説明

車両運行管理システム

【課題】車両が不正運行モードであると判定された後にも不正運行モードを解除する機会があり、かつ、車両が不正に使用されて移動することを阻止する。
【解決手段】車両10に搭載される車載器11に設けられ、パスワードを入力可能な操作部13と、操作部13から入力されたパスワードの正否を判定するパスワード判定部23と、パスワード判定部23によってパスワードが正しくないと複数回連続して判定された場合に、車両10が不正に使用されている不正運行モードであると判定する不正使用判定部24と、不正運行モードであると判定された場合に通報する送受信部22とを備え、車両10の運行状況を管理する車両運行管理システム100であって、不正使用判定部24によって車両10が不正運行モードであると判定された後、車両10の運行を不可能にする操作があった場合には、再度、操作部13へのパスワードの入力が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運行状況を管理する車両運行管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両が不正に運行されることを防止する機能を有する車両運行管理システムが用いられている。特許文献1には、操作手段から入力されたパスワードと、記憶手段に記憶されたパスワードとを照合し、パスワードが一致したときにのみ車両を走行可能状態にする電動車両が開示されている。この電動車両では、車両が不正に運行されて移動することを、パスワード認証によって阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−78302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、誤ったパスワードが入力されて車両が不正運行モードであると判定されたときに、不正運行モードを解除するためには、例えば、管理者によるシステム操作が必要である。トラックなどの商用車は、管理者が不在の夜間などに走行することが多いため、特許文献1に記載のシステムでは、パスワード入力時の過誤によって不正運行モードであると判定された場合、不正運行モードを解除できずに車両が走行できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車両が不正運行モードであると判定された後にも不正運行モードを解除する機会があり、かつ、車両が不正に使用されて移動することを阻止できる車両運行管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両に搭載される車載器に設けられ、パスワードを入力可能なパスワード入力部と、前記パスワード入力部から入力されたパスワードの正否を判定するパスワード判定部と、前記パスワード判定部によってパスワードが正しくないと複数回連続して判定された場合に、前記車両が不正に使用されている不正運行モードであると判定する不正使用判定部と、前記不正運行モードであると判定された場合に、当該不正運行モードであることを通報する通報装置と、を備え、前記車両の運行状況を管理する車両運行管理システムであって、前記不正使用判定部によって前記車両が不正運行モードであると判定された後、当該車両の運行を不可能にする操作があった場合には、再度、前記パスワード入力部へのパスワードの入力が可能となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、不正運行モードであると判定された後、車両の運行を不可能にする操作があった場合には、再度パスワードを入力して不正運行モードを解除する機会が設けられる。不正運行モードと判定された後でパスワード入力する機会を得るためには車両の運行を不可能にする操作を行う必要があるため、この操作が行われる分だけ、車両が移動することを阻止することが可能である。
【0008】
したがって、車両が不正運行モードであると判定された後にも不正運行モードを解除する機会があり、かつ、車両が不正に使用されて移動することを阻止できる車両運行管理システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両運行管理システムのシステム構成図である。
【図2】図1における車載器の構成図である。
【図3】ドライバが運行を開始する始業時に車載器及び運行管理端末器にて行われる制御について説明するフローチャート図である。
【図4】(a)〜(d)は、車載機の表示態様を示す図である。
【図5】不正運行モードであると判定された場合における車載器の動作を示すタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る車両運行管理システム100について説明する。
