説明

車両用高電圧部品の水流入防止装置

【課題】高電圧部品の冷却のための空気吸入口に水が流入した場合でも、水が高電圧部品側に流入することを防止した車両用高電圧部品の水流入防止装置を提供する。
【解決手段】車両室内のパネル41に設置されて空気を吸入するグリル10と、グリル10の下方に設けられ、グリル10を通じて水が流入した場合に、水が上面を伝って流れ落ちる形状に形成された隔膜20と、隔膜20の下方に、内側から外側に傾斜して空気の流通自在に設けられ、上部から落ちる水を受けることができる水受け部31と、水受け部31を通じて水が外部に排出されるようにするダクト30とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用高電圧部品の水流入防止装置に係り、より詳しくは、高電圧部品の冷却空気吸入のためのグリルに水が流入した場合であっても、水が高電圧部品側に流入するのを防止した車両用高電圧部品の水流入防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や燃料電池自動車は、ハイブリッド自動車を含め、車両を駆動する電気エネルギーを供給するために高電圧バッテリーを使用する。
このような高電圧バッテリーは、複数の単位電池又はモジュールを連結して高電圧バッテリーパックを構成し、これを利用して高電圧の電力を発生させる。
【0003】
前記した高電圧バッテリーシステムは、複数の単位装置が一つに組み立てられた統合構造物が構成される。バッテリー関連システムの単位装置として、バッテリー、LDC、MCU、インバーターなどを挙げることができる。
【0004】
すなわち、高電圧バッテリーに保存されたエネルギーを、インバーターを通じてモータに伝達して車両の始動、加速、エンジン高効率点運行などに使用し、エンジンで余剰エネルギーが発生した場合はモータを発電機として利用し、回生した余剰エネルギーを高電圧バッテリーに保存する。
このような高電圧バッテリーは、使用電流量が大きいため内部で発生する熱量も多いので、高電圧バッテリーを使用する車両には、高電圧バッテリー及び電装品を冷却するための冷却装置が設けられる。
【0005】
図1は、従来技術による空冷システムの構造を示した斜視図である。
図1に示すように、車両のリアパッケージトレイ1に設置された吸入口2を通じて吸入された空気が、強制通風されてバッテリー関連部品の冷却がなされる。
しかし、従来の車両は、吸入口2の位置が、搭乗者が容易に近付くことができる位置に設置されているにもかかわらず、吸入口2から液状物質が流入した時にこれを防止する措置が講じられていない(例えば特許文献1を参照)。
【0006】
故意又は過失によって水又は飲料などの液体が吸入口2に流入した場合に、液体が高電圧部品に流れ込む可能性があり、これによって、高電圧部品に致命的な故障が起きるだけでなく、漏電及び火事発生の危険が高くなって車両の安全性が著しく阻害される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開第2009−87646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであって、高電圧部品の冷却のための空気吸入口(グリル)に水が流入した場合でも、水が高電圧部品側に流入することを防止する車両用高電圧部品の水流入防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するためになされた本発明の車両用高電圧部品の水流入防止装置は、車両室内のパネルに設けられ空気を吸入するグリルと、グリルの下方に設けられ、グリルを通じて水が流入した場合に、水が上面を伝って流れ落ちる形状に形成された隔膜と、隔膜の下方に、内側から外側に傾斜して空気の流通自在に設けられ、上部から落ちる水を受けることができる水受け部と、水受け部を通じて水が外部に排出されるようにするダクトと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、隔膜が中央を中心にして周縁側に向けて緩やかな下向き曲線を形成することを特徴とする。
また本発明は、水受け部には、水が排出される排出孔が形成される。
【0011】
また本発明は、水受け部が、隔膜の周縁部に沿って、その下方に設けられることを特徴とする。
また本発明は、水受け部に、内側から外側に下向きに傾く傾斜が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、グリル内部に水が流入した場合に、隔膜によって水が水受け部の上に落ち、ダクト外部に排出される。よって、水が高電圧部品側に流入するのが防止されるので、高電圧部品の漏電及び火事発生の危険が低減され、安全性を改善する効果がある。
【0013】
更に、水受け部が外側に向け下向きに傾斜して形成され、水受け部に排出孔が形成されていることで、水受け部の上に流れ落ちた水がダクト内部に流入するのを更に確実に防止して、水の流入による高電圧部品の故障要因を更に低減させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来技術による空冷システムの構造を示した斜視図である。
【図2】本発明による水流入防止装置の構成を示した分解斜視図である。
【図3】本発明による水流入防止装置の結合構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図2は、本発明による水流入防止装置の構成を示した分解斜視図であり、図3は、本発明による水流入防止装置の結合構造を示した断面図である。
図2、3に示すように、本発明の車両用高電圧部品の水流入防止装置は、主としてグリル10、隔膜20及びダクト30を含んで構成される。
【0016】
