説明

車両用開閉体の駆動装置

【課題】クローザ機構を介して開閉体をフルラッチ位置から開いていくとき同開閉体のフルラッチ解除が妨げられた場合であっても、クローザ機構を安定して作動することができる車両用開閉体の駆動装置を得ること。
【解決手段】本発明の車両用開閉体の駆動装置は、車両ボディの開口部を開閉する開閉体;モータ駆動により開閉体をハーフラッチ位置とフルラッチ位置の間で移動させるクローザ機構;開閉体のフルラッチ解除を検出するフルラッチ解除検出手段;モータの回転に応じて発生するパルスを検出するパルス検出手段;及びクローザ機構を介して開閉体をフルラッチ位置から開く場合において、モータが開閉体開放方向への正回転を開始した時点から所定時間内に、フルラッチ解除検出手段が開閉体のフルラッチ解除を検出せずかつパルス検出手段の検出パルスに異常が発生したとき、モータを逆回転させてクローザ機構を初期位置に戻す駆動制御手段;を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体を電動駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用開閉体を電動駆動する駆動装置として、一般的に、車両ボディの開口部を開閉する開閉体と、この開閉体をモータ駆動によりハーフラッチ位置とフルラッチ位置の間で移動させるクローザ機構とを有するものが知られている。このような駆動装置には、開閉体のフルラッチ解除を検出するフルラッチ解除検出手段と、モータの回転に応じて発生するパルスを検出するパルス検出手段とが設けられており、開閉体をフルラッチ位置から開く場合に何らかの理由(凍結、障害物による開閉体の押さえ込み)でフルラッチ解除が妨げられたことが検出可能である。すなわち、モータが開閉体開放方向への正回転を開始した時点から所定時間内に、フルラッチ解除検出手段が開閉体のフルラッチ解除を検出せずかつパルス検出手段の検出パルスに異常が発生したことは、開閉体のフルラッチ解除が妨げられたことを意味している。
【0003】
従来、開閉体をフルラッチ位置から開いていくとき、開閉体のフルラッチ解除が妨げられたことが検出された時点でクローザ機構の駆動(モータの回転)を停止していた(特許文献1−4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−148044号公報
【特許文献2】特開2009−264052号公報
【特許文献3】特開2003−120104号公報
【特許文献4】特開2002−70392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者によれば、開閉体のフルラッチ解除が妨げられたことが検出された時点でクローザ機構の駆動(モータの回転)を停止すると、クローザ機構は既にその駆動開始位置(初期位置)から動いているため、駆動停止以後のクローザ機構の作動に不具合が生じる虞がある。
【0006】
駆動停止以後のクローザ機構の作動の不具合について、モータの正逆回転に従って回動するセクタギヤと、この回動するセクタギヤに蹴られて、開閉体のフルラッチに対応するクローズ位置から同開閉体のフルラッチ解除に対応するオープン位置へ回動するオープンレバーとを有し、このオープンレバーがクローズ位置からオープン位置へ回動すると開閉体のフルラッチ解除が検出されるタイプのクローザ機構を例示して説明する。
このタイプのクローザ機構は、クローザ機構が駆動停止(モータが回転停止)した後に開閉体を閉めると、セクタギヤは初期回動位置からずれているため、同じギヤ位置から開閉体の開作動を行うことができず、ギヤ位置違いによる作動の不具合が生じ得る。
また、開閉体のフルラッチ解除が妨げられて、回動するセクタギヤがオープンレバーを蹴りきれず(オープンレバーがオープン位置へ回動できず)、セクタギヤとオープンレバーが当接した状態でクローザ機構の駆動(モータの回転)が停止すると、セクタギヤとオープンレバーが抉れた状態となり不安定である。また、セクタギヤとオープンレバーが抉れた状態で振動が加わると、予期せぬタイミングで開閉体がフルラッチ解除されて開放する事態が起こり得る。
