説明

車両車輪ブレーキの制御方法および装置

【課題】最適な発進アシストないしヒルホルダ機能を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの運転状態において、ブレーキ・ペダルが操作されているとき、ペダル操作量とは無関係に少なくとも1つの車両車輪におけるブレーキ力が保持される。また、走行路面傾斜が決定され、および以後の車両の走行方向に走行路面勾配が存在するとき、ペダル操作量とは無関係に少なくとも1つの車輪におけるブレーキ力が保持される。さらに、別形態では、停止中の車両においてロック式ブレーキが作動されているとき、常用ブレーキの作動とは無関係にブレーキ力が上昇され、および駆動ユニットのトルクが走行路面勾配に抗して車両を前進駆動させるのに十分であるとき、ブレーキ力が低下される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両車輪ブレーキの制御方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第375708号(米国特許第5129496号)にブレーキ装置の適切な制御による自動ロック式ブレーキの作動が記載されている。このために、ブレーキ・ペダルを操作して車両速度が極めて小さい速度値を下回ったとき、少なくとも1つの弁の切換により少なくとも1つの車輪ブレーキ内のブレーキ圧力が閉じ込められ、すなわち一定に保持され、場合によりさらに圧力発生手段の操作によりブレーキ圧力が上昇される。閉じ込められたブレーキ圧力は、ドライバの発進希望が検出されたときに再び低下される。
【0003】
ドイツ特許公開第19621628号に自動ロック式ブレーキ機能(=ヒルホルダ機能)が提案され、この自動ロック式ブレーキ機能は、常用ブレーキが作動されて車両が停止したときに作動される。このとき作用しているブレーキ圧力ないしブレーキ力は、少なくとも1つの車輪ブレーキにおいてブレーキ・ペダルの操作量とは無関係に保持または上昇され、ブレーキ・ペダルを放したときに再び低下される。このようなヒルホルダ機能は包括的な安全手段の使用を回避させる。例えば勾配における発進アシストのために、ブレーキ・ペダルおよびクラッチ・ペダルを同時に操作してからブレーキ・ペダルを放した場合、クラッチ・ペダルがヒルホルダ機能の作動ないし非作動を引き受ける。既知のこの方法は、少なくとも1つの時点でブレーキ・ペダルおよびクラッチ・ペダルが同時に操作される特定の発進過程のみを考慮しているので、可能なあらゆる発進過程、例えば勾配における発進過程またはロック式ブレーキが作動されているときの発進過程が最適には行われない。したがって、既知の方法はあらゆる場合に使用可能であるわけではない。
【0004】
ドイツ特許公開第19625919号は、車両が停止中であるにもかかわらず車両運動が検出されたとき、特に供給ポンプの操作によるブレーキ圧力上昇により、ドライバとは無関係のブレーキ作用上昇が行われるクリープ抑制を記載している。この方法は、加速ペダルが操作されたとき、かつ出力トルクに対する所定のしきい値を超えたとき、車両の停止のために保持されているブレーキ圧力が低下される発進アシストをも含む。この場合もまた、あらゆる発進状況が最適に考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最適な発進アシストないしヒルホルダ機能を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、少なくとも1つの運転状態において、ペダル操作とは無関係に車両車輪におけるブレーキ力が上昇される、車両車輪ブレーキの制御方法において、停止中の車両においてロック式ブレーキが作動されているとき、常用ブレーキの作動とは無関係にブレーキ力が上昇され、および駆動ユニットのトルクが走行路面勾配に抗して車両を前進駆動させるのに十分であるとき、ブレーキ力が低下されることを特徴とする本発明の車両車輪ブレーキの制御方法により解決される。
【0007】
