説明

車両認識装置、車両、及び車両認識用プログラム

【課題】周辺に複数の車両が存在する場合でも、画像に撮像された複数の車両を区別して、車両を適切に認識することができる車両認識装置、車両、及び車両認識用プログラムを提供する。
【解決手段】車両認識装置10は、撮像手段2を介して取得された画像から、画素値が所定範囲となる画素からなる領域を特徴領域として抽出する特徴領域抽出手段12と、抽出された特徴領域のうち、画像上で水平方向に並んでいる第1及び第2の特徴領域を特定するペアリング手段13と、第1の特徴領域の上下又は第2の特徴領域方向の周辺域で第1の判定領域を設定すると共に、第1及び第2の特徴領域の中心線に対して第1の判定領域と線対称の位置に第2の判定領域を設定する判定領域設定手段14と、第1及び第2の判定領域との相関の度合が高い場合に、第1及び第2の特徴領域が1台の他の車両の画像部分であると判定する特徴領域判定手段15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像手段を介して取得した画像を用いて対象物を認識する装置、車両、及びその装置の処理をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像手段により周辺を撮像し、撮像された画像から周辺に存在する対象物を認識する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この技術により、例えば自車両が走行する道路上及びその周囲に存在する対象物を認識し、その認識結果に応じて、運転者への情報提示や車両の走行制御を行うことが可能となる。
【0003】
特許文献1のストップランプ点灯検出装置では、自車両の前方を撮像したカラー画像から、画素の色情報と輝度情報を用いて点灯ランプを検出する手法を応用して、先行車両のストップランプを検出する。具体的には、この装置では、画像から特定色(ストップランプ色)およびその近似色が一定画素数以上連続する領域を抽出して、この抽出した領域から各画素の特定色への近似度の平均値が閾値以上の領域を特定し、さらに特定された領域の輝度値平均が閾値以上の場合にストップランプと判定する。これにより、先行車両が認識される。そして、このストップランプ点灯検出装置を車間距離接近警報装置と組み合わせて、先行車両のストップランプ検出結果に基づいて先行車両との接近状態を評価して警報を発する。
【特許文献1】特開平8−335300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように車両のストップランプ(ブレーキランプ)を特徴として車両を検出する際には、周辺に複数の車両が存在した場合に、各車両のブレーキランプを区別することが必要である。しかしながら、特許文献1の装置では、複数の車両が存在する場合については全く考慮されていない。このため、特許文献1の装置では、複数の車両が重なって撮像され、画像中に複数のブレーキランプ群が存在する場合に、各車両のブレーキランプを区別してそれぞれ検出できないため、車両が適切に認識されないという不都合がある。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、周辺に複数の車両が存在する場合でも、画像に撮像された複数の車両を区別して、車両を適切に認識することができる車両認識装置、車両、及び車両認識用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の車両認識装置は、自車両に搭載された撮像手段を介して取得された画像に基づいて、周辺に存在する他の車両を認識する車両認識装置において、前記撮像手段を介して取得された画像から、画素値が所定範囲となる画素からなる領域を特徴領域として抽出する特徴領域抽出手段と、前記特徴領域抽出手段により抽出された特徴領域のうち、前記画像上で水平方向に並んでいる第1の特徴領域と第2の特徴領域とを特定するペアリング手段と、前記ペアリング手段により特定された前記第1の特徴領域について、該第1の特徴領域の上下又は該第2の特徴領域方向の周辺域で第1の判定領域を設定すると共に、該第2の特徴領域について、該第1及び第2の特徴領域の中心線に対して該第1の判定領域と線対称の位置に第2の判定領域を設定する判定領域設定手段と、前記第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が高い場合に、該第1及び第2の特徴領域が1台の他の車両の画像部分であると判定する特徴領域判定手段とを備えることを特徴とする(第1発明)。
