドライバの違和感を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の車両用走行制御装置のシステム構成を表す。
【図2】実施例1の車両用走行制御装置の制御システムの構成を表す。
【図3】実施例1の車両用走行制御装置による制御処理を表すフローチャートである。
【図4】実施例1の車両用走行制御装置によるカーブ走行時における作用を表すタイムチャートである。
【図5】実施例1の車両用走行制御装置によるカーブ走行時における作用を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施例1]
図1は実施例1の車両用走行制御装置のシステム構成を示す。車両用走行制御装置は、駆動力源としてエンジンを備えた車両に搭載される。車両用走行制御装置のシステムは、周囲環境認識センサ1と、車速センサ2と、アクセル開度センサ3と、ナビゲーション装置4と、エンジンコントローラ5と、ブレーキコントローラ6と、アクセルペダル反力コントローラ7と、車両コントローラ10とを備える。
【0010】
周囲環境認識センサ1は、前方障害物や道路幅等の車両周囲の環境を検出すると共に、車両周囲の障害物の車両への接近度合いを検出する。周囲環境認識センサ1は、走行する車線内の自車両の位置(走行位置)を検出するためのセンサとして、前方監視カメラを有している。前方監視カメラは、例えばCCDカメラ等で構成される単眼カメラであり、自車両前方の数m〜数10m先の走行路を撮影できるように構成されている。前方監視カメラの撮影画像は車両コントローラ10に出力される。また、周囲環境認識センサ1は、自車両の周囲の立体物(障害物)を検出し、この障害物の自車両への接近度合い(自車両に対する障害物の距離)を検出するためのセンサとして、レーザーレーダを有している。レーザーレーダの検出信号は車両コントローラ10に出力される。なお、レーザーレーダに限らず、ステレオカメラ等を用いてもよい。車速センサ2は、車輪の回転数や変速機の出力側の回転数を検出することにより車両の速度(車速V)を検出する。車速センサ2の検出信号は車両コントローラ10に出力される。アクセル開度センサ3は、ドライバがアクセルペダル操作を行った際の操作量、すなわちアクセル開度APを検出する。アクセル開度センサ3の検出信号は車両コントローラ10に出力される。
【0011】
エンジンコントローラ5は、車両コントローラ10からの指令に基づいて、図示しないスロットルバルブのスロットル開度等を制御することにより、エンジンの出力を制御する。ブレーキコントローラ6は、車両コントローラ10からの指示に基づいて、図示しないブレーキアクチュエータを制御することにより、各車輪のブレーキ力を制御する。アクセルペダル反力コントローラ7は、車両コントローラ10からの指令に基づいて、図示しないアクセルペダル反力アクチュエータを制御することにより、アクセルペダルの操作反力を発生する。アクセルペダル反力コントローラ7は、アクセル開度センサ3によって検出されたアクセル開度APと車両の走行状態とに基づいて、アクセルペダルの操作反力を発生可能に設けられている。
【0012】
ナビゲーション装置4は、GPSユニット40および地図データベース41を備え、目的地までの推奨ルートの演算や、車両の現在地付近の地図表示など、カーナビゲーション装置4の一般的な処理を行う。GPSユニット40は、GPS衛星から発信されるGPS信号を受信して、自車両の現在位置を検出する。地図データベース41には、複数のスケール(縮尺率)の地図データが格納されている。地図データには、道路地図をノードおよびリンクで表現した道路データが含まれている。道路データでは、交差点にノードが対応し、各ノード間を結ぶ線分、すなわち道路区間がリンクに対応する。
【0013】
車両コントローラ10は、供給される各検出信号に基づき、車両がカーブ路を走行する際の目標車速V*を道路曲率に基づいて算出するとともに、車速センサ1によって検出される車速Vが目標車速V*以下となるように、エンジンコントローラ5およびブレーキコントローラ6に指令を出力し、車両の加減速制御を行う。また、目標車速V*による車両の加減速度および横加速度よりも大きい加減速度および横加速度を許容する許容車速Vuprを算出し、加減速制御の作動中にドライバのアクセルペダル操作を検出すると、目標車速V*を許容車速Vupr以下に制限しつつアクセルペダル操作量に基づいて目標車速V*を修正する。また、目標車速V*が許容車速Vupr以下に制限された状態で、アクセルペダル操作が検出された場合、許容車速Vuprが上昇に転じると、アクセルペダル操作量に基づく目標車速V*の修正を禁止することで、車両の加速度を制限する。目標車速V*の修正方法および制限方法、並びに車両加速度の制限方法については、後述する。
【0014】
図2は、車両コントローラ10内に設けられた制御システムの概略構成を示すブロック線図である。図2に示すように、車両コントローラ10は、道路曲率算出部101と、周囲環境認識部102と、車速検出部103と、アクセルペダル操作量検出部104と、目標車速算出部105と、加減速制御部106と、許容車速算出部107と、アクセルペダル操作検出部108と、目標車速修正部109と、目標車速制限部110と、目標車速復帰部111と、アクセルペダル反力制御部112とを有する。
【0015】