上記課題はまた、少なくとも1つの運転状態において、ブレーキ・ペダルが操作されているとき、ペダル操作量とは無関係に少なくとも1つの車両車輪におけるブレーキ力が保持され、少なくとも1つの条件が存在したとき、ブレーキ力が再び低下される、車両車輪ブレーキの制御方法において、ブレーキ圧力が保持されているとき、後方転がり移動に関する限界ブレーキ圧力を下回っているときにはブレーキ圧力上昇が行われ、この場合、車輪ブレーキ内に作用するブレーキ圧力が漏れモデルに基づいて決定されることを特徴とする車両車輪ブレーキの制御方法により解決される。
【0008】
上記課題はさらに、車輪ブレーキ調節装置を操作する制御ユニットを備え、これにより、少なくとも1つの運転状態において、ペダル操作量とは無関係に車両車輪ブレーキにおけるブレーキ力が保持または上昇される、車両車輪ブレーキの制御装置において、前記制御ユニットが、ロック式ブレーキの操作を表わす変数を決定し、および停止中の車両においてロック式ブレーキが作動されているとき、常用ブレーキの作動とは無関係にブレーキ力上昇を行い、駆動ユニットのトルクが走行路面勾配に抗して車両を前進駆動させるのに十分であるとき、前記制御ユニットがブレーキ力を低下することを特徴とする車両車輪ブレーキの制御装置により解決される。
【0009】
走行路面勾配の関数として、および/またはロック式ブレーキを作動させたとき、発進アシストないしヒルホルダ機能を作動させることにより、車両の後方転がり移動が懸念される発進状況が最適化される。
【0010】
手動変速機を有する車両においては、発進過程において、特にドライバが勾配において発進するとき、ドライバは、ハンド・ブレーキ、加速ペダルおよびクラッチの複雑な同時操作から十分に解放されることが特に有利である。したがって、発進アシストの作動が実際に必要とされるとき、すなわち、車両の走行方向に正の走行路面勾配が存在するときに発進アシストが作動されることが有利である。すなわち、発進アシストは、走行路面が走行方向に上昇しているときに作動する。これにより、他の走行状況においては走行快適性を損なうような好ましくない二次的影響なしに、発進におけるきわめて良好なアシストが達成される。初心ドライバに対しては、勾配における発進において、より高い安全性が達成され、熟練ドライバに対してはより高い快適性が得られる。
【0011】
発進過程におけるドライバの負担を軽くすることにより、発進アシストに短時間で馴れたのちには、車両の駐車時以外にロック式ブレーキを使用することは不必要となるであろう。
【0012】
ギヤが投入されているときにのみこの機能が作動していることにより、機能の確実性が提供されることが有利である。これは、ドライバによりブレーキ作動の準備ができていることのサインとして使用される。すなわち、発進アシストが故障したとき、例えば搭載電源が故障したとき、ドライバは常用ブレーキおよび/またはロック式ブレーキにより車両を停止することが保証される。
【0013】
さらに、ブレーキ・ペダルを操作することなく、車両が長時間にわたり停止されることが保証される。漏れのためにまたはブレーキを緩やかに解放したときに車両がクリープ移動した場合、このクリープ移動を防止するために、ブレーキ・ペダルの操作とは無関係にブレーキ圧力が自動的に上昇される。
【0014】
傾斜センサの信号ならびに駆動ユニットの運転状態を考慮することにより、適切な解放時点が決定されるので、全体的に快適な発進アシストが得られることが特に重要である。
【0015】
なお、少なくとも1つの運転状態において、ブレーキ・ペダルが操作されているとき、ペダル操作量とは無関係に少なくとも1つの車両車輪におけるブレーキ力が保持され、少なくとも1つの条件が存在したとき、ブレーキ力が再び低下される、車両車輪ブレーキの制御方法において、走行路面傾斜が決定され、および以後の車両の走行方向に走行路面勾配が存在するとき、ペダル操作量とは無関係に少なくとも1つの車輪におけるブレーキ力が保持されてもよい。当該車両車輪ブレーキの制御方法では、駆動ユニットが運転し、および/または車両停止が存在し、および/またはギヤが投入され、および/またはブレーキ・ペダルが操作されているとき、ブレーキ力が保持されてもよく、またドライバの発進希望が検出され、および/またはアイドリングが投入され、および/または走行方向に走行路面勾配がもはや存在しないとき、ブレーキ力が低下されてもよく、さらにブレーキ・ペダルが放されているとき、ブレーキ力が低下されてもよい。