【0007】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、クローザ機構を介して開閉体をフルラッチ位置から開いていくとき同開閉体のフルラッチ解除が妨げられた場合であっても、クローザ機構を安定して作動することができる車両用開閉体の駆動装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用開閉体の駆動装置は、車両ボディの開口部を開閉する開閉体;モータ駆動により上記開閉体をハーフラッチ位置とフルラッチ位置の間で移動させるクローザ機構;上記開閉体のフルラッチ解除を検出するフルラッチ解除検出手段;上記モータの回転に応じて発生するパルスを検出するパルス検出手段;及び上記クローザ機構を介して上記開閉体をフルラッチ位置から開く場合において、上記モータが開閉体開放方向への正回転を開始した時点から所定時間内に、上記フルラッチ解除検出手段が上記開閉体のフルラッチ解除を検出せずかつ上記パルス検出手段の検出パルスに異常が発生したとき、上記モータを逆回転させて上記クローザ機構を初期位置に戻す駆動制御手段;を有することを特徴としている。
本明細書で「所定時間」とは、開閉体のフルラッチ解除を妨げる理由(凍結、障害物による開閉体の押さえ込み)が存在しない場合に、開閉体をフルラッチ位置からフルラッチ解除位置まで開くために要する十分な時間を意味する。
また、「検出パルスに異常が発生」とは、パルス検出手段が全くパルスを検出しなくなること(モータの回転が停止すること)、またはパルス検出手段の検出パルスが、開閉体のフルラッチ解除を妨げる理由(凍結、障害物による開閉体の押さえ込み)が存在しない場合の検出パルスよりも延びること(モータの回転が妨げられること)を意味する。
【0009】
上記駆動制御手段は、上記所定時間を経過する時点までに上記フルラッチ解除検出手段が上記開閉体のフルラッチ解除を検出しないとき、上記モータを逆回転させて上記クローザ機構を初期位置に戻すことができる。
【0010】
上記クローザ機構が、上記モータの正逆回転に従って回動するセクタギヤと、上記回動するセクタギヤに蹴られて、上記開閉体のフルラッチに対応するクローズ位置から同開閉体のフルラッチ解除に対応するオープン位置へ回動するオープンレバーとを有し、上記フルラッチ解除検出手段が、上記オープンレバーがクローズ位置からオープン位置へ回動したことを検出するオープンレバー検出スイッチである場合、上記駆動制御手段は、上記回動するセクタギヤとオープンレバーが当接した状態で、上記所定時間内に、上記オープンレバー検出スイッチが上記オープンレバーのオープン位置への回動を検出せずかつ上記パルス検出手段の検出パルスに異常が発生したとき、または上記所定時間を経過する時点までに上記オープンレバー検出スイッチが上記オープンレバーのオープン位置への回動を検出しないとき、上記モータを逆回転させて上記セクタギヤを初期回動位置まで回動させ、上記セクタギヤとオープンレバーの当接を解除させることができる。
【0011】
本発明の車両用開閉体の駆動装置は、別の態様では、車両ボディの開口部を開閉する開閉体;モータ駆動により上記開閉体をハーフラッチ位置とフルラッチ位置の間で移動させるクローザ機構;上記開閉体のフルラッチ解除を検出するフルラッチ解除検出手段;及び上記クローザ機構を介して上記開閉体をフルラッチ位置から開く場合において、上記モータが開閉体開放方向への正回転を開始した時点から所定時間を経過する時点までに上記フルラッチ解除検出手段が上記開閉体のフルラッチ解除を検出しないとき、上記モータを逆回転させて上記クローザ機構を初期位置に戻す駆動制御手段;を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クローザ機構を介して開閉体をフルラッチ位置から開いていくとき同開閉体のフルラッチ解除が妨げられた場合であっても、クローザ機構を安定して作動することができる車両用開閉体の駆動装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の車両用開閉体の駆動装置を適用したドアロック装置の分解斜視図である。
【図2】ドアロック装置のフックを単体で示した斜視図である。