【0011】
車両運行管理システム100は、車両10が不正に運行されることを防止する機能を備え、車両10の運行状況を管理するものである。車両運行管理システム100は、図1に示すように、車両10に搭載された車載器11と、事業所50に設けられる運行管理端末器(例えばパーソナルコンピュータ)51と、基地局30に設けられる運行管理中継器31と、を備える。車載器11と運行管理端末器51とはコンピュータ機能を有し、運行管理中継器31はサーバ機能を有する。
【0012】
各車載器11と運行管理中継器31とは、無線通信(例えば携帯電話回線を利用したパケット通信網35)を介して無線通信可能に接続される。運行管理端末器51と運行管理中継器31とは、インターネット36を介して通信可能に接続される。運行管理中継器31は、車載器11と運行管理端末器51との間にて情報の送受信を中継する。
【0013】
運行管理端末器51は、各車載器11から運行管理端末器51に送られる車両10の位置データ(例えばGPS情報を利用)やその他の運行データから車両10の運行状況を把握し、運行管理端末器51から各車載器11に各種の指令を送ることもできる。
【0014】
運行管理中継器31と運行管理端末器51とは、情報の送受信をして車両10の運行状況を管理する運行管理装置40を構成する。運行管理装置40は、複数の車両10の各々の車載器11と通信して、それぞれの運行状況を管理することが可能である。
【0015】
図2に示すように、車載器11は、CPU(中央演算処理装置)20と記憶部21とを備える。CPU20は、車両10の運行状況として、車両10の地理的位置、車両走行速度、車両走行距離、時刻等の運行データを車内LANを介して取得する。記憶部21には、処理条件、取得した運行データ、ドライバ(運転者)のID(本人確認)情報等が記憶される。
【0016】
車載器11は、車両10の地理的位置情報を取得する位置情報取得部として、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信機25を備える。車載器11は、GPS受信機25を介してGPS衛星からの情報を受信することによって車両10の地理的位置情報を取得する。
【0017】
車載器11は、ドライバに伝える情報を表示する表示部12と、ドライバによって操作されパスワードが入力可能なパスワード入力部としての操作部13とを有する。表示部12は、例えば、液晶パネルなどの表示デバイスであり、操作部13は、例えば、タッチパネルスイッチやタクトスイッチなどの入力デバイスである。
【0018】
ドライバは、運転を開始する始業時に車載器11に後述する手順にて始業操作を行い、運転を終了する終業時に終業操作を行う。これに伴って車載器11は、始業操作信号,車両10の運行データの信号,及び終業操作信号を送信する。
【0019】
一方、事業所50に設けられる運行管理端末器51(図1参照)は、始業操作信号及び終業操作信号を受信し、この終業操作信号をトリガにして車載器11に必要な運行データを送信させるコマンドを送信し、これに伴って車載器11から送信される運行データを受信する。運行管理端末器51は、この運行データを基に例えば時刻と車両走行速度のグラフデータや時刻と車両走行距離のグラフデータ等を作成する。
【0020】
車載器11は、車両10が盗難された場合等に対処して、入力されたパスワードの正否を判定するパスワード判定部23と、パスワードの正否判定に基づいて不正使用であることを判定する不正使用判定部24と、不正運行モードであることなどを運行管理装置40に通報する通報装置としての送受信部22とを備える。
【0021】
パスワード判定部23は、操作部13から入力されたパスワードの正否を判定する。具体的には、記憶部21に予め記憶されたパスワードと、操作部13から入力されたパスワードとを照合し、その正否を出力する。パスワードは、管理者によって任意に設定及び変更される。なお、運行管理端末器51から車載器11に対して行われる遠隔操作によってパスワードを変更することも可能である。
【0022】
不正使用判定部24には、パスワード判定部23からパスワードの正否の判定が入力される。不正使用判定部24は、パスワード判定部23にてパスワードが正しくないと複数回連続して判定された場合に、車両10が不正運行モードであると判定する。
【0023】
不正使用判定部24は、操作部13からパスワードが入力されないまま車両10が走行を開始し、所定の走行距離を超えたときにもまた、車両10が不正運行モードであると判定する。この判定については、図3を参照しながら後で詳細に説明する。
【0024】
