説明

車両盗難防止装置

【課題】駐車車両におけるセキュリティレベルをより一層向上させることができる車両盗難防止装置を提供する。
【解決手段】車両盗難防止装置3は、制御部18と、車両の近傍に存在する近接者を検知するための近接者検知信号を制御部18に出力する人体検知センサ12と、車外から目視可能な位置に設置されたカメラ13と、制御部18によって制御されカメラ13を近接者に追従させるカメラ駆動部14とを備えている。制御部18は、車両のユーザでない近接者を検知すると、カメラ駆動部14を駆動して、カメラ13を近接者に追従させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の盗難や車両に対する悪戯を抑制する車両盗難防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の盗難を防止するために、例えば特許文献1に記載の車両盗難防止装置が提案されている。この車両盗難防止装置は、ユーザ(車両の所有者)が携帯する携帯機と車両との間のIDコード(識別コード)照合の結果に応じて車両ドアの解錠・施錠を行うドア施解錠自動許可機能を備えている。そして、携帯機が盗難に遭ったり紛失したりした場合に、ユーザがその携帯機を紛失したことを車両盗難防止装置に登録する。その後、紛失したとして車両盗難防止装置に登録された携帯機が不正使用されると、車両盗難防止装置は、車載のカメラにて携帯機を不正使用した人物(不審者)を撮影し、その画像を警備会社に送信する。
【特許文献1】特開2002−364221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般的に、車載のカメラは目立たないところに設置されている。そのため、不審者は自身がカメラで撮影されていることに気づかず、車両の盗難や車両に対する悪戯を続行することが多い。即ち、車両の盗難や車両に対する悪戯といった不正な行為自体を抑制させることが困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、駐車車両におけるセキュリティレベルをより一層向上させることができる車両盗難防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、車両の近傍に存在する近接者を検知するための検知信号を出力する近接者検知手段と、車外から目視可能となるように前記車両に設置され車外を撮影する撮影手段と、前記撮影手段を前記近接者に追従させる追従手段と、前記検知信号に基づいて前記近接者を検知し、前記検知信号に応じて前記撮影手段による前記近接者の撮影及び前記撮影手段の前記近接者に対する追従を開始させる制御手段とを備えたことを特徴とする車両盗難防止装置とした。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両盗難防止装置において、前記制御手段が出力する通報信号に基づいて前記撮影手段にて撮影した画像を緊急連絡先の通信端末に送信する通報手段を備えた。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両盗難防止装置において、前記制御手段は、前記検知信号が入力されてから所定時間経過後に、前記通報信号を出力する。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両盗難防止装置において、前記近接者検知手段は、外部から前記車両のドアを開閉するために設けられたドアハンドルに対する前記近接者の接触を検知するために前記ドアハンドルに備えられた接触検知手段である。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両盗難防止装置において、前記接触検知手段は、複数の前記ドアハンドルのうち少なくとも2つに備えられ、前記制御手段は、前記検知信号が入力されると、該検知信号を出力した前記接触検知手段を有する前記ドアハンドルの方を前記撮影手段が向くように前記追従手段を制御する。
