説明

車体前部構造

【課題】剛性を確保することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、左サイド梁部材17および左アッパメンバー13がそれぞれ側面視で第1平面41上に設けられるとともに閉断面に形成され、左アッパメンバー13の下辺部35から車体前方に向けて下り勾配で左ロアメンバー21が左フロントサイドフレーム11の外側まで設けられ、左ロアメンバー21の前端部21aが左フロントサイドフレーム11の外壁36に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルクヘッドの上梁部材の端部からサイド梁部材がアッパメンバーまで車体後方に向けて延出された車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造は、左右のフロントサイドフレームにバルクヘッドが支持され、バルクヘッドの左上端部から左サイド梁部材が車体後方に向けて左アッパメンバーまで延出され、バルクヘッドの右上端部から右サイド梁部材が車体後方に向けて右アッパメンバーまで延出されている。
そして、左右のフロントサイドフレームにはホイールハウスやサスペンション(ダンパ)を介して左右の前輪が支持されている。
【0003】
バルクヘッドの上梁部材は、下部が開口した状態で断面略コ字状に形成されている。また、左右のサイド梁部材は、下部が開口した状態で断面略コ字状に形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−290224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、左右のフロントサイドフレームにはホイールハウスやサスペンションを介して左右の前輪が支持されているので、左右のフロントサイドフレームにはホイールハウスやサスペンションを介して上下方向や車体幅方向の荷重が作用する。
作用した荷重は、左右のフロントサイドフレームからバルクヘッドや左右のサイド梁部材に伝わる。
しかし、上梁部材や左右のサイド梁部材はそれぞれ断面略コ字状に形成されている。よって、上梁部材や左右のサイド梁部材の剛性を十分に確保することは難しい。
【0005】
このため、左右のフロントサイドフレームから上梁部材や左右のサイド梁部材に上下方向や車体幅方向の荷重が伝わると、伝わった荷重で上梁部材や左右のサイド梁部材が変形することが考えられる。
よって、特許文献1の上梁部材や左右のサイド梁部材では、左右のフロントサイドフレームの上下方向や車体幅方向の変形を抑え難い。
【0006】
本発明は、剛性を容易に確保することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、バルクヘッドの上梁部材から車体後方に向けてサイド梁部材が延出され、前記サイド梁部材がアッパメンバーに連結され、前記アッパメンバーがフロントピラーに連結された車体前部構造において、前記サイド梁部材および前記アッパメンバーがそれぞれ側面視で同一平面上に設けられるとともに閉断面に形成され、前記アッパメンバーの下辺部から車体前方に向けてロアメンバーが前記フロントサイドフレームの外側まで下り勾配で延出され、前記ロアメンバーの前端部が前記フロントサイドフレームの外壁に連結されたことを特徴とする。
【0008】
ここで、サイド梁部材とアッパメンバーとの連結部が折り曲げられた状態の場合、連結部に応力が集中することが考えられる。このため、連結部の剛性を確保するための検討に時間を要する。
そこで、請求項1において、サイド梁部材およびアッパメンバーを同一平面上に設けるようにした。サイド梁部材およびアッパメンバーを同一平面上に設けることで、連結部に応力が集中することを防ぐようにした。
【0009】
請求項2は、前記アッパメンバーおよび前記ロアメンバーが、断面略コ字状に形成されたコ形板材と断面略I字状に形成されたI形板材との組合わせでそれぞれ閉断面に形成され、前記アッパメンバーおよび前記ロアメンバーがそれぞれ車幅方向で一致するように形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、サイド梁部材およびアッパメンバーを同一平面上に設けるとともに閉断面に形成した。