【図3】ドアロック装置のラチェットを単体で示した斜視図である。
【図4】ドアロック装置のクローズレバーと連動レバーの斜視図である。
【図5】ドアロック装置のオープンレバーを単体で示した斜視図である。
【図6】ドアロック装置のセクタギヤを単体で示した斜視図である。
【図7】トランクドアがフルラッチ位置にある場合のドアロック装置の平面図である。
【図8】トランクドアがハーフラッチ位置にある場合のドアロック装置の平面図である。
【図9】トランクドアがフルラッチ解除位置にある場合のドアロック装置の平面図である。
【図10】モータ回転制御部による制御フローの第1態様を示す図である。
【図11】モータ回転制御部による制御フローの第2態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1ないし図10を用いて、本発明の車両用開閉体の駆動装置をドアロック(ドアクロージャ)装置10に適用した実施形態を説明する。このドアロック装置10は図示しないトランクドア(開閉体)側に取り付けられており、トランクドアを開閉可能に支持する車両ボディ側には、ドアロック装置10に対して係脱するストライカS(図7ないし図9)が設けられている。ドアロック装置10とストライカSの位置関係は、これと逆にすることも可能である。
【0015】
図1に示すように、ドアロック装置10は、トランクドアに対して固定的に取り付けられるベースプレート11を有している。ベースプレート11には、ストライカSが侵入可能なストライカ進入溝11aが形成され、ストライカ進入溝11aを挟んで位置する軸支持穴11b、11cに対して軸ピン14と軸ピン15が固定されている。軸ピン14はフック12に形成した軸穴12aに挿通され、フック12は、軸ピン14を中心として回動可能に支持されている。軸ピン15はラチェット13に形成した軸穴13aに挿通され、ラチェット13は、軸ピン15を中心として回動可能に支持されている。
【0016】
図2に示すように、フック12は、軸穴12aを中心とする略半径方向に向けて形成されたストライカ保持溝12bと、このストライカ保持溝12bを挟んで位置する第1脚部12cと第2脚部12dを有している。第2脚部12dの先端部付近には、ストライカ保持溝12bに臨む側にラチェット係合段部12eが形成されており、これと反対側の側部にラチェット押圧突部12fが形成されている。ラチェット係合段部12eとラチェット押圧突部12fを接続する第2脚部12dの先端部は、凸状の円弧状面12gとなっている。第2脚部12dには、ベースプレート11から離れる方向に突出する結合突起12hが形成されている。フック12は、図7に示すストライカ保持位置(トランクドアのフルラッチ位置)と図9に示すストライカ開放位置(トランクドアのフルラッチ解除位置)の間で回動可能であり、トーションばね16によって、ストライカ解除位置(図7ないし図9における時計方向)に向けて回動付勢されている。トーションばね16は、軸ピン14を囲むコイル部16aと、フック12のばね掛け穴12i及びベースプレート11のばね掛け穴11dに係合する一対のばね端部16bを備えている。
【0017】
図3に示すように、ラチェット13は、ベースプレート11に形成したラチェットガイド溝11eに対して摺動自在に係合するガイド突起13bを備えている。ラチェット13においてフック12に対向する側部には、ラチェット係合段部12eに対して係合可能な回動規制段部13cを有し、この回動規制段部13cに続く側面に、フック12の円弧状面12gに対応する凹状の円弧状面13dが形成され、この円弧状面13dのうち軸穴13aに近い基端部側に滑らかな段差部13eが形成されている。また、軸穴13aから離れた先端部付近にはスイッチ操作片13fが設けられ、円弧状面13dと反対側の側部には被押圧片13gが設けられている。ラチェット13は、フック12に接近して回動規制段部13cをフック12のラチェット係合段部12eの移動軌跡上に位置させる(ラチェット係合段部12eと係合可能な)ラッチ位置(図7、図9)と、回動規制段部13cをラチェット係合段部12eの移動軌跡上から退避させる(ラチェット係合段部12eと係合しない)アンラッチ位置(図8)の間で回動可能であり、トーションばね17によってラッチ位置(図7ないし図9における反時計方向)に回動付勢されている。トーションばね17は、軸ピン15を囲むコイル部17aと、ラチェット13のばね掛け部13h及びベースプレート11のばね掛け穴11fに係合する一対のばね端部17bを備えている。
