説明

車両用電池搭載構造

【課題】車両衝突に伴うバッテリフレームの変形を抑制しつつ、バッテリの搭載スペースを広くすることができる車両用電池搭載構造を提供することを目的とする。
【解決手段】筒状フレーム部としてのバッテリサイドメンバ18は、断面矩形の筒状部材で構成されている。バッテリサイドメンバ18の取付部28における底壁部28B及び天壁部28Aには、車両上下方向に貫通するカラー貫通孔32,34がそれぞれ形成されている。これらのカラー貫通孔32,34には円筒形状のカラー部材36が貫通されており、各カラー貫通孔32,34の縁にカラー部材36が溶接で接合されている。このカラー部材36を車体固定用ボルト44で車体側ブラケット40に固定することにより、バッテリサイドメンバ18の取付部28がフロアパネル38の車体側ブラケット40に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電池搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の床下にバッテリ(電池)を搭載したバッテリ搭載構造が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示された技術では、フロアパネルの下面に設けられた左右一対のエクステンションサイドメンバの車両幅方向内側に、バッテリを支持するユニットフレームのユニットサイドメンバが配置され、これらのエクステンションサイドメンバとユニットサイドメンバとが結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハイブリット自動車や電気自動車では、長距離走行を可能にするために、バッテリが大型化する傾向にある。この点に関し、特許文献1に開示された技術では、ユニットサイドメンバがエクステンションサイドメンバに結合されるため、車両側面衝突等に伴うユニットサイドメンバの車両幅方向の屈曲変形等が抑制されるものの、ユニットサイドメンバがエクステンションサイドメンバの車両幅方向内側に配置されるため、バッテリの車両幅方向の搭載スペースが狭くなる。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、車両衝突に伴うバッテリフレームの変形を抑制しつつ、バッテリの搭載スペースを広くすることができる車両用電池搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用電池搭載構造は、車両上下方向から見てバッテリの外周に配置される筒状フレーム部を有し、該バッテリを車両の床下で支持するバッテリフレームと、前記筒状フレーム部の取付部に設けられ、該取付部を車両上下方向に貫通すると共に、車両上下方向上側の端部が車体まで延びるカラー部材と、前記カラー部材内に設けられ、該カラー部材と共に前記バッテリフレームを前記車体に固定する固定部材と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、車両上下方向から見てバッテリの外周に配置される筒状フレーム部の取付部には、当該取付部を車両上下方向に貫通するカラー部材が設けられている。カラー部材の車両上下方向上側の端部は車体まで延びており、このカラー部材を固定部材で車体に固定することにより、当該カラー部材と共にバッテリフレームが車体に取り付けられる。
【0008】
ここで、筒状フレーム部の取付部にカラー部材を貫通させることにより、取付部の剛性が向上する。即ち、カラー部材は、車体と筒状フレーム部との間のスペーサとして機能するだけでなく、筒状フレーム部を補強する補強部材としても機能する。これにより、車両衝突に伴う筒状フレーム部の変形が抑制されるため、カラー部材を備えない構成と比較して、バッテリを取付部に接近させた状態で搭載することができる。従って、バッテリの車両幅方向や車両前後方向の搭載スペースを広く確保することができる。
なお、ここで言う筒状フレーム部とは、バッテリフレームにおいて、閉断面で構成された内部が中空のフレーム部を意味する。
【0009】
請求項2に記載の車両用電池搭載構造は、請求項1記載の車両用電池搭載構造において、前記バッテリフレームが、前記筒状フレーム部と交差する方向に延びて前記取付部に結合されると共に前記バッテリを車両上下方向下側から支持する支持メンバを有する。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、筒状フレーム部の取付部に支持メンバを結合することにより、取付部の剛性が向上する。従って、筒状フレーム部の断面積を小さく抑えることができるため、バッテリの車両幅方向や車両前後方向の搭載スペースを更に広く確保することができる。
【0011】