送受信部22は、例えば、携帯電話モジュールのような双方向通信モジュールである。送受信部22は、車両10が不正運行モードであると判定された場合に、不正運行モードであることを運行管理装置40に通報する。また、送受信部22は、不正運行モードであると判定されていない場合にも、例えば、正しい始業操作が行われたことなどを運行管理装置40に送信可能である。
【0025】
次に、主に図3を参照して、ドライバが運行を開始する始業時に、車載器11及び運行管理端末器51にて行われる制御について説明する。
【0026】
図3に示すステップS1、S2、S10のルーチンでは、ドライバが所定の始業操作を行わないで車両10が走行した距離(未始業時の走行距離)が所定値Ljを超えて走行した場合には、不正運行モードに入ったと判定する。
【0027】
このルーチンについて詳述すると、まず、ステップS1にて、車載器11は、車両10の運転開始時にドライバによって操作されるイグニッションスイッチ15(図1参照)がONになった場合には、ステップS2に進んで、車両速度が零となる車両停止時であるか、車両速度が零でない車両走行時であるかを判定する。
【0028】
なお、イグニッションスイッチ15は、車両10の運転開始時にドライバの操作によってONにされ、車両10の運転に携わる機器を通電状態にするものである。イグニッションスイッチ15がONにされることで、車両10は運行可能な状態となり、イグニッションスイッチ15がOFFにされることで、車両10は運行不可能な状態となる。
【0029】
ステップS2にて、車両走行時であると判定された場合には、ステップS10に進んで、未始業時の走行距離が所定値Lj以下か否かを判定する。
【0030】
ステップS10にて、始業操作が行われない状態における未始業時の走行距離が所定値Lj以下と判定された場合には、ステップS11に進んで、未始業警告表示をする。この未始業警告表示では、例えば図4(b)に示すように、表示部12に「停車中に始業操作を行ってください」という表示をし、ドライバにパスワードを入力する操作を促す。
【0031】
一方、ステップS10にて、未始業時の走行距離が所定値Ljを超えたと判定された場合には、ステップS12に進んで、不正運行モードに入ったことを運行管理装置40に通報するとともに、ドライバに向けた警告をする。この警告として、例えば、図4(d)に示すように、表示部12に「管理者に位置情報などを通報しました」という表示をし、不正運行モードに入ったことをドライバに知らせる。さらに、警告としてブザー音を鳴らし、「管理者に通報をしました」という音声を出力するようになっている。
【0032】
また、ステップS1〜S9のルーチンにて、ドライバが誤った始業操作を行った場合には、不正運行モードに入ったと判定される。
【0033】
このルーチンについて詳述すると、まず、ステップS2にて、車両停止時であると判定された場合には、続くステップS3に進んで、始業操作表示をする。この始業操作表示として、例えば図4(a)に示すように、表示部12に「パスワード入力」という表示をし、ドライバにパスワードを入力する操作を促す。この表示を見たドライバは、車載器11を操作して予め設定された例えば4つの数字からなるパスワードを入力する始業操作を行う。パスワードの桁数を5桁以上に増やすことでセキュリティを強化してもよい。
【0034】
続くステップS4では、パスワード判定部にて、入力されたパスワードが正しいか否かを判定する。ここでは、車載器11の記憶部21に予め設定されたデータに基づき、入力されたパスワードが正しいか否かを判定する。ステップS4にて、入力されたパスワードが正しいと判定された場合には、ステップS13に進み、正しい始業操作が行われたことを運行管理装置40に通報する。
【0035】
一方、ステップS4にて、入力されたパスワードが誤っていると判定された場合は、続くステップS5に進み、既に不正運行モードに入っているか否かを判定する。
【0036】
ステップS5にて、既に不正運行モードに入っていると判定された場合には、ステップS12に進んで、不正運行モードにおいて誤った始業操作が行われたことを運行管理装置40に通報する。
【0037】
こうして、既に不正運行モードに入っている場合には、イグニッションスイッチ15がONになった時点から、ドライバが始業操作を行う機会が1回だけ与えられる。即ち、不正運行モードであると判定された後であっても、イグニッションスイッチ15がOFFにされ、その後ONにされる操作があった場合には、ドライバには、再度、操作部13へのパスワードの入力の機会が与えられる。このとき、イグニッションスイッチ15がOFFにされる操作があったことのみをトリガとして、ドライバに再度パスワードを入力できる機会を与えてもよい。
【0038】
