説明

車体フレーム構造

【課題】フロントサイドフレームに入力される衝撃荷重をキックアップ部から後方へ逃がすに際し、当該衝撃荷重を分散させて効率よく減衰させることができるようにする。
【解決手段】トーボード2に形成されているセンタートンネル16の両側にフロントサイドフレーム12の後端部に形成されているキックアップ部12bを接合し、このキックアップ部12bとセンタートンネル16の稜部18aとを第3サブフレーム23を介して連結する。前面衝突時のフロントサイドフレーム12に入力されてキックアップ部12bに伝達された衝撃荷重は第3サブフレーム23によりセンタートンネル16へ分散され、その壁面に沿って後方へ逃がされて減衰される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームに設けたキックアップ部に入力される衝撃荷重を分散させるようにした車体フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体前部にエンジンを搭載するフロントエンジンタイプの車両では、エンジンが収容されるエンジンルームに、前後方向へ延出する一対のフロンサイドフレームが、フロントホイールエプロンに沿って対向配設されている。このフロントサイドフレームの後部はキックアップ部を有しており、このキックアップ部が、エンジンルームとキャビン(車室)とを区画するトーボードに接合されて後方斜め下方へ延出されている。
【0003】
又、トーボードの後端に連結されているフロアパネルの底面の車幅方向左右には、前後方向へ延出する一対のフロアサイドフレームが接合されており、このフロアサイドフレームの先端にキックアップ部の後端が連結されている。更に、このトーボードには車幅方向に沿ってトーボードリンフォースが配設されており、このトーボードリンフォースの両端がサイドシルに連結されている。
【0004】
又、一対のフロントサイドフレームの先端間はバンパビーム等のクロスメンバで連結されており、前面衝突時の衝撃荷重は、このクロスメンバから左右のフロントサイドフレームに伝達される。すると、フロントサイドフレームの先端部が軸圧潰により変形して大きな衝撃エネルギを吸収すると共に、衝撃荷重をフロントサイドフレームに連続するフロアサイドフレームやトーボードリンフォースを介してサイドシル及びフロントピラー等のサイドストラクチャへ分散させることで、キャビンの変形を阻止し乗員を保護する。
【0005】
上述したように、フロントサイドフレームの後端に設けられているキックアップ部はキックボードに沿って斜め下方へ屈曲されてフロアレームに連結されているため、フロントサイドフレームの前部とフロアサイドフレームとの間に高低差が生じている。その結果、前面衝突時の衝撃荷重がフロントサイドフレームからフロアサイドフレームに伝達されるに際しては、このキックアップ部の両端の屈曲部にサイドフレームからの荷重とフロアサイドフレームからの反力とが作用して、曲げモーメントが発生する。この曲げモーメントにより、例えば、キックアップ部の前端側が屈曲されると、それに連続するフロントサイドフレーム前部が上方へせり上げられるように変形してしまい衝撃荷重の伝達が阻害されてしまう不都合が生じる。
【0006】
この対策として、上述した特許文献1では、フロントサイドフレームのキックアップ部を廃止し、それに変えて、三方へ分岐する分岐フレーム部を設け、この分岐フレームの1つをフロントピラー下部に連結し、他の1つをトーボードに形成されているトンネルに連結し、残りの1つをサイドシルの前端部に連結することで、前面衝突時の衝撃荷重を三方へ分散させる技術が開示されている。
【0007】
この文献に開示されている技術では、前面衝突時にフロントサイドフレームに入力された衝撃荷重が分岐フレームを介して三方へ分散されるため、当該衝撃荷重を効率よく減衰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−222185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、フロントサイドフレームのキックアップ部を廃止したため、これに連結されるフロアサイドフレームも省略されている。従って、既存の車体フレーム構造に対して適用することができず、汎用性に欠ける問題がある。