サイド梁部材およびアッパメンバーを同一平面上に設けることで、サイド梁部材およびアッパメンバーの連結部に応力が集中することを抑えることができる。
加えて、サイド梁部材およびアッパメンバーを閉断面にすることで、連結部を閉断面に形成することができる。
【0011】
よって、サイド梁部材およびアッパメンバーの剛性や、連結部の剛性を簡単に高めることができ、車体前部構造の剛性を容易に確保することができる。
これにより、フロントサイドフレームにホイールハウスやサスペンションを介して上下方向や車体幅方向の荷重が作用した際に、作用した荷重をサイド梁部材およびアッパメンバーで支えることができる。
したがって、フロントサイドフレームが上下方向や車体幅方向に変形することを良好に抑えて、走行安定性を一層良好に確保することができる。
【0012】
また、ロアメンバーをアッパメンバーから下り勾配でフロントサイドフレームの外側まで延ばし、ロアメンバーの前端部をフロントサイドフレームの外壁に連結した。
よって、フロントサイドフレームの外側に衝撃が作用した場合に、衝撃をロアメンバーの前端部で受けることができる。前端部で受けた衝撃は、ロアメンバーおよびアッパメンバーを経てフロントピラーまで伝えることができる。
これにより、前端部で受けた衝撃をフロントピラーに分散させて良好に吸収することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、アッパメンバーおよびロアメンバーをそれぞれ閉断面に形成するとともに、それぞれの閉断面を車幅方向で一致させた。
よって、ロアメンバーの前端部で受けた衝撃を、ロアメンバーからアッパメンバーに一層良好に伝えることができる。
これにより、ロアメンバーの前端部で受けた衝撃をフロントピラーに好適に分散させて、前端部で受けた衝撃を一層良好に吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0015】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側にそれぞれ設けられた左右のフロントサイドフレーム11,12と、左右のフロントサイドフレーム11,12の上方にそれぞれ設けられた左右のアッパメンバー13,14と、左右のフロントサイドフレーム11,12に支持されたバルクヘッド15と、バルクヘッド15の左上端部15aから車体後方に延出された左サイド梁部材(サイド梁部材)17と、バルクヘッド15の右上端部15bから車体後方に延出された右サイド梁部材(サイド梁部材)18とを備える。
【0016】
さらに、車体前部構造10は、左アッパメンバー13の前端部13a近傍から車体前方に向けて延出された左ロアメンバー(ロアメンバー)21と、右アッパメンバー14の前端部14a近傍から車体前方に向けて延出された右ロアメンバー(ロアメンバー)22とを備える。
【0017】
バルクヘッド15は、ラジエータやコンデンサなどの冷却系部品(図示せず)を支持する枠体である。コンデンサは、例えば、エアコン用の冷媒ガスを冷却して液化するものである。
バルクヘッド15は、車体幅方向に延出された上梁部材24と、上梁部材24の下方において車幅方向に延出された下梁部材25と、上下の梁部材24,25の各左端部に連結された左脚部材26と、上下の梁部材24,25の各右端部に連結された右脚部材27とを備える。
【0018】
なお、車体前部構造10は略左右対称な構造なので、以下、車体前部構造10の左側部材のみについて説明して右側部材の説明を省略する。
【0019】
図2は本発明に係る車体前部構造の左側部材を示す斜視図である。
左フロントサイドフレーム11は、車体前部の左側に配置され、車体前後方向に延びる部材である。
左アッパメンバー13は、左フロントサイドフレーム11の上方で、かつ、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられ、後端部13bが左フロントピラー(フロントピラー)31に連結されている。
【0020】
左サイド梁部材17は、上梁部材24の左端部24aから左アッパメンバー13の前端部13aまで車体後方で、かつ車体外側に向けて傾斜角θ1(図3参照)の上り勾配で傾斜状に延出されている。
左サイド梁部材17は、前端部17aが上梁部材24の左端部24aおよび左脚部材26の上端部26aに連結されている。
【0021】
