説明

車両用運転支援装置、及び、脇見状態検出装置

【課題】運転者の脇見を適切に検出し、脇見による不都合を抑制するための所定の運転支援制御を適切に行なうことが可能な車両用運転支援装置を提供すること。
【解決手段】運転者の脇見状態を検出する脇見状態検出手段と、運転者によるステアリングホイール14の保持状態を検出する保持状態検出手段20と、を備え、脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出され且つ保持状態検出手段20により運転者が両手でステアリングホイール14を保持している状態でないことが検出された場合に、所定の運転支援制御を行なうことを特徴とする、車両用運転支援装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の脇見状態を検出して所定の運転支援制御を行なう車両用運転支援装置、及び、運転者の脇見状態を検出する脇見状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、CCDカメラで運転者の脇見や居眠り運転を検出し、先行車両との車間時間から求められる許容時間を超えて脇見や居眠り運転が検出された場合に警報等を行なうものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、特徴的な許容時間の設定方法により、高速走行時に早期タイミングで警報を行なったり、低速走行時にも割り込み等の可能性を考慮して早期タイミングで警報を行なったりしている。また、車速や加速度等の車両挙動や、渋滞状況や天候等の車両周辺状況を考慮して、上記許容時間を補正している。
【特許文献1】特開2002−2129968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、脇見によって車両が左右にふらつくという不都合は、運転者がどのような状態でステアリングホイールを保持しているかに依存するものと考えられる。しかしながら、上記従来の装置においては、こうした考慮がなされていないため、適切なタイミングで警報を行なうことができない場合が生じる。すなわち、いわゆる片手ハンドルの状態や手放し運転の状態で運転者が脇見をしており警報の緊急性が高いにも拘らず警報のタイミングが遅れたり、逆に両手で確りとステアリングホイールを保持しているにも拘らず過剰な警報を行なって運転者が煩わしさを感じたりする場合が生じる。
【0004】
また、脇見による不都合を抑制する手法は、上記従来の装置の如く警報を行なうものに限られず、その他にも有効な制御手法が考えられるところである。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、運転者の脇見を適切に検出し、脇見による不都合を抑制するための所定の制御を適切に行なうことが可能な車両用運転支援装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、運転者の脇見状態を検出する脇見状態検出手段と、運転者によるステアリングホイールの保持状態を検出する保持状態検出手段と、を備え、脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出され且つ保持状態検出手段により運転者が両手でステアリングホイールを保持している状態でないことが検出された場合に、所定の運転支援制御を行なうことを特徴とする車両用運転支援装置である。
【0007】
この本発明の第1の態様によれば、脇見状態が検出され、且つ運転者が両手でステアリングホイールを保持している状態でない(すなわち、いわゆる片手ハンドルの状態や手放し運転の状態である)ことが検出された場合に、脇見による不都合を抑制するための所定の運転支援制御が行なわれる。ここで、所定の運転支援制御は、例えば単に脇見状態のみが検出された場合に発せられる警報に比して早期タイミングでの警報であってもよいし、その他の制御であってもよい。脇見によって車両が左右にふらつくという不都合は、運転者によるステアリングホイールの保持状態に依存するものと考えられるため、このような制御により、脇見による不都合を抑制するための所定の運転支援制御を適切に行なうことができる。
【0008】
また、本発明の第1の態様は、例えば、脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出された場合に警報動作を行なう警報手段を備え、脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出され且つ保持状態検出手段により運転者が両手でステアリングホイールを保持している状態でないことが検出された場合には、脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出され且つ保持状態検出手段により運転者が両手でステアリングホイールを保持している状態であることが検出された場合に比して、早いタイミングで警告を行なうように警告手段を制御することを特徴とするものである。この場合、脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出され且つ保持状態検出手段により運転者がいずれの手によってもステアリングホイールを保持していない状態であることが検出された場合には、脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出され且つ保持状態検出手段により運転者が片手でステアリングホイールを保持している状態であることが検出された場合に比して、早いタイミングで警告を行なうように警告手段を制御することを特徴とするものとしてもよい。