【0010】
一方、既存の車体フレーム構造に、上述した文献に開示されている分岐フレームを取付けた場合、分岐フレームにより衝撃荷重が分散されるため、キックアップ部上端側の屈曲部に作用する曲げ応力は軽減されるが、キックアップ部からフロアサイドフレーム側に伝達される衝撃荷重によりキックアップ部下端側の屈曲部に曲げ応力が発生する。
【0011】
この対策としては、キックアップ部下端側の屈曲部内にリンフォース部材をスポット溶接等により接合させて、剛性を高めることが考えられる。しかし、この屈曲部にリンフォース部材を溶接することで補強しただけでは、衝撃荷重を分散させることができず、当該衝撃荷重を効率よく減衰させることができない問題がある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、既存の車体フレーム構造に対して適用が可能で汎用性に優れるばかりでなく、フロントサイドフレームに入力された衝撃荷重をキックアップ部から後方へ逃がすに際し、当該衝撃荷重を分散させて効率よく減衰させることのできる車体フレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明は、エンジンルームとキャビンとを区画して後端がフロアパネルに連続されていると共に、車幅方向略中央にセンタートンネルが形成されているトーボードと、前記エンジンルームの車幅方向両側に配設された一対のサイドフレーム本体及び該各サイドフレーム本体の後部に連続すると共に前記トーボードの下部側に形成された傾斜面に対して前記センタートンネルを挟んで対称な位置に接合されて前記フロアパネル方向へ延在するキックアップ部を有するフロントサイドフレームを備える車体前部構造において、前記キックアップ部と前記センタートンネルの前記トーボードから屈曲された稜部との間がサブフレームを介して連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キックアップ部と、センタートンネルのトーボードから屈曲された稜部との間をサブフレームを介して連結したので、既存の車体フレーム構造に対して適用が可能で高い汎用性を得ることができるばかりでなく、フロントサイドフレームに入力された衝撃荷重をキックアップ部から後方へ逃がすに際し、サブフレームにより衝撃荷重をセンタートンネル側へ分散させて効率よく減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】車体前部のフレーム構造を示す正面斜視図
【図2】車体前部及びフロアのフレーム構造を示す鳥瞰斜視図
【図3】車体前部及びフロアのフレーム構造を示す要部断面斜視図
【図4】車体前部及びフロアのフレーム構造を示す仰視斜視図
【図5】図4のV-V断面図
【図6】車体前部及びフロアのフレーム構造を示す底面図
【図7】車体前部及びフロアのフレーム構造を示す断面側面図
【図8】図7のVIII−VIII断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図中の符号1はフロントエンジンタイプ車両の車体前部であり、この車体前部1が、車幅方向に延在するトーボード2によってエンジンルーム3とキャビン4とに区画されている。尚、以下の説明において、「接合」と記載されている場合、その接合方法は、特に、明記しない限りスポット溶接を代表とする溶接手段を用いた溶着によって行われるものとする。
【0017】
トーボード2は、その左右両側縁が、車体を構成する左右のフロントピラー5に接合され、上端縁がトーボード2に沿って車幅方向へ延在するバルクヘッド6に接合されている。又、トーボード2の両側には、ホイールハウスのキャビン4側への膨出されたホイールハウス後部9aが一体形成されている。尚、後述するように、エンジンルーム3側のホイールハウス(ホイールハウス前部9b)はホイールエプロン9に一体形成されており、ホイールハウス後部9aとホイールハウス前部9bとが接合されて、前輪の上部を覆うアーチ状のホイールハウスが形成される。
【0018】