【0007】
第1発明の車両認識装置によれば、特徴領域抽出手段により、周辺を撮像した画像から、画素値が所定範囲となる画素からなる領域を特徴領域として抽出する。これにより、ブレーキランプやヘッドランプ等の、車両の輝度や色が特徴的な部分に相当する領域が特徴領域として抽出される。このとき、周辺に複数の車両が存在する場合、画像上で複数の車両についての特徴領域が混在する。
【0008】
これに対して、例えばブレーキランプは、車両の車幅方向(水平方向)の中心に対して左右対称に2つ設けられているので、画像上で水平方向に並ぶこととなる。そこで、ペアリング手段により、画像上で水平方向に並んでいる2つの特徴領域の組(第1の特徴領域と第2の特徴領域)を特定する。これにより、1台の車両の1対のブレーキランプに相当する可能性が高い組が特定される。ただし、このように特定された組には、2台の車両が水平方向に並んでいて、一方の車両のブレーキランプと他方の車両のブレーキランプとが組とされた場合も含まれ得る。
【0009】
そこで、判定領域設定手段により、第1の特徴領域について、第1の特徴領域の上下又は第2の特徴領域方向の周辺域に第1の判定領域を設定すると共に、第2の特徴領域について、該第1及び第2の特徴領域の中心線に対して第1の判定領域と線対称の位置に第2の判定領域を設定する。2つの特徴領域の組が1台の車両の1対のブレーキランプに相当する場合には、これらの判定領域は、同じ車両のブレーキランプ周辺の車体部分に相当する。そして、この場合は、同じ車両の車体部分は輝度や色が同じ部分が多いので、画像上での第1及び第2の判定領域の特徴が類似し、第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が高くなる。
【0010】
これに対して、2つの特徴領域の組が別の車両のブレーキランプからなる場合には、判定領域を2つの特徴領域の中心線方向の周辺域で設定すると、判定領域が車両以外の背景部分に相当する。この場合、背景部分では多様なものが撮像されるので、画像上での第1及び第2の判定領域の特徴が相違し、第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が低くなる。また、判定領域を2つの特徴領域の上下の周辺域に設定すると、判定領域が異なる車両の車体部分に相当する。この場合、異なる車両の車体部分は輝度や色が異なることが多いので、画像上での第1及び第2の判定領域の特徴が相違し、第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が低くなる。したがって、特徴領域判定手段により、第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が高い場合に、第1及び第2の特徴領域が1台の他の車両の画像部分であると判定することで、周辺に複数の車両が存在する場合でも、画像に撮像された複数の車両を区別して、車両を適切に認識することができる。
【0011】
また、第1発明の車両認識装置において、前記特徴領域抽出手段は、前記特徴領域として、輝度値が所定値以上となる画素からなる領域を抽出することが好ましい(第2発明)。
【0012】
第2発明の車両認識装置によれば、ブレーキランプ等は一般的に輝度が高いことから、特徴領域抽出手段により輝度値が所定値以上となる画素からなる領域を抽出することで、ブレーキランプ等に相当する特徴領域を抽出することができる。
【0013】
または、第1発明の車両認識装置において、前記撮像手段を介して取得された画像がカラー画像である場合に、前記特徴領域抽出手段は、前記特徴領域として、カラー成分が特定色に対応する範囲となる画素からなる領域を抽出することが好ましい(第3発明)。
【0014】
第3発明の車両認識装置によれば、ブレーキランプ等は一般的に赤や黄などの特定色であることから、特徴領域抽出手段によりカラー成分が特定色に対応する範囲となる画素からなる領域を抽出することで、ブレーキランプ等に相当する特徴領域を抽出することができる。
【0015】
また、第1〜第3発明のうちいずれかの車両認識装置において、前記ペアリング手段は、前記特徴領域のうち、前記画像上で水平方向に並び、且つ一方の特徴領域の形状と他方の特徴領域を水平方向にミラー反転した形状との類似の度合が所定値以上となる第1の特徴領域と第2の特徴領域とを特定することが好ましい(第4発明)。