【0009】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、車外から目視可能な位置に撮影手段が設置されている。そのため、車両に対して不正な行為(盗難、悪戯等)をしようとする近接者(車両の近傍に存在する人の他、車両に接触している人も含む)においては、撮影手段が設けられていることを認識することにより、その行為をしようという意欲が減衰される。また、撮影手段が近接者に追従されるため、近接者には自分が監視されているという意識が働く。その結果、車両に対する不正な行為をしようとする近接者において、その意欲がより減衰される。従って、近接者による車両の盗難や車両に対する悪戯といった不正な行為自体を抑制させることができる。その結果、駐車車両におけるセキュリティレベルをより一層向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、撮影手段によって撮影された画像は、通報手段によって外部機器に送信される。従って、例えば、外部機器としてユーザ(車両の所有者)やセキュリティ機関等の通信端末に画像が送信されると、近接者が車両に対していつ何をしたのかをユーザが把握可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、制御手段は、検知信号が入力されてから所定時間経過後に通報信号を出力する。即ち、通報手段は、近接者が検知されてから所定時間経過後に画像を外部機器に送信する。そのため、例えば、車両に対する不正な行為をする意志のない近接者(車両の近傍を通りがかっただけの人等)の画像を外部機器に送信してしまうことが抑制される。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、近接者検知手段は、車両のドアハンドルに設けられ、該ドアハンドルに対する近接者の接触を検知する接触検知手段である。従って、近接者がドアハンドルに接触しなければ検知信号が出力されないため、車両に対して不正な行為をしようとしている近接者のみを撮影し易い。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、検知信号を出力した接触検知手段を有するドアハンドルから撮影手段による撮影が開始される。従って、盗難等を目的として車内に乗り込もうとする近接者の行為が確実に撮影される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、駐車車両におけるセキュリティレベルがより一層向上される車両盗難防止装置を提供するこができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明をドア施解錠自動許可機能を備える車両に搭載された車両盗難防止システムに具体化した第1実施形態を図1乃至図3に従って説明する。
【0016】
図1に示すように、車両盗難防止システム1は、携帯機2と、車両に搭載された車両盗難防止装置3とを備えている。携帯機2は、ユーザ(車両の所有者)によって所持され、車両盗難防止装置3から送信されるリクエスト信号を受信すると、携帯機毎に予め設定されたIDコードを含むID信号を送信する。
【0017】
車両盗難防止装置3は、送受信回路11、人体検知センサ12、カメラ13、カメラ駆動部14、カメラ用ランプ15、通報部16、ヘッドライト駆動部17、及び制御部18を備えている。この車両盗難防止装置3には、車載のバッテリ(図示略)から電力が供給される。
【0018】
送受信回路11は、制御部18から入力されるリクエスト信号を所定の周波数に変調して、送受信アンテナ11aを介して送信する。また、送受信回路11は、リクエスト信号に対する応答として携帯機2から送信されるID信号を送受信アンテナ11aを介して受信可能となっている。そして、送受信回路11は、ID信号を受信すると、同ID信号をパルス信号に復調して制御部18に出力する。
【0019】
図2に示すように、近接者検知手段としての人体検知センサ12は、車両21の近傍に存在するに近接者を検知するためのものである。人体検知センサ12は、例えば、高周波発振形近接式センサであり、近接者の存在を検知すると共に、近接者の位置をも検知することができるように配設されている。この人体検知センサ12は、近接者の存在及び位置を検知することができるように作動する1つのセンサから構成されてもよいし、近接者の存在及び位置を検知可能に配設された複数のセンサから構成されてもよい。このような人体検知センサ12は、制御部18に電気的に接続されており、車両21の周囲の領域A内に人が進入すると制御部18に検知信号としての近接者検知信号を出力する。即ち、本実施形態では、人体検知センサ12によって人体の検知を可能な領域Aが車両21の近傍であり、領域A内に存在する人が近接者となる。
【0020】
撮影手段としてのカメラ13は、車内において、車外から目視可能な位置に設置されている。例えば、本実施形態では、カメラ13は、車両21の天井部22の前端部略中央(ルームミラー23の近傍)に設置されている。カメラ13は、例えばCCDカメラである。そして、図1に示すように、カメラ13は、制御部18に電気的に接続されている。
【0021】