【0016】
車輪ブレーキ調節装置を操作する制御ユニットを備え、これにより、少なくとも1つの運転状態において、ペダル操作量とは無関係に車両車輪ブレーキにおけるブレーキ力が保持または上昇される、車両車輪ブレーキの制御装置において、前記制御ユニットが、走行路面勾配を表わす変数を決定し、および以後の走行方向に走行路面勾配が存在するとき、ブレーキ力の保持を行ってもよい。
【0017】
また、本発明の車両車輪ブレーキの制御方法を実行するためのコンピュータ・プログラムを記憶媒体に記憶してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】記載の発進アシストないしヒルホルダ機能がその中で実行される、車両ブレーキ装置のための制御装置の全体回路図である。
【図2】車両ブレーキ装置のための制御ユニットのコンピュータ・プログラムとして示した、発進アシストないしヒルホルダ機能の好ましい実施形態(発進アシストないしヒルホルダを作動させるとき)の流れ図である。
【図3】車両ブレーキ装置のための制御ユニットのコンピュータ・プログラムとして示した、発進アシストないしヒルホルダ機能の好ましい実施形態(発進アシストないしヒルホルダを非作動とするとき)の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を図面に示す実施形態により詳細に説明する。
【0020】
図1は車両ブレーキ装置の制御のための制御ユニット10を示す。この制御ユニット10は、入力回路12、少なくとも1つのマイクロコンピュータ14および出力回路16を含む。入力回路12、マイクロコンピュータ14および出力回路16は、相互間のデータ交換のために通信系統18により相互に結合されている。入力回路12には種々の測定装置から入力ラインが供給される(これらの入力ラインは、好ましい実施形態においては、バス系統、例えばCANとして形成されている)。第1の入力ライン20は、ブレーキ・ペダル・スイッチ22から制御ユニット10に連絡し、制御ユニット10にブレーキ・ペダル・スイッチ信号BLSを伝送する。入力ライン24ないし27は制御ユニット10を車輪速度センサ28ないし31と結合し、入力ライン24ないし27を介して車両車輪速度に関する信号が供給される。さらに、他の入力ライン32ないし35が設けられ、入力ライン32ないし35を介して、対応測定装置またはその他の制御装置から、少なくとも次の変数、すなわち、加速ペダルの操作変数αまたは機関制御装置からの加速ペダルが操作されているか否かの情報、ロック式ブレーキが作動されていることを示すスイッチ信号、投入されているギヤ段に関する情報を与える変数GANG、機関制御からの、設定された機関トルクおよび/または設定すべき機関トルクに対する大きさを表わす変数Mおよび/または駆動ユニットの回転速度を表わす変数NMOT、車両駆動ユニットが運転しているかどうかを与える変数が伝送される。さらに、制御ユニット10を傾斜センサ52と結合する入力ライン50が設けられている。傾斜センサ52は、走行路面勾配およびその方向がそれから導かれる信号を与える。
【0021】
制御ユニット10の出力回路16に出力ラインが接続され、出力ラインは車両車輪ブレーキを制御するための調節要素を操作する。好ましい実施形態においては、ブレーキ装置は油圧式ブレーキ装置であるので、出力ライン40は個々の車輪ブレーキ内のブレーキ圧力を制御するための弁42に連絡し、一方、出力ライン44を介して、場合により個々のブレーキ回路のための少なくとも1つの圧力発生手段46(ポンプ)が操作される。好ましい実施形態においては、出力ライン47を介して少なくとも1つの制御弁48が操作され、制御弁48は、少なくとも1つの車輪ブレーキにおいて、ブレーキ・ペダルを操作したときに上記のヒルホルダ機能を与えるようにブレーキ圧力を一定に保持する。好ましい実施形態においては、この少なくとも1つの制御弁は駆動滑り制御を実行するために設けられた切換弁であり、切換弁はマスタ・ブレーキ・シリンダと車輪ブレーキ・シリンダとの間の結合を遮断する。この弁の代わりに、車輪ブレーキ圧力を制御する弁42によってもブレーキ圧力は閉じ込められる。ブレーキ圧力の閉込めは、設計に応じてそれぞれ、すべての車輪ブレーキまたは選択された車輪ブレーキにおいて行われる。
