説明

車両用金属調加飾部品及びその製造方法

【課題】別体感が、意匠面において確実且つ安定的に表現されて、高級感の向上が有利に図られてなる車両用金属調加飾部品とその製造方法とを提供する。
【解決手段】樹脂基材12の表面に固着される金属シート14の意匠面20に、該意匠面20を複数の領域に区分けする溝部28を、プレス成形により形成すると共に、該金属シート14の意匠面20よりも暗色の着色層34を、該溝部28の少なくとも底部の全長に形成して、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用金属調加飾部品とその製造方法とに係り、特に、樹脂基材の表面に金属シートが固着されてなる車両用金属調加飾部品の改良された構造と、そのような改良された構造を有する車両用金属調加飾部品の有利な製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用部品の一種として、樹脂成形品からなる基材(樹脂基材)の表面に金属調の加飾が施されてなる、所謂車両用金属調加飾部品がある。この車両用金属調加飾部品には、大別して、二つのタイプがあり、一つは、樹脂基材の表面に対して、例えば、メタリック塗装による塗膜や金属メッキによるメッキ膜等の金属薄膜を形成することにより、金属調の加飾を施してなるタイプである(例えば、下記特許文献1)。別の一つは、樹脂基材の表面に、金属調加飾として、薄肉の金属シートを固着してなるタイプである。これらの車両用金属調加飾部品は、何れのタイプにしろ、優れた成形性及び軽量性の確保と高級感の向上とが、共に有利に達成され得るのである。
【0003】
ところで、車両用部品においては、一般に、唯一つの部材からなる単調な構造のものよりも、複数の部材が相互に組み付けられてなる構造のものの方が、見る者に対して、より高級な印象を与えることが出来る。
【0004】
そのため、上記の如き車両用金属調加飾部品にあっても、より十分な高級感を得るために、互いに独立した複数の金属調加飾部品を互いに一体的に組み付けてなる構造のものがある。しかしながら、このような複数の金属調加飾部品の一体組付品においては、それに振動が加えられたときに、互いに組み付けられた金属調加飾部品同士の接触等によって、擦り音等の異音が生ずる恐れがあった。
【0005】
また、(ア)1個の樹脂基材の表面を複数の領域に区分けして、それら複数の領域のそれぞれに、互いに異なる複数種類の金属薄膜を各々形成してなる金属調加飾部品や、(イ)意匠面に、それを複数の領域に区分けする極狭幅の溝部がプレス成形により形成された1枚の金属シートを、1個の樹脂基材の表面に固着してなる金属調加飾部品もある。即ち、これら(ア)及び(イ)の金属調加飾部品は、実際には単一の部材(金属調加飾部品)からなるものの、複数の部材の組付品からなるような外観(別体感)を得るための意匠処理が施されているのである。このような金属調加飾部品にあっては、実際に複数の部材が組み付けられてなる金属調加飾部品において生ずる異音の問題が有利に解消され得る。
【0006】
ところが、(ア)の金属調加飾部品では、互いに隣接する金属薄膜間に明確な見切りが存在せず、しかも、それらの金属薄膜間の境界が平面的であるところから、互いに隣接する金属薄膜間の境界がボケてしまう。そのため、互いに異なる金属薄膜の形成部位がそれぞれ別個の部材であるように認識させる別体感を意匠面において表現することが、極めて困難であった。
【0007】
一方、(イ)の金属調加飾部品では、溝部が立体的な見切りとして形成されるため、そのような溝部にて複数に区分けされた各意匠面部分がそれぞれ別個の部材であるように認識させる別体感が得られ易い。しかしながら、溝部が比較的に浅いものであるため、見る角度によっては、溝部の底部が光の反射により目視される場合があり、そうした場合には、別体感が失われてしまう。