カメラ13には該カメラ13を上下方向及び左右方向に回動させるカメラ駆動部14が接続されている。カメラ駆動部14は、例えば、カメラ13を上下方向に回動させるモータ(図示略)と、カメラ13を左右方向に回動させるモータ(図示略)とから構成されている。このカメラ駆動部14は、制御部18に電気的に接続されている。そして、カメラ駆動部14は、制御部18によって、車両21のユーザでない近接者が領域A内に存在する時以外は、カメラ13を静止させるように制御されている。このカメラ駆動部14は、人体検知センサ12と共に追従手段を構成する。
【0022】
カメラ用ランプ15は、カメラ13を照射可能な位置に設置されている。本実施形態では、カメラ用ランプ15は、車内において、車両21の天井部22の前端部略中央(ルームミラー23及びカメラ13の近傍)に設置されている(図2参照)。そして、カメラ用ランプ15は、制御部18に電気的に接続されている。
【0023】
通報手段としての通報部16は、外部機器との間でネットワーク通信を行うものである。通報部16は、外部機器として例えばユーザの通信端末(パーソナルコンピュータ、携帯電話等)31や、セキュリティ機関(警察、警備会社等)の通信端末32との間で、ネットワークNを介した通信が可能である。ここで用いるネットワーク通信としては、無線通信であれば広く普及しているインターネット通信の他に、無線LAN通信(IEEE802.11b等)、赤外線通信、ブルートゥース(R)等があり、或いはこの主の無線通信に限らず有線通信を採用してもよい。この通報部16は、制御部18から入力される通報信号に基づいて、ユーザの通信端末31やセキュリティ機関の通信端末32にカメラ13にて撮影した画像を送信する。送信する画像は、動画であってもよいし、1枚の静止画像であってもよい。
【0024】
ヘッドライト駆動部17は、制御部18に電気的に接続されている。そして、ヘッドライト駆動部17は、制御部18から入力される駆動信号に基づいてヘッドライト24(図2参照)を点灯させる。
【0025】
制御手段としての制御部18は、図示しないCPU(Central Processing Unit )、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等からなるCPUユニットであり、メモリ18a及びタイマ回路18bを備えている。このメモリ18aには、対応する携帯機2のIDコードと同一のIDコード(自動車側のIDコード)が記憶されている。
【0026】
制御部18は、車両21が駐車されている状態において、前記人体検知センサ12から近接者検知信号が入力されると、該近接者検知信号に基づいて領域A内に近接者が存在することを検知すると共に、近接者の位置を検知する。また、制御部18は、近接者検知信号が入力されると、ID信号の返信を要求する旨のリクエスト信号を前記送受信回路11に出力する。制御部18は、ID信号が入力されると、ID信号中のIDコードと、メモリ18aに予め記録されたIDコードとを比較する。即ち、制御部18は、IDコード照合を実行する。両IDコードが一致することによりID照合が成立した場合、制御部18は、ドアロックアクチュエータ(図示略)を作動させて車両21のドアの施錠・解錠を行う。
【0027】
一方、制御部18は、IDコード照合が不成立の場合、若しくはリクエスト信号を出力したにもかかわらずID信号が入力されない場合には、カメラ用ランプ15を点灯させると共に、カメラ13による撮影を開始する。同時に、制御部18は、人体検知センサ12から出力される近接者検知信号に基づいて近接者の位置を検知し、検知した近接者の位置に基づいて前記カメラ駆動部14を駆動し、カメラ13を近接者に追従させる。尚、カメラ13にて撮影された画像は、RAMに記憶される。
【0028】
また、制御部18は、近接者検知信号が入力されると、所定時間t1経過後に通報部16に通報信号を出力すると共に、ヘッドライト駆動部17に駆動信号を出力する。所定時間t1の計測は、前記タイマ回路18bによって行われる。ここで、所定時間t1とは、車両21の近傍を通りがかった人が、領域Aに進入してから通り抜けるまでにかかる平均的な時間であって、例えば20秒に設定される。即ち、制御部47は、所定時間t1経過しても車両21の近傍に存在する近接者は、車両21の近傍を通りがかっただけでなく車両21に対して不正な行為を行う意志がある者であると判断し、通報信号を出力する。通報部16は、制御部18から出力された通報信号に基づいて、カメラ13にて撮影した画像、即ち近接者を捉えた画像をユーザの通信端末31やセキュリティ機関の通信端末32に送信する。また、制御部18は駆動信号を出力し、ヘッドライト駆動部17によってヘッドライト24を点灯させる。これにより、カメラ13による追従を開始してもまだ車両21の傍から離れない(領域A内に存在する)近接者に対して威嚇を行う。
【0029】