【0009】
また、本発明の第1の態様において、例えば、自車両が車線を維持して走行するように操舵力の出力を行なう車線維持制御手段を備え、所定の運転支援制御は、車線維持制御手段を作動させる制御である。
【0010】
また、本発明の第1の態様において、好ましくは、運転者の頭部を撮像する撮像手段を備え、脇見状態検出手段は、撮像手段の撮像画像から運転者の顔における上下方向の特徴量を検出し、この特徴量の変化に基づいて運転者の脇見状態を検出する手段である。この場合、更に好ましくは、脇見状態検出手段は、特徴量に関して脇見状態を検出する基準となる基準量を予め学習する手段である。
【0011】
また、本発明の第1の態様は、好ましくは、ステアリング操舵角を検出するステアリング操舵角検出手段を備え、ステアリング操舵角検出手段により検出されたステアリング操舵角が所定範囲外である場合には、所定の運転支援制御を停止することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第2の態様は、運転者の脇見状態を検出する脇見状態検出装置であって、運転者の頭部を撮像する撮像手段と、撮像手段の撮像画像から運転者の顔における上下方向の特徴量を検出する特徴量検出手段と、特徴量検出手段により検出される特徴量に関して脇見状態を検出する基準となる基準量を学習する基準量学習手段と、を備え、特徴量検出手段により検出された特徴量と、基準量学習手段により学習された基準量と、の比較により運転者の上下方向の脇見状態を検出することを特徴とする脇見状態検出装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転者の脇見を適切に検出し、脇見による不都合を抑制するための所定の運転支援制御を適切に行なうことが可能な車両用運転支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0015】
以下、図1〜5を用いて、本発明に係る車両用運転支援装置の一実施例について説明する。図1は、本発明の一実施例に係る車両用運転支援装置1の全体構成の一例を示す図である。車両用運転支援装置1は、主要な構成として、車室内カメラ10と、ステアリングタッチセンサー20と、警報用機器30と、車線維持制御システム40と、運転支援装置用電子制御ユニット(以下、運転支援装置用ECUと称する)60と、を備える。なお、以下の説明における車両内の機器間の通信は、CAN(Controller Area Network)等の適切な通信プロトコルを用いて行なわれる。
【0016】
車室内カメラ10は、図2に示す如く、例えば、運転席前方のコンビネーションメータ12付近に配設されたCCDカメラやCMOSカメラであり、ステアリングホイール14の内側の穴部14Aを通して運転者頭部16を撮像する。この穴部14Aは、ステアリング操舵角が基準角度(又は中立角度;車両が直進するときのステアリング操舵角をいう)にある状態で、運転者から見てステアリングホイール14の内側の略上半分を占めるものである。そして、車室内カメラ10は、ステアリング操舵角が基準角度のときに撮像画像における穴部14Aに運転者頭部16が収まるように、画角やピント、配設位置等が設定されている。なお、車室内カメラ10の撮像画像は、運転支援装置用ECU60に送信される。
【0017】
ステアリングタッチセンサー20は、例えば、ステアリングホイール14の複数個所において温度変化や振動(心拍による)、圧力変化、電圧変化等を検出することにより、ステアリングホイール14が何箇所で運転者の手に触れられているか(すなわち、保持されているか)を検出するためのセンサーである。本センサーにより、ステアリングホイール14が運転者の手に全く触れられていないことが検出された場合は、いわゆる手放し運転の状態であると判断でき、ステアリングホイール14が1箇所で運転者の手に触れられていることが検出された場合は、いわゆる片手ハンドルの状態であると判断でき、ステアリングホイール14が2箇所で運転者の手に触れられていることが検出された場合は、運転者が両手でステアリングホイール14を保持している状態であると判断できる。ステアリングタッチセンサー20の出力データは、運転支援装置用ECU60に送信される。
【0018】