道路曲率算出部101は、車両の現在位置等のナビゲーション装置4からの情報に基づいて、車両前方のカーブ路の曲率を算出する。初めに、GPSユニット40によって検出された車両の現在位置を基準として、自車位置前方の所定範囲内の道路データを地図データベース41から読み出す。読み出す道路データには、道路データに含まれる各ノードの緯度・経度、道路種別、道路幅、及び、制限速度等のデータも含まれる。次に、自車両が走行すると考えられる推定経路を特定する。例えば、ユーザがナビゲーション装置4に対して目的地を設定して、目的地までの推奨経路を演算している場合には、演算した推奨経路を推定経路とする。ユーザが目的地を設定していない場合には、道路種別や道路幅等のデータに基づいて、車両が進むと考えられる経路の優先順位を推定し、その中で最も優先順位の高い経路を推定経路として設定する。なお、この推定経路には、自車位置前方に、n個(nは整数)のノードが含まれているものとする。カーブ路の半径(曲率半径)は、推定経路上の各ノードNk(k=1,2,…,n)を対象として算出する。カーブ半径から曲率を算出できる。例えば、ノードNkの位置におけるカーブ半径Rkは、ノードNkと、その両隣のノードNk-1およびNk+1の位置座標に基づき、ノードNk-1,Nk,Nk+1の3点を通る円の半径により算出することができる。各ノードNk(k=1,2,…,n)を対象としてカーブ半径Rkを算出すると、自車位置から各ノードNkまでの距離Lkのデータとともに、(N1,L1,R1)、(N2,L2,R2)、…、(Nn,Ln,Rn)という形でメモリ(記憶装置)に記憶させておく。また、カーブ路の形状を特定する。ここでは、カーブの入口となるノード、出口となるノード、および、カーブ半径が最小となるノードをそれぞれ求める。カーブの入口となるノードは、求めたカーブ半径Rkと所定値Rinとを、kの値が小さい順に比較していき、Rkが所定値Rinよりも小さくなったときのノードとする。例えば、カーブ半径R1,R2が所定値Rinよりも大きい値であり、カーブ半径R3が所定値Rinよりも小さい値であれば、ノードN3がカーブの入口のノードとなる。また、カーブの出口となるノードは、カーブの入口となるノード以降のノードを対象として、カーブ半径Rkと所定値Routとを、kの値が小さい順に比較していき、Rkが所定値Routより大きくなったときのノードとする。
【0016】
周囲環境認識部102は、周囲環境認識センサ1の出力に基づき、車両の周囲の障害物への接近度合い(車両から障害物までの距離)を検出する。車速検出部103は、車速センサ2の出力に基づき、車速Vを検出する。アクセルペダル操作量検出部104は、アクセル開度センサ3の出力に基づき、ドライバがアクセルペダル操作を行った際の操作量(アクセル開度AP)を検出する。
【0017】
目標車速算出部105は、道路曲率算出部101により算出されたカーブ路の曲率に基づいて、車両がカーブ路を含む道路を走行する際の目標車速V*のデフォルト値VO*を算出する。目標車速算出部105は、目標車速VO*に従って車両が走行した場合に発生する車両の加減速度および横加速度が、ドライバが快適であると感じる所定範囲内となるように、目標車速VO*を設定する。
初めに、自車両前方のカーブを、予め設定された横加速度(旋回加速度)αy(例えば、αy=3.0m/s2)以下で走行するための通過可能車速Vckを算出する。ノードNkにおける通過可能車速Vckは、次式により求められる。
Vck=√(αy・Rk
カーブ半径Rkが最小となる地点において、通過可能車速Vckは最も小さい値となる。以下では、自車位置から、カーブ入口のノードまでの距離をLcin、自車位置からカーブ半径が最小となるノードまでの距離をLcmin、自車位置からカーブ出口のノードまでの距離をLcoutとする。算出した通過可能車速Vck、及び、メモリに格納されている、自車位置からノードNkまでの距離Lkに基づいて、車両の現在地における制限車速Vcckを算出する。制限車速Vcckは、自車位置から、所定の減速度αx(例えば、αx=1.0m/s2)で減速したときに、ノードNkにおける車速が通過可能車速Vckとなるような車速であり、次式により求められる。
cck=√(Vck2+2・αx・Lk
【0018】
次に、道路形状に合わせた快適な目標車速VO*のパターンを演算する。
まず、推定経路上の各ノードを対象として、算出された制限車速Vcckが最小値となるノードを特定する。ここでは、特定したノードをNk*とし、ノードNk *の通過可能車速をVck*、自車位置からノードNk*までの距離をLk*とする。自車位置からノードNk*までの目標減速度を上記のように所定値αxとした場合、ノードNk*までの間で、自車位置からの距離Lの位置における目標車速Vok*は、次式となる。
Vok*=√(2・αx・(L0*−L))
ただし、L0*は、次式で表される値である。
0*=(Vck*2+2・αx・Lk*)/(2・αx
また、ノードNk*以降の位置における目標車速VKK+1は、次式により求める。VKK+1は、ノードNkとノードNk+1との間において、自車位置からの距離がLの位置における目標車速である。
VKK+1=√{2αKK+1(L0−L)}
ただし、
0=(LK+1・Vck2−Lk・Vck+12)/(Vck2−Vck+12
αKK+1=0.5・(Vck2−Vck+12)/(LK+1−LK
αKK+1は、ノードNkとノードNk+1との間の目標加減速度である。