【0016】
第4発明の車両認識装置によれば、例えば1台の車両の1対のブレーキランプは、車両の車幅方向(水平方向)の中心に対して左右対称に設けられているので、1台の車両の1対のブレーキランプに相当する2つの特徴領域の組では、一方の特徴領域の形状と他方の特徴領域を水平方向にミラー反転した形状との類似の度合が高くなると考えられる。よって、ペアリング手段により、画像上で水平方向に並び、且つ一方の特徴領域の形状と他方の特徴領域を水平方向にミラー反転した形状との類似の度合が所定値以上となる第1の特徴領域と第2の特徴領域とを特定することで、特徴領域のうち、1台の車両の1対のブレーキランプ等に相当する2つの特徴領域の組をより精度良く特定することができる。
【0017】
また、第1〜第4発明のうちいずれかの車両認識装置において、前記特徴領域判定手段は、前記第1の判定領域の画素値の平均と前記第2の判定領域の画素値の平均との差が所定値以下である場合に、該第1及び第2の判定領域の相関の度合が高いと判定することが好ましい(第5発明)。
【0018】
第5発明の車両認識装置によれば、第1及び第2の判定領域の画素値の平均は、各判定領域の特徴の傾向を示すものであるので、これらの画素値の平均の差が小さい場合に、第1及び第2の判定領域の相関の度合が高いことが把握される。なお、画素値としては、例えば画素の輝度値や、画像がカラー画像の場合、画素のカラー成分を用いることができる。よって、特徴領域判定手段により、第1及び第2の判定領域の画素値の平均の差が所定値以下である場合に、相関の度合が高いと判定することで、2つの特徴領域の組が1つの他の車両に対応することを適切に判定することができる。
【0019】
次に、本発明の車両は、撮像手段を備え、該撮像手段を介して取得された画像に基づいて周辺に存在する他の車両を認識する機能を有する車両であって、前記撮像手段を介して取得された画像から、画素値が所定範囲となる画素からなる領域を特徴領域として抽出する特徴領域抽出手段と、前記特徴領域抽出手段により抽出された特徴領域のうち、前記画像上で水平方向に並んでいる第1の特徴領域と第2の特徴領域とを特定するペアリング手段と、前記ペアリング手段により特定された前記第1の特徴領域について、該第1の特徴領域の上下又は前記第2の特徴領域方向の周辺域で第1の判定領域を設定すると共に、該第2の特徴領域について、該第1及び第2の特徴領域の中心線に対して該第1の判定領域と線対称の位置に第2の判定領域を設定する判定領域設定手段と、前記第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が高い場合に、該第1及び第2の特徴領域が1台の他の車両の画像部分であると判定する特徴領域判定手段とを備えたことを特徴とする(第6発明)。
【0020】
第6発明の車両によれば、第1発明の車両認識装置に関して説明したように、ペアリング手段により、画像上で水平方向に並んでいる第1の特徴領域と第2の特徴領域とを特定することで、1台の車両の1対のブレーキランプ等に相当する可能性が高い2つの特徴領域の組が特定される。そして、判定領域設定手段により、2つの特徴領域の組について、第1及び第2の特徴領域の上下又は該2つの特徴領域の中心線方向の周辺域で、第1及び第2の判定領域を該中心線に対して線対称な位置に設定することで、第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が高いことから、2つの特徴領域の組が1台の車両の1対のブレーキランプ等に相当することを判定できる。よって、特徴領域判定手段により、第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が高い場合に、第1及び第2の特徴領域が1台の他の車両の画像部分であると判定することで、周辺に複数の車両が存在する場合でも、画像に撮像された複数の車両を区別して、周辺に存在する他の車両を適切に認識することができる。
【0021】