従って、溝部を有する金属シートの表面によって意匠面が形成された金属調加飾部品にあっても、やはり、意匠面において別体感を安定的に表現することが難しかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平4−30082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、一方の面が意匠面とされた金属シートが樹脂基材の表面に固着されてなる車両用金属調加飾部品において、単一の部材でありながら、複数の部材の組付品として認識させるような別体感が、金属シートの意匠面において確実に且つ安定的に表現され、以て、見る者に、より一層高級な印象を与え得るように改良された構造を提供することにある。また、本発明にあっては、そのような構造を有する車両用金属調加飾部品を有利に製造する方法を提供することをも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記した課題、又は本明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙する各種の態様において、好適に実施され得るものである。また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。そして、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0011】
<1> 一方の面が意匠面とされた金属シートが、樹脂基材の表面に固着されてなる車両用金属調加飾部品であって、前記金属シートの意匠面に、該意匠面を複数の領域に区分けする溝部が、プレス成形により形成されていると共に、該金属シートの意匠面よりも暗色の着色層が、該溝部の少なくとも底部の全長に形成されていることを特徴とする車両用金属調加飾部品。なお、ここで言う「金属シートの意匠面よりも暗色の着色層」とは、金属シートの意匠面よりも明度の低い色を有する、例えばインキ層や塗膜層等を言い、好適には、金属光沢を有しない色を有するものを言う。
【0012】
<2> 前記溝部にて区分けされた前記意匠面の複数の領域に対して、互いに異なる模様又は柄を有する加飾部が、それぞれ形成されている上記態様<1>に記載の車両用金属調加飾部品。
【0013】
<3> 一方の面が意匠面とされた金属シートが、樹脂基材の表面に固着されてなる車両用金属調加飾部品の製造方法であって、(a)前記金属シートの意匠面に対して、該意匠面よりも暗色を呈する線状の着色層を、該意匠面が該線状の着色層にて複数の領域に区分けされるように、形成する工程と、(b)前記意匠面に前記線状の着色層が形成された金属シートの該着色層形成部位を、その全長に亘ってプレス成形により凹ませることによって、該金属シートの該意匠面に、少なくとも底部の全長に該着色層が形成された溝部を形成すると共に、該意匠面を該溝部にて前記複数の領域に区分けする工程と、(c)前記溝部が形成された金属シートを、前記意匠面とは反対側の面において、前記樹脂基材の表面に固着せしめる工程とを含むことを特徴とする車両用金属調加飾部品の製造方法。
【0014】
<4> 一方の面が意匠面とされた樹脂シートが、樹脂基材の表面に固着されてなる車両用金属調加飾部品であって、前記樹脂シートの意匠面に、該意匠面を複数の領域に区分けする溝部が形成されていると共に、該樹脂シートの意匠面よりも暗色の着色層が、該溝部の少なくとも底部の全長に形成されていることを特徴とする車両用金属調加飾部品。
【0015】
<5> 前記溝部にて区分けされた前記意匠面の複数の領域に対して、互いに異なる模様又は柄を有する加飾部が、それぞれ形成されている上記態様<4>に記載の車両用金属調加飾部品。
【発明の効果】
【0016】
すなわち、樹脂基材の表面に金属シートが固着されてなる基本構造を有する、本発明に従う車両用金属調加飾部品においては、金属シートの意匠面に対して、それを複数の領域に区分けする立体的な見切りが、溝部にて形成される。それ故、そのような溝部にて複数に区分けされた各意匠面部分が、それぞれ別個の部材であるように認識させる別体感が、容易に且つ確実に得られる。
【0017】
しかも、本発明に係る車両用金属調加飾部品では、樹脂シートの意匠面よりも暗色の着色層が、溝部の少なくとも底部の全長に形成されている。そのため、溝部の深さが浅くとも、また、意匠面を如何なる角度から見ても、溝部の底部が光の発射により目視されることが可及的に防止乃至は抑制され得る。それ故、溝部の底部が目視されることで、意匠面において表現されるべき別体感が失われてしまうようなことが、効果的に解消され得る。