警報用機器30は、例えば、車両のナビゲーション装置が備える経路案内用のスピーカーが共用されて、音声により警報を発する。また、音声により警報を発するものに限らず、ヘッドアップディスプレイ等の視認容易な表示装置を用いて発光させることにより警報を行なってもよいし、ドライビングシートやステアリングホイール14にバイブレータを取り付けて振動により警報を行なってもよい。また、後述するブザー48が共用されてもよい。警報用機器30は、運転支援装置用ECU60の指示信号に従って上記の如き警報動作を行なう。
【0019】
車線維持制御システム40は、自車両が走行車線を維持して走行するための運転支援制御を行なう制御システムである。車線維持制御システム40は、図3に示す如く、車線認識用カメラ42と、車線維持制御スイッチ44と、車線維持制御用電子制御ユニット(以下、車線維持制御用ECUと称する)46と、ブザー48と、ステアリング装置50と、により実現される。
【0020】
車線認識用カメラ42は、例えば、ウインドシールド中央上部に配設されたCCDカメラやCMOSカメラであり、車両前方の斜め下方に向いた光軸を有し、車両前方の道路を撮像する。車線認識用カメラ42の撮像画像は、車線維持制御用ECU46に送信される。車線維持制御スイッチ44は、例えば、インストルメントパネルのステアリングホイール14脇に配設され、車線維持制御システム40のオン/オフを切替可能なスイッチである。
【0021】
車線維持制御用ECU46は、例えば、CPUを中心としてROMやRAM等が図示しないバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、通信ポートやタイマー、カウンター等を備える。車線維持制御用ECU46は、車線維持制御スイッチ44がオンの状態である場合に、車線逸脱警報制御や車線維持支援制御を実行する。なお、これらの両制御の切替等に関しては、本発明の中核をなさないので説明を省略する。
【0022】
上記の制御を行なう上で必要となるのが、走行車線と自車両との位置関係である。当該位置関係を得るため、車線維持制御用ECU46は、まず、車線認識用カメラ42の撮像画像において道路区画線の認識を行なう。この認識は、例えば、車線認識用カメラ42の撮像画像に対して2値化処理や特徴点抽出処理を行うことにより、道路上の道路区画線に該当すると考えられる画素(道路区画線候補点)を選出し、選出した道路区画線候補点のうち直線的に並んだものを道路区画線であると認識する。なお、この他にも、種々の手法により道路区画線を認識することが可能であり、路肩や中央分離帯をパターンマッチング等の手法により検出してもよい。そして、認識された道路区画線が画像に占める位置に基づいて、走行車線中央部からの自車両中央部(車両幅方向に関する中心線上の任意の位置)の変位、及び、走行車線の延在方向を基準とした自車両の走行方向の角度を導出する。
【0023】
車線逸脱警報制御は、上記の如く得られた位置関係に基づいて、所定時間後(例えば0コンマ数[sec]〜数[sec]等)に走行車線から逸脱すると予想された場合に、ブザー48による警報を行なうと共に、ステアリング装置50に指示して小さい補助操舵力を短時間出力させることでドライバーの注意を喚起する制御である。また、車線維持支援機能は、ステアリング装置50に指示して小さい補助操舵力を連続的に出力させることで、走行車線中央部付近を走行するようにドライバーのステアリング操作を支援する制御である。これらの制御により、自車両の走行車線からの逸脱を抑制することができる。
【0024】
ステアリング装置50は、例えば、ステアリング操舵角センサー52と、トルクセンサー54と、アシストモータ56と、コントローラー58と、を備える電動パワーステアリング装置である。
【0025】
ステアリング操舵角センサー52は、例えば、ステアリングコラム内部に配設され、ステアリング操舵角信号をコントローラー58に送信する。なお、当該信号は、運転支援装置用ECU60にも送信される。トルクセンサー54は、例えば、ステアリングコラム内部に配設され、入力軸と出力軸との間に取り付けられたトーションバーの捩じれを検出することにより、ステアリングトルク応じた信号をコントローラー58に送信する。アシストモータ56は、例えば、コラムハウジング部に配設された直流モータであり、車両の操舵に必要なトルクを出力して運転者のステアリング操作をアシストする。アシストモータ56が出力するトルクは、ウォームギヤ及びホイールギヤによって偏向されると共に減速されてコラムシャフトに伝達され、最終的に車輪の向きを変える。
【0026】
コントローラー58は、車線逸脱警報制御や車線維持支援制御が行なわれない通常時には、トルクセンサー54からのステアリングトルク信号やその他の車両状態信号(車速やヨーレート等)に基づいて、車両の操舵に必要な操舵力を出力するように、アシストモータ56の駆動回路に制御信号を出力する。また、車線逸脱警報制御や車線維持支援制御が行なわれている時には、上記通常時の操舵力出力に加えて(又は、代えて)、車線維持制御用ECU46からの指示信号に基づいた補助操舵力を出力するように、アシストモータ56を制御する。