次に、本発明の車両認識用プログラムは、自車両に搭載された撮像手段を介して取得された画像に基づいて、周辺に存在する他の車両を認識する処理をコンピュータに実行させる車両認識用プログラムであって、前記撮像手段を介して取得された画像から、画素値が所定範囲となる画素からなる領域を特徴領域として抽出する特徴領域抽出処理と、前記特徴領域抽出処理により抽出された特徴領域のうち、前記画像上で水平方向に並んでいる第1の特徴領域と第2の特徴領域とを特定するペアリング処理と、前記ペアリング手段により特定された前記第1の特徴領域について、該第1の特徴領域の上下又は前記第2の特徴領域方向の周辺域で第1の判定領域を設定すると共に、該第2の特徴領域について、該第1及び第2の特徴領域の中心線に対して該第1の判定領域と線対称の位置に第2の判定領域を設定する判定領域設定処理と、前記第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が高い場合に、該第1及び第2の特徴領域が1台の他の車両の画像部分であると判定する特徴領域判定処理とを前記コンピュータに実行させる機能を有することを特徴とする(第7発明)。
【0022】
第7発明の車両認識用プログラムによれば、第1発明に関して説明した効果を奏し得る処理をコンピュータに実行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。図1を参照して、車両認識装置10は自車両1(本発明の車両)に搭載して使用され、自車両1の前方を撮像するカメラ2により撮像される画像から、自車両1の周辺に存在する他車両を検出し、他車両と自車両1との相対位置を認識するものである。なお、カメラ2(本発明の撮像手段)はCCDカメラ等であり、自車両1のフロント部分に取り付けられている。
【0024】
また、車線認識装置10により認識された他車両と自車両1との相対位置のデータは、車両1のECU(Electronic Control Unit)20に出力される。ECU20は、他車両と車両1との相対位置に基いて、自車両1が他車両と接触する可能性を判定する接触判定処理と、自車両1が他車両との接触の可能性がある状況となったときに、注意喚起出力(図示しないスピーカからの音声出力等による)を行なう注意喚起出力処理と、自車両1と他車両との接触が回避されるように、自車両1のブレーキやステアリングをアシスト駆動する接触回避制御処理とを実行する。
【0025】
次に、図2を参照して、車両認識装置10は、その機能として画像取得手段11と、特徴領域抽出手段12と、ペアリング手段13と、判定領域設定手段14と、特徴領域判定手段15とを備えている。
【0026】
画像取得手段11は、カメラ2から出力される画像信号を入力し、入力した画像信号から、画素データにより構成されるカラー画像を取得する。このとき、画素データは、R値、G値、B値からなるカラー成分で構成されている。
【0027】
特徴領域抽出手段12は、画像取得手段11により取得されたカラー画像から、画素値が所定範囲となる画素からなる領域を特徴領域として抽出する。このとき、特徴領域抽出手段12は、画素値として画素のカラー成分を用い、カラー成分が特定色(本実施形態では赤色)に対応する範囲となる画素からなる領域を抽出する。具体的には、特徴領域抽出手段12は、画素のカラー成分(R,G,B)から算出される色相・彩度を用いて、カラー成分が特定色に対応する範囲となることを判断する。
【0028】
ペアリング手段13は、特徴領域抽出手段12により抽出された特徴領域のうち、画像上で水平方向に並び、且つ一方の特徴領域の形状と他方の特徴領域を水平方向にミラー反転した形状との類似の度合が所定値以上となる第1の特徴領域と第2の特徴領域とを特定する。
【0029】
判定領域設定手段14は、ペアリング手段13により特定された第1の特徴領域について、第2の特徴領域方向の周辺域で第1の判定領域を設定する。これと共に、判定領域設定手段14は、ペアリング手段13により特定された第2の特徴領域について、第1及び第2の特徴領域の中心線に対して第1の判定領域と線対称の位置に第2の判定領域を設定する。
【0030】
特徴領域判定手段15は、判定領域設定手段14により設定された第1判定領域と第2の判定領域との相関の度合が高い場合に、第1及び第2の特徴領域が1台の他の車両の画像部分であると判定する。具体的には、特徴領域判定手段15は、第1の判定領域の画素値の平均と第2の判定領域の画素値の平均との差が所定値以下である場合に、該第1及び第2の判定領域の相関の度合が高いと判定する。このとき、特徴領域判定手段15は、画素値として、画素のカラー成分(R,G,B)から算出される輝度値を用いる。
【0031】