請求項3に記載の車両用電池搭載構造は、請求項2に記載の車両用電池搭載構造において、前記固定部材が、前記取付部から車両上下方向下側へ突出する前記カラー部材の車両上下方向下側の端部に係合される係合部を有し、前記取付部と前記支持メンバとの結合部には、前記係合部の側面を覆うカバー部が設けられている。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、固定部材が、取付部から車両上下方向下側へ突出するカラー部材の車両上下方向下側の端部に係合される係合部を有している。また、取付部と支持メンバとの結合部にはカバー部が設けられている。このカバー部によって、固定部材の係合部の側面が覆われる。これにより、チッピングや、路面上の突起物との接触による係合部の破損、損傷が抑制される。従って、バッテリの交換作業等に伴う固定部材の取り外し性が損なわれないため、バッテリのメンテナンス性が確保される。
【0013】
請求項4に記載の車両用電池搭載構造は、請求項3に記載の車両用電池搭載構造において、前記カバー部には、前記固定部材を車両上下方向に挿入させるための挿入部が設けられている。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、カバー部には、固定部材を車両上下方向に挿入させるための挿入部が設けられている。この挿入部からカラー部材に固定部材を挿入し、又はカラー部材から固定部材を取り外すことができる。従って、カバー部の取り外し作業等が不要になるため、バッテリのメンテナンス性が向上する。
【0015】
請求項5に記載の車両用電池搭載構造は、請求項3又は請求項4に記載の車両用電池搭載構造において、前記取付部と前記支持メンバとに跨って取り付けられ、該取付部及び該支持メンバの各々に接合される結合ブラケットを備え、前記カバー部が、前記結合ブラケットに設けられている。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、取付部と支持メンバとに跨って取り付けられる結合ブラケットによって、取付部と支持メンバとの結合部が補強される。これにより、筒状フレーム部の剛性が向上する。従って、筒状フレーム部の断面積を小さく抑えることができるため、バッテリの車両幅方向や車両前後方向の搭載スペースを更に広く確保することができる。また、結合ブラケットにカバー部を設けることにより、結合ブラケットとカバー部とを別体にする構成と比較して、部品点数を削減することができる。
【0017】
請求項6に記載の車両用電池搭載構造は、請求項3又は請求項4に記載の車両用電池搭載構造において、前記支持メンバには、車両上下方向下側から前記取付部に結合される前記カバー部が設けられている。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、筒状フレーム部の取付部には、支持メンバに設けられたカバー部が車両上下方向下側から結合される。このカバー部によって固定部材の係合部が覆われ、チッピングや、路面上の突起物との接触による係合部の破損、損傷が抑制される。従って、バッテリの交換作業等に伴う固定部材の取り外し性が損なわれないため、バッテリのメンテナンス性が確保される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る車両用電池搭載構造によれば、車両衝突に伴うバッテリフレームの変形を抑制しつつ、バッテリの搭載スペースを広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用電池搭載構造が適用された車両を車両幅方向外側から見た側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るバッテリパック及びバッテリフレームを示す、斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車両用電池搭載構造を示す、図2の3−3線拡大断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る結合ブラケットを示す、車両斜め上方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る結合ブラケットを示す、車両斜め下方から見た斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る車両用電池搭載構造を示す、図2の6−6線拡大断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るカバー部を、車両斜め下方から見た斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るバッテリアンダーメンバを一部切り欠いて示す、分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両用電池搭載構造について説明する。なお、各図において適宜示される矢印FRは車両前後方向前側を示し、矢印UPは車両上下方向上側を示し、矢印RHは車両幅方向外側(右側)を示している。
