説明

車体前部構造

【課題】バンパと車体フレームとを結合するエクステンション部材による衝突エネルギの吸収効率を高める。
【解決手段】バンパ24とサブフレーム23との間にフロントバルクヘッド17が設けられている車体前部構造において、フロントバルクヘッドのサイド部材21に補助バンパビーム24cのエクステンション部材としての下側衝撃吸収部材26を貫通させる貫通孔28を設ける。下側衝撃吸収部材の全長に渡って衝突エネルギを吸収することができ、衝突エネルギの吸収量が増大し、衝突荷重の高効率伝達が可能となる。また、貫通孔の縁が貫通方向に延在する舌片により形成されていることにより、サイド部材において貫通孔を設けたことによる強度・剛性の低下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前端部にてバンパの車体後方に配置されたフロントバルクヘッドを有する車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体前部構造にあっては、車体前部において左右の側面に沿って延在するように左右一対のフロントサイドフレームが設けられ、両フロントサイドフレームの車体前側端部間がクロスメンバやフロントバルクヘッドなどを介して連結されている。また、車体前端には突エネルギを吸収するためのバンパレインフォースメントを受容したバンパが設けられている。(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−76455公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1のものにあっては、バンパの下部に補助バンパレインフォースメントが配設されている。さらに、相手車両の側面に衝突した場合に相手車両の側面下部に延在する部材(ロッカ)に補助バンパレインフォースメントが乗り上げることを防止するために、車体側結合用に補助バンパレインフォースメントから車体後方に延出する第2メンバを車体前側に下がり勾配気味に設けている。
【0004】
また、第2メンバのサブフレームへの固定位置がラジエータを取り付けるラジエータサポートに対して車体後方に位置しており、第2メンバは、ラジエータサポートの縦柱とラジエータの下端を支持するラジエータサポートロアとにより上下から挟まれる状態に設けられ、かつそれらの部材と結合されている。そのため、第2メンバは中間部で上下の車体骨格部材に結合されているので、衝突時に潰れ難く、衝突エネルギの吸収効率を高め難いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決して、バンパと車体フレームとを結合するエクステンション部材による衝突エネルギの吸収効率を高めることを実現するために本発明に於いては、車体(1)の前端部にてバンパ(24)の車体後方に配置されたフロントバルクヘッド(21)を有する車体前部構造であって、前記フロントバルクヘッド(21)が、前記車体(1)の上下方向に延在しかつ車体前後側の両壁部(21a・21b)を有する矩形閉断面形状のサイド部材(21)を有し、前記バンパ(24)が、バンパビーム(24c)から車体後方に延出して車体フレーム(23)に結合されるエクステンション部材(26)を有し、前記サイド部材(21)の前記両壁部(21a・21b)に前記エクステンション部材(26)が貫通する貫通孔(28)が設けられ、前記貫通孔(28)の縁が、前記両壁部(21a・21b)における前記貫通孔(28)の回りの部分を前記エクステンション部材(26)の貫通方向に延在するように形成した舌片(29a・29b)により形成されているものとした。
【0006】
特に、前記舌片(29a・29b)がバーリングにより形成されていると良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1によれば、フロントバルクヘッドのサイド部材にバンパビームのエクステンション部材を貫通させる貫通孔を設けたことにより、エクステンション部材の全長に渡って衝突エネルギを吸収することができ、衝突エネルギの吸収量が増大し、衝突荷重の高効率伝達が可能となる。また、貫通孔の縁が貫通方向に延在する舌片により形成されていることにより、サイド部材において貫通孔を設けたことによる強度・剛性の低下を防止することができる。
【0008】
また、請求項2によれば、舌片をバーリング加工により形成することにより、貫通孔に舌片を設ける加工を容易に行うことができ、上記構造の実現に対する製造コストを低廉化し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された自動車の車体前部構造を斜め前方から見た要部斜視図である。
【0010】
図1に示される車体前部構造にあっては、車体前部の骨格強度部材として、車体1の前部にて左右方向に間隔をおいて車体前後方向に延在する左右一対のフロントサイドフレーム11・12と、左右のフロントピラー13・14から左右のフロントサイドフレーム11・12の車体前側端部の上方近傍に至る左右のメンバー15・16と、左右のフロントサイドフレーム11・12の車体前側端部と左右のメンバー15・16の車体前側端部とに結合されて支持されているフロントバルクヘッド17とを有し、これらの内側にエンジンルーム18が画定されている。
【0011】
なお、車体前記部構造としての上記各骨格強度部材は例えばコ字状断面部材と板状の蓋状部材とにより矩形閉断面を形成するものであって良く、この形状は車体の骨格強度部材として公知であり、その詳しい説明は省略する。また、左右のメンバー15・16と左右のフロントサイドフレーム11・12とにより確定される空間には前輪用の左右のホイールハウス19・20が設けられている。
【0012】