一方、ステップS5にて、不正運行モードに入っていないことが判定された場合には、続くステップS6に進んで、図4(c)に示すように、表示部12に「パスワードが違います」という表示をした後に、2回目の始業操作表示(図4(a)参照)をし、ドライバにパスワードを入力する操作を促す。この表示を見たドライバは、車載器11を操作して予め設定された所定のパスワードを入力する、2回目の始業操作を行う。
【0039】
続くステップS7にて、再び、入力されたパスワードが正しいか否かを判定する。ステップS7にて、入力されたパスワードが正しいと判定された場合には、ステップS13に進み、正しい始業操作が行われたことを運行管理装置40に通報する。
【0040】
一方、ステップS7にて、入力されたパスワードが誤っていると判定された場合は、続くステップS8に進で、図4(c)に示すように、表示部12に「パスワードが違います」という表示をした後に、3回目の始業操作表示(図4(a)参照)をし、ドライバにパスワードを入力する操作を促す。この表示を見たドライバは、車載器11を操作して予め設定された所定のパスワードを入力する、3回目の始業操作を行う。
【0041】
続くステップS9にて、入力されたパスワードが正しいか否かを判定する。ステップS9にて、入力されたパスワードが正しいと判定された場合には、ステップS13に進み、正しい始業操作が行われたことを運行管理装置40に通報する。
【0042】
一方、ステップS9にて、入力されたパスワードが誤っていると判定された場合は、ステップS12に進んで、不正運行モードに入ったことを運行管理装置40に通報するとともに、ドライバに前記の警告をする。
【0043】
こうして、不正運行モードに入っていない場合には、イグニッションスイッチ15がONになった時点から、ドライバが始業操作を行う機会が所定の複数回として3回だけ与えられる。
【0044】
以上より、不正運行モードであると判定される前には、ドライバが始業操作を行う機会が3回与えられ、不正運行モードであると判定された後は、ドライバが始業操作を行う機会は1回与えられる。即ち、不正運行モードであると判定される前より、不正運行モードであると判定された後の方が、ドライバが始業操作を行う機会が少なく設定される。
【0045】
運行管理装置40では、ステップS14にて、不正運行モードに入ったというデータを入力し、運行管理端末器51に不正運行モードに入ったことを知らせる表示をする。
【0046】
管理者は、運行管理端末器51の表示を見て不正運行モードに入ったことを知り、ステップS15にて、追跡モードに切換えるかどうかを任意に決めることができる。管理者が運行管理端末器51を操作して追跡モードに切換えると、ステップS16に進んで、車載器11に追跡モードに対応した運行データを送信させるコマンドを送信する。
【0047】
車載器11は、不正運行モードであると判定された場合には、以下のタイミングで運行データを送信する。
・イグニッションスイッチ15がOFFからONになった車両10の運転開始時。
・イグニッションスイッチ15がONからOFFになった車両10の運転停止時。
・車両10の走行速度が零となる車両停止時。
・車両10の走行速度が零から高まった車両発進時。
・車両10の走行時間が所定の設定時間TMを超えた時。
【0048】
なお、上記の設定時間TMは、追跡モードにある場合の方が、追跡モードにない場合と比べて短くなる。例えば、追跡モードにない場合の設定時間TMは30分に設定され、追跡モードにある場合の設定時間TMは1分に設定される。
【0049】
次に、主に図5を参照して、車両運行管理システム100の作用について説明する。
【0050】
まず、T1〜T6の間では、車両10は、運行開始直後であり、正常運行モードと不正運行モードとのどちらにあるかが決められていない状態である。
【0051】
T1の時点では、イグニッションスイッチ15がONにされるのに伴って、図4(a)に示すように、表示部12に「パスワード入力」という表示をするとともに、ブザー音を鳴らし、「始業操作を行いましょう」という音声を出力し、ドライバにパスワードを入力する操作を促す。これが、1回目の始業操作の機会である。
【0052】
T2の時点では、ドライバによって操作部13から誤ったパスワードが入力される。ここでは、入力されたパスワードが誤りであるとパスワード判定部23が判定したため、図4(c)に示すように、表示部12に「パスワードが違います」という表示をする。また、警告としてブザー音を鳴らし、「パスワードが違います」という音声を出力し、パスワードが誤りであったことをドライバに知らせる。
【0053】
T3の時点では、表示部12に「パスワードが違います」と表示されていることを認識したドライバによって操作部13の「確認」ボタン(図4(c)参照)が押下されたため、図4(a)に示すように、表示部12に「パスワード入力」という表示をする。また、ブザー音と音声とを出力し、ドライバにパスワードを入力する操作を促す。これが、2回目の始業操作の機会である。