【0022】
上記の本発明は特定のブレーキ装置タイプへの使用に限定されない。すなわち、この解決策は、空圧式ブレーキ装置において、または電気油圧式、電動式および/または電気空圧式ブレーキ装置との組み合わせで使用されてもまた同様な有利性が得られる。この場合、ブレーキ・ペダル操作によりドライバから設定されたブレーキ力、すなわち通常の圧力配管を介してまたは電気的方法で調節された個々の車輪ブレーキにおけるブレーキ力は、ヒルホルダ機能が作動した場合に、弁の切換および場合によりポンプの起動により、および/または操作信号の一定保持または操作信号を特定の値に切り換えることにより、またはクラッチの操作により、保持または増大される。特に電動式ブレーキ装置においては、電気操作信号により、電動式ブレーキ調節装置が所定のブレーキ力を与えるように操作され、ないし所定の位置にロックされる。
【0023】
好ましい実施形態においては、制御ユニット10、この場合マイクロコンピュータ14は、車両ブレーキ装置の制御により、少なくとも駆動滑り制御および場合によりさらに走行動特性制御を実行する。このような制御は従来技術から既知である。さらに、追加機能として、以下に記載の発進アシストまたはヒルホルダ機能が設けられ、発進アシストまたはヒルホルダ機能は、ロック式ブレーキ作用のほかに、坂道発進アシストおよび/またはクリープ抑制としても使用される。
【0024】
上記の発進アシスト装置またはヒルホルダ装置により、手動変速式車両のドライバは、勾配における発進過程において、ハンド・ブレーキの作動から解放されることになる。これは、ドライバにより与えられたブレーキ圧力の閉込めにより、ないし与えられたブレーキ力(締付力)の保持により、車両の後方転がり移動が本来の発進過程まで防止されることにより達成される。これは、例えば傾斜センサにより測定された勾配が走行方向に正であるとき、すなわち予想される走行方向とは反対方向に後方転がり移動が懸念されなければならないときに行われる。対応する方法が、ロック式ブレーキが投入されかつ常用ブレーキが踏み込まれていないときに行われる。ここで、一般にはドライバにより導かれたブレーキ力は閉じ込めることができないので、ロック式ブレーキを解放したとき、能動的なブレーキ力上昇を介して、ドライバが発進するまで、ないしギヤが解除されるまで、同様に車両は保持される。
【0025】
発進アシストないしヒルホルダの好ましい実施形態においては、弁、特に切換弁を閉じることにより、ドライバにより与えられたブレーキ圧力が車輪ブレーキ・クランプ内に閉じ込められる。これは、車両の後方転がり移動を確実に回避するために、車両のすべての車輪において行われることが好ましい。弁の閉止、したがって圧力の閉込めは、作動化条件が存在したときに行われる。この条件は、ブレーキ・ペダルがドライバにより踏み込まれていること、および車両停止が発生したことを含む。ブレーキ・ペダルの踏み込みは切換状態信号またはブレーキ・ペダル操作信号(例えばポテンショメータから)により、また車両停止は少なくとも1つの車輪速度に基づき、例えば冒頭に挙げた従来技術に記載のように決定される。さらに、勾配が発進方向に正であり、駆動機関が運転し、および/またはギヤ段またはギヤが投入されていなければならない。ブレーキが踏み込まれているという条件の代わりに、ロック式ブレーキが作動されかつブレーキ・ペダルの踏込み以外の上記の条件が存在するとき、ポンプの操作により車輪ブレーキ内に圧力が能動的に上昇される。
【0026】
ドライバとは無関係の能動的ブレーキ圧力上昇を形成するために設けられた油圧装置を有する油圧式ブレーキ装置の好ましい実施形態においては、作動化において、少なくとも1つの切換弁に電流を流すことによりブレーキ圧力の閉込めが達成され、切換弁は車輪ブレーキ・シリンダからのブレーキ液の逆流を防止する。切換弁と並列に存在する逆止弁は、ドライバに対して、弁が閉じられているときにおいてもブレーキ圧力を上昇させることを可能にする。閉じ込められたブレーキ圧力は、非作動化条件が存在するとき、切換弁を開くことにより再び解放される。このような油圧装置の例は従来技術から既知である。
【0027】