左フロントサイドフレーム11および左アッパメンバー13に左ホイールハウス33が設けられている。
左ホイールハウス33の頂部33aには、図示しない左サスペンション(左ダンパ)が支持されている。この左サスペンションには左前輪(図示せず)が支持されている。
【0022】
左ロアメンバー21は、左アッパメンバー13の前端部13a近傍において、下辺部35(図3参照)から左フロントサイドフレーム11の前端部11a外側まで下り勾配で延出されている。
この左ロアメンバー21は、前端部21aが左フロントサイドフレーム11の前端部11aのうち、外壁36に左支持部38を介して連結されている。
【0023】
図3は本発明に係る車体前部構造を示す側面図である。
左サイド梁部材17は第1平面(同一平面)41に沿って車体後方に向けて僅かに上り勾配で延出されている。
一方、左アッパメンバー13は、前半分43が第1平面41に沿って車体後方に向けて僅かに上り勾配で延出され、後半分44が第2平面42に沿って車体後方に向けて左フロントピラー31まで延出されている。
【0024】
よって、左サイド梁部材17と、左アッパメンバー13の前半分43とが、側面視で第1平面(同一平面)41上にそれぞれ設けられている。
左サイド梁部材17および左アッパメンバー13の前半分43を第1平面41上に設けることで、左サイド梁部材17および前半分43の左連結部45に応力が集中することを抑えることができる。
【0025】
図4は本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
左アッパメンバー13は、前端部13aが車体前方に向けて、かつ車体中心47に近づくように傾斜角θ2で傾斜されている。
左サイド梁部材17は、左アッパメンバー13の前端部13aから上梁部材24の左端部24aに向けて、かつ車体中心47に向けて傾斜角θ3で傾斜されている。
【0026】
よって、左サイド梁部材17の前端部17aが、車体外側部51に対して距離Lだけ車体中心47側に寄せて配置されている。
これにより、車体前部構造10の左前部52に比較的大きな空間53を確保することができる。
したがって、例えば、大型のヘッドライト55などの部品を取り付ける空間を容易に確保することができる。
【0027】
図5は図2の5−5線断面図である。
上梁部材24は、車体前側に設けられた前L形板材61と、車体後側に設けられた後L形板材62とを有する。
前L形板材61は、上水平部63および前鉛直部64が断面略L字形に折り曲げられている(形成されている)。
後L形板材62は、後鉛直部66および下水平部67が断面略L字形に形成されている。
【0028】
この上梁部材24は、前L形板材61および後L形板材62が組み合わされて断面略口状の閉断面に形成されている。
これにより、上梁部材24(前後のL形板材61,62)が断面略口状の閉断面に組み合わされ、上梁部材24の剛性を簡単に高めることができる。
【0029】
図6は図2の6−6線断面図である。
左サイド梁部材17は、車体外側に設けられた梁コ形板材71と、車体内側に設けられた梁I形板材72とを有する。
この左サイド梁部材17は、梁コ形板材71および梁I形板材72が組み合わされて閉断面に形成されている。
【0030】
梁コ形板材71は、水平に設けられた梁水平部74と、梁水平部74から鉛直に折り曲げられた梁外鉛直部75と、梁外鉛直部75から車体中央に向けて傾斜状に折り曲げられた梁傾斜部76と、梁傾斜部76の下端部から下方に向けて折り曲げられた梁下折曲片77とを有する。
【0031】
梁水平部74、梁外鉛直部75および梁傾斜部76は、断面略コ字形に形成されている。
【0032】
梁I形板材72は、断面略I字形に形成された梁内鉛直部78と、梁内鉛直部78の上端部から車体中心に向けて折り曲げられた梁上折曲辺79とを有する。
【0033】
梁コ形板材71および梁I形板材72が対向する状態で配置され、梁水平部74の内接合辺74aおよび梁I形板材72の梁上折曲辺79がスポット溶接されている。
梁コ形板材71の梁下折曲片77および梁内鉛直部78の下接合辺78aがスポット溶接されている。
これにより、左サイド梁部材17(梁コ形板材71および梁I形板材72)が断面略口状の閉断面に組み合わされ、左サイド梁部材17の剛性を簡単に高めることができる。
【0034】