次に、車両21が駐車されている状態において、車両盗難防止装置3が行う処理を図3に基づき総括的に説明する。図3に、車両盗難防止装置3が行う処理のフローチャートを示す。
【0030】
ステップS1において、制御部18は、人体検知センサ12から近接者検知信号が入力されているか否かを判定する。即ち、領域A内に近接者が存在するか否かを判定する。人体検知センサ12から近接者検知信号が入力されていない場合には、同ステップS1を繰り返す。一方、ステップS1において、人体検知センサ12から近接者検知信号が入力されている、即ち領域A内に近接者が存在する場合には、制御部18は、ステップS2に進む。
【0031】
ステップS2において、制御部18は、IDコード照合が成立しているか否かを判定する。即ち、制御部18は、領域A内に存在する近接者が車両21のユーザであるか否かを判定する。IDコード照合が成立している場合、即ち領域A内に存在する近接者が車両21のユーザである場合には、制御部18は処理を終了する。
【0032】
一方、ステップS2において、IDコード照合が不成立の場合(リクエスト信号を送信したにもかかわらずID信号が入力されない場合を含む)、即ち領域A内に存在する近接者が車両21のユーザでない場合には、制御部18は、ステップS3に進む。ステップS3において、制御部18は、カメラ用ランプ15を点灯させると共に、カメラ13による撮影を開始する。また同時に、カメラ13を近接者に追従させてステップS4に進む。
【0033】
ステップS4において、制御部18は、領域A内に近接者の存在を検知してから所定時間t1が経過したか否かを判定する。領域A内に近接者の存在を検知してから所定時間t1が経過していない場合には、制御部18は、ステップS4を繰り返す。
【0034】
一方、ステップS4において、領域A内に近接者の存在を検知してから所定時間t1が経過している場合には、制御部18は、ステップS5に進む。ステップS5において、
制御部18は、通報部16に通報信号を出力し、カメラ13にて撮影した画像を通報部16からユーザの通信端末31やセキュリティ機関の通信端末32に送信させる。また同時に、制御部18は、ヘッドライト駆動部17に駆動信号を出力し、ヘッドライト24を点灯させて近接者に対する威嚇を行って処理を終了する。
【0035】
尚、ステップS2〜S5の間中、制御部18は、人体検知センサ12から近接者検知信号が入力されているか否かを判定しており、処理の途中で近接者検出信号が入力されなくなった場合には、ステップS1に戻る。
【0036】
上記したように、本実施形態によれば、以下の作用・効果を有する。
(1)車外から目視可能な位置にカメラ13が設置されている。そのため、車両21に対して不正な行為(盗難、悪戯等)をしようとする近接者においては、カメラ13が設けられていることを認識することにより、その行為をしようという意欲が減衰される。また、近接者(車両21のユーザでない)が領域A内に進入するまで静止していたカメラ13が、近接者が領域A内に進入することにより、近接者に対して追従するように動かされるため、近接者には自分が監視されているという意識が働く。このように、当該近接者が不正な行為をしようとしていた場合には、その意欲がより減衰され、近接者における車両の盗難や車両に対する悪戯といった不正な行為自体を抑制させることができる。その結果、駐車車両におけるセキュリティレベルとより一層向上させることができる。
【0037】
(2)カメラ13によって撮影された画像は、通報部16によってユーザの通信端末31やセキュリティ機関の通信端末32に送信される。従って、ユーザは、近接者が車両21に対していつ何をしたのかを把握することができる。また、カメラ13によって撮影された画像は、制御部18のRAMに記憶されているため、車両21に対して不正な行為を行った近接者に対して制裁を加える際に、その画像を証拠として利用することができる。
【0038】
(3)制御部18は、近接者検知信号が入力されてから所定時間t1経過後に通報信号を出力する。即ち、通報部16は、近接者が検知されてから所定時間t1経過後に画像をユーザの通信端末31やセキュリティ機関の通信端末32に送信する。そのため、例えば、車両21に対する不正な行為をする意志のない近接者(車両21の近傍を通りがかっただけの人等)の画像をユーザの通信端末31やセキュリティ機関の通信端末32に送信してしまうことが抑制される。その結果、車両21のユーザに無用な心配をさせることを防止することができる。また、車両盗難防止装置3の省電力化を図ることができる。
【0039】
(4)カメラ用ランプ15によってカメラ13が照射されるため、近接者の注意がカメラ13に向けられ易くなる。従って、より確実にカメラ13が設けられていることを近接者に認識させることができる。