【0018】
従って、かくの如き本発明に従う車両用金属調加飾部品にあっては、単一の部材でありながら、複数の部材の組付品として認識させるような別体感が、金属シートの意匠面において確実に且つ安定的に表現され得る。そして、その結果として、外観上での高級感の更なる向上が、極めて有効に図られ得ることとなるのである。
【0019】
また、樹脂基材の表面に樹脂シートが固着されてなる基本構造を有する、本発明に従う車両用金属調加飾部品においては、樹脂シートの意匠面に、少なくとも底部の全長に暗色の着色層が設けられた溝部が、かかる意匠面を複数の領域に区分けするように形成されている。そのため、このような車両用金属調加飾部品にあっても、上記せる樹脂基材の表面に金属シートが固着されてなる基本構造を有する、本発明に従う車両用金属調加飾部品において奏される作用・効果と実質的に同一の作用・効果が有効に享受され得るのである。
【0020】
そして、本発明に従う車両用金属調加飾部品の製造方法においては、例えば、金属シートのプレス成形により金属シートの意匠面に溝部を形成した後に、溝部の少なくとも底部の全長に着色層を形成する場合に比して、かかる着色層が、溝部の少なくとも底部の全長に、極めて容易に形成され得る。
【0021】
従って、そのような本発明に従う車両用金属調加飾部品の製造方法によれば、前記せる如き優れた特徴を有する車両用金属調加飾部品が、極めて有利に且つ容易に製造され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に従う構造を有する車両用金属調加飾部品の一実施形態を示す斜視説明図である。
【図2】図1のII−II断面における部分拡大断面説明図である。
【図3】図1に示された車両用金属調加飾部品の裏面側部分を構成する樹脂基材を示す斜視説明図である。
【図4】図3のIV−IV断面における部分拡大断面説明図である。
【図5】図1に示された車両用金属調加飾部品の表面側部分を構成する金属シートを示す斜視説明図である。
【図6】図5のVI−VI断面における部分拡大断面説明図である。
【図7】図1に示された車両用金属調加飾部品を製造する際に実施される一工程例を示す説明図であって、アルミニウム平板の一方の面上に所定の印刷を施して、意匠柄を形成した状態を示している。
【図8】図7に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、意匠柄を形成したアルミニウム平板に対する打ち抜き加工を行うことにより、図5に示された金属シートを得るためのブランクを形成した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0024】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う構造を有する車両用金属調加飾部品の一実施形態として、自動車のインストルメントパネルの一部を構成する、自動車用内装部品たるカバーパネルが、その斜視形態と断面を部分的に拡大した形態において、それぞれ示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態のカバーパネル10は、全体として、長手矩形状乃至は台形状を呈する平板材からなっている。そして、その裏面側部分を構成する樹脂基材12と、表面側部分を構成する金属シート14とが、相互に固着されて、形成されている。
【0025】
より具体的には、樹脂基材12は、図3及び図4に示されるように、全体として、カバーパネル10に対応した形状を呈する、所定厚さの平板からなっている。この樹脂基材12の略中央部には、矩形の窓部16が形成されている。また、かかる窓部16の周囲には、矩形環状の嵌合溝18が、窓部16の周方向に延びるように形成されている。この嵌合溝18は、V字状の縦断面形状を有している。なお、かかる樹脂基材12を形成する樹脂材料は、特に限定されるものではなく、例えば、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、PC、PMMA、PET、PBT等、樹脂製の自動車用内装部品の形成材料として一般に用いられるものが、それぞれ単独で、或いは2種類以上が適宜に組み合わされて、用いられる。