車線認識装置10は、入力アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路と、デジタル化した画像信号を記憶する画像メモリと、画像メモリに記憶されたデータにアクセス(読み出し及び書き込み)するためのインタフェース回路を有して、該画像メモリに記憶された画像に対して各種の演算処理を行うコンピュータ(CPU,メモリ,入出力回路等からなる演算処理回路、或いはこれらの機能を集約したマイクロコンピュータ)等により構成された電子ユニットである。車両認識装置10は、該コンピュータに本発明の車両認識用プログラムを実行させることによって、該コンピュータが、特徴領域抽出手段12と、ペアリング手段13と、判定領域設定手段14と、特徴領域判定手段15として機能する。
【0032】
次に、車両認識装置10による作動(車両認識処理)を、図3に示したフローチャートに従って説明する。図3に示したフローチャートによる処理は、車両認識装置10の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0033】
図3のSTEP1で、画像取得手段11は、カメラ2を介してカラー画像を取得する。取得されたカラー画像はA/D変換されて画像メモリに格納される。図4(a)に、ある制御周期の時刻においてカメラ2によって得られるカラー画像I1を例示する。なお、図4(a)に示した例は、自車両1の前方に前走車Tが存在している場合の例である。
【0034】
次に、STEP2で、特徴領域抽出手段12は、STEP1で取得したカラー画像の画素のカラー成分(R,G,B)から、下記式(1)(2)を用いて、HSV色空間における画素の色相Hと彩度Sを算出する。
【0035】
【数1】

【0036】
なお、MAXは(R,G,B)の最大値、MINは(R,G,B)の最小値である。
【0037】
次に、STEP3で、特徴領域抽出手段12は、算出した色相Hと彩度Sを用いて、カラー成分が赤色に対応する範囲となる画素からなる特徴領域を抽出する。具体的には、特徴領域抽出手段12は、カメラ2を介して取得されたカラー画像に、色相Hが所定範囲Hth1〜Hth2内で、且つ彩度Sが所定範囲Sth1〜Sth2内となる画素を「1」(白)とし、これ以外の画素を「0」(黒)として2値化処理を施して、さらにラベリング処理等を施し、特徴領域を抽出する。所定範囲Hth1〜Hth2,Sth1〜Sth2は、赤色に対応する範囲として予め定められる。
【0038】
図4(b)に、図4(a)に示した画像I1から特徴領域を抽出した画像I2を例示する。図4(b)においてハッチングを付した領域が抽出された特徴領域である。図(b)に示した例では、前走車Tのブレーキランプに相当する特徴領域A1,A2と、前走車Tのストップランプに相当する特徴領域A3とが抽出されている。
【0039】
次に、STEP4で、ペアリング手段13は、抽出した特徴領域から、画像上で水平方向に並び、且つ一方の特徴領域の形状と他方の特徴領域を水平方向にミラー反転した形状との類似の度合Aが所定値Ath以上となる2つの特徴領域の組(第1の特徴領域と第2の特徴領域)を特定する。所定値Athは、1台の車両の1対のブレーキランプに相当する2つの特徴領域の組が画像上で取り得る類似の度合の範囲として予め定められる。また、本実施形態のように、自車両1の前方を撮像するようにカメラ2を自車両1に取り付けて、自車両1の前方(正面及び斜め前方)に存在する他車両を認識する場合は、画像のX方向,Y方向が、それぞれ実空間(世界座標系)における水平方向,垂直方向に相当している。
【0040】
図4(b)に示す例では、ペアリング手段13は、水平方向に並んでいる特徴領域として、画像上の任意の水平線Lについて、水平線Lを含む所定幅Wの範囲Rに含まれる2つの特徴領域A1,A2を特定する。さらに、ペアリング手段13は、特徴領域A1の形状と、特徴領域A2を水平方向にミラー反転した形状(図4(b)中のA2’)との類似の度合Aを算出し、この類似の度合Aが所定値Ath以上であることから、2つの特徴領域の組として第1,第2特徴領域A1,A2を特定する。
【0041】
これにより、2つの特徴領域の組がn個特定される。例えば、図4(b)に示す例では、2つの特徴領域の組(第1の特徴領域A1と第2の特徴領域A2)が1個特定されている。
【0042】
次に、特定された各組について、STEP5〜10の処理が、それぞれ実行される。なお、以下では、各組の第1の特徴領域をA1i、第2の特徴領域をA2i(i=1,...,n)で表している。