図7は図2の7−7線断面図である。
左アッパメンバー13の前端部13a近傍の部位13cは、車体外側に設けられた上コ形板材81と、車体内側に設けられたI形板材82の上半分83とを有する。前端部13aは図2に示す。
この前端部13a近傍の部位13cは、上コ形板材81およびI形板材82の上半分83が組み合わされて閉断面に形成されている。
【0035】
上コ形板材81は、傾斜状に設けられた上傾斜部84と、上傾斜部84から鉛直に折り曲げられた外鉛直部85と、外鉛直部85から車体中央に向けて傾斜状に折り曲げられた下傾斜部86と、下傾斜部86の下端部から下方に向けて折り曲げられた下折曲片87とを有する。
上傾斜部84、外鉛直部85および下傾斜部86は、断面略コ字形に形成されている。
【0036】
I形板材82の上半分83は、断面略I字形に形成された内鉛直部88と、内鉛直部88の上端部から車体中心に向けて折り曲げられた上折曲辺89とを有する。
【0037】
上コ形板材81およびI形板材82の上半分83が対向する状態で配置され、上傾斜部84の内接合辺84aおよび上半分83の上折曲辺89がスポット溶接されている。
上コ形板材81の下折曲片87および内鉛直部88の接合辺88aがスポット溶接されている。
【0038】
これにより、左アッパメンバー13の前端部13a近傍の部位13c(上コ形板材81およびI形板材82の上半分83)が断面略口状の閉断面に組み合わされ、左アッパメンバー13の剛性を簡単に高めることができる。
ここで、左アッパメンバー13の前端部13a近傍の部位13cは閉断面幅Wに形成されている。
【0039】
また、左アッパメンバー13の前端部13a近傍の部位13cを左サイド梁部材17と同様に断面略口状の閉断面に組み合わせることで、左サイド梁部材17および左アッパメンバー13の左連結部45(図2参照)を閉断面に形成することができる。
よって、左連結部45の剛性を簡単に高めることができる。
このように、左サイド梁部材17および左アッパメンバー13の剛性や、左連結部45の剛性を簡単に高めることが可能になり、車体前部構造10の剛性を容易に確保することができる。
【0040】
なお、上コ形板材81の下折曲片87および内鉛直部88の接合辺88aをスポット溶接した部位が下辺部35を構成する。
左アッパメンバー13の前端部13a近傍の部位13cにおいて、下辺部35(図3も参照)に左ロアメンバー21の後端部21bが連結されている。
【0041】
左ロアメンバー21の後端部21bは、車体外側に設けられた下コ形板材91と、車体内側に設けられたI形板材82の下半分92とを有する。
この左ロアメンバー21の後端部21bは、下コ形板材91およびI形板材82の下半分92が組み合わされて、閉断面に形成されるとともに下辺部35に設けられている。
【0042】
下コ形板材91は、傾斜状に設けられた上傾斜部94と、上傾斜部94から鉛直に折り曲げられた外鉛直部95と、外鉛直部95から車体中央に向けて傾斜状に折り曲げられた下傾斜部96とを有する。
上傾斜部94、外鉛直部95および下傾斜部96は、断面略コ字形に形成されている。
【0043】
I形板材82の下半分92は、断面略I字形に形成された内鉛直部97と、内鉛直部97の下端部から車体中心に向けて折り曲げられた下折曲辺98とを有する。
【0044】
下コ形板材91およびI形板材82の下半分92が対向する状態で配置されている。この状態において、上傾斜部94の折曲接合辺94aおよび内鉛直部97の接合辺88aで下折曲片87を挟持し、折曲接合辺94a、下折曲片87および接合辺88aがスポット溶接されている。
【0045】
さらに、下傾斜部96の下接合辺96aおよびI形板材82の下折曲辺98がスポット溶接されている。
これにより、左ロアメンバー21の後端部21b(下コ形板材91およびI形板材82の下半分92)が断面略口状の閉断面に組み合わされ、左ロアメンバー21の剛性を簡単に高めることができる。
ここで、左ロアメンバー21の後端部21bは閉断面幅Wに形成されている。
【0046】
図8は図2の8−8線断面図である。
左ロアメンバー21の中央部21cは、図7に示す後端部21bと同様に、下コ形板材91およびI形板材82の下半分92が組み合わされて閉断面に形成されている。
下コ形板材91およびI形板材82の下半分92が対向する状態で配置され、上傾斜部94の折曲接合辺94aおよび内鉛直部97の上接合辺97aがスポット溶接されている。