【0026】
一方、金属シート14は、図5及び図6に示されるように、全体として、カバーパネル10に対応した形状を有する、薄肉平板状のプレス成形品からなり、厚さ方向一方の面(図5中の上面)が意匠面20とされている。この金属シート14の材質は、特に限定されるものではないものの、ここでは、成形性と軽量性に優れたアルミニウム材が用いられている。
【0027】
そして、そのような金属シート14の長さ方向の両側端部には、それら両側端部が、全幅に亘って、意匠面20側とは反対側に直角に折り曲げられてなる折曲部22,22が、それぞれ形成されている。また、金属シート14の略中央部には、樹脂基材12の窓部16に対応した矩形状を呈する透孔24が、形成されている。更に、この透孔24の形成部位には、透孔24の開口周縁部を意匠面20側とは反対側に屈曲させてなる矩形状の枠部26が設けられ、この枠部26の内面にて、透孔24の内周面が構成されている。
【0028】
また、金属シート14の中央部における透孔24の周囲には、矩形環状を呈する、溝部としての見切り部形成溝28が、窓部16の周方向に延びるように形成されている。この見切り部形成溝28は、V字状の縦断面形状を有している。
【0029】
このように、金属シート14においては、意匠面20に見切り部形成溝28が形成されていることにより、意匠面20が、見切り部形成溝28の内側に位置する領域からなる中央側意匠面部分20aと、見切り部形成溝28の外側に位置する領域(二つの折曲部22,22の各表面を含む)からなる外周側意匠面部分20bの二つの領域に区分けされている。なお、見切り部形成溝28の幅と深さは、特に限定されるものではなく、例えば、その幅が、0.5〜1.0mm程度の十分に狭い幅とされ、また、その深さが、0.5〜1.0mm程度とされる。
【0030】
そして、見切り部形成溝28にて区分けされた意匠面20の二つの領域のうちの中央側意匠面部分20a、つまり、見切り部形成溝28の内側に位置する透孔24の周辺部分と、透孔24の内周面を形成する枠部26の表面とには、透明なインキ層からなる第一印刷層30が形成されている。また、外周側意匠面部分20bには、透明なインキ層からなる第二印刷層32が、形成されている。そして、第一印刷層30には、小さな凹部が多数設けられて、それら多数の凹部により、シボ模様が形成されている。また、第二印刷層32には、極めて狭い幅の直線形凸条が多数設けられており、それら多数の直線形凸条によって、ヘアライン模様が形成されている。なお、図6には、それら第一及び第二印刷層30,32に形成される多数の凹部や多数の直線形凸条が省略されていることが、理解されるべきである。
【0031】
さらに、見切り部形成溝28の底部と両側側部のそれぞれの内面には、着色層34が形成されている。この着色層34の色は、意匠面20の色、つまりアルミニウムの地色の銀色を呈し、且つ金属光沢を有する色とは異なって、そのような意匠面20の色よりも明度の低い暗色で、且つ金属光沢を有しない、例えば黒色とされている。
【0032】
かくして、金属シート14においては、見切り部形成溝28の内側に位置する中央側意匠面部分20aと、見切り部形成溝28の外側に位置する外周側意匠面部分20bとに対して、それらの部分にそれぞれ形成された第一印刷層30と第二印刷層32とにて、シボ模様とヘアライン模様の互いに異なる模様が付与されている。このことから明らかなように、本実施形態では、加飾部が、意匠面20における第一印刷層30と第二印刷層32のそれぞれの形成部位にて構成されている。
【0033】