【0043】
まず、STEP5で、判定領域設定手段14は、第1の特徴領域A1iの第2の特徴領域A2i方向の周辺域(所定距離だけ離れた位置)に、第1の判定領域B1iを設定すると共に、第2の特徴領域A2iの第1の特徴領域A1i方向の周辺域(同じ所定距離だけ離れた位置)に、第2の判定領域B2iを設定する。第1の判定領域B1iと第2の判定領域B2iとは、第1,第2の特徴領域A1i,A2iの中心線Lvに対して線対称の位置になっている。図4(c)の画像I3に、図4(b)に示した第1,第2の特徴領域A1,A2について設定された第1,第2の判定領域B1,B2を示す。図4(c)に示すように、第1,第2の特徴領域A1,A2が前走車Tの1対のブレーキランプに相当する場合、第1,第2の判定領域B1,B2は、前走車Tのブレーキランプ周辺の車体部分に相当する。
【0044】
次に、STEP6で、特徴領域判定手段15は、STEP1で取得したカラー画像の画素のカラー成分(R,G,B)から画素の輝度値Yを算出して、第1の判定領域B1iの輝度値の平均と第2の判定領域B2iの輝度値の平均との差ΔYを算出する。詳細には、特徴領域判定手段15は、取得されたカラー画像の画素のカラー成分(R,G,B)から、Y=α×R+β×G+γ×Bにより画素の輝度値Yを算出する。ただし、α,β,γは、α+β+γ=1となるような所定の係数である。なお、特徴領域判定手段15は、輝度値Yを、R値,G値,B値のうちの最大値MAX、最小値MINを用いて、Y=(MAX+MIN)/2により算出してもよい。または、輝度値YとしてG値を用いるものとしてもよい。
【0045】
次に、STEP7で、特徴領域判定手段15は、算出した輝度値の平均の差ΔYが所定値ΔYth以下であるか否かを判断する。STEP7の判断結果がYES(輝度値の平均の差ΔYが所定値ΔYth以下である)の場合は、第1の判定領域B1iと第2の判定領域B2iとの相関が高く、第1,第2の判定領域B1i,B2iが、同じ車両の車体部分に相当していると判断できる。よって、第1,第2の特徴領域A1i,A2iが同じ車両の1対のブレーキランプに相当すると考えられる。この場合、STEP8に進み、特徴領域判定手段15は、画像座標系における第1,第2の特徴領域A1i,A2iの中心座標Piを算出する。この中心座標Piは、他車両の重心座標に相当する。図4(c)に示す例では、第1,第2の特徴領域A1,A2から、前走車Tの重心座標に相当する中心座標P1が算出される。
【0046】
次に、STEP9で、特徴領域判定手段15は、中心座標Piを世界座標系に座標変換する。詳細には、カメラ2の焦点距離や画素間隔等のカメラパラメータや、画像上での第1,第2の特徴領域A1i,A2iの大きさと実空間上でのブレーキランプが取り得る大きさとから推定される他車両の自車両1に対する距離に基いて座標変換される。これにより、STEP10で、車両認識装置10により、他車両の自車両1に対する相対位置が取得され、他車両が認識される。
【0047】
一方、STEP7の判断結果がNO(輝度値の平均の差ΔYが所定値ΔYth以下でない)の場合は、第1の判定領域B1iと第2の判定領域B2iとの相関が低く、第1,第2の特徴領域A1i,A2iが同じ車両の1対のブレーキランプに相当しないと考えられる。この場合はSTEP5に戻り、次の組についてSTEP5〜10の処理が行われる。
【0048】
上述のSTEP5〜10の処理を各組について実行することにより、複数の他車両が存在する場合に、それぞれの他車両の1対のブレーキランプに相当する2つの特徴領域の組を特定して、それぞれの他車両の自車両1に対する相対位置を取得することができる。
【0049】
以上が、本実施形態の車両認識装置10における車両認識処理である。本実施形態によれば、周辺に複数の車両が存在する場合でも、画像に撮像された複数の車両を区別して、車両を適切に認識することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、特徴領域抽出手段12は、特定色として赤色を用いたが、他の実施形態として、赤色以外の特定色(例えば黄色等)を用いてもよい。