上式に基づいて演算した目標車速V*(=Vok*,VKK+1)および目標加減速度αx*(=αxKK+1)のデータは、距離Lのデータとともに、メモリに記憶させておく。例えば、自車位置からの距離Lとともに、(L,V*(L),αx*(L))という形でメモリに記憶させておく。距離Lに応じた目標車速V*(L)および目標加減速度αx*(L)は、加減速制御時にドライバによるアクセル操作が無い場合のデフォルト値となる。
【0019】
また、目標車速算出部105は、周囲環境認識部102により車両周囲の障害物が検出されると、障害物の車両への接近度合いに基づいて、目標車速V*のデフォルト値VO*を修正する。具体的には、どのようなドライバであっても滑らかな(快適と感じる)加減速となるような加速度または減速度で障害物の手前で停止できるような値に、目標車速VO*を修正する。
【0020】
加減速制御部106は、車速センサ2により検出される車速Vが目標車速V*となるように、エンジンコントローラ5及びブレーキコントローラ6に加減速指令を出力して車両を加減速させる。具体的には、目標車速V*に対応する駆動力指令値を算出し、駆動力指令値を実現するためのエンジントルク指令、およびブレーキ液圧指令を演算する。
【0021】
許容車速算出部107は、道路曲率算出部101により算出されたカーブ路の曲率に基づいて、許容車速Vuprを算出する。許容車速算出部107は、ドライバの好みの車速を反映させるため、目標車速VO*のパターンと同様の方法で、かつ目標車速VO*のパターンよりも大きい加減速度αx'で、許容車速Vuprのパターンを演算する。すなわち、許容車速算出部107は、目標車速算出部105により算出された目標車速VO*に従って車両が走行した場合に発生する車両の横加速度αyおよび加減速度αx*よりも大きい横加速度αy'(>αy)および加減速度αx'(>αx*)を許容し、かつ車両挙動の安定性を確保できるような値に、許容車速Vuprを設定する。また、許容車速算出部107は、周囲環境認識部102により車両周囲の障害物が検出されると、障害物の車両への接近度合いに基づいて、許容車速Vuprを修正する。具体的には、ドライバがアクセルペダルを踏み込めば、(目標車速V*に従った場合よりも)大き目の加減速度で障害物の手前まで接近でき、かつ安全な車両挙動を確保しつつ障害物の手前で停止可能な値に、許容車速Vuprを修正する。
【0022】
(1)例えば、(カーブに入る際の)減速走行中または(カーブから抜ける際の)加速走行中、すなわち加減速度が発生するときには、許容車速Vuprを目標車速VO*よりも高く設定する。
(2)カーブを車速一定で走行中、すなわち横加速度が発生するときには、許容車速Vuprを目標車速VO*よりも高く設定する。
(3)(カーブの前後の)直線路を車速一定で走行中、すなわち加減速度および横加速度が発生しないときには、許容車速Vuprを目標車速VO*と等しく設定する。ただし、障害物に接近中またはドライバが操舵回避したような場合は、上記(1)(2)と同様、許容車速Vuprを目標車速VO*よりも高く設定する。
【0023】
アクセルペダル操作検出部108は、アクセルペダル操作量検出部104の出力(アクセル開度センサ3により検出されたアクセル開度AP)に基づき、ドライバのアクセルペダル操作の有無を検出する。具体的には、検出されたアクセル開度APが、所定の踏み込み判断用の閾値AP_0を超えているか否かを判定し、超えていればアクセルペダル操作有りと検出する。
【0024】
目標車速修正部109は、加減速制御部106による加減速制御の作動中、アクセルペダル操作検出部108によりアクセルペダル操作有りと検出され、かつ車速検出部103により検出される車速Vが目標車速VO*以上であると、アクセルペダル操作量検出部104により検出されたアクセルペダル操作量(アクセル開度AP)に基づいて、目標車速算出部105により算出された目標車速(デフォルト値)VO*を修正してV1*(修正値)とする。具体的には、減速制御時にはアクセルペダル操作量が大きいほど減速度合が小さくなる(減速度の大きさが減少する)ように、また、加速制御時にはアクセルペダル操作量が大きいほど加速度合が大きくなる(加速度の大きさが増加する)ように、目標車速VO*を修正してV1*とする。いずれの場合も、修正値V1*をデフォルト値VO*よりも高い値に算出し、修正値V1*を目標車速V*として設定する。
【0025】
目標車速制限部110は、目標車速修正部109により修正された目標車速V1*が、許容車速算出部107により算出された許容車速Vuprよりも高くならないように、目標車速V*を制限する。すなわち、修正された目標車速V1*が許容車速Vupr以上であれば、目標車速V*をVuprに設定する。
【0026】
目標車速復帰部111は、目標車速制限部110により目標車速V*が制限された(目標車速V*がVuprに設定された)状態で、許容車速算出部107により算出される許容車速Vuprが(下降または維持から)上昇に転じ、かつアクセルペダル操作検出部108によりアクセルペダル操作が検出されると、アクセルペダル操作検出部108によりアクセルペダル操作が検出されなくなるまで、目標車速修正部109による目標車速VO*の修正を禁止する。具体的には、減速制御時に(上記修正後の)目標車速V*が許容車速Vupr以下に制限された後、加速制御時に、許容車速Vuprが(下降しまたは維持された状態から)上昇に転じても、アクセルペダル操作が検出された場合、アクセルペダル操作が検出されなくなるまで、目標車速VO*の修正を禁止する。すなわち、目標車速V*を(上記修正前の)デフォルト値V0*に設定し、アクセルペダル操作に応じて加速度合が大きくなる(加速度の大きさが増加する)ように修正しない。