【0022】
先ず、第1実施形態について説明する。
【0023】
図1には、一例として、本実施形態に係る車両用電池搭載構造10が適用された車両12が側面視により示されている。図1に示されるように、車両12は図示しない電動機(モータ)を駆動源として走行する電気自動車であり、その床下に電動機へ供給する電力が蓄電されたバッテリとしてのバッテリパック14が搭載されている。このように車両12の床下、換言すると、図示しないフロアパネルの車両上下方向下側にバッテリパック14が搭載される車両12に、本実施形態に係る車両用電池搭載構造10が適用されている。
【0024】
図2に示されるように、車両用電池搭載構造10は、バッテリパック14を車両上下方向下側から支持するバッテリフレーム16を備えている。バッテリパック14は、ケース内に放充電可能な図示しない複数の蓄電池が収納されたものであり、図2ではバッテリパック14の外形が二点鎖線で示されている。このバッテリパック14は、バッテリフレーム16の上に載置されており、図示しないボルト等によってバッテリフレーム16に固定されている。
【0025】
バッテリフレーム16は、車両前後方向に延びる左右一対のバッテリサイドメンバ18と、車両幅方向に延びて左右一対のバッテリサイドメンバ18の車両前後方向前側の端部を連結するバッテリフロントクロスメンバ20と、車両幅方向に延びて左右一対のバッテリサイドメンバ18の車両前後方向の中間部を連結するバッテリサブクロスメンバ22と、車両幅方向に延びて左右一対のバッテリサイドメンバ18の車両前後方向後側の端部を連結するバックボード24と、車両前後方向に延びて、バッテリフロントクロスメンバ20、バッテリサブクロスメンバ22、及びバックボード24を連結するバッテリアンダーメンバ26を有して構成されている。
【0026】
バッテリサイドメンバ18、バッテリフロントクロスメンバ20、及びバックボード24は枠状に結合されており、車両上下方向から見たときに、バッテリパック14の外周に配置されている。バッテリサイドメンバ18及びバッテリフロントクロスメンバ20には取付部28,62がそれぞれ設けられており、各取付部28,62において、バッテリフレーム16が後述する車体のフロアパネル38(図3参照)に取り付けられている。以下、筒状フレーム部としてのバッテリサイドメンバ18の取付部28について詳説する。
【0027】
図3に示されるように、バッテリサイドメンバ18は断面矩形の筒状部材で、車両上下方向から見たときに、バッテリパック14の車両幅方向外側に配置されている。バッテリサイドメンバ18の取付部28における天壁部28A及び底壁部28Bには、車両上下方向に貫通するカラー貫通孔32,34がそれぞれ形成されている。これらのカラー貫通孔32,34には円筒形状のカラー部材36が貫通されており、各カラー貫通孔32,34の縁にカラー部材36が溶接で接合されている。このカラー部材36によって、取付部28が補強されている。
【0028】
カラー部材36の車両上下方向下側の端部は、取付部28の底壁部28Bから車両上下方向下側へ突出している。これにより、カラー部材36と取付部28の底壁部28Bとの溶接代が確保されている。一方、カラー部材36の車両上下方向上側の端部は、取付部28の天壁部28Aから車両上下方向上側へ突出すると共に、バッテリパック14の車両幅方向外側を通って、フロアパネル38の下面に設けられた車体側ブラケット40まで延出している。
【0029】
車体側ブラケット40は断面ハット形状で、フロアパネル38の下面に溶接で接合され、その底壁部40Aにカラー部材36の車両上下方向上側の端部が突き当てられている。この底壁部40Aには貫通孔が形成されると共に、その内面(車両上下方向上側の面)にウェルドナット42が設けられている。このウェルドナット42に、カラー部材36に通された車体固定用ボルト(固定部材)44を締め込み、係合部としての車体固定用ボルト44の頭部44Aをカラー部材36の車両上下方向下側の端部に係合させることにより、カラー部材36が車体側ブラケット40に固定されている。これにより、カラー部材36を介してバッテリサイドメンバ18の取付部28が車体側ブラケット40に取り付けられている。換言すると、車体固定用ボルト44によって、カラー部材36と共にバッテリフレーム16が車体側の車体側ブラケット40に固定されている。
【0030】