また、特徴領域抽出手段12は、色相・彩度を用いて特徴領域を抽出するものとしたが、色相・彩度以外の値を用いてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、特徴領域抽出手段12は、特徴領域として、カラー成分が特定色に対応する範囲となる画素からなる領域(特定色領域)を抽出するものとしたが、他の実施形態として、輝度値が所定値以上となる画素からなる領域(高輝度領域)を抽出するものとしてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、ペアリング手段13は、抽出した特徴領域から、画像上で水平方向に並び、且つ一方の特徴領域の形状と他方の特徴領域を水平方向にミラー反転した形状との類似の度合が所定値以上となる2つの特徴領域の組を特定するものとしたが、他の実施形態として、形状を用いずに、画像上で水平方向に並ぶ2つの特徴領域の組を特定するものとしてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、判定領域設定手段14は、第1及び第2の特徴領域の中心線方向の周辺域に第1及び第2の判定領域を設定するものとしたが、他の実施形態として、第1及び第2の特徴領域の上下の周辺域に第1及び第2の判定領域を設定するものとしてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、特徴領域判定手段15は、第1及び第2の判定領域の輝度値の平均の差が所定値以下である場合に、第1及び第2の判定領域の相関の度合が高いと判定するものとしたが、他の手法により相関の度合を判定するものとしてもよい。また、特徴領域判定手段15は、例えば色相・彩度などの、輝度値以外の値を用いて、第1及び第2の判定領域の相関の度合を判定するものとしてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、カメラ2を介してカラー画像を取得するものとしたが、画素データが輝度値で構成されるグレースケール画像を取得するものとしてもよい。この場合、特徴領域抽出手段12は輝度値を用いて特徴領域を抽出し、特徴領域判定手段15は輝度値を用いて第1及び第2の判定領域の相関の度合を判定する。
【0056】
また、本実施形態において、画像取得手段2は、画素データのカラー成分がR値、G値、B値で構成されるものとしたが、画素データのカラー成分として、例えばCMY出力等を用いるものとしてもよい。
【0057】
また、本実施形態において、カメラ2により自車両1の前方を撮像し、車両認識装置10は自車両1の前方の他車両を認識するものとしたが、他の実施形態として、カメラにより自車両1の後方を撮像し、車両認識装置10は、車両の1対のヘッドランプを車両の特徴的な部分として、自車両1の後方の他車両を認識するものとしてもよい。
【0058】
また、他の実施形態として、自車両1に物体を検知するレーダ(例えばミリ波レーダ、超音波レーダ、レーザレーダ等)を備え、このレーダの検知結果として得られる物体の位置情報を、画像から認識される他車両と対応付けることで、他車両と自車両との相対位置を取得するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の車両認識装置の自車両への搭載態様を示した説明図。
【図2】図1に示した車両認識装置の構成図。
【図3】図1に示した車両認識装置による他の車両を認識する車両認識処理を示すフローチャート。
【図4】図3の車両認識処理の説明図。
【符号の説明】
【0060】
1…車両(自車両)、2…カメラ(撮像手段)、10…車両認識装置、11…画像取得手段、12…特徴領域抽出手段、13…ペアリング手段、14…判定領域設定手段、15…特徴領域判定手段、20…ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載された撮像手段を介して取得された画像に基づいて、周辺に存在する他の車両を認識する車両認識装置において、
前記撮像手段を介して取得された画像から、画素値が所定範囲となる画素からなる領域を特徴領域として抽出する特徴領域抽出手段と、
前記特徴領域抽出手段により抽出された特徴領域のうち、前記画像上で水平方向に並んでいる第1の特徴領域と第2の特徴領域とを特定するペアリング手段と、
前記ペアリング手段により特定された前記第1の特徴領域について、該第1の特徴領域の上下又は前記第2の特徴領域方向の周辺域で第1の判定領域を設定すると共に、該第2の特徴領域について、該第1及び第2の特徴領域の中心線に対して該第1の判定領域と線対称の位置に第2の判定領域を設定する判定領域設定手段と、