ブレーキ圧力を保持している間に漏れまたはその他の圧力損失が発生した場合、ポンプ好ましくは戻しポンプの操作を介して、およびブレーキ液の流入を可能にする弁により、圧力損失は再び補償される。これは、特に、車両が長時間ブレーキ・ペダルの操作なしに発進アシストないしヒルホルダにより保持されている場合である。ブレーキ圧力上昇は、実施形態に応じてそれぞれ、所定のブレーキ圧力限界を下回ったとき、または車両のクリープ移動が検出されたときに行われる。クリープ移動は、例えば車両の運動を感知する車輪速度信号に基づいて決定される。クリープ移動の場合、好ましい実施形態においては、車輪ブレーキ圧力は戻しポンプの短時間の弱い運転により上昇される。
【0028】
停止過程から、何回のブレーキ過圧で停止まで制動されたかが推測される(運動量保存則)。このとき、漏れモデル(一般には線形ではなく、例えば圧力の関数としての指数関数)を介してブレーキ装置内の圧力損失がシミュレートされる。このように評価された圧力が転がり移動に関する限界圧力に接近したときに圧力が上昇され、これにより車両の運動は存在しない(予防的漏れ補償)。後方転がり移動に関する限界圧力が設定される。この方法の「学習」は次のように行われる。
【0029】
− 予想しない早めの後方転がり移動が発生した場合、漏れの評価はきわめて不正確である。シミュレーションの漏れの値は上昇され、すなわち漏れモデルにおいて少なくとも1つの係数が変化され、例えば指数関数において時間の関数として表わされる係数が変化される。
【0030】
− 予防的漏れ補償の結果として長時間にわたり後方転がり移動が発生しなかった場合、この漏れモデルはおそらくきわめて大きい漏れを評価したので、この漏れの値は次第に低下される。
【0031】
非作動化条件が存在したとき、ブレーキ圧力は低下される。この場合、発進アシストないしヒルホルダの快適性のために、適切な解放時点が重要である。この解放時点は、傾斜センサおよび電子式機関制御の情報から得られる。この場合、電子式機関制御の情報は、(ドライバにより希望されまたは実際に発生された)機関トルクのような運転変数、加速ペダル位置および/または機関回転速度に関する情報を利用可能にする。ギヤが解除され、(前進ギヤまたは後退ギヤが投入されている)発進方向における勾配がもはや正ではないとき、またはドライバの発進希望が存在するとき、解放が行われる。この場合、ドライバの発進希望は、ブレーキが解放されかつ存在する走行路面勾配に抗して車両を前進駆動させるのに十分な機関トルクが形成されたときに存在する。これは、走行路面勾配の大きさの関数であるしきい値が形成されることを意味し、この場合、駆動ユニットのトルクがこのしきい値を超えたとき、さらに、閉じ込められたブレーキ圧力ないし保持されてたブレーキ力の解放が行われる。この場合、実施形態に応じてそれぞれ、加速ペダルの操作が評価され、および機関回転速度、駆動ユニットの目標トルクおよび/または実際トルクが、勾配の関数としての所定のしきい値と比較される。
【0032】
好ましい実施形態においては、上記の機能がブレーキ装置を制御するための制御ユニットの計算要素のプログラムとして実行され、この場合、プログラムは計算要素内または計算要素外のメモリ内に記憶され、または外部メモリから供給される。このようなプログラムの一例が、図2および図3の流れ図により示されている。
【0033】
以下に、発進アシストまたはヒルホルダに関連してブレーキ圧力の閉込めを説明する。特に圧力媒体のない装置に関しては、以下に一般的に、ここではブレーキ力と呼ばれる、車輪ブレーキに与えられる締付力と理解される。
【0034】
図2に示したプログラムは、発進アシストないしヒルホルダが作動していないとき、供給電圧が投入されているときに所定の時間間隔で実行される。これはマークにより特定される。第1のステップ100において、駆動ユニットが運転しているかどうかが検査される。駆動ユニットが運転しているとき、その後にステップ102において、車両が停止しているかどうかが検査される。これは例えば車輪速度信号に基づいて行われる。肯定回答の場合、それに続くステップ104において、ギヤが投入されているかどうかが検査される。この場合、ギヤは前進ギヤまたは後退ギヤのいずれであってもよい。