そして、それらシボ模様が付与された中央側意匠面部分20a(第一印刷層30形成領域)とヘアライン模様が付与された外周側意匠面部分20b(第二印刷層32形成領域)とを明確に区別する立体的な見切り部(見切り線)36が、見切り部形成溝28にて、形成されている。また、この見切り部36を形成する見切り部形成溝28の内面には、黒色の着色層34が形成されている。それ故、意匠面20を見る角度が変わったときに、見切り部形成溝28の底部に光が反射する等して、かかる底部が外部から容易に視認されることにより、見切り部36としての機能が損なわれることが、可及的に回避され得るようになっている。
【0034】
これによって、金属シート14にあっては、1枚のものでありながら、見切り部形成溝28よりも内側のシボ模様が付与された中央側意匠面部分20aと、見切り部形成溝28よりも外側のヘアライン模様が付与された外周側意匠面部分20bとが、それぞれ別個の部材からなり、そして、それらの部材が互いに組み付けられてなる組付品であるかのような認識を、見る者に与える別体感が、意匠面20において表現され得るようになっているのである。
【0035】
そして、図1及び図2に示されるように、かくの如き構造を有する金属シート14が、意匠面20とは反対側の面において、樹脂基材12の表面(図1及び図2における樹脂基材12の上面)に重ね合わされている。また、かかる状態下で、金属シート14の透孔24と樹脂基材12の窓部16とが互いに対応位置して、金属シート14の枠部26が、その外周面において、樹脂基材12の窓部16の内周面に重ね合わされている。更に、金属シート14の意匠面20に設けられた見切り部形成溝28に対応して、金属シート14の意匠面20とは反対側の裏面に設けられた凸条35が、その全長に亘って、樹脂基材12の嵌合溝18内に嵌め込まれている。また、金属シート14の長さ方向両端部に設けられた折曲部22,22が、樹脂基材12の長さ方向の両側端面に対して引っ掛けられるようにして、重ね合わされている。
【0036】
そして、そのようにして重ね合わされた金属シート14と樹脂基材12とが、それらの間に介在する接着剤層38にて、相互に接着されている。これにより表面側部分が金属シート14からなる一方、裏面側部分が樹脂基材12からなるカバーパネル10が、形成されているのである。なお、接着剤層36を形成する接着剤の種類は、何等限定されるものではなく、金属と樹脂とを強固に接着可能な公知の接着剤が、適宜に選択されて、使用される。
【0037】
このように、カバーパネル10は、1個の樹脂基材12に対して、1個の金属シート14が接着された一体接合品にて構成されており、金属シート14の意匠面20が、そのまま、カバーパネル10の意匠面20とされている。それ故、かかるカバーパネル10にあっては、金属シート14の上記せる如き外観特性がそのまま反映されて、単一の部材でありながら、透孔24の周辺の、シボ模様が付与された中央側意匠面部分20aを有する部位と、それとは見切り部36(見切り部形成溝28)にて区分けされたヘアライン模様が付与される外周側意匠面部分20bを有する部位とが、それぞれ別個の部材からなるような認識を、見る者に与える別体感が、意匠面20において表現され得るようになっているのである。
【0038】
そして、ここでは、特に、見切り部形成溝28の底部内面と両側側部内面とに、黒色の着色層34が形成されて、意匠面20を見る角度を種々変えても、見切り部形成溝28の底部が、外部から容易には目視されないようになっている。これにより、意匠面20において、シボ模様が付与された中央側意匠面部分20aとヘアライン模様が付与された外周側意匠面部分20bとが互いに別体であるように認識させる別体感が、より効果的に表現され得ているのである。
【0039】
ところで、このようなカバーパネル10を製造する際には、例えば、以下の如き手順に従って、その作業が進められる。
【0040】
すなわち、先ず、図7に示されるように、原材料として、薄肉のアルミニウム平板40を用い、このアルミニウム平板40の表面の略中央部に対して、黒色のインキを用いたスクリーン印刷を行って、狭幅の線状の着色層34を形成する。この着色層34は、矩形の線を描くように形成される。これによって、アルミニウム平板40の表面が、着色層34よりも内側の部分と、それよりも外側の部分の二つの領域に区分けされる。なお、後述する工程により、アルミニウム平板40から金属シート14が形成されるが、かかる金属シート14の意匠面20が、アルミニウム平板40の着色層34の形成面たる表面にて形成されることとなる。