【0018】
軸ピン14はまた、クローズレバー20の軸穴20aにも挿通されており、クローズレバー20は、軸ピン14を中心として、フック12に対して独立して回動可能に支持されている。図4に示すように、クローズレバー20は、軸穴20aを中心とする半径方向に第1アーム20bと第2アーム20cを延設させたL字状をなし、同軸で回動するフック12のストライカ解除位置方向に位置する引込解除位置(図8、図9)と、フック12のストライカ保持位置方向に位置する引込位置(図7)の間で回動可能である。
【0019】
クローズレバー20の第1アーム20bの先端部付近には、フック12の結合突起12hが当接可能な凹部20dと、軸ピン22が挿通支持される軸支持穴20eが形成されている。軸ピン22は連動レバー21の軸穴21aに挿通され、連動レバー21は、軸ピン22を中心として回動可能にクローズレバー20上に枢着されている。図4に示すように、連動レバー21は、フック12の結合突起12hに対応する形状の結合凹部21bを側部に有し、フック12の結合突起12hの移動軌跡上に結合凹部21bを位置させる(結合突起12hと係合可能な)係合位置(図7、図8)と、フック12の結合突起12hの移動軌跡上から結合凹部21bを退避させた(結合突起12hと係合しない)結合解除位置(図9)との間で回動が可能である。連動レバー21はさらに、結合凹部21bの近傍に、ベースプレート11から離れる方向に突出する制御突起21cを有し、軸穴21aを有する基端部とは反対側の先端部に、ラチェット押圧突起21dが設けられている。
【0020】
ベースプレート11の軸支持穴11gには軸ピン24が固定され、軸ピン24に対して、オープンレバー23に形成した軸穴23aが回動可能に嵌まっている。図5に示すように、オープンレバー23は、軸穴23aを中心として異なる方向へ延出された第1アーム23bと第2アーム23cを有し、第1アーム23bの先端部付近には、オープン操作ワイヤW(図1)が接続するワイヤ掛け部23dが形成され、軸穴23aとワイヤ掛け部23dの中間部にはスイッチ操作片23eが設けられている。オープン操作ワイヤWは、図示しないキー装置及び緊急解除ハンドルによって牽引操作可能である。第2アーム23cは、図7ないし図9のように平面視したときにラチェット13と概ね重なる位置にあり、連動レバー21の制御突起21cが挿入される連動レバー制御穴23fと、フック12の結合突起12hに当接可能な回動規制壁23gと、後述するセクタギヤ26に対向するギヤ当接部23hが形成されている。連動レバー制御穴23fは、軸穴23aに近い側(クローズレバー20の引込位置方向)から第2アーム23cの先端部(クローズレバー20の引込解除位置方向)に向かうにつれて徐々に幅を広くする円弧状の長穴であり、それぞれ中心軸が異なる内側円弧面部23f1と外側円弧面部23f2を有している。オープンレバー23は、連動レバー制御穴23fを有する第2アーム部23cを、ラチェット13のラッチ位置方向へ変位させるクローズ位置(図7、図8)と、ラチェット13のアンラッチ位置方向へ変位させるオープン位置(図9)との間で回動可能である。
【0021】
クローズレバー20の第2アーム20cに形成したばね掛け部20fと、オープンレバー23の第2アーム23cに形成したばね掛け部23iの間には、引張ばね25が張設されている。この引張ばね25によって、クローズレバー20は、上記の引込解除位置(図7ないし図9の時計方向)へ回動付勢され、オープンレバー23は、上記のクローズ位置(図7ないし図9の時計方向)へ回動付勢されている。
【0022】