ギヤが投入されている場合、それに続くステップ106において、傾斜センサの情報および場合によりギヤ情報に基づいて、走行方向に示される勾配が存在するかどうか、すなわち車両が勾配に抗して発進しなければならないかどうかが検査される。これが肯定の場合、ステップ108において、ブレーキ・ペダルが操作されているかどうかが検査される。これもまた肯定の場合、ステップ110により発進アシストないしヒルホルダが作動され、このとき、例えば上記のような弁が切り換えられ、およびブレーキ・ペダルの操作の結果として車輪ブレーキ内に作用しているブレーキ圧力が閉じ込められる。ステップ108によりブレーキ・ペダルが操作されていない場合、ステップ112において、その代わりにロック式ブレーキが作動されているかどうかが検査される。これは対応切換信号の評価により行われる。ロック式ブレーキが作動されている場合、ステップ114において発進アシストないしヒルホルダが作動され、この場合、車輪ブレーキ内の作用圧力が能動的に上昇される。これは、車輪ブレーキ内に所定の圧力を形成するポンプの操作により行われることが好ましい。ステップ100、102、104、106または112の結果が否定回答の場合、機能の作動は行われない。この場合には、プログラムは終了され、次の時間間隔で改めて実行される。ステップ110および114ののちに作動マークがセットされ、および図3に示すプログラムが同様に所定の時間間隔で実行される。
【0035】
この場合、最初のステップ200において、ブレーキ・ペダルまたはロック式ブレーキが解放されているかどうかが検査される。これが否定の場合、システムは発進アシストないしヒルホルダを作動中である。これは、ブレーキ圧力が保持されるように弁が制御され、ないしはドライバにより与えられたブレーキ力またはドライバとは無関係に上昇されたブレーキ力が保持されるようにブレーキ調節装置が操作されることを意味する。ステップ202において圧力低下ないしブレーキ力低下が検出された場合、これは例えば測定されたブレーキ圧力ないし測定されたブレーキ力により、および/または速度信号を介して後方転がり移動により検出されるが、この場合には、ステップ204により圧力上昇が行われる。ステップ204ののち、ないしはステップ202において否定回答の場合、プログラムは終了され、次の時間間隔で改めて実行される。
【0036】
ステップ200において、ブレーキ・ペダルが解放されていることが特定された場合、ステップ206において、機関制御から利用可能な変数、すなわち機関トルク(目標トルクおよび/または実際トルク)MMOTおよび加速ペダル位置α、場合により機関回転速度NMOTが読み込まれる。少なくとも1つのこれらの変数から、ステップ208において、ドライバの発進希望が存在するかどうかが決定される。これは、例えば加速ペダル位置信号により、加速ペダルの操作が行われたかどうかが検査されることにより行われる。さらに、走行路面勾配の関数である、機関トルクおよび/または機関回転速度に対する限界値が存在する。ドライバにより設定された、ないしは駆動ユニットにより発生された機関トルクおよび/または機関回転速度がこの限界値を超えた場合、発進希望が推測される。これは、ドライバにより設定された機関トルクないし設定された回転速度が、走行路面勾配に打ち勝ちかつこの勾配に抗して車両を運動させるのに十分であるからである。すなわち、発進希望が検出された場合、ステップ210により発進アシストないしヒルホルダが非作動とされかつ圧力が低下される。これは、ブレーキ圧力調節装置の対応操作により行われ、ブレーキ圧力調節装置は、急激に、または例えば時間関数により計量的にブレーキ圧力ないしブレーキ力を低下させる。ステップ210ののち、プログラムは終了され、図2に示したプログラムが実行される。ステップ208が発進希望を与えなかった場合、ステップ212において、アイドリング・ギヤ位置が投入されたかどうかが検査される。これが肯定の場合にはステップ210が続き、否定の場合にはステップ214において、走行路面勾配がもはや走行方向に正ではない(例えば前進から後退へのギヤの切換)かどうかが検査される。これが肯定の場合、ステップ210が続きかつ機能の非作動化が行われ、一方、否定回答の場合にはステップ202が続く。ある実施形態においては、特にブレーキ圧力低下の快適な態様がドライバに望ましいとき、および/または能動的圧力上昇を有するブレーキ装置が存在するときには、問い合わせステップ200、従ってその「否定分岐」もまた省略される。