【0041】
次に、アルミニウム平板40の表面の着色層34よりも外側の部分に対して、透明なインキを用いたスクリーン印刷を行って、第二印刷層32を、全体形状が着色層34を取り囲む略矩形状又は台形状を呈するように、形成する。この第二印刷層32は、極狭幅の直線形凸条を多数有し、それら多数の直線形凸条にて、ヘアライン模様が描かれている。
【0042】
その後、アルミニウム平板40の表面の着色層34よりも内側の部分に対して、透明なインキを用いたスクリーン印刷を行って、第一印刷層30を、全体形状が矩形の枠体形状となるように、形成する。この第一印刷層30は、小さな凹部を多数有し、それら多数の凹部にて、シボ模様が描かれている。なお、着色層34と第二印刷層32と第一印刷層30の形成順序は、上記した順序に、何等限定されるものではなく、各層34,32,30が、任意の順序で行われ得る。また、可能であれば、それら各層34,32,30のうちの少なくとも2層を同時に形成しても良い。
【0043】
その後、プレス装置(図示せず)を用いて、アルミニウム平板40を、第二印刷層32の形成部位の外周縁部に沿って打ち抜く打抜き加工を行う。これによって、図8に示されるように、表面の略中央部に、第一印刷層30と着色層34とが印刷形成されると共に、かかる略中央部の周りの外周部の全面に、第二印刷層32が形成されたブランク42を得る。また、そのような打ち抜き加工によるブランク42の形成と同時に、或いはその後に、第一印刷層30の内側の、印刷層が何等形成されていない部分を打ち抜く打ち抜き加工を行って、ブランク42の略中央部に、周りが第一印刷層30にて囲まれた矩形の通孔44を形成する。
【0044】
次に、プレス装置(図示せず)を用いて、ブランク42の長さ方向両側端部を、意匠面20とは反対側に直角に屈曲させる曲げ加工を行って、それらの両側端部に、折曲部22,22を形成する(図5参照)。また、それと同時に、或いはその後に、第一印刷層30の形成部位の内周側部分を、全周に亘って、意匠面20とは反対側に直角に屈曲させる曲げ加工を行って、ブランク42の略中央部に、枠部26を形成すると共に、この枠部26を内周面とする透孔24を形成する。
【0045】
さらに、折曲部22や枠部26の形成と同時に、或いはその前後において、不図示のプレス装置を用いたプレス成形により、ブランク42の矩形を描く線状の着色層34の形成部位を、その全周に亘って、V字状に凹ませる曲げ加工を行う。これによって、ブランク42の意匠面20に対して、着色層34の形成部位に沿って延びる矩形環状を呈し、且つ断面がV字形状とされた見切り部形成溝28を形成する。また、このような見切り部形成溝28の形成に際しては、線状の着色層34の幅方向中央が、最深部となるように、着色層34形成部位を凹ませることにより、見切り部形成溝28の少なくとも底部の内面の全長に、着色層34が形成されるように為す。
【0046】
かくして、アルミニウム平板40のプレス成形品により、図5及び図6に示された構造を有する金属シート14を得る。即ち、意匠面20が見切り部形成溝28にて、その内側部分たる中央側意匠面部分20aと、その外側部分たる外周側意匠面部分20bの二つの領域に区分けされると共に、それら各意匠面部分20a,20bに、シボ模様とヘアライン模様とがそれぞれ付与され、そして、見切り部形成溝28の底部の内面と両側側部の内面とに、着色層34が形成された金属シート14を得るのである。
【0047】
また、そのような金属シート14を得る一方で、例えば、射出成形を実施する等して、図3及び図4に示される如き構造を有する樹脂基材12を形成する。
【0048】
その後、金属シート14と樹脂基材12とを用い、前述のように、樹脂基材12の表面に、金属シート14を接着剤層38を介して重ね合わせて、接着する。以て、目的とするカバーパネル10を得るのである。
【0049】