ベースプレート11の軸支持穴11hには軸ピン28が固定され、セクタギヤ26の軸穴26aが、軸ピン28に対して回動可能に嵌まっている。セクタギヤ26は、軸穴26aを中心とする扇状部の周縁に形成されたギヤ部26bと、オープンレバー23のギヤ当接部23hに当接可能なオープンレバー操作片26cを備えている。オープンレバー操作片26cの近傍には、クローズレバー20の第2アーム20cに対して係合可能なクローズレバー操作ピン26dが突設されている。ベースプレート11上に固定されるモータユニット27には、モータ27aによって正逆に回転駆動されるピニオン27bが設けられ、ピニオン27bがギヤ部26bに噛合している。モータユニット27、セクタギヤ26、オープンレバー23、フック12、ラチェット13及びストライカSにより、トランクドアをモータ駆動によりハーフラッチ位置とフルラッチ位置の間で移動させるクローザ機構が構成される。
【0023】
ベースプレート11上には、ラチェット検出スイッチ30と、オープンレバー検出スイッチ(フルラッチ解除検出手段)31が設けられている。ラチェット検出スイッチ30は、ラチェット13に設けたスイッチ操作片13fによって押圧可能なスイッチであり、オープンレバー検出スイッチ31は、オープンレバー23に設けたスイッチ操作片23eによって押圧可能なスイッチである。具体的には、ラチェット検出スイッチ30は、ラチェット13が図7と図9に示すラッチ位置にあるときには、スイッチ操作片13fがスイッチ接片30aから離間したスイッチオフ状態にあり、ラチェット13が図8に示すアンラッチ位置に回動されると、スイッチ操作片13fがスイッチ接片30aを押圧してスイッチオン状態になる。また、オープンレバー検出スイッチ31は、オープンレバー23が図7と図8に示すクローズ位置にあるときには、スイッチ操作片23eがスイッチ接片31aから離間したスイッチオフ状態にあり、オープンレバー23が図9に示すオープン位置に回動されると、スイッチ操作片23eがスイッチ接片31aを押圧してスイッチオン状態になる。このオープンレバー検出スイッチ31のスイッチオンがトランクドアのフルラッチ解除を意味する。ラチェット検出スイッチ30とオープンレバー検出スイッチ31のオンオフ状態は、モータ回転制御部(駆動制御手段)32に入力される。
【0024】
ドアロック装置10は、モータユニット27のモータ27aの回転に応じて発生するパルスを検出するパルス検出手段33(図1)を備える。パルス検出手段33は、モータユニット27内に設けたホールICからなり、作図の便宜上、モータユニット27の外側に概念的に示している。パルス検出手段33によれば、セクタギヤ26の回動位置(初期回動位置を含む)が検出可能である。ドアロック装置10はまた、モータ駆動によるオープン作動及びクローズ作動を行わせるためのオープン操作スイッチ34及びクローズ操作スイッチ35(図1)を備える。オープン操作スイッチ34又はクローズ操作スイッチ35が操作されると、トランクドアの開指示信号又は閉指示信号がモータ回転制御部32に送られる。モータ回転制御部32は、オープン操作スイッチ34又はクローズ操作スイッチ35から送られるトランクドアの開指示信号又は閉指示信号に従ってモータユニット27のモータ27aを回転制御する。
【0025】
図7ないし図10を用いて、トランクドアをフルラッチ位置から開いていく際のドアロック機構10の動作及びモータ回転制御部32による制御について説明する。図7から図9はドアロック装置10の機構的な作動の態様を示しており、図中のF1、F2、F3及びF4はそれぞれ、フック12、ラチェット13、クローズレバー20及びオープンレバー23に作用するばねの付勢力の方向を表している。図10はモータ回転制御部32による制御フローを示しており、以下ではモータ27aの駆動方向に関し、トランクドアを開く(ドアロックを解除させる)方向を正回転、トランクドアを閉じる(ドアロックさせる)方向を逆回転と呼ぶ。
【0026】
トランクドアがフルラッチ位置にある場合に、オープン操作スイッチ34が操作されてモータ回転制御部32にトランクドアの開指示信号が送られると(S1)、モータ回転制御部32は、モータ27aを正転駆動してトランクドアの開作動を開始させる(S2)。すなわち、モータ27aの正転駆動に従ってセクタギヤ26が図7に示す初期位置から反時計方向に回動し始める。このときモータ回転制御部32は、タイマ部32Tを用いて、トランクドアの開作動の開始時点(モータ27aの正転駆動の開始時点)からの経過時間を計時する。
【0027】