又、トーボード2の下部であって、左右に形成されているホイールハウス後部9a間に、斜め後方下方に向かって傾斜する傾斜面2aが形成され、この傾斜面2aの下端から後方へ平坦面2bが形成され、この平坦面2bの後端縁にフロアパネル7の前端縁が接合されている。図2に示すように、この平坦面2bの車幅方向両側は、ホイールハウス後部9aの下端縁部に沿ってサイドシル8側へ延出されて、このサイドシル8に接合されている。更に、このフロアパネル7の両側がサイドシル8に接合されている。尚、図示しないがフロントピラー5の下端部もサイドシル8に接合されている。
【0019】
一方、エンジンルーム3の側壁を形成する左右のホイールエプロン9の後端がトーボード2の両側端部にそれぞれ接合されている。このホイールエプロン9は、前輪(図示せず)の上方を覆うアーチ状のホイールハウス前部9bが形成されていると共に、サスペンション(図示せず)のストラット上部を支持するストラットタワー9cが形成されている。このストラットタワー9bは、エンジンルーム3の比較的後部に配設されていると共に、エンジンルーム3の車幅方向内側に張り出されている。
【0020】
更に、ホイールエプロン9の下端が、左右に配設された互いに対向する一対のフロントサイドフレーム12に接合されている。このフロントサイドフレーム12は、サイドフレーム本体12aと、このサイドフレーム本体12aの後端に連続されているキックアップ部12bとを有している。各サイドフレーム本体12はホイールエプロン9の下端縁に沿って前後方向へ延設されている。尚、図においては省略しているが、左右に配設されているホイールエプロン9の先端がラジエータパネル13を介して連結されている。一方、両サイドフレーム本体12aの先端間が、ラジエータパネル13の前方に横設されているバンパビーム等のフロントクロスメンバ14を介して連結されている。
【0021】
又、キックアップ部12bはトーボード2の傾斜面2aに沿って下方へ屈曲され、その後端部がトーボード2の平坦面2bに沿って後方へ延出され、その後端に、フロアパネル7の底面に接合されているフロアサイドフレーム15の前端が接合されている。尚、このフロアサイドフレーム15の後端部は、車体後部に配設されているリヤサイドフレーム(図示せず)に接合されている。
【0022】
又、図2〜図8に示すように、トーボード2の車幅方向の中央部にセンタートンネル16がブレス加工により膨出形成されており、その後端縁がフロアパネル7の車幅方向中央に形成されているフロアトンネル17の前端縁に接合されている。図2に示すように、フロントサイドフレーム12のキックアップ部12bは、センタートンネル16を挟んで左右方向に対称な位置に配設されていると共に、センタートンネル16の開口部に近接する位置からトーボード2の傾斜面2aに沿ってほぼ直線的に下方へ延出されている。
【0023】
又、このキックアップ部12bの後端に、トーボード2とフロアパネル7との接合部付近で連結されているフロアサイドフレーム15は、先端部側がフロアトンネル17の両側に次第に近接するように配設され、中途部以降がフロアトンネル17に近接された状態で、このフロアトンネル17に沿って後方へ延出されている。
【0024】
又、トーボード2は、下部トーボード部18と上部トーボード部19との二部品で構成されている。トーボード2を加工するに際しては、予め下部トーボード部18と上部トーボード部19との二部品が一体化されているテーラードブランク材をプレス加工して形成し、或いは、下部トーボード部18と上部トーボード部19とを個別に加工した後、接合することで一体化するようにしている。
【0025】
図2に示すように、下部トーボード部18に傾斜面2a、平坦面2b、センタートンネル16が形成され、又、上部トーボード部19にホイールハウス後部9aが形成されている。下部トーボード18には、車種間で共通する孔部や取付部が形成され、一方、上部トーボード部19には、車種毎に異なる部品の貫通孔や取付け孔、取付ブラケット等が形成されている。これにより、下部トーボード部18を共用化することができる。すなわち、上部トーボード19には、アクセルペダルやブレーキペダルをそれぞれ支持する各ブラケット、ブレーキペダルに連設して踏力をアシストするマスタバッグ、及びエアコンダクトの貫通孔(何れも図示せず)等、車種毎に相違するレイアウトを有する部材が配設されていると共に、ステアリングシャフトを貫通させるシャフト貫通孔(図示せず)等の貫通孔が所定に穿設されている。一方、下部トーボード部18には、共用可能な貫通孔、ブラケット等のみが設けられている。