このように、本実施形態のカバーパネル10においては、1個の樹脂基材12に対して、1個の金属シート14が接着された一体接合品であるにも拘わらず、見切り部形成溝28の内側の中央側意匠面部分20aと、その外側の外周側意匠面部分20bとに、シボ模様とヘアライン模様の互いに異なる模様がそれぞれ付与されていることに加えて、見切り部形成溝28の底部内面や両側側部内面に、黒色の着色層34が、見切り部形成溝28の全長に亘って形成されている。そして、それにより、意匠面20において、シボ模様が付与された中央側意匠面部分20aとヘアライン模様が付与された外周側意匠面部分20bとが互いに別体であるように認識させる別体感が、より効果的に表現され得る。
【0050】
従って、かくの如き本実施形態のカバーパネル10にあっては、単一の部材でありながら、複数の部材の組付品において得られる高級感が、極めて有効に且つ安定的に得られることとなるのである。
【0051】
また、本実施形態のカバーパネル10では、見切り部形成溝28がV字状の断面形状を有している。そのため、狭幅の見切り部形成溝28の底部が更に狭幅とされる。それ故、そのような見切り部形成溝28の底部が、例えば、断面矩形状の溝部の底部よりも外部からの目視が困難と為され得る。その結果として、見切り部形成溝28にて区分けされた、中央側意匠面部分20aと外周側意匠面部分20bとの別体感が、より一層効果的に表現され、以て、更なる高級感の向上が、有利に図られ得るのである。
【0052】
そして、かかるカバーパネル10においては、その製造に際して、アルミニウム平板40の意匠面20に着色層34を形成した後、かかるアルミニウム平板40から打ち抜かれたブランク42の着色層34形成部位をプレス曲げ加工することにより、少なくとも底部の内面に着色層34を有する見切り部形成溝28が形成されるようになっている。それ故、例えば、ブランク42に対するプレス曲げ加工により見切り部形成溝28を形成した後、この見切り部形成溝28の底部に着色層34を形成する場合に比して、着色層34の形成作業が極めて容易に実施され得る。従って、本実施形態によれば、前述の如き優れた特徴を発揮するカバーパネル10が、優れた作業性をもって、より容易に形成され得るのである。
【0053】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0054】
例えば、着色層34は、黒色に、何等限定されるものではなく、金属シート14の意匠面20よりも暗色、つまり明度の低い色であれば、意匠面20と同系色か異系色かを問わず、如何なる色でも良い。そして、その中でも、光反射性の低い艶消しの色等が、好適に採用され得る。
【0055】
また、着色層34は、例示されたスクリーン印刷以外の印刷手法によって形成される印刷層(インキ層)の他、各種の塗装手法により形成される塗膜層にて構成することも出来る。
【0056】
金属シート14の意匠面20に形成される溝部としての見切り部形成溝28の断面形状は、必ずしもV字状である必要はなく、かかる見切り部形成溝28の断面形状としては、矩形状やU字状等の各種の形状が採用可能である。
【0057】
また、溝部たる見切り部形成溝28の全体形状も、例示された矩形形状に決して限定されるものではなく、金属シート14の意匠面20を複数の領域に区分けする形状であれば、矩形状や円形状等の閉鎖形状の他、直線形状や曲線形状等も、適宜に採用され得る。
【0058】
さらに、前記実施形態では、樹脂基材12の表面に金属シート14が接着されて、車両用金属調加飾部品としてのカバーパネル10が形成されていたが、樹脂基材の表面に樹脂シートを接着して、車両用金属調加飾部品を構成しても良い。勿論、この場合にあっても、樹脂シートの意匠面に、その意匠面を複数の領域に区分けする溝部が形成されると共に、かかる樹脂シートの意匠面よりも暗色の着色層が、溝部の少なくとも底部の全長に形成されることとなる。
【0059】