モータ27aの回転が停止することなく(パルス検出手段33の検出パルスに異常が発生することなく)セクタギヤ26が反時計方向に回動していくと(S3:No)、セクタギヤ26のオープンレバー操作片26cがオープンレバー23のギヤ当接部23hを押圧して(オープンレバー23がセクタギヤ26に蹴られて)、オープンレバー23が、引張ばね25の付勢力F4に抗して図7、図8のクローズ位置からオープン位置へ向けて反時計方向に回動される。図9に示すように、オープンレバー23がオープン位置まで回動すると、オープンレバー23のスイッチ操作片23eがオープンレバー検出スイッチ31のスイッチ接片31aを押圧してオープンレバー検出スイッチ31がオフからオンに切り替わり、トランクドアのフルラッチ解除が検出され(S4:Yes)、トランクドアが全開位置まで開放する(S5)。
【0028】
一方、モータ回転制御部32は、タイマ部32Tを参照して、トランクドアの開作動の開始時点(モータ27aの正転駆動の開始時点)からの所定時間内に、オープンレバー検出スイッチ31がオフからオンに切り替わらず(S4:No)、かつモータ27aの回転が停止または妨げられたとき(パルス検出手段33の検出パルスに異常が発生したとき)は、何らかの理由(凍結、障害物による押さえ込み)でトランクドアのフルラッチ解除が妨げられたと判断する(S3:Yes)。するとモータ回転制御部32は、モータ27aを逆転駆動してセクタギヤ26を時計方向に反転させる(S6)。やがてセクタギヤ26が初期回動位置まで戻されると(S7:Yes)、モータ回転制御部32はモータ27aの回転を停止させる(S8)。
【0029】
このように本実施形態では、トランクドア(開閉体)をフルラッチ位置から開く場合において、モータ27aがトランクドア開放方向への正回転を開始した時点から所定時間内に、オープンレバー検出スイッチ(フルラッチ解除検出手段)31がオフからオンに切り替わらず(トランクドアのフルラッチ解除を検出せず)かつパルス検出手段33の検出パルスに異常が発生したとき、モータ回転制御部(駆動制御手段)32は、トランクドアのフルラッチ解除が妨げられたと判断して、モータ27aを逆回転させてセクタギヤ(クローザ機構)26aを初期回動位置に戻すようにしている。したがって、モータ27aの回転停止後にトランクドアを閉めたとしても、セクタギヤ26は必ず図7に示す初期回動位置に戻されているので、常に同じギヤ位置からトランクドアの開作動を行うことができ、ギヤ位置違いによる作動の不具合を防止することができる。
【0030】
また、セクタギヤ26がオープンレバー23を蹴りきれず(オープンレバー23がオープン位置まで回動できず)、セクタギヤ26とオープンレバー23が当接した状態でモータ27aの回転が停止すると、オープンレバー操作片26cとギヤ当接部23hが抉れた状態になるが、セクタギヤ26を初期回動位置に戻すことで、セクタギヤ26とオープンギヤ23が当接した状態(オープンレバー操作片26cとギヤ当接部23hが抉れた状態)を速やかに解除することができる。したがって、モータ27aの回転停止後に振動が加わっても、予期せぬタイミングでトランクドアがフルラッチ解除されて開放するのを防止することができる。
【0031】
モータ回転制御部(駆動制御手段)32は、パルス検出手段33の検出パルスを考慮することなく、トランクドア(開閉体)のフルラッチ解除が妨げられたと判断する態様も可能である。すなわち、図11に示すように、モータ回転制御部(駆動制御手段)32は、タイマ部32Tを参照して、トランクドアの開作動の開始時点(モータ27aの正転駆動の開始時点)から所定時間を経過する時点までにオープンレバー検出スイッチ31がオフからオンに切り替わらないとき(S3:Yes、S4:No)、何らかの理由(凍結、障害物による押さえ込み)でトランクドアのフルラッチ解除が妨げられたと判断することができる。
【0032】
以上の実施形態では、本発明の車両用開閉体の駆動装置をドアロック装置に適用した場合を例示して説明したが、開閉体をフルラッチ位置から開いていくとき同開閉体のフルラッチ解除が妨げられた場合にクローザ機構(セクタギヤ)を初期位置(初期回動位置)に戻すという本発明の技術思想は、他の開閉体の駆動装置にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 ドアロック装置