【0027】
アクセルペダル反力制御部112は、目標車速制限部110により目標車速V*が制限された(目標車速V*がVuprに設定された)状態で、許容車速算出部107により算出される許容車速Vuprが(下降または維持から)上昇に転じ、かつアクセルペダル操作検出部108によりアクセルペダル操作が検出されると、アクセルペダルの操作反力の目標値を設定し、アクセルペダル操作が検出されなくなるまで、設定した目標反力のパターンに応じてアクセルペダル反力コントローラ7に指令を出力して、アクセルペダルの操作反力を発生させる。反力発生のパターンとしては、例えば、検出されるアクセル開度APの大きさに応じて、所定の一定値を発生させる。
【0028】
図3は、実施例1の車両用走行制御装置によって行われる制御内容を示すフローチャートである。車両が起動すると、車両コントローラ10は、図3の処理を所定の周期で繰り返し実行する。
ステップS1では、道路曲率算出部101が、自車走行路において、自車位置前方に存在するカーブ路の曲率を算出する。その後、ステップS2に移行する。
ステップS2では、周囲環境認識部102が、車両周囲の障害物の、車両への接近度合いを検出する。その後、ステップS3に移行する。
ステップS3では、目標車速算出部105が、目標車速VO*のパターンを決定する。その後、ステップS4に移行する。
ステップS4では、許容車速算出部107が、許容車速Vuprのパターンを決定する。その後、ステップS5に移行する。
ステップS5では、車速検出部103が車速Vを検出するとともに、アクセルペダル操作量検出部104がアクセルペダル操作量(アクセル開度AP)を検出する。その後、ステップS6に移行する。
【0029】
ステップS6およびS10では、デフォルトの目標車速V*に車速Vを制御する通常モードから、アクセル開度APに応じて上方修正した目標車速V1*に車速Vを制御するオーバーライドモードへ移行するか否かを判定する。
ステップS6では、アクセルペダル操作検出部108が、アクセルペダル操作が行われたか否かを検出する。アクセルペダル操作有りと検出しなければステップS7に移行し、アクセルペダル操作有りと検出するとステップS9に移行する。
ステップS7では、オーバーライドモードを禁止するオーバーライド禁止モード中であることを示すオーバーライド禁止フラグをクリアする(0に設定する)。その後、ステップS8に移行する。
ステップS8では、目標車速V*をデフォルト値VO*に設定する。その後、ステップS18に移行する。
ステップS9では、オーバーライド禁止フラグが1であるか否かを判定する。フラグが0であればステップS10に移行し、フラグが1であればステップS16に移行する。
ステップS10では、検出された車速Vが目標車速(デフォルト値VO*)以上であるか否かを判定する。車速Vが目標車速VO*に達していなければステップS7に移行し、車速Vが目標車速VO*に達していれば(目標車速VO*以上であれば)ステップS11に移行する。
ステップS11では、目標車速修正部109が、検出されたアクセル開度APに応じて目標車速(デフォルト値)VO*を修正し、目標車速V*を修正値V1*に設定する。その後、ステップS12に移行する。
【0030】
ステップS12では、オーバーライドモードから、許容車速Vuprに車速Vを制御するオーバーライド制限モードへ移行するか否かを判定する。具体的には、検出された車速Vが許容車速Vupr以上であるか否かを判定する。車速Vが許容車速Vuprに達していなければステップS18に移行し、車速Vが許容車速Vuprに達していれば(許容車速Vupr以上であれば)ステップS13に移行する。
【0031】
ステップS13では、オーバーライド制限モードからオーバーライド禁止モードへ移行するか否かを判定する。具体的には、許容車速Vuprが、設定されたパターンにおいて下降する状態又は維持された状態から上昇に転じたか否かを判定する。許容車速Vuprが上昇に転じていなければ(下降又は維持中であれば)ステップS14に移行し、許容車速Vuprが上昇に転じればステップS15に移行する。
ステップS14では、目標車速制限部110が、目標車速V*を許容車速Vuprに設定する。その後、ステップS18に移行する。
ステップS15では、オーバーライド禁止フラグを立てる(1に設定する)。その後、ステップS16に移行する。
ステップS16では、目標車速復帰部111が、目標車速V*をデフォルト値VO*に設定する。その後、ステップS17に移行する。
ステップS17では、アクセルペダル反力制御部112が、アクセルペダルの操作反力を発生させる操作反力制御を行う。その後、ステップS18に移行する。
【0032】
ステップS18では、加減速制御部106が、車両を加速制御または減速制御する。すなわち、検出される車速Vが設定された目標車速V*となるように、車速Vを制御する。その後、今回の制御周期を終了する。
【0033】
次に、実施例1の車両用走行制御装置による作用を、図4及び図5を用いて説明する。図4及び図5は、カーブ路を走行する際にアクセルペダル操作が行われる場合の、目標車速V*及びアクセル開度APの変化を示すタイミングチャートである。目標車速V*のデフォルト値V0*を一点鎖線で、修正値V1*を破線で、許容車速Vuprを二点鎖線で、最終的な目標車速V*を実線で、それぞれ示す。
【0034】