バッテリサイドメンバ18の取付部28の車両幅方向内側の側壁部28Cには、バッテリサブクロスメンバ22の車両幅方向外側の端部が突き当てられて結合されている。支持メンバとしてのバッテリサブクロスメンバ22は断面矩形の筒状部材で、バッテリサイドメンバ18と交差する方向に延びて、バッテリパック14を車両上下方向下側から支持している。バッテリサイドメンバ18の取付部28とバッテリサブクロスメンバ22との結合部は、車両上下方向両側から取り付けられた一対の結合ブラケット46,48よって補強されている。
【0031】
図4に示されるように、バッテリサイドメンバ18の取付部28とバッテリサブクロスメンバ22との結合部に、車両上下方向上側から取り付けられる結合ブラケット46は、バッテリサイドメンバ18及びバッテリサブクロスメンバ22の上面に跨って配置されると共に、これらの各上面に溶接される略T字形状の上面結合部46Aと、上面結合部46Aの縁から車両上下方向下側へ延出して、バッテリサイドメンバ18及びバッテリサブクロスメンバ22の側面に跨って配置されると共に、これらの各側面に溶接される一対の側面結合部46Bを備えている。上面結合部46Aには、カラー部材36が配置される切欠き溝50が設けられている。また、結合ブラケット46の上面結合部46A、及びバッテリサブクロスメンバ22の上面には、位置決め用の位置決め孔58,59がそれぞれ形成されている。
【0032】
一方、図5に示されるように、バッテリサブクロスメンバ22と取付部28との結合部に、車両上下方向下側からに取り付けられる結合ブラケット48は、バッテリサイドメンバ18及びバッテリサブクロスメンバ22の下面に跨って配置されると共に、これらの各下面に溶接される略T字形状の下面結合部48Aと、下面結合部48Aの縁から車両上下方向上側へ延出して、バッテリサイドメンバ18及びバッテリサブクロスメンバ22の側面に跨って配置されると共に、これらの各側面に溶接される側面結合部48Bと、下面結合部48Aから車両上下方向下側へ突出し、車体固定用ボルト44の頭部44Aの側面を覆うカバー部48Cを備えている。下面結合部48A、及びバッテリサブクロスメンバ22の下面には、位置決め用の位置決め孔52,54がそれぞれ形成されている。
【0033】
カバー部48Cは、車体固定用ボルト44の頭部44Aの車両幅方向内側に配置されている。このカバー部48Cは断面略U字形状で、先端に向かって断面積が減少するようにテーパーが付けられた湾曲壁とされており、バッテリサイドメンバ18及びバッテリサブクロスメンバ22よりも車両上下方向下側に位置する車体固定用ボルト44の頭部44Aの側面を車両幅方向内側から略半周に渡って覆っている。また、車体固定用ボルト44の頭部44Aよりも車両上下方向下側に位置するカバー部48Cの先端には、車体固定用ボルト44を車両上下方向に挿入させるための切欠き部56(挿入部)が設けられている。この切欠き部56から車体固定用ボルト44をカラー部材36に挿入し、又は車体固定用ボルト44をカラー部材36から取り外し可能になっている。
【0034】
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0035】
図3に示されるように、本実施形態に係る車両用電池搭載構造10では、バッテリサイドメンバ18の取付部28がカラー部材36を介してフロアパネル38の車体側ブラケット40に取り付けられている。
【0036】
ここで、カラー部材36は、取付部28の底壁部28B及び天壁部28Aに形成されたカラー貫通孔32,34を車両上下方向へ貫通し、各カラー貫通孔32,34の縁に溶接で接合されている。換言すると、カラー部材36によって取付部28の底壁部28B及び天壁部28Aが連結されている。これにより、取付部28の剛性が向上する結果、車両衝突(側面衝突、前面衝突、後面衝突等)に伴うバッテリサイドメンバ18の変形(折れ、屈曲等)が抑制される。
【0037】
このようにカラー部材36は、車体側ブラケット40とバッテリサイドメンバ18との間のスペーサとして機能するだけでなく、バッテリサイドメンバ18を補強する補強部材としても機能する。これにより、車両衝突に伴うバッテリサイドメンバ18の変形が抑制されるため、カラー部材36を備えない構成と比較して、バッテリパック14を取付部28に接近させた状態で搭載することができる。また、従来技術(例えば、特許文献1)では、エクステンションサイドメンバによってユニットサイドメンバの配置が制限されるが、本実施形態ではこのような制限が緩和される。従って、バッテリパック14の車両幅方向の搭載スペースを広く確保することができる。これにより、車両12に大型のバッテリパック14を搭載することができるため、走行距離を長くすることができる。
【0038】