【0054】
T4の時点では、T2の時点と同様に、ドライバによって操作部13から誤ったパスワードが再び入力される。ここでもまた、入力されたパスワードが誤りであるとパスワード判定部23が判定したため、図4(c)に示すように、表示部12に「パスワードが違います」という表示をする。また、ブザー音と「パスワードが違います」という音声とを出力し、パスワードが誤りであったことをドライバに知らせる。
【0055】
T5の時点では、T3の時点と同様に、表示部12に「パスワードが違います」と表示されていることを認識したドライバによって操作部13の「確認」ボタン(図4(c)参照)が押下されたため、図4(a)に示すように、表示部12に「パスワード入力」という表示をする。また、ブザー音と音声とを出力し、ドライバにパスワードを入力する操作を促す。これが、3回目の始業操作の機会である。
【0056】
T6の時点では、T2,T4の時点と同様に、ドライバによって操作部13から誤ったパスワードが再び入力される。これで、誤ったパスワードが入力された回数が連続して3回になったため、不正使用判定部24は、車両10が不正運行モードに入ったと判定する。これに伴って、車両10が不正運行モードに入ったことを送受信部22から運行管理装置40に送信するとともに、図4(d)に示すように、表示部12に「管理者に通報をしました」という表示をする。また、警告としてブザー音を鳴らし、「管理者に通報をしました」という音声を出力して、不正運行モードに入ったことをドライバに知らせる。
【0057】
なお、ここでは、ドライバによる始業操作にて入力されたパスワードが3回連続して誤っていると判定されたことで不正運行モードに入った場合について示しているが、ドライバが所定の始業操作を行わないで車両10が走行した距離が所定値Ljを超えて走行した場合にもまた、不正運行モードに入ったと判定される。これにより、ドライバが正しいパスワードを知らない場合には、始業操作を行っても行わなくても、いずれにしても車両10を不正に運行した場合には、不正運行モードに入ることとなる。
【0058】
なお、未始業時の走行距離が所定値Ljを超えるまでは、不正運行モードに入らないため、例えば車庫で車両10を移動させるような場合には、不正運行モードに入ることを避けることができる。未始業時の走行距離を判定する所定値Ljは、管理者によって例えば500〜3000mといった値に任意に設定される。
【0059】
T7の時点では、車両10が走行を開始するのに伴って、運行データを運行管理装置40に送信するとともに、警告としてブザー音を鳴らし、「管理者に通報をしました」という音声を出力する。これにより、運行管理装置40は、車両10が走行を開始した位置情報をすぐに得られ、追跡者が車両10の移動に対処することができる。
【0060】
T8の時点では、走行している車両10の走行時間が設定時間TMを超えるのに伴って、運行データを運行管理装置40に送信する。これにより、車両10が走行している間に、運行管理装置40は定期的に車両10の位置情報が得られ、追跡者が車両10の移動に対処することができる。
【0061】
なお、車両10が走行を停止した状態を続けている場合には、車両10の走行時間を加算せず、車載器11は運行データを運行管理装置40に送信しないようにしてもよい。このようにすることで、通信回数が無駄に増えることがないため、通信コストを削減できる。
【0062】
T9の時点では、車両10が走行を停止するのに伴って、運行データを運行管理装置40に送信する。これにより、車両10が盗難された場合には、運行管理装置40は車両10が走行を停止した位置情報がすぐに得られ、車両10が走行を停止した状態を続けていれば、速やかに車両10を発見することができる。
【0063】
T10の時点では、イグニッションスイッチ15がOFFにされるのに伴って、運行データを運行管理装置40に送信する。これにより、不正運行モードでは、イグニッションスイッチ15をOFFにする操作が行われる毎に運行データが運行管理装置40に送信されるため、車両10が盗難された場合には、運行管理装置40はドライバが車両10の運転を停止した位置情報をすぐに得られ、車両10を追跡するのに有効な情報が得られる。よって、車両10が運転を停止した状態を続けていれば、速やかに車両10を発見することができる。
【0064】
T11では、前回設定時間TMを超えたときからの走行時間が、再び設定時間TMを超えている。しかしながら、イグニッションスイッチ15がOFFにされている間は、車両10の走行時間が加算されず、車載器11は運行データを運行管理装置40に送信することはない。よって、通信回数が無駄に増えることがなく、通信コストを削減できる。