【0026】
又、下部トーボード部18は、前面衝突の際にフロントサイドフレーム12からの衝撃荷重を伝達するキックアップ部12bが接合されて衝撃荷重を受ける部位であり、しかも、当該衝撃荷重をサイドシル8、フロントピラー5等のサイドストラクチャ側へ分散させる機能を持たせているため、通常板厚の上部トーボード部19よりも厚い板厚を有している。下部トーボード部18の板厚を厚くすることで、車幅方向に沿って延在するトーボードリンフォースを省略することが可能となる。
【0027】
又、図4、図5に示すように、サイドフレーム本体12aの後端部、すなわち、このサイドフレーム本体12aのキックアップ部12bに連続する部分とセンタートンネル16の上部内壁との間が第1サブフレーム21を介して連結されている。第1サブフレーム21の前部は断面ハット状に曲げ形成され、サイドフレーム本体12a後部の上面及び内側面(左右のサイドフレーム本体12aの対向面)に重畳されて接合されている。更に、この第1サブフレーム21のサイドフレーム本体12aの上面に当接されている部位側の端縁がホイールエプロン9の側壁及び上部トーボード部19に沿う形状に形成されて、ホイールエプロン9の側壁及び上部トーボード部19に接合されている。更に、この第1サブフレーム21のセンタートンネル16に臨まれている後部が断面ハット形に形成されて、センタートンネル16に沿って前後方向に延出され、その側縁部(ハット形断面のフランジ部)がセンタートンネル16の上部内壁に沿って接合されている。
【0028】
又、図6、図8に示すように、キックアップ部12bの外側面と後方のサイドシル8の前端縁との間が他のサブフレームとしての第2サブフレーム22を介して連結されている。この第2サブフレーム22は断面口形に形成されており、その先端部がキックアップ部12bの外側面に接合されている。更に、この第2サブフレーム22の中途がホイールハウス9aの下端縁に沿って屈曲形成されて接合されている。又、この第2サブフレーム22の後端縁がサイドシル8の前端縁に延出されて接合されている。
【0029】
更に、キックアップ部12bとセンタートンネル16の下端縁との間が別のサブフレームとしての第3サブフレーム23を介して連結されている。すなわち、図4〜図8に示すように、この第3サブフレーム23の外側が、キックアップ部12bの下部側(キックアップ部12bの中途から下部側のフロアサイドフレーム15との接合部付近にかけて)の底面及び内側面(両左右のキックアップ部12bの下部の対向面)に重畳され、この重畳された部位が接合されている。又、この第3サブフレーム23の他側が下部トーボード部18の傾斜面2aから屈曲されたセンタートンネル16の稜部18aに沿い、この稜部18aに近接する位置に端縁が接合されている。
【0030】
更に、第3サブフレーム23であってキックアップ部12bの底面に重畳されている部位にサスペンション装置のサスペンションアーム24が支持されている。尚、図5の符号25は、フロアパネル7に固設されるリヤクロスメンバであり、このリヤクロスメンバ25にトランスミッションマウントユニット26を介して、図示しないトランスミッションの後部が載置支持される。
【0031】
次に、このような構成による本実施形態の作用について説明する。車両が前面衝突すると、その衝撃荷重が、バンパビーム等のフロントクロスメンバ14を介して、このフロントクロスメンバ14の両側に連結されている左右のフロントサイドフレーム12のサイドフレーム本体12aに入力され、その衝撃荷重の一部は、サイドフレーム本体12の先端部が圧潰することにより吸収され、残りの衝撃荷重がサイドフレーム本体12aの後端に連結されているキックアップ部12bの方向へ伝達される。
【0032】
その際、サイドフレーム本体12aのキックアップ部12bに連続する屈曲部分とセンタートンネル16の上部内壁との間が第1サブフレーム21を介して連結されており、更に、キックアップ部12bの外側面とサイドシル8の前端縁との間が第2サブフレーム22を介して連結されているため、キックアップ部12bに伝達される衝撃荷重は、両サブフレーム21,22によってセンタートンネル16の上部内壁、及びサイドシル8側に分散され、センタートンネル16、及びサイドシル8を伝って後方へ逃がされて減衰される。その結果、キックアップ部12bに伝達される衝撃荷重が減少される。