また、バッテリサイドメンバ18の取付部28には、バッテリサブクロスメンバ22が結合されると共に、上下一対の結合ブラケット46,48によって補強されている。これにより、バッテリサイドメンバ18の剛性が更に向上する。従って、バッテリサイドメンバ18の断面積を小さく抑えることができるため、バッテリパック14の車両幅方向の搭載スペースを更に広く確保することができる。
【0039】
また、結合ブラケット48には、車体固定用ボルト44の頭部44Aの側面を覆うカバー部48Cが設けられている。このカバー部48Cによって、チッピングや、路面上の突起物との接触による車体固定用ボルト44の頭部44Aの破損、損傷が抑制される。従って、バッテリパック14の交換作業等に伴う車体固定用ボルト44の取り外し性が損なわれないため、バッテリパック14のメンテナンス性が確保される。
【0040】
更に、カバー部48Cには、切欠き部56が設けられている。この切欠き部56から車体固定用ボルト44をカラー部材36に挿入し、又は車体固定用ボルト44をカラー部材36から取り外すことができる。従って、結合ブラケット48の取り外し作業が不要になるため、バッテリパック14のメンテナンス性が向上する。
【0041】
なお、カバー部48Cは、車体固定用ボルト44の頭部44Aの側面の少なくとも一部を覆っていれば良く、その配置や、及び車体固定用ボルト44の頭部44Aの側面を覆う範囲は必要に応じて適宜変更可能である。従って、例えば、カバー部48Cで車体固定用ボルト44の頭部44Aの側面を全周に渡って覆うことも可能である。
【0042】
また、本実施形態では、バッテリサイドメンバ18におけるバッテリサブクロスメンバ22との結合部に取付部28を設けたが、バッテリサイドメンバ18における他の部位に取付部28を設けても良い。
【0043】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0044】
図6には、第2実施形態に係る車両用電池搭載構造60が適用された筒状フレーム部としてのバッテリフロントクロスメンバ20の取付部62が断面図により示されている。図6に示されるように、バッテリフロントクロスメンバ20は断面矩形の筒状部材で、車両上下方向から見たときに、バッテリパック14の車両前後方向前側に配置されている。バッテリフロントクロスメンバ20の取付部62における天壁部62A及び底壁部62Bには、車両上下方向に貫通するカラー貫通孔64,66がそれぞれ形成されている。なお、本実施形態では、2組のカラー貫通孔64,66が車両前後方向に間隔を空けて形成されている。対をなすカラー貫通孔64,66には円筒形状のカラー部材68が貫通されており、各カラー貫通孔64,66の縁にカラー部材68が溶接で接合されている。これらのカラー部材68によって、取付部62が補強されている。
【0045】
カラー部材68の車両上下方向下側の端部は、取付部62の底壁部62Bから車両上下方向下側へ突出している。これにより、カラー部材68と取付部62の底壁部62Bとの溶接代が確保されている。一方、カラー部材68の車両上下方向上側の端部は、取付部62の天壁部62Aから車両上下方向上側へ突出すると共に、バッテリパック14の車両前後方向前側を通ってフロアパネル38まで延出し、当該フロアパネル38の下面に突き当てられている。
【0046】
フロアパネル38には貫通孔が形成されると共に、その上面(車両上下方向上側の面)に2つのウェルドナット70が車両前後方向に間隔を空けて設けられている。これらのウェルドナット70に、カラー部材68に通された車体固定用ボルト(固定部材)72をそれぞれ締め込み、係合部としての車体固定用ボルト72の頭部72Aをカラー部材68の車両上下方向下側の端部に係合させることにより、カラー部材68がフロアパネル38に固定されている。これにより、カラー部材68を介してバッテリフロントクロスメンバ20の取付部62がフロアパネル38に取り付けられている。換言すると、車体固定用ボルト72によって、カラー部材68と共にバッテリフロントクロスメンバ20が車体としてのフロアパネル38に固定されている。
【0047】
バッテリフロントクロスメンバ20の取付部62には、バッテリアンダーメンバ26の車両前後方向前側の端部が車両上下方向下側から突き当てられて結合されている。バッテリアンダーメンバ26は、バッテリフロントクロスメンバ20と交差する方向に延びて、バッテリパック14を車両上下方向下側から支持している。
【0048】
図7及び図8に示されるように、バッテリアンダーメンバ26は、断面ハット形状の下側フレーム74と、下側フレーム74の上に重ねられる平板状の上側フレーム76とを備えている。下側フレーム74は、上側フレーム76が重ねられるフレーム本体部78と、バッテリフロントクロスメンバ20の車両上下方向下側に配置されるカバー部80を備えている。
【0049】