【0065】
T12の時点では、イグニッションスイッチ15がONにされるのに伴って、運行データを運行管理装置40に送信するとともに、図4(a)に示すように、表示部12に「パスワード入力」という表示をするとともに、ブザー音と音声とを出力し、ドライバにパスワードを入力する操作を促す。
【0066】
このように、不正運行モードに入っている状態では、イグニッションスイッチ15をONにする操作が行われる毎に運行データが運行管理装置40に送信されるため、運行管理装置40は、ドライバが車両10の運転を開始した位置情報がすぐに得られ、追跡者が車両10の移動に対処することができる。
【0067】
また、不正運行モードでは、イグニッションスイッチ15がONにされる毎に1度だけパスワードを入力する始業操作を行う機会が与えられる。
【0068】
T13の時点では、ドライバによって操作部13から誤ったパスワードが再び入力される。これに伴って図4(d)に示すように、表示部12に「管理者に位置情報などを通報しました」という表示を行い、警告としてブザー音を鳴らし、「管理者に通報をしました」という音声を出力する。このとき、イグニッションスイッチ15がONにされてから既にパスワードの誤入力が1度行われているので、再度パスワードを入力して始業操作を行う機会は与えられない。
【0069】
このように、不正運行モードに入った後は、イグニッションスイッチ15がONにされることによって、ドライバが始業操作を行う機会が1回のみ与えられる。これにより、不正運行モードに入った後であっても、不正運行モードを解除する機会がある。よって、管理者が不在の夜間等であっても、不正運行モードを解除することができる。
【0070】
ここで、仮に車両10が盗難され、不正な運行によって車両10の移動が行われている場合、ドライバには、車両10を遠く安全な場所に早く運びたいという心理と、不正運行モードを解除するためにパスワードの入力を再度行いたいという心理とが働くことが考えられる。正しいパスワードを知らないドライバが、正しいパスワードを入力できるまで入力を繰り返すためには相当の入力回数を要する。ドライバは、パスワードの入力機会を得ようとする度にイグニッションスイッチ15をOFFしてONするという操作を行う必要がある。
【0071】
イグニッションスイッチ15がOFFの状態では、車両10は走行不可能であるため、パスワードの入力機会を得ようとすると、その分だけ車両10を遠くに運ぶことができなくなる。よって、不正運行モードであるとの通報の後、車両10が遠くに移動されないうちに、早急に車両10を発見して確保することが可能となる。
【0072】
したがって、車両10が不正運行モードであると判定された後にも不正運行モードを解除する機会があり、かつ、車両10が不正に使用されて移動することを阻止できる車両運行管理システム100を得ることができる。
【0073】
また、ドライバが始業操作を行う機会は、車両10が不正運行モードであると判定される前より、不正運行モードであると判定された後の方が少ない回数に設定される。そのため、正しいパスワードを知っているドライバが、過誤により誤ったパスワードを入力した場合には、正しいパスワードを入力するために充分な機会が与えられると共に、正しいパスワードを知らないドライバによって車両10が不正に使用されて移動することを阻止することができる。
【0074】
T14の時点では、車両10が走行を開始するのに伴って、運行データを運行管理装置40に送信する。
【0075】
T15の時点では、車両10が停止し、イグニッションスイッチ15がOFFにされるのに伴って、運行データが送受信部22から運行管理装置40に送信される。
【0076】
T16の時点では、T11の時点と同様に、走行時間が設定時間TMを超えたが、イグニッションスイッチ15がOFFであるため、運行管理装置40への運行データの送信は行われない。
【0077】
T17の時点では、T12の時点と同様に、イグニッションスイッチ15がONにされるのに伴って、運行データを運行管理装置40に送信するとともに、図4(a)に示すように、表示部12に「パスワード入力」という表示をするとともに、ブザー音と音声とを出力し、ドライバにパスワードを入力する操作を促す。
【0078】
T18の時点では、ドライバによって操作部13から正しいパスワードが入力される。これにより、不正使用判定部24は、不正運行モードではないと判定し、不正運行モードを解除する。そして、車載器11は、不正運行モードが解除されたことを運行管理装置40に通報するとともに、ドライバのID情報を認証するために、表示部12にドライバがID番号を入力する表示を行う。ドライバが自分のID番号を入力すると、車載器11がこのID情報を送信する。運行管理端末器51は受信したID情報から登録されたID情報を検索し、受信したID情報を認証するか否かを判定する。この認証は、例えば検索したID番号と受信したID番号が一致することを判定することによって行われる。