【0040】
(5)車両盗難防止装置3は、まず、車両21にカメラ13が設けられていることを認識させることによって近接者に対する威嚇を行っている。また、車両盗難防止装置3は、カメラ13を追従させることにより近接者に対して更なる威嚇を行っている。そして、カメラ13が設けられていることを認識すると共にカメラ13を追従されてもまだ車両21の近傍に存在する近接者に対して、ヘッドライト24による威嚇を行っている。このように、段階的に近接者に対して威嚇を行うと、最初からヘッドライト24を点灯させて威嚇を行う場合よりも省電力化を図ることができる。
【0041】
(第2実施形態)
以下、本発明をドア施解錠自動許可機能を備える車両に搭載された車両盗難防止システムに具体化した第2実施形態を図4乃至図6に従って説明する。尚、上記第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図4に示すように、本第2実施形態の車両盗難防止システム41は、上記第1実施形態と同様の携帯機2と、車両に搭載された車両盗難防止装置42とを備えている。
車両盗難防止装置42は、上記第1実施形態の車両盗難防止装置3の構成に、ドア施解錠自動許可機能に利用される4つのタッチセンサ43〜46(接触検知手段)を加えて構成されている。詳しくは、図5に示すように、車両21は、該車両21の左右両側にそれぞれ2つずつ計4つのドア53〜56を備えている。そして、各ドア53〜56の車両21外側の側面には、外部からドア53〜56を開閉する際にユーザによって握って操作されるドアハンドル63〜66が設けられている。各ドアハンドル63〜66には、前記タッチセンサ43〜46がそれぞれ内蔵されている。このタッチセンサ43〜46は、ドアハンドル63〜66に対する接触の有無を検知するためのものである。図4に示すように、タッチセンサ43〜46は、制御部47に電気的に接続されており、ドアハンドル63〜66に対する接触を検知すると制御部47に検知信号としての接触検知信号を出力する。制御部47は、いずれのタッチセンサ43〜46から接触検知信号が入力されたのかを識別可能となっている。尚、本第2実施形態では、タッチセンサ43〜46が近接者検知手段を構成し、カメラ駆動部14及び人体検知センサ12が追従手段を構成する。
【0043】
本第2実施形態の制御部47は、車両21が駐車された状態において、人体検知センサ12から近接者検知信号が入力されると、該近接者検知信号に基づいて領域A内に近接者が存在することを検知する。また、制御部47は、近接者検知信号が入力されると、ID信号の返信を要求する旨のリクエスト信号を前記送受信回路11に出力する。制御部18は、ID信号が入力されると、IDコード照合を実行する。IDコード照合が成立した場合において、タッチセンサ43〜46のいずれかから接触検知信号が入力されると制御部47は、ドアロックアクチュエータ(図示略)を作動させて車両21のドア53〜56を解錠させる。
【0044】
一方、IDコード照合が不成立の場合、若しくはリクエスト信号を出力したにもかかわらずID信号が入力されない場合において、タッチセンサ43〜46のいずれかから接触検知信号が入力されると、制御部47は、車両21のユーザでない近接者が車両21に対して不正な行為(盗難、悪戯等)を行おうとしたと判断する。そして、制御部47は、カメラ用ランプ15を点灯させると共に、カメラ13による撮影を開始する。この時、制御部47は、接触検知信号を出力したタッチセンサ43〜46が内蔵されたドアハンドル63〜66の方にカメラ13が向くように、カメラ駆動部14を制御する。例えば、ドアハンドル63に内蔵されたタッチセンサ43から接触検知信号が入力された場合には、制御部47は、カメラ駆動部14を制御してカメラ13をドアハンドル63の方に向ける。これにより、ユーザでない近接者が接触したドアハンドル63〜66から撮影が開始される。以後、制御部18は、人体検知センサ12から出力される近接者検知信号に基づいて近接者の位置を検知し、検知した近接者の位置に基づいて前記カメラ駆動部14を駆動してカメラ13を近接者に追従させる。その後、制御部47は、近接者検知信号が入力されてから所定時間t1経過後に通報部16に通報信号を出力すると共に、ヘッドライト駆動部17に駆動信号を出力する。
【0045】
次に、車両21が駐車されている状態において、車両盗難防止装置42が行う処理を図6に基づき総括的に説明する。図6に、車両盗難防止装置3が行う処理のフローチャートを示す。
【0046】