【0037】
非作動化に対する上記の条件は、実施形態に応じてそれぞれ、個々にまたは任意の組み合わせで使用される。正の走行路面勾配の条件またはロック式ブレーキが作動されているという条件を補足する上記の条件は、実施形態に応じてそれぞれ、任意の組み合わせで少なくとも1つのこれらの条件に使用される。
【符号の説明】
【0038】
10 制御ユニット
12 入力回路
14 マイクロコンピュータ
16 出力回路
28、31 車輪速度センサ
36、39 測定装置またはその他の制御装置
42 車輪ブレーキ圧力制御弁
46 圧力発生手段(ポンプ)
48 切換弁
52 傾斜センサ
BLS ブレーキ・ペダル・スイッチ信号
GANG 投入ギヤ段を表わす変数
M 設定機関トルクの大きさを表わす変数
MMOT 機関トルク
NMOT 機関回転速度
α 加速ペダル位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの運転状態において、ペダル操作とは無関係に車両車輪におけるブレーキ力が上昇される、車両車輪ブレーキの制御方法において、
停止中の車両においてロック式ブレーキが作動されているとき、常用ブレーキの作動とは無関係にブレーキ力が上昇され、および
駆動ユニットのトルクが走行路面勾配に抗して車両を前進駆動させるのに十分であるとき、ブレーキ力が低下される
ことを特徴とする車両車輪ブレーキの制御方法。
【請求項2】
車両走行方向に走行路面勾配が存在するときにのみ、ブレーキ力が上昇されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
車両の後方転がり移動が存在し、および/または保持されているブレーキ力が低下したとき、この運転状態の間に改めてブレーキ力が上昇されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの運転状態において、ブレーキ・ペダルが操作されているとき、ペダル操作量とは無関係に少なくとも1つの車両車輪におけるブレーキ力が保持され、少なくとも1つの条件が存在したとき、ブレーキ力が再び低下される、車両車輪ブレーキの制御方法において、
ブレーキ圧力が保持されているとき、後方転がり移動に関する限界ブレーキ圧力を下回っているときにはブレーキ圧力上昇が行われ、この場合、車輪ブレーキ内に作用するブレーキ圧力が漏れモデルに基づいて決定されることを特徴とする車両車輪ブレーキの制御方法。
【請求項5】
車輪ブレーキ調節装置を操作する制御ユニットを備え、これにより、少なくとも1つの運転状態において、ペダル操作量とは無関係に車両車輪ブレーキにおけるブレーキ力が保持または上昇される、車両車輪ブレーキの制御装置において、
前記制御ユニットが、
ロック式ブレーキの操作を表わす変数を決定し、および
停止中の車両においてロック式ブレーキが作動されているとき、常用ブレーキの作動とは無関係にブレーキ力上昇を行い、駆動ユニットのトルクが走行路面勾配に抗して車両を前進駆動させるのに十分であるとき、前記制御ユニットがブレーキ力を低下する
ことを特徴とする車両車輪ブレーキの制御装置。
【請求項6】
記憶されているコンピュータ・プログラムが計算要素内で実行されるとき、前記記憶されているコンピュータ・プログラムが請求項1ないし4のいずれかの少なくとも1つの方法を実行することを特徴とするコンピュータ・プログラムを記憶するための記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−17106(P2012−17106A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234850(P2011−234850)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【分割の表示】特願2001−250461(P2001−250461)の分割
【原出願日】平成13年8月21日(2001.8.21)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】