まず、図4を用いて、オーバーライドモードとオーバーライド制限モードについて説明する。目標車速V*のデフォルト値V0*及び許容車速Vuprは図4のように設定されているものとする。すなわち、時刻t1まで(カーブの手前の直線路を走行時)、V0*及びVuprは一定値に設定される。時刻t1以後(カーブ入口を走行時)、V0*は所定の減速度で減少し、時刻t3で一定値となる。時刻t1より遅い時刻t2以後、Vuprは上記一定値からV0*よりも大きな減速度で減少し、時刻t3でV0*より大きな一定値となる。時刻t3から時刻t4までの間(カーブを走行時)、V0*及びVuprは上記一定値に維持される。時刻t4で、V0*及びVuprは上記一定値に維持された状態から上昇に転じる。時刻t4以後(カーブ出口を走行時)、V0*は所定の増加勾配(加速度)で上昇し、時刻t6で一定値となる。時刻t4以後、VuprはV0*よりも大きな増加勾配(加速度)で上昇し、時刻t6より早い時刻t5で一定値となる。時刻t6以後(カーブの後の直線路を走行時)、V0*及びVuprは上記一定値に設定される。一方、アクセル開度APは、時刻t0まで0であり、時刻t0以後、増加する。時刻t1で閾値AP_0を上回り、時刻t31で一定値となる。その後、時刻t32まで一定値に維持される。時刻32以後、アクセル開度APは減少し、(許容車速Vuprが上昇に転じる時刻t4より早い)時刻t34で閾値AP_0以下となり、時刻t35で0となる。その後、時刻t51まで0であり、時刻t51以後、再び増加する。時刻t52で再び閾値AP_0を上回り、時刻t54で一定値となり、その後、維持される。
【0035】
時刻t1まで、アクセル開度APは閾値AP_0以下であるため、図3のフローチャートにおいてステップS1〜S6からステップS7→S8→S18へと進む流れとなり、目標車速V*をデフォルト値V0*に設定する(通常モード:Aの区間)。
時刻t1以後、アクセル開度APが閾値AP_0を上回るため、(修正後の目標車速V1*が時刻t21で許容車速Vuprに達するまで、)ステップS1〜S6からステップS9→S10→S11→S17へと進む流れとなり、目標車速V*をアクセル開度APに応じて修正する(オーバーライドモード:Bの区間)。具体的には、アクセル開度APが大きいほど減速度合が小さくなるように、目標車速V*を修正する。
時刻t21で、修正後の目標車速V1*が許容車速Vuprに達し、かつ許容車速Vuprがまだ上昇に転じていない(下降している)ため、ステップS1〜S6からステップS9→S10→S11→S12→S13→S14→S17へと進む流れとなり、目標車速V*を許容車速Vuprに設定する(オーバーライド制限モードの開始)。
時刻t21以後、時刻t33まで、同様の流れとなり、目標車速V*を許容車速Vuprに設定する(オーバーライド制限モード:Cの区間)。
時刻t33以後、修正後の目標車速V1*が許容車速Vuprを下回るため、ステップS1〜S6からステップS9→S10→S11→S12→S18へと進む流れとなり、目標車速V*をアクセル開度APに応じて修正する(オーバーライドモード:Bの区間)。
時刻t34以後、時刻t52まで、アクセル開度APが閾値AP_0以下となるため、ステップS1〜S6からステップS7→S8→S18へと進む流れとなり、目標車速V*をデフォルト値V0*に設定する(通常モード:Aの区間)。
時刻t52以後、アクセル開度APが再び閾値AP_0を上回るため、ステップS1〜S6からステップS9→S10→S11→S12→S18へと進む流れとなり、目標車速V0*をアクセル開度APに応じて修正する(オーバーライドモード:Bの区間)。具体的には、アクセル開度APが大きいほど加速度合が大きくなるように、目標車速V0*を修正する。
時刻t53以後、修正後の目標車速V1*が許容車速Vuprに達し、かつ許容車速Vuprが上昇に転じていない(一定値に維持されている)ため、ステップS1〜S6からステップS9→S10→S11→S12→S13→S14→S18へと進む流れとなり、目標車速V*を許容車速Vuprに設定する(オーバーライド制限モード:Cの区間)。なお、時刻t53以後における目標車速V1*の図示を省略する。
【0036】
以上のように、道路形状に合わせた快適な目標車速VO*のパターンとは別に、目標車速VO*よりも大きい加減速度で算出される許容車速Vuprのパターンを設定し、この許容車速Vuprとアクセル開度APとを用いて目標車速V0*を修正する。加減速制御中にドライバがアクセルペダルを踏み込むとオーバーライドモードとなり、目標車速V*を修正してデフォルト値V0*よりも高い修正値V1*に上昇させ、例えば減速制御時には減速度を小さくする一方(時刻t1〜t2)、加速制御時には加速度を大きくする(時刻t52〜t53)。よって、ドライバの好みの加減速度を加減速制御(車速制御)に反映させることができる。また、修正後の目標車速V1*が許容車速Vuprに達するとオーバーライド制限モードとなり、アクセルペダル操作が続いていても目標車速V1*を許容車速Vupr以上に上昇させない(時刻t21〜t33)。よって、ドライバのアクセルペダル操作に応じて加減速度を変更しても、車両挙動を安定させることができる。ここで、走行路の地図データベース情報のみならず、車両が周囲の障害物に接近したり、道路が混雑したりしている場合には、これら周囲環境に応じて目標車速V*および許容車速Vuprを最適に修正する。よって、ドライバの感覚により適合した加減速制御を実現することができる。
【0037】