ステップS101において、制御部47は、人体検知センサ12から近接者検知信号が入力されているか否かを判定する。即ち、領域A内に近接者が存在するか否かを判定する。人体検知センサ12から近接者検知信号が入力されていない場合には、同ステップS101を繰り返す。一方、ステップS101において、人体検知センサ12から近接者検知信号が入力されている、即ち領域A内に近接者が存在する場合には、制御部47は、ステップS102に進む。ステップS102において、制御部47は、タッチセンサ43〜46を作動させてステップS103に進む。
【0047】
ステップS103において、制御部47は、IDコード照合が成立しているか否かを判定する。即ち、制御部47は、領域A内に存在する近接者が車両21のユーザであるか否かを判定する。IDコード照合が成立している場合、即ち領域A内に存在する近接者が車両21のユーザである場合には、制御部47は、処理を終了する。
【0048】
一方、ステップS103において、IDコード照合が不成立の場合(リクエスト信号を送信したにもかかわらずID信号が入力されない場合を含む)、即ち、領域A内に存在する近接者が車両21のユーザでない場合には、制御部47は、ステップS104に進む。
【0049】
ステップS104において、制御部47は、タッチセンサ43〜46から接触検知信号が入力されたか否かを判定する。即ち、領域A内に存在する近接者が車両21のドアハンドル63〜66を握ったか否かを判定する。タッチセンサ43〜46のいずれからも接触検知信号が入力されていない場合には、制御部47は、ステップS105に進む。
【0050】
ステップS105において、制御部47は、まだ人体検知センサ12から近接者検知信号が入力されているか否かを判定する。近接者検知信号が入力されている場合には、制御部47は、ステップS104に戻る。ステップS105において、近接者検知信号が入力されていない場合には、制御部47は、処理を終了する。
【0051】
一方、ステップS104において、タッチセンサ43〜46のいずれかから接触検知信号が入力された場合には、制御部47は、ステップS106に進む。ステップS106において、制御部47は、カメラ用ランプ15を点灯させると共に、カメラ駆動部14を駆動して接触検知信号を出力したタッチセンサ43〜46が設けられたドアハンドル63〜66にカメラ13を向けてカメラ13による撮影を開始する。また同時に、制御部47は、カメラ駆動部14によってカメラ13を近接者に追従させてステップS107に進む。
【0052】
ステップS107において、制御部47は、領域A内に近接者の存在を検知してから所定時間t1が経過したか否かを判定する。領域A内に近接者の存在を検知してから所定時間t1が経過していない場合には、制御部47は、ステップS107を繰り返す。
【0053】
一方、ステップS107において、領域A内に近接者の存在を検知してから所定時間t1が経過している場合には、制御部47は、ステップS108に進む。ステップS108において、制御部47は、通報部16に通報信号を出力し、カメラ13にて撮影した画像を通報部16からユーザの通信端末31やセキュリティ機関の通信端末32に送信させる。また同時に、制御部47は、ヘッドライト駆動部17に駆動信号を出力し、ヘッドライト24を点灯させて近接者に対する威嚇を行って処理を終了する。
【0054】
上記したように、本第2実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)乃至(5)の作用・効果に加えて以下の作用・効果を有する。
(1)近接者がドアハンドル63〜66を握らなければ、接触検知信号が出力されず、カメラ13による撮影、及びカメラ13の近接者に対する追従が開始されない。従って、車両21に対して不正な行為をしようとしている近接者のみを撮影することができる。即ち、駐車場等で隣の車両に乗車しようとしている人等を撮影することを防止することができる。
【0055】
(2)カメラ13による撮影は、接触検知信号を出力したタッチセンサ43〜46が内蔵されたドアハンドル63〜66から撮影するように始められる。従って、盗難等を目的として車内に乗り込もうとする近接者の行為を確実に撮影することができる。
【0056】
(3)制御部47は、ドア施解錠自動許可機能に使用されるタッチセンサ43〜46から出力される接触検知信号を利用して、カメラ13による撮影及びカメラ13の近接者に対する追従を開始させている。従って、カメラ13による撮影及びカメラ13の近接者に対する追従を開始させるために別途センサを設ける必要がなく、部品点数の増加を抑えて製造コストを低減させることができる。
【0057】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
○上記各実施形態では、ヘッドライト24にて近接者に対する威嚇を行っているが、ハザードランプ、ルームランプ、ホーン等により威嚇を行ってもよい。