【0033】
その際、第1サブフレーム21が、センタートンネル16の上部内壁に沿って前後方向に延在された状態で接合されているため、この接合部分が閉断面となり、前後方向への荷重に対する剛性が高くなるため、サイドフレーム本体12aからの荷重をセンタートンネル16に確実に伝達させることができる。
【0034】
ところで、サイドフレーム本体12aとフロアサイドフレーム15とは高低差を有しているため、サイドフレーム本体12aからの衝撃荷重がフロアサイドフレーム15へ伝達される際に、サイドフレーム本体12aの後端とキックアップ部12bとの間の屈曲部に変形を与えるような曲げモーメントが生じ易く、この屈曲部が変形するとサイドフレーム本体12aからキックアップ部12b側に衝撃荷重が伝達され難くなる。
【0035】
しかし、本実施形態では、サイドフレーム本体12aの後部の屈曲部位より手前に第1、第2サブフレーム21、22を接合して衝撃荷重を分散するようにしたので、屈曲部にかかる曲げ応力が小さくなり、サイドフレーム本体12aとキックアップ部12bとの間の曲げ変形が防止され、サイドフレーム本体12aからキックアップ部12b側へ(両サブフレーム21,22により分散されなかった残りの)衝撃荷重をスムーズに伝達させることができる。
【0036】
又、衝撃荷重がキックアップ部12bからフロアサイドフレーム15に伝達される際に、このキックアップ部12bの後端の屈曲部に曲げ変形が生じやすくなるが、この屈曲部の手前に第3サブフレーム23の一側が接合されているため、衝撃荷重が分散されて当該屈曲部にかかる曲げ応力が小さくなり、屈曲部に生じる曲げ変形を有効に防止することができる。
【0037】
更に、この第3サブフレーム23の他端が下部トーボード部18の傾斜面2aとセンタートンネル16とで形成された稜部18aに沿って配設されているため、キックアップ部12bの下部に伝達された衝撃荷重の一部が、第3サブフレーム23からセンタートンネル16の稜部18aに分散される。この場合、センタートンネル16の稜部18aはキックアップ部12bに対して車幅方向内側に配設されているため、衝撃荷重により曲げモーメント(トルク)が発生するが、第3サブフレーム23によりキックアップ部12bと稜部18aとが一体化されるため、曲げ変形が生じることはない。そして、このセンタートンネル16の稜部18aに伝達された荷重は、これに連続するフロアトンネル17の稜部に伝達されて後方へ逃がされて減衰される。センタートンネル16、及びフロアトンネル17は、下部トーボード部18、及びフロアパネル7をプレス加工により形成しているため、稜部18a、及びフロアトンネル17の稜部は高い剛性を有しており、これらの稜部に連続するセンタートンネル16、及びフロアトンネル17の壁面を伝って衝撃荷重を後方へ逃がして効率よく減衰させることができる。
【0038】
このように、本実施形態では、センタートンネル16、及びフロアトンネル17の壁面を骨格として機能させて、第3サブフレーム23からセンタートンネル16の稜部18aに伝達された衝撃荷重を後方へ逃がすようにしたので、構造の簡素化が実現されると共に、キャビン4の変形を有効に防止することができる。
【0039】
更に、トーボード2を下部トーボード部18と上部トーボード部19とに二分割し、衝撃荷重を伝達するキックアップ部12bを下部トーボード部18に接合すると共に、この下部トーボード部18の板厚を厚くして、その両側をサイドシル8に接合するようにしたので、キックアップ部12bからの衝撃荷重が下部トーボード部18に分散されても、変形することなく、サイドシル8側へ逃がすことができる。そのため、前面衝突時におけるトーボード2の変形を防止することができる。
【0040】
又、第3サブフレーム23には、サスペンションアーム24が取付けられて集約されているため、サスペンションアームを取付ける部材を省略することができ、構造の簡素化を実現することができる。
【0041】
更に、上部トーボード部19に車種毎に異なる部品の取付け孔、取付ブラケット及び貫通孔を穿設し、下部トーボード部18には車種間で共通する部品の取付け孔、取付ブラケット、貫通孔を形成することで、下部トーボード18の共通化が実現でき、製造及び組み立てコストの低減を図ることができる。