さらに、下傾斜部96の下接合辺96aおよびI形板材82の下折曲辺98がスポット溶接されている。
【0047】
これにより、左ロアメンバー21の中央部21c(下コ形板材91およびI形板材82の下半分92)が断面略口状の閉断面に組み合わされ、左ロアメンバー21の剛性を簡単に高めることができる。
ここで、左ロアメンバー21の中央部21cは閉断面幅Wに形成されている。
すなわち、左ロアメンバー21は全域において閉断面幅Wに形成されている。
【0048】
図9は図2の9−9線断面図である。
左アッパメンバー13の中央部13dは、図7に示す前端部13a近傍の部位13cと同様に、車体外側に設けられた上コ形板材81と、車体内側に設けられたI形板材82の上半分83とを有する。
左アッパメンバー13は、上コ形板材81およびI形板材82の上半分83が組み合わされて閉断面に形成されている。この左アッパメンバー13には左ホイールハウス33が設けられている。
【0049】
上コ形板材81およびI形板材82の上半分83が対向する状態で配置され、上傾斜部84の内接合辺84a、I形板材82の上折曲辺89および左ホイールハウス33の外接合辺33bがスポット溶接されている。
下傾斜部86の接合辺86aおよびI形板材82の下折曲辺99がスポット溶接されている。
【0050】
これにより、左アッパメンバー13の中央部13d(上コ形板材81およびI形板材82の上半分83)が断面略口状の閉断面に組み合わされ、左アッパメンバー13の剛性を簡単に高めることができる。
ここで、左アッパメンバー13の中央部13dは閉断面幅Wに形成されている。
すなわち、左アッパメンバー13は全域において閉断面幅Wに形成されている。
【0051】
図2に戻って、左アッパメンバー13および左ロアメンバー21は、それぞれの閉断面幅Wが車幅方向で一致するように形成されている。
よって、左ロアメンバー21の前端部21aで受けた衝撃を、左ロアメンバー21から左アッパメンバー13に一層良好に伝えることができる。
これにより、左ロアメンバー21の前端部21aで受けた衝撃を左フロントピラー31に好適に分散させて、衝撃を一層良好に吸収することができる。
【0052】
つぎに、車体前部構造10の左連結部に上下方向や左右方向の荷重が作用した例を図10に基づいて説明する。
図10は本発明に係る車体前部構造に荷重が作用した例を説明する図である。
まず、車体前部構造10に上下方向の荷重が作用した場合について説明する。
左フロントサイドフレーム11には左ホイールハウス33や左サスペンション(図示せず)を介して上下方向の荷重が矢印Aの如く作用する。
また、左フロントサイドフレーム11には左ホイールハウス33や左サスペンション(図示せず)を介して左右方向の荷重が矢印Bの如く作用する。
走行安定性を良好に確保するためには、左フロントサイドフレーム11の上下方向の変形や左右方向の変形を抑えることが望ましい。
【0053】
そこで、バルクヘッド15の上梁部材24、左サイド梁部材17、左アッパメンバー13、左ロアメンバー21および左連結部45を閉断面にした。
よって、各部材24,17,13,21,45の剛性を高めることができる。
【0054】
さらに、左サイド梁部材17および左アッパメンバー13の前半分43を、図3に示すように第1平面41上に設けた。よって、左サイド梁部材17および前半分43の左連結部45に応力が集中することを抑えることができる。
これにより、車体前部構造10の剛性を高めることができる。
【0055】
したがって、左フロントサイドフレーム11に上下方向の荷重や左右方向の荷重が作用しても、作用した荷重を左サイド梁部材17や左アッパメンバー13などで支えることができる。
よって、左フロントサイドフレーム11が上下方向や車体幅方向に変形することを抑え、走行安定性を良好に確保することができる。
【0056】
つぎに、オフセット衝突などで左フロントサイドフレーム11の外側に衝撃が作用した場合について説明する。
左ロアメンバー21を左アッパメンバー13から下り勾配で左フロントサイドフレーム11の外側まで延ばした。そして、左ロアメンバー21の前端部21aを左フロントサイドフレーム11の外壁36に左支持部38を介して連結した。