また、金属シートや樹脂シートの意匠面に形成される模様や柄は、例示のシボ模様とヘアライン模様に限らず、その他に、幾何学模様や無定形状の模様、各種の文字や記号等からなる模様や柄等、公知の各種の模様や柄が採用され得る。なお、幾何学模様には、例えば、円や楕円、長円、多角形、線分(直線や屈曲線、湾曲線、波線等を含む)のうちの1種類のものの同一の大きさのものや互いに異なる大きさのものにて形成される模様や、それらのうちの2種類以上が組み合わされて形成される模様等が含まれる。また、円や楕円、長円、多角形を含んで形成される幾何学模様には、それらの形状の外形線のみが、凹溝や突条にて構成されるものや、外形線の内側の全体乃至は一部が凹陥乃至は突出せしめられてなるものも含まれる。なお、このような金属シートや樹脂シートの意匠面に形成される模様や柄は、必須のものではない。
【0060】
さらに、金属シートや樹脂シートの意匠面が溝部にて、三つ以上の領域に区分けされる場合には、それら三つ以上の領域のうちの少なくとも一つの領域に、模様や柄を形成しても良い。その際には、それらの領域に形成される模様や柄を互いに異なる種類のものとしても良い。また、それら三つ以上の領域のうちの少なくとも一つ以上の領域に、同じ模様や柄を形成しても良い。
【0061】
更にまた、金属シートや樹脂シートの意匠面に模様や柄を形成する場合には、例示の如く、意匠面に、模様や柄を有する印刷層を形成する以外に、意匠面に対して、直接に凹部や凸部を設けて、それら凹凸部により模様や柄を形成しても、何等差し支えない。
【0062】
また、金属シートや樹脂シートを樹脂基材に固着する方法としては、接着剤を用いる他、融着等による方法も採用可能である。
【0063】
加えて、本発明は、自動車用内装部品たるカバーパネルとその製造方法の他、カバーパネル以外の車両用内装部品や車両用外装部品を構成する各種の車両用金属調加飾部品とその製造方法に対しても、有利に適用可能である。
【0064】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0065】
10 カバーパネル 12 樹脂基材
14 金属シート 20 意匠面
28 見切り部形成溝 30 第一印刷層
32 第二印刷層 34 着色層
36 見切り部 40 アルミニウム平板
42 ブランク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が意匠面とされた金属シートが、樹脂基材の表面に固着されてなる車両用金属調加飾部品であって、
前記金属シートの意匠面に、該意匠面を複数の領域に区分けする溝部が、プレス成形により形成されていると共に、該金属シートの意匠面よりも暗色の着色層が、該溝部の少なくとも底部の全長に形成されていることを特徴とする車両用金属調加飾部品。
【請求項2】
一方の面が意匠面とされた金属シートが、樹脂基材の表面に固着されてなる車両用金属調加飾部品の製造方法であって、
前記金属シートの意匠面に対して、該意匠面よりも暗色を呈する線状の着色層を、該意匠面が該線状の着色層にて複数の領域に区分けされるように、形成する工程と、
前記意匠面に前記線状の着色層が形成された金属シートの該着色層形成部位を、その全長に亘ってプレス成形により凹ませることによって、該金属シートの該意匠面に、少なくとも底部の全長に該着色層が形成された溝部を形成すると共に、該意匠面を該溝部にて前記複数の領域に区分けする工程と、
前記溝部が形成された金属シートを、前記意匠面とは反対側の面において、前記樹脂基材の表面に固着せしめる工程と、
を含むことを特徴とする車両用金属調加飾部品の製造方法。
【請求項3】
一方の面が意匠面とされた樹脂シートが、樹脂基材の表面に固着されてなる車両用金属調加飾部品であって、
前記樹脂シートの意匠面に、該意匠面を複数の領域に区分けする溝部が形成されていると共に、該樹脂シートの意匠面よりも暗色の着色層が、該溝部の少なくとも底部の全長に形成されていることを特徴とする車両用金属調加飾部品。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−73231(P2011−73231A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226097(P2009−226097)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】