【0027】
運転支援装置用ECU60は、例えば、車線維持制御用ECU46と同様のハードウエア構成のコンピューターユニットである。運転支援装置用ECU60は、車室内カメラ10の撮像画像を解析することにより、運転者の脇見状態を判定し、当該判定に基づいて所定の運転支援制御を行なう。この脇見状態は、左右方向の顔向きや視線の向き、及び上下方向の顔向きに基づいて判定される。すなわち、(1)運転者の顔向き又は視線の向きが、正面を向いている状態を基準として左右に所定角度以上傾いたと推定される状態、(2)運転者の顔向きが、正面を向いている状態を基準として上下に所定角度((1)の所定角度と異なってよい)以上傾いたと推定される状態、のいずれかの状態が所定時間以上継続した場合に、運転者が脇見状態であると判定する。なお、左右方向の脇見状態を検出する手法については、既に種々の手法が知られているため説明を省略する。また、正面を向いている状態とは、厳密に一点だけを指すものではなく、運転者が略正面を向いている状態や有効視野内に正面が含まれる状態を含む所定範囲の状態を指してよい。
【0028】
上下方向の脇見は、例えば、運転者がメーター類を注視している場合や、サンバイザーに物を挟んだり取り出したりする場合に発生する。そして、運転者の顔向きが上下方向に所定角度以上傾いたことは、以下の手法により推定することができる。まず、図4に示す如く、車室内カメラ10の撮像画像において運転者の顔から上下方向の特徴量A、B、Cを検出する。当該検出には、2値化処理や特徴点抽出処理、パターンマッチング処理等が用いられる。特徴量Aは眉上から目下までの距離(その単位は画素数であってもよいし、画像上の実際の距離であってもよい)として検出され、特徴量Bは目下から鼻下までの距離として検出され、特徴量Cは鼻下から口裂までの距離として検出される。そして、各特徴量に対応する基準量を予め学習する。具体的には、例えば、所定時間内に複数回検出された各特徴量の平均(特異値を除くなどの処理があってもよい)等を用いることができる。この学習は、例えば車両システムが起動されてから所定時間等、任意の期間で行なわれてよい。また、前回の運転時における基準量を用いることもできる。この場合、運転者が同一であることの確認が得られると好ましい。
【0029】
そして、運転者の顔向きが上下に傾くのに応じて各特徴量が小さく変化することを利用して、各特徴量が上記学習された基準量に対して所定の割合以下となった状態が所定時間以上継続した場合に、運転者が脇見状態であると判定する。例えば、特徴量Aの基準量をA1、特徴量Bの基準量をB1、特徴量Cの基準量をC1、として、A≦A1×L、且つ、B≦B1×M、且つ、C≦C1×Nである状態が所定時間継続した場合に、運転者が脇見状態であると判定する。ここで、L、M、Nはそれぞれ実験等により定められる適合値である。
【0030】
このように、本実施例の車両用運転支援装置1では、左右方向のみならず上下方向の脇見を検出するから、運転者の脇見をより適切に検出することができる。
【0031】
以下、車両用運転支援装置1が脇見状態を検出して所定の運転支援制御を行なう際の動作について説明する。図5は、運転支援装置用ECU60が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【0032】
まず、運転支援装置用ECU60は、ステアリング操舵角センサー52からステアリング操舵角信号を入力し、ステアリング操舵角θが基準角度から左右に所定角度θr以内に収まっているか否かを判定する(S100)。そして、上記所定角度θr以内に収まっていない場合は、何も処理を行なわず、本フローの1ルーチンを終了する。本判定を行なうのは、図2において説明した如く、車室内カメラ10がステアリングホイール14の内側の穴部14Aを通して運転者頭部16を撮像する都合上、ステアリング操舵角θが基準角度からいずれかの方向に上記所定角度θrを超えて操作されると、ステアリングホイール14のスポーク部18等に妨げられて運転者頭部16を十分に撮像することができないことに基づく。従って、過剰な警報動作等により運転者が煩わしさを感じるのを防止するため、脇見状態についての判定に信頼性が置けない状態では、警報動作等を行なわないこととしたものである。
【0033】
ステアリング操舵角θが基準角度から左右に所定角度θr以内に収まっている場合は、ステアリングタッチセンサー20の検出データを参照し、両手でステアリングホイール14が保持されている状態であるか否かを判定する(S110)。
【0034】
S110において両手でステアリングホイール14が保持されている状態であると判定された場合は、前述した如く脇見状態であるか否かの判定を行なう(S120)。すなわち、運転者の顔向き又は視線の向きが正面を向いている状態を基準として左右に所定角度以上傾いたと推定される状態、又は、運転者の顔向きが正面を向いている状態を基準として上下に所定角度以上傾いたと推定される状態、のいずれかが所定時間T1以上継続した場合に、運転者が脇見状態であると判定する。そして、脇見状態であると判定された場合には、警報用機器30により警報動作を行なって(S130)、本フローの1ルーチンを終了する。脇見状態でないと判定された場合は、何も処理を行なわず、本フローの1ルーチンを終了する。