【0079】
T19の時点では、前回設定時間TMを超えたときからの走行時間が、再び設定時間TMを超えているが、不正運行モードが解除されているため、運行管理装置40に運行データは送信されない。
【0080】
なお、車両10の走行、停止に関わらず、不正運行モードに切り換わってからの運転時間が所定値を超えるタイミングT8と、イグニッションスイッチ15がOFFからONになった運転開始時からの運転時間が所定値を超えるタイミングT11、T16にて、車載器11が運行データを運行管理装置40に送信する構成としてもよい。
【0081】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0082】
不正運行モードであると判定された後、イグニッションスイッチ15がOFFにされるなど車両10の運行を不可能にする操作があった場合には、再度パスワードを入力して不正運行モードを解除する機会が設けられる。不正運行モードと判定された後でパスワード入力する機会を得るためには、車両10の運行を不可能にする操作を行う必要があるため、この操作が行われる分だけ、車両10が移動することを阻止することが可能である。
【0083】
したがって、車両10が不正運行モードであると判定された後にも不正運行モードを解除する機会があり、かつ、車両10が不正に使用されて移動することを阻止できる車両運行管理システム100を得ることができる。
【0084】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0085】
100 車両運行管理システム
10 車両
11 車載器
12 表示部
13 操作部(パスワード入力部)
15 イグニッションスイッチ
20 CPU(中央演算処理装置)
21 記憶部
22 送受信部
23 パスワード判定部
24 不正使用判定部
25 GPS受信機
30 基地局
31 運行管理中継器
35 パケット通信網
36 インターネット
40 運行管理装置
50 事業所
51 運行管理端末器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載器に設けられ、パスワードを入力可能なパスワード入力部と、
前記パスワード入力部から入力されたパスワードの正否を判定するパスワード判定部と、
前記パスワード判定部によってパスワードが正しくないと複数回連続して判定された場合に、前記車両が不正に使用されている不正運行モードであると判定する不正使用判定部と、
前記不正運行モードであると判定された場合に、当該不正運行モードであることを通報する通報装置と、を備え、前記車両の運行状況を管理する車両運行管理システムであって、
前記不正使用判定部によって前記車両が不正運行モードであると判定された後、当該車両の運行を不可能にする操作があった場合には、再度、前記パスワード入力部へのパスワードの入力が可能となることを特徴とする車両運行管理システム。
【請求項2】
前記不正運行モードであると判定された後に再度パスワードを入力できる回数は、当該不正運行モードであると判定される前にパスワードを入力できる回数より少ないことを特徴とする請求項1に記載の車両運行管理システム。
【請求項3】
前記車両の運行を不可能にする操作は、イグニッションスイッチをオフにする操作であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両運行管理システム。
【請求項4】
前記車両の運行を不可能にする操作は、イグニッションスイッチをオフにした後、当該イグニッションスイッチをオンにする操作であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両運行管理システム。
【請求項5】
前記車載器は、前記車両の位置情報を取得する位置情報取得部を備え、
前記不正使用判定部によって不正運行モードであると判定された場合、前記車両の位置情報を送信することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の車両運行管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−53546(P2012−53546A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193926(P2010−193926)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】