フレーム本体部78における左右の一対のフランジ部78Aには、車両上下方向上側に凸となる複数のビード部82が車両前後方向に間隔を空けて形成されている。これらのビード部82に上側フレーム76の車両幅方向の両端部が接合されており、フレーム本体部78及び上側フレーム76によって閉断面が構成されている。上側フレーム76の車両前後方向前側の端部には、車両上下方向上側へ向けて湾曲された湾曲部76Aが設けられている。この湾曲部76Aがバッテリフロントクロスメンバ20における取付部62の後壁部62Cに突き当てられ、溶接で接合されている。
【0050】
下側フレーム74のカバー部80は、車両前後方向下側へ凸となるように湾曲され、フレーム本体部78から車両前後方向前側へ延出されている。このカバー部80は、バッテリフロントクロスメンバ20の車両上下方向下側に配置されて車体固定用ボルト72の頭部72Aの側面を全周に渡って覆うと共に、そのフランジ部80Aがバッテリフロントクロスメンバ20の底壁部28Bに突き当てられて溶接で接合されている。また、カバー部80の底壁部80Bには、車体固定用ボルト72を車両上下方向へ挿入させるための2つの挿入孔(挿入部)86が、車両前後方向に間隔を空けて形成されている。この挿入孔86を通して、車体固定用ボルト72をカラー部材68に挿入し、又は車体固定用ボルト72をカラー部材68から取り外し可能になっている。
【0051】
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0052】
図6に示されるように、本実施形態に係る車両用電池搭載構造60では、バッテリフロントクロスメンバ20の取付部62がカラー部材68を介してフロアパネル38に取り付けられている。
【0053】
ここで、カラー部材68は、取付部62の底壁部62B及び天壁部62Aに形成されたカラー貫通孔64,66を車両上下方向へ貫通し、各カラー貫通孔64,66の縁に溶接で接合されている。換言すると、2つのカラー部材68によって取付部62の底壁部62B及び2天壁部28Aが連結されている。これにより、取付部62の剛性が向上する結果、車両衝突(側面衝突、前面衝突、後面衝突等)に伴うバッテリフロントクロスメンバ20の変形(折れ、屈曲等)が抑制される。
【0054】
このようにカラー部材68は、フロアパネル38とバッテリフロントクロスメンバ20との間のスペーサとして機能するだけでなく、バッテリフロントクロスメンバ20を補強する補強部材としても機能する。これにより、車両衝突に伴うバッテリフロントクロスメンバ20の変形が抑制されるため、カラー部材68を備えない構成と比較して、バッテリパック14を取付部62に接近させた状態で搭載することができる。従って、バッテリパック14の車両前後方向の搭載スペースを広く確保することができる。
【0055】
また、バッテリフロントクロスメンバ20の取付部62には、バッテリアンダーメンバ26が結合されて補強されている。これにより、バッテリフロントクロスメンバ20の剛性が更に向上する。従って、バッテリフロントクロスメンバ20の断面積を小さく抑えることができるため、バッテリパック14の車両前後方向の搭載スペースを更に広く確保することができる。
【0056】
また、バッテリアンダーメンバ26には、車体固定用ボルト72の頭部72Aの側面を全周に渡って覆うカバー部80が設けられている。このカバー部80によって、チッピングや、路面上の突起物との接触による車体固定用ボルト72の頭部72Aの破損、損傷が抑制される。従って、バッテリパック14の交換作業等に伴う車体固定用ボルト72の取り外し性が損なわれないため、バッテリパック14のメンテナンス性が確保される。
【0057】
更に、カバー部80には、車体固定用ボルト72に対応する挿入孔86が設けられている。この挿入孔86から車体固定用ボルト72をカラー部材68に挿入し、又は車体固定用ボルト72をカラー部材68から取り外すことができる。従って、バッテリアンダーメンバ26の取り外し作業が不要になるため、バッテリパック14のメンテナンス性が向上する。
【0058】
なお、カバー部80は、車体固定用ボルト72の頭部72Aの側面の少なくとも一部を覆っていれば良く、その配置、及び車体固定用ボルト72の頭部72Aを覆う範囲は必要に応じて適宜変更可能である。
【0059】
また、本実施形態では、バッテリフロントクロスメンバ20におけるバッテリサブクロスメンバ22との結合部に取付部62を設けたが、バッテリフロントクロスメンバ20における他の部位に取付部62を設けても良い。
【0060】