グリル10は、上部の一部が車両の室内側パネルに突き出された状態で設置されたものであり、グリル10を通じて空気が吸入される。
ここで、グリル10は車両の室内後方に設置されたリアパッケージトレイのトリム40に設置された例を示すが、これは本発明を実施するための望ましい例示に過ぎず、高電圧バッテリー及び電装品の設置位置によって適切に変更することができる。
【0017】
グリル10は、中央が上部に膨らんだ形状に形成され、上面に空気を通過させ異物を取り除くための格子形態に形成された複数の通孔11が設けられる。
通孔11は、異物を取り除くことができる程度の大きさに形成され、形状は格子形態以外にも多様に変更して形成することができる。
【0018】
隔膜20は、グリル10の下方に設けられ、グリル10から流入した水が、隔膜20の上面を伝って下方に流れる形状に形成される。隔膜20は、上面中央に突起が突設され、突起がグリル10の下面中央に固定され、グリル10と一体化された形状に形成される。
【0019】
ダクト30が、隔膜20の下方に空気の流通が可能な形状に設けられる。ダクト30に、上部から流れ落ちる水を受けることができるように水受け部31が外側に傾斜して形成され、水が水受け部31を通じて外部に排出される。
ここで、ダクト30の上端は、グリル10下端に固定できる。また、ダクト30の下部はリアパッケージトレイの車体部分41を貫通し、水受け部31の底面がリアパッケージトレイの車体部分41に定着して装着ができる。
【0020】
ここで、水受け部31が装着されるリアパッケージトレイの車体部分41は、上部に向けて折曲して形成され、ダクト30を強固に固定すると共に、水受け部31から落ちた水がダクト30内部に流入するのを防止する。
ダクト30は、パッケージトレイのダクトに適用することができるだけでなく、このほかにインレットダクトにも適用することができる。
【0021】
ダクト30の一部には、図示しないファンが設置されてグリル10を通じてダクト30内部に空気が流入する。
グリル10に形成された通孔11を通じて流入した空気は、グリル10と隔膜20との間に造成された空間を通過し、続いて隔膜20とダクト30との間に造成された空間を通過してダクト30内部に流入し、高電圧部品を冷却する。
【0022】
一方、グリル10に形成された通孔11に水が流入すると、この水は隔膜20の上面に落ちて下部に流れ落ちる。この時、水が落ちる隔膜20下部には水受け部31が設けられているるので、水受け部31上に落ちた水はダクト30の外部に排出され、水が高電圧部品側に流入するのが防止される。
【0023】
隔膜20は中央を中心に上方に膨らみ、周縁に向けて緩やかな下向き曲線になるように形成される。従って、隔膜20上に落ちた水は、隔膜20の周縁に向けて円滑に流れ落ちる。
【0024】
水受け部31には水を排出する排出孔32が形成される。すなわち、水受け部31の下縁に沿って複数の排出孔32が形成される。排出孔32は、リアパッケージトレイの車体部分41の上部側に位置し、排出孔32を通じて排出される水がリアパッケージトレイの車体部分41に落ちて外部に排出される。
【0025】
また、水受け部31は、隔膜20の周縁に沿って、隔膜20の下方向に設けられる。すなわち、隔膜20の周縁部の下方に水受け部31が設置されるので、隔膜20に落ちた水は、どの位置で落ちた水も水受け部31に受けることができる。
水受け部31は、内側から外側に下向きに傾斜して形成されるので、水受け部31に落ちた水がダクト30外部に確実に排出され、ダクト30の内側への流入するのが防止される。
【0026】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0027】
10 グリル
11 通孔
20 隔膜
30 ダクト
31 水受け部
32 排出孔
40 リアパッケージトレイのトリム
41 リアパッケージトレイの車体部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内のパネルに設置されて空気を吸入するグリル(10)と、
前記グリル(10)の下方に設けられ、前記グリル(10)を通じて水が流入した場合に、水が上面を伝って流れ落ちる形状に形成された隔膜(20)と、
前記隔膜(20)の下方に、内側から外側に傾斜して空気の流通自在に設けられ、上部から落ちる水を受けることができる水受け部(31)と、
前記水受け部(31)を通じて水が外部に排出されるようにするダクト(30)と、
を含むことを特徴とする車両用高電圧部品の水流入防止装置。
【請求項2】
前記隔膜(20)は中央を中心にして周縁側に向けて緩やかな下向き曲線を形成することを特徴とする請求項1に記載の車両用高電圧部品の水流入防止装置。
【請求項3】
前記水受け部(31)には、水が排出される排出孔(32)が形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用高電圧部品の水流入防止装置。
【請求項4】
前記水受け部(31)は、前記隔膜(20)の周縁部に沿って、その下方に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用高電圧部品の水流入防止装置。
【請求項5】
前記水受け部(31)に、内側から外側に下向きに傾く傾斜が形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用高電圧部品の水流入防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71728(P2013−71728A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247450(P2011−247450)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】