次に、図5を用いて、オーバーライド禁止モードについて説明する。図5では、アクセルペダルの操作反力Fの変化を併せて示し、目標車速V*のデフォルト値V0*及び許容車速Vuprは図4と同様に設定されているものとする。アクセル開度APは、時刻t31までは図4と同様である。その後、時刻t51まで一定値に維持される。時刻51以後、アクセル開度APは減少し、(許容車速Vuprが上昇に転じる時刻t4より遅い)時刻t52で閾値AP_0以下となる。その後、時刻t53で0となり、再び増加に転じる。時刻t55で再び閾値AP_0を上回り、時刻t57で一定値となった後、維持される。
【0038】
時刻t31までは図4と同様であり、時刻t31以後、目標車速V*を許容車速Vuprに設定する(オーバーライド制限モード:Cの区間)。
時刻t4で、許容車速Vuprが上昇に転じるが、アクセル開度APが相変わらず閾値AP_0を上回っているため、図3のフローチャートにおいてステップS1〜S6からステップS9→S10→S11→S12→S13→S15→S16→S17→S18へと進む流れとなり、目標車速V*をデフォルト値V0*に設定する(オーバーライド禁止モードの開始)。時刻t4以後、アクセル開度APが閾値AP_0以下となる時刻t52まで、ステップS1〜S6からステップS9→S16→S17→S18へと進む流れとなり、目標車速V*をデフォルト値V0*に設定する(オーバーライド禁止モード:Dの区間)。この間、アクセルペダルの操作反力Fを発生させる(S17)。具体的には、時刻t4以後、アクセルペダル反力が増加して時刻t41で一定値となり、その後、時刻t52まで維持される。
時刻t52以後、時刻t55まで、アクセル開度APが閾値AP_0以下となるため、ステップS1〜S6からステップS7→S8→S18へと進む流れとなり、目標車速V*をデフォルト値V0*に設定する(通常モード:Aの区間)。時刻t52でアクセルペダル操作反力制御を終了するため、時刻52以後、アクセルペダル反力Fは減少し、時刻t54で0となる。
時刻t55以降は、図4の時刻t52以降と同様である。
【0039】
以上のように、車速Vが許容車速Vuprで制限されたときにドライバがアクセルペダルを踏み続けた場合には、オーバーライド禁止モードにより、加減速制御の加速度を制限する。具体的には、カーブ出口を走行中、またはカーブを抜けて直線路に入ると、許容車速Vuprが高くなる。このとき、オーバーライド制限モードであり、かつアクセルペダルが踏み込まれた状態である場合、ドライバのアクセルペダルの踏み込み量に応じた加速度の発生を制限し、デフォルトである目標車速V0*の増加に応じてゆっくりと加速するようにした。すなわち、オーバーライド制限モードにより、ドライバのアクセルペダル操作を遮って車速制限を行った場合には、その後に許容車速Vuprが高くなっても、オーバーライド禁止モードに切り替えることより、ドライバがアクセルペダル操作を終了しない限り、加速度制限を維持して弱い加速しか行わないようにした。よって、車速制限中にドライバが誤ってアクセルペダル操作を続けてしまっても、この誤操作によって強い加速が発生することを抑制し、ドライバの意図以上の加速(ないし急な車両挙動)を抑えることで、ドライバに与える違和感を低減することができる。すなわち、ドライバがアクセルペダルを踏んだ状態で許容車速Vuprの高い道路へ進入した場合であっても、強い加速度を発生することなく、ドライバの違和感の少ない加速度で加速制御することができる。
【0040】
なお、目標車速V*を許容車速Vuprに設定するオーバーライド制限モードから、目標車速V*をデフォルト値V0*に設定するオーバーライド禁止モードへ移行する際、目標車速V*を許容車速Vuprからデフォルト値V0*に向けて徐々に移行させることで、車速Vの急変を抑制し、これによりドライバの違和感を抑制することとしてもよい。また、実施例1では、ドライバが意図する以上の加速を抑えるための手段として、オーバーライド禁止モードにより目標車速V*をデフォルト値V0*に設定することで、車両の加速度を、許容車速Vuprを実現する加速度αy'よりも小さくなるように制限することとしたが、目標車速V*をデフォルト値V0*に維持する以外に、加速度が制限されているとドライバが認知できる程度の弱い加速度で目標車速V*を許容車速Vuprに向かって復帰させることとしてもよい。
【0041】
また、オーバーライド禁止モードはアクセルペダル操作が終了すれば解除されるため、アクセルペダルの踏み直しという簡単な操作でオーバーライドモードへ移行することができ(時刻t52〜tt56)、これによりドライバの感覚に合った走行が可能となる。すなわち、一度アクセルペダルを踏み直すだけという簡単な操作で加速意図を走行制御装置に入力することができ、ドライバの意図する加速度で加減速制御を修正することができるようになる。
【0042】
ここで、オーバーライド制限モード中に再度許容車速Vuprが増加した場合には、オーバーライド禁止モードに切り替えると共に、アクセルペダル操作反力Fを発生させることで、ドライバによるアクセルペダルの再操作を促し、適切な加速操作を促すように設けられている。よって、反力Fの発生によってアクセルペダルを踏み直す操作が自然に誘導されるため、違和感のないオーバーライド加速(再度のオーバーライドモードへの移行)を直感的に行うことができるようになる。なお、反力Fを発生させる時間は、アクセルペダル操作が検出されなくなるまでに限らず、それ以前の時点までとしてもよい。また、反力Fを発生させるパターン(目標値のパターン)としては、所定の一定値を発生させるものに限らず、例えば反力Fの大きさを変化させたり、断続的に反力Fを発生させることとしてもよい。要はドライバにアクセルペダルの再操作を促すことができればよい。