【0058】
○上記各実施形態におけるカメラ用ランプ15は、周囲の明るさの状態に応じて点灯されるようにしてもよい。例えば、従来、照度センサによって周囲の明るさを検出し、照度センサにより検出される明るさが所定のしきい値以下になると、自動でヘッドライトが点灯されるものがある。これに用いられる照度センサを用いて、カメラ用ランプ15も、周囲の明るさが所定のしきい値以下である時のみ点灯されるようにしてもよい。このように構成すると、省電力化を図ることができる。
【0059】
○上記各実施形態におけるカメラ用ランプ15は、ルームランプで代用してもよい。このように構成すると、部品点数を減らして製造コストを低減させることができる。
○カメラ13の撮影範囲を照らすライトを設けてもよい。このように構成すると、夜間であっても近接者を明瞭に撮影することができる。また、このライトにより、近接者を威嚇することができる。
【0060】
○上記第1実施形態では、人体検知センサ12によって近接者の検知が行われる領域A内に車両21のユーザでない近接者を検知すると、制御部18は、カメラ13による撮影及びカメラ13の近接者に対する追従を開始する。また、第2実施形態では、車両21のユーザでない近接者が車両21のドアハンドル63〜66のいずれかに接触すると、制御部47は、カメラ13による撮影及びカメラ13の近接者に対する追従を開始する。しかしながらこれらに限らず、領域A内に車両21のユーザでない近接者を検知してから所定時間t2経過後に、カメラ13による撮影及びカメラ13の近接者に対する追従が開始されるように構成してもよい。ここで、所定時間t2とは、車両21の近傍を通りがかった人が、領域Aに進入してから通り抜けるまでにかかる平均的な時間であって、例えば20秒に設定される。このように構成すると、車両21に対する不正な行為をする意志のない近接者(車両21の近傍を通りがかっただけの人等)を撮影したり、カメラ13にて追従したりすることを防止することができる。
【0061】
○上記第1実施形態では、制御部47は、ステップS105において、近接者検知信号が入力されていない場合には処理を終了しているが、ステップS101に戻ってもよい。
○上記第2実施形態では、制御部47は、接触検知信号を出力したタッチセンサ43〜46を内蔵したドアハンドル63〜66からカメラ13による撮影を行っているが、これに限らない。例えば、制御部47は、接触検知信号が入力されると、カメラ13による撮影を開始すると共に、近接者検知信号に基づいて近接者の位置を検知し、検知した位置に基づいてカメラ13を近接者に追従させてもよい。
【0062】
○上記第2実施形態では、制御部47は、人体検知センサ12が出力する近接者検知信号によって近接者を検知した後にリクエスト信号を出力しているが、これに限らない。例えば、車両21が駐車された状態において、制御部47がリクエスト信号を間欠的に出力すると共に、タッチセンサ43〜46を間欠的に作動させてもよい。そして、IDコード照合が不成立の場合、若しくはIDコード信号が入力されていない場合において、タッチセンサ43〜46から接触検知信号が入力されると、カメラ13による撮影及びカメラ13の近接者に対する追従を開始させるように制御部47を構成する。このように構成した場合、画像処理によって近接者の位置を検知すると、人体検知センサ12を省略することができる。また、振動センサによって車両21の近傍に存在する近接者を検知し、その後タッチセンサ43〜46を作動させるようにしてもよい。
【0063】
○カメラ13は、運転席や助手席のシートのヘッドレストに設置してもよい。この他、カメラ13は、車両21の天井部22の後部側(リヤガラス付近)等、車両21において車外から目視可能な位置に設置されていればよい。尚、カメラ13は、近接者によって破壊されることを防止するために車内に設置されることが望ましい。
【0064】
上記各実施形態から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両盗難防止装置において、前記制御手段は、前記検知信号が入力されてから所定時間経過後に、前記撮影手段による前記近接者の撮影及び前記撮影手段の前記近接者に対する追従を開始することを特徴とする車両盗難防止装置。このように構成すると、制御手段は、検知信号が入力されてから所定時間経過後、即ち近接者が検知されてから所定時間経過後に、撮影手段による近接者の撮影及び撮影手段の近接者に対する追従を開始する。従って、例えば、車両に対する不正な行為をする意志のない近接者(例えば、車両の近傍を通りがかっただけの人)を撮影することを防止することができる。
【0065】