また、上記第1,第2実施形態において、筒状フレーム部としてのバッテリサイドメンバ18及びバッテリフロントクロスメンバ20は、各々の取付部28,62を貫通するカラー部材36,68がバッテリパック14に干渉しないように、その少なくとも一部が車両上下方向から見てバッテリパック14の外周に配置されていれば良い。即ち、バッテリサイドメンバ18及びバッテリフロントクロスメンバ20の一部が、バッテリパック14と車両上下方向に重なっていても良い。
また、筒状フレーム部とは、バッテリフレームにおいて閉断面で構成された内部が中空のフレーム部を意味し、その断面形状は上記したものに限らず、円形や五角形等の多角形でも良い。
【0061】
更に、バッテリフレームには、少なくとも一つの筒状フレーム部を設ければ良く、例えば、上記第1実施形態で説明した車両前後方向に延在するバッテリサイドメンバ18、及び上記第2実施形態で説明した車両幅方向に延在するバッテリフロントクロスメンバ20の何れか一方を設けても良いし、これらのバッテリサイドメンバ18、及びバッテリフロントクロスメンバ20の両方を設けても良い。
【0062】
また、バッテリサイドメンバ18及びバッテリフロントクロスメンバ20がバッテリパック14よりも車両上下方向下側に位置しているが、例えば、バッテリサイドメンバ18をバッテリパック14の車両幅方向外側に配置しても良いし、バッテリフロントクロスメンバ20をバッテリパック14の車両前後方向前側に配置しても良い。
【0063】
また、固定部材として、車体固定用ボルト44,72を用いたが、種々の固定部材を用いることができる。例えば、車体に設けられた被係止部にカラー部材を通して係止されることにより、カラー部材を車体に固定する係止ピン等でも良い。
【0064】
更に、上記第1,第2実施形態は、バッテリが搭載されるハイブリット自動車等にも適用可能である。
【0065】
以上、本発明の第1,第2実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1,第2実施形態を組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
10 車両用電池搭載構造
14 バッテリパック(バッテリ)
16 バッテリフレーム
18 バッテリサイドメンバ(筒状フレーム部)
20 バッテリフロントクロスメンバ(筒状フレーム部)
22 バッテリサブクロスメンバ(支持メンバ)
26 バッテリアンダーメンバ(支持メンバ)
28 取付部
36 カラー部材
38 フロアパネル(車体)
44 車体固定用ボルト(固定部材)
44A 頭部(係合部)
48 結合ブラケット
48C カバー部
56 切欠き部(挿入部)
60 車両用電池搭載構造
62 取付部
68 カラー部材
72 車体固定用ボルト(固定部材)
72A 頭部(係合部)
80 カバー部
86 挿入孔(挿入部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上下方向から見てバッテリの外周に配置される筒状フレーム部を有し、該バッテリを車両の床下で支持するバッテリフレームと、
前記筒状フレーム部の取付部に設けられ、該取付部を車両上下方向に貫通すると共に、車両上下方向上側の端部が車体まで延びるカラー部材と、
前記カラー部材内に設けられ、該カラー部材と共に前記バッテリフレームを前記車体に固定する固定部材と、
を備える車両用電池搭載構造。
【請求項2】
前記バッテリフレームが、前記筒状フレーム部と交差する方向に延びて前記取付部に結合されると共に前記バッテリを車両上下方向下側から支持する支持メンバを有する請求項1記載の車両用電池搭載構造。
【請求項3】
前記固定部材が、前記取付部から車両上下方向下側へ突出する前記カラー部材の車両上下方向下側の端部に係合される係合部を有し、
前記取付部と前記支持メンバとの結合部には、前記係合部の側面を覆うカバー部が設けられている請求項2に記載の車両用電池搭載構造。
【請求項4】
前記カバー部には、前記固定部材を車両上下方向に挿入させるための挿入部が設けられている請求項3に記載の車両用電池搭載構造。
【請求項5】
前記取付部と前記支持メンバとに跨って取り付けられ、該取付部及び該支持メンバの各々に接合される結合ブラケットを備え、
前記カバー部が、前記結合ブラケットに設けられている請求項3又は請求項4に記載の車両用電池搭載構造。
【請求項6】
前記支持メンバには、車両上下方向下側から前記取付部に結合される前記カバー部が設けられている請求項3又は請求項4に記載の車両用電池搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−71764(P2012−71764A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219404(P2010−219404)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】