上記フロントバルクヘッド17は、車体前方に臨む矩形状の枠部分を有する形状に形成されており、枠部分を構成する車体幅方向の左右にて車体上下方向に延在する左右のサイド部材21・22の中間部で各フロントサイドフレーム11・12の前端部と結合されている。フロントバルクヘッド17の枠部分を構成する車体上下方向にて車体幅方向に延在する上下のクロス部材17a・17bが設けられているが、上側のクロス部材17aにあっては、左右のサイド部材21・22の車体上側端部となる枠部分の上側左右角部から上記した左右のメンバー15・16に至る左右の後方延出部17c・17dが延出しており、左右の後方延出部17c・17dの後端が左右のメンバー15・16の前端と結合されている。なお、上側クロス部材17aと左右の後方延出部17c・17dとは平面視で車体後方に拡開されたU字形となるように曲成されており、その左右の角部に左右のサイド部材21・22の上端が結合されている。
【0013】
また、左右のフロントサイドフレーム11・12の下側であってエンジンルーム18の下面に相当する部分に車体フレームを構成するサブフレーム23が配設されている。このサブフレーム23に図示されないエンジンが搭載される。
【0014】
図2は図1の矢印II線から見た車体前部構造の要部左側面図である。なお、車体前部構造にあっては左右対称であり、以下、特に断らない限り車体前部の左側部分について説明する。
【0015】
フロントバルクヘッド17の車体前方には、図2に示されるようにバンパ24が配設されている。バンパ24は、車体1の外面を形成すると共にフロントバルクヘッド17側に開放された凹設形状のバンパカバー24aと、バンパカバー24aの内側の上側および下側部分にて車体幅方向に延在するように受容された主バンパビーム24bおよび本発明におけるバンパビームとしての補助バンパビーム24cとにより構成されている。
【0016】
主バンパビーム24bおよび補助バンパビーム24cは、それぞれ車幅方向の左右端部近傍にて車体後方に延出された上側衝撃吸収部材25およびエクステンション部材としての下側衝撃吸収部材26を一体的に有している。各衝撃吸収部材25・26共、上記した骨格強度部材と同様に矩形閉断面形状に形成されているものであって良い。なお、上側衝撃吸収部材25の車体後方端部はサイド部材21に結合され、かつフロントサイドフレーム11と同軸的に設けられている。
【0017】
補助バンパビーム24cは、図1の二点鎖線に示されるように下側衝撃吸収部材26が一体化された状態で、左右のサイド部材21・22のそれぞれ下部に設けられた各貫通孔28に各下側衝撃吸収部材26を貫通させて組み付けられる。下側衝撃吸収部材26は、図3に示されるように、サイド部材21を貫通した状態で、その車体後方端部がサブフレーム23の車体前側端部に通しボルト27により結合されている。
【0018】
貫通孔28は、サイド部材21の車体前側壁部としてのコ字状断面部材の底壁部分21aと、車体後側壁部としての蓋状部材21bとを同軸にそれぞれ車体前側からバーリング加工して形成されている。上記バーリング加工により、底壁部分21aと蓋状部材21bとにはそれぞれ車体前後方向に延在するように曲成された舌片29a・29bが形成されており、各舌片29a・29bにより貫通孔28の縁が形成されている。これにより、サイド部材21に貫通孔28を設けても、断面積を最小としかつ最大の強度が得られ、その縁部分が強化されるため、貫通孔21を設けたことにより強度低下が抑制される。そのような舌片29a・29bの形成にあっては、特にバーリング加工に限られないが、バーリング加工で形成することにより加工が容易であり、舌片29a・29bを設ける製造コストを低廉化し得る。
【0019】
このように下側衝撃吸収部材26が設けられていることから、バンパ31とサブフレーム23との間にフロントバルクヘッド17が配設されていても、そのサイド部材21を貫通して下側衝撃吸収部材26が設けられていることにより、下側衝撃吸収部材26の全長Lを長く取ることができる。衝突時の荷重Fにより下側衝撃吸収部材26はその全長Lに渡って変形し得ることから、衝突エネルギの吸収量を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用された自動車の車体前部構造を斜め前方から見た要部斜視図である。
【図2】図1の矢印II線から見た車体前部の要部拡大側面図である。
【図3】図2の矢印III−III線に沿って見た断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 車体
21 フロントバルクヘッド
21a 底壁部分(壁部)
21b 蓋状部材(壁部)
23 サブフレーム(車体フレーム)
24 バンパ
24c 補助バンパビーム(バンパビーム)
26 下側衝撃吸収部材(エクステンション部材)
28 貫通孔
29a・29b 舌片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前端部にてバンパの車体後方に配置されたフロントバルクヘッドを有する車体前部構造であって、
前記フロントバルクヘッドが、前記車体の上下方向に延在しかつ車体前後側に両壁部を有する矩形閉断面形状のサイド部材を有し、
前記バンパが、バンパビームから車体後方に延出して車体フレームに結合されるエクステンション部材を有し、
前記サイド部材の前記両壁部に前記エクステンション部材が貫通する貫通孔が設けられ、
前記貫通孔の縁が、前記両壁部における前記貫通孔の回りの部分を前記エクステンション部材の貫通方向に延在するように形成した舌片により形成されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記舌片がバーリングにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−248818(P2009−248818A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100613(P2008−100613)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】