【0043】
以上説明したように、実施例1の車両用走行制御装置にあっては下記の効果を得ることができる。
(1)車両がカーブ路を走行する際、カーブ路の曲率に基づいて算出された目標車速V0*となるように車両を加減速制御する車両用走行制御装置において、加減速制御中にドライバのアクセルペダル操作が検出されると、検出されたアクセルペダル操作量(アクセル開度AP)に基づいて目標車速V0*を修正するとともに、目標車速V0*により発生する車両の横加速度αyよりも大きい横加速度を許容する許容車速Vuprよりも高くならないように目標車速V*を制限し、目標車速V*の制限中に許容車速Vuprが上昇した場合、アクセルペダルの操作反力Fを発生させると共に、アクセルペダル操作が検出されなくなるまで、加減速制御における車両の加速度を、許容車速Vuprを実現する加速度αy'よりも小さくなるように制限する。
よって、アクセルペダル操作量に基づいて、目標車速V0*を許容車速Vuprよりも高くならない範囲で修正することで、加減速制御中であっても、ドライバのアクセル操作による加速意図を所定の範囲内で自在に反映させることができる。また、許容車速Vuprによる目標車速V*の制限中に許容車速Vuprが上昇した場合、加速を制限することで、ドライバの誤ったアクセル操作による意図以上の加速を抑え、ドライバに与える違和感を低減することができる。また、反力Fを発生させることで、ドライバによる再度のアクセル操作の開始を促し、これによりドライバの加速意図が確実に(より正確に)アクセル操作に反映されるように促すことができる。
【0044】
(2)具体的には、車両前方のカーブ路の曲率を算出する道路曲率算出手段(道路曲率算出部101)と、道路曲率算出手段によって算出されたカーブ路の曲率に基づいて、車両がカーブ路を含む道路を走行する際の目標車速V0*を算出する目標車速算出手段(目標車速算出部105)と、目標車速算出手段によって算出された目標車速V0*による車両の加減速度αx*および横加速度αyよりも大きい加減速度および横加速度を許容する許容車速Vuprを算出する許容車速算出手段(許容車速算出部107)と、目標車速V*に基づいて車両を加減速させる加減速制御手段(加減速制御部106)と、ドライバのアクセルペダル操作を検出するアクセルペダル操作検出手段(アクセルペダル操作検出部108)と、ドライバがアクセルペダル操作を行った際の操作量(アクセル開度AP)を検出するアクセルペダル操作量検出手段(アクセルペダル操作量検出部104)と、加減速制御手段による加減速制御の作動中に、アクセルペダル操作検出手段によってドライバのアクセルペダル操作が検出されると、アクセルペダル操作量検出手段によって検出されたアクセルペダル操作量に基づいて目標車速V0*を修正する目標車速修正手段(目標車速修正部109)と、目標車速修正手段によって修正された目標車速V*を許容車速Vupr以下に制限する目標車速制限手段(目標車速制限部110)と、修正された目標車速V*が目標車速制限手段によって制限された状態で、許容車速Vuprが上昇に転じ、かつアクセルペダル操作検出手段によってドライバのアクセルペダル操作が検出されると、アクセルペダル操作検出手段によってドライバのアクセルペダル操作が検出されなくなるまで、目標車速V*を目標車速修正手段による修正前の値(デフォルト値VO*)に設定する目標車速復帰手段(目標車速復帰部111)と、目標車速復帰手段によって目標車速V*が上記修正前の値(デフォルト値VO*)に設定されると、アクセルペダルの操作反力Fを発生させるアクセルペダル反力制御手段(アクセルペダル反力制御部112、図3のステップS16→S17)と、を備えた。
よって、上記(1)と同様の効果を奏する。
【0045】
(3)目標車速修正手段(目標車速修正部109)は、アクセルペダル操作量検出手段(アクセルペダル操作量検出部104)によって検出されたアクセルペダル操作量(アクセル開度AP)が大きいほど、減速制御時の減速度合が小さくなるように、または、加速制御時の加速度合が大きくなるように、目標車速V*を修正し、目標車速復帰手段(目標車速復帰部111)は、減速制御時に(上記修正後の)目標車速V*が目標車速制限手段(目標車速制限部110)によって制限された後、加速制御時に、アクセルペダル操作検出手段(アクセルペダル操作検出部108)によってドライバのアクセルペダル操作が検出されると、目標車速V*を上記修正前の値(デフォルト値VO*)に設定する。
よって、減速制御後の加速制御時に、ドライバが誤ったアクセル操作を行っても、アクセルペダル操作量に応じて加速度合が大きくなるように目標車速V*が修正されることを禁止することで、ドライバの意図以上の加速を抑え、ドライバに与える違和感を低減することができる。
【0046】
(4)車両への障害物の接近度合いを検出する周囲環境認識手段(周囲環境認識部102)を備え、目標車速算出手段(目標車速算出部105)は、検出された障害物の接近度合いに基づき目標車速V*および許容車速Vuprを修正する。
よって、車両挙動の安定性を確保しつつ、ドライバの感覚により適合した加減速制御を実現することができる。
【0047】
以上、本発明を実施例に基づいて説明してきたが、上記実施例に限らず、他の構成であっても本発明に含まれる。
例えば、駆動力源としてエンジンのほかにモータを備えたハイブリッド車や電気自動車に本発明の車両用走行制御装置を搭載することとしてもよい。