前記第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が高い場合に、該第1及び第2の特徴領域が1台の他の車両の画像部分であると判定する特徴領域判定手段と
を備えることを特徴とする車両認識装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両認識装置において、
前記特徴領域抽出手段は、前記特徴領域として、輝度値が所定値以上となる画素からなる領域を抽出することを特徴とする車両認識装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両認識装置において、
前記撮像手段を介して取得された画像はカラー画像であり、
前記特徴領域抽出手段は、前記特徴領域として、カラー成分が特定色に対応する範囲となる画素からなる領域を抽出することを特徴とする車両認識装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか記載の車両認識装置において、
前記ペアリング手段は、前記特徴領域のうち、前記画像上で水平方向に並び、且つ一方の特徴領域の形状と他方の特徴領域を水平方向にミラー反転した形状との類似の度合が所定値以上となる第1の特徴領域と第2の特徴領域とを特定することを特徴とする車両認識装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか記載の車両認識装置において、
前記特徴領域判定手段は、前記第1の判定領域の画素値の平均と前記第2の判定領域の画素値の平均との差が所定値以下である場合に、該第1及び第2の判定領域の相関の度合が高いと判定することを特徴とする車両認識装置。
【請求項6】
撮像手段を備え、該撮像手段を介して取得された画像に基づいて周辺に存在する他の車両を認識する機能を有する車両であって、
前記撮像手段を介して取得された画像から、画素値が所定範囲となる画素からなる領域を特徴領域として抽出する特徴領域抽出手段と、
前記特徴領域抽出手段により抽出された特徴領域のうち、前記画像上で水平方向に並んでいる第1の特徴領域と第2の特徴領域とを特定するペアリング手段と、
前記ペアリング手段により特定された前記第1の特徴領域について、該第1の特徴領域の上下又は前記第2の特徴領域方向の周辺域で第1の判定領域を設定すると共に、該第2の特徴領域について、該第1及び第2の特徴領域の中心線に対して該第1の判定領域と線対称の位置に第2の判定領域を設定する判定領域設定手段と、
前記第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が高い場合に、該第1及び第2の特徴領域が1台の他の車両の画像部分であると判定する特徴領域判定手段とを備えたことを特徴とする車両。
【請求項7】
自車両に搭載された撮像手段を介して取得された画像に基づいて、周辺に存在する他の車両を認識する処理をコンピュータに実行させる車両認識用プログラムであって、
前記撮像手段を介して取得された画像から、画素値が所定範囲となる画素からなる領域を特徴領域として抽出する特徴領域抽出処理と、
前記特徴領域抽出処理により抽出された特徴領域のうち、前記画像上で水平方向に並んでいる第1の特徴領域と第2の特徴領域とを特定するペアリング処理と、
前記ペアリング手段により特定された前記第1の特徴領域について、該第1の特徴領域の上下又は前記第2の特徴領域方向の周辺域で第1の判定領域を設定すると共に、該第2の特徴領域について、該第1及び第2の特徴領域の中心線に対して該第1の判定領域と線対称の位置に第2の判定領域を設定する判定領域設定処理と、
前記第1の判定領域と第2の判定領域との相関の度合が高い場合に、該第1及び第2の特徴領域が1台の他の車両の画像部分であると判定する特徴領域判定処理と
を前記コンピュータに実行させる機能を有することを特徴とする車両認識用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−230530(P2009−230530A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76161(P2008−76161)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】