【0035】
一方、S110において両手でステアリングホイール14が保持されている状態でない(すなわち、片手ハンドルの状態又は手放し運転の状態である)と判定された場合も、脇見状態であるか否かの判定を行なう(S140)。すなわち、運転者の顔向き又は視線の向きが正面を向いている状態を基準として左右に所定角度以上傾いたと推定される状態、又は、運転者の顔向きが正面を向いている状態を基準として上下に所定角度以上傾いたと推定される状態、のいずれかが所定時間T2以上継続した場合に、運転者が脇見状態であると判定する。そして、脇見状態であると判定された場合には、警報用機器30により警報動作を行なうと共に、車線維持制御システム40が作動していない場合(車線維持制御スイッチ44がオフの状態の場合)はこれを作動させ(S150)、本フローの1ルーチンを終了する。ここで、所定時間T2は、S120において用いられる所定時間T1に比して短い時間である。脇見状態でないと判定された場合は、何も処理を行なわず、本フローの1ルーチンを終了する。
【0036】
このように、運転者が片手ハンドルの状態や手放し運転の状態であると判定された場合には、脇見状態に対してより早いタイミングで警報動作が行なわれる。また、車線維持制御システム40が作動して、脇見による自車両の走行車線からの逸脱を抑制する。すなわち、運転者が片手ハンドルの状態や手放し運転の状態であることにより警報の緊急性が高いと考えられる場合には、より積極的に脇見による不都合を抑制するための制御が行なわれるのである。この結果、脇見による不都合を抑制するための所定の運転支援制御を適切に行なうことができる。
【0037】
以上、本発明を実施するための最良の形態について一実施例を用いて説明したが、本発明はこうした一実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した一実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0038】
例えば、図5のフローチャートにおけるS150の所定の運転支援制御の例として、早期タイミングでの警報動作及び車線維持制御システム40の作動を例示したが、これらのうちいずれか一方のみを行なうものとしてもよい。また、この他にも、例えば、ブレーキ装置に指示して制動力を出力する制御等が行なわれてもよい。
【0039】
また、図6に示す如く、S110において両手でステアリングホイール14が保持されている状態でないと判定された場合に、手放し運転の状態であるか片手ハンドルの状態であるかを判定し(S135)、手放し運転の状態である場合には、片手ハンドルの状態である場合に比して早いタイミングで警報動作及び車線維持制御システム40の作動を行なう(S160、170)ものとしてもよい。この場合、各所定時間は、T1≧T2≧T3の如くに定められる。こうすれば、片手ハンドルの状態に比して警報の緊急性が高いと考えられる手放し運転の状態においては、更に積極的に脇見による不都合を抑制するための制御が行なわれることとなる。
【0040】
また、車室内カメラ10の撮像態様が、実施例の如く穴部14Aを通して運転者頭部16を撮像するものでなければ、S100の判定は不要となる。例えば、車室の天井部付近に車室内カメラ10が配設された場合がこれに相当する。
【0041】
また、脇見状態の判定において、左右方向及び上下方向の脇見状態を検出するものとしたが、左右方向のみ、又は上下方向のみの脇見状態を検出するものとしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、少なくとも運転者の脇見による不都合を抑制するための制御を行なう装置に利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用運転支援装置1の全体構成の一例を示す図である。
【図2】車室内カメラ10が運転者頭部16を撮像する様子を示す図である。
【図3】車線維持制御システム40の全体構成の一例を示す図である。
【図4】運転者の顔から上下方向の特徴量を検出する様子を示す図である。
【図5】運転支援装置用ECU60が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】運転支援装置用ECU60が実行する特徴的な処理の流れの他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1 車両用運転支援装置
10 車室内カメラ
12 コンビネーションメータ
14 ステアリングホイール
14A 穴部
16 運転者頭部
18 スポーク部
20 ステアリングタッチセンサー
30 警報用機器
40 車線維持制御システム