目標車速V*や許容車速Vuprの算出方法は実施例のものに限らない。例えば、周囲環境認識センサ1の前方監視カメラからの情報(撮影された画像における左右の車線区分線の配置等)に基づき、車両前方のカーブ路の曲率を算出することとしてもよい。
目標車速V*を修正するために用いるアクセルペダル操作量として、アクセル開度APに限らず、例えばアクセル開度APの時間積分値等を用いることとしてもよい。
アクセルペダルの踏み込み速度や戻し速度に基づき目標車速V*を修正することとしてもよい。また、アクセルペダル操作が行われた際に検出された車両位置に基づき目標車速V*を修正することとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
101 道路曲率算出部(道路曲率算出手段)
104 アクセルペダル操作量検出部(アクセルペダル操作量検出手段)
105 目標車速算出部(目標車速算出手段)
106 加減速制御部(加減速制御手段)
107 許容車速算出部(許容車速算出手段)
108 アクセルペダル操作検出部(アクセルペダル操作検出手段)
109 目標車速修正部(目標車速修正手段)
110 目標車速制限部(目標車速制限手段)
111 目標車速復帰部(目標車速復帰手段)
112 アクセルペダル反力制御部(アクセルペダル反力制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方のカーブ路の曲率を算出する道路曲率算出手段と、
前記道路曲率算出手段によって算出された前記カーブ路の曲率に基づいて、車両が前記カーブ路を含む道路を走行する際の目標車速を算出する目標車速算出手段と、
前記目標車速算出手段によって算出された目標車速による車両の加減速度および横加速度よりも大きい加減速度および横加速度を許容する許容車速を算出する許容車速算出手段と、
前記目標車速に基づいて車両を加減速させる加減速制御手段と、
ドライバのアクセルペダル操作を検出するアクセルペダル操作検出手段と、
ドライバがアクセルペダル操作を行った際の操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、
前記加減速制御手段による加減速制御の作動中に、前記アクセルペダル操作検出手段によってドライバのアクセルペダル操作が検出されると、前記アクセルペダル操作量検出手段によって検出されたアクセルペダル操作量に基づいて前記目標車速を修正する目標車速修正手段と、
前記目標車速修正手段によって修正された目標車速を前記許容車速以下に制限する目標車速制限手段と、
前記修正された目標車速が前記目標車速制限手段によって制限された状態で、前記許容車速が上昇に転じ、かつ前記アクセルペダル操作検出手段によってドライバのアクセルペダル操作が検出されると、前記アクセルペダル操作検出手段によってドライバのアクセルペダル操作が検出されなくなるまで、前記目標車速を前記目標車速修正手段による修正前の値に設定する目標車速復帰手段と、
前記目標車速復帰手段によって前記目標車速が前記修正前の値に設定されると、アクセルペダルの操作反力を発生させるアクセルペダル反力制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用走行制御装置において、
前記目標車速修正手段は、前記アクセルペダル操作量検出手段によって検出されたアクセルペダル操作量が大きいほど、減速制御時の減速度合が小さくなるように、または、加速制御時の加速度合が大きくなるように、前記目標車速を修正し、
前記目標車速復帰手段は、減速制御時に前記修正された目標車速が前記目標車速制限手段によって制限された後、加速制御時に、前記アクセルペダル操作検出手段によってドライバのアクセルペダル操作が検出されると、前記目標車速を前記修正前の値に設定することを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用走行制御装置において、
車両への障害物の接近度合いを検出する周囲環境認識手段を備え、
前記目標車速算出手段は、前記検出された障害物の接近度合いに基づき前記目標車速および前記許容車速を修正することを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項4】
車両がカーブ路を走行する際、前記カーブ路の曲率に基づいて算出された目標車速となるように車両を加減速制御する車両用走行制御装置において、
前記加減速制御中にドライバのアクセルペダル操作が検出されると、検出されたアクセルペダル操作量に基づいて前記目標車速を修正するとともに、前記目標車速により発生する車両の横加速度よりも大きい横加速度を許容する許容車速よりも高くならないように前記目標車速を制限し、
前記目標車速の制限中に前記許容車速が上昇した場合、アクセルペダルの操作反力を発生させると共に、アクセルペダル操作が検出されなくなるまで、前記加減速制御における車両の加速度を、前記許容車速を実現する加速度よりも小さくなるように制限することを特徴とする車両用走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−95212(P2013−95212A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238109(P2011−238109)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】