【0042】
又、キックアップ部12b両端の屈曲部にかかる曲げ応力を、第1〜第3サブフレーム21〜23にて低減するようにしたので、当該屈曲部の曲げ変形が防止されると共に、衝撃荷重を車体後方へ効率よく逃がすことができる。
【0043】
尚、車種によっては車重が増加して屈曲部の強度が不足する場合が考えられる。このような場合は、屈曲部内にリンフォース部材を適宜追加することで対応すれば良い。従って、本実施形態では、フロントサイドフレーム12に第1〜第3サブフレーム21〜23を外付けした構造を基本とし、車体強度に応じてリンフォース部材を適宜追加することができるため、高い汎用性を得ることができる。
【0044】
又、第1〜第3サブフレーム21〜23をフロントサイドフレーム12とセンタートンネル16、サイドシル8との間に外付けした構造であるため、既存の車両に対しても適用することができ、より高い汎用性を得ることができる。
【0045】
更に、本実施形態では、サイドシル8の前端縁が第2サブフレーム22に接合されていると共に、このサイドシル8に板厚の厚い下部トーボード部18の両端が接合されているため、当該部位に接合されている、サイドストラクチャを構成するフロントピラー5の補強を簡略化しても充分に剛性を保証することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…車体前部、
2…トーボード、
2a…傾斜面、
3…エンジンルーム、
4…キャビン、
8…サイドシル、
12…フロントサイドフレーム、
12a…サイドフレーム本体、
12b…キックアップ部、
15…フロアサイドフレーム、
16…センタートンネル、
17…フロアトンネル、
18…下部トーボード部、
18a…稜部、
21…第1サブフレーム、
22…第2サブフレーム、
23…第3サブフレーム、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームとキャビンとを区画して後端がフロアパネルに連続されていると共に、車幅方向略中央にセンタートンネルが形成されているトーボードと、
前記エンジンルームの車幅方向両側に配設された一対のサイドフレーム本体及び該各サイドフレーム本体の後部に連続すると共に前記トーボードの下部側に形成された傾斜面に対して前記センタートンネルを挟んで対称な位置に接合されて前記フロアパネル方向へ延在するキックアップ部を有するフロントサイドフレームを備える車体前部構造において、
前記キックアップ部と前記センタートンネルの前記トーボードから屈曲された稜部との間がサブフレームを介して連結されている
ことを特徴とする車体フレーム構造。
【請求項2】
前記サブフレームの一側が前記キックアップ部の下部側に接合されている
ことを特徴とする請求項1記載の車体フレーム構造。
【請求項3】
前記サイドフレーム本体の後端から前記キックアップ部の上部にかけて他のサブフレームの一端が接合され、該他のサブフレームの他端が前記センタートンネル上部内壁の前後の延出方向に沿って連結されている
ことを特徴とする請求項2記載の車体フレーム構造。
【請求項4】
前記キックアップ部の外側面に別のサブフレームの一端が接合され、該別のサブフレームの他端がサイドシルに接合され、該サイドシルに前記トーボードの両端が接合されている
ことを特徴とする請求項2或いは3記載の車体のフレーム構造。
【請求項5】
前記トーボードが下部トーボード部と上部トーボード部とに分割され、該下部トーボード部が前記上部トーボード部よりも厚い板厚で形成され、前記下部トーボード部に前記センタートンネルが形成されていると共に前記キックアップ部が接合されている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車体フレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−61941(P2012−61941A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207158(P2010−207158)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】