42 車線認識用カメラ
44 車線維持制御スイッチ
46 車線維持制御用電子制御ユニット
48 ブザー
50 ステアリング装置
52 ステアリング操舵角センサー
54 トルクセンサー
56 アシストモータ
58 コントローラー
60 運転支援装置用電子制御ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の脇見状態を検出する脇見状態検出手段と、
運転者によるステアリングホイールの保持状態を検出する保持状態検出手段と、を備え、
前記脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出され且つ前記保持状態検出手段により運転者が両手で前記ステアリングホイールを保持している状態でないことが検出された場合に、所定の運転支援制御を行なうことを特徴とする、
車両用運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用運転支援装置であって、
前記脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出された場合に警報動作を行なう警報手段を備え、
前記脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出され且つ前記保持状態検出手段により運転者が両手で前記ステアリングホイールを保持している状態でないことが検出された場合には、前記脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出され且つ前記保持状態検出手段により運転者が両手で前記ステアリングホイールを保持している状態であることが検出された場合に比して、早いタイミングで警告を行なうように前記警告手段を制御することを特徴とする、
車両用運転支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用運転支援装置であって、
前記脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出され且つ前記保持状態検出手段により運転者がいずれの手によっても前記ステアリングホイールを保持していない状態であることが検出された場合には、前記脇見状態検出手段により運転者の脇見状態が検出され且つ前記保持状態検出手段により運転者が片手で前記ステアリングホイールを保持している状態であることが検出された場合に比して、早いタイミングで警告を行なうように前記警告手段を制御することを特徴とする、
車両用運転支援装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用運転支援装置であって、
自車両が車線を維持して走行するように操舵力の出力を行なう車線維持制御手段を備え、
前記所定の運転支援制御は、該車線維持制御手段を作動させる制御である、
車両用運転支援装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用運転支援装置であって、
運転者の頭部を撮像する撮像手段を備え、
前記脇見状態検出手段は、該撮像手段の撮像画像から運転者の顔における上下方向の特徴量を検出し、該特徴量の変化に基づいて運転者の脇見状態を検出する手段である、
車両用運転支援装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用運転支援装置であって、
前記脇見状態検出手段は、前記特徴量に関して脇見状態を検出する基準となる基準量を予め学習する手段である、車両用運転支援装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用運転支援装置であって、
ステアリング操舵角を検出するステアリング操舵角検出手段を備え、
前記ステアリング操舵角検出手段により検出されたステアリング操舵角が所定範囲外である場合には、前記所定の運転支援制御を停止することを特徴とする、
車両用運転支援装置。
【請求項8】
運転者の脇見状態を検出する脇見状態検出装置であって、
運転者の頭部を撮像する撮像手段と、
該撮像手段の撮像画像から運転者の顔における上下方向の特徴量を検出する特徴量検出手段と、
該特徴量検出手段により検出される特徴量に関して脇見状態を検出する基準となる基準量を学習する基準量学習手段と、を備え、
前記特徴量検出手段により検出された特徴量と、前記基準量学習手段により学習された基準量と、の比較により運転者の上下方向の脇見状態を検出することを特徴とする、
脇見状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−299048(P2007−299048A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124116(P2006−124116)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】