(ロ)請求項1乃至請求項5及び前記(イ)のいずれか1項に記載の車両盗難防止装置において、前記撮影手段を照射する照明手段を備えたことを特徴とする車両盗難防止装置。このように構成すると、撮影手段が照射されるため、撮影手段が設けられていることをより確実に近接者に認識させることができる。
【0066】
(ハ)請求項1乃至請求項5及び前記(イ)(ロ)のいずれか1項に記載の車両盗難防止装置において、車外を照射する発光手段を備え、前記制御手段は、前記通報信号の出力と同時に、前記発行手段を駆動させるための発光駆動信号を出力することを特徴とする車両盗難防止装置。このように構成すると、車両盗難防止装置は、まず、車両に撮影手段が設けられていることを認識させることによって近接者に対する威嚇を行う。また、車両盗難防止装置は、撮影手段を近接者に追従させることにより該近接者に対して更なる威嚇を行う。そして、車両盗難防止装置は、撮影手段が設けられていることを認識すると共に撮影手段によって追従されてもまだ車両の近傍に存在する近接者に対し、発光手段によって視覚を刺激する威嚇を行う。このように、段階的に威嚇を行うと、最初から発光手段による威嚇を行った場合よりも省電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第1実施形態の車両盗難防止装置の電気的構成を示すブロック図。
【図2】人体検知センサによって近接者の検知が行われる領域を示すための車両の平面図。
【図3】第1実施携帯の車両盗難防止装置が行う処理を示すフローチャート。
【図4】第2実施形態の車両盗難防止装置の電気的構成を示すブロック図。
【図5】第2実施形態における車両の平面図。
【図6】第2実施形態の車両盗難防止装置が行う処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0068】
3,42…車両盗難防止装置、12…近接者検知手段、及び追従手段を構成する人体検知センサ、13…撮影手段としてのカメラ、14…追従手段を構成するカメラ駆動部、16…通報手段としての通報部、18,47…制御手段としての制御部、21…車両、31,32…外部機器としての通信端末、43〜46…近接者検知手段及び接触検知手段としてのタッチセンサ、53〜56…ドア、63〜66…ドアハンドル、t1…所定時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の近傍に存在する近接者を検知するための検知信号を出力する近接者検知手段と、
車外から目視可能となるように前記車両に設置され車外を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段を前記近接者に追従させる追従手段と、
前記検知信号に基づいて前記近接者を検知し、前記検知信号に応じて前記撮影手段による前記近接者の撮影及び前記撮影手段の前記近接者に対する追従を開始させる制御手段と
を備えたことを特徴とする車両盗難防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両盗難防止装置において、
前記制御手段が出力する通報信号に基づいて前記撮影手段にて撮影した画像を外部機器に送信する通報手段を備えたことを特徴とする車両盗難防止装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両盗難防止装置において、
前記制御手段は、前記検知信号が入力されてから所定時間経過後に、前記通報信号を出力することを特徴とする車両盗難防止装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の車両盗難防止装置において、
前記近接者検知手段は、外部から前記車両のドアを開閉するために設けられたドアハンドルに対する前記近接者の接触を検知するために前記ドアハンドルに備えられた接触検知手段であることを特徴とする車両盗難防止装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両盗難防止装置において、
前記接触検知手段は、複数の前記ドアハンドルのうち少なくとも2つに備えられ、
前記制御手段は、前記検知信号が入力されると、該検知信号を出力した前記接触検知手段を有する前記ドアハンドルの方を前記撮影手段が向くように前記追従手段を制御することを特徴とする車両盗難防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−168401(P2006−168401A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359756(P2004−359756)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】