よって、左フロントサイドフレーム11の外側に衝撃Fが矢印の如く作用した場合に、作用した衝撃Fを左ロアメンバー21の前端部21aで受けることができる。
【0057】
左ロアメンバー21の前端部21aで受けた衝撃Fは、左ロアメンバー21および左アッパメンバー13を経て左フロントピラー31まで伝えることができる。
これにより、左ロアメンバー21の前端部21aで受けた衝撃Fを左フロントピラー31に分散させて良好に吸収することができる。
【0058】
ここで、左アッパメンバー13および左ロアメンバー21は、それぞれの閉断面幅Wが幅方向で一致するように形成されている。
よって、左ロアメンバー21の前端部21aで受けた衝撃を、左ロアメンバー21から左アッパメンバー13に一層良好に伝えることができる。
これにより、左ロアメンバー21の前端部21aで受けた衝撃を左フロントピラー31に好適に分散させて、衝撃を一層良好に吸収することができる。
【0059】
なお、前記実施の形態では、車体前部構造10の左側部材について説明したが、左側部材と略左右対称な右側部材についても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の車体前部構造は、バルクヘッドの上梁部材の端部からサイド梁部材がアッパメンバーまで車体後方に向けて延出された自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造の左側部材を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造を示す側面図である。
【図4】本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】図2の6−6線断面図である。
【図7】図2の7−7線断面図である。
【図8】図2の8−8線断面図である。
【図9】図2の9−9線断面図である。
【図10】本発明に係る車体前部構造に荷重が作用した例を説明する図である。
【符号の説明】
【0062】
10…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、12…右フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、13…左アッパメンバー(アッパメンバー)、13a…左アッパメンバーの前端部、14…右アッパメンバー(アッパメンバー)、15…バルクヘッド、17…左サイド梁部材(サイド梁部材)、18…右サイド梁部材(サイド梁部材)、21…左ロアメンバー(ロアメンバー)、21a…左ロアメンバーの前端部、22…右ロアメンバー(ロアメンバー)、24…上梁部材、31…左フロントピラー(フロントピラー)、35…下辺部、36…外壁、38…左支持部、41…第1平面(同一平面)、47…車体中心、81,91…コ形板材、82…I形板材、W…閉断面幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルクヘッドの上梁部材から車体後方に向けてサイド梁部材が延出され、前記サイド梁部材がアッパメンバーに連結され、前記アッパメンバーがフロントピラーに連結された車体前部構造において、
前記サイド梁部材および前記アッパメンバーがそれぞれ側面視で同一平面上に設けられるとともに閉断面に形成され、
前記アッパメンバーの下辺部から車体前方に向けてロアメンバーが前記フロントサイドフレームの外側まで下り勾配で延出され、
前記ロアメンバーの前端部が前記フロントサイドフレームの外壁に連結されたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記アッパメンバーおよび前記ロアメンバーが、断面略コ字状に形成されたコ形板材と断面略I字状に形成されたI形板材との組合わせでそれぞれ閉断面に形成され、
前記アッパメンバーおよび前記ロアメンバーがそれぞれ車幅方向で一致するように形成されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−1035(P2009−1035A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160994(P2007−160994)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】