11 ベースプレート
12 フック(クローザ機構)
13 ラチェット(クローザ機構)
20 クローズレバー
21 連動レバー
23 オープンレバー(クローザ機構)
23e スイッチ操作片
23h ギヤ当接部
26 セクタギヤ(クローザ機構)
26b ギヤ部
26c オープンレバー操作片
27 モータユニット(クローザ機構)
27a モータ
27b ピニオン
31 オープンレバー検出スイッチ(フルラッチ解除検出手段)
32 モータ回転制御部(駆動制御手段)
32T タイマ部
33 パルス検出手段
34 オープン操作スイッチ
S ストライカ(クローザ機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディの開口部を開閉する開閉体;
モータ駆動により上記開閉体をハーフラッチ位置とフルラッチ位置の間で移動させるクローザ機構;
上記開閉体のフルラッチ解除を検出するフルラッチ解除検出手段;
上記モータの回転に応じて発生するパルスを検出するパルス検出手段;及び
上記クローザ機構を介して上記開閉体をフルラッチ位置から開く場合において、上記モータが開閉体開放方向への正回転を開始した時点から所定時間内に、上記フルラッチ解除検出手段が上記開閉体のフルラッチ解除を検出せずかつ上記パルス検出手段の検出パルスに異常が発生したとき、上記モータを逆回転させて上記クローザ機構を初期位置に戻す駆動制御手段;
を有することを特徴とする車両用開閉体の駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用開閉体の駆動装置において、
上記駆動制御手段は、上記所定時間を経過する時点までに上記フルラッチ解除検出手段が上記開閉体のフルラッチ解除を検出しないとき、上記モータを逆回転させて上記クローザ機構を初期位置に戻す車両用開閉体の駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用開閉体の駆動装置において、
上記クローザ機構は、上記モータの正逆回転に従って回動するセクタギヤと、上記回動するセクタギヤに蹴られて、上記開閉体のフルラッチに対応するクローズ位置から同開閉体のフルラッチ解除に対応するオープン位置へ回動するオープンレバーとを有し、
上記フルラッチ解除検出手段は、上記オープンレバーがクローズ位置からオープン位置へ回動したことを検出するオープンレバー検出スイッチであり、
上記駆動制御手段は、上記回動するセクタギヤとオープンレバーが当接した状態で、上記所定時間内に、上記オープンレバー検出スイッチが上記オープンレバーのオープン位置への回動を検出せずかつ上記パルス検出手段の検出パルスに異常が発生したとき、または上記所定時間を経過する時点までに上記オープンレバー検出スイッチが上記オープンレバーのオープン位置への回動を検出しないとき、上記モータを逆回転させて上記セクタギヤを初期回動位置まで回動させ、上記セクタギヤとオープンレバーの当接を解除させる車両用開閉体の駆動装置。
【請求項4】
車両ボディの開口部を開閉する開閉体;
モータ駆動により上記開閉体をハーフラッチ位置とフルラッチ位置の間で移動させるクローザ機構;
上記開閉体のフルラッチ解除を検出するフルラッチ解除検出手段;及び
上記クローザ機構を介して上記開閉体をフルラッチ位置から開く場合において、上記モータが開閉体開放方向への正回転を開始した時点から所定時間を経過する時点までに上記フルラッチ解除検出手段が上記開閉体のフルラッチ解除を検出しないとき、上記モータを逆回転させて上記クローザ機構を初期位置に戻す駆動制御手段;
を有することを特徴とする車両用開閉体の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−122347(P2011−122